説明

有機エレクトロルミネッセンス素子用材料および化合物

【課題】高い蛍光量子収率を有し、また昇華法等による精製の際、ダメ−ジが少なく精製が容易な有機EL素子用材料の提供。
【解決手段】下記一般式[1]で表される有機EL素子用材料。一般式[1]


(R〜RはH、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光源や表示に使用される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料と低い駆動電圧で高い色純度と輝度を示す有機エレクトロルミネッセンス素子、およびその素子に好適に仕様できる新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とがこれら両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、固体発光型の表示素子としての用途が有望視され、近年活発に研究開発が行われている。
【0003】
この研究は、イーストマン・コダック社のC.W.Tang氏らによりAppl.Phys.Lett.,第51巻,913頁,1987年発行に報告された有機薄膜を積層したEL素子に端を発しており、この報告では、金属キレート錯体を発光層、アミン系化合物を正孔注入層に使用することで、6〜10Vの直流電圧での輝度が数1000(cd/m2)、最大発光効率が1.5(lm/W)の緑色発光を得ている。現在、様々な研究機関で開発が進められている有機EL素子は、基本的にこのイーストマン・コダック社の構成を踏襲しているといえる。
【0004】
また、ビイミダゾール誘導体は、ヘテロ環化合物として、Ali Reza Molla Ebrahimloらにより報告されている(非特許文献1参照)。また、キノキサリンの誘導体として、S.Ganapatyらにより報告されている(非特許文献2〜3参照)が、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料としては、検討されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Australian Journal of Chemistry,第62号,126〜132頁2009年
【非特許文献2】Indian Journal of heteroclic Chemistry,第16号,Jan.-March,283〜286頁2007年
【非特許文献3】Asian Journal of Chemistry,第2040号,No.5,3353〜3356頁2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高い蛍光量子収率を有し、また昇華法等による精製の際、有機材料に対するダメ−ジが少なく精製が容易な有機EL素子用材料を提供することである。また、蒸着法により有機EL素子を作成する際に、有機化合物に対するダメ−ジも少なく、容易に素子作成が可能で、高輝度、高効率、長寿命な有機EL素子を提供することである。さらには、その素子に好適に使用出来る新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以上の諸問題を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記一般式[1]で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
一般式[1]
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。また、R〜R、R〜R、R〜Rは、それぞれ隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。]
また、本発明は、RとRおよび/またはRとRが、一体となって環を形成する上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
また、本発明は、下記一般式[2]で表される上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
一般式[2]
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、R〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。また、R〜R20は隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。]
また、本発明は、陽極と陰極からなる一対の電極間に、発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層が上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0012】
また、本発明は、下記一般式[3]で表される化合物に関する。
一般式[3]
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換シリル基、アシル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。また、R〜Rは隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。]
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機EL素子用材料は、その特定の構造故に、特に青色発光に優れるとともに、濃度消光を起こしにくく、高い発光輝度と長い寿命を両立できることを特徴としている。この材料を用いて作成した有機EL素子はフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例101のEL発光スペクトルである。
【図2】図2は、実施例102のEL発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。
【0018】
一般式[1]、一般式[2]、および一般式[3]において、R〜R、R〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。
【0019】
ここでいう、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
【0020】
ここでいう、1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基があげられる。
【0021】
ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基といった炭素数1〜18のアルキル基があげられる。
【0022】
また、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、1−オクタデセニル基といった炭素数2〜18のアルケニル基があげられる。
【0023】
また、アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−オクチニル基、1−デシニル基、1−オクタデシニル基といった炭素数2〜18のアルキニル基があげられる。
【0024】
また、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基といった炭素数3〜18のシクロアルキル基があげられる。
