有機半導体リン含有化合物およびその製造方法
【課題】新規なアルコール系溶媒に可溶な有機半導体リン含有化合物およびその製造方法の提供。
【解決手段】ジアリールホスフィンオキシド誘導体とハロゲン化トリアリールホスフィンオキシド誘導体を、溶媒中、縮合触媒存在下に縮合させることからなる有機半導体リン含有化合物及びその製造方法。リン含有有機化合物としては、4,4’,4”−トリス(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ビス−(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド、4,4’,4”−トリス−(ジ−p−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド等を提供する。リン含有有機化合物は、イオン化ポテンシャル、バンドギャップ、ガラス転移温度などの性質が十分であり、良好な電子輸送能、正孔阻止能、耐熱性を備えている。
【解決手段】ジアリールホスフィンオキシド誘導体とハロゲン化トリアリールホスフィンオキシド誘導体を、溶媒中、縮合触媒存在下に縮合させることからなる有機半導体リン含有化合物及びその製造方法。リン含有有機化合物としては、4,4’,4”−トリス(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ビス−(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド、4,4’,4”−トリス−(ジ−p−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド等を提供する。リン含有有機化合物は、イオン化ポテンシャル、バンドギャップ、ガラス転移温度などの性質が十分であり、良好な電子輸送能、正孔阻止能、耐熱性を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルコール系溶媒に可溶な有機半導体リン含有化合物(以下、「リン含有有機化合物」ともいう)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光物質として有機材料を用いた有機電界発光素子は、陽極から注入される正孔(ホール)と陰極から注入される電子が再結合して励起状態の分子(励起子)を形成し、その励起子が基底状態にもどる際にエネルギーを放出することにより発光する。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック(Eastman Kodak)社のタン氏(C.W.Tang)らは、陽極と陰極との間に有機膜を積層した有機電界発光素子を発表し、低電圧駆動で高輝度の発光を実現した(C.W.Tang 他, 「Applied Physics Letters」,1987, 第51巻, p.913:非特許文献1)。
【0004】
このタン氏らの発表以来、有機電界発光素子について、RGBの三原色の発光、輝度向上、安定性、積層構造、作製方法などの研究が盛んに行われている。現在では、有機電界発光素子は、携帯電話やカーオーディオ用のディスプレイとして一部実用化が始まっており、液晶ディスプレイに代わる次世代のフラット・ディスプレイとして有望視されている。
【0005】
有機電界発光素子は、電子輸送材料が発光材料と組み合わせて用いられることが多い。
電子輸送材料は、陰極から注入された電子を効率よく発光層に輸送するために用いられ、また正孔を阻止するのにも役立っている。電子輸送材料としては、例えばオキサジアゾール誘導体や、緑色発光材料として広く用いられているAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)が用いられている。
【0006】
また、有機電界発光素子における有機膜の作製方法は、乾式法と湿式法の二つに大別される。乾式法としては、真空蒸着法やCVD法などが挙げられ、湿式法としては、スピンコート法やインクジェット法などが挙げられる。
乾式法による有機電界発光素子は、真空蒸着により形成されるために、容易に多層膜が形成できる。それにより、乾式法により作製された有機電界発光素子は、正孔注入層、電子注入層、正孔阻止層などの導入が可能になる。よって、正孔および電子のキャリア注入バランスをとることが可能になり高効率、高輝度が実現でき、すでにディスプレイデバイスが実用化されるに至っている。しかしながら、大面積の素子を作製するための装置が大掛かりとなり、生産性に劣るという欠点がある。
【0007】
一方、湿式法は、大面積を一度に塗布することが可能なため、大面積の素子でも容易に作製でき、生産性が高い。このように、生産性やコストを考慮した場合、乾式法よりも湿式法が優れている。特に、高分子系の材料では、真空蒸着による薄膜作製が困難な場合が多いので、主に湿式法が採用されている。
【0008】
特開2002−63989号公報(特許文献1)には、式:
R3P=O
(式中、Rは同一または異なるアリール基などの置換基であり、Rの少なくとも1つは蛍光性骨格である)で表される有機蛍光体を含む発光素子が開示されている。
また、特開2004−204140号公報(特許文献2)には、式:
(Ar)3P=O
(式中、Arは同一または異なるアリール基またはヘテロアリール基であり、Arの少なくとも1つはα位で連結したナフチル基であり、かつArの少なくとも1つは蛍光性骨格または電荷輸送性骨格を含む)で表される発光素子用材料が開示されている。
上記の公報には、蛍光性骨格として、フェナンスリル、アントラニル、ピレニル、ペリレニルなどの縮合環が例示されている。
しかしながら、本発明のリン含有有機化合物は、上記の公報に記載の有機蛍光体や発光素子用材料の構造と類似するものの、α位で連結したナフチル基や蛍光性骨格などを有さず、構造が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−63989号公報
【特許文献2】特開2004−204140号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.W.Tang 他, 「Applied Physics Letters」,1987, 第51巻, p.913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の電子輸送材料では、湿式法で有機膜を作製する場合に次のような課題があった。
