説明

有機エレクトロルミネッセント表示装置及びその製造方法

【課題】高い表示品位を有する有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置1は、絶縁基板10と、複数の第1の電極11と、第1の絶縁部材12bと、複数の第2の絶縁部材12aと、複数の有機EL層13と、複数の第2の電極17とを備えている。第1の絶縁部材12bは複数の第1の電極11を相互に個別に仕切ると共に各第1の電極11の表面を第1の電極11の延びる方向に複数の領域に分断するように格子状に形成されている。第1の絶縁部材11は絶縁基板10から先細状に突出する断面台形状である。複数の第2の絶縁部材12aは第1の絶縁部材12bの上に第1の電極11と交差する方向に相互に並行に延びるように形成されている。各第2の絶縁部材12aは第1の絶縁部材12bから拡幅状に突出する断面逆台形状である。第1の絶縁部材12bと複数の第2の絶縁部材12aとは同一の材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセント表示装置及びその製造方法に関する。特に、有機高分子材料を含む有機エレクトロルミネッセント層を備えた有機エレクトロルミネッセント表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁基板と、絶縁基板上に相互に並行に延びるように形成された複数のアノードと、そのアノードのエッジ部をカバーすると共に、アノードの表面を矩形状の複数の領域に区画する格子状の絶縁層(エッジカバー)と、その絶縁層の上に設けられ、各カソードを相互に個別に仕切るカソードセパレータと、アノード上の各領域に形成された有機エレクトロルミネッセント層と、有機エレクトロルミネッセント層及び絶縁層を覆うように、アノードと交差する方向に相互に並行に延びる複数のカソードとを備えたパッシブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネッセント表示装置(以下、「有機EL表示装置」とする。)が知られている(例えば、非特許文献1、2等)。
【0003】
上記パッシブマトリクス駆動型有機EL表示装置では、絶縁層は絶縁基板から先細状に突出する断面台形状に形成されており、一方、カソードセパレータは絶縁層から拡幅状に突出する断面逆台形状に形成されている。このため、絶縁層は、通常、ポジ型の感光性樹脂膜を主面側から感光させることにより形成される。一方、カソードセパレータはネガ型の感光性樹脂膜を同じく主面側から感光させることにより形成される。
【非特許文献1】イー・エクスプレス(E Express)編、「絵で見る有機ELディスプレイの製造プロセス03年版」
【非特許文献2】イー・エクスプレス(E Express)編、2003年「低分子系の有機材料を用いたパッシブマトリクス(PM)駆動の有機ELパネルの製造プロセスフロー」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機エレクトロルミネッセント層(以下、「有機EL層」とする。)は、絶縁層とカソードセパレータとが形成された絶縁基板上に有機エレクトロルミネッセント材料(以下、「有機EL材料」とする。)を含むインクを湿式塗布法により塗布することにより形成される。しかしながら、湿式塗布法を用いて上記構成のパッシブマトリクス駆動型有機EL表示装置を作成した場合、有機EL層に層厚ムラが生じ、所望の表示品位を実現することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的層厚の均一な有機EL層を備え、高い表示品位を有する有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来、有機EL層(特に各有機EL層の周縁部分)にムラが生じる原因は明らかではなかった。本発明者は、誠意研究の結果、その原因を初めて解明し、本発明を成すに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る有機EL表示装置は、絶縁基板と、複数の第1の電極と、第1の絶縁部材と、複数の第2の絶縁部材と、複数の有機エレクトロルミネッセント層と、複数の第2の電極とを備えている。
【0008】
複数の第1の電極は絶縁基板上に相互に並行に延びるように形成されている。第1の絶縁部材は、各第1の電極を相互に個別に仕切ると共に各第1の電極の表面を第1の電極の延びる方向に複数の領域に分断するように格子状に形成されている。第1の絶縁部材は絶縁基板から先細状に突出する断面台形状である。複数の第2の絶縁部材は第1の絶縁部材の上に第1の電極と交差する方向に相互に並行に延びるように形成されている。各第2の絶縁部材は第1の絶縁部材から拡幅状に突出する断面逆台形状に形成されている。第1の絶縁部材と複数の第2の絶縁部材とは同一の材料で形成されている。
【0009】
複数の有機エレクトロルミネッセント層は各領域上に形成されている。複数の第2の電極は、第2の絶縁部材相互間のそれぞれに、第2の絶縁部材の延びる方向に相互に平行に延びるように形成されている。有機エレクトロルミネッセント層と第1の絶縁部材とは複数の第2の電極により覆われている。
