説明

有機エレクトロルミネッセンス装置のための材料

本発明は、窒素原子を介して結合される二座配位子および二つのホスフィンまたはアルシン配位子との単核中性銅(I)錯体、電子素子の製造のためのその使用、およびこれら錯体を含んでなる電子装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本発明は、式A([(N∩N)CuL])の単核中性銅(I)錯体、およびオプトエレクトロニック素子を製造するためのその使用に関する:
【化1】

【0002】
ここで、N∩Nは、二つの窒素原子を介して銅に結合するキレート形成性のN−ヘテロ環配位子であり、Lは、相互に独立に、ホスフィンまたはアルシン配位子である。該二つの配位子Lはまた、相互に結合して2価配位子を形成してもよい。この場合、該単核銅(I)錯体が電気的に中性になるように、a)N∩Nはマイナス1価で、且つ二つの配位子(ホスフィンまたはアルシン配位子)は中性(好ましい実施形態)でなければならいか、或いは、b)N∩Nは中性で、且つ二つのホスフィン/アルシン配位子は合計でマイナス1価に帯電されなければならない。
【序論】
【0003】
ディスプレー画面および照明技術の領域における現在の変化は顕著である。厚さ0.5mm未満の平面ディスプレーまたは発光エリアを製造することが可能であろう。これらは多くの魅力的な性質を特徴としている。例えば、エネルギー消費が非常に低い壁紙のような、照明エリアを開発することが可能であろう。しかし、特に興味深いことは、今までは達成できなかった色忠実度、輝度および視野角独立性を有する低重量かつ極めて低消費電力のカラーディスプレー画面を製造することが可能になることであろう。ディスプレー画面を、小画面ディスプレーとして、数mの面積を有する剛性または可撓性の形態の大画面ディスプレーとして、また透過性もしくは反射型ディスプレーとして設計することが可能であろう。更に、スクリーン印刷、インクジェット印刷または真空蒸着のような単純且つコスト節約的製造法を採用することが可能である。これは、従来のディスプレー画面に比較して安価な製造を容易にするであろう。この新規な技術はOLED、即ち、有機発光装置の原理に基づいている。
【0004】
このタイプの素子は、図1に模式的かつ単純化された方法で示すように、主に有機層からなっている。例えば5V〜10Vの電圧において、導電性材料層、例えばアルミニウム製の陰極から薄い電子伝導層へと負の電子が放出され、陽極の方向へと移動する。後者は、例えば透明で導電性の薄い酸化インジウム錫からなっており、そこからは正電荷のキャリア(「ホール」)がホール伝導性有機層の中へと移動する。これらのホールは電子とは反対方向に、より正確には陰極に向かって移動する。中心層、即ち、同様に有機材料からなるエミッタ層は、更に特別なエミッタ分子を含んでおり、該分子またはその近傍においては二つの電荷キャリアが再結合し、エミッタ分子のエネルギー的に励起された状態を生じる。次いで、この励起状態はそのエネルギーを光として放出する。
【0005】
該OLED素子は、照明素子のような大面積設計またはディスプレーの画素のような極小設計を有することができる。高効率のOLEDを構築するための重要な因子は、使用する発光材料(エミッタ分子)である。これらは、有機化合物または有機金属化合物を使用して種々の方法で達成することができる。OLEDの発光量は、三重項エミッタと称する有機金属物質を用いると、純粋の有機エミッタ材料よりも顕著に大きくできることを示すことができる。この性質のために、有機金属材料の更なる開発は本質的に重要である。OLEDの機能は、既に頻繁に記述されてきた[i〜vi]。特に高効率の装置を、高い発光量子収率を有する有機金属錯体を使用して達成することができる。これらの材料は、屡々、三重項エミッタまたは燐光エミッタと称される。この知識は長い間知られていた[i〜v]。三重項エミッタについては、既に多くの保護権が出願され、または権利付与されてきた[vii〜xix]。
【0006】
三重項エミッタは、ディスプレー(画素として)および照明エリア(例えば発光壁紙として)における光発生の大きな能力を有している。非常に多数の三重項エミッタ材料が既に特許されており、また最初の装置において技術的に用いられている。今までの解決策は、より正確には次の領域において欠点/問題を有している:
・OLED装置におけるエミッタの長期安定性
・熱的安定性
・水および酸素に対する化学的安定性。
【0007】
・化学的多様性
・重要な発光色の利用可能性
・製造の再現性
・電流から光への高い変換効率の達成能力
・高効率と同時に高い光密度を達成する能力
・安価なエミッタ材料の使用
・使用する材料の毒性/使用した発光素子の処分
・青色発光OLEDの開発
有機金属三重項エミッタは、OLEDにおけるエミッタ材料として既に成功裏に用いられている。特に、赤色発光および緑色発光の三重項エミッタを用いた非常に効率的なOLEDを構築することが可能になっている。しかし、青色発光OLEDの製造は、未だかなりの困難に遭遇している。エミッタのための適切なマトリックス材料、適切なホール伝導性および/または電子伝導性マトリックス材料がないことの他に、一つの主な困難は、今までに知られている使用可能な三重項エミッタの数が非常に限られていることである。青色発光三重項エミッタについて、最低三重項状態と基底状態の間のエネルギー分離幅が非常に大きいので、発光は、非発光性の励起状態、特に金属中心のddの熱的占有によって分子内で消光されることが多い。青色発光OLEDを製造する以前の試みでは、主に白金族の金属化合物、例えばPt(II)、Ir(III)、Os(II)が用いられた。例として、幾つかの構造式(1〜4)を下記に記載する。
【化2】