すなわち、電子輸送材料を溶媒に溶かして製膜を行う湿式法において、従来の電子輸送材料ではクロロホルム、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)などの限られた溶媒しか使用できなかった。よって、それ以外の溶媒を使用すると全く溶けずに製膜自体ができないか、製膜できたとしても製膜後に電子輸送材料が結晶化し、素子として使用することができなかった。
【0012】
このため、下層である有機膜がクロロホルム、トルエン、THFなどに可溶な場合には、その下層の有機膜上に湿式法で電子輸送層を製膜すると、下層の有機膜が同じ溶媒で溶解し損傷してしまう。その結果、膜質が一定にならなかったり、ピンホールが形成されたりして、優れた有機電界発光素子を作製することができなかった。
【0013】
特に、湿式法により製膜が行われる高分子系の材料は、クロロホルム、トルエン、THFなどの溶媒にしか溶解しないため、高分子物質で製膜した層の上に、湿式法で電子輸送層を製膜することはできなかった。
【0014】
(本発明の目的)
そこで、本発明の目的は、有機電界発光素子の電子輸送層が、湿式法を用いて、下層の有機膜を傷めることなく、下層の有機膜の上に表面が平滑な電子輸送層を形成できるリン含有有機化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、有機電界発光素子の電子輸送材料として、特定のリン含有有機化合物を用いることにより、湿式法を用いて下層の有機膜を傷めることなく、下層の有機膜の上に電子輸送層を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
かくして、本発明の1つの観点によれば、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層と、該正孔輸送層上に湿式法で形成された電子輸送層とを有し、該電子輸送層の材料が、アルコール系溶媒に可溶なリン含有有機化合物である有機電界発光素子が提供される。
【0017】
また、本発明の別の観点によれば、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子の製造方法において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物を用いて正孔輸送層を形成するステップと、アルコール系溶媒で溶解した電子輸送層の材料としてのリン含有有機化合物を用いる湿式法により、上記正孔輸送層上に電子輸送層を形成するステップとを含む有機電界発光素子の製造方法が提供される。
【0018】
本発明のさらなる別の観点によれば、一般式(4):
【化1】
【0019】
(式中、Ar11は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい、フェニル基またはナフチル基を表す)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は、3つのハロゲン原子で置換されたベンゼンまたは2つのハロゲン原子で置換されたベンゼンもしくはビフェニルを表す)
の化合物、または
【0020】
一般式(5):
【化2】
【0021】
(式中、Ar13は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい、フェニル基またはビフェニル基を表すが、但しAr13の少なくとも2つは、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたフェニル基またはビフェニル基である)
で表される化合物との縮合物であるリン含有有機化合物が提供される。
【0022】
また、本発明の他の観点によれば、式(9):
【化3】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)、または
式(10):
【化4】
(式中、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいは式(9)と連結するフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表されるジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を少なくとも3つ有するリン含有有機化合物が提供される。
【0023】
さらに、本発明の他の観点によれば、上記一般式(4)の化合物と、式:Ar12の化合物、または上記一般式(5)の化合物とを、溶媒中、縮合触媒および塩基の存在下で縮合させてリン含有有機化合物を得ることからなるリン含有有機化合物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層の上に、アルコール系溶媒で電子輸送材料を溶解した溶液を用いた湿式法により電子輸送層を設けることで、有機電界発光素子を作製する。これにより、下層である正孔輸送層が、上層である電子輸送層の製膜時に使用するアルコール系溶媒によって溶解することはないため、湿式法を用いて下層の有機膜を傷めることなく、下層の有機膜の上に電子輸送層を形成することができる。その結果、有機層の膜質が一定になり、ピンホールの形成も防止できるので、低電圧で優れた発光特性を示し、長寿命の有機電界発光素子を得ることができる。
【0025】
上記のリン含有有機化合物は、イオン化ポテンシャル、バンドギャップ、ガラス転移温度などの性質が十分であり、良好な電子輸送能、正孔阻止能、耐熱性を備えている。したがって、上記のリン含有有機化合物を用いれば、低電圧で優れた発光特性を示し、長寿命の有機電界発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【図2】比較例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【図3】上記の実施例1および比較例1に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