【0025】
さらに、1価の芳香族炭化水素基としては、1価の単環、縮合環、環集合炭化水素基があげられる。
【0026】
ここで、1価の単環芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、p−クメニル基、メシチル基等の炭素数6〜18の1価の単環芳香族炭化水素基があげられる。
【0027】
また、1価の縮合環炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、2−アンスリル基、9−アンスリル基、1−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−アセナフチル基、2−アズレニル基、1−ピレニル基、2−トリフェニレル基等の炭素数10〜18の1価の縮合環炭化水素基があげられる。
【0028】
また、1価の環集合炭化水素基としては、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、ターフェニル基等の炭素数12〜18の1価の環集合炭化水素基があげられる。
【0029】
さらに、1価の脂肪族複素環基としては、2−ピラゾリノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、2−モルホリニル基といった炭素数3〜18の1価の脂肪族複素環基があげられる。
【0030】
また、1価の芳香族複素環基としては、トリアゾリル基、3−オキサジアゾリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−ピローリル基、2−ピローリル基、3−ピローリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、2−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、3−ピラゾリル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、N−インドリル基、N−カルバゾリル基、N−アクリジニル基、(2,2’−ビチエニル)−4−イル基といった炭素数2〜18の化合物があげられる。
【0031】
また、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基といった炭素数1〜8のアルコキシル基があげられる。
【0032】
また、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基といった炭素数6〜14のアリールオキシ基があげられる。
【0033】
また、置換アミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ビス(m−トリル)アミノ基、N,N−ビス(p−トリル)アミノ基、N,N−ビス(p−ビフェニリル)アミノ基、ビス[4−(4−メチル)ビフェニリル]アミノ基、N−α−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−β−ナフチル−N−フェニルアミノ基等の炭素数2〜24の置換アミノ基があげられる。
【0034】
さらに、置換シリル基としては、置換もしくは未置換のアルキル基、または、置換もしくは未置換のアリール基によって置換されたシリル基であり、モノアルキルシリル基、モノアリールシリル基、ジアルキルシリル基、ジアリールシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基等といった置換シリル基が挙げられる。
【0035】
ここで、モノアルキルシリル基としては、モノメチルシリル基、モノエチルシリル基、モノブチルシリル基、モノイソプロピルシリル基、モノデカンシリル、モノイコサンシリル基、モノトリアコンタンシリル基等のモノアルキルシリル基が挙げられる。
【0036】
また、モノアリールシリル基としては、モノフェニルシリル基、モノトリルシリル基、モノナフチルシリル基、モノアンスリルシリル基等のモノアリールシリルが挙げられる。
【0037】
また、ジアルキルシリル基としては、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジイソプロピルシリル基、ジブチルシリル基、ジオクチルシリル基、ジデカンシリル基等のジアルキルシリル基が挙げられる。
【0038】
また、ジアリールシリル基としては、ジフェニルシリル基、ジトリルシリル基等のジアリールシリルが挙げられる。
【0039】
また、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリオクチルシリル基等のトリアルキルシリル基が挙げられる。
【0040】
また、トリアリールシリル基としては、トリフェニルシリル基、トリトリルシリル基等のトリアリールシリルが挙げられる。
【0041】
また、アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、アニソイル基、シンナモイル基等の炭素数2〜14のアシル基があげられる。
【0042】
また、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の炭素数2〜14のアルコキシカルボニル基があげられる。
【0043】
また、アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等の炭素数2〜14のアリールオキシカルボニル基があげられる。
【0044】
上に述べた、1価の脂肪族炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、1価の脂肪族複素環基、1価の芳香族複素環基は、さらに他の置換基によって置換されていても良い。また、これら置換基同士が結合し、環を形成していても良い。そのような置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等があげられる。これらの置環基の例としては、前述のものが挙げられる。
【0045】
以上挙げた、R〜R、R〜R20に結合して良い置換基のうち、より好ましいものとしては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、スチリル基等があげられ、特に好ましくは水素原子、フェニル基、ビフェニル基、スチリル基があげられる。これらの置換基とした場合には、分子量も比較的小さく、蒸着等で化合物(材料)を昇華することが容易であり、また、安定性の面からも好ましい。ただし、蒸着を行わない場合はこの限りではない。
【0046】
また、一般式[1]、一般式[2]、および一般式[3]において、R〜R、R〜R、R〜R、R〜R12、R13〜R16、R17〜R20は隣接した置換基が互いに結合して環を形成しても良く、その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、ピラジン環、ピペラジン環などが挙げられる。
本発明の有機EL素子用材料である化合物の代表例を、以下の表1示すが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
【0047】
また表1〜表7の化合物のうち(1)−(49)、(52)、(55)、(56)、(57)−(73)、(89)、(93)−(98)は、一般式(3)で表される化合物である。




