【0010】
尚、本明細書において、「有機エレクトロルミネッセント(EL)層」とは、第1の電極と第2の電極からそれぞれ電子及び正孔(ホール)を受け取り再結合させることにより蛍光を出射する有機EL発光層、又は有機EL発光層と1又は複数のバッファ層とを含む積層により形成されている層のことをいう。バッファ層は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等であってもよい。
【0011】
第1の絶縁部材と第2の絶縁部材とは一体成形されていることが好ましい。例えば、第1の絶縁部材と第2の絶縁部材とは同一の膜からパターニングされて形成されていることが好ましい。
【0012】
有機エレクトロルミネッセント層は有機高分子材料(例えば、高分子有機正孔輸送材料、高分子有機EL発光材料、高分子有機電子輸送材料等)を含むものであることが好ましい。尚、有機高分子材料は、10以上の繰り返し構造単位を有するものであることが好ましい。
【0013】
有機エレクトロルミネッセント層は、高分子有機EL材料を含み、湿式塗布法により形成されるものであることが好ましい。尚、本明細書において「湿式塗布法」とは、有機EL層を形成するための材料を含有するインクを塗布・乾燥させることにより層を形成する方法のことをいう。湿式塗布法の具体例としては、スピンコート法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法等が挙げられる。
【0014】
本発明に係る製造方法は上記本発明に係る有機EL表示装置を製造するための方法である。すなわち、本発明に係る製造方法は、絶縁基板と、絶縁基板上に相互に並行に延びるように形成された複数の第1の電極と、各第1の電極を相互に個別に仕切ると共に各第1の電極の表面を第1の電極の延びる方向に複数の領域に分断するように格子状に形成されており、絶縁基板から先細状に突出する断面台形状の第1の絶縁部材と、第1の絶縁部材の上に第1の電極と交差する方向に相互に並行に延びるように形成されており、それぞれ、第1の絶縁部材から拡幅状に突出する断面逆台形状の複数の第2の絶縁部材と、各領域の上に形成された有機エレクトロルミネッセント層と、第2の絶縁部材相互間のそれぞれに、有機エレクトロルミネッセント層と第1の絶縁部材とを覆うように形成されており、第2の絶縁部材の延びる方向に相互に平行に延びる複数の第2の電極とを備えた有機エレクトロルミネッセント表示装置を製造するための方法である。
【0015】
本発明に係る製造方法は、複数の第1の電極が形成された絶縁基板上に感光性の絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜の上方に第2の絶縁部材の形状に対応した第1のマスクを設置すると共に、絶縁基板の下方に第1の絶縁部材の形状に対応した第2のマスクを設置する工程と、第1のマスク側と第2のマスク側との両側から光を照射することにより絶縁膜を露光する工程と、露光された絶縁膜を現像することにより第1の絶縁部材と第2の絶縁部材とを形成する工程とを備えている。さらに、各領域上に有機エレクトロルミネッセント材料を含むインクを吐出することにより有機エレクトロルミネッセント層を形成するエレクトロルミネッセント層形成工程と、複数の第2電極を形成する工程とを備えている。
【0016】
エレクトロルミネッセント層形成工程に先立って、第1の絶縁部材と第2の絶縁部材とに撥液化処理を施しておくことが好ましい。また、エレクトロルミネッセント層形成工程に先立って、複数の第1の電極に親液化処理を施しておくことが好ましい。
【0017】
尚、本明細書において、「撥液性」とはインクをはじく性質をいい、「撥液化処理」とは、撥液性を付与する処理をいう。「親液性」とはインクに馴染む性質のことをいい、「親液化処理」とは親液性を付与する処理をいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的層厚の均一な有機EL層を備え、高い表示品位を有する有機EL表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本実施形態に係る有機EL表示装置1の平面図である。尚、図1では、説明の便宜上、第2の電極17は描画していない。
【0021】
図2は図1中の切り出し線II−IIで切り出された部分の断面図である。
【0022】
図3は図1中の切り出し線III−IIIで切り出された部分の断面図である。
【0023】
図4は図1中の切り出し線IV−IVで切り出された部分の断面図である。
【0024】
図5は図1中の切り出し線V−Vで切り出された部分の断面図である。
【0025】
図6は隔壁12の形状を表す斜視図である。
【0026】
本実施形態に係る有機EL表示装置1は、絶縁基板10と、複数の第1の電極11と、隔壁12と、有機EL層13と、複数の第2の電極17とを備えている。
【0027】