【図4】上記の実施例1および比較例1に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【図5】本発明の実施例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【図6】比較例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【0027】
【図7】上記の実施例2および比較例2に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
【図8】上記の実施例2および比較例2に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【図9】上記の実施例2および比較例2に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【図10】本発明の実施例3および比較例3に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
【図11】上記の実施例3および比較例3に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【図12】上記の実施例3および比較例3に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【0028】
【図13】実施例19および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【図14】実施例20および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【図15】実施例21および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【図16】実施例22および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層と、該正孔輸送層上に湿式法で形成された電子輸送層とを有し、該電子輸送層の材料は、アルコール系溶媒に可溶なリン含有有機化合物である。
本発明において用いられる用語「可溶」とは、膜形成のために用いる湿式法において実用に耐え得る程度の溶解性を意味し、例えば、少なくとも0.1g/L以上が好ましい。
【0030】
電子輸送層の材料は、湿式法では、アルコール系溶媒に可溶な有機化合物であり、乾式法では、10-3Pa以下で蒸着性を有する有機化合物であり、これらの有機化合物の中でも非イオン性有機化合物が好ましく、リン含有有機化合物が特に好ましい。
リン含有有機化合物としては、下記の一般式(1)〜(3)で表される化合物が利用できる。
【0031】
【化5】
(式中、Ar1〜Ar3は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよい芳香族環残基を表す)
【0032】
【化6】
(式中、Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよい芳香族環残基を表し、Ar7〜Ar9は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基を表す)
【0033】
【化7】
(式中、R1またはR2は、互いに同一または異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アリール基またはジアリールホスフィニル基を表し、R1とR2はそれらが結合するベンゼン環の炭素原子と共に互いに一緒になって置換または無置換の芳香環を形成することができ、nは1または2である)
【0034】
一般式(1)および(2)における「芳香族環残基」としては、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、トリアジン環、フラン環、ピラジン環、ピリジン環などの単環式の芳香族環残基および複素環、ナフタレン環、アントラセン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フェナントレン環、フルオレン環、フロ[3,2−b]フラン環などの縮合多環式の芳香族環残基および複素環、ビフェニル環、ターフェニル環、ビチオフェン環、ビフラン環などの環集合式の芳香族環残基および複素環、アクリジン環、イソキノリン環、インドール環、カルバゾール環、カルボリン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、シンノリン環、チオナフテン環、1,10−フェナントロリン環、フェノチアジン環、プリン環、ベンゾフラン環、シロール環などの芳香族環残基と複素環との組み合わせからなるものが挙げられる。
【0035】
一般式(2)における「アリレン基」としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フェナントレン基、ターフェニレン基、ピレニレン基などの芳香族炭化水素基が挙げられ、これは無置換でも置換されていてもよい。
一般式(3)における「アリール基」としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基が挙げられ、これは無置換でも置換されていてもよい。
【0036】
「アリール基」および「芳香族環残基」における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アリール基およびジアリールホスフィニル基などが挙げられる。
【0037】
本発明のリン含有有機化合物は、非イオン性有機化合物であるのが好ましい。非イオン性有機化合物であれば、有機電界発光素子として駆動した際の電気化学的安定性高く、さらに結晶化し難く素子の寿命の点で好ましい。
本発明のリン含有有機化合物は、分子量300〜5000が好ましく、より好ましくは、アルコール溶媒への溶解性、蒸着の観点から、湿式法に用いる場合には、300〜1500、乾式法に用いる場合には、300〜1200とされる。
【0038】
本発明によれば、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子の製造方法において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物を用いて正孔輸送層を形成するステップと、アルコール系溶媒で溶解した電子輸送層の材料としてのリン含有有機化合物を用いる湿式法または乾式法により、上記正孔輸送層上に電子輸送層を形成するステップとを含む有機電界発光素子の製造方法が提供される。