【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層または多層の有機層を形成した素子から 構成されるが、ここで、一層型有機EL素子とは、陽極と陰極との間に発光層のみからなる素子を指す。一方、多層型有機EL素子とは、発光層の他に、発光層への正孔や電子の注入を容易にしたり、発光層内での正孔と電子との再結合を円滑に行わせたりすることを目的として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子注入層などを積層させたものを指す。したがって、多層型有機EL素子の代表的な素子構成としては、(1)陽極/正孔注入層/発光層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極、(5)陽極/正孔注入層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(7)陽極/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(8)陽極/発光層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層した素子構成が考えられる。
【0056】
また、上述した各有機層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良く、いくつかの層が繰り返し積層されていても良い。そのような例として、近年、光取り出し効率の向上を目的に、上述の多層型有機EL素子の一部の層を多層化する「マルチ・フォトン・エミッション」と呼ばれる素子構成が提案されている。これは例えば、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/電子輸送性発光層/電子注入層/電荷発生層/発光ユニット/陰極から構成される有機EL素子に於いて、電荷発生層と発光ユニットの部分を複数層積層するといった方法があげられる。
【0057】
正孔注入層には、発光層に対して優れた正孔注入効果を示し、かつ陽極界面との密着性と薄膜形成性に優れた正孔注入層を形成できる正孔注入材料が用いられる。また、このような材料を多層積層させ、正孔注入効果の高い材料と正孔輸送効果の高い材料とを多層積層させた場合、それぞれに用いる材料を正孔注入材料、正孔輸送材料と呼ぶことがある。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも好適に使用することができる。これら正孔注入材料や正孔輸送材料は、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギ−が通常5.5eV以下と小さい必要がある。このような正孔注入層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10 〜10 V/cmの電界印加時に、少なくとも10−6cm /V・秒であるものが好ましい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料と混合して使用することができる、他の正孔注入材料および正孔輸送材料としては、上記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0058】
このような正孔注入材料や正孔輸送材料としては、具体的には、例えばトリアゾ−ル誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾ−ル誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾ−ル誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリ−ルアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリ−ルアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾ−ル誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマ−(特にチオフェンオリゴマ−)等を挙げることができる。
【0059】
正孔注入材料や正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−2956965号公報)、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)を用いることもできる。例えば、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等や、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスタ−バ−スト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等を挙げることができる。また、正孔注入材料として銅フタロシアニンや水素フタロシアニン等のフタロシアニン誘導体もあげられる。さらに、その他、芳香族ジメチリデン系化合物、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料や正孔輸送材料の材料として使用することができる。
【0060】
芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−N−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−ビフェニリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン等があげられ、これらは正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも使用することができる。
【0061】
この正孔注入層を形成するには、上述の化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコ−ト法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化するが、正孔注入層の膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
【0062】
一方、電子注入層には、発光層に対して優れた電子注入効果を示し、かつ陰極界面との密着性と薄膜形成性に優れた電子注入層を形成できる電子注入材料が用いられる。そのような電子注入材料の例としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、シロ−ル誘導体、トリアリ−ルホスフィンオキシド誘導体、カルシウムアセチルアセトナ−ト、酢酸ナトリウムなどがあげられる。また、セシウム等の金属をバソフェナントロリンにド−プした無機/有機複合材料(高分子学会予稿集,第50巻,4号,660頁,2001年発行)や、第50回応用物理学関連連合講演会講演予稿集、No.3、1402頁、2003年発行記載のBCP、TPP、T5MPyTZ等も電子注入材料の例としてあげられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陰極からの電子を注入できて、電子を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0063】
上記電子注入材料の中でも特に効果的な電子注入材料としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、シロ−ル誘導体、トリアリ−ルホスフィンオキシド誘導体があげられる。本発明に使用可能な好ましい金属錯体化合物としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体が好適である。8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)アルミニウム、トリス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)(1−ナフトラ−ト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)(2−ナフトラ−ト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)(フェノラ−ト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)(4−シアノ−1−ナフトラ−ト)アルミニウム、ビス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(1−ナフトラ−ト)アルミニウム、ビス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(2−ナフトラ−ト)アルミニウム、ビス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(フェノラ−ト)アルミニウム、ビス(5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(4−シアノ−1−ナフトラ−ト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)クロロアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)(o−クレゾラ−ト)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)ガリウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)ガリウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)ガリウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)ガリウム、トリス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(1−ナフトラ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(2−ナフトラ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(フェノラ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(4−シアノ−1−ナフトラ−ト)ガリウム、ビス(2、4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(1−ナフトラ−ト)ガリウム、ビス(2、5−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(2−ナフトラ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(フェノラ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(4−シアノ−1−ナフトラ−ト)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(o−クレゾラ−ト)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8−ヒドロキシキノリナ−トリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)マンガン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナ−ト)ベリリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナ−ト)亜鉛等の金属錯体化合物があげられる。
【0064】