【0008】
しかし、今までに使用された青色発光三重項エミッタは、多くの点で不利であった。特に、斯かる化合物の合成は複雑で、多段階かつ時間のかかる反応を必要とする。加えて、斯かる有機金属化合物の合成は、有機溶媒中において屡々非常な高温(例えばT≧100℃)で行われる。この合成の大きな複雑さにもかかわらず、中程度ないし低い収量しか達成されないことが多い。更に、合成のためにレアメタル貴金属の塩を使用するので、今まで得ることができる青色発光三重項エミッタは価格が非常に高い(約1000ユーロ/g)。加えて、幾つかの場合には発光量子収率が非常に低く、該材料の長期の化学的安定性における改善が必要とされている。
【0009】
斯かる白金族有機金属化合物の代替は、他の更に安価な遷移金属、特に銅の有機金属錯体を使用することであろう。発光性の銅(I)錯体、例えば芳香族ジイミン配位子(例えば1,10−フェナントロリン)との銅(I)錯体は、強い赤色発光を有することが既にかなり以前から知られている[xx]。同様に、N−へテロ芳香族配位子[xxi]および/またはホスフィン配位子[xxii、xxiii、xxiv]との、強い発光を示す二核および多核の多数の銅錯体が既に記載されている。
【0010】
幾つかの銅(I)錯体が、OLEDエミッタ材料として既に提案されている。JP2006/2289936(I. Toshihiro)は、窒素含有へテロ芳香族配位子、特に置換ピラゾールとの二核および三核のCu、Ag、HgおよびPt錯体を記載している。WO2006/032449A1(A. Vogler et al.)は、三座配位トリホスフィン配位子および小さい陰イオン配位子(例えばハロゲン、CN、SCN等)との単核銅(I)錯体の使用を記載している。しかし、仮定されているのとは反対に、これは二核錯体である可能性が非常に高い[xxvi]。ジイミン配位子(例えば1,10-フェナントロリン)との電子発光性銅(I)錯体が、この型の錯体が結合した有機ポリマーを有するものとして、US2005/0221115A1(A. Tsuboyama et al.)に提案されている。OLEDおよびLEC[xxviii](発光電気化学電池)における緑色および赤色の三重項エミッタとして、種々の銅(I)/ジイミン錯体および銅クラスター[xxvii]が同様に記述されている[xxix]。架橋性の二座配位配位子との二核Cu錯体が、WO2005/054404A1(A. Tsuboyama et al.)に記載されている。
【発明の説明】
【0011】
本発明は、式Aの単核中性銅(I)錯体、およびそのオプトエレクトロニック素子における使用に関する。
【化3】

【0012】
式A
式A(以下では[(N∩N)CuL]と称する)において、N∩Nはキレート形成性のN−へテロ環配位子を表し、これは二つの窒素原子を介して銅中心に結合される。Lは、相互に独立に、ホスフィン配位子もしくはアルシン配位子を表し、ここでの二つの配位子Lはまた相互に結合されて2価の配位子を生じてもよく、または一方の配位子Lまたは両方の配位子LがN∩Nに結合して、3価または4価の配位子を生じてもよい。この場合、
a)N∩Nはマイナス1価でなければならず、且つ二つの配位子L(ホスフィンおよび/またはアルシン配位子)は中性(好ましい実施形態)でなければならないか、或いは、
b)N∩Nは中性でなければならず、且つ式Aの銅(I)錯体の全体が電気的に中性であるように、二つの配位子L(ホスフィンおよび/またはアルシン配位子)は合計でマイナス1価に帯電しなければならない。
【0013】
本発明による式Aの単核中性銅(I)錯体の特定の実施形態は、式I〜式IXの化合物によって表され、且つ以下で説明される。
【化4】

【0014】
式I〜IXで使用されている記号および指数の意味を、以下に説明する。
【0015】
現在までに提示されている銅錯体の多くは、通常は中性でなく帯電している。幾つかの場合、これは通常のオプトエレクトロニクス部品の製造および動作に際して問題を生じる。例えば、帯電した錯体が揮発性を欠いていることは真空蒸着による塗布を妨げ、帯電したエミッタは、高い電解強度に起因して、従来のOLEDの動作の際に望ましくないイオン移動を生じる。
【0016】
全ての場合に、式I〜IXの銅(I)錯体の中性は、Cu(I)がプラス1価に帯電し、且つ配位子の一方がマイナス1価に帯電されることによって与えられる。本発明による単核中性銅(I)錯体は、一つのマイナス1価に帯電した一つの配位子および一つの中性配位子を有する。
【0017】
前記錯体がOLEDの青色三重項エミッタとして適するためには、それらのS−Tエネルギー分離幅が充分に大きくなければならない(S=電子的基底状態、T=最低励起三重項状態)。このエネルギー分離幅は22,000cm−1よりも大きく、好ましくは25,000よりも大きいのがよいであろう。この要件は、本発明の錯体によって満たされる。より小さいS−Tエネルギー分離幅を有する錯体は、緑色もしくは赤色発光にも適している。
【0018】
A)陰イオン配位子N−B−Nおよび中性配位子LまたはL−B´−L(ホスフィンおよびアルシン、1価または2価)
Cu(I)中心イオンのプラス1価が中和されるように、マイナス1価に帯電した配位子を有する式IおよびIIの錯体が好ましい。
【化5】

