説明

最初のIII族−窒化物種晶からの熱アンモニア成長による改善された結晶性のIII族−窒化物結晶を生成するための方法

本発明は、高品質のIII族−窒化物ウェハーを作製する方法を開示し、この方法は、最初の欠陥がある種晶から熱アンモニア成長法により生成されるインゴットの結晶の性質において、改善をもたらす。湾曲した種結晶上で生成されるインゴットの、注意深く選ばれた領域から次の種晶を得ることにより、次のインゴットの結晶の性質は改善され得る。具体的には、上記の次の種晶は、クラックの入ったインゴット上の応力緩和の区画または注意深く選ばれたN−極圧縮区画から選ばれるとき、最適化される。この種晶がスライスされるとき、3°〜10°のミスカットが引き続く成長の構造の質の改善に役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本出願は、2008年6月4日に出願された「Methods For Producing Improved Crystallinity Group III−Nitride Crystals From Initial Group III−Nitride Seed By Ammonothermal Growth」と題された米国特許出願番号第61/058,900号(発明者 Edward Letts,Tadao Hashimoto,およびMasanori Ikari)に対する優先権の利益を主張し、この全体の内容は、下記全てに表すように、本明細書中で参照により援用される。
【0002】
本出願は、以下の米国特許出願:
2005年7月8日に出願された、Kenji Fujito、Tadao Hashimoto、およびShuji Nakamuraによる、「METHOD FOR GROWING GROUP III−NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA USING AN AUTOCLAVE」と題された、代理人管理番号30794.0129−WO−01(2005−339−1)であるPCT通常特許出願番号US2005/024239号;
2007年4月6日に出願された、Tadao Hashimoto、Makoto Saito、およびShuji Nakamuraによる、「METHOD FOR GROWING LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA AND LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS」と題された、代理人管理番号30794.179−US−U1(2006−204)の米国通常特許出願番号第11/784,339号(この出願は、2006年4月7日に出願された、Tadao Hashimoto、Makoto Saito、およびShuji Nakamuraによる、「A METHOD FOR GROWING LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA AND LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS」と題された、代理人管理番号30794.179−US−P1(2006−204)である米国仮特許出願第60/790,310号の米国特許法§119(e)に基づく利益を主張する);
2007年9月19日に出願された、Tadao HashimotoおよびShuji Nakamuraによる、「GALLIUM NITRIDE BULK CRYSTALS AND THEIR GROWTH METHOD」と題された、代理人管理番号30794.244−US−P1(2007−809−1)である米国通常特許出願番号第60/973,602号;
2007年10月25日に出願された、Tadao Hashimotoによる、「METHOD FOR GROWING GROUP III−NITRIDE CRYSTALS IN A MIXTURE OF SUPERCRITICAL AMMONIA AND NITROGEN, AND GROUPIII−NITRIDE CRYSTALS GROWN THEREBY」と題された、代理人管理番号30794.253−US−U1(2007−774−2)の米国通常特許出願番号第11/977,661号;
2008年2月25日に出願された、Tadao Hashimoto、Edward Letts、Masanori Ikariによる、「METHOD FOR PRODUCING GROUPIII−NITRIDE WAFERS AND GROUP III−NITRIDE WAFERS」と題された、代理人管理番号62158−30002.00の米国通常特許出願番号第61/067,117号;
に関連し、これらの出願は本明細書中で参照により援用される。