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾ−ル誘導体、チアゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、チアジアゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体があげられ、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾ−ル、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾ−ル、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−ル、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾ−ル、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾ−ル、1,4−ビス[2−(5 −フェニルオキサジアゾリル)。)ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert− ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾ−ル、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)。)ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾ−ル、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾ−ル、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)。]ベンゼン等があげられる。
【0065】
さらに、正孔阻止層には、発光層を経由した正孔が電子注入層に達するのを防ぎ、薄膜形成性に優れた層を形成できる正孔阻止材料が用いられる。そのような正孔阻止材料の例としては、ビス(8−ヒドロキシキノリナ−ト)(4−フェニルフェノラ−ト)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物や、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナ−ト)(4−フェニルフェノラ−ト)ガリウム等のガリウム錯体化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等の含窒素縮合芳香族化合物があげられる。
【0066】
本発明の有機EL素子用材料は、固体状態において強い蛍光を持つ化合物であり、発光層内における発光材料として適している。さらに、他のホスト材料と組み合わせるドーピング材料として用いると、発光層中にて最適の割合でドーピングすることにより、高い発光効率および発光波長の選択が可能である。又、ドーピング材料として、本発明の有機EL素子用材料と共に他のドーピング材料を用いる事で青から赤色、さらには白色の発光を得ることができる。
【0067】
また、本発明の有機EL素子用材料を発光層に使用する場合、他のホスト材料やドーピング材料を含有していても構わない。この場合、ドーピング材料の濃度はホスト材料に対して0.001〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、0.01〜10重量%の範囲で含有されることがより好ましく、0.1〜5重量%の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0068】
本発明の有機EL素子用材料と併せて使用できるホスト材料としては、キノリン金属錯体、オキサジアゾール、ベンゾチアゾール金属錯体、ベンゾオキサゾール金属錯体、ベンゾイミダゾール金属錯体、トリアゾール、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミンフルオレノン、ジアミノアントラセン型トリフェニルアミン、ジアミノフェナントレン型トリフェニルアミン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チアジアゾール、テトラゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、トリフェニレン、アントロン等とそれらの誘導体、および、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン等の導電性高分子の高分子材料等がある。
【0069】
本発明の有機EL素子用材料と共に更なるドーピング材料を使用して発光色を変化させることも可能となる。本発明の有機EL素子用材料と共に使用されるドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
発光層には、発光材料およびドーピング材料に加えて、必要があれば正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。
【0071】
さらに、本発明の有機EL素子の陽極に使用される材料は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO、SNO 、ZNO等の導電性材料が挙げられる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることができる。この陽極は、上記発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくなるような特性を有していることが望ましい。また、陽極のシ−ト抵抗は、数百Ω/□以下としてあるものが好ましい。さらに、陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10Nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0072】
また、本発明の有機EL素子の陰極に使用される材料は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシ−ト抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200Nmである。
【0073】
本発明の有機EL素子を作製する方法については、上記の材料および方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、および必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0074】
この有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、その透光性については、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上、好ましくは90%以上であるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
【0075】
これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソ−ダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカ−ボネ−ト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、ポリエ−テルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板が挙げられる。
【0076】
本発明の有機EL素子の各層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビ−ム照射、スパッタリング、プラズマ、イオンプレ−ティング等の乾式成膜法、もしくはスピンコ−ティング、ディッピング、フロ−コ−ティング、インクジェット法等の湿式成膜法、発光体をドナ−フイルム上に蒸着する方法、また、特表2002−534782やS.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているLITI(Laser Induced Thermal Imaging、レーザー熱転写)法や、印刷(オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷)、インクジェット等の方法を適用することもできる。
【0077】
有機層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。また特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコ−ト法等により薄膜化することによっても、有機層を形成することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚が厚すぎると一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要となり効率が悪くなり、逆に膜厚が薄すぎるとピンホ−ル等が発生し、電界を印加しても充分な発光輝度が得にくくなる。したがって、各層の膜厚は、1nmから1μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がより好ましい。
【0078】
また、有機EL素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、樹脂等により素子全体を被覆や封止を施したりしても良い。特に素子全体を被覆や封止する際には、光によって硬化する光硬化性樹脂が好適に使用される。
【0079】
本発明の有機EL素子に印加する電流は通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子破壊しない範囲内であれば特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギ−で効率良く発光させることが望ましい。
【0080】
本発明の有機EL素子の駆動方法は、パッシブマトリクス法のみならず、アクティブマトリックス法での駆動も可能である。また、本発明の有機EL素子から光を取り出す方法としては、陽極側から光を取り出すボトム・エミッションという方法のみならず、陰極側から光を取り出すトップ・エミッションという方法にも適用可能である。これらの方法や技術は、城戸淳二著、「有機ELのすべて」、日本実業出版社(2003年発行)に記載されている。
【0081】
本発明の有機EL素子のフルカラー化方式の主な方式としては、3色塗り分け方式、色変換方式、カラーフィルター方式があげられる。3色塗り分け方式では、シャドウマスクを使った蒸着法や、インクジェット法や印刷法があげられる。また、特表2002−534782やS.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているレーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI法ともいわれる)も用いることができる。色変換方式では、青色発光の発光層を使って、蛍光色素を分散した色変換(CCM)層を通して、青色より長波長の緑色と赤色に変換する方法である。カラーフィルター方式では、白色発光の有機EL素子を使って、液晶用カラーフィルターを通して3原色の光を取り出す方法であるが、これら3原色に加えて、一部白色光をそのまま取り出して発光に利用することで、素子全体の発光効率をあげることもできる。
【0082】
さらに、本発明の有機EL素子は、マイクロキャビティ構造を採用しても構わない。これは、有機EL素子は、発光層が陽極と陰極との間に挟持された構造であり、発光した光は陽極と陰極との間で多重干渉を生じるが、陽極及び陰極の反射率、透過率などの光学的な特性と、これらに挟持された有機層の膜厚とを適当に選ぶことにより、多重干渉効果を積極的に利用し、素子より取り出される発光波長を制御するという技術である。これにより、発光色度を改善することも可能となる。この多重干渉効果のメカニズムについては、J.Yamada等によるAM−LCD Digest of Technical Papers, OD−2,p.77〜80(2002)に記載されている。
【0083】
以上述べたように、本発明の有機EL素子は、低い駆動電圧で高い色純度と輝度を示す赤色発光を得ることが可能である。故に、本有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として、さらには、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が考えられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0085】
本発明の有機EL素子用材料および化合物の合成方法
本発明の有機EL素子用材料は、以下に示す反応式1〜7を組み合わせることで得ることが出来た。また、本発明の化合物は反応式1〜7を組み合わせることで得ることが出来た。
反応式1
【0086】
【化4】

