説明

有害物質を含む廃気を浄化するための装置

本発明は、有害物質を含む廃気を浄化するための装置であって、光酸化原理に係る反応段を有するものに関する。この反応段は、管状紫外発光素子が廃気の流れ方向に沿って内側に配置された、少なくとも1つの空気路を含む。廃気路内における分解効率を簡単な方法で高めるために、前記少なくとも1つの空気路の断面が、少なくとも5つの辺を有する正多角形として具体化される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質を含む廃気を廃気ダクトにおいて浄化するための装置に関する。
【0002】
この種の有害物質を含む廃気の浄化装置は、EP 0 778 080 B1より既知である。
【0003】
本発明は、更に、少なくとも1つの空気ダクトを有する廃気ダクトの反応段に関する。この反応段には、管状の紫外発光素子が廃気の流れ方向に対して縦向きに配される。
【0004】
廃気ダクトのこの種の反応段は、JP 07-060058 Aより既知である。
【背景技術】
【0005】
EP 0 778 080 B1より、反応段において、溶剤や臭気物質等の有害物質を、空気路で廃気に高エネルギー短波長紫外光(UVC)を照射することにより光酸化反応させることが知られている。効率度を増すために複数の空気路を平行に配することも、基本的には既知である。有害物質の分解に必要な反応種は、短波長紫外線と廃気との相互作用により作られる。廃気の酸素分子及び水分子による紫外光吸収の結果として、酸化剤であるオゾン・過酸化水素・酸素ラジカル・ヒドロキシルラジカルが作られる。これらの酸化剤は高い酸化電位を有するため、有害物質を酸化することができる。新しいラジカルを作る連鎖反応が起きると、今度は、この新しいラジカルが他の分子を攻撃する。更に、短波長紫外線は、有害物質分子及びその分解生成物により吸収される。光エネルギーの吸収により有害物質はより高いエネルギーレベルに励起されるため、反応種或いは大気酸素と反応するべく活性化される。十分な光エネルギーが供給されると、分子が分解する。有害物質の光分解生成物も又、ヒドロキシルラジカルを形成したり、ラジカル連鎖反応を引き起こす。光励起と活性酸素化合物の存在に起因して、均一気相反応が起きる。
【0006】
このような光酸化反応と併せて、触媒ユニットが上記反応段に接続される。この触媒ユニットにより追加の分解反応が許容されると共に、該ユニットにて余剰オゾンが分解される。こうして、有害ガスであるオゾンが周囲に侵入しないことへの保証が得られる。
【0007】
EP 0 778 070 B1より既知である触媒については、活性炭系触媒が好ましい。使用される活性炭は、内部表面積が約1,200m2/gの高多孔質材料である。この内部表面が反応面として使用される。活性炭の目的は、まず第一に、酸化させ難い化合物を保持し、反応器での保持時間を延ばすことである。これにより、上記化合物の密度が気相よりも高くなるため、活性炭表面における生成された酸素種との反応の効率が高まる。他方、活性炭を後から触媒として使用することで、有害ガスであるオゾンが周囲に侵入しないことへの保証が得られる。つまり、活性炭はオゾンフィルターとして作用する。
【0008】
EP 0 778 070 B1に記載の通り、紫外線を生成するために、管状の紫外発光素子が従来より使用されている。EP 0 778 070 B1は、前記紫外発光素子の光酸化反応段への配置の仕方を明記していない。但し、これに対応する反応段は従来技術より既知であり、この反応段により紫外発光素子の好適な配置は提示されている。
【0009】
JP 07-060058 Aは、有害物質を含む廃気を廃気ダクトにおいて浄化するための装置を開示する。この装置においては、紫外発光素子が流れ方向に対して平行に空気路に配される。又、前記紫外発光素子の紫外線は、185nm域と254nm域の双方の波長を有する。JP 07-060058 Aは又、空気路の内壁を二酸化チタンでコーティングすることを提案する。これにより、同じ反応段で触媒効果が達成される。
【0010】
DE 197 40 053 A1は、有害物質を含む廃気を廃気ダクトにおいて浄化するための更なる浄化装置を開示する。この装置においては、複数の管状紫外発光素子が同じく流れ方向に対して平行に光酸化反応段に配される。DE 197 40 053 A1は又、二酸化チタンを触媒として付加的に使用することを記載しており、廃気に含まれる有害物質と紫外線との相互作用を十分なものにするため、バッフル板及び/又は多孔板を用いることを提案する。
【特許文献1】EP 0 778 070 B1
【特許文献2】JP 07-060058 A
【特許文献3】DE 197 40 053 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