【0019】
これらの式において、
【化6】

【0020】
であり、ここで
−Zは、出てくる毎に同一または異なって、NまたはCRであり;
Rは、出てくる毎に、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、C(=O)R、Si(R、1〜40のC原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基またはチオアルキル基、または3〜40のC原子を有する分岐もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基またはチオアルキル基、または2〜40のC原子を有するアルケニル基もしくはアルキニル基であって、それらの各々が1以上の基Rで置換されてよく、ここで1以上の非隣接CH基はRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置き換えられてよく、またここでの1以上のH原子はD、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き換えられてよいもの;5〜60の芳香環原子を有する芳香環系またはヘテロ芳香環であって、各々の場合に1以上のR基で置換されてよいもの;5〜50の芳香環原子を有するアリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基であって、1以上のR基で置換されてよいもの;またはこれら系の組合せからなる群から同一または異なるように選択され、ここで2以上の隣接する置換基Rは任意に、1以上の基Rで置換されてよい1以上の単環もしくは多環の脂肪族環系、芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系を形成してよく;
は、出てくる毎に、H、D、F、CN、1〜20のC原子を有する脂肪族炭化水素根、5〜30の芳香環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系から同じにまたは異なって選択され、ここで1以上のH原子はD、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられてよく、またここで2以上の隣接する置換基Rは相互に単環もしくは多環、脂肪族環系、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成してよく;
Yは、出てくる毎に同じかまたは異なって、O、SまたはNRであり;
Lは、単座配位のホスフィン配位子もしくはアルシン配位子RE(ここで、E=PまたはAs)であり;
(B)はRBであり、ここでのRは上記で述べた意味を有し、例えばHB、PhB、MeB、((RN)B等であり(ここで、Ph=フェニル、Me=メチル)、ここでのBはホウ素を表し;
「*」は、錯結合を形成する原子を示し;
「#」は、Bを介して第二のユニットに結合される原子を示す。
【0021】
これらの配位子は、以下ではN−B−Nと称される。
【0022】
以下の例は、これら配位子を例示することを意図したものである。
【化7】

【0023】
これらの構造は、1以上の基Rで置換されてもよい。
【0024】
加えて、式III〜VIの陰イオン配位子は、下記一般式の窒素配位子であってもよい。
【化8】

【0025】
ここでのZ〜Zは、Z〜Z、について上記で定義したのと同じ意味を有し、記号「*」および「#」は、上記で定義したのと同じ意味を有し、更に、
B”は中性のブリッジ、特に、出てくる毎に同一かまたは異なって、NR、BR、O、CR、SiR、C=NR、C=CR、S、S=O、SO、PRおよびP(=O)Rから選ばれる2価のブリッジである。
【0026】
ブリッジB”を含む窒素配位子は、以下ではN−B”−Nと称し、ブリッジを含まないものはN∩Nと称する。
【0027】
以下の例はこれらの配位子を例示することを意図したものである。
【化9】

【0028】
これらの構造はまた、1以上の基Rで置換されてもよい。
【0029】
こうして、一般式III〜VIの錯体が生じる。
【化10】

【0030】
ここで、
Lは、単座配位のホスフィンまたはアルシン配位子RE(ここでは、E=PまたはAs)であり;
L−B’−Lは、ホスファニルまたはアルサニル基(RE#、ここでE=PまたはAs)であり、これはブリッジB’を介して更なる基Lに結合され、二座配位子を形成し;
B’は、アルキレン基、アリーレン基もしくはこれら二つの組合せ、または−O−、−NR−、もしくは−SiR−である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、Eはリンに等しい。
【0032】
以下の例は、これを例示することを意図したものである。
【0033】
Lの例:PhP、MeP、EtP、PhMeP、PhBnP、(シクロヘキシル)P、(PhO)P、(MeO)P、PhAs、MeAs、EtAs、PhMeAs、PhBnAs、(シクロヘキシル)As(Ph=フェニル、Me=メチル、Et=エチル、Bn=ベンジル)。
【0034】
L−B’−Lの例:
【化11】

【0035】
配位子L-B’−Lは、ここでは1以上の基Rで置換されてよく、このRは上記で述べた意味を有する。
【0036】
B)中性配位子N−B”−Nおよび陰イオン配位子L−B’’’−L
上記で既に述べたように、[(N∩N)Cu(RP)]Anまたは[(N∩N)Cu(P∩P)]Anの形態Cu(I)錯体[ここで(N∩N)=ジイミン配位子、(P∩P)=二座配位のホスフィン配位子、An=陰イオン]は、発光材料として既に記載されており、またオプトエレクトロニクス素子にすでに使用されている。式VIIおよび式VIIIの金属錯体の新規な特徴は中性であることにあり、これが対応の用途において有利に用いられ得る理由である。
【化12】

【0037】
窒素ヘテロ環は、A)において定義されているが、ブリッジB”は中性である。これは、例えば次のような中性の窒素配位子を生じる。
【化13】

【0038】
ここでの配位子はまた、1以上のRで置換されてもよい。
【0039】
それらは、以下ではL-B”−LまたはN’∩N’で示される。
【0040】
Lもまた同様に、A)において定義された通りである。B’’’は、マイナス1価に帯電したRB(CHまたはカルボランのようなブリッジである。従って、マイナス1価に帯電されたホスフィン 配位子の例は下記のものであることができる。
【化14】

【0041】
ここでの配位子はまた、1以上のRで置換されてもよい。
【0042】
上記で述べた中性およびマイナス1価に帯電した窒素配位子およびホスフィン配位子は、遷移金属の配位化学で既に知られている。
【0043】
US6649801B2(J.C. Peters et al.)およびUS5627164(S. Gorun et al.)は、潜在的な触媒として、ホウ素含有配位子との幾つかの両性イオン遷移金属錯体を記載している。N−ヘテロ芳香族基(特にピラゾリル基)励起状態、並びにホスフィンおよびアルシン配位子の励起状態はエネルギー的に非常に高いので、これら配位子は発光性遷移金属錯体における補助配位子(即ち、それらは発光の原因であるT−S遷移には関与しない)として使用されることが多い。特許WO2005118606(H. Konno)、CN1624070A(Z. H. Lin)およびUS20020182441A1(M. E. Thompson et al.)は、発色団として2−フェニルピリジン型のシクロ金属化配位子および補助配位子としてピラゾリルボレートを含有するエミッタとして、Ir(III)、Pt(II)、Os(II)錯体を包括的に記載している。
【0044】
四座配位されたCu(I)中心イオンとの金属錯体における、A)マイナス1価に帯電した窒素配位子N−B−N(またはN-B”−NおよびN∩N)および中性配位子L(またはL−B’−L)、並びにB)中性配位子N−B”−N(またはN∩N)およびマイナス1価に帯電した配位子L−B'''−Lの記載された組合せは、強いフォトルミネッセンス材料を生じる。該金属原子、並びに二つの配位子N-B-N(もしくはN-B”−N、N∩N)およびL-B’-L、またはN-B''−N(もしくはN’∩N’)およびL-B'''−Lにおける(ヘテロ)芳香族部分の両者が電子移動に関与しており、発光は該電子移動に基づくものであり、また該電子移動はHOMO−LUMO遷移に関連している。これは図4に示されており、この図は、例えば錯体のための限界軌道(limiting orbital)を示している。
【0045】
C)N配位子およびLの間のブリッジを備えた錯体
式IXの中性錯体が好ましい。
【化15】