【背景技術】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、インゴットを切断し、そして加工することと組み合わされた熱アンモニア法を用いて、最初のIII族−窒化物種晶から結晶の質を向上させる、III族−窒化物ウェハーの生成方法に関する。
【0004】
2.既存の技術の説明
(注:本特許出願は、括弧内の数字を用いて示されるような(例えば、[x])、いくつかの刊行物および特許を参照する。これらの刊行物および特許の一覧は「参考文献」と題された項に見出され得る。)
窒化ガリウム(GaN)およびその関連するIII族合金は、種々の光学電子デバイスおよび電子デバイス(例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、マイクロ波力トランジスター、およびソーラーブラインド(solar−blind)光検出器)のための鍵となる物質である。現在、LEDは、携帯電話、標識、ディスプレイに広く用いられ、そしてLDはデータ保存ディスクドライブに用いられる。しかし、これらのデバイスの大部分は(サファイアおよびシリコンカーバイドのような)不均一基材上でのエピタクシャル成長させられる。III族−窒化物のヘテロエピタクシャル成長は、高度に欠損したまたはクラックさえもあるフィルムを生じ、このような欠陥またはクラックは(一般照明用の高輝度LEDまたは高出力マイクロ波トランジスターのような)高性能な光学素子および電子素子の実現を妨げる。
【0005】
ヘテロエピタクシャル成長に固有の問題のほとんどは、バルクのIII族−窒化物結晶インゴットから切り取られた単結晶性III族−窒化物ウェハーのホモエピタクシャル成長を、ホモエピタクシーのために、かわりに用いることで回避され得た。単結晶性GaNウェハーの伝導性の調節は比較的容易であり、そして単結晶性GaNウェハーは素子層に最小の格子/熱不整合性を与えることから、これらのデバイスの大部分に対して、単結晶性GaNウェハーは好まれる。しかし、最近では、均一成長のために必要とされるGaNウェハーは、ヘテロエピタクシャル基材と比べて、大変高価である。このことは、III族−窒化物結晶インゴットの高い融点、および高温での高い窒素蒸気圧のために、III族−窒化物結晶インゴットを成長させることが困難であったためである。高圧高温合成[1,2]およびナトリウムフラックス(flux)[3,4]のような溶融したGaを用いる成長法が、GaN結晶を成長させるために提案されている。それにも関わらず、溶融したGaを用いて成長した結晶形は、薄い板状である。これは溶融したGaが窒素の低い溶解度を有し、かつ窒素の低い拡散係数を有するためである。
【0006】
高圧のアンモニアを溶媒として用いる溶液成長法である、熱アンモニア法は実際のバルクのGaNインゴットの成功した成長を達成するために用いられている[5]。熱アンモニア成長は、大きなGaN結晶インゴットを成長させるための可能性を有する。何故なら、高圧アンモニアは、GaN多結晶または金属Gaのような原料物質の高い溶解度および溶解した前駆体の高い移動速度を含む、流動媒体としての利点を有するからである。
【0007】
最近では、最新技術の熱アンモニア法[6〜8](特許文献1〜3)は、大きなインゴットを生成するための種結晶に依存する。歪みや欠陥の無い大きな種結晶の欠乏が、直径3インチ以上の高品質バルクGaNインゴットの成長を制限する。異なる方法により生成されたいくつかの可能性のある種晶が存在するが;これらの種晶は小さいか、または欠陥があるかのいずれかである傾向がある。例えば、2インチの自立GaNウェハーはサファイア上またはSiC基材上でのHydride Vapor Phase Epitaxy(ヒドリド気相エピタクシー)(HVPE)により生成されている。GaNとサファイアまたはSiC基材との間の大きな格子不整合性のために、得られるGaN成長は曲がり、湾曲し、そして大きな欠陥密度を有する。HVPEにより生成される自立種晶上での継続した成長は、欠陥のある成長を代表的に生成する。対照的に、高圧合成またはナトリウムフラックス(flux)法により生成されるGaN結晶は、高い品質を有する傾向があるが、限定されたサイズと利用可能性を有する傾向がある。欠陥のある種結晶を改善する方法は、デバイスのための基材としての用途のために適した大きなインゴットの作製の実行可能性を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,656,615号明細書
【特許文献2】国際公開第07/008,198号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0234946号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
