説明

曲げセンサを用いて身体のねじれを測定する方法及び装置

本発明は、曲げセンサ(B1,B2)を用いて身体(K)のねじれを測定する方法に関する。このような方法において本発明では、ねじれによって生じる、曲げセンサ(B1,B2)のその都度の曲げを、第1の曲げセンサ(B1)の第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の曲げ信号(T2)とを用いて測定し、ねじれのために特徴的な曲げ信号(CT)を、第2の曲げ信号からの第1の曲げ信号の減算によって、又は第1の曲げ信号と第2の曲げ信号との加算によって、算出するようにした。本発明はまた、この方法を実施する装置及びこの装置の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げセンサを用いて身体のねじれを測定する方法及び装置、並びに曲げセンサを用いて身体のねじれを測定する装置の使用に関する。
【0002】
US5097252に基づいて、指の曲げを測定するために使用することができる光ファイバの曲げセンサが公知である。さらにUS6127672には、種々様々な光ファイバの曲げセンサの他に、図18〜22には、ねじれを測定することができる光ファイバのセンサが開示されている。この場合ねじれを測定するセンサは、ねじれ時における透過性変化を測定できるように形成されている。US6127672に開示されたセンサにはしかしながら、屈曲時に、つまり前屈時にねじれが表示されてしまうという欠点がある。さらに屈曲とねじれとが同時に発生した場合に、ねじれの測定にエラーが発生してしまう。図1A〜Cを参照しながら、この欠点について詳しく述べる。
【0003】
図1Aには、光ファイバの曲げセンサのストラップが斜視図で示されており、この曲げセンサでは、進入する光L1がファイバ内に入射され、ループを貫通した後で出射する光LOがファイバから進出する。この出射する光LOは、例えばフォトダイオード又は光敏感なセンサによって処理される。出射する光と入射する光との比LO/LIは、ファイバストラップ全体による減衰作用を再現する。ファイバ内には、それぞれ切欠きを備えた2つの領域E1,E2が設けられており、各切欠きの領域における曲げの半径に関連して、入射する光のその都度の透過性が変化させられる。1つの領域はファイバの上側に設けられ、他の領域はファイバの下側に設けられている。横断面A′−−−Aには領域E1,E2の位置が示されている。LI=100%の光が箇所(1)において入射されると、例えばそのうちの80%が領域E1によって減衰され、つまり箇所(2)において光出力はLIの80%である。領域E2によって、この領域に入射した光出力の80%も減衰され、その結果箇所(3)においては出射する光に対して下記の式が成り立つ:
LO=80%・80%・LI=0.64・LI
図1Aは、US6127672の図18〜22に示された状態に相当する。図1Aにおいてねじれセンサはその基本位置にある。
【0004】
ねじれ時に領域E1,E2は、光が入射もしくは出射される箇所に対して曲げられる。この状態は横断面B′−−−Bに示されている。この場合両方の領域E1,E2において光の減衰もしくは伝達性は、ねじれの方向に応じて均一に増加又は減少する。箇所(4)においてLI=100%の光が入射されると、箇所(5)においてはなお90%の光が、箇所(6)においては90%・90%の光が存在し、その結果出射する光LOに対しては下記の式が成り立つ:
LO=90%・90%・LI=0.81・LI
ねじれがこの例とは逆向きの方向に生じると、つまり減衰が領域E1,E2において基本位置に比べて増加すると、出射する光LOに対しては下記の式が成り立つ:
LO=60%・60%・LI=0.36・LI
ファイバは弾性的であり、これに基づいてねじれ時に生じる曲げ半径は領域E1,E2においてほぼ同一であるので、光の減衰もしくは透過性もまたほぼ同一である。
【0005】
最後に図1Cにおける場合について述べると、ここではストラップはねじられているのではなく、屈曲(Flexion)され、つまり曲げられている。図1Cにおいてストラップは下方に向かって曲げられている。このことは、横断面C′−−−Cにも示されている。領域E1における減衰は、図1Aに示された基本位置におけるよりも大きく、領域E2における減衰は、図1Aに示された基本位置におけるよりも小さい。箇所(7)においてLI=100%で入射する光は、領域E1によって45%だけ減衰され、つまり箇所(8)において光出力はなお55%となり、これにより、光出力は箇所(9)において55%又はそれよりも小さな値になる。それというのは領域E2もまた光を減衰し、つまり領域E1によって減衰された光の補償は実施され得ないからである。この例ではLO=0.45・LIであり、これによってねじれが認識される。それというのはLO/LIは基本位置よりも小さいから、つまり64%だからである。