【0046】
この式において、EおよびFで示されるNヘテロ環は、相互に独立に、上記のA,B,CまたはDによって示されるヘテロ環と同じ意味を有する。B''''は、相互に独立に、上記で述べたブリッジB、B’、B”またはB'''と同じ意味を有し、或いは単結合を表してよい。添え字pは、相互に独立して、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、特に好ましくは0または1を表し、ここで少なくとも一つの添え字pは0に等しくなく、それはNヘテロ環とLの間のブリッジを記載する。ここでは、p=0はブリッジB''''が存在しないことを意味する。中性錯体を得るためには、EおよびFで示されるNヘテロ環およびブリッジB''''の電荷は、該電荷がCu(I)イオンの電荷を相殺するように適切に選択されなければならない。
【0047】
上記で述べたように、本発明による化合物は電子装置において使用される。ここでの電子装置とは、少なくとも一つの有機化合物を含んでなる少なくとも一つの層を備えた装置を意味するために用いられる。しかし、該素子はまた無機材料を含んでもよく、或いは全体が無機材料で構成される層を含んでもよい。
【0048】
電子装置は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス装置(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(0−LET)、有機太陽電池(O−SC),有機光検出器、有機光受容体、有機、有機フィールドクエンチ装置(O-FQD)、発光電気化学電池(LEC)、有機レーザダイオード(O−レーザ)、OLEDセンサ、特に溶接で外部から遮断されないガスおよび蒸気センサ、および有機プラズモン発光装置(D. M. Koller et al.、Nature Photonics 2008、1-4)からなる群から選択されるが、有機エレクトロルミネッセンス装置(OLED)が好ましい。
【0049】
有機エレクトロルミネッセンス装置は、カソード、アノードおよび少なくとも一つの発光層を備えている。これらの層以外にも、それは更なる層、例えば各々の場合に一以上のホール注入層、ホール輸送層、ホールブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層および/または電荷発生層を含んでもよい。同様に、例えば励起子ブロック機能を有する中間層が二つの発光層の間に導入されてよい。しかし、これらの各層が必ずしも存在しなければならないものではないことが指摘されるべきである。有機エレクトロルミネッセンス装置は、ここでは一つの発光層または複数の発光層を備えていてよい。複数の発光層が存在するならば、これらは好ましくは380nm〜750nmに合計で複数の極大発光を有し、全体で白色発光を生じる。即ち、発光層には蛍光または燐光を放出できる種々の発光化合物が使用される。特に好ましいのは三層システムであり、該三層は青色、緑色およびオレンジもしくは赤色発光を示す(基本構造について、例えば、WO05/011013参照)。
【0050】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明による式Aおよび式I〜IXの錯体が、発光オプトエレクトロニクス素子の発光層における三重項エミッタとして用いられる。特に、配位子N-B-N(またはN-B“−NおよびN∩N)とLまたはL-B‘-Lの適切な組合せにより、エミッタ物質は青発光色のためのエミッタ物質を得ることができる(例えば後述の実施例1〜3参照)。そこでは、より低位の三重項状態を有する他の配位子を使用した場合にも、他の発光色(緑色、赤色)を有する発光性Cu(I)錯体を合成することが可能である(実施例4も参照のこと)。
【0051】
本発明による式Aおよび式I〜IXの錯体はまた、オプトエレクトロニクス素子、例えば有機太陽電池の吸収層における吸収材料としても用いることができる。
【0052】
この型のオプトエレクトロニック素子のエミッタ層または吸収層における銅(I)錯体の比率は、本発明の一実施形態においては100%である。別の実施形態では、エミッタ層または吸収層における銅(I)錯体の比率は1%から99%である。
【0053】
発光素子、特にOLEDにおけるエミッタとしての銅(I)錯体の濃度は、有利には1%〜10%である。
【0054】
銅(I)錯体と組み合わせて使用できる適切なマトリックス材料は、好ましくは、WO04/013080、WO04/093207、WO06/005627または未公開出願DE102008033943.1に従って芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、並びに芳香族スルホキシドおよびスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、例えばCBP(N,N−ビスカルバゾリルビフェニル)およびWO05/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527またはWO08/086851に開示されたカルバゾール誘導体、例えばWO07/063754またはWO08/056746に従うインドーロカルバゾール誘導体、例えばEP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160に従うアザカルバゾール誘導体、例えばWO07/137725に従う双極性マトリックス材料、例えばWO05/111172に従うシラン、例えばWO06/117052に従うアザボロール(azaboroles)およびボロン酸エステル、例えば未公開出願DE102008036982.9、WO07/063754またはWO08/056746に従うトリアジン誘導体、例えばEP652273またはWO09/062578に従う亜鉛錯体、例えば未公開出願DE102008056688.8に従うジアザシロールおよびテトラアザシロール誘導体から選択される。また、これらマトリックス材料の2以上、特に少なくとも一つのホール輸送マトリックス材料および少なくとも一つの電子輸送マトリックス材料の混合物を使用することも好ましい。
【0055】
有機エレクトロルミネッセンス装置の別の層、例えばホール注入層もしくはホール輸送層、または電子輸送層において、本発明による化合物を使用することも可能である。比較的容易に酸化されやすい銅(I)イオンの性質により、該材料はまた、ホール注入材料またはホール輸送材料としても適している。
