説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】作成が容易で、かつ耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する
【解決手段】少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも高分子発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、高分子発光層が配置された側とは反対側の陰極面が、酸素透過率が200(cm3 /m2 ・24h・atm)以下であり、水蒸気透過率が200(g/m2 ・24h・atm)以下であり、ガラスまたはガスバリア性高分子からなる基材で覆われている有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
高分子発光層が配置された側とは反対側の陰極面に、粘着剤層を設け、該粘着剤層に、前記のガラスまたはガスバリア性高分子からなる基材を粘着し、貼合することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性が良好な有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機E
L素子ということがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
無機蛍光体を発光材料として用いた無機エレクトロルミネッセンス素子(以下
、無機EL素子ということがある。)は、例えばバックライトとしての面状光源
やフラットパネルディスプレイ等の表示装置に用いられているが発光させるのに
高電圧の交流が必要であった。
近年、Tangらは有機蛍光色素を発光層とし、これと電子写真の感光体等に
用いられている有機電荷輸送化合物とを積層した二層構造を有する有機EL素子
を作製し、低電圧駆動、高効率、高輝度の有機EL素子を実現させた(特開昭5
9−194393号公報)。有機EL素子は、無機EL素子に比べ、低電圧駆動
、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという特徴があることから素
子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多くの試みが報告されてい
る〔ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J
.Appl.Phys.)第27巻、L269頁(1988年)〕、〔ジャーナ
ル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Appl.Phys.)第65巻、
3610頁(1989年)〕。
【0003】
また、高分子の発光材料としては、これまでに、WO9013148号公開明
細書、特開平3−244630号公報、アプライド・フィジックス・レターズ(
Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)などで
提案されていた。WO9013148号公開明細書の実施例には、可溶性前駆体
を電極上に成膜し、熱処理を行なうことにより共役系高分子に変換されたポリ−
p−フェニレンビニレン薄膜が得られ、それを用いたEL素子が開示されている

更に、特開平3−244630号公報には、それ自身が溶媒に可溶であり、熱
処理が不要であるという特徴を有する共役系高分子が例示されている。アプライ
ド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1
982頁(1991年)にも溶媒に可溶な高分子発光材料およびそれを用いて作
成した有機EL素子が記載されている。
しかし、これらの材料を用いて作製された有機EL素子は、ガラス基板上に、
透明電極、絶縁層、発光層、絶縁層、背面電極を形成し、更に封止器で密閉され
た構成からなる無機EL素子に比べ、酸素や水分の影響を受けやすく、電極界面
での剥離や金属電極の酸化により、輝度、発光効率などが低下してしまうという
欠点があった。
【0004】
有機EL素子も封止により長寿命化を図る試みが既に報告されている。特開平
5−182759号公報では、透明電極及び背面電極によって挟持された有機E
L層と、この有機EL層を覆うように形成された耐湿性を有する光硬化性樹脂層
と、この光硬化性樹脂層の上部に固着された透水性の小さい基板とを具備するこ
とを特徴とする有機EL素子で耐久性が向上したことが開示されている。ここで
は、光硬化性樹脂層が背面電極に直接接触する構成となっている。さらに、光硬
化性樹脂の成分が、電極に悪影響を及ぼすことを阻止するため、背面電極を形成
した後、高真空下、スパッターによりSiO2 膜を成膜し、この上部に光硬化性
樹脂層を介して非透水性基板を固着させる方法も記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまで報告された高分子蛍光体を用いた有機EL素子では、
耐久性が十分とはいえず、また、光硬化性樹脂を用いた封止では、光硬化性樹脂
が素子の背面全体に接触するため、光硬化性樹脂の種類が制約されること、さら
には、光硬化時の収縮による剥離の問題がある。一方、この問題を解決するため
、背面をSiO2 膜で覆った後、光硬化性樹脂で封止する方法があるが、高真空
下でのSiO2 膜の形成工程を必要とすること、さらには、SiO2 膜が親水性
であることから、光硬化性樹脂が制約を受ける欠点があった。
本発明の目的は、作成が容易で、かつ耐久性に優れた有機エレクトロルミネッ
センス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような事情をみて、本発明者等は、高分子蛍光体を発光層として用いた有
機EL素子の耐久性を向上させるために鋭意検討してきた。その結果、陰極上に
酸素および水蒸気透過性の小さい基材を配置することにより、有機エレクトロル
ミネッセンス素子の耐久性が向上することを見い出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は次に記す発明である。
〔1〕少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる
電極間に、少なくとも高分子発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子
において、高分子発光層が配置された側とは反対側の陰極面が、酸素透過率が2
00(cm3 /m2 ・24h・atm)以下であり、水蒸気透過率が200(g
/m2 ・24h・atm)以下である基材で覆われていることを特徴とする有機
エレクトロルミネッセンス素子。
〔2〕陰極と基材とが粘着剤により粘着されてなることを特徴とする〔1〕記載
の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔3〕陰極が配置された側とは反対側の基材面が、ハードコート層で覆われてい
ることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の有機エレクトロルミネッセンス素
子。
【0008】
〔4〕高分子発光層が、溶媒に可溶な高分子であって、該高分子の数平均分子量
が103 〜107 であり、繰り返し単位として下記式(1)、(2)および(3