【0006】
従って、US6127672に開示されたねじれセンサはセンサの屈曲時にも、ねじれが存在しないにもかかわらず、ねじれを測定してしまう。同様な欠点は、ねじれ及び屈曲つまり曲げが同時に発生した場合にも生じ、このような場合にねじれは、測定結果に対する屈曲の影響に基づいて、エラーを伴って算出されてしまう。
【0007】
ゆえに本発明の課題は、ねじれを曲げセンサを用いて、屈曲の存在時にも確実に求めることができる方法及び装置を提供することである。
【0008】
この課題を解決するために本発明の方法では、曲げセンサを用いて身体のねじれを測定する方法であって、曲げセンサが身体の表面に取り付けられている方法において、
下記のステップ、すなわち、ねじれによって生じる、曲げセンサのその都度の曲げを、第1の曲げセンサの第1の曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の曲げ信号とを用いて測定し、ねじれのために特徴的な曲げ信号を、第2の曲げ信号からの第1の曲げ信号の減算によって算出する、というステップを有している。
【0009】
前記課題を解決するための本発明の装置では、身体のねじれを測定する装置であって、身体の表面に配置された第1の曲げセンサ及び第2の曲げセンサと、曲げセンサにおいてねじれによって発生するそれぞれの曲げを、第1の曲げセンサの第1の曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の曲げ信号とを用いて測定する、測定手段と、ねじれのための特徴的な曲げ信号を、第2の曲げ信号からの第1の曲げ信号の減算によって算出する評価手段とが設けられている。
【0010】
本発明による方法もしくは装置の別の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
ねじれ方向に応じて、例えば身体のねじれ軸線の左右に取り付けられた曲げセンサの曲がり(Verbigung)が異なっている。従って、2つの曲げセンサは、異なった強さの曲げ信号を、つまり光ファイバの曲げセンサにおいて異なった強さの伝達値を供給することになる。第1の曲げ信号と第2の曲げ信号とを減算によって結び付けることによって、単にねじれ運動だけを測定することができる。それというのは、屈曲運動の成分は、両方の曲げ信号の減算によって消去されるからである。例えば曲げセンサとしては、光ファイバの曲げセンサを使用することができ、この場合第1の曲げセンサは脊柱の左側でかつ第2の曲げセンサは脊柱の右側で背中に取り付けられることができる。両曲げセンサは曲げ方向に応じて異なった曲げ信号を提供する。例えば、光ファイバの曲げセンサが一方の方向に曲げられた場合には、この曲げにとって特徴的な光の減衰は増大し、これに対して他方の方向への曲げは、光の減衰を減少させる。
【0012】
1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサの発生する曲げが、第1及び第2の曲げ信号において増大又は減少を生ぜしめると、有利である。このようにすると、ねじれを特徴的な曲げ信号を用いて信頼できるように測定することが可能である。
【0013】
有利な実施形態では、ねじれの実施前に、第1の曲げセンサの第1の基準曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の基準曲げ信号とを測定し、特徴的な基準曲げ信号を第1の基準曲げ信号と第2の基準曲げ信号との減算によって生ぜしめ、ねじれの実施後に、算出された特徴的な曲げ信号から特徴的な基準曲げ信号を減算するようにした。
【0014】
この実施形態によって、身体の休止状態においては、つまり身体のねじれ前には、特徴的な曲げ信号は0であり、これによって、休止状態における特徴的な曲げ信号の誤った調整(Kalibrierung)によるねじれの測定精度の低下を、回避することができる。
【0015】
本発明の別の発明は、曲げセンサを用いて身体のねじれを測定する択一的な方法であって、曲げセンサが身体の表面に配置されており、下記のステップ、すなわち、ねじれによって生じる、曲げセンサのその都度の曲げを、第1の曲げセンサの第1の曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の曲げ信号とを用いて測定し、この際に1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサの曲げが、第1の曲げ信号の増加を生ぜしめ、第2の曲げ信号の減少を生ぜしめ、ねじれのために特徴的な曲げ信号を、第1の曲げ信号と第2の曲げ信号との加算によって算出する、というステップを特徴とする、曲げセンサを用いて身体のねじれを測定する方法である。