絶縁基板10は、例えば、ガラス、セラミックス、プラスティック等により形成することができる。複数の第1の電極11は絶縁基板10上に相互に並行に延びるように(平面視においてストライプ状に)形成されている。第1の電極11は有機EL層13に正孔を注入する陽極としての機能を有する。第1の電極11は、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等の金属や、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の導電性酸化物等により形成することができる。
【0028】
隔壁12は、絶縁基板10上に設けられた、絶縁基板10から先細状に突出する断面台形状の第1の絶縁部材12bと、第1の絶縁部材12bから拡幅状に突出する断面逆台形状の複数の第2の絶縁部材12aとを有する。第1の絶縁部材12bは、複数の第1の電極11を相互に個別に仕切ると共に各第1の電極11の表面を第1の電極11の延びる方向に複数の領域に分断するように正面視において格子状に形成されている。
【0029】
第2の絶縁部材12aは第1の電極11の延びる方向と交差する方向(典型的には垂直な方向)、言い換えれば、第2の電極17の延びる方向と平行な方向に延びるように形成されている。本実施形態では、第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとは、同一材料で、一体成形されている。尚、隔壁12は、例えば、ノボラック系等の樹脂により形成することができる。隔壁12の高さは6〜8μm程度であることが好ましい。第1の絶縁部材12bの高さは2〜5μm程度であることが好ましい。第2の絶縁部材12aの高さは1〜6μm程度であることが好ましい。
【0030】
複数の有機EL層13は隔壁12により個別に分断された第1の電極11上の各領域に設けられている。各有機EL層13は、第1の電極11の上に形成された正孔輸送層14と、正孔輸送層14の上に形成された有機EL発光層15と、有機EL発光層15の上に形成された電子輸送層16とを有する。
【0031】
正孔輸送層14は第1の電極(陽極)11から有機EL発光層15への正孔(ホール)輸送効率を向上させる機能を有する。正孔輸送層14を形成するための正孔輸送材料としては、例えば、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT:PSS)、ポリアニリン等が挙げられる。
【0032】
一方、電子輸送層16は第2の電極(陰極)17から有機EL発光層15への電子輸送効率を向上させる機能を有する。電子輸送層16を形成するための電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール等が挙げられる。
【0033】
有機EL発光層15は第1の電極11及び第2の電極17からそれぞれ注入された正孔及び電子を再結合させて蛍光を出射する層である。有機EL発光層15を形成するための有機エレクトロルミネッセント(EL)発光材料としては、ポリフルオレン誘導体(例えば、ポリ−ジオクチルフルオレン等)、ポリスピロフルオレン誘導体、ポリ−p−フェニレンビニレン誘導体等が挙げられる。
【0034】
尚、正孔輸送層14、有機EL発光層15、及び電子輸送層16はそれぞれ50〜100nm程度の層厚であることが好ましい。
【0035】
複数の第2の電極17は、第2の絶縁部材12a相互間のそれぞれに、第2の絶縁部材12aが延びる方向と相互に平行に(平面視においてストライプ状に)、且つ、複数の有機EL層13及び第1の絶縁部材12bを覆うように形成されている。第2の電極17は有機EL層13に電子を注入する陰極としての機能を有する。第2の電極17は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む層とアルミニウム(Al)層との積層等により形成してもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る有機EL表示装置1の製造工程について、図7〜図13を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図7〜図11は隔壁12を形成する工程を表す断面図である。具体的には、図7は絶縁膜19を形成する工程を表す断面図である。図8は絶縁膜19を露光する露光工程を表す断面図である。図9は露光工程に使用する第1のマスク20の平面図である。図10は露光工程に使用する第2のマスク21の平面図である。図11は完成した隔壁12の形状を表す断面図である。
【0038】
図12は有機EL層13(具体的には、正孔輸送層14)を形成する工程を表す断面図である。
【0039】
図13は形成された正孔輸送層14の形状を表す断面図である。
【0040】
尚、7、8、11、12、及び13は図1における切り出し線III−IIIで切り出された部分の断面を表す図である。
【0041】
まず、絶縁基板10上にアルミニウム(Al)等の金属やインジウムスズ酸化物(ITO)等の透明導電性酸化物等からなる導電膜を形成し、その導電膜をフォトリソグラフィー法等のパターニング方法を用いて所望の形状にパターニングすることにより第1の電極11を形成する。
【0042】
次に、図7に示すように、第1の電極11を形成した絶縁基板10上に、感光性の絶縁樹脂をスピンコータやスリットコータ等を用いて成膜することにより(好ましくはネガ型)感光性の絶縁膜19を形成する。尚、絶縁膜19は、後に行うポストベーク工程後の層厚が6〜8μm程度になるような層厚で形成しておくことが好ましい。