入手可能な欠陥のある種晶の成長に固有の問題に対処するために、本発明は、熱アンモニア法により成長したIII族−窒化物結晶の結晶の質を改善するための、3つの異なる方法を包含する、新規成長スキームを開示する。GaNと代表的なヘテロエピタクシャル基材の格子不整合性により、ヘテロエピタクシャル法により生成される種結晶は、+c方向に沿ったc−面格子に、1mの代表的な湾曲半径を有する凹面の湾曲を示す。しかし、発明者らは、これらの種結晶上での熱アンモニア法によるGaNの引き続く成長は、湾曲方向の反転をもたらすことを発見した。したがって、Ga極(0001)表面でのGaNは引張応力のもとで成長し、一方、N極(000−1)表面でのGaNは圧縮のもとで成長する。N極表面上での圧縮は、クラッキングを防ぎ、そして連続的な配向成長を可能にする。さらに、湾曲方向を反転させる前に、適切な成長厚さを選択することにより、非常に平坦な結晶を得ることが可能である。熱アンモニア法によりIII族−窒化物のインゴットが成長した後、そのインゴットは、約0.1mmと約2mmとの間の厚さのウェハーへとスライスされる。カット表面が結晶面に沿わず、結晶面に対して角度が付くように、最適化された位置、配向、およびミスカット(miscut)でN極成長からカットすることにより、得られるウェハーは、引き続く成長のための改善された種晶として用いられ得、その後、引き続く成長は、制限された湾曲および減少した応力を有する。
【0010】
比較によると、Ga極表面上での成長は、クラックが入る傾向がある。より低い歪みおよび湾曲を有する種晶を得る別の方法は、クラッキングが起こった最初のインゴットのGa極(0001)面上のクラックがない小さな領域を取り出すことである。クラッキングは周辺の成長領域における応力を緩和する。応力が緩和した領域の一つを種結晶として取り出すことにより、引き続くインゴットの成長は、最初の種結晶と比較して改善された結晶の質を提供する。
【0011】
最後に、最初の種結晶から改善された結晶の質を有する種結晶を生成するためのひとつの方法が開示され、そしてこの方法は、以前のインゴットから取り出される、特定の結晶配向を有するウェハー上で、それぞれ生成される一連のインゴットの成長により達成され得る。
【0012】
ここで参照される図は、参照番号のように、全体を通して対応する部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】III:窒化物ウルツ鉱結晶格子の第一の結晶面。左図は歴史的に使用されるc−面であり、右図は非極性のa−面およびm−面である。
【図2】熱アンモニア法によるGaN成長のN−極ファセットの顕微鏡写真。N−極ファセット上での400μmの成長後にはクラッキングは観察されない。スケールバーは100μmと同じである。
【図3】可能な種結晶上での湾曲プロフィールおよび得られる成長の予測される湾曲プロフィールの誇張された説明図である。
【図4】熱アンモニア法によるGaN成長のGa−極ファセットの顕微鏡写真。Ga−極ファセット上での400μmの成長後にはクラッキングが観察される。スケールバーは100μmと同じである。
【図5】一連のインゴットの中で最初のインゴットに対する、熱アンモニア成長前の種晶のc−面成長配向の図(左)および熱アンモニア成長後の種晶のc−面成長配向の図(右)。線はインゴットから配向したウェハーをスライスするワイヤーの方向を示す。
【図6】一連のインゴットの中で第二のインゴットに対する、熱アンモニア成長前の種晶のa−面成長配向の図(左)および熱アンモニア成長後の種晶のa−面成長配向の図(右)。線はインゴットから配向したウェハーをスライスするワイヤーの方向を示す。
【図7】一連のインゴットの中で第三のインゴットに対する、熱アンモニア成長前の種晶のa−面成長配向の図(左)および熱アンモニア成長後の種晶のa−面成長配向の図(右)。線はインゴットから配向したウェハーをスライスするワイヤーの方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
好ましい実施形態の以下の説明において、参照は、本明細書の一部を形成する添付の図面に対してなされ、そして、本発明が実施され得る特定の実施形態が、図示という手段により、図中に示される。本発明の範囲から離れることなく、他の実施形態が用いられ得、そして構造の変化がなされ得ることが理解されるべきである。
【0015】
(発明の技術的な説明)
本発明は、III族−窒化物ウェハー、主としてGaN、AlNおよびInNのような、少なくとも一つのIII族元素(B、Al、GaおよびIn)を含むIII族−窒化物単結晶ウェハーを生成するための方法を提供する。III族−窒化物インゴットは、流動媒体として高圧NHを用い、III族元素を含有する栄養源(nutrient)、およびIII族−窒化物の単結晶である種結晶を用いる熱アンモニアにより成長する。高圧アンモニアは、栄養源の高い溶解度および溶解した前駆体の高い移動速度を提供する。III族−窒化物インゴットが成長した後、ワイヤー鋸、ダイシング鋸を用いる機械的な切断、またはレーザー切断によるような慣用的な手段を用いて、これらのインゴットは、約0.1mmと約2mmの間の範囲の厚さのウェハーへとスライスされる。問題のIII族−窒化物の結晶構造は、図1に示される重要なファセット(c−面、m−面およびa−面)を有するウルツ鉱結晶構造を有する。