【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

(式中、Ar1 は、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からな
る芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からな
る5員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣
接する2つの基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する
炭素原子および窒素原子の個数の合計が偶数であるものを示す。
Ar2 は、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香
族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる6員
環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する
2つの基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原
子および窒素原子の個数が1、3または5のいずれかであるものを示す。
Ar3 、Ar4 は、それぞれ独立に共役結合に関与する炭素原子数が4個以上
20個以下からなるアリーレン基または複素環化合物基を示す。R1 、R2 、R
3 、R4 、R6 、R7 は、それぞれ独立に水素、シアノ基、炭素数1〜20のア
ルキル基および炭素数6〜18のアリール基からなる群から選ばれた基である。
5 は炭素数1〜22の2価の炭化水素基または複素環化合物基からなる基であ
る。X1 、X2 は、それぞれ独立に−O−、−S−、−COO−または−OCO
−を示し、m、nは、0または1である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも1種含む高分子蛍光体を含有することを特
徴とする〔1〕記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔5〕高分子蛍光体が、〔4〕記載の式(1)と式(2)、または式(1)と式
(3)、または式(2)と式(3)、または式(1)と式(2)と式(3)で表
される繰り返し単位を少なくとも1種含む共重合体であることを特徴とする請求
項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔6〕陰極と発光層との間に該発光層に隣接して電子輸送性化合物からなる層を
設けたことを特徴とする〔1〕記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔7〕陽極と発光層との間に該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層を
設けたことを特徴とする〔1〕記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔8〕陰極と発光層との間に該発光層に隣接して電子輸送性化合物からなる層と
、陽極と発光層との間に該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層とを設
けたことを特徴とする〔1〕記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、陰極上部に、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材を有する有機
EL素子は、電極の劣化の進行を抑え、大気中でも安定に駆動することができる
ので、バックライトとしての面状光源,フラットパネルディスプレイ等の装置と
して好ましく使用できる。
【0013】
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
本発明で用いられる酸素透過率が200(cm3 /m2 ・24h・atm)以
下であり、水蒸気透過率が200(g/m2 ・24h・atm)以下である基材
(以下、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材と略称することがある。)とし
ては、この条件を満たすものであれば種類を問わないが、使いやすさの面から、
ガラスまたはガスバリヤー性高分子が挙げられる。該ガスバリヤー性高分子とし
ては、具体的には、ポリ塩化ビニリデンおよびその共重合体;ポリエステル、例
えばポリエチレンテレフタレート;メタキシリレンジアミンを出発原料として合
成される特殊ナイロンや非晶性ナイロン;ポリアクリロニトリル、例えばアクリ
ロニトリルを主成分とし、アクリル酸メチルおよびブタジエンより構成されるグ
ラフト重合体;芳香族ポリアミド、例えばポリ(p−フェニレンテレフタルアミ
ド);ポリスルホン;サーモプラスチック液晶ポリエステルなどを挙げることが
できる。これらの中で好ましくはポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、液晶ポリ
エステルなどが挙げられる。
酸素および水蒸気の透過性が小さい基材で陰極を覆う方法としては、陰極に悪
影響を及ぼさなければ、その方法は問わない。具体的には、基材、例えば、ガラ
スで電極上部を覆い、端部を封止剤、例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で封
止する方法などが挙げられるが、操作の容易性から、粘着剤により、粘着する方
法が好ましい。粘着される基板は、一層でもよいが、必要に応じて粘着剤層を介
して二層以上積層してもよい。
【0014】
本発明で用いられる粘着剤としては、陰極に悪影響を及ぼさないものであれば
種類を問わないが、使いやすさの面からゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポ
リビニルエーテル系の粘着剤が好ましい。具体的には、ゴム系粘着剤として、ポ
リイソプレン系、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)系、スチレ
ン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)系、ブチルゴム系、ポリ
イソブチレン系;アクリル系粘着剤として、アクリルエステル系、例えばn−ブ
チルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレー
ト、イソノニルアクリレートを主モノマーとして用いた重合体などが例示される
。これらの中でアクリル系粘着剤が好ましい。
【0015】
酸素および水蒸気の透過性が小さい基材層を設けることで、有機EL素子の耐
久性を向上させることができるが、さらに、酸素および水蒸気の透過性が小さい
基材を保護するために、これを覆うようにハードコート層を設けることもできる

本発明で用いられるハードコート層の形成方法およびそれに用いるハードコー
ト剤は、公知の方法とハードコート剤を使用でき、特に制限はないが、粘着剤お
よび粘着剤層の上部に粘着された、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材を溶
解あるいは膨潤させる溶媒を含有しないハードコート剤、またはハードコート剤
自体でも粘着剤および粘着剤層の上部に粘着された、酸素および水蒸気の透過性