費用効果が高く且つコンパクトな廃気浄化システムを利用できることは、特に小型の製造ユニットにとって一層重要になっている、ということが既に見出されている。JP 07-060058 Aより既知の装置を契機として、本発明は、空気路内で廃気(有害物質で汚染されている)を浄化して有害物質を取り除く際の分解効率を簡単な方法で高めることを目的とする。このようにすることで、費用効果が高く且つコンパクトな廃気浄化システムを提供することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の廃気ダクトの反応段及び請求項14に記載の有害物質を含む廃気の浄化装置により達成される。
【0013】
本発明により見出されたのは、基本的に、JP 07-060058 Aにより既知である空気路の断面形状を適宜変更することにより、紫外線と廃気に含まれる有害物質と触媒(空気路の内壁を覆う)との間の相互作用が改善される、ということである。JP 07-060058 Aは、正方形又は矩形の空気路断面を提案する。これとは対照的に、本発明は、少なくとも1つの空気路の断面が少なくとも5つの辺を有する正多角形の場合に空気路内における分解効率を高め得ることを証明している。
【0014】
好適な実施例によると、複数の空気路を互いに隣接するよう蜂巣状に配することが提案される。このことは、複数の空気路が互いに平行に配される場合にも、本発明に係る反応段がその構造上コンパクトであることを許容する。
【0015】
上述した蜂巣構造の形態については、上記空気路の断面がそれぞれ正六角形又は正八角形であるのが望ましい。
【0016】
本発明の境界例は、次のような断面により形成される。即ち、上記正多角形が、円形、つまりは事実上無数の辺から成るような断面である。効率度を高める観点からは、このような円形断面の境界事例が最適である。しかし、複数の空気路が平行に配される場合、種々の空気路の間にある空隙が使用されないままとなる。従って、複数の空気路を平行に配するためには、上記蜂巣構造を六角形又は八角形の断面とするのが、従来技術より既知の矩形断面と円形断面との間における有益な妥協であると判明している。
【0017】
好適な実施形態によれば、上記紫外発光素子それぞれが、上記少なくとも1つの空気路において、側面に取り付けた接触レールにより保持されるようになっている。この接触レールについては、上記管状紫外発光素子が簡単に支持され且つ交換されるように構成するのが好ましい。
【0018】
更なる好適な実施形態によれば、廃気が流れる際、紫外発光素子により出される放射がその中にオゾン及び/又は酸素含有ラジカル等の反応物質を生成するようになっている。このような作用は、特に、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射の波長が185nm域である場合に実現されることが知られている。
【0019】
更なる好適な実施形態によれば、紫外発光素子により出される放射が、廃気に含まれる炭化水素をより高いエネルギーレベルに励起するようになっている。このような作用は、特に、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射の波長が254nm域である場合に実現されることが知られている。
【0020】
従って、紫外発光素子であってその発光波長が廃気に含まれるガス状分子の吸収スペクトルの範囲内にあるものを使用するのが特に有利である。この場合、185nmと254nmの波長域を使用するのが望ましい。これらの波長域は、従来の水銀ランプにより得られる。これに加えて、上記反応段の外形寸法を更に小さくするために、使用される上記紫外発光素子それぞれの出力が上げられるようにしてもよい。このような強力な紫外発光素子の光強度は、有害物質分子の吸収スペクトルと光源の発光スペクトルとが十分に重なり合うよう、波長に応じて決定されなければならない。
【0021】
本発明により更に見出されたことは、上記紫外発光素子の発光波長を、廃気に含まれるガス状分子の吸収スペクトルに対して最適にするのではなく、上記空気路の内壁を覆うために使用される触媒材料に対して最適にすることにある。JP 07-060058 Aを契機として、このような本発明の知見は、少なくとも1つの空気路を有する廃気ダクトの反応段であって、管状紫外発光素子が廃気の流れ方向に対して縦向きに配され、且つ、内壁が触媒材料である広帯域の半導体材料で覆われるものに関係する。JP 07-060058 Aにおいては、二酸化チタン(TiO2)が触媒材料として使用される。
【0022】
JP 07-060058 Aにより既知の装置を契機として、本発明の目的は、空気路内で廃気(有害物質で汚染されている)を浄化して有害物質を取り除く際の分解効率を簡単な方法で高めることにある。この目的は、上記空気路の内壁を半導体材料で覆うことを基礎として、次のようにすることで達成される。即ち、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射が254nmを超える波長を有し、且つ、その放射エネルギーが基本的に前記半導体材料の価電子帯と伝導帯のエネルギー差以上となるようにすることである。
【0023】