【0016】
一つの例において、III族−窒化物の結晶を成長させるための方法は、以下の工程:
(a)熱アンモニア法により、元の種結晶上でIII族−窒化物のインゴットを成長させる工程;
(b)上記のインゴットからウェハーをスライスする工程;
(c)元の種結晶の窒素極側から取り出したウェハーを、引き続く熱アンモニア法によるインゴットの成長のための新しい種結晶として用いる工程;
を包含する。
【0017】
例えば、上記のIII族−窒化物はGaNであり得る。
【0018】
上記の元の種結晶は、望ましくは、ヘテロエピタクシャル析出プロセスを用いて、形成され得る。
【0019】
上記の方法はまた、引き続いて成長したインゴットから新しいウェハーをスライスする工程および、これらの新しいウェハーを、新しいインゴットの引き続く熱アンモニア成長における種晶として用いる工程を包含する。
【0020】
したがって、上記の方法は、以下:
最初の種結晶と比較したとき、上記のスライス方向に沿った結晶格子の湾曲の改善;
上記の新しい種晶の歪みが、上記の最初の種結晶から減少すること;
上記の最初の種結晶の結晶性より結晶性が改善されること;
上記のスライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、上記の最初の種結晶から反転されること;
上記のスライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、上記の最初の種結晶より改善されること;
新しい種晶の歪みが、上記の最初の種結晶から減少すること;および/または
上記の最初の種結晶より結晶性が改善されること
を提供する条件下で実行され得る。
【0021】
上記のいずれの例においても、ウェハーは、上記の成長した結晶のc−面から3°〜15°ずれた面で上記のインゴットからスライスされ得る。
【0022】
このスライスは形成され、以下:
上記のスライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、上記の最初の種結晶より改善されること;
新しい種晶の歪みが、上記の最初の種結晶から減少すること;および/または
上記の最初の種結晶より結晶性が改善されること
を提供しうる。
【0023】
III族−窒化物の結晶を成長させるための付加的な方法は以下の工程:
(a)いくつかのクラッキングが生じるまで、熱アンモニア法により、元の種結晶上でIII族−窒化物のインゴットを成長させる工程;
(b)上記のインゴットからクラックの無い領域を分離する工程;および
(c)上記の分離された領域を、引き続くインゴットの成長のための新しい種晶として用いる工程;
を包含する。
【0024】
例えば、上記のIII族−窒化物はGaNであり得る。
【0025】
上記の元の種結晶は、必要に応じて、GaNのようなIII族−窒化物を形成するためのヘテロエピタクシャル析出プロセスを用いて、形成され得る。
【0026】
さらに、上記の方法は、引き続いて成長したインゴットから新しいウェハーをスライスする工程および、これらのウェハーを、新しいインゴットの引き続く熱アンモニア成長における種晶として用いる工程を包含する。
【0027】
これらの方法のいずれも、以下:
上記のスライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、上記の最初の種結晶より改善され;
上記の新しい種晶の歪みが、上記の最初の種結晶から減少し;そして/または
上記の最初の種結晶の結晶性より結晶性が改善される条件下で実行され得る。
【0028】
ウェハーは、c−面から3°〜15°ずれた面で上記のインゴットからスライスされ得、そして必要に応じて、このウェハーは新しいインゴットの熱アンモニア成長における種物質として用いられ得る。
【0029】
III族−窒化物の結晶を成長させるための第三の方法は、以下の工程:
(a)熱アンモニアにより、種結晶のc−ファセット上でインゴットを5mmより厚い厚さまで成長させる工程;
(b)a−面または半極性面に沿って上記のインゴットをスライスし、種晶を形成する工程;
(c)上記のa−面種晶または半極性面種晶を用いて、新しいインゴットを成長させる工程;
(d)a−面または半極性面に沿って上記の新しいインゴットをスライスする工程;および
(e)上記の最初の種結晶のいかなる元の物質を含有しない、a−面ウェハーまたは半極性面ウェハーを用いて、さらなる新しいインゴットを成長させる工程;
を包含し得る。
【0030】
この方法は、a−面スライスのみを用いても、または半極性面スライスのみを用いても実行され得、あるいはこの方法は、一つのインゴットに対して一つのスライス方向を用い、そして後のインゴットに対して別のスライス方向を用いて、実行され得る。
【0031】
例えば、上記のIII族−窒化物はGaNであり得る。
