説明

書類照合装置、画像形成装置、及び書類照合プログラム

【課題】照合対象となる原稿からランダムパターンの特徴量を抽出するための照合領域の位置を特定する精度を向上し、照合時間を短縮する。
【解決手段】読取部24によって原稿の原稿画像、及び用紙のランダムパターンを読取データとして読み取り、記憶部32に原本毎に記憶された原本の登録データの内から、基準画像を読み出して、読み出した基準画像と読取データとを比較して、画像マッチングを行う。一致した場合には、基準画像に設定した基準位置を基準として定めた照合領域の位置を示す位置情報を記憶部32から読み出して、照合領域34の位置を特定する。特定した領域からランダムパターンの特徴量を抽出し、原本の登録データの特徴量と照合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類照合装置、画像形成装置、及び書類照合プログラムにかかり、特に、書類の原本性を確認するための書類照合装置、画像形成装置、及び書類照合プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、各種の権利書、保険証書、住民票、出生証明書、保証書、旅券、銀行券、機密文書等の紙文書や、IDカード等といった原本であることに何らかの価値がある書類は、偽造防止のために、特殊紙を用いると共にマークや地紋を印刷したり、特殊な磁気インクを用いて印刷したり、書類に光半導体を混合したり、特殊なハーフトーン印刷により不可視情報を埋め込んだり等の偽造することのできない特殊な処置を施すことが行われている。
【0003】
一方、高度に情報化された社会においては、上述したような各種書類に含まれる内容が電子化され、それらを印刷して利用する場面が想定される。そのため、一般利用者がインターネット等のネットワークを介して上記電子化された内容を入手し、それを任意のプリンタで印刷して印刷物を有価証券や証明書類等として用いる場合もある。
【0004】
プリンタで印刷された書類が原本であるか否かを確認するために上記のような特殊な処理を施すことは、高コストになると共に処理が複雑になる。このため、原本となる用紙の所定領域から、用紙を形成する植物繊維が不定形に絡み合った状態で植物繊維が作り出すランダムなパターン画像の特徴量を抽出して記憶しておき、照合対象となる書類の所定領域から抽出したパターン画像の特徴量と記憶しておいた特徴量とを比較することにより原本性を確認する紙識別照合装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
このように、所定領域の画像から抽出した特徴量を用いて照合を行う場合には、照合対象となる原稿において、記憶してある原本の特徴量を抽出した領域と同一の場所を観測領域として特定する必要がある。このため、特許文献1の紙識別照合装置では、用紙の角や予め設けたマークを起点とし、この起点を中心とする円内や、この起点を頂点とした四角形領域を観測領域として特定している。
【特許文献1】特開2004−102562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、照合対象となる原稿からランダムパターンの特徴量を抽出するための照合領域の位置を特定する精度を向上し、照合時間を短縮することができる書類照合装置、画像形成装置、及び書類照合プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の書類照合装置は、原稿を読み取り読取データを出力する読取手段と、植物繊維が絡み合って形成されたランダムパターンを有する用紙を用いて作成された原本の画像形成領域の一部分を含む基準画像、該基準画像に設定した基準位置を基準として定めた照合領域の位置を示す位置情報、及び前記照合領域のランダムパターンの特徴量を記憶した記憶手段から得られる前記基準画像と、前記読取データとを比較し、前記読取データの中に前記基準画像に対応するデータが含まれている場合に、前記原稿の前記基準位置に対応する位置を基準として前記原稿における前記照合領域に対応する位置を特定する特定手段と、前記特定手段で特定された位置に基づいて、前記読取データから前記照合領域に対応する領域のランダムパターンの特徴量を抽出し、抽出したランダムパターンの特徴量と前記原本のランダムパターンの特徴量とを照合し、前記原稿が前記原本か否かを判断する判断手段と、を含むものである。
【0008】