【0016】
この方法においても、既に述べた方法におけると同じ利点を得ることができ、この択一的な方法では、単に、ねじれのために特徴的な曲げ信号の発生は、減算による代わりに、加算によって生ぜしめられる。
【0017】
この択一的な方法において有利には、ねじれの実施前に、第1の曲げセンサの第1の基準曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の基準曲げ信号とを測定し、特徴的な基準曲げ信号を第1の基準曲げ信号と第2の基準曲げ信号との加算によって生ぜしめ、ねじれの実施後に、算出された特徴的な曲げ信号から特徴的な基準曲げ信号を減算する。この場合においても、既に述べた方法におけると同様な利点を得ることができる。
【0018】
両方の方法における有利な実施形態において、身体の表面にねじれの軸線に対してほぼ平行に取り付けられた曲げセンサを使用することができる。このような曲げセンサの使用によって、ねじれを再現する曲げ信号、ひいてはねじれ自体を良好な精度で測定することができる。「ほぼ平行」というのは本発明の枠内においては、幾何学的な平行に対する小さな偏差(例えば±1cm)を含む配置状態も平行と呼んでいるからである。
【0019】
軸線の方向においてそれぞれ局部的な空間伸張を備えたそれぞれの敏感ゾーンを有する曲げセンサが使用されると、有利であり、このような曲げセンサを使用すると、その都度の曲げの測定時における個々の不正確さを回避することができる。それというのは、曲げ信号は身体の局部領域に関するそれぞれの曲げを再現するからである。さらに、軸線の方向におけるそれぞれの局部的な空間伸張を備えた配置形式によって、小さなねじれ運動をも曲げセンサによって測定することができる。
【0020】
ねじれに属するねじれ角を特徴的な曲げ信号を用いて変換関数(Umrechnungsfunktion)に基づいて求めると、有利である。このようにすると、ねじれをねじれ角によって簡単に記載することができる。変換関数はこの場合、所属のねじれ角に対する特徴的な曲げ信号の関係を示す。この関係は例えば直線的であるか又は、曲げセンサの非直線性を、例えば曲げセンサの最大の曲げの直前において、調整する。
【0021】
それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号を時間に関して測定し、ねじれの時間経過を、それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号のそれぞれの特徴的な曲げ信号の発生によって算出すると、有利である。このようにすると、時間に関するねじれ運動についてのインフォメーション(Aussage)を簡単に示すことができる。このことは例えば、例えば患者の背中の不都合な運動経過を検出できるようにするために、重要である。
【0022】
さらに、前記2つの方法のために、特徴的な曲げ信号の算出前に、それぞれの曲げ信号の重み付けを実施することができ、これによって、例えば、同じ曲げの際における曲げセンサの同一ではない測定結果を調整することができる。
【0023】
本発明の別の有利な構成では、身体が患者の背中として、軸線が患者の脊柱として形成されている。脊柱のねじれの測定時に、単数又は複数の先行の方法ステップを良好に使用することができる。
【0024】
光ファイバの曲げセンサとして形成された曲げセンサが使用されると有利である。このような曲げセンサには、該曲げセンサが電磁放射線に対して敏感ではなく、かつ電磁放射線を放射しないという利点がある。さらに光ファイバの曲げセンサは僅かな重量を有していて、安価に製造可能であるので、光ファイバの曲げセンサは、脊柱を測定するために良好に使用することができる。
【0025】
本発明はまた、身体のねじれを測定する装置にも関しており、本発明による装置には、下記の手段、すなわち、
身体の表面に配置された第1の曲げセンサ及び第2の曲げセンサと、
曲げセンサにおいてねじれによって発生するそれぞれの曲げを、第1の曲げセンサの第1の曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の曲げ信号とを用いて測定する、測定手段と、
ねじれのための特徴的な曲げ信号を、第2の曲げ信号からの第1の曲げ信号の減算によって算出する評価手段とが設けられている。
【0026】
この場合有利には、第1及び第2の曲げセンサは、1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサの発生する曲げが第1及び第2の曲げ信号の増加又は減少を生ぜしめるように、配置されている。