原理上は、光半導体に光子(そのエネルギーは、この半導体の価電子帯と伝導帯のエネルギー差以上である)を照射すると、電子正孔対が作られる。本発明の重大な知見は、次のようなことである。即ち、上記紫外発光素子の発光波長が前記半導体の吸収端近傍にある場合、この発光波長は光触媒反応を実現するために特に有効であり、光触媒反応を起こす、ということである。従って、従来の水銀ランプの185nmと254nmの波長域に代わり、或いはこれに加えて、より高い波長を有する波長域を用いることが、決定的に重要である。その放射エネルギーはこれに対応して低くなるが、前記半導体材料の価電子帯と伝導帯のエネルギー差を克服するには十分である。
【0024】
この光触媒作用には、原理上、2〜4eV程度のバンドギャップを有する全ての半導体材料(例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸カドミウム(CdS)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又はチタン酸ジルコニウム(ZrTiO4))が適している。二酸化チタン(TiO2)或いはドープ二酸化チタンが特に適していると判明しており、実際、反応性、環境受容性、長期安定性、及び費用有効性という特性を効果的に兼ね備える。全ての光半導体は、波長が340〜500nmであるエネルギー等価の光により活性化される。
【0025】
一般的には、次のことが見出されている。即ち、上記空気路の内壁が触媒材料である広帯域の半導体材料で覆われる場合、本発明に係る反応段の領域において所望の触媒効果が達成される、ということである。上記紫外発光素子それぞれについては、次のことを確実しておかなければならない。即ち、上記紫外発光素子により出される放射の波長域を、この放射エネルギーが少なくとも上記半導体材料の価電子帯と伝導帯のエネルギー差以上となるように選択する、ということである。
【0026】
好適な実施形態によれば、既に知られている通り、上記半導体材料は二酸化チタンより成る。もっとも、この半導体材料はドープ二酸化チタンより成るようにしてもよい。二酸化チタン又はドープ二酸化チタン(そのエネルギーは、この半導体の価電子帯と伝導帯のエネルギー差以上である)に紫外線を照射すると、まず最初に、電子正孔対がこの半導体材料中に生成される。次いで、酸素含有ラジカルが作られる。この酸素含有ラジカルは、有害物質の酸化工程を効果的に補助する。紫外線と上記触媒材料との最適な相互作用を実現するには、上記紫外発光素子と上記空気路の内壁との間の距離が考慮されなければならない、ということが見出されている。そこで、本発明に係る空気路を最適にするために、前記距離は常に、所定の触媒材料と所定の紫外発光素子について各有害物質の最適な分解効率が達成されるよう選択される。試験により、次のことが明らかとなっている。即ち、上記触媒効果を二酸化チタンにより達成するためには、上記紫外発光素子により出される放射の波長が350〜420nmの範囲内にあると好ましい、ということである。
【0027】
こうして、EP 0 778 070 B1より既知である有害物質を含む廃気を廃気ダクトにおいて浄化するための装置の分解効率及び寸法を改善するために、本発明に係る反応段は使用される。
【0028】
従って、本発明の更なる解決策は、有害物質を含む廃気を廃気ダクトにおいて浄化するための装置であって、上述した本発明に係る反応段と、この反応段の後に続く触媒ユニットとを有する装置にある。
【0029】
この装置は、費用効果が高く且つコンパクトなシステムを提供する。このようなシステムは、特に、小規模のエナメル加工所やレストラン等の体積流量の小さな小型の製造ユニットに適している。
【0030】
好適な実施形態によれば、上記触媒ユニットは活性炭系触媒より成る。上述した通り、この後に続く触媒ユニットは、上記反応段から供給される空気流の反応効率を上げると同時に、到来する空気流中に依然含まれるが周囲へは放出されることのないオゾンを分解する。こうして、余剰オゾンが上記活性炭表面に達すると、余剰オゾンはこの表面に吸着された有害物質と反応する、或いは、活性炭の炭素が余剰オゾンにより酸化される。後者の場合にはエネルギーの損失があり、オゾン(光エネルギーの助力を得て作られる)は使用されずに(即ち、有害物質を酸化させることなく)失われる。
【0031】
好適な実施形態によれば、酸化還元系を設けることが提案される。この酸化還元系は、オゾンが周囲に侵入するのを確実に防ぐものの、オゾンの酸化力はそのままに保つ。酸化還元対としては、例えば、過マンガン酸カリウム/二酸化マンガンが望ましい。過マンガン酸カリウムにより有機有害物質が酸化されると、二酸化マンガンが作られる。二酸化マンガンは、オゾンと反応することにより、過マンガン酸カリウムを生成するべく再生される。
【0032】