【0043】
絶縁膜19の形成後、ホットプレート等を用いて、例えば120℃で2分間プリベークを行う。その後、図8に示すように、絶縁膜19の上方に第1のマスク20を設置する一方、絶縁基板10の下方に第2のマスク21を設置する。第1のマスク20は第2の絶縁部材12aを形成するためのものであり、図9に示すように、第2の絶縁部材12aの形状に対応した形状を有する。すなわち、第2の絶縁部材12aの形状に則したストライプ状の開口が形成された形状となっている。一方、第2のマスク21は第1の絶縁部材12bを形成するためのものであり、図10に示すように、第1の絶縁部材12bの形状に対応した形状を有する。すなわち、第1の絶縁部材12bの形状に則した格子状の開口が形成された形状となっている。
【0044】
そして、第1のマスク20側と第2のマスク21側との両方から光を照射することにより絶縁膜19を露光する。尚、露光量は、絶縁基板10の光透過率、隔壁12の形状(例えば、第1の絶縁部材12bの高さと第2の絶縁部材12aの高さとの比)等を考慮した上で適宜決定することが望ましく、第1のマスク20側からの露光量と第2のマスク21側からの露光量を異ならしめてもよい。例えば、第1のマスク20側からの露光量を100mJ/cm2とし、第2のマスク21側からの露光量を150mJ/cm2としてもよい。
【0045】
絶縁膜19を露光した後、必要に応じて絶縁膜19にPEB(Post Exposure Bake)を施した後、絶縁膜19を現像する。具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を用いてパドル現像を2分間行う。尚、本実施形態では、絶縁膜19はネガ型であるため、光の照射された部分(言い換えれば、マスク20、21の開口に対応した部分)のみが残ることとなる。
【0046】
さらに、例えば220℃で60分間ポストベークすることにより第1の絶縁部材12b及び第2の絶縁部材12aからなる隔壁12を形成することができる。
【0047】
以上説明した方法によれば、相互に同一の材料からなる第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとを同一の工程で同時に形成することができる。このため、少ないプロセスで容易に第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとを一体成形することができる。
【0048】
次に、有機EL層13の形成に先立って、第1の電極11の表面に親液化処理を施しておくことが好ましい。そうすることによって、有機EL層13と第1の電極11との密着性を向上させることができる。尚、親液化処理としては、具体的には、紫外線(UV)−オゾン処理や酸素プラズマ処理等が挙げられる。
【0049】
また、有機EL層13の形成に先立って、隔壁12の表面に撥液化処理を施しておくことが好ましい。例えば、隔壁12の表面が親液性である場合、インクが隔壁12に付着し(ピニングし)、中央部分の層厚が周辺部分の層厚と比較して薄い有機EL層13が形成されることとなる。一方、隔壁12の表面に撥液化処理を施した場合は、インクの隔壁12へのピニングが抑制されるため、層厚が比較的均一な有機EL層13を形成することができる。尚、撥液化処理としては、具体的には、四フッ化炭素ガス等のフッ素系ガスを用いたプラズマ処理等が挙げられる。
【0050】
次に、有機EL層13を形成する。有機EL層13は高分子有機EL材料を含有するものであり、例えば、湿式塗布法(具体的には、インクジェット法、スピンコート法等)により形成することができる。本実施形態では、その一例として、インクジェット法により形成する工程を説明する。
【0051】
まず、図12に示すように、第1の絶縁部材12bにより個別に分断された第1の電極11上の各領域に正孔輸送材料を含む正孔輸送層形成用インク22を吐出する。吐出後、吐出されたインク22を100℃以下で乾燥させ、且つ150℃〜200℃程度で焼成させることにより、図13に示すような正孔輸送層14を形成する。同様に、正孔輸送層14上に有機EL発光材料を含むインクを吐出し、乾燥及び焼成させることにより有機EL発光層15を形成する。有機EL発光層15上に電子輸送材料を含むインクを吐出し、乾燥及び焼成させることにより電子輸送層16を形成する。
【0052】
例えば、第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとが異なる材料で形成されている場合は、第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとはインク22に対する撥液性の度合いが相互に異なる。この撥液性の度合いの差異に起因して、周縁部分においてインク22の塗布ムラ(又は乾燥ムラ)が生じ、その結果、有機EL層13の層厚ムラが発生してしまう。
【0053】