が小さい基材を溶解または膨潤させないものが好ましい。
【0016】
ハードコート剤としては、オルガノポリシロキサン系、光硬化型樹脂系のアク
リルオリゴマー系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエ
ステルアクリレート系ハードコート剤、熱硬化型樹脂系のアクリルシリコン系ハ
ードコート剤、セラミックなどの無機化合物が例示される。具体的には、プラス
チックのコーティング技術総覧「(株)産業技術サービスセンター発行、第18
3頁〜191頁」に記載されているものが例示される。これらの中で、基材との
親和性および成膜性の観点から、オルガノポリシロキサン系ハードコート剤また
は光硬化型樹脂系のアクリルオリゴマー系ハードコート剤が好ましい。
【0017】
ハードコート剤の成膜方法としては、溶剤に溶解もしくは分散させた状態から
のディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法などの公知の塗布法が例
示される。これらの成膜法によって成膜した後、使用するハードコート剤に応じ
た紫外線照射や、熱処理などをすることにより硬化させる。
ハードコート層の厚みは0.1μm以上100μm以下が好ましい。
【0018】
本発明の高分子蛍光体を用いた有機EL素子は、可視領域の発光を利用するの
で高分子蛍光体の固体状態での蛍光スペクトルの最大ピーク波長が400nmか
ら800nmの範囲にあることが好ましい。
本発明で用いられる高分子蛍光体は、強い蛍光を示すものであればその種類を
問わないが、加工性の点から、その中間体または重合体が可溶性であるものが好
ましい。
具体的には、可溶性であり、薄膜で強い蛍光を示す、式(1)、(2)、(3
)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含む重合体または共重合体がさ
らに好ましい。
【0019】
該重合体または共重合体の共役鎖長は、電荷移動の観点からは長い方がよく、
一方、蛍光の量子収率が高い高分子蛍光体を得る観点からは、共役鎖長は短い方
がよいので、該高分子蛍光体中の式(2)および/または式(3)で示される繰
り返し単位と式(1)で示される繰り返し単位の量を適宜選択することにより、
共役鎖長を適度な大きさにすることができる。
【0020】
本発明に用いられる高分子蛍光体において式(1)のAr1 は、共役結合に関
与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基、ヘテロ原子を
含有する炭素数4個以上20個以下からなる5員環以上の複素環化合物基から選
ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つの基と結合した2つの炭素
原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数の合計
が偶数であるものであり、化7に示す2価の芳香族化合物基またはその誘導体基
、2価の複素環化合物基またはその誘導体基、およびそれらを組み合わせて得ら
れる基などが例示される。
【0021】
【化4】

(式中、R8 〜R42は、それぞれ独立に、水素、シアノ基、炭素数1〜20のア
ルキル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基;炭素数6〜18のアリール基お
よびアリールオキシ基;並びに炭素数4〜14の複素環化合物基からなる群から
選ばれた基である。)
これらの中でフェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニレン基、置換ビフェ
ニレン基、ナフタレンジイル基、置換ナフタレンジイル基、アントラセン−9,
10−ジイル基、置換アントラセン−9,10−ジイル基、ピリジン−2,5−
ジイル基、置換ピリジン−2,5−ジイル基、チエニレン基および置換チエニレ
ン基が好ましい。
さらに好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、ピ
リジン−2,5−ジイル基、チエニレン基である。
【0022】
ここで、置換基について述べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル
基、オクチル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、
ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。
また、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プ
ロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキ
シ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、
メトキシ基、エトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキ
シ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブ
チルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ
基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、メチルチオ基、エチルチオ
基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ま
しい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1 〜C12アルコキシフェニル基(こ
こで、C1 〜C12は炭素数1〜12であることを示す。以下においても同様であ
る。)、4−C1 〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基
などが例示される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。
複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2
−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
【0023】
Ar2 は隣接する基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合
に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基、ヘテロ原
子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる6員環以上の複素環化合物基か
ら選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つの基と結合した2つの
炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数が
1,3または5のいずれかであるものであり、化8に示す2価の芳香族化合物基
またはその誘導体基、2価の複素環化合物基またはその誘導体基、およびそれら
を組み合わせて得られる基などが例示される。
【0024】
【化5】

(式中、R43〜R75は、それぞれ独立に、水素、シアノ基、炭素数1〜20のア