また、本発明の書類照合装置は、前記読取手段により前記原本を読み取ることにより得られた読取データから前記記憶手段に記憶する前記原本の前記基準画像、及び前記ランダムパターンの特徴量を抽出することができる。
【0009】
また、本発明の書類照合装置は、前記原本の前記画像形成領域を検知する検知手段を更に備え、該検知手段の検知結果に基づいて前記原本の前記基準画像を抽出することができる。
【0010】
また、本発明の書類照合装置を画像形成装置に設けることができる。
【0011】
また、本発明の書類照合プログラムは、コンピュータを、植物繊維が絡み合って形成されたランダムパターンを有する用紙を用いて作成された原本の画像形成領域の一部分を含む基準画像、該基準画像に設定した基準位置を基準として定めた照合領域の位置を示す位置情報、及び前記照合領域のランダムパターンの特徴量を記憶した記憶手段から得られる前記基準画像と、原稿を読み取る読取手段より出力された読取データとを比較し、前記読取データの中に前記基準画像に対応するデータが含まれている場合に、前記原稿の前記基準位置に対応する位置を基準として前記原稿における前記照合領域に対応する位置を特定する特定手段と、前記特定手段で特定された位置に基づいて、前記読取データから前記照合領域に対応する領域のランダムパターンの特徴量を抽出し、抽出したランダムパターンの特徴量と前記原本のランダムパターンの特徴量とを照合し、前記原稿が前記原本か否かを判断する判断手段と、して機能させるものである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1に係る書類照合装置によれば、照合対象となる原稿からランダムパターンの特徴量を抽出するための照合領域の位置を特定する精度を向上し、照合時間を短縮することができる、という効果が得られる。
【0013】
請求項2に係る書類照合装置によれば、原本のランダムパターンの特徴量の記憶、及び原稿の読取りを1つの装置で行うことができる、という効果が得られる。
【0014】
請求項3に係る書類照合装置によれば、照合領域を特定するために基準となる基準画像を適切に抽出することができ、より照合領域の位置を特定する精度を向上させることができる、という効果が得られる。
【0015】
請求項4に係る画像形成装置によれば、照合対象となる原稿からランダムパターンの特徴量を抽出するための照合領域の位置を特定する精度を向上し、照合時間を短縮して画像を形成することができる、という効果が得られる。
【0016】
請求項5に係る書類照合プログラムによれば、照合対象となる原稿からランダムパターンの特徴量を抽出するための照合領域の位置を特定する精度を向上し、照合時間を短縮することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、本発明の書類照合装置10を複合機12に設けた場合について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の構成を示すブロック図である。複合機12は、書類照合装置10、スキャナ14、出力部16、及び複合機制御部18を含んで構成されている。
【0019】
スキャナ14は、インタフェイスを介して複合機制御部18と接続されている。スキャナ14では、原稿台にセットされた原稿画像を読み取り、読み取った画像について、文字、及び画像からなる画像データを作成し、この画像データを複合機制御部18へ送信する。なお、ここで原稿台としては、自動原稿送り装置(ADF)を適用することもできる。
【0020】
出力部16は、図示しないレーザダイオード、ポリゴンミラー、及びレンズ等の光学部品で構成された露光装置と、感光体、帯電器、及び現像器等の電子写真プロセス器と、記録紙の給紙を行う給紙ユニットと、給紙された記録紙を搬送する搬送装置、及び画像が形成された記録紙を排出する排出ユニットを含む記録紙搬送部とを備え、インタフェイスを介して複合機制御部18と接続されている。
【0021】
出力部16では、複合機制御部18から送信された画像データに基づいて、露光装置のレーザダイオードからレーザビームを発振させ、帯電器により一様に帯電された感光体上にこのレーザビームを照射して静電潜像を形成し、現像器からトナーを供給して静電潜像を現像した後、給紙ユニットから供給された記録紙に所定の文字または画像を含むトナー像を転写し、記録する。
【0022】