本発明により製造される有機電界発光素子の電子輸送層表面の算術平均粗さ(Ra)は、有機電界発光素子の発光特性向上の観点から、10nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以下とされる。
そこで、一般式(1)〜(3)で表されるリン含有有機化合物は、電子輸送材料であって、アルコール系溶媒に可溶な電子輸送層の材料として用いられる。
【0039】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールのような炭素数1〜6の直鎖または分岐状の脂肪族アルコール溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコール系溶媒などが挙げられ、炭素数1〜6の直鎖または分岐状の脂肪族アルコール溶媒が好ましい。または、これらを複数混合して用いることもできる。
【0040】
湿式法としては、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、キャスティング法、ロール塗工法、スクリーン、グラビアあるいはオフセットなどの印刷法などが挙げられる。
【0041】
なお、湿式法で電子輸送層を製膜する際は、上記したアルコール系溶媒にアルコール系溶媒以外の溶媒を混合して使用することもできる。
また、有機電界発光素子の製造における他の工程は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
乾式法としては、真空蒸着法、CVD法などが挙げられる。
【0042】
本発明の電子輸送材料を用いた有機電界発光素子について説明する。
有機電界発光素子は、例えば次のような層構成によって形成される。
(1)基板、陽極、発光層、陰極(背面電極)
(2)基板、陽極、発光層、単層又は複数層の電子輸送材料を有する有機物層、陰極
(3)基板、陽極、単層又は複数層の正孔輸送材料を有する有機物層、発光層、陰極
(4)基板、陽極、単層又は複数層の正孔輸送材料を有する有機物層、発光層、単層又は複数層の電子輸送材料を有する有機物層、陰極
上記の(1)〜(4)の素子は、それぞれ正孔注入層および/または電子注入層を備えてもよい。
【0043】
基板と陰極のいずれの側から発光を取り出すかによって材料を選択する。基板側から発光を取り出す場合には、基板と陽極を透明材料で形成し、陰極側から発光を取り出す場合には、陰極を透明材料で形成する。
有機電界発光素子は、さらにホールブロック層(正孔阻止層)や電子注入層を有していてもよい。
また、発光層が正孔輸送材料または電子輸送材料を含み、正孔輸送層兼発光層または電子輸送層兼発光層の形態にしてもよい。
さらに、発光層の正孔輸送層側および/または電子輸送層側に発光材料をドーピングしてもよい。
【0044】
基板の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、ガラス、プラスチック、金属薄膜、シリコン、石英などが挙げられる。また、基板に蛍光色変換フィルター膜、カラーフィルター膜、誘電体反射膜などを用いて発色光をコントロールすることもできる。
【0045】
陽極の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、インジウム錫オキシド(ITO)、酸化チタン、酸化錫;金、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウムなどの金属単体あるいはこれらの合金;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィドなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。これらの電極材料は単独で用いてもよく、複数併用することもできる。
また、電極の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、ゾルゲル法、スピンコート法、インクジェット法などの薄膜形成法などが挙げられる。
【0046】
陰極の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロムなどの金属単体あるいはこれらの合金;酸化錫インジウム(ITO)などの金属酸化物などが挙げられる。
また、陰極は一層または多層のいずれの構成でもよい。
また、電極の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0047】
正孔輸送層の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、湿式法で層を形成する場合には、アルコール系溶媒を用いた湿式法による電子輸送層の形成時に、その湿式法で用いられるアルコール系溶媒で溶解しないものの中から選択される。
正孔輸送層の材料は、例えば、導電性高分子、低分子有機半導体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリカーボネートなどの絶縁性高分子に低分子有機半導体を分散した複合材料、あるいはこれらを複数混ぜ合わせた複合材料が挙げられる。
【0048】
導電性高分子としては、ポリジオクチルフルオレン(POF)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフェニレン(PP)、ポリフルオレン(PF)、ポリチオフェン(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリアセチレン(PA)、これらを複数混ぜ合わせた複合材料、あるいはこれらの導電性高分子の誘導体または共重合体、その他これらの導電性高分子とポリアセン類や蛍光色素との共重合体などが挙げられる。
【0049】
低分子有機半導体としては、フェニレンジアミン誘導体(例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)など)、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フェニルスチレン誘導体、あるいはこれらを複数混ぜ合わせた複合材料などが挙げられる。
【0050】