【0087】
反応式2
【0088】
【化5】

【0089】
反応式3
【0090】
【化6】

【0091】
反応式4
【0092】
【化7】

【0093】
反応式5
【0094】
【化8】

【0095】
反応式6
【0096】
【化9】

【0097】
反応式7
【0098】
【化10】

【0099】
実施例1
化合物(1)の合成方法
1,2-Di(1-imidazolyl)benzene (101)の合成
アルゴン雰囲気下にてねじ口試験管に、1,2-dibromobenzene (0.238 g, 1.01 mmol), imidazole (0.173 g, 2.54 mmol), K2CO3 (0.284 g, 2.04 mmol), Cu2O (0.0078 g, 0.0545 mmol), DMSO (1.5 mL)を加え、150℃で48時間攪拌した。室温に冷却した後、セライトを用いてろ過した。ろ液に水 (5 mL) を加え、酢酸エチル (10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥後した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、クロロホルム:メタノール=10:1) により、1,2-di(1-imidazolyl)benzene (101; 0.182 g, 87%)を白色固体として得た。ヘキサン−クロロホルム混合溶媒より再結晶することで無色結晶として得た。Colorless crystals; mp 133.1-134.9 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.74 (s, 2H), 7.11 (s, 2H), 7.44 (s, 2H), 7.46-7.52 (m, 2H), 7.54-7.58 (m, 2H); 7.08 (s, 2H); 13C NMR (75 Hz, CDCl3) δ 119.4, 127.1, 129.6, 130.5, 132.1, 136.6; IR (KBr/cm-1) 3101, 3030, 2360, 1681, 1593, 1520, 1495, 1247, 1176, 1111, 1089, 1065, 1054, 1039, 964, 740. FAB-MS, m/z=211 ([M+H]+).
Diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1)の合成
アルゴン雰囲気下にて30 mLナスフラスコに1,2-di(1-imidazolyl)benzene (101; 0.210 g, 1.0 mmol)とTHF (5 mL)を加え、-78 ℃でn-BuLi (1.57 M ヘキサン溶液; 1.6 mL, 2.4 mmol)を滴下した後、-78 ℃で1時間攪拌した。別の30 mLナスフラスコで調製したPd(PPh3)4 (0.0277 g, 0.024 mmol)とTHF (2 mL)を-78 ℃で攪拌しながら、最初の30 mLナスフラスコの反応溶液を滴下した。反応温度をゆっくり上げ、45 ℃で19時間攪拌した。飽和食塩水 (5 mL)を加え、クロロホルム(10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥後した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、クロロホルム:メタノール=10:1) により、diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1; 0.147 g, 71%)を白色固体として得た。ヘキサン−クロロホルム混合溶媒より再結晶することで無色結晶として得た。Colorless crystals; mp 260.9-261.4 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.50-7.57 (m, 2H), 7.62 (d, J = 1.2 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 7.84-7.88 (m, 2H); 13C NMR (75 Hz, CDCl3) δ112.36, 116.8, 124.5, 126.6, 132.8, 135.9; IR (KBr/cm-1) 1630, 1510, 1413, 1324, 1121, 931, 755, 686, 468, 442, 425, 407. HRMS (ESI) for C12H9N4 ([M+H]+); Calcd. 209.0822, Found 209.0819.
Diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1)の合成
アルゴン雰囲気下にて30 mLナスフラスコに1,2-di(1-imidazolyl)benzene (101; 0.212 g, 1.0 mmol)とTHF (5 mL)を加え、-78 ℃でn-BuLi (1.57 M ヘキサン溶液; 1.6 mL, 2.4 mmol)を滴下した後、-78 ℃で1時間攪拌した。別の30 mLナスフラスコで調製したI2 (0.269 g, 1.06 mmol)とTHF (4 mL)を加えた。反応温度をゆっくり上げ、45 ℃で24時間攪拌した。飽和食塩水 (5 mL)を加え、クロロホルム(10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥後した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、クロロホルム:メタノール=10:1) により、diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1; 0.160 g, 68%)を白色固体として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 7.50-7.57 (m, 2H), 7.62 (d, J = 1.2 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 7.84-7.88 (m, 2H); 13C NMR (75 Hz, CDCl3) δ112.36, 116.8, 124.5, 126.6, 132.8, 135.9; IR (KBr/cm-1) 1630, 1510, 1413, 1324, 1121, 931, 755, 686, 468, 442, 425, 407. HRMS (ESI) for C12H9N4 ([M+H]+); Calcd 209.0822, Found 209.0819。
【0100】
実施例2
化合物(2)の合成方法
3,10-Diphenyldiimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (2)の合成
窒素雰囲気下にてねじ口試験管に150 ℃で2時間乾燥させたK2CO3 (0.279 g, 1.95 mmol)、diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1; 0.104 g, 0.5 mmol)、bromobenzene (0.386 g, 2.5 mmol)、Pd(OAc)2 (0.0124 g, 0.055 mmol)、PPh3 (0.0264 g, 0.10 mmol)とDMF (2.5 mL)を加え、140 ℃で48時間攪拌した。室温に冷却した後、セライトを用いてろ過した。ろ液に飽和食塩水 (5 mL) を加え、クロロホルム (10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、酢酸エチル)および分取GPC(JAIGEL-1Hと2Hの連結カラム、クロロホルム) により、3,10-diphenyldiimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (2; 0.099 g, 55%)を白色固体として得た。ヘキサン−クロロホルム混合溶媒より再結晶することで無色結晶として得た。Colorless crystals; mp 203.1-203.9 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.03-7.06 (m, 2H), 7.48-7.57 (m, 14H); 13C NMR (75 Hz, CDCl3) δ 118.7, 125.3, 126.2, 129.2, 129.2, 129.7, 130.2, 130.8, 133.8, 137.4; IR (KBr/cm-1) 1624, 1571, 1463, 1476, 1376, 1347, 1160, 954, 851, 762, 704, 645, 567, 506, 485, 450, 439, 409. HRMS (ESI) for C24H17N4 ([M+H]+); Calcd 361.1448, Found 361.1433。