上記の後続触媒ユニットを設けるに当たっては、次のことに留意しなければならない。即ち、実際に分解されるべき有害物質の混合物は、通常、多数の異なる物質より成る、ということである。処理が求められるのは、1つの主成分と複数の二次的成分とを含む有害物質の混合物であることが多い。加えて、上記反応段における光酸化により、更なる有害物質が絶えず作られる。この有害物質についても、上記の後続触媒ユニットにて分解する必要がある。有機化合物の酸化反応は、複合反応機構により支配される。このため、有害物質を酸化させてCO2を作るには、多くの場合、連続する複数の酸化工程によるしかない。有機化合物の極性は、最終生成物であるCO2を作るために、上記反応全般に亘って増大する。有害物質の混合物は複雑なため、その成分は上記触媒ユニットにおける吸着部位を巡って競合する。このことは、1つの吸着材料で複雑混合物である有害物質の化合物の全てを十分に吸着させることはできない、ということを意味する。例えば、活性炭(非極性吸着体である)に非極性の有害物質を吸着させるのも好ましい。
【0033】
更なる好適な実施形態によれば、上記触媒ユニットが異なる極性を有する触媒より成るようにされる。このようにすることで、上記反応段から供給される廃気中の有害物質が異なる極性を有する場合に、その分解効率が更に高められる。
【0034】
更なる好適な実施形態によれば、複数のユニット(反応段及び後続の触媒ユニットより成る)が縦に並べられる。複数の触媒ユニット(それぞれ後続の反応段を備える)を設けることで、廃気浄化システムの構成が有害物質の平均濃度に関し最適にされる。なお、生ガスは有害物質で不均一に汚染されている。触媒ユニットが1つしかないと、このシステムは有害物質の最大発生濃度を基準に構成されなければならないため、その大きさひいては費用が大きくなる。エナメル加工の場合、例えば製造過程で、廃気が有害物質で不均一に汚染される。後続の反応段を有する介在された触媒ユニットを使用すると、有害物質のピークが平均化され、「突破」することができなくなる。有害物質濃度ピークが触媒ユニットに影響を及ぼす場合、有害物質は、触媒表面に吸着して反応するか、ゆっくりと気相に再放出される。このため 有害物質は更なる後続の反応段により分解される。こうして、本システム全体の分解効率は更に高められ、濃度に著しくばらつきがある場合にも、本システムは確実に構成される。従って、複数の反応段及び触媒ユニット(縦に並べられる)は、最終的に、よりコンパクトなシステムひいては費用の削減をもたらす。
【0035】
以下では、様々な実施例を基に、添付の図面を参照しながら、本発明をより詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明に係る空気路の断面図及び斜視図である。A-B平面における断面から分かるように、空気路101は正六角形の断面を有する。管状紫外発行素子102が、空気路101の中央に配される。廃気(有害物質で汚染されている)は、吸入口103から中に入り、排出口104から再び出される。空気路101内で触媒効果を実現するために、内壁105が広帯域の半導体材料(例えば、二酸化チタン又はドープ二酸化チタン)で覆われる。
【0037】
図2は、複数の平行な空気路を有する本発明に係る反応段の斜視図である。個々の空気路101は、図1に示した空気路に対応しており、蜂巣状に平行に配される。管状発光素子が各空気路101に1つずつ配される。こうして、空気路101は互いに接続される。空気路101は金属製ハウジングにより囲繞されており、これにより反応段201が形成される。接触レール202が、吸気口203及び排気口204に設けられる。各接触レール202は、上記紫外発光素子への送電用ケーブルダクトとして作用する一方、空気路101において上記紫外発光素子を機械的に保持する。上記紫外発光素子を電気的に活性化するために、横方向に対応する直列接続ユニット205が設けられる。反応段201の下面に、スライドレール206及び207が設けられる。本システム全体においては、保守のため、反応段201が対応するローラの上を通って導入又は除去される。
【0038】
上記空気路の内壁が触媒材料で覆われる場合、上記分解効率は更に高められる。上記反応段(複数の空気路を有する)が蜂巣構造を有すると、大きな触媒表面が紫外線の直近に設けられる。この場合、圧力損失は殆どない。この触媒表面に直接照射することで、広帯域の半導体材料を光触媒作用のために効果的に使用することが許容される。触媒材料として、二酸化チタンが特に適していることが判明している。二酸化チタンに紫外光(そのエネルギーは、この半導体の価電子帯と伝導帯のエネルギー差以上である)を照射すると、まず最初に、電子正孔対がこの半導体材料中に生成される。次いで、酸素イオン種が作られる。この酸素イオン種は、有害物質の酸化工程を効果的に補助する。340〜420nm域の波長を有する紫外発光素子が、この工程を開始するために使用される。
【0039】
続いて、光照射により形成される電子正孔対の生成電荷に気体分子が吸着される。これらの分子(共に吸着される)は活性化され、遷移状態と成る。このような遷移状態から前記分子が反応し、最終生成物が作られる。これと同時に、中間生成物も作られる。このような無害な反応生成物が脱着され、周囲に放出される。
【0040】
従って、上記光触媒反応は4つのステップに分けられる。
1.電荷対の生成
2.生成電荷への気体の吸着
3.隣接して吸着された反応分子間の反応
4.生成物の脱着
【0041】