複合機制御部18は、スキャナ14から送信された画像データを受信し、受信した画像データを出力部16へ送信する。また、複合機制御部18は、複合機12を構成する各部への各種情報の入出力や、複合機12の駆動等を制御する。
【0023】
書類照合装置10は、表示操作部20、制御部22、読取部24、及び記憶部32を備えている。
【0024】
表示操作部20には、タッチパネル付表示装置を使用し、後述する原本照合処理の結果が表示される。また、表示操作部20には、複合機12の機能等を示す文字や図形のイメージからなるオブジェクトとしてのボタンが表示される。これらのボタンは入力手段として機能し、ユーザの指等でボタンを選択することで機能の設定等種々の操作を行なうための入力を行うことができる。表示操作部20は、制御部22と接続されている。
【0025】
なお、本実施の形態では、表示操作部20としてタッチパネル付表示装置を使用しているが、画面上のマウスの操作により移動するポインタを用いて入力するようなものでも良い。また、テンキーやスタートキー等のハードキーを設けて、ハードキーを押下することにより入力を行うようにしても良い。
【0026】
制御部22は、後述する原本登録処理ルーチン、及び照合処理ルーチン等の各種プログラムやパラメータ等が記憶された記憶媒体としてのROM(Read Only Memory)、各種プログラムを実行するCPU(中央演算装置)、及びCPUによる各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)を備えている。
【0027】
図2は、読取部24の構成を示す概略図である。読取部24は、複合機12の用紙の搬送路に設けられ、用紙に対して光を照射する照明部26と、照明部26により照射され、かつ用紙を透過した透過光を受光する受光部28とを含んで構成されている。また、読取部24が設けられている位置に対応する搬送路には窓部30が設けられている。読取部24は、照明部26により光を照射し、受光部28により、窓部30、及び用紙を透過した透過光を受光することで、原稿画像、及び用紙のランダムパターンを読み取るものである。
【0028】
照明部26は、図2に示されるように、光を出力する光源26B、及び光源26Bから照射された光を用紙方向へ案内する光導波路光学系26Aを含んで構成されている。光源26Bには、例えば、LED、ハロゲンランプ、蛍光灯、又はキセノン放電管等を用いることができる。また、光導波路光学系26Aの代わりに、用紙方向に光を集光する集光レンズを用いることもできる。
【0029】
受光部28は、受光量に応じた信号を出力する多数の受光素子が配列されたCCD等で構成されたエリアセンサである撮像素子28B、照明部26により照射されて用紙を透過した透過光を撮像素子28Bの受光面に結像させるレンズユニット28A、及び撮像素子28Bから出力された信号をデジタルデータに変換して出力する信号処理回路(図示省略)を含んで構成されている。
【0030】
用紙は、植物繊維質材料で形成されており、植物繊維の絡み具合は、図3に示されるようにランダムである。読取部24は、この植物繊維が絡み合って形成されたランダムパターンが示す濃淡情報を用紙の固有の特徴を示す特徴情報として読み取る。
【0031】
記憶部32は、読取部24により読み取られた後述する画像マッチングに用いる基準画像、位置情報、及び用紙のランダムパターンの特徴量を記憶するもので、例えば、大容量の記憶領域を有するハードディスクドライブ等の不揮発性メモリによって構成される。この記憶部32への記憶によって原本の登録がなされる。記憶部32は、書類照合装置10に直接設けても良いし、外部装置としての原本管理用サーバに設け、ネットワークを介して書類照合装置10と接続しても良い。
【0032】
次に、図4、及び図5を参照して、本実施の形態の原本登録の処理ルーチンについて説明する。本処理は、ユーザによる表示操作部20の操作で、原本登録のメニューが選択されることにより開始する。
【0033】
ステップ100で、登録しようとする原本が、所定のセット位置にセットされたか否かを判断する。この判断は、原本が所定のセット位置にセットされたことをセンサで検知して行っても良いし、表示操作部20のスタートキーをユーザが押下することにより入力される入力信号が入力されたか否かで判断するようにしても良い。原本がセットされた場合は、ステップ102へ進み、セットされない場合は、セットされるまで待機する。
【0034】