【0101】
実施例3
化合物(4)の合成方法
3,10-Bis[4-(trifluoromethyl)phenyl]diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (4)の合成
窒素雰囲気下にてねじ口試験管に150 ℃で2時間乾燥させたK2CO3 (0.277 g, 2.00 mmol)、diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1; 0.118 g, 0.57 mmol)、1-bromo-4-(trifluoromethyl)benzene (0.459 g, 2.0 mmol)、Pd(OAc)2 (0.0125 g, 0.056 mmol)、PPh3 (0.0259 g, 0.11 mmol)とDMF (2.5 mL)を加え、140 ℃で48時間攪拌した。室温に冷却した後、セライトを用いてろ過した。ろ液に飽和食塩水 (5 mL) を加え、クロロホルム (10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、酢酸エチル)および分取GPC(JAIGEL-1Hと2Hの連結カラム、クロロホルム) により、3,10-bis[4-(trifluoromethyl)phenyl]diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (4; 0.116 g, 47%)を白色固体として得た。ヘキサン−クロロホルム混合溶媒より再結晶することで無色結晶として得た。Colorless crystals; mp 287.5-287.9 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.14-7.18 (m, 2H), 7.45-7.49 (m, 2H), 7.58 (s, H), 7.71 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 7.81 (d, J = 8.4 Hz, 4H); IR (KBr/cm-1) 1618, 1573, 1496, 1376, 1327, 1255, 1167, 1122, 1073, 1017, 955, 841, 754, 606, 440. Anal. Calcd for C26H14F6N4: C, 62.91; H, 2.84; N, 11.29. Found: C, 62.98; H, 2.48; N, 11.18。
【0102】
実施例4
化合物(5)の合成方法
3,10-Bis(4-methoxyphenyl)diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (5)の合成
窒素雰囲気下にてねじ口試験管に150 ℃で2時間乾燥させたK2CO3 (0.280 g, 2.02 mmol)、diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1; 0.104 g, 0.5 mmol)、4-bromoanisole (0.386 g, 2.0 mmol)、Pd(OAc)2 (0.0116 g, 0.052 mmol)、PPh3 (0.0286 g, 0.11 mmol)とDMF (2.5 mL)を加え、140 ℃で48時間攪拌した。室温に冷却した後、セライトを用いてろ過した。ろ液に飽和食塩水 (5 mL) を加え、クロロホルム (10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、酢酸エチル)により、3,10-bis(4-methoxyphenyl)diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (5; 0.072 g, 34%)を白色固体として得た。ヘキサン−クロロホルム混合溶媒より再結晶することで無色結晶として得た。Colorless crystals; mp 219.3-220.1 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.92 (s, 6H), 7.03-7.06 (m, 2H), 7.05 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 7.44 (s, 2H), 7.46 (d, J = 8.7 Hz, 4H), 7.51-7.54 (m, 2H); IR (KBr/cm-1) 2840, 1611, 1571, 1505, 1376, 1285, 1249, 1177, 1026, 833, 754, 680, 598. FAB-MS, m/z=421 ([M+H]+)。
【0103】
実施例5
化合物(15)の合成方法
4,4'-(Diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline-3,10-diyl)dibenzaldehyde (15)の合成
窒素雰囲気下にてねじ口試験管に150 ℃で2時間乾燥させたK2CO3 (0.554 g, 4.0 mmol)、diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline (1; 0.209 g, 1.0 mmol)、4-bromobenzaldehyde (0.740 g, 4.0 mmol)、Pd(OAc)2 (0.0223 g, 0.10 mmol)、PPh3 (0.0578 g, 0.22 mmol)とDMF (5 mL)を加え、140 ℃で48時間攪拌した。室温に冷却した後、セライトを用いてろ過した。ろ液に飽和食塩水 (5 mL) を加え、クロロホルム (10 mL × 3)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、酢酸エチル)および分取GPC(JAIGEL-1Hと2Hの連結カラム、クロロホルム) により、4,4'-(diimidazo[1,2-a:2',1'-c]quinoxaline-3,10-diyl)dibenzaldehyde (15; 0.116 g, 47%)を黄色固体として得た。Yellow solid; mp 282.2-282.7 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.13-7.61 (m, 2H), 7.49-7.52 (m, 2H), 7.63 (s, 2H), 7.77 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 8.06 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 10.14 (s, 2H)。
【0104】
実施例6〜100
上記反応式1〜7を組み合わせて、実施例1〜5と同様の合成方法により、表1〜表7に記載の本発明の化合物(3)、(6)〜(14)、(16)〜(100)を合成した。得られた化合物の構造については、マススペクトル(日本電子社製、JMX−AX500およびThermo Scientific社製、Exactive)、および元素分析(パーキン・エルマー社製 2400CHN Element Analyzer)にて確認した。元素分析の結果を表8〜表10に示す。尚、化合物番号は表1〜表7のそれと同じである。
【0105】
【表8】