【0056】
一般に、有機半導体の領域、特に有機エレクトロルミネッセンス装置の分野において通常使用される全ての更なる材料、例えばホール注入材料およびホール輸送材料、電子注入
材料および電子輸送材料、ホールブロック材料、励起子ブロック材料等は、他の層のために本発明に従って用いることができる。従って、当業者は、発明的段階を伴うことなく、本発明による化合物と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス装置のための全ての既知の材料を用いることができる。
【0057】
本発明はまた、電子装置、特に上記で述べた電子装置であって、ここに記載した銅(I)錯体を含んでなる装置に関する。ここでの電子素子は、好ましくは有機発光素子、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機発光ダイオード、発光電気化学的電池、有機電解効果トランジスタまたは有機レーザの形態であることができる。
【0058】
更に、電子装置、特に有機エレクトロルミネッセンス装置であって、1以上の層が昇華法によって塗布され、該材料は10-5ミリバール以下、好ましくは10-6ミリバール以下の初期圧力において、真空昇華ユニット中で蒸着により塗布されることを特徴とする装置が好ましい。しかし、更に低い初期圧力、例えば10-7ミリバール以下の初期圧力も可能である。
【0059】
同様に、電子装置、特に有機エレクトロルミネッセンス装置であって、1以上の層がOVPD(有機気相成長)法によって、またはキャリアガス昇華を用いて塗布され、その場合に10-5ミリバール〜1バールの圧力で材料が塗布されることを特徴とする装置が好ましい。この方法の特別な場合が、OVJP(有機気相ジェット印刷)法であり、この場合には材料がノズルを通して直接塗布され、構築される(例えば、M. S. Arnold et al.、Appl. Phys. Lett. 2008、92、053301)。
【0060】
更に、電子装置、特に有機エレクトロルミネッセンス装置であって、1以上の層が溶液から例えばスピンコーティングによって、または何れかの望ましい印刷法[例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷またはオフセット印刷であるが、特に好ましくはLITI(光誘導熱撮像、熱転写印刷)、またはインクジェット印刷]によって製造されることを特徴とする装置が好ましい。これらの方法のためには、例えば適切な置換によって得られる可溶性の化合物が必要とされる。塗布は、コロイド懸濁液による湿式の化学的方法により行うこともできる。コロイド懸濁液による湿式の化学的方法により行われるならば、粒子サイズは好ましくは10nm未満であり、特に好ましくは1nm未満である。
【0061】
これらの方法は、当業者に一般的に知られており、発明的段階を伴わずに、有機エレクトロルミネッセンス装置に対して塗布することができる。複数の上記で述べた方法が異なる層のために組み合わされるハイブリッド法も、同様に可能である。同様に、本発明はこれら方法にも関する。
【0062】
本発明による化合物は、電子装置において使用するために非常に適しており、特に有機エレクトロルミネッセンス装置に使用する場合に、高い効率、長寿命および良好な色コーディネートを生じる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図に示した本発明による銅(I)錯体およびそれを使用して得られた実験データから、有利な実施形態が生じる。図は以下のものを示している。
【図1】図1は、OLEDの機能モードの図的かつ単純化された表現を示している(適用された層は、例えば約300nmの厚さを有するもののみである)。
【図2】図2は、限界軌道の輪郭を示している:[Cu(pzBH)(pop)](実施例1参照)のHOMO(左)およびLUMO(右)(DFT計算は、B3LYP/LANL2DZ理論レベルで行った。使用した出発形状は[Cu(pzBH)(pop)]の結晶構造である)。
【図3】図3は、[Cu(HBpz)(pop)]分子のORTEP画像を示している。
【図4】図4は、純粋な多結晶材料として(a)、およびPMMA膜中のドーパントとして(b)研究された[Cu(HBpz)(pop)]分子のORTEP画像を示している。
【図5】図5は、[Cu(HB(5−Me−pz)(pop)]分子のORTEP画像を示している。
【図6】図6は、純粋な多結晶材料としての[Cu(HB(5−Me−pz))(pop)]のフォトルミネッセンススペクトルを示している。
【図7】図7は、[Cu(Bpz)(pop)]分子のORTEP画像を示している。
【図8】図8は、純粋な多結晶材料としての[Cu(Bpz)(pop)]のフォトルミネッセンススペクトルを示している。
【図9】図9は、[Cu(HBpz)(dppb)]分子のORTEP画像を示している。
【図10】図10は、純粋な多結晶材料としての[Cu(Bpz)(pop)]のフォトルミネッセンススペクトルを示している。
【図11】図11は、湿式の化学的方法で塗布できる本発明による銅錯体を含んでなるエミッタ層を有する、OLED装置の一例を示している(層厚のデータは例示的値である)。
【図12】図12は、エミッタ層に本発明による錯体を含んでなる、真空昇華技術により製造できるOLED装置の一例を示している。
【図13】図13は、エミッタ材料としての本発明による昇華可能な銅錯体を含んでなる、区別された高効率OLED装置の一例を示している。
【参考文献】
【0064】
[i] C. Adachi, M. A. Baldo, S. R. Forrest, S. Lamansky, M. E. Thompson, R. C. Kwong, Appl. Phys. Lett. 2001, 78, 1622.
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【実施例】
【0065】
次に、図面を参照して実施例により本発明を説明するが、それによって本発明が限定されるものではない。当業者は、この説明から開示された範囲の全体に亘って本発明を実施でき、また発明的段階を伴うことなく本発明に従う更なる錯体を調製でき、電子装置においてそれを使用でき、または本発明による方法を使用することができるであろう。
【0066】
例1
[Cu(HBpz)(pop)]
【化16】