【0032】
これらの例のいずれかにおける方法は、上記の工程(e)において得られるインゴットをスライスして、c−面ウェハーを生成する工程をさらに包含し得る。
【0033】
この方法は
上記のスライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、上記の最初の種結晶より改善され;
上記の新しい種晶の歪みが、上記の種結晶から減少し;そして/または
上記の最初の種結晶より結晶性が改善される、条件下で実行され得る。
【0034】
+c方向においてc−面格子が凸状に湾曲するGaNウェハーが形成され得る。
【0035】
これらのGaNウェハーはc−面である底面および10°以内のミスカットを有し得る。
【0036】
これらのGaNウェハーはm−面である底面および10°以内のミスカットを有し得る。
【0037】
これらのGaNウェハーはa−面である底面および10°以内のミスカットを有し得る。
【0038】
以下のさらなる詳細な説明は、詳細な手順を記載し、本発明のさらなる理解において助けとなる。
【実施例】
【0039】
(方法1)
1インチの内径を有する反応容器を熱アンモニア成長のために用いた。全ての必要な原料および内部の要素を、上記の反応容器と一緒にグローブボックス中に入れた。一つの成長時において、これらの要素としては、10gの多結晶性GaN栄養源(Niメッシュのかご状容器に置かれる)、0.34mm厚の単結晶性c−面GaN種晶および流れを制限するための6個のバッフルが挙げられた。最初のGaN種晶は、サファイア上でのHVPEにより生成し、この方法は、上記の種結晶の湾曲および歪みを引き起こした。上記のグローブボックスを窒素で満たし、そして酸素濃度および水分濃度を1ppm未満に保持した。鉱化剤は酸素および水分に反応性があるため、上記の鉱化剤は常時グローブボックス中に保存した。受け取ったままの4gのNaNHを鉱化剤として用いた。上記の反応容器中へと鉱化剤を入れた後、種晶および栄養源とともに6個のじゃま板を入れた。反応容器のふたを閉めた後、反応容器をグローブボックスから取り出した。その後、この反応容器をガス/真空系に接続した。この系は容器を脱気し、そしてNHを容器へと供給することが可能である。初めに、ターボ分子ポンプを用いて、反応容器を脱気し、1×10−5mbar未満の圧力に達した。この実施例に対して実際に達した圧力は1.2×10−6mbarであった。この方法において、反応容器の内壁に残存する酸素および水分を部分的に除いた。この後、液体窒素で反応容器を冷却し、そして反応容器中にNHを凝縮させた。反応容器中に40gのNHを入れた。反応容器の高圧バルブを閉じた後、反応容器を、二区画の炉に移した。結晶化区画を575℃そして溶解区画を510℃に調節する前に、反応容器を結晶化区画で510℃に加熱し、そして溶解区画において550℃で最初の24時間加熱した。8日後、アンモニアを開放し、そして反応容器を開けた。成長したGaNインゴットの全厚は1.30mmであった。
【0040】
Ga極表面上の成長の顕微鏡図はクラッキングを示したが、N−極表面はクラッキングを示さず、そして相対的に平坦な表面を示した(図2を参照)。N−極表面上で測定された結晶構造は002反射からの一つのピークを示した。このピークのFull Width Half Max(半値全幅)(FWHM)は209アークセカント(arcsec)であった。一方で、Ga−極表面は002反射からの鋭い多重のピーク(2740アークセカントのFWHM)を示した。Ga−極側からのこの鋭い多重のピークは、高品質のグレインが集合していることを示す。異なる極性での成長におけるこの差異は、図3に図示されるように、種結晶の湾曲により生じる。種結晶の湾曲はGa極表面上での成長が、引張応力下であるようにさせ、そしてクラッキングする傾向があるようにする一方で、N極表面上での成長は圧縮力下でのものであり、このことは成長のクラッキングを妨ぐ。
【0041】
最初の種晶の湾曲プロフィールと比較して、N−極成長における湾曲プロフィールは、図3にしめすように、改善された。一つの成長時に、N−極側の格子の湾曲半径は、1.15m(凸状)(これは、種晶の格子湾曲の元の半径である)から130m(凸状)に改善された。
【0042】
次のインゴットのための種晶として、N−極成長として取り出すことにより、湾曲に関する問題は、最小化され得、Ga−極表面上でのクラッキングが存在しない、引き続く成長もまた可能にする。さらに、成長の厚さの最適化は、次のインゴットの改善した結晶性をもたらすはずである。
【0043】