【0027】
本発明による装置の別の構成では、測定手段がねじれの実施前に、第1の曲げセンサの第1の基準曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の基準曲げ信号とを測定し、評価手段が、第1の基準曲げ信号と第2の基準曲げ信号との減算によって特徴的な基準曲げ信号を算出し、算出された特徴的な曲げ信号から特徴的な基準曲げ信号を減算する。
【0028】
上に述べた装置の特徴によって、それに対応する方法の特徴によって得られるのと同じ利点が得られる。
【0029】
本発明による装置の有利な構成ではさらに、第1及び第2の曲げセンサがそれぞれ、それぞれ敏感ゾーンを備えた光ファイバの曲げセンサとして形成されており、敏感ゾーンは各曲げセンサのコア・周壁移行部において次のように、すなわち敏感ゾーンが同じ空間方向を示すように、特に身体内に垂直な又は身体から垂直な同じ空間方向を示すように、形成されている。曲げセンサの敏感領域のこのような特殊な配置形式によって、ねじれによって生じる曲げセンサの曲げの測定時に、高い感度を得ることができる。
【0030】
さらに、本発明による択一的な、身体のねじれを測定する装置では、身体の表面に配置された第1の曲げセンサ及び第2の曲げセンサが設けられていて、1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサの曲げが、第1の曲げ信号の増加と第2の曲げセンサの減少とを生ぜしめるようになっており、
さらに、曲げセンサにおいてねじれによって発生するそれぞれの曲げを、第1の曲げセンサの第1の曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の曲げ信号とを用いて測定する、測定手段と、
ねじれのための特徴的な曲げ信号を、第1の曲げ信号と第2の曲げ信号との加算によって算出する評価手段とが設けられている。
【0031】
この択一的な装置の有利な構成では、測定手段がねじれの実施前に、第1の曲げセンサの第1の基準曲げ信号と第2の曲げセンサの第2の基準曲げ信号とを測定し、評価手段が、第1の基準曲げ信号と第2の基準曲げ信号との加算によって特徴的な基準曲げ信号を算出し、算出された特徴的な曲げ信号から特徴的な基準曲げ信号を減算するように、構成されている。
【0032】
曲げセンサが身体の表面にねじれの軸線に対してほぼ平行に取り付けられていると、有利である。
【0033】
別の構成では、曲げセンサがそれぞれの敏感ゾーンを有していて、該敏感ゾーンのそれぞれの局部的な空間伸張が軸線の方向に配置されている。
【0034】
有利な構成では、評価手段が、ねじれに属するねじれ角を特徴的な曲げ信号を用いて変換関数に基づいて求める。
【0035】
また、測定手段が、それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号を時間に関して測定し、評価手段が、ねじれの時間経過を、それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号のそれぞれの特徴的な曲げ信号の発生によって算出すると、有利である。
【0036】
本発明によるそれぞれの装置のさらに別の構成では、身体が患者の背中として、かつ軸線が患者の脊柱として形成されている。
【0037】
それぞれの装置において、光ファイバの曲げセンサとして形成された曲げセンサが使用されると有利である。
【0038】
上に述べた装置もしくは択一的な装置の特徴によって、それに対応する方法の特徴によって得られるのと同じ利点を得ることができる。
【0039】
最後に本発明はまた、上に述べた装置の特徴のうちの少なくとも1つのを備えた装置もしくは択一的な装置の使用に関するものであって、この場合装置もしくは択一的な装置は、人間の身体部分のねじれ、特に背中のねじれをねじれの軸線として脊柱を利用して測定するするために、使用される。
【0040】
本発明による方法もしくは装置は、脊柱のねじれを測定するために特に効果的に使用することができる。それというのは、それぞれの装置は大量生産品として安価に製造することができ、患者の背中において良好に装着可能であり、しかも患者にとって有害な光線を放射しないからである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術に基づいて公知のねじれセンサを示す図である。
【図2】光ファイバの曲げセンサの透過性変化を曲げ半径に関して示す特性線である。
【図3】2つの曲げセンサを用いて脊柱のねじれを検出される患者を示す図である。
【図4】2つの曲げセンサのそれぞれの透過値の時間的な経過を示す線図である。
【図5】ねじれ角とねじれに対して特徴的な透過値との対応を示す線図である。