ステップ102で、原本をセット位置から読取部24まで搬送し、読取部24によって原本の原稿画像、及び用紙のランダムパターンを読み取る。読取部24で読み取った原本の原稿画像、及び用紙のランダムパターンを読取データとして、一旦、ワークエリアとしてのRAMに記憶する。
【0035】
次に、ステップ104で、読取データからランダムパターンの特徴量を抽出するための領域(照合領域)34の位置が決定しているか否かを判断する。用紙の中で画像形成が行われている領域(画像形成領域)36では、インクやトナー等の影響によりランダムパターンが適切に読み取れない場合もあるので、図5に示すように、照合領域34の位置は、画像形成が行われていない領域、すなわち用紙の余白部分とすることが好ましい。照合領域34の決定は、例えば、読み取った原稿画像を表示操作部20に表示し、表示操作部20からユーザが所望の領域をタッチ操作で入力したり、例えば用紙の左上の角からの距離を表示操作部20のテンキーで入力したりして決定することができる。この入力による入力信号が入力された場合には、肯定されてステップ106へ進む。入力されない場合は、入力されるまで待機する。
【0036】
ステップ106で、RAMに記憶しておいた読取データからステップ104で決定した照合領域34のランダムパターンの特徴量を抽出し、一旦、RAMに記憶する。
【0037】
次に、ステップ108で、後述する照合処理の際に画像マッチングに用いる基準画像を抽出する処理を実行する。図6は、基準画像抽出処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0038】
ステップ200で、直角部分を備えた所定形状(例えば、四角形、扇形、三角形等)のウィンドウ42を設け、ウィンドウ42の直角部分の頂点が用紙の予め定められた角(例えば左上の角)に一致し、かつ直角部分を形成する2辺が用紙の2辺に一致するように、読取りデータに対してウィンドウ42を設定する。ウィンドウ42の直角部分の頂点を起点38として、このウィンドウ42を相似形を保ったまま所定画素ピッチで拡大する。これによって、ウィンドウ42は、図5の矢印方向に拡大されていく。
【0039】
次に、ステップ202で、ウィンドウ42内の読取画像データに基づいてエッジ抽出を行い、エッジが抽出された場合には、ウィンドウ42内に画像形成領域の一部分が含まれたと判断して、ステップ204へ進み、エッジが抽出されない場合には、ステップ200へ戻って、エッジが抽出されるまでウィンドウ42の拡大処理を継続する。
【0040】
ステップ204で、相似形を保ったままウィンドウ42をさらに拡大し、抽出されたエッジがウィンドウ42の中心に一致するまでウィンドウ42を拡大したところで、ウィンドウ42の拡大を中止する。
【0041】
次に、ステップ206で、ウィンドウ42の拡大を中止したときのウィンドウ42内の画像を基準画像として切り出して、一旦、RAMに記憶し、リターンする。
【0042】
次に、図4のステップ110へ進み、後述する照合処理で、照合領域34の位置を特定する際に用いる位置情報を算出する。位置情報は、例えば、基準画像を切り出した際のウィンドウ42の起点38の対角の点を基準画像の基準位置46として設定し、基準位置46を原点として、基準画像を切り出した際のウィンドウ42の1辺をx軸方向、直交する1辺をy軸方向とし、基準位置46から照合領域34の基点44までのx軸方向、及びy軸方向の距離で表した座標(x,y)として算出することができる。
【0043】
次に、ステップ112で、RAMに記憶しておいたランダムパターンの特徴量、基準画像、及び算出した位置情報を原本の登録データとして、不揮発性の記憶部32に記憶して、処理を終了する。記憶部32には、例えば、図7に示すような形式で、原本毎に原本の登録データが記憶される。
【0044】
次に、図8を参照して、原本照合の処理ルーチンについて説明する。本処理は、ユーザによる表示操作部20の操作で、原本照合のメニューが選択されることにより開始する。
【0045】
ステップ300で、照合しようとする原稿が、所定のセット位置にセットされたか否かを判断する。この判断は、原稿が所定のセット位置にセットされたことをセンサで検知して行っても良いし、表示操作部20のスタートキーをユーザが押下することにより入力される入力信号が入力されたか否かで判断するようにしても良い。原稿がセットされた場合は、ステップ302へ進み、セットされない場合は、セットされるまで待機する。
【0046】