【0067】
<調製>:
[Cu(CHCN)](PF)(0.186g,0.500mmol)およびビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(pop,0.269g,0.500mmol)のアセトニトリル(15m)中溶液を、アルゴン雰囲気下で30分間撹拌する。次いで、この溶液にK[HBpz](0.093g,0.500mmol)を加え、得られた混合物を更に2時間、アルゴン雰囲気下で撹拌する。得られた白色沈殿を濾過し、5mLのアセトニトリルで3回洗浄する。収量0.313g,84%。
【化17】

【0068】
H−NMR(CDCl,298K):δ 7.59(d,2H),7.05−7.22(m,br,20H),6.78−6.87(m,br,6H),6.68−6.71(m,br,2H),5.84(t,2H),5.30(s,2H).
13C{H}−NMR:δ 128.2,129.2,130.6,132.8,134.0,134.3,140.1;
31P{H}−NMR:δ −17.23(s),−18.75(s).
ES−MS: m/e=749.3(MH, 100.0%),750.3(58.0%),748.2(24.0%),752.3(21.5%),753.3(4.8%);
EA:実測値 C,61.72;H,4.52;N,6.72%;計算値 C,61.93;H,4.59;N,6.72(C4338BCuNOPClについて)。
【0069】
<結晶構造>:
この錯体のORTEP画像を図3に示す。
【0070】
<フォトルミネッセンス特性>:
この錯体のフォトルミネッセンス特性を図4に示す。
【0071】
例2
[Cu(HB(5−Me−pz))(pop)]
【化18】

【0072】
<調製>:
合成経路は[Cu(HBpz)(pop)](実施例1)に類似している。
【0073】
収率81%。
【0074】
H−NMR(CDCl,298K):δ 7.52(d,2H),7.35−7.29(m,br,10H),7.22(d,4H),7.12(t,8H),6.99(td,2H),6.86(td,2H),6.72−6.67(m,br,2H),6.61−6.58(m,2H),5.76(d,2H),1.46(s,6H).
13C{H}−NMR:δ 14.07,103.1,119.6,124.1,128.1,128.2,129.2,130.4,132.5,132.6,133.8,133.4,134.5,134.7,135.4,148.9,157.0.
31P{H}−NMR:δ −14.89(s),−16.18(s),−17.14(s).
ES−MS: m/e=MH,772.2(100.0%),778.257.0%),780.2(22.2%),781.2(6.8%).
EA:実測値 C, 68.45;H,5.10;N,7.33%;計算値 C,68.00;H,5.19;N,7.21(C4943BCuNOPClについて)。
【0075】
<結晶構造>:
この錯体のORTEP画像を図5に示す。
【0076】
<フォトルミネッセンス特性>:
この錯体のフォトルミネッセンス特性を図6に示す。
【0077】
例3
[Cu(Bpz)(pop)]
【化19】

【0078】
<調製>:
合成経路は[Cu(HBpz)(pop)](実施例1)に類似している。収率79%。
【0079】
H−NMR(CDCl、298K):δ 7.38(br、4H)、7.05−7.24(m、br、20H)、6.76−6.98(m、br、6H)、6.68−6.71(m、br、2H)、5.85(t、4H)、5.30(s、4H).
13C{H}−NMR:δ 104.4、106.3、120.3、124.4、124.8、126.4、128.2、128.3、128.5、128.6、129.3、129.7、130.8、131.5、131.6、131.8、132.0、133.2、133.3、133.4、133.8、134.0、134.1、135.3、135.9、141.7、157.8、157.9、158.1.
31P{H}−NMR:δ −14.37(s).
ES−MS:m/e=881.4(MH、100.0%)、882.4(63.0%)、883.4(59.0%)、884.3(26.1%)、880.4(23.2%)、885.4(6.3%)、886.3(1.4%).
EA:実測値 C、61.55;H、4.48;N、11.63%;計算値 C、60.85;H、4.48;N、11.59(C4943BCuNOPClについて)。
【0080】
<結晶構造>:
この錯体のORTEP画像を図7に示す。
【0081】
<フォトルミネッセンス特性>:
この錯体のフォトルミネッセンススペクトルを図8に示す。
【0082】
例4
[Cu(HBpz)(dppb)]
【化20】