【図6】方法を実施する装置の概略図である。
【0042】
図面において、同じ機能及び作用形式を備えたエレメントには、同一符号が使用されている。
【0043】
以下においては、脊柱のねじれを測定する光ファイバの曲げセンサ(Biegesensor)を用いて本発明の実施例を説明する。本発明はしかしながら図示の実施例に制限されるものではない。しかしながら、例えば圧電式の曲げセンサのような如何なる形式の曲げセンサをも、例えばガラスプレート又は木製の立方体のような任意の物体を測定するために使用することができる。光ファイバの曲げセンサによってねじれを測定する以下の実施例では、従って、第1もしくは第2の曲げ信号として、第1もしくは第2の透過値の概念が使用され、特性曲げ信号として特性透過値の言葉が使用されるが、本発明はこのような具体的な構成に制限されるものではない。
【0044】
光ファイバの曲げセンサは例えばUS5097252に基づいて公知である。この公知の構成では、ファイバの1領域にわたって切欠きがファイバに形成され、この領域におけるファイバの曲げ半径の変化時に、ファイバを通る光の透過性(Transmission)が曲げ半径に関連して変化させられる。曲げ半径Rが無限である場合、つまりファイバが当該領域において曲げを有していない、すなわち1/R=0である場合には、基本透過が生じる(図2において起点参照)。ファイバが一方向に曲げられると、ファイバの曲げられていない状態におけるよりもより多くの光が出射(auskoppeln)されるので、基本透過に比べて透過性は減少する(図2において横軸1/Rの0点から左側の区分参照)。すなわち、透過差(Differenztransmission)ΔTは0よりも小さく、ΔT<0である。ファイバが他の方向に曲げられると、切欠きはほぼ消滅し、この領域において光はほとんど出射されず、これによって透過性は基本透過に対して高められる(図2において横軸1/Rの0点から右側の区分参照)。すなわち、透過差ΔTは0よりも大きく、ΔT>0である。以下においては曲げセンサというのは、上に述べたような光ファイバの曲げセンサのことを意味している。従って透過性は、特定領域の曲げの半径Rに関連して示すことができる。
【0045】
例えば患者Pの身体Kである背中のねじれを測定するためには、それぞれ脊柱WI(ねじれの軸線Aで示されている)の左右に、第1の曲げセンサB1と第2の曲げセンサB2とが固定される。図3に示された実施例では曲げセンサはそれぞれ、脊柱に対してほぼ平行に取り付けられる。ほぼ平行というのは本発明では、幾何学的な平行に対する小さな偏差(例えば±1cm)を含む配置状態も平行と呼んでいるからである。図示の構成では切欠き、つまり両曲げセンサの敏感ゾーンZ1,Z2は、背中の平面に対して、背中の向かう方向か又は背中から離れる方向において、つまり同じ空間方向において示されている。図3において切欠きは、背中から離れる方向に配置されている。
【0046】
患者がその背中、ひいては脊柱のねじり運動を実施した後で、それぞれの透過性は、第1及び第2の曲げセンサB1,B2の第1及び第2の透過値T1,T2の形で検出される。この検出が所定の時間tにわたって連続的に実施されると、第1及び第2の透過値T1,T2の透過プロフィールは、例えば図4に示されたように生ぜしめられる。
【0047】
ねじれを検出するためには、第1及び第2の透過値T1,T2から、ねじれにとって特性透過値CTは下記の等式(1)によって算出される:
CT=T1(B1)−T2(B2) (1)
特性透過値CTのこの値は、ねじれの強さのための基準であり、特性透過値CTの正負符号はねじれの方向を示す。第1の曲げセンサB1が、脊柱つまりねじれの軸線Aの左に取り付けられ、第2の曲げセンサB2が右に取り付けられている場合、下記の表がねじれの方向を示し、この場合方向は図3において相応な矢印LもしくはRで示されている:
特性透過値CTの正負符号 ねじれの方向
CT>0 左 L
CT<0 右 R
有利な構成では、ねじれの測定を実施するために、特性透過値CTの調整(Kalibrierung)が実施され、これによって特性透過値CTは、ねじれのない身体の位置では値0を示す。そのために第1及び第2の基準曲げ信号もしくは基準透過値BT1,BT2がねじれの前に測定され、これらの信号もしくは値から初めに等式(1)に応じて調整値、つまり特性基準曲げ信号BCTが算出される、つまり、
BCT=BT1(B1)−BT2 (B2)。
【0048】
次いで、ねじれ運動後におけるねじれの測定時に、特性基準曲げ信号BCTが、第1の透過値T1に対する第2の透過値T2の差から引かれ、これによってねじれから背中の中止状態において値0を得ることができる。これは下記の等式(3)によって示すことができる:
CT=T1(B1)−T2(B2)−BCT (3)