【0106】
【表9】

【0107】
【表10】

【0108】
有機EL素子の実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例においては、特に断りのない限り、混合比は全て重量比を示す。真空蒸着法は10−6Torrの真空中で、基板加熱、冷却等の温度制御なしの条件下で行った。また、素子の発光特性評価においては、電極面積2mm×2mmの有機EL素子の特性を測定した。なお、化合物(A)および化合物(B)は、日本化学会誌、第11巻、1540(1991年)記載の方法に従い合成した。
【0109】
実施例101
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Bayer社製BAYTRON P VP CH8000)をスピンコート法にて製膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、化合物(1)を3%および電子輸送材料(化合物(A))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度750cd/mの青色発光が得られた。
化合物(A)
【0110】
【化11】

【0111】
実施例102
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Bayer社製BAYTRON P VP CH8000)をスピンコート法にて製膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、化合物(2)を3%および電子輸送材料(化合物(B))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子(102)を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度480cd/mの青色発光が得られた。
化合物(B)
【0112】
【化12】

【0113】
実施例103
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Bayer社製BAYTRON P VP CH8000)をスピンコート法にて製膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、化合物(5)を3%および電子輸送材料(化合物(B))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子(103)を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度850cd/mの青色発光が得られた。EL発光スペクトルを、図1に示す。
【0114】
実施例104
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を得た。次いで、表1の化合物(2)を、真空蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いで電子輸送材料(化合物(C))を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子(104)を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度15000cd/mの青色発光が得られた。EL発光スペクトルを、図2に示す。
【0115】
実施例105〜117
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を得た。次いで、表1の化合物のうち表3に示す化合物を真空蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いで電子輸送材料(化合物(C))を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。これらの素子の評価結果を、表11に示す。
化合物(C
【0116】
【化13】

【0117】
【表11】

【0118】
実施例118
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を得た。次いで、表1の化合物(2)と化合物(D)とを1:50の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いでトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を蒸着して膜厚20nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度24000cd/mの青色発光が得られた。
化合物(D)
【0119】
【化14】

【0120】
実施例119〜132
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を得た。次いで、表1の化合物のうち表4に示す化合物と化合物(D)とを1:50の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いでトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。これらの素子について、評価結果を表12に示す。
【0121】
【表12】

【0122】
実施例133
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を得た。次いで、化合物(E)と表1の化合物(11)とを1:50の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いでトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度19000cd/mの青色発光が得られた。
化合物(E)
【0123】
【化15】

【0124】
実施例134〜141
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を得た。次いで、化合物(E)と表1の化合物のうち表5に示す化合物を1:50の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いでトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。これらの素子について、評価結果を表13に示す。
【0125】
【表13】