【0083】
<合成経路>:
合成経路は[Cu(HBpz)(pop)](実施例1)に類似している。収率80%。
【0084】
H−NMR(CDCl、298K):δ 7.38(br、4H)、7.05−7.24(m、br、20H)、6.76−6.98(m、br、6H)、6.68−6.71(m、br、2H)、5.85(t、4H)、5.30(s、4H).
13C{H}−NMR:δ 103.0、128.4、128.5、128.6、128.9、129.0、129.2、130.3、132.5、132.9、133.0、133.1、133.8、134.1、134.3、134.5、134.6、134.7、139.9、142.7、143.2、143.6.
31P{H}−NMR:δ −1.96(s)、−7.37(s).
ES−MS:m/e=657.1(MH、100.0%)、658.1(52.4%)、656.1(34.6%)、660.1(14.1%)、661.1(4.2%).
EA:実測値: C、65.42;H、4.86;N、8.42%;計算値: C、65.81;H、4.91;N、8.53(C4943BCuNOPについて。
【0085】
<結晶構造>:
この錯体のORTEP画像を図9に示す。
【0086】
<フォトルミネッセンス特性>:
純粋な多結晶物質としての[Cu(Bpz)(pop)]のフォトルミネッセンススペクトルを図10に示す。
【0087】
例5:OLED装置
本発明による銅錯体は、OLED装置におけるエミッタ物質として使用することができる。例えば、ITOアノード、PEDOT/PSSを含んでなるホール伝導体、本発明によるエミッタ層、任意にホールブロック層、電子伝導体層、電子注入を改善するための薄いLiFもしくはCsF中間層、金属電極(カソード)を備えてなる典型的なOLED層構造において、良好な電力効率を達成することができる。数100nmの合計厚さを有するこれら種々の層は、例えばガラス基板または他の支持材料に塗布することができる。対応するサンプル装置を図11に示す。
【0088】
図11に示された層の意味は次の通りである。
【0089】
1.使用される支持材料は、ガラスまたは何れか他の適切な固体または可撓性の透明材料であることができる。
【0090】
2.ITO=酸化インジウム錫
3.PEDOT/PSS=ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸。これは、水溶性のホール伝導体材料(HTL=ホール輸送層)である。
【0091】
4.本発明によるエミッタ物質を含んでなるエミッタ層、EMLと略記されることが多い。この材料は例えば有機溶媒中に溶解することができ、これは下地のPEDOT/PSS層の溶解を防止することを可能にする。本発明によるエミッタ物質は、自己消光プロセスまたは三重項−三重項消滅を防止し、または大きく制限する濃度で使用される。2%を越え且つ12%未満の濃度が、非常に適していることが証明されている。
【0092】
5.ETL=電子輸送材料、例えば、気相成長可能なAlqを使用できる。厚さは、例えば40nmである。
【0093】
6.例えばCsFまたはLiFの非常に薄い中間層は、電子注入バリアを低下させ、ETL層を保護する。この層は、一般的には気相成長により塗布される。更に単純なOLED構造のために、ETL層およびCsF層は任意に省略することができる。
【0094】
7.導電性カソード層は気相成長により塗布される。Alは一例を表している。Mg:Ag(10:1)または他の材料を使用することも可能である。
【0095】
該装置に印加される電圧は、例えば3〜15Vである。
【0096】
更なる実施形態が図12および図13に示されており、本発明によるエミッタ物質を含んでなるここでのOLED装置は、真空昇華技術によって製造される。
【0097】
図12および図13に示した層の意味は次の通りである。
【0098】
1.使用される支持材料は、ガラスまたは何れか他の適切な固体または可撓性の透明材料であることができる。
【0099】
2.ITO=酸化インジウム錫
3.HTL=ホール輸送層、厚さが例えば40nmのα−NPDをこの目的のために用いることができる。図13に示した構造には、層2および層3の間に、ホール注入を改善する適切な更なる層(例えばフタロシアニン銅(CuPc、厚さが例えば10mn))を補充することができる。
【0100】
4.電子ブロック層は、アノードへの電子輸送が抑えられることを保証することを意図しており、それはこの電流がo−ミック損失を生じるだけだからである(厚さは例えば30nm)。この層は、もしHTL層が既に本来的に低い電子伝導体であるときには省略することができる。
【0101】
5.エミッタ層は、本発明によるエミッタ材料を含んでなり、または該材料からなっている。本発明による昇華性材料については、これを昇華によって塗布することができる。層厚は、例えば50nm〜200nmであることができる。緑色または赤色を発光する本発明によるエミッタ材料については、CBP(4,4‘−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル)のような共通のマトリックス材料が適切である。青色を放出する本発明のエミッタ材料については、UHGマトリックス材料(例えば、M.E. Thompson et al.、Chem. Mater. 2004、16、4743参照)、または他のいわゆる広ギャップマトリックス材料を用いることができる。
【0102】
6.ホールブロック層は、カソードへのホール流れにより生じるオーミック損失を低減することを意図したものである。この層は、例えば20nmの厚さを有することができる。適切な材料は、例えばBCP(4,7−ジフェニル−2,9−ジメチルフェナントロリン=バソキュプロイン(bathocuproin))
7.ETL=電子輸送材料。例えば、気相成長可能なAlqを使用することができる。厚さは、例えば40nmである。
【0103】
8.例えばCsFまたはLiFの非常に薄い中間層は、電子注入バリアを低下させ、ETL層を保護する。この層は、一般的には気相成長により塗布される。
【0104】
9.導電性カソード層は気相成長により塗布される。Alは一例を表している。Mg:Ag(10:1)または他の材料を使用することも可能である。
【0105】
該装置に印加される電圧は、例えば3V〜15Vである。
【0106】
例6: 溶液からの有機エレクトロルミネッセンス装置の製造および特徴付け
LEDは、以下に概説する一般的方法により製造される。個々の事例において、これは特定の環境に適合される(例えば、最適の効率または色を達成するために層厚が変化される)。
【0107】
<OLEDの製造のための一般的方法>
このような素子の製造は、ポリマー発光ダイオード(PLED)の製造に基づいており、これは文献に何回も記載されている(例えば、WO2004/037887A2)。今回の場合、本発明による化合物は、既述したマトリックス材料またはマトリックス材料の組合せと共に、トルエン、クロロベンゼンまたはDMF中に溶解される。このような溶液の典型的な固体含有量は10〜25g/Lであり、そうであれば、装置に典型的な80nmの層厚がスピンコーティングによって達成されるはずである。以下の構造を有するOLEDは、上記で述べた一般的方法に同様にして製造される。
【0108】
PEDOT: 20nm(水、バイエルAGから購入したPEDOT、ポリ[3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン]からスピンコートされる)。
【0109】
マトリックス+エミッタ: 80nm、エミッタの10重量%(トルエン、クロロベンゼンまたはDMFからスピンコートする)。
【0110】
Ba/Ag: カソードとして10nmのBa/150nmのAg
構造化されたITO基板および所謂緩衝層のための材料(PEDOT、実際にはPEDOT:PSS)は、商業的に入手可能である(IOTはTechnoprint社等から、Clevios Baytron P分散液としてのPEDOT:PSSはH.C. Starck社から)。
【0111】
明瞭化するために、従来技術に従うエミッタE1の構造およびマトリックスMの構造を以下に記載する。
【化21】

【0112】
発光層は、不活性ガス(この場合はアルゴン)雰囲気においてスピンコーティングにより塗布され、120℃で10分間加熱することにより乾燥される。最後に、真空蒸着によりバリウムおよび銀カソードが塗布される。この溶液処理された装置は標準の方法により特徴付けされる:上記で述べたOLEDの実施例は未だ最適化されていない。
【0113】
表1は、100cd/mにおける効率および電圧、並びに色を示している。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aの中性化合物:
【化1】