さらに、特性透過値CTにはねじれ角TRを対応させることができ、この場合特性透過値CTの値によって、ねじれ角TRの値を規定し、かつ特性透過値CTの正負符号によって、ねじれ角TRの正負符号もしくは方向を規定することができる。図5には例として変換関数UFが示されており、この変換関数UFによって特性透過値CTの値をねじれ角TRの値に変換することができる。この変換関数は、使用される曲げセンサの固有特性に合わせられねばならない。図5の例では特性透過値CTの値及びねじれ角TRの値は、互いに一次関数の関係にある。一般的に変換関数を用いて、ねじれ角TRへの特性透過値CTの線形化(Linearisierung)を行うことができる。この例ではねじれ角の正負符号は、特性透過値CTの正負符号と同一である。
【0049】
対を成す第1及び第2の透過値のためのねじれもしくはねじれ角を計算すると共に、ねじれ及びねじれ角は時間に関しても算出されて、例えばディスプレイにアウトプットされる。この場合時間に関して測定された第1及び第2の透過値の各対のために、ねじれもしくはねじれ角が算出されて、時間に関する図又は表として示される。
【0050】
図6には曲げセンサを用いた身体のねじれを測定する装置が示されており、この場合曲げセンサは光ファイバの曲げセンサとして形成されていて、ねじれ運動後における第1の曲げセンサの第1の透過値及び第2の曲げセンサの第2の透過値を測定するための測定手段と、第2の透過値から第1の透過値を引くことによってねじれに対して特徴的な透過値を算出するための評価手段とを備えている。測定手段及び/又は評価手段はさらに、少なくとも1つの拡大による方法を構成するために、形成されている。測定手段及び/又は評価手段は、ソフトウエアにおいて、ハードウエアにおいて及び/又は、ソフトウエアとハードウエアとの組合せにおいて形成されていることができる。
【0051】
本発明は実施例に基づいて詳しく説明をした。図示の実施例の他に、本発明の枠内においては種々様々な変化実施例が可能である。例えば特徴的な曲げ信号は、第2の曲げ信号からの第1の曲げ信号の減算によって算出することも可能である。さらに、曲げセンサのそれぞれの敏感ゾーン、つまり、曲げが曲げセンサによって測定可能である空間方向は、逆向きの空間方向に方向付けられていてもよく、このような構成では、特徴的な曲げ信号は第1の曲げ信号と第2の曲げ信号との加算によって算出されることができる。また、図面に示された個々の実施例は、組み合わせて使用することも可能である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げセンサ(B1,B2)を用いて身体(K)のねじれを測定する方法であって、曲げセンサが身体(K)の表面に配置されており、
下記のステップ、すなわち、
ねじれによって生じる、曲げセンサ(B1,B2)のその都度の曲げを、第1の曲げセンサ(B1)の第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の曲げ信号(T2)とを用いて測定し、
ねじれのために特徴的な曲げ信号(CT)を、第2の曲げ信号(T2)からの第1の曲げ信号(T1)の減算によって算出する、
というステップを特徴とする、曲げセンサ(B1,B2)を用いて身体(K)のねじれを測定する方法。
【請求項2】
1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサ(B1,B2)の発生する曲げが、第1及び第2の曲げ信号(T1,T2)の増加又は減少を生ぜしめる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ねじれの実施前に、第1の曲げセンサ(B1)の第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の基準曲げ信号(BT2)とを測定し、
特徴的な基準曲げ信号(BCT)を第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の基準曲げ信号(BT2)との減算によって生ぜしめ、
ねじれの実施後に、算出された特徴的な曲げ信号(CT)から特徴的な基準曲げ信号(BCT)を減算する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
曲げセンサ(B1,B2)を用いて身体(K)のねじれを測定する方法であって、曲げセンサが身体(K)の表面に配置されており、
下記のステップ、すなわち、