しかしながら、本実施形態では、第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとは同一の絶縁膜19から形成されている。すなわち、第1の絶縁部材12bと第2絶縁部材12aとは同一材料からなる。このため、第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとではインクに対する撥液性の度合いが同様である。よって、インクの乾燥ムラが生じにくく、その結果、層厚ムラの少ない有機EL層13を形成することができる。従って、高い表示品位を有する有機EL表示装置1を実現することができる。
【0054】
尚、第1の絶縁部材12bは絶縁基板10から先細状に突出する断面台形状に形成されていることが好ましい。そうすることによって、隔壁12と絶縁基板10との間の隅部にも好適に有機EL層13を形成することができる。このため、高い開口率を実現することができる。また、第1の電極11と第2の電極17とが直接接触することを抑制することができるため、第1の電極11と第2の電極17との間の電流リークを抑制することができる。
【0055】
そして、最後に、有機EL層13が形成された絶縁基板10全面に、蒸着法等により導電膜を形成する。ここで、第2の絶縁部材12aは第1絶縁部材12bから拡幅状に突出する断面逆台形状に形成されているため、第2の絶縁部材12aの上部に導電層18が形成されると共に、有機EL層13及び第1の絶縁部材12bの上をストライプ状に延びる、導電層18とは分断された第2の電極17が形成される。且つ、第1の絶縁部材12bは絶縁基板10から先細状に突出する断面台形状に形成されているため、各第2の電極17は有機EL層13と第1の絶縁部材12bとの境界で分断されることが効果的に抑制される。すなわち、第2の絶縁部材12aを第1の絶縁部材12bから拡幅状に突出する断面逆台形状に形成し、且つ第1の絶縁部材12bを絶縁基板10から先細状に突出する断面台形状に形成することにより、マスクやフォトリソグラフィー工程等のパターニング工程等を要さず、容易且つ少ない工程で、断線の少ない第2の電極17を形成することができる。
【0056】
それに対して、例えば、第2の絶縁部材12aが第1の絶縁部材12bから先細状に突出する断面台形状に形成されている場合は、絶縁層18と第2の電極17とが分断されず、連続して形成されてしまう虞がある。すなわち、隣接する第2の電極17が電気的に接続されてしまうという不具合が発生する虞がある。また、第1の絶縁部材12bが絶縁基板10から拡幅状に突出する断面逆台形状に形成されている場合は、各第2の電極17が途中で分断されてしまうという不具合が発生する虞がある。
【0057】
尚、本実施形態では第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとは一体成形されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第1の絶縁部材12bと第2の絶縁部材12aとは、同一の材料からなる別の膜からそれぞれ形成されていてもよい。
【0058】
また、有機EL表示装置1を封止する封止部材(封止絶縁基板や封止キャップ等)をさらに設けてもよい。封止部材の内側には、酸化カルシウムや酸化バリウム等の乾燥剤(吸湿剤)を設けておくことがさらに好ましい。また、封止部材の取り付けは不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)雰囲気中で行うことが好ましい。
【0059】
また、本実施形態では、有機EL層13は、正孔輸送層14と、有機EL発光層15と、電子輸送層16とにより構成されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、有機EL層13は有機EL発光層15のみにより形成されていてもよい。また、有機EL発光層15と、1又は複数のバッファ層(正孔輸送層14、正孔注入層、電子注入層、電子輸送層16等)とにより構成されていてもよい。
【0060】
本実施形態では、隔壁12の形成後に撥液化処理を施す構成としているが、隔壁12を、撥液性を有する材料により、又は撥液性を有する材料を添加した材料により形成してもよい。この場合、隔壁12を撥液化する工程が不要となるため、有機EL表示装置1の製造工程をより簡素化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明に係る有機EL表示装置は、高い表示品位を有するため、携帯電話、PDA、テレビ、電子ブック、モニター、電子ポスター、時計、電子棚札、非常案内等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】有機EL表示装置1の平面図である。
【図2】図1中の切り出し線II−IIで切り出された部分の断面図である。
【図3】図1中の切り出し線III−IIIで切り出された部分の断面図である。
【図4】図1中の切り出し線IV−IVで切り出された部分の断面図である。
【図5】図1中の切り出し線V−Vで切り出された部分の断面図である。
【図6】隔壁12の形状を表す斜視図である。
【図7】絶縁膜19を形成する工程を表す断面図である。
【図8】絶縁膜19を露光する露光工程を表す断面図である。
【図9】露光工程に使用する第1のマスク20の平面図である。
【図10】露光工程に使用する第2のマスク21の平面図である。