ミスカット基材を種結晶として用いることが、結晶の質を改善するのに役立つこともまた、確認された。一つの成長時に、二種類のミスカット種晶(一つは、c−面から7°それており、そしてもう一つはc−面から3°それている)をもちいて、熱アンモニア成長を行った。上記の元の種晶の002反射からのX−線ロッキングカーブのFWHMは、それぞれ、7°それたものに対しては605アークセカントであり、そして3°それたものに対しては405アークセカントであった。成長後、X−線ロッキングカーブのFWHMは、それぞれ、7°それたものに対しては410アークセカントであり、そして3°それたものに対しては588アークセカントであった。この結果から、約7°程度のミスカットが構造の質を向上させるのに役立つことが確認された。ミスカットは、軸から3°までまたは7°までそれるというよりも、軸から10°までまたは15°までそれ得た。
【0044】
(方法2)
方法1に示されるのと同様な成長条件を用いて、8日間の成長後に、1.3mmの厚さのGaNインゴットを得た。Ga極表面上での成長の顕微鏡図は、図4に示されるようにクラッキングを示す一方で、N極表面はクラッキングを示さず、そして相対的に平らな表面を示した。方法1に対して説明されるように、Ga極側は、多数の高品質のグレインからなる。したがって、クラッキングが起こった後、Ga極表面上での成長の緩和領域を種結晶として取り出すことが、次のインゴットが、最初の種結晶から改善した結晶性を示すことを可能にすることが考えられる。取り出される領域は、約0.1mmと約5.0mmとの間のGa極表面区域を有すると考えられる。
【0045】
(方法3)
上記で議論される熱アンモニア成長技術を用いて、一連のインゴットが生成され得、そして引き続く種晶のための結晶学的方位配列を有する特定の領域を選択することにより、III−窒化物物質の結晶性が改善され得る。不完全なc−面種結晶から開始し、第一のインゴットの最初の成長方向が、図5に示されるように、c−軸に沿う。クラッキング問題のために、Ga極表面上での成長は、連続する成長には適し得ない。上記第一のインゴットを、その後、ワイヤー鋸を用いてスライスし、a−面ウェハーを生成する。その後、a−面ウェハーを種晶として用いることにより、図6に示されるように、熱アンモニア成長技術により、新しいインゴットを生成する。その後、この第二のインゴットをワイヤー鋸を用いてスライスし、a−面ウェハーを生成する。最初の種結晶を含まないウェハーを新しい種晶として選択することにより、図7に示されるように、最初の種結晶を含まない第三のインゴットを生成し得る。その後、この第三のインゴットをワイヤー鋸を用いて任意の所定の配向でスライスし、改善された結晶性の種結晶を生成し得る。
【0046】
この方法は、サイズ、ならびに種晶の転位、湾曲、および歪みの効果を制限することにより、成長を促進する。この方法は、非常に小さならせん状転位の密度および改善された湾曲プロフィールを有するバルク結晶成長を実現する。この方法は改変され、a−面配向のかわりに、半極成長またはm−面成長を用い得る。
【0047】
(利点と改善)
本発明は、改善された結晶構造を有するIII族−窒化物ウェハーの新規生成方法を開示した。いくつかの可能な戦略を用いて、成長したインゴットの特定の領域を、次の種晶として取り出し、最初の種晶と比較して、次のインゴットの質を極端に向上し得る。さらに、結晶の質の極端な改善をもたらし得る一連のインゴットを生成する方法が提案される。これらの改善は、ウェハー上で組み立てられる任意の光学デバイスに対する効率を改善する。
【0048】
(参考文献)
以下の参考文献が、本明細書中で、参照により援用される。
【0049】
【化1】

[6]R.Dwilinski、R.Doradzinski、J.Garczynski、L.Sierzputowski、Y.Kanbara、米国特許第6,656,615号。
[7]K.Fujito、T.Hashimoto、S.Nakamura、国際特許出願番号PCT/US2005/024239、WO07008198。
[8]T.Hashimoto、M.Saito、S.Nakamura、国際特許出願番号PCT/US2007/008743、WO07117689。US20070234946、米国出願番号11/784,339(2007年4月6日出願)を参照のこと。
【0050】
上の参考文献はそれぞれ、本明細書に全て記載されるように、そして熱アンモニア法を用い、かつガリウム窒化物基材を用いる成長方法の説明に関して特に、その全体が参照により援用される。
【0051】
(結論)
この部分は、本発明の好ましい実施形態の説明の結論である。以下に、本発明を完遂するためのいくつかの代替的な実施形態を説明する。
【0052】
好ましい実施形態は、例としてGaNの成長を記載したが、他のIII族−窒化物結晶が本発明において用いられ得る。III族−窒化物物質は少なくとも一つのIII族元素(B、、Al、GaおよびIn)を含み得る。
【0053】
好ましい実施形態において、特定の成長用器具およびスライス用器具が示される。しかし、本明細書中に記載される条件を満たす他の構造またはデザインが、これらの器具の例と同じ利益を有する。
【0054】
本発明は、同じ利益が得られ得る限り、上記のウェハーのサイズにおけるいかなる制限も有さない。
【0055】