ねじれによって生じる、曲げセンサ(B1,B2)のその都度の曲げを、第1の曲げセンサ(B1)の第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の曲げ信号(T2)とを用いて測定し、この際に1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサ(B1,B2)の曲げが、第1の曲げ信号(T1)の増加を生ぜしめ、第2の曲げ信号(T2)の減少を生ぜしめ、
ねじれのために特徴的な曲げ信号(CT)を、第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げ信号(T2)との加算によって算出する、
というステップを特徴とする、曲げセンサ(B1,B2)を用いて身体(K)のねじれを測定する方法。
【請求項5】
ねじれの実施前に、第1の曲げセンサ(B1)の第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の基準曲げ信号(BT2)とを測定し、
特徴的な基準曲げ信号(BCT)を第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の基準曲げ信号(BT2)との加算によって生ぜしめ、
ねじれの実施後に、算出された特徴的な曲げ信号(CT)から特徴的な基準曲げ信号(BCT)を減算する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
身体(K)の表面にねじれの軸線(A)に対してほぼ平行に取り付けられた曲げセンサ(B1,B2)を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
軸線(A)の方向においてそれぞれ局部的な空間伸張を備えたそれぞれの敏感ゾーン(Z1,Z2)を有する曲げセンサ(B1,B2)を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ねじれに属するねじれ角(TR)を特徴的な曲げ信号(CT)を用いて変換関数(UF)に基づいて求める、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号(T1,T2)を時間(t)に関して測定し、
ねじれの時間経過を、それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号(T1,T2)のそれぞれの特徴的な曲げ信号(CT)の発生によって算出する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
身体(K)が患者の背中であり、軸線(A)が患者の脊柱である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
光ファイバの曲げセンサとして形成された曲げセンサを使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
特徴的な曲げ信号の算出前に、それぞれの曲げ信号の重み付けを実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
身体(K)のねじれを測定する装置であって、
下記の手段、すなわち、
身体(K)の表面に配置された第1の曲げセンサ(B1)及び第2の曲げセンサ(B2)と、
曲げセンサ(B1,B2)においてねじれによって発生するそれぞれの曲げを、第1の曲げセンサ(B1)の第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の曲げ信号(T2)とを用いて測定する、測定手段(M1)と、
ねじれのための特徴的な曲げ信号(T1)を、第2の曲げ信号(T2)からの第1の曲げ信号(T1)の減算によって算出する評価手段(M2)とが設けられていることを特徴とする、身体(K)のねじれを測定する装置。
【請求項14】
第1及び第2の曲げセンサ(B1,B2)は、1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサ(B1,B2)の発生する曲げが第1及び第2の曲げ信号(T1,T2)の増加又は減少を生ぜしめるように、配置されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
測定手段(M1)がねじれの実施前に、第1の曲げセンサ(B1)の第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の基準曲げ信号(BT2)とを測定し、
評価手段(M2)が、第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の基準曲げ信号(BT2)との減算によって特徴的な基準曲げ信号(BCT)を算出し、算出された特徴的な曲げ信号(CT)から特徴的な基準曲げ信号(BCT)を減算する、請求項13又は14記載の装置。