正孔注入層の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、PEDT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)、銅フタロシアニンなどが挙げられる。
【0051】
電子注入層の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、フッ化リチウムやフッ化セシウムなどのフッ化アルカリ金属、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムなどのアルカリ土類金属、アセチルアセトナトリチウム、キノリノレートリチウムなどのリチウム錯体、バソフェナントロリンリンやバソクプロインへナトリウム金属やリチウム金属をドープした複合膜などが挙げられる。
【0052】
本発明で好ましいリン含有有機化合物は、一般式(4):
【化8】
【0053】
(式中、Ar11は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい、フェニル基またはナフチル基を表す)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は、3つのハロゲン原子で置換されたベンゼンまたは2つのハロゲン原子で置換されたベンゼンもしくはビフェニルを表す)
の化合物、または
【0054】
一般式(5):
【化9】
【0055】
(式中、Ar13は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい、フェニル基またはビフェニル基を表すが、但しAr13の少なくとも2つは、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたフェニル基またはビフェニル基である)
で表される化合物との縮合物である。
【0056】
上記の縮合物としては、下記の副式(6)〜(8)で表される化合物が好ましい。
【化10】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar12'は、n=2のときフェニレン基またはビフェニレン基を表し、n=3のときベンゼントリイル基を表す)
【0057】
【化11】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニレン基またはビフェニレン基を表す)
【化12】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニレン基またはビフェニレン基を表し、Ar13''はフェニル基またはビフェニル基を表す)
【0058】
副式(6)〜(8)におけるAr11、Ar12、Ar12'、Ar13、Ar13'およびAr13''は、表現が異なる部分があるが、一般式(1)におけるAr1〜Ar3ならびに一般式(2)および(3)におけるAr1〜Ar9と基本的に共通する。
置換基Ar11における「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
置換基Ar11における「低級アルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基(t-ブチルともいう)などが挙げられる。
置換基Ar11における「低級アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
置換基Ar11としては、無置換のフェニル基、メチル基、t-ブチル基またはメトキシ基で置換されたフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が特に好ましい。
副式(6)〜(8)のAr11において、フェニル基とナフチル基が混在する場合には、例えば、同一のリン原子に結合する2つのAr11の一方がフェニル基で、他方がナフチル基である場合が挙げられる。
【0059】
副式(6)(n=2)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。なお、以下の化合物は骨格のみを示し、Ar11が置換されている場合の置換基の記載を省略する。
【0060】
【化13】
【0061】
副式(6)(n=3)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0062】
【化14】
【0063】
副式(7)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
副式(8)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0067】
【化17】
【0068】
上記以外にリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
なお、以上の具体例はあくまで代表的なものであり、特にこれらに限定されるものではない。
【0073】
本発明のリン含有有機化合物は、式(9):
【化21】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)、または
【0074】
式(10):
【化22】
【0075】
(式中、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいは式(9)と連結するフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表されるジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を少なくとも3つ有するのが好ましい。
上記の部分構造を少なくとも3つ有するリン含有有機化合物は、有機電界発光素子の電子輸送層の材料として優れた電子輸送効果を有する。
【0076】
本発明のリン含有有機化合物の合成には、公知の方法を適用することができる。
本発明のリン含有有機化合物は、上記一般式(4)の化合物(化合物4)と、式:Ar12の化合物(化合物Ar)または上記一般式(5)の化合物(化合物5)とを、溶媒中、縮合触媒および/または塩基の存在下で縮合(脱ハロゲン化水素反応)させることにより得ることができる。
【0077】
例えば、上記副式(6)の化合物(n=2)を得る場合、化合物Ar12の1モルに対して、化合物4の使用量は2.0〜4.5モル程度である。