【図11】完成した隔壁12の形状を表す断面図である。
【図12】有機EL層13(詳細には、正孔輸送層14)を形成する工程を表す断面図である。
【図13】形成された正孔輸送層14の形状を表す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 有機EL表示装置
10 絶縁基板
11 第1の電極
12 隔壁
12a 第2の絶縁部材
12b 第1の絶縁部材
13 有機EL層
14 正孔輸送層
15 有機EL発光層
16 電子輸送層
17 第2の電極
18 導電層
19 絶縁膜
20 第1のマスク
21 第2のマスク
22 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に相互に並行に延びるように形成された複数の第1の電極と、
上記各第1の電極を相互に個別に仕切ると共に該各第1の電極の表面を該第1の電極の延びる方向に複数の領域に分断するように格子状に形成されており、上記絶縁基板から先細状に突出する断面台形状の第1の絶縁部材と、
上記第1の絶縁部材の上に上記第1の電極と交差する方向に相互に並行に延びるように形成されており、それぞれ、上記第1の絶縁部材から拡幅状に突出する断面逆台形状であって、上記第1の絶縁部材と同一の材料からなる複数の第2の絶縁部材と、
上記各領域の上に形成された有機エレクトロルミネッセント層と、
上記第2の絶縁部材相互間のそれぞれに、上記有機エレクトロルミネッセント層と上記第1の絶縁部材とを覆うように形成されており、該第2の絶縁部材の延びる方向に相互に平行に延びる複数の第2の電極と、
を備えた有機エレクトロルミネッセント表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセント表示装置において、
上記第1の絶縁部材と上記第2の絶縁部材とは一体成形されている有機エレクトロルミネッセント表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセント表示装置において、
上記有機エレクトロルミネッセント層は有機高分子材料を含む有機エレクトロルミネッセント表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセント表示装置において、
上記有機エレクトロルミネッセント層は湿式塗布法により形成される有機エレクトロルミネッセント表示装置。
【請求項5】
絶縁基板と、該絶縁基板上に相互に並行に延びるように形成された複数の第1の電極と、該各第1の電極を相互に個別に仕切ると共に該各第1の電極の表面を該第1の電極の延びる方向に複数の領域に分断するように格子状に形成されており、上記絶縁基板から先細状に突出する断面台形状の第1の絶縁部材と、該第1の絶縁部材の上に上記第1の電極と交差する方向に相互に並行に延びるように形成されており、それぞれ、上記第1の絶縁部材から拡幅状に突出する断面逆台形状である複数の第2の絶縁部材と、上記各領域の上に形成された有機エレクトロルミネッセント層と、上記第2の絶縁部材相互間のそれぞれに、上記有機エレクトロルミネッセント層と上記第1の絶縁部材とを覆うように形成されており、該第2の絶縁部材の延びる方向に相互に平行に延びる複数の第2の電極とを備えた有機エレクトロルミネッセント表示装置を製造するための方法であって、
上記複数の第1の電極が形成された上記絶縁基板上に感光性の絶縁膜を形成する工程と、
上記絶縁膜の上方に上記第2の絶縁部材の形状に対応した第1のマスクを設置すると共に、上記絶縁基板の下方に上記第1の絶縁部材の形状に対応した第2のマスクを設置する工程と、
上記第1のマスク側と上記第2のマスク側との両側から光を照射することにより上記絶縁膜を露光する工程と、
上記露光された絶縁膜を現像することにより上記第1の絶縁部材と上記第2の絶縁部材とを形成する工程と、
上記各領域上に有機エレクトロルミネッセント材料を含むインクを吐出することにより有機エレクトロルミネッセント層を形成するエレクトロルミネッセント層成形工程と、
上記複数の第2電極を形成する工程と、
を備えた有機エレクトロルミネッセント表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された有機エレクトロルミネッセント表示装置の製造方法において、
上記エレクトロルミネッセント層形成工程に先立って、上記第1の絶縁部材と上記第2の絶縁部材とに撥液化処理を施すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載された有機エレクトロルミネッセント表示装置の製造方法において、
上記エレクトロルミネッセント層形成工程に先立って、上記複数の第1の電極に親液化処理を施すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−123012(P2007−123012A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312714(P2005−312714)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】