【請求項16】
第1及び第2の曲げセンサ(B1,B2)がそれぞれ、それぞれ敏感ゾーン(Z1,Z2)を備えた光ファイバの曲げセンサとして形成されており、敏感ゾーン(Z1,Z2)は各曲げセンサ(B1,B2)のコア・周壁移行部において次のように、すなわち敏感ゾーン(Z1,Z2)が同じ空間方向を示すように、特に身体(K)内に垂直な又は身体(K)から垂直な同じ空間方向を示すように、形成されている、請求項13から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
身体(K)のねじれを測定する装置(V)であって、
身体(K)の表面に配置された第1の曲げセンサ(B1)及び第2の曲げセンサ(B2)が設けられていて、1つの同じ空間方向における第1及び第2の曲げセンサ(B1,B2)の曲げが、第1の曲げ信号(T1)の増加と第2の曲げセンサ(T2)の減少とを生ぜしめるようになっており、
さらに、曲げセンサ(B1,B2)においてねじれによって発生するそれぞれの曲げを、第1の曲げセンサ(B1)の第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の曲げ信号(T2)とを用いて測定する、測定手段(M1)と、
ねじれのための特徴的な曲げ信号(T1)を、第1の曲げ信号(T1)と第2の曲げ信号(T2)との加算によって算出する評価手段(M2)とが設けられていることを特徴とする、身体(K)のねじれを測定する装置。
【請求項18】
測定手段(M1)がねじれの実施前に、第1の曲げセンサ(B1)の第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の曲げセンサ(B2)の第2の基準曲げ信号(BT2)とを測定し、
評価手段(M2)が、第1の基準曲げ信号(BT1)と第2の基準曲げ信号(BT2)との加算によって特徴的な基準曲げ信号(BCT)を算出し、算出された特徴的な曲げ信号(CT)から特徴的な基準曲げ信号(BCT)を減算する、請求項17記載の装置。
【請求項19】
曲げセンサ(B1,B2)が身体(K)の表面にねじれの軸線(A)に対してほぼ平行に取り付けられている、請求項13から18までのいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
曲げセンサ(B1,B2)がそれぞれの敏感ゾーン(Z1,Z2)を有していて、該敏感ゾーン(Z1,Z2)のそれぞれの局部的な空間伸張が軸線(A)の方向に配置されている、請求項13から19までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
評価手段(M2)が、ねじれに属するねじれ角(TR)を特徴的な曲げ信号(CT)を用いて変換関数(UF)に基づいて求める、請求項13から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
測定手段(M1)が、それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号(T1,T2)を時間(t)に関して測定し、
評価手段(M2)が、ねじれの時間経過を、それぞれ対を成す第1及び第2の曲げ信号(T1,T2)のそれぞれの特徴的な曲げ信号(CT)の発生によって算出する、請求項13から21までのいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
身体(K)が患者の背中であり、軸線(A)が患者の脊柱である、請求項13から22までのいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
光ファイバの曲げセンサとして形成された曲げセンサが使用される、請求項13から22までのいずれか1項記載の装置。
【請求項25】
請求項13から24までのいずれか1項記載の装置(V)の使用であって、人間の身体部分のねじれ、特に背中のねじれをねじれの軸線として脊柱を利用して測定する装置が使用されることを特徴とする、身体のねじれを測定する装置の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−508133(P2010−508133A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535592(P2009−535592)
【出願日】平成19年10月21日(2007.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009196
【国際公開番号】WO2008/052682
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】