【0126】
実施例142
洗浄したITO電極付きガラス板上に、表1の化合物(80)を真空蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を得た。次いで、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−ビフェニリル)−N,N’−ジフェニルベンジジンを真空蒸着して20nmの正孔輸送層を得た。さらに、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚60nmの電子注入型発光層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでアルミニウムを200nm蒸着して電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度36000cd/mのトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体の緑色発光が得られた。
【0127】
実施例143
ITO電極付きガラス板上に、化合物(F)を蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を形成した後、表1の化合物(79)を蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を形成した。次に、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を蒸着して膜厚60nmの電子注入性発光層を形成し、その上に、フッ化リチウムを1nm、さらにアルミニウムを200nm真空蒸着によって電極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度30000cd/mのトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体の緑色発光が得られた。
化合物(F)
【0128】
【化16】

【0129】
実施例144〜158
ITO電極付きガラス板上に、化合物(F)を蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を形成した後、表1の化合物のうちひょう6に示す化合物を蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を形成した。次に、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を蒸着して膜厚60nmの電子注入性発光層を形成し、その上に、フッ化リチウムを1nm、さらにアルミニウムを200nm真空蒸着によって電極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。これらの素子について、評価結果を表14に示す。
【0130】
【表14】

【0131】
実施例149
ITO電極付きガラス板上に、α−NPDを蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を形成した。表1中の化合物(63)と化合物(G)とを9:1の組成比で共蒸着して膜厚25nmの発光層を形成した。さらにBCPを蒸着して15nmの正孔阻止層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚25nmの電子注入層を形成した。その上に、フッ化リチウム(LiF)を1nm、さらにアルミニウム(Al)を100nm蒸着によって陰極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。この素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率は7.1%を示した。また、発光輝度200(cd/m)で定電流駆動したときの半減寿命は1000時間以上であった。
化合物(G)
【0132】
【化17】

【0133】
実施例150
ITO電極付きガラス板上に、銅フタロシアニンを蒸着して膜厚35nmの正孔注入層を形成した。さらに、NPDを蒸着して膜厚20nmの正孔輸送層を形成した。化合物(H)蒸着して膜厚35nmの発光層を形成した。さらに、表1中の化合物(1)を蒸着して膜厚30nmの電子輸送層を形成した。その上に、フッ化リチウム(LiF)を1nm、さらにアルミニウム(Al)を200nm真空蒸着によって電極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。この素子の最大発光輝度は、13000cd/mであった。
化合物(H)
【0134】
【化18】

【0135】
実施例151
ITO電極付きガラス板上に、α−NPDを60nm蒸着して正孔注入層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚20nmの発光層を形成した。表1中の化合物(6)を蒸着して膜厚30nmの電子輸送層を形成した。その上に、酸化リチウム(LiO)を1nm、さらにアルミニウム(Al)を100nm蒸着によって陰極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。この素子は、最大発光輝度18000cd/mのAlq3の緑色発光が得られた。
【0136】
実施例152
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を得た。次いで、化合物(H)を蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いで表1の化合物(17)を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度25000cd/mの青色発光が得られた。
【0137】
実施例153〜161
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を得た。次いで、化合物(H)を蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いで表1の化合物のうち表7に示す化合物を蒸着して膜厚30nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。これらの素子について、評価結果を表15に示す。
【0138】
【表15】

【0139】
実施例162
ITO電極付きガラス板上に、α−NPDを蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を形成した。ついで表1の化合物(29)を蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した。さらに、化合物(A)を蒸着して7nmの正孔阻止層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚15nmの電子注入層を形成した。その上に、フッ化リチウム(LiF)を1nm、さらにアルミニウム(Al)を100nm蒸着によって陰極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。この素子は、最大発光輝度21000(cd/m)で、青色のEL発光が確認された。
実施例163〜168
洗浄したITO電極付きガラス板上に、α−NPDを蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を形成した。ついで表1の化合物のうち表8に示す化合物を蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した。さらに、化合物(I)を蒸着して7nmの正孔阻止層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚15nmの電子注入層を形成した。その上に、フッ化リチウム(LiF)を1nm、さらにアルミニウム(Al)を100nm蒸着によって陰極を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。これらの素子について、評価結果を表16に示す。
化合物(I)
【0140】
【化19】

【0141】
【表16】

【0142】
実施例101〜168から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた有機EL素子は、特に優れた性能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
一般式[1]
【化1】

[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。また、R〜R、R〜R、R〜Rは、それぞれ隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。]
【請求項2】
とRおよび/またはRとRが、一体となって環を形成する請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項3】
下記一般式[2]で表される請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
一般式[2]
【化2】


[式中、R〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。また、R〜R20は隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。]
【請求項4】
陽極と陰極からなる一対の電極間に、発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層が請求項1から3いずれか記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
下記一般式[3]で表される化合物。
一般式[3]
【化3】

[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。また、R〜Rは隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。]

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−162694(P2011−162694A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28221(P2010−28221)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100086128
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正明
【Fターム(参考)】