ステップ302で、原稿をセット位置から読取部24まで搬送し、読取部24によって原稿の原稿画像、及び用紙のランダムパターンを読み取る。読取部24で読み取った原稿の原稿画像、及び用紙のランダムパターンを読取データとして、一旦、ワークエリアとしてのRAMに記憶する。
【0047】
次に、ステップ304で、記憶部32に原本毎に記憶された原本の登録データの内から、基準画像を1つ読み出す。例えば、図7に示す登録データが記憶部32に記憶されている場合には、1つ目の基準画像として基準画像1を読み出す。
【0048】
次に、ステップ306で、基準画像1を切り出したときのウィンドウ42と同じ大きさのウィンドウ42を、読取データの用紙のいずれか1つの角に対応する部分に設定し、その角と基準画像1を切り出したときのウィンドウ42の起点38に対応する基準画像の点を一致させて、ウィンドウ42内の読取データと基準画像1とを比較することにより画像マッチングを行う。
【0049】
次に、ステップ308で、ステップ306での比較が一致したか否かを判断する。一致しない場合は、ステップ310へ進み、読取データ上の用紙の角4箇所全てのデータと基準画像1との画像マッチングを終了したかを判断する。まだ他の角のデータとの画像マッチングを行っていない場合には、ステップ312へ進む。なお、一致するか否かの判断は、データが完全に一致する場合だけでなく、データの類似の度合いを示す類似度が所定値以上の場合にも、一致する、と判断するようにしても良い。
【0050】
ステップ312で、いずれか1つの角にウィンドウ42の起点38を一致させて設定したウィンドウを別の角に設定することにより、ウィンドウ42内の読取データと基準画像との比較箇所を変更し、変更した箇所に合わせて基準画像を回転させる。例えば、左上の角から右上の角へ比較箇所を変更した場合には、基準画像1を右へ90°回転させて、ステップ306へ戻って、右上の角にウィンドウ42を設定し、ウィンドウ42内の読取データと回転させた基準画像1とを比較することにより画像マッチングを行う。ステップ308で、一致しない場合には、4箇所全て終了するまで繰り返し、4箇所全て終了した場合には、ステップ310で肯定されて、ステップ314へ進む。
【0051】
ステップ314で、記憶部32に登録されている原本の登録データの全てについて、基準画像と読取データとの画像マッチングを行ったかを判断する。図7に示す登録データの場合には、まだ画像マッチングを行っていないデータが残っているので、否定されてステップ304へ戻り、次の基準画像として基準画像2を読み出し、ステップ306で読取データとの画像マッチングを行う。このように順次基準画像を読み出して読取データとの画像マッチングを行い、読取データの対応箇所と一致した場合には、ステップ308で肯定されて、ステップ316へ進み、基準画像nまで画像マッチングを行っても一致しない場合には、ステップ314で肯定されて、ステップ326へ進む。
【0052】
ステップ316で、読取データの対応箇所と一致した基準画像と対応して記憶部32に記憶されている位置情報を記憶部32から読み出して、照合領域34を特定する。例えば、基準画像2が読取データの対応箇所と一致した場合には、位置情報として(x2,y2)を読み出し、基準画像の基準位置46の位置から、x軸方向へx2、y軸方向へy2の距離にある点を照合領域34の基点44と特定し、基点44を頂点とする所定範囲の四角形領域を照合領域34として特定する。
【0053】
次に、ステップ318で、読取データからステップ316で特定された照合領域34のランダムパターンの特徴量を抽出する。
【0054】
次に、ステップ320で、読取データの対応箇所と一致した基準画像と対応して記憶部32に記憶されている特徴量、例えば上記の例では特徴量2を記憶部32から読み出して、読み出した特徴量とステップ318で抽出した特徴量とを照合する。
【0055】
次に、ステップ322で、ステップ320での照合が一致したか否かを判断する。一致した場合は、ステップ326へ進み、一致しない場合は、ステップ324へ進む。ここで一致しない場合とは、それぞれ別個の原本ではあるが、基準画像が同一の場合である。なお、一致するか否かの判断は、特徴量が完全に一致する場合だけでなく、特徴量の類似の度合いを示す類似度が所定値以上の場合にも、一致する、と判断するようにしても良い。
【0056】
ステップ324で、記憶部32に記憶されている原本の登録データの全てについて照合を行ったか否かを判断する。まだ照合を行っていない原本の登録データがある場合には、ステップ304へ戻って、基準画像と読取データとの画像マッチングから繰り返す。全ての登録データについて照合が終了した場合には、ステップ326へ進む。