上述の本発明の好ましい実施形態の説明が、例示および説明の目的のために示されている。開示される正確な形態に網羅的であること、または本発明を、開示される正確な形態に限定することは意図されない。多くの修正または変形が、上記の教示を考慮して可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明ではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲により限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族−窒化物の結晶を成長させるための方法であって、以下の工程:
(a)熱アンモニア法により、元の種結晶上でIII族−窒化物のインゴットを成長させる工程;
(b)該インゴットからウェハーをスライスする工程;
(c)該元の種結晶の窒素極側から取り出したウェハーを、引き続く熱アンモニア法によるインゴットの成長のための新しい種結晶として用いる工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記III族−窒化物がGaNである、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、ここで、前記元の種結晶がヘテロエピタクシャル析出プロセスを用いて形成された、方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の方法であって、ここで、引き続いて成長した前記インゴットから新しいウェハーをスライスする工程および該新しいウェハーを新しいインゴットの引き続く熱アンモニア成長における種晶として用いる工程をさらに包含する、方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、前記最初の種結晶より改善される、方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記新しい種晶の歪みが、前記最初の種結晶から減少される、方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記最初の種結晶より結晶性が改善される、方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、熱アンモニア法の間に前記最初の種結晶から反転される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、前記最初の種結晶より改善される、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、ここで、前記新しい種晶の歪みが、前記最初の種結晶から減少される、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、ここで、前記最初の種結晶より結晶性が改善される、方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記インゴットからスライスされる前記ウェハーはc−面から3°〜15°ずれる、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、前記最初の種結晶より改善される、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、ここで、前記新しい種晶の歪みが、前記最初の種結晶から減少される、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、ここで、前記最初の種結晶より結晶性が改善される、方法。
【請求項16】
III族−窒化物の結晶を成長させるための方法であって、以下の工程:
(a)いくつかのクラッキングが生じるまで、熱アンモニア法により、元の種結晶上でIII族−窒化物のインゴットを成長させる工程;
(b)該インゴットからクラックの無い領域を分離する工程;
(c)該分離された領域を、引き続くインゴットの成長のための新しい種晶として用いる工程;
を包含する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、ここで、前記III族−窒化物がGaNである、方法。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の方法であって、ここで、前記元の種結晶がヘテロエピタクシャル析出プロセスを用いて形成された、方法。
【請求項19】
請求項16〜請求項18のいずれかに記載の方法であって、そして、引き続いて成長した前記インゴットから新しいウェハーをスライスする工程、および該新しいウェハーを新しいインゴットの引き続く熱アンモニア成長における種晶として用いる工程をさらに包含する、方法。
【請求項20】
請求項16〜請求項19のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、前記最初の種結晶より改善される、方法。
