説明

書画カメラ装置

【課題】
読み取り台周辺の照度変動に伴う画像の輝度変動を抑制した書画カメラ装置を提供する。
【解決手段】
読み取り台6上に載置した被写体5を撮影する撮影部1と、撮影部が撮影した画像の濃度を制御する制御部2を備え、該制御部2は、撮影部1が撮影した画像を格納する入力画像メモリ7と、入力画像メモリ7に格納した画像を用いて前記被写体周辺の照度変動を判定する照度変動判定手段9と、前記画像に濃度補正を施す濃度補正処理手段11と、濃度補正処理手段11により補正処理を施した画像または前記入力画像メモリ7に格納した画像を切り換えて出力する出力切り換え手段10を備え、前記照度変動判定手段9は、被写体周辺の照度変動有りを判定したとき、出力切り換え手段10を制御して濃度補正処理手段11により濃度補正された画像を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書画カメラ装置に係り、特に周辺の照度変動に伴う画像の輝度変動を抑制した書画カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
会議などで用いるプレゼンテーション用機器として、書画カメラ装置が用いられている。書画カメラ装置は、読み取り台上に資料等の被写体を置き、被写体の画像を上方から撮影して読取り、読み取った画像をプロジェクタを介してスクリーン上に投影する。
【0003】
しかし、このような従来の書画カメラ装置では、読取台上の被写体を撮像する際、装置周辺の照度変動の影響受ける。このため、照度変動が生じたとき、その影響により投射する画像の輝度が変わるという問題があった。
【0004】
この問題に対して、特許文献1には、カメラで撮像した映像信号の輝度不均一を検出することで照度むらを検出し、この検出結果に応じて映像信号のレベルを補正し、さらに照明光源の照度を制御することにより照度むらを補正することが示されている。
【0005】
また、特許文献2には、読取った画像から検査領域内の輝度値を測定し、この測定値を元に照度変動の有無を判定し、判定結果に応じて読み取り装置のゲインを再設定することが示されている。
【特許文献1】特開2004−214714号公報
【特許文献2】特開2004−178352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される構成を書画カメラ装置に適用する場合、各書画カメラ装置毎に照度むらを検出し、この検出結果に応じて映像信号のレベルを補正するための手段および照明光源の照度を制御する手段を実装しなければならず、コストが上昇する。また、専用の照明も必要とされるため、その分装置の設置に余分なスペースが必要となる。
【0007】
また、特許文献2に示される装置では、読取った画像内から規定された検査領域の輝度値を測定し、そのデータを用いて照度変動判定を行っている。この場合、利用者の身体あるいは物の等の影が検査領域に入った場合等において誤動作することがある。また、照度変動が生じた場合、変動を検出したのち、再度画像の読取を行うことになるため、処理効率が低下する。
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、周辺の照度変動に伴う画像の輝度変動を抑制した書画カメラ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0010】
読み取り台上に載置した被写体を撮影する撮影部と、撮影部が撮影した画像の濃度を制御する制御部を備え、該制御部は、撮影部が撮影した画像を格納する入力画像メモリと、入力画像メモリに格納した画像を用いて前記被写体周辺の照度変動を判定する照度変動判定手段と、前記画像に濃度補正を施す濃度補正処理手段と、濃度補正処理手段により補正処理を施した画像または前記入力画像メモリに格納した画像を切り換えて出力する出力切り換え手段を備え、前記照度変動判定手段は、被写体周辺の照度変動有りを判定したとき、出力切り換え手段を制御して濃度補正処理手段により濃度補正された画像を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上の構成を備えるため、周辺の照度変動に伴う画像の輝度変動を抑制した書画カメラ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る書画カメラ装置を説明する図である。書画カメラ装置は、撮影部1および制御部2を備える。撮影部1は、被写体を撮影する書画カメラ装置のカメラヘッド3、カメラヘッド3を支持する支柱4、被写体5を載置するための読取台6を備える。
【0013】
制御部2は、照度変動判定手段9、濃度補正処理手段11、出力切り替え手段10、入力画像格納メモリ7、および補正画像格納メモリ8を備える。照度変動判定手段9は、読み取り台の、例えば被写体載置位置の外側部分に任意の固定色で均一に着色された複数のマークを読み取り、照度変動の有無を判定する。濃度補正処理手段11は、後述するように、濃度補正処理を行うために補正対象の画像から最大輝度値で平滑化された画像(画像MAX)と最小輝度値で平滑化された画像(画像MIN)を作成し、それらを用いて補正対象画像内の各画素に対して濃度値の補正を行う。出力切り替え手段10は、照度変動判定手段9による判定結果が装置周辺の照度変動ありである場合は、補正画像格納メモリ8内に格納した画像をプロジェクタ等にに外部出力する。また、判定結果が装置周辺の照度変動なしである場合は、入力画像格納メモリ7内に格納した画像をプロジェクタ等に外部出力する。
【0014】