つぎに、上記副式(6)の化合物(n=3)を得る場合、化合物Ar12の1モルに対して、化合物4の使用量は3.0〜7.5モル程度である。
また、上記副式(7)の化合物を得る場合、化合物5の1モルに対して、化合物4の使用量は3.0〜7.5モル程度である。
さらに、上記副式(8)の化合物を得る場合、化合物5の1モルに対して、化合物4の使用量は2.0〜4.5モル程度である。
【0078】
上記の溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げら、これらの中でも、収率の点で、DMSOが好ましい。
【0079】
上記の縮合触媒としては、例えば、酢酸パラジウム[Pd(OAc)2]、酢酸ニッケル[Ni(OAc)2]、およびPd(OAc)2−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[dppp]、Pd(OAc)2−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[dppe]、Pd(OAc)2−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン[dppb]、Ni(OAc)2−dppe、Ni(OAc)2−dpppのような白金族元素とビスホスフィノアルカンとの錯化合物が挙げられる。これらの中でも、Pd(OAc)2、Pd(OAc)2−dpppおよびPd(OAc)2−dppbが収率の点から好ましい。
触媒の使用量は、化合物4の1モルに対して0.005〜0.1モル程度である。
【0080】
上記の塩基は、縮合により生成されるハロゲン化水素を捕捉する機能を有する。
このような塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミンやN−エチルジイソプロピルアミン[edpa]のような脂肪族第3級アミンやピリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン[DMAP]のような芳香族第3級アミンが挙げられ、これらの中でも、沸点の点で、edpaおよびDMAPが好ましい。
塩基の使用量は、生成するハロゲン化水素の理論量を捕捉するに十分な量、すなわち化合物4の1モルに対して、1.0〜1.2モル程度である。
【0081】
本発明による縮合反応における反応温度は、好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜130℃である。
また、反応時間は、反応温度などの条件にもよるが、通常、1〜48時間程度で十分である。
【0082】
反応後、公知の方法により、得られた反応溶液から目的化合物を分離する。例えば、クロロホルム/蒸留水を用いて、反応溶液から目的化合物を抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮する。得られた目的化合物をさらに精製処理に付してもよい。例えば、残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離後に再結晶を行い、さらに真空中で昇華精製する。
このようにして得られたリン含有有機化合物は、有機電界発光素子の電子輸送材料として用いることができる。
【0083】
上記のリン含有有機化合物の中でも、有機電界発光素子の電子輸送材料として次の化合物が特に好ましい。
【0084】
副式(6)の化合物:
【化23】
【0085】
副式(7)の化合物:
【化24】
【0086】
【化25】
【0087】
副式(8)の化合物:
【化26】
【0088】
本発明のリン含有有機化合物は、一般に用いられる有機半導体の特性を備えるものと考えられ、デバイスとしての応用が期待できる。このような応用デバイスとしては、有機感光体、有機薄膜レーザー、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機揮発性メモリ、有機不揮発性メモリ、耐電防止剤などが挙げられ、それらの応用製品としては、液晶ディスプレイ用TFT基板、有機EL用TFT基板、有機集積回路、コピー、FAX、携帯電話、非接触ICカードおよびタグ、パーソナルコンピューターなどが挙げられる。
【0089】
本発明のリン含有有機化合物は、ジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を有することから、本明細書においては、リン含有有機化合物を「トリアリールホスフィンオキシド化合物」ともいう。
【0090】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
(1)4,4’,4”−トリス(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド(「TPPO−Burst」ともいう)の合成
実施例1として、次式で示されるTPPO−Burstを合成した。
【0092】
【化27】
【0093】
TPPO−Burst(生成物質)は、以下に示す反応式のように、トリフェニルホスフィンオキシド(中間物質6)の合成、ジフェニルホスフィンオキシド(中間物質7)の合成、および中間物質6および中間物質7からの合成という工程を経て調製した。
【0094】
【化28】
【0095】
(1−1)トリフェニルホスフィンオキシド(中間物質6)の合成
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.40g(98.8mmol)に1,4−ジブロモベンゼン26.0g(110mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質6a)を調製した。その溶液に、オキシ塩化リン(反応物質6b)4.6(30mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)を17mL滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム相を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後に再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量=515、分子量+2=517、分子量+4=519を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質6であることを確認した(収量5.21g(10.1mmol)、収率34%)。