ルキル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基;炭素数6〜18のアリール基お
よびアリールオキシ基;ならびに炭素数4〜14の複素環化合物基からなる群か
ら選ばれた基である。)
これらの中でフェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニレン基、置換ビフェ
ニレン基、ナフタレンジイル基、置換ナフタレンジイル基、アントラセンジイル
基、置換アントラセンジイル基、ピリジンジイル基、置換ピリジンジイル基が好
ましい。
さらに好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、ピ
リジンジイル基である。
【0025】
ここで、置換基について述べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル
基、オクチル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、
ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。
また、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プ
ロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキ
シ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、
メトキシ基、エトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキ
シ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブ
チルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ
基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、メチルチオ基、エチルチオ
基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ま
しい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1 〜C12アルコキシフェニル基、4
−C1 〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示
される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。
複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2
−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
【0026】
Ar3 、Ar4 はそれぞれ独立に、共役結合に関与する炭素原子数が4個以上
20個以下からなるアリーレン基または複素環化合物基であり、化7に示す2価
の芳香族化合物基またはその誘導体基、2価の複素環化合物基またはその誘導体
基、およびそれらを組み合わせて得られる基などが例示される。
【0027】
また、前記(3)式のX1 およびX2 は、溶解性、安定性および合成の容易さ
の観点から、それぞれ独立に−O−、−COO−または−OCO−が好ましく、
−O−がより好ましい。
【0028】
また、前記式(3)のR5 において、炭化水素としてはメチレン基、エチレン
基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、
オクチレン基、デシレン基、ラウリレン基、ビニレン基、フェニレン基、ナフチ
レン基、アントリレン基などであり、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基
、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デシレン基が好ましい。
複素環化合物としては、チエニレン基、フラン−2,5−ジイル基、ピリジン
−2,3−ジイル基、ピリジン−2,4−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル
基、ピリジン−2,6−ジイル基などが例示される。
【0029】
また、前記式(1)のR1 、R2 、式(2)のR3 、R4 、式(3)のR6
7 において、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プ
ロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシ
ル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、ペンチル基、ヘキシル
基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1 〜C12アルコキシフェニル基、4
−C1 〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示
される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。
複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2
−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
また、R1 とR2 、R3 とR4 、R6 とR7 のそれぞれ少なくともいずれか一
方が水素であることが好ましい。
【0030】
なお、本発明に用いられる高分子蛍光体は、ランダム、ブロックまたはグラフ
ト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブ
ロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い共重
合体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム
共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。
【0031】
本発明に用いる高分子蛍光体は、モノマーの組み合わせにより、主鎖に剛直な
共役部分と柔軟な連結部分を有する構造とすることができるため、基本的には溶
剤に溶解させて成膜することが困難ではないが、より溶解性に優れ、成膜性のよ
い重合体を得るためには、1つの共役部分当たりに少なくとも1つ、炭素数4〜
20のアルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルチオ基;炭素数6〜18のア
リール基もしくはアリールオキシ基;または炭素数4〜14の複素環化合物基を
置換基として1個以上核置換されたアリール基または複素環化合物基が含まれる
ことがより好ましい。
【0032】
これらの置換基としては以下のものが例示される。炭素数4〜20のアルキル
基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デ
シル基、ラウリル基などが挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オ
クチル基が好ましい。