【請求項21】
請求項16〜請求項19のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記新しい種晶の歪みが、前記最初の種結晶から減少される、方法。
【請求項22】
請求項16〜請求項19のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記最初の種結晶より結晶性が改善される、方法。
【請求項23】
請求項16〜請求項22のいずれかに記載の方法であって、ここで、ウェハーはc−面から3°〜15°ずれる面にそって前記インゴットからスライスされる、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記ウェハーを新しいインゴットの熱アンモニア成長における新しい種物質として用いる工程をさらに包含する、方法。
【請求項25】
III族−窒化物の結晶を成長させるための方法であって、以下の工程:
(a)熱アンモニア法により、種結晶のc−ファセット上でインゴットを5mmより厚い厚さまで成長させる工程;
(b)a−面または半極性面に沿って該インゴットをスライスし、種晶を形成する工程;
(c)該a−面種晶または該半極性面種晶を用いて、新しいインゴットを成長させる工程;
(d)該a−面または半極性面に沿って該新しいインゴットをスライスする工程;
(e)該最初の種結晶のいかなる元の物質を含有しない、a−面ウェハーまたは半極性面ウェハーを用いて、さらなる新しいインゴットを成長させる工程;
を包含する、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、ここで、a−面スライスのみが起こる、方法。
【請求項27】
請求項25または請求項27に記載の方法であって、ここで、前記III族−窒化物がGaNである、方法。
【請求項28】
請求項25〜請求項27のいずれかに記載の方法であって、請求項25の工程(e)において得られるインゴットをスライスし、c−面ウェハーを形成する工程をさらに包含する、方法。
【請求項29】
請求項25〜請求項28のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、前記最初の種結晶より改善される、方法。
【請求項30】
請求項25〜請求項28のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記新しい種晶の歪みが、前記最初の種結晶から減少される、方法。
【請求項31】
請求項25〜請求項28のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記最初の種結晶より結晶性が改善される、方法。
【請求項32】
請求項25に記載の方法であって、ここで、半極性面スライスのみが起こる、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記III族−窒化物がGaNである、方法。
【請求項34】
請求項32または請求項33に記載の方法であって、ここで、前記スライス方向に沿った結晶格子の湾曲が、前記最初の種結晶より改善される、方法。
【請求項35】
請求項32または請求項33に記載の方法であって、ここで、前記新しい種晶の歪みが、前記最初の種結晶から減少される、方法。
【請求項36】
請求項32または請求項33に記載の方法であって、ここで、前記最初の種結晶より結晶性が改善される、方法。
【請求項37】
GaNウェハーであって、+c方向に対し凸状のc−面格子の湾曲を有する、GaNウェハー。
【請求項38】
請求項37に記載のGaNウェハーであって、ここで、前記ウェハーの底面が、10°以内のミスカットを有するc−面である、GaNウェハー。
【請求項39】
請求項37に記載のGaNウェハーであって、ここで、前記ウェハーの底面が、10°以内のミスカットを有するm−面である、GaNウェハー。
【請求項40】
請求項37に記載のGaNウェハーであって、ここで、前記ウェハーの底面が、10°以内のミスカットを有するa−面である、GaNウェハー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−507797(P2011−507797A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540958(P2010−540958)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/046316
【国際公開番号】WO2009/149299
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510123264)シックスポイント マテリアルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】