また、入力画像格納メモリ7は、カメラヘッドにより読み取った被写体画像を格納する。また、補正画像格納メモリ8は、照度変動判定手段9による判定結果が装置周辺の照度変動ありである場合に、入力画像格納メモリ7に格納した入力画像をコピーして格納する。
【0015】
図2は、図1に示す書画カメラ装置における処理の手順を説明する図である。まず、ステップ12において、読み取り台6上に載置した被写体5をカメラヘッド3を介して読み取る。ステップ13において、読み取った画像を入力画像格納メモリ7に格納する。ステップ14において、入力画像格納メモリ7に格納した画像を用いて、読み取り台6等の装置周辺の照度変動を判定する(この判定処理の詳細については後述する)。
【0016】
次に、ステップ15において、前記の照度変動判定結果が、装置周辺の照度変動ありである場合は、ステップ16に進み、ステップ16において、入力画像格納メモリ7内に格納した画像を補正画像格納メモリ8に格納(コピー)する。その後、ステップ17において、濃度補正処理手段11により、補正画像格納メモリ8内の画像に対する濃度補正処理を行う(濃度補正処理の詳細については後述する)。
【0017】
ステップ18において、ステップ15における照度変動判定結果が装置周辺の照度変動ありである場合は、補正画像格納メモリ8内に格納した画像をプロジェクタ等にに外部出力する。また、ステップ15における照度変動判定結果が装置周辺の照度変動なしである場合は、入力画像格納メモリ7内に格納した画像をプロジェクタ等に外部出力する。
【0018】
図3は照度変動判定手段の処理の詳細を説明する図であり、図4は、読み取り台、および読み取り台に形成したマーク(検出マーク)を説明する図である。
【0019】
ここで、前記カメラヘッド3は被写体のサイズに係わらず読み取り台6の全域を撮影するものとする。また、読み取り台の被写体載置位置の外側部分には、図4に示すように、任意の固定色で均一に着色された複数個(M個)のマーク61があるものとする。
【0020】
画像読取を開始する前に、環境を基準とする照度に設定し、この環境下における前記マークの輝度値Pを予め記憶しておく。
【0021】
図3において、まず、ステップ19において、入力画像格納メモリに格納されている画像から前記M個のマークの検出を行い、検出された各マークの輝度値を測定する。このとき人の手や物等の障害物の影響でn個のマークが検出に失敗したとする。次に、ステップ20において、検出に成功したM−n個のマークについてそれらの輝度値の平均値Qを求める。ステップ21において、前記記憶した輝度値Pと輝度値の平均値Qとを比較し、それらの差分が予め定めた閾値αより大きい場合は、ステップ22において、基準とする照度環境から照度が変動したと判定し、閾値αより小さい場合は、ステップ23において、照度は変動していないと判定し、ステップ24において判定結果を返す。この方法では、障害物によってマークの検出に失敗することを考慮して複数箇所のマークを参照するため、ロバストな照度変動判定処理を行うことができる。
【0022】
図5,6,7,8,9は、濃度補正処理手段の処理を説明する図であり、図5は濃度補正処理を説明するフローチャート、図6は画像MAXあるいは画像MINの生成処理を説明する図、図7は画像縮小処理を説明する図、図8は画像平滑化処理を説明する図、図9は画像拡大処理を説明する図である。
【0023】
濃度補正処理手段11は、まず、図6に示すように、濃度補正処理を行うため、補正対象画像から最大輝度値で平滑化された画像(画像MAX)と最小輝度値で平滑化された画像(画像MIN)を作成し、これらの画像を用いて補正対象画像内の各画素に対して輝度値の補正を行う。以下、この処理を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
図5において、ステップ25において補正対象画像を1/Lに平均化縮小処理し、画像Sを作成する。平均化縮小処理は、図7に示すように、画像をL×Lのブロックで区分し、ブロック毎にブロック内の画素の平均輝度値を算出し、その平均輝度値を持つ画素を生成する。次に、ステップ26において、前記画像Sを1/Lに最大輝度値で縮小処理し、画像Uを作成する。最大輝度値での縮小処理は図7に示すように、画像をL×Lのブロックに区分し、ブロック毎にブロック内の最大輝度値を検出し、検出した最大輝度値を持つ画素を生成する。次にステップ27において画像Sを1/Lに最小輝度値で縮小し、画像Vを作成する。最小輝度値での縮小処理は図7に示すように、画像をL×Lのブロックに区分し、ブロック毎にブロック内の最小輝度値を検出し、検出した最小輝度値を持つ画素を生成する。
【0025】
次にステップ28において、画像Uに対して最大輝度値で平滑化処理を実施し、画像U’を作成する。最大輝度値での平滑化処理は図8に示すように、注目画素を中心とするL’×L’のブロック内の最大輝度値を検出し、検出した輝度値を注目画素の輝度値とする。次に、ステップ29において画像Vに対して最小輝度値で平滑化処理を実施し、画像V’を作成する。最小輝度値での平滑化処理は図8に示すように、注目画素を中心とするL’×L’のブロック内の最小輝度値を検出し、検出した輝度値を注目画素の輝度値とする。 次にステップ30において、画像U’をL倍に拡大し、画像U’’を作成する。拡大処理は図9に示すように、L×Lブロック内の画素を画像U’内の画素の輝度値で埋めることで行う。次に、ステップ31において同様に画像V’をL倍に拡大し画像V’’を作成する。
【0026】
次にステップ32において画像U’’を再度L倍に拡大し、画像MAXを作成する。同様にステップ33において画像V’’を再度L倍に拡大し、画像MINを作成する。
【0027】