【0057】
ステップ326で、照合の結果を表示操作部20に表示する。ステップ322で肯定されてステップ326へ進んだ場合には、照合した原稿が原本に相違ない旨の表示を行い、ステップ314及びステップ324で肯定されてステップ326へ進んだ場合には、照合した原稿が原本ではない、または原本の登録がなされていない旨の表示を行って、処理を終了する。
【0058】
このように、画像形成領域の一部分を含む基準画像の画像マッチングを行って、基準画像に設定した基準位置を基準として照合領域の位置を特定するため、照合時に照合対象の原稿をセット位置にセットする方向に関わらず照合領域の位置を適切に特定することができる。また、用紙の角や予め設けたマークを基準として特定する場合に比べて、用紙自体やマーク部分の破損や汚れ等の影響を受けにくいため、照合領域の位置を適切に特定することができる。よって、照合領域の位置を特定する精度を向上し、照合時間を短縮することができる。
【0059】
また、原本の登録時に画像形成領域の一部を含む基準画像を抽出するために、画像形成領域を検知する検知手段を設けたことにより、より適切な基準画像を抽出することができ、照合領域をより適切に特定することができるため、照合領域の位置を特定する精度をより向上することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、登録時に、原本を読取部24で読み取った読取データから基準画像を抽出することとしたが、これに限られるものではない。例えば、ネットワークを介して接続されたパーソナルコンピュータ等から送信された画像データ、テキストデータ、及びコマンドデータ等を含む印刷データを、描画イメージとなるラスタデータへ展開したデータを読取データとし、ここから基準画像を抽出しても良い。これにより、送信された印刷データに基づいて複合機12の出力部16で画像形成を行う際に、書類照合装置10により原本の登録を行うことができる。
【0061】
また、本実施の形態では、基準画像を切り出すためにウィンドウ42を拡大するとき、抽出されたエッジがウィンドウ42の中心に一致するまでウィンドウ42を相似形を保ったまま拡大することとしたが、照合処理の画像マッチングに用いる基準画像として適切な範囲を切り出すことができれば、これに限られるものではない。
【0062】
また、本実施の形態では、用紙の角を起点38としてウィンドウ42を拡大する例について説明したが、図9(a)に示すように、用紙の予め定められた1辺の中央の点を起点として、図中の矢印方向へウィンドウを相似形を保ったまま拡大しても良い。この場合、画像マッチングは、まず、用紙の予め定められた1辺の中央(例えば、図9(a)に示すように左辺の中央)に対応する部分にウィンドウ42を設定し、ウィンドウ内の読取データと基準画像とを比較することにより行う。一致しない場合は、基準画像を所定方向、例えば右へ90°回転させて、用紙の上の辺の中央に対応する部分にウィンドウ42を設定して画像マッチングを行う。このように、次は用紙の右の辺、その次は用紙の下の辺というように隣接する辺について、順次基準画像を回転させて、全部で4箇所の画像マッチングを行う。また、同図(b)に示すように、用紙の中央を起点とし、図中の矢印方向へウィンドウを相似形を保ったまま拡大しても良い。この場合、画像マッチングは、用紙の中央の対応する部分にウィンドウ42を設定し、ウィンドウ内の読取データと基準画像とを比較することにより行う。一致しない場合は、基準画像を例えば、右へ90°回転させて、用紙の中央の対応する部分にウィンドウ42を設定して画像マッチングを行う。このように、用紙の中央の対応する部分で、全部で4方向の画像マッチングを行う。
【0063】
また、本実施の形態では、照合領域34を、基点44を頂点とする四角形領域としたが、これに限られるものではない。例えば、起点44を中心とした円形領域とすることもできる。
【0064】
また、本実施の形態では、基準画像に設定した基準位置を原点としたxy軸座標として位置情報を算出する例について説明したが、これに限られるものではなく、基準画像に設定した基準位置を基準として照合領域の位置が特定できるものであれば良い。
【0065】
また、本実施の形態では、画像照合装置10の読取部24として、透過光を用いて読み取りを行う例について説明したが、反射光を用いて読み取りを行うものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の読取部の一例を示す概略構成図である。