また、炭素数4〜20のアルコキシ基としては、ブトキシ基、ペンチルオキシ
基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基
、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘ
プチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、
ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げら
れ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ま
しい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1 〜C12アルコキシフェニル基、4
−C1 〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示
される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。複素環化合物基とし
ては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピ
リジル基などが例示される。
【0033】
これら置換基の数は、高分子の分子量と共役鎖長によっても異なるが、溶解性
の高い共重合体を得る観点から、これらの置換基が分子量600当たり1つ以上
であることがより好ましい。
なお、本発明に用いる高分子蛍光体に対する良溶媒としては、クロロホルム、
塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなど
が例示される。高分子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に
0.1wt%以上溶解させることができる。
【0034】
本発明に用いられる重合体の重合度は特に限定されず、繰り返し構造やその割
合によっても変わる。成膜性の点から一般には繰り返し構造の合計数で好ましく
は4〜10000、さらに好ましくは4〜3000、特に好ましくは5〜200
0である。
【0035】
有機EL素子作成の際に、これらの有機溶媒可溶性の重合体を用いることによ
り、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけで
よく、また後述する電荷輸送材料を混合した場合においても同様な手法が適用で
き、製造上非常に有利である。
【0036】
本発明の有機EL素子の構造については、少なくとも一方が透明または半透明
である一対の電極間に設ける発光層中に高分子蛍光体からなる発光材料が用いら
れており、電極上部に、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材を有したもので
あれば、特に制限はなく、公知の構造が採用される。
例えば、該高分子蛍光体からなる発光層、もしくは該高分子蛍光体と電荷輸送
材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する)との混合物からなる発光
層の両面に一対の電極を有する構造のもの、さらに陰極と発光層の間に、該発光
層に隣接して電子輸送材料を含有する電子輸送層、および/または陽極と発光層
の間に、該発光層に隣接して正孔輸送材料を含む正孔輸送層を積層したものが例
示される。
また、発光層や電荷輸送層は1層の場合と複数の層を組み合わせる場合も本発
明に含まれる。さらに、発光層に例えば下記に述べる該高分子蛍光体以外の発光
材料を混合使用してもよい。また、該高分子蛍光体および/または電荷輸送材料
を高分子化合物に分散させた層とすることもできる。
【0037】
本発明に用いられる高分子蛍光体とともに使用される電荷輸送材料、すなわち
電子輸送材料または正孔輸送材料としては公知のものが使用でき、特に限定され
ないが、正孔輸送材料としてはピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチ
ルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)
、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p
−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン
)およびその誘導体等が、電子輸送材料としてはオキサジアゾール誘導体、アン
トラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキ
ノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンス
ラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエ
チレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよ
びその誘導体の金属錯体等が例示される。
【0038】
具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開
平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−
37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される
。正孔輸送材料としてはトリフェニルジアミン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバ
ゾール)、電子輸送材料としてはオキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンおよび
その誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよび
その誘導体の金属錯体が好ましく、特に、正孔輸送材料としては4,4’−ビス
(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、ポリ(N−ビ
ニルカルバゾール)、電子輸送材料としては2−(4−ビフェニリル)−5−(
4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、ア
ントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好ましい。
これらのうち、電子輸送性の化合物と正孔輸送性の化合物のいずれか一方、ま
たは両方を同時に使用すればよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上
を混合して用いてもよい。
【0039】
発光層と電極の間に電荷輸送層を設ける場合、これらの電荷輸送材料を使用し
て電荷輸送層を形成すればよい。
また、電荷輸送材料を発光層に混合して使用する場合、電荷輸送材料の使用量
は使用する化合物の種類等によっても異なるので、十分な成膜性と発光特性を阻
害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決めればよい。通常、発光材料に対して
1〜40重量%であり、より好ましくは2〜30重量%である。
【0040】
本発明に用いられる高分子蛍光体と共に使用できる既知の発光材料としては特