次にステップ34において、補正対象画像内の各画素に対して画像MAX、画像MIN、および式(1)を用いて画素の濃度値の補正を行い、画像Wを作成し、ステップ35において画像Wを出力する。
【0028】
このように、補正対象画像から最大輝度値で平滑化された画像(画像MAX)と最小輝度値で平滑化された画像(画像MIN)を作成し、更に、これらの画像および(1)式を用いて補正対象画像内の各画素に対して輝度値の補正を行う。
【数1】

【0029】
なお、(1)式では、画素毎に画像MAXの輝度値と画像MINの輝度値との差(Max−Min)に従って動的に輝度値の引き上げを行うため、画像内の濃淡のコンストラストを維持しつつ画像濃度の補正を行うことができる。また、本実施形態では、すべての処理をソフトウェアで行うことができる。このため、ハードウェアに対してゲインあるいはカメラの露光時間の再設定等を行うことが不要となる。すなわち、読み取り台6上に載置した被写体5をカメラで一度読み取るのみで、画像読取を行うための準備、および補正処理をすべて行うことができる。
【0030】
また、画像読取を開始する前に、環境を基準とする照度に設定し、この環境下において読み取り台の被写体載置位置の外側部分に配置した複数のマークを読み取り、照度変動の有無を判定する。このため、前記マークの検出に失敗した場合においても、照度変動の有無を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る書画カメラ装置を説明する図である。
【図2】図1に示す書画カメラ装置における処理の手順を説明する図である。
【図3】照度変動判定手段の処理の詳細を説明する図である。
【図4】読み取り台、および読み取り台に形成した読み取りマークを説明する図である。
【図5】濃度補正処理を説明するフローチャートである。
【図6】画像MAXあるいは画像MINの生成処理を説明する図である。
【図7】画像縮小処理を説明する図である。
【図8】画像平滑化処理を説明する図である。
【図9】画像拡大処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 撮影部
2 制御部
3 カメラヘッド
4 支柱
5 被写体
6 読み取り台
7 入力画像格納メモリ
8 補正画像格納メモリ
9 照度変動判定手段
10 出力切り替え手段
11 濃度補正処理手段
61 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取り台上に載置した被写体を撮影する撮影部と、撮影部が撮影した画像の濃度を制御する制御部を備え、
該制御部は、撮影部が撮影した画像を格納する入力画像メモリと、
入力画像メモリに格納した画像を用いて前記被写体周辺の照度変動を判定する照度変動判定手段と、
前記画像に濃度補正を施す濃度補正処理手段と、
濃度補正処理手段により補正処理を施した画像または前記入力画像メモリに格納した画像を切り換えて出力する出力切り換え手段を備え、
前記照度変動判定手段は、被写体周辺の照度変動有りを判定したとき、出力切り換え手段を制御して濃度補正処理手段により濃度補正された画像を出力することを特徴とする書画カメラ装置。
【請求項2】
請求項1記載の書画カメラにおいて、
濃度補正処理手段は、補正画像格納メモリを備え、該補正画像格納メモリに入力画像メモリから複写した画像を用いて濃度補正処理を施すことを特徴とする書画カメラ装置。
【請求項3】
請求項1記載の書画カメラにおいて、
前記読み取り台の被写体を載置する面の周辺には照度を検出するための複数の検出マークを備え、照度変動判定手段は前記画像に含まれる検出マークをもとに照度変動の有無を判定することを特徴とする書画カメラ装置。
【請求項4】
読み取り台上に載置した被写体を撮影する撮影部と、撮影部が撮影した画像の濃度を制御する制御部を備え、該制御部により、撮影部が撮影した画像濃度を被写体周辺の照度の変動に係わらず一定に制御する書画カメラ装置の制御方法において、
撮影した画像を入力画像メモリに格納するステップと、
入力画像メモリに格納した画像を用いて、前記読み取り台上に載置した被写体周辺の照度の変動の有無を判定するステップと、
照度変動有りを判定したとき、補正画像格納メモリに入力画像メモリから画像を複写するステップと、
補正画像格納メモリに複写された画像を用いて濃度補正処理を施すステップとを備えたことを特徴とする書画カメラ装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の書画カメラ装置の制御方法において、
前記照度の変動の有無を判定するステップは、前記読み取り台の被写体を載置する面の周辺に配置した照度を検出するための複数の検出マークを撮影した画像をもとに照度変動の有無を判定することを特徴とする書画カメラ装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4記載の書画カメラ装置の制御方法において、
濃度補正処理は、補正対象画像から最大輝度値で平滑化された画像と最小輝度値で平滑化された画像を作成するステップと、最大輝度値で平滑化された画像と最小輝度値で平滑化された画像との輝度値の差に従って輝度値の引き上げを行うステップを備えたことを特徴とする書画カメラ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−157155(P2006−157155A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340791(P2004−340791)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】