不均一系光触媒作用によれば、アンモニア、ホルムアルデヒド、又は低級アルコール等の化合物(光酸化により酸化させることが難しい)を、大気酸素により、室温で効率良く燃焼させ、窒素もしくは二酸化炭素と水とを作ることができる。この場合における反応の過程(一般論としては既に説明した)は、次の通りである。
【0042】
廃気が反応ダクトへと導かれる。この反応ダクト中に、二酸化チタン(紫外光により活性化される)が設けられる。この光半導体に光を当てると、電子正孔対が作られる。次に、その生成電荷に気体分子が吸着される。ここで、このような吸着の過程におけるエネルギーの利得が、どの分子が電子と相互作用するのが好ましく、どの分子が正孔と相互作用するのが好ましいかを決める。反応相手であるアンモニアと酸素については、それぞれの分子特性により、アンモニアが正孔と反応し、酸素が電子と反応する。これらの分子(共に吸着される)は活性化され、遷移状態と成る。このような遷移状態から前記分子が反応し、最終生成物が作られる。これと同時に、中間生成物も作られる。このような無害な反応生成物(窒素及び水)が脱着され、周囲に放出される。
【0043】
図3は、本発明に係る反応段306及び307を有する廃気浄化システム301の斜視図である。反応段306及び307は、いずれも、図2に示した反応段201に対応する。廃気(有害物質を含む)は、供給管302により廃気浄化システム301に供給される。2つのシステム303及び304は構成において同一であり、図3に示す通り、上下に配される。これらのシステム303及び304は、浄化すべき空気の量を増やすために、オプションとして設けられる。以下では、簡単にするため、システム304のみを説明する。なお、システム304の個々の構成要素は、切欠図の方により詳しく示されている。
【0044】
まず、供給管302には、配給段305が接続される。配給段305は、到来する空気を均一に配給するものであり、オプションとして、比較的大きな有害物質の粒子を取り除く。配給段305から送られてくる空気は、本発明に係る反応段306及び307の中に入る。2つの反応段306及び307(その構成において同一である)は、上記分解効率を高めるべく、前後に配される。もちろん、1つの反応段306だけで廃気浄化システム301を構成するようにしてもよい。2つの反応段306及び307には、触媒ユニット308が接続される。触媒ユニット308は、例えば、上述したように、約1,200m2/gの内部表面積を有する高多孔質材料が塗られたものより成る。なお、前記内部表面は反応表面として使用される。
【0045】
触媒ユニット308から放出された空気は又、ファンユニット309の中に入る。ファンユニット309は、供給管302と排出管310との圧力差が適切に保たれることを保証する。
【0046】
廃気浄化システム301は、原則として、EP 0 778 070 B1に記載の方法を用いて操作される。但し、本発明によれば、図2に示したような1又は複数の反応段306,307により、廃気浄化システム301は区別される。以上によると、廃気(有害物質で汚染されている)は、供給管302から配給段304を経て反応段306,307へと移される。反応段306,307では、短波長紫外光が化学反応を起こし、臭気物質や有害物質の分子が壊される。これと同時に、有害物質のラジカル及びオゾンが酸化剤として作られる。有害物質が酸化されると、環境的に受容可能な生成物として二酸化炭素及び水が作られる。酸化させ難い化合物と余剰オゾンは、後続の触媒ユニット308において分解される。浄化された臭気のない空気は、ファンユニット309及び排出管310を通って、周囲に放出される。
【0047】
非均一な有害物質の汚染を効果的に処理するために、追加の触媒ユニットが上述した方法で地点311に介在されるようにしてもよい。このような追加の介在された触媒ユニットは、非常に高い濃度で短時間に生じる有害物質でさえも分解されることを許容する
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る空気路の断面図及び斜視図。
【図2】複数の平行な空気路を有する本発明に係る反応段の斜視図。
【図3】本発明に係る反応段を有する廃気浄化システムの斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの空気路を有する廃気ダクトの反応段であって、管状紫外発光素子が廃気の流れ方向に対して縦向きに配されるものにおいて、
前記少なくとも1つの空気路の断面が少なくとも5つの辺を有する正多角形として構成されることを特徴とする反応段。
【請求項2】