に限定されないが、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンおよびその誘導体
、ペリレンおよびその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シア
ニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳
香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンおよびその誘導体、テトラフェ
ニルブタジエンおよびその誘導体などを用いることができる。具体的には、例え
ば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているも
の等、公知のものが使用可能である。
【0041】
つぎに、本発明の有機EL素子の代表的な作製方法について述べる。陽極およ
び陰極からなる一対の電極で、透明または半透明な電極としては、ガラス、透明
プラスチック等の透明基板の上に、透明または半透明の電極を形成したものが用
いられる。
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられ
る。具体的にはインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、酸化スズ等からなる
導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)、Au、Pt、Ag、Cu
等が用いられる。作製方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法な
どが用いられる。
【0042】
次いで、この陽極上に発光材料として上記高分子蛍光体を含む発光層を形成す
る。形成方法としてはこれら材料の溶液または混合液あるいは溶融液を使用して
スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロ
ールコート法等の塗布法が例示されるが、溶液または混合液をスピンコーティン
グ法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法等の
塗布法により成膜するのが特に好ましい。
【0043】
発光層の膜厚としては0.5nm〜10μm、好ましくは1nm〜1μmであ
る。電流密度を上げて発光効率を上げるためには10〜500nmの範囲が好ま
しい。
なお、塗布法により薄膜化した場合には、溶媒を除去するため、減圧下あるい
は不活性雰囲気下、30〜200℃、好ましくは60〜100℃の温度で加熱乾
燥することが望ましい。
【0044】
また、該発光層と電荷輸送層(正孔輸送層および電子輸送層の総称を意味する
)とを積層する場合には、上記の成膜方法で発光層を設ける前に陽極の上に正孔
輸送層を形成すること、および/または発光層を設けた後にその上に電子輸送層
を形成することが好ましい。
【0045】
電荷輸送層の成膜方法としては、特に限定されないが、粉末状態からの真空蒸
着法、または溶液に溶かした後のスピンコーティング法、キャスティング法、デ
ィッピング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法、または高分子化合物
と電荷輸送材料とを溶液状態または溶融状態で混合し分散させた後のスピンコー
ティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート
法等の塗布法を用いることができる。混合する高分子化合物としては、特に限定
されないが、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対す
る吸収が強くないものが好適に用いられる。
【0046】
例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、
ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその
誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネ
ート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート
、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどが例示される。成膜が容
易に行なえるという点では、塗布法を用いることが好ましい。
【0047】
電荷輸送層の膜厚は、少なくともピンホールが発生しないような厚みが必要で
あるが、あまり厚いと、素子の抵抗が増加し、高い駆動電圧が必要となり好まし
くない。したがって、電荷輸送層の膜厚は好ましくは0.5nm〜10μm、さ
らに好ましくは1nm〜1μm、特に好ましくは5〜200nmである。
【0048】
次いで、発光層または電子輸送層の上に陰極を設ける。この陰極は電子注入陰
極となる。その材料としては、特に限定されないが、イオン化エネルギーの小さ
い材料が好ましい。例えば、Al、In、Mg、Ca、Li、Mg−Ag合金、
In−Ag合金、Mg−In合金、Mg−Al合金、Mg−Li合金、Al−L
i合金、グラファイト薄膜等が用いられる。陰極の作製方法としては真空蒸着法
、スパッタリング法等が用いられる。
【0049】
次いで、陰極を覆うように粘着剤層を設けることが好ましい。粘着剤層の形成
方法としては、特に限定されないが、溶液または溶融状態からのスピンコーティ
ング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法等
の塗布法を用いることができるが、取扱いやすさの点からあらかじめ、酸素およ
び水蒸気の透過性が小さい基板上に粘着剤層を形成する方法が好ましい。
【0050】
次いで、粘着剤層の上部に、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材が貼合さ
れる。貼合される基材は、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材一層でもよい
が、必要に応じて粘着剤層を介して二層以上積層してもよい。取扱いやすさの点
から、あらかじめ、酸素および水蒸気の透過性が小さい基材上に粘着剤層を形成
したものを貼合する方法が好ましい。
【0051】
次いで、ハードコート層を形成してもよく、ハードコート剤の成膜方法として
は、前記のとおりであり、これらの成膜法によって成膜した後、使用するハード
コート剤に応じた紫外線照射や、熱処理などをすることにより硬化させる。
【実施例】
【0052】
以下本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<素子構造>
本発明の有機EL素子の一実施例を示す。ガラス基板上に、ITO透明電極、
高分子発光層、電子輸送層、陰極(背面電極)が積層され、さらに、この陰極を
覆うように形成された粘着剤層と、この粘着剤層の上部に粘着された酸素および
水蒸気の透過性が小さい基材から構成されている。
<高分子蛍光体1の合成>
2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジクロライドをN,N−ジメチル
ホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合
成した。得られたホスホニウム塩47.75重量部とテレフタルアルデヒド6.