【0096】
(1−2)ジフェニルホスフィンオキシド(中間物質7)の合成
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.4g(98.8mmol)にブロモベンゼン17.2g(110mmol)の乾燥THF溶液を溶媒が還流しないように冷却しながら滴下し、グリニャール試薬(反応物質7a)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル(反応物質7b)5.18g(37.5mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に1mol/L塩酸を滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム相を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後に再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=203を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質7であることを確認した(3.57g(17.7mmol)、収率47%)。
【0097】
(1−3)中間物質6および中間物質7からの生成物質であるTPPO−Burstの合成
中間物質7 2.55g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.06g(2.05mmol)を溶媒DMSO20mL、Pd(OAc)293.3mg(0.416mmol)、dppp257mg(0.623mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、さらに、2×10-4Paの真空度で昇華精製した。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=879を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−Burstであることを確認した(収量1.39g(1.58mmol)、収率77%、Tm:399℃、Tg:149℃)。
【0098】
(2)TPPO−Burstの性質
(2−1)イオン化ポテンシャル、バンドギャップ
TPPO−Burstのイオン化ポテンシャルを理研計器株式会社製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず6.8eV以上であった。バンドギャップは3.96eVであった。TPPO−Burstは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TPPO−Burstは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0099】
(2−2)ガラス転移温度
得られたTPPO−BurstのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが149℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)のTg63℃よりも高く、TPPO−Burstが耐熱性に優れていることがわかる。
【0100】
(3)TPPO−Burstを用いた有機電界発光素子の作製
図1は、実施例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いて素子を作製し、これを実施例1とした。素子構成の詳細は、以下の通りである(図1参照)。
透明電極(ITO)/正孔輸送層兼発光層(POF)/電子輸送層(TPPO−Burst)/陰極(MgAg)
【0101】
すなわち、酸化錫インジウム(ITO)で構成される透明電極(100nm)付きのガラス基板1をアルカリ洗剤、蒸留水、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で二回ずつ順次超音波洗浄し、乾燥させた。
【0102】
導電性高分子物質であるPOF(ポリジオクチルフルオレン)を塩化メチレンで溶解し、溶液の濃度が塩化メチレン1mLに対しPOF10mgとなるように調製した。この溶液をITO電極上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、正孔輸送層兼発光層2を形成した。得られたPOFの膜厚は50nmであった。
【0103】
次に、電子輸送材料としてTPPO−Burstをメタノールに溶解し、溶液の濃度がメタノール1mLに対しTPPO−Burst16mgとなるように調製した。この溶液を上記POFの正孔輸送層兼発光層上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、電子輸送層3を形成した。この際、下層の正孔輸送層兼発光層はスピンコートの前後で厚みに変化はなく、損傷なかった。得られた電子輸送層の膜厚は50nmであった。
【0104】
さらに、電子輸送層の上に、陰極4としてMgAg電極を共蒸着した(Mg:Ag=10:1)。MgAg電極の膜厚は、100nmであった。
【0105】
(4)比較例1有機電界発光素子の作製
図2は、比較例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。図2に示すように、正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を設けない以外は、実施例1と同様にして素子を作製し、これを比較例1とした。なお、導電性高分子物質であるPOFは、溶液の濃度が塩化メチレン1mLに対しPOF16mgとなるように調製してスピンコートを行い、膜厚は100nmであった。
【0106】
(5)有機電界発光素子の電圧−輝度特性および電流−輝度特性
実施例1および比較例1に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、電圧−輝度特性および電流−輝度特性を調べた。