請求項1に記載の反応段において、複数の空気路が互いに隣接するよう蜂巣状に配されることを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項2に記載の反応段において、上記空気路の断面がそれぞれ正六角形として構成されることを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項2に記載の反応段において、上記空気路の断面がそれぞれ円として構成されることを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の反応段において、上記紫外発光素子それぞれが、上記少なくとも1つの空気路において、側面に取り付けた接触レールにより保持されることを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反応段において、廃気が流れる際、紫外発光素子により出される放射が該廃気中にオゾン及び/又は酸素含有ラジカルのような反応物質を生成することを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項6に記載の反応段において、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射の波長が185nm域であることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の反応段において、紫外発光素子により出される放射が、廃気に含まれる炭化水素をより高いエネルギーレベルに励起することを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項8に記載の反応段において、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射の波長が254nm域であることを特徴とするもの。
【請求項10】
少なくとも1つの空気路を有する廃気ダクトの反応段であって、管状紫外発光素子が廃気の流れ方向に対して縦向きに配され、且つ、内壁が触媒材料である広帯域の半導体材料で覆われるものにおいて、
前記紫外発光素子それぞれにより出される放射が254nmを超える波長を有し、且つ、その放射エネルギーが基本的に前記半導体材料の価電子帯と伝導帯のエネルギー差以上であることを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項10に記載の反応段において、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射が上記半導体材料の吸収端域にある波長を有することを特徴とするもの。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の反応段において、上記紫外発光素子それぞれにより出される放射が、340〜500nm域、好ましくは350〜420nm域にある波長を有することを特徴とするもの。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の反応段において、上記半導体材料が二酸化チタン(TiO2)又はドープ二酸化チタンより成ることを特徴とするもの。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれかに記載の反応段において、上記半導体材料が、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸カドミウム(CdS)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又はチタン酸ジルコニウム(ZrTiO4))より成ることを特徴とするもの。
【請求項15】
有害物質を含む廃気を廃気ダクトにおいて浄化するための装置であって、請求項1〜14のいずれかに記載の反応段と、該反応段の後に続く触媒ユニットとを有する装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、上記触媒ユニットが活性炭系触媒より成ることを特徴とするもの。
【請求項17】
請求項15に記載の装置において、上記触媒ユニットが酸化還元系に基づくことを特徴とするもの。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、上記酸化還元系が過マンガン酸カリウム/二酸化マンガンの成分により形成されることを特徴とするもの。
【請求項19】
請求項15に記載の装置において、上記触媒ユニットが異なる極性を有する触媒より成ることを特徴とするもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−513315(P2009−513315A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516094(P2006−516094)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007237
【国際公開番号】WO2005/002638
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505045539)
【氏名又は名称原語表記】Werner SCHROEDER
【住所又は居所原語表記】Beckedorfer Strasse 1, 31542 Bad Nenndorf, Germany
【Fターム(参考)】