【図3】紙の繊維のランダムパターンの一例を示す画像である。
【図4】本実施の形態の原本登録の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】読取データの一例を示す概略図である。
【図6】基準画像抽出処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】原本の登録データの一例を示す図である。
【図8】本実施の形態の照合の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】ウィンドウ設定の他の例を説明するための線図である。
【符号の説明】
【0067】
10 書類照合装置
12 複合機
14 スキャナ
16 出力部
18 複合機制御部
20 表示操作部
22 制御部
24 読取部
26 照明部
26A 光導波路光学系
26B 光源
28 受光部
28A レンズユニット
28B 撮像素子
30 窓部
32 記憶部
34 照合領域
36 画像形成領域
38 ウィンドウの起点
42 ウィンドウ
44 照合領域の基点
46 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取り読取データを出力する読取手段と、
植物繊維が絡み合って形成されたランダムパターンを有する用紙を用いて作成された原本の画像形成領域の一部分を含む基準画像、該基準画像に設定した基準位置を基準として定めた照合領域の位置を示す位置情報、及び前記照合領域のランダムパターンの特徴量を記憶した記憶手段から得られる前記基準画像と、前記読取データとを比較し、前記読取データの中に前記基準画像に対応するデータが含まれている場合に、前記原稿の前記基準位置に対応する位置を基準として前記原稿における前記照合領域に対応する位置を特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された位置に基づいて、前記読取データから前記照合領域に対応する領域のランダムパターンの特徴量を抽出し、抽出したランダムパターンの特徴量と前記原本のランダムパターンの特徴量とを照合し、前記原稿が前記原本か否かを判断する判断手段と、
を含む書類照合装置。
【請求項2】
前記読取手段により前記原本を読み取ることにより得られた読取データから前記記憶手段に記憶する前記原本の前記基準画像、及び前記ランダムパターンの特徴量を抽出する請求項1に記載の書類照合装置。
【請求項3】
前記原本の前記画像形成領域を検知する検知手段を更に備え、該検知手段の検知結果に基づいて前記原本の前記基準画像を抽出する請求項2に記載の書類照合装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の書類照合装置を有する画像形成装置。
【請求項5】
コンピュータを、
植物繊維が絡み合って形成されたランダムパターンを有する用紙を用いて作成された原本の画像形成領域の一部分を含む基準画像、該基準画像に設定した基準位置を基準として定めた照合領域の位置を示す位置情報、及び前記照合領域のランダムパターンの特徴量を記憶した記憶手段から得られる前記基準画像と、原稿を読み取る読取手段より出力された読取データとを比較し、前記読取データの中に前記基準画像に対応するデータが含まれている場合に、前記原稿の前記基準位置に対応する位置を基準として前記原稿における前記照合領域に対応する位置を特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された位置に基づいて、前記読取データから前記照合領域に対応する領域のランダムパターンの特徴量を抽出し、抽出したランダムパターンの特徴量と前記原本のランダムパターンの特徴量とを照合し、前記原稿が前記原本か否かを判断する判断手段と、
して機能させるための書類照合プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−118394(P2009−118394A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291989(P2007−291989)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】