ここで、
N∩Nは、キレート形成性のN−へテロ環配位子を表し、該配位子は二つの窒素原子を介して銅中心Cuに結合され;
Lは、相互に独立に、ホスフィン配位子もしくはアルシン配位子を表し、ここでの二つの配位子Lもまた相互に結合されて2価の配位子を生じてもよく、または一方の配位子Lまたは両方の配位子LがN∩Nに結合して、3価または4価の配位子を生じてもよい。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、
a)N∩Nはマイナス1価であり、且つ二つの配位子Lは中性であるか、或いは、
b)N∩Nは中性であり、且つ式Aの化合物の全体が電気的に中性であるように、二つの配位子L(ホスフィンおよび/またはアルシン配位子)は一緒になってマイナス1価に帯電される
ことを特徴とする化合物。
【請求項3】
式Iまたは式IIの請求項1または2に記載の化合物:
【化2】

ここで、
*は、錯結合を形成する原子を示し;
#は、Bを介して第二のユニットに結合される原子を示し;また使用される他の記号には以下が適用される:
−Zは、出てくる毎に同一または異なって、NまたはCRであり;
Rは、出てくる毎に、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、C(=O)R、Si(R、1〜40のC原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基またはチオアルキル基、または3〜40のC原子を有する分岐もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基またはチオアルキル基、または2〜40のC原子を有するアルケニル基もしくはアルキニル基であって、それらの各々が1以上の基Rで置換されてよく、ここで1以上の非隣接CH基はRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置き換えられてよく、またここでの1以上のH原子はD、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き換えられてよいもの;5〜60の芳香環原子を有する芳香環系またはヘテロ芳香環であって、各々の場合に1以上のR基で置換されてよいもの;5〜50の芳香環原子を有するアリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基であって、1以上のR基で置換されてよいもの;またはこれら系の組合せからなる群から同一または異なるように選択され、ここで2以上の隣接する置換基Rは任意に、1以上の基Rで置換されてよい1以上の単環もしくは多環の脂肪族環系、芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系を形成してよく;
は、出てくる毎に、H、D、F、CN、1〜20のC原子を有する脂肪族炭化水素根、5〜30の芳香環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系から同一または異なるように選択され、ここで1以上のH原子はD、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられてよく、またここで2以上の隣接する置換基Rは相互に単環もしくは多環、脂肪族環系、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成してよく;
Yは、出てくる毎に同じかまたは異なって、O、SまたはNRであり;
Lは、単座配位のホスフィン配位子もしくはアルシン配位子RE(ここで、E=PまたはAs)であり;
(B)はRBであり、ここでのRは上記で述べた意味を有し、例えばHB、PhB、MeB、((RN)B等(ここで、Ph=フェニル、Me=メチル)である。
【請求項4】
式III、IV、VまたはVIの請求項1に記載の化合物:
【化3】

ここで、
Lは請求項3で与えられた意味を有し;
L−B’−Lは、ホスファニルまたはアルサニル基(RE#、ここでE=PまたはAs)であり、これはブリッジB’を介して更なる基Lに結合されて二座配位子を形成し;
B’は、アルキレン基、アリーレン基もしくはこれら二つの組合せ、または−O−、−NR−、もしくは−SiR−であり;
また、ここでの窒素配位子は以下の式を有し、
【化4】

ここでのZ〜Zは、請求項3においてZ〜Zについて定義したのと同じ意味を有し、またここでの R、Yおよび記号「*」および「#」は請求項3において定義したのと同じ意味を有し;更に、
B”は、中性ブリッジ、特に、出てくる毎に同一かまたは異なって、NR、BR、O、CR、SiR、C=NR、C=CR、S、S=O、SO、PRおよびP(=O)Rから選ばれる2価のブリッジである。
【請求項5】
式VIIまたはVIIIの請求項1または2に記載の化合物:
【化5】

ここで、Nを介して配位された窒素ヘテロ環または基、ブリッジB”およびLは請求項3において定義した通りであり、更に、
B'''は、マイナス1価に帯電したRB(CHまたはカルボランのようなブリッジである。
【請求項6】
式IXの請求項1または2に記載の化合物:
【化6】

ここで、EおよびFで示されるNヘテロ環は、相互に独立に、請求項3および4においてA,B,CまたはDによって示されるヘテロ環と同じ意味を有し、またB''''は、相互に独立に、請求項3および4において述べたブリッジ(B)、B’、B”またはB'''と同じ意味を有し、或いは単結合を表してよく;更に、添え字pは、相互に独立して、0、1、2または3を表し、且つ少なくとも一つの添え字pは0に等しくなく、それはNヘテロ環とLの間のブリッジを記載するものである。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物であって、配位子Lにおける配位原子Eがリンであることを特徴とする化合物。
【請求項8】
電子装置における、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
好ましくは有機エレクトロルミネッセンス装置(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(0−LET)、有機太陽電池(O−SC),有機光検出器、有機光受容体、有機、有機フィールドクエンチ装置(O-FQD)、発光電気化学電池(LEC)、有機レーザダイオード(O−レーザ)、OLEDセンサ、特に溶接で外部から遮断されないガスおよび蒸気センサ、および有機プラズモン発光装置からなる群から選択される、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物を含んでなる電子装置。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物の電子装置であって、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物が格好オプトエレクトロニクス素子のエミッタ層にけるエミッタとして、またはオプトエレクトロニクス素子の吸収層における吸収材料として、または電荷輸送材料、特にホール輸送材料として用いられることを特徴とする電子装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の化合物の有機エレクトロルミネッセンス装置であって、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物がマトリックス材料と組み合わせて用いられ、ここでのマトリックス材料は、芳香族ケトン、芳香族 ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシド、芳香族スルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、インドーロカルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、双極性マトリックス材料、シラン、アザボロール(azaboroles)、ボロン酸エステル、トリアジン誘導体、亜鉛錯体、ジアザシロールおよびテトラアザシロール誘導体、並びにこれらマトリックス材料の2以上の混合物から選択される装置。
【請求項12】
請求項9または11に記載の電子装置を製造するための方法であって、1以上の層が昇華法により塗布されること、または1以上の層がOVPD(有機気相成長)法またはキャリアガス昇華を使って塗布されること、または1以上の層が溶液から、または何れかの望ましい印刷法により製造されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−502937(P2012−502937A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527228(P2011−527228)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006149
【国際公開番号】WO2010/031485
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】