7重量部とを、エチルアルコールに溶解させた。2重量部のリチウムエトキシド
を含むエチルアルコール溶液をホスホニウム塩とジアルデヒドのエチルアルコー
ル溶液に滴下し、室温で3時間重合させた。一夜室温で放置した後、沈殿を濾別
し、エチルアルコールで洗浄後、クロロホルムに溶解、これにエタノールを加え
再沈精製した。これを減圧乾燥して、重合体8重量部を得た。これを高分子蛍光
体1という。
【0053】
該高分子蛍光体1のポリスチレン換算の数平均分子量は、1.0×104 であ
った。ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分
子量を求めた。該高分子蛍光体1の構造については赤外吸収スペクトル、NMR
で確認した。
【0054】
<素子の作成および評価>
スパッタリングによって、40nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、
実施例1で合成した高分子蛍光体1の1.0wt%クロロホルム溶液を用いて、
ディッピングにより50nmの厚みで成膜した。次いで、これを減圧下80℃で
1時間乾燥した後、電子輸送層として、トリス(8−キノリノール)アルミニウ
ム(以下Alq3 と略すことがある。)を0.1〜0.2nm/sの速度で70
nm蒸着した。最後に、その上に陰極としてマグネシウム−銀合金(Mg:Ag
=9:1重量比)を150nm蒸着して有機EL素子を作製した。蒸着のときの
真空度はすべて8×10-6Torr以下であった。
この素子の背面電極上に、あらかじめポリエステルフィルム上にアクリル酸系
粘着剤層を形成したフィルムを貼合した。
この素子を大気中で駆動したところ、20時間後でも発光が認められた。
【0055】
比較例1
背面電極上に、粘着された酸素および水蒸気の透過性が小さい基材がないほか
は、実施例1と同様な素子を大気中で駆動し、2時間後に観察したところ発光し
ない部分が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも高分子発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、高分子発光層が配置された側とは反対側の陰極面が、酸素透過率が200(cm3 /m2 ・24h・atm)以下であり、水蒸気透過率が200(g/m2 ・24h・atm)以下であり、ガラスまたはガスバリア性高分子からなる基材で覆われている有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
高分子発光層が配置された側とは反対側の陰極面に、粘着剤層を設け、該粘着剤層に、前記のガラスまたはガスバリア性高分子からなる基材を粘着し、貼合することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
さらに、基材を覆うようにハードコート層を設けることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
高分子発光層が、溶媒に可溶な高分子であって、該高分子の数平均分子量が103 〜10
7 であり、繰り返し単位として下記式(1)、(2)および(3)
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、Ar1 は、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる5員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つの基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数の合計が偶数であるものを示す。Ar2 は、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる6員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つの基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数が1、3または5のいずれかであるものを示す。Ar3 、Ar4 は、それぞれ独立に共役結合に関与する炭素原子数が4個以上20個以下からなるアリーレン基または複素環化合物基を示す。R1 、R2 、R3 、R4 、R6 、R7 は、それぞれ独立に水素、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数6〜18のアリール基からなる群から選ばれた基である。R5 は炭素数1〜22の2価の炭化水素基または複素環化合物基からなる基である。X1 、X2 は、それぞれ独立に−O−、−S−、−COO−または−OCO−を示し、m、nは、0または1である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも1種含む高分子蛍光体を含有する高分子発光層であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
高分子蛍光体が、請求項4記載の式(1)と式(2)、または式(1)と式(3)、また
は式(2)と式(3)、または式(1)と式(2)と式(3)で表される繰り返し単位を
少なくとも1種含む共重合体であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
有機エレクトロルミネッセンス素子が、陰極と発光層との間に該発光層に隣接して電子輸送性化合物からなる層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
有機エレクトロルミネッセンス素子が、陽極と発光層との間に該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
有機エレクトロルミネッセンス素子が、陰極と発光層との間に該発光層に隣接して電子輸送性化合物からなる層と、陽極と発光層との間に該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層とを設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−4561(P2008−4561A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216919(P2007−216919)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【分割の表示】特願2006−255387(P2006−255387)の分割
【原出願日】平成6年12月27日(1994.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】