図3は、実施例1および比較例1に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
図4は、実施例1および比較例1に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【0107】
図3に示す電圧−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、大幅な駆動電圧の低下が確認できる。これは、TPPO−Burstを設けることでMgAg電極からの電子の注入障壁が低くなったためと考えられる。
【0108】
また、図4に示す電流−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、電流当たりの輝度が大幅に向上していることがわかる。これは、TPPO−Burstによるキャリア閉じこめ効果により、電子と正孔の注入バランスが改善されたためと考えられる。
【0109】
(実施例2)
(1)正孔注入層を設けた有機電界発光素子の作製
図5は、実施例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
図5に示すように、透明電極と正孔輸送層兼発光層2の間に正孔注入層5を設けた以外は、実施例1と同様にして素子を作製し、これを実施例2とした。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(POF)/電子輸送層(TPPO−Burst)/陰極(MgAg)
【0110】
すなわち、正孔注入材料としてバイエル社製のPEDT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)の水溶液を用いた。この溶液を透明電極上に滴下し、1000rpmの回転で180秒間スピンコートを行い、正孔注入層5を形成した。さらに、実施例1と同様に、順次、正孔輸送層兼発光層、電子輸送層、陰極を積層して、素子を作製した。この際、正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を積層する際、正孔輸送層兼発光層および正孔注入層はスピンコートの前後で厚みに変化はなく、損傷はなかった。これは、正孔輸送層兼発光層材料であるPOFおよび正孔注入層材料であるPEDT/PSSが、アルコール系溶媒(本実施例ではメタノール)に不溶なためである。
【0111】
(2)比較例2に係る有機電界発光素子の作製
図6は、比較例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
図6に示すように、正孔輸送層兼発光層2の上に電子輸送層を設けない以外は、実施例2と同様にして素子を作製し、これを比較例2とした。
【0112】
(3)有機電界発光素子の電圧−輝度特性および電流−輝度特性
実施例2および比較例2に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、電圧−輝度特性および電流−輝度特性を調べた。
図7は実施例2および比較例2に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
図8は実施例2および比較例2に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【0113】
図7に示す電圧−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、約3Vの駆動電圧の低下が観察される。また、図8に示す電流−輝度特性から明らかなとおり、正孔注入層としてPEDT/PSSを積層したことにより、PEDT/PSSを積層していない実施例1(図4参照)と相違して、電流−輝度特性の乱れが無くなったことがわかる。これは、PEDT/PSSを積層することによって有機層全体の膜厚が厚くなり、その結果、透明電極(陽極)と背面電極(陰極)同士の接触による導通を防止できたためと推察される。
【0114】
(4)有機電界発光素子の電圧−EL効率特性
実施例2および比較例2に係る素子の電圧−EL効率特性を調べた。図9は、実施例2および比較例2に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【0115】
図9から明らかなとおり、電子輸送層としてTPPO−Burstを積層することにより、EL効率を5倍程度に向上させることができる。
【0116】
(実施例3)
(1)有機電界発光素子の作製
正孔輸送層兼発光層を形成する材料として、PVK(ポリビニルカルバゾール)とIr(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)を用いた以外は、図2に示す実施例2と同じ構成で素子を作製し、これを実施例3とした。素子構成の詳細は、以下の通りである。
【0117】
透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)/電子輸送層(TPPO−Burst)/陰極(MgAg)
【0118】
正孔輸送層兼発光層は次のようにして形成した。まず、バイアル瓶にPVKを所定量入れ、次にPVK100重量部に対してIr(ppy)3を10重量部入れた。その後、溶媒THF1mLに対してPVKが14mgになるように、THFにPVKおよびIr(ppy)3を溶解した。この溶液を下層である正孔注入層上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、正孔輸送層兼発光層を形成した。正孔輸送層兼発光層の膜厚は60nmであった。
【0119】
さらに、実施例2と同様に、順次、電子輸送層、陰極を積層し、素子を作製した。なお、電子輸送層の膜厚は60nmであった。実施例2と同様、正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を積層する際、正孔輸送層兼発光層および正孔注入層はスピンコートの前後で厚みに変化はなく、損傷はなかった。
【0120】
TPPO−Burstの湿式および乾式における算術表面粗さ(Ra)を以下の方法で測定した。TPPO−Burstを溶解する溶媒として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールを用いた。それぞれの溶媒1mLに対して、TPPO−Burstが16mgとなるように溶解した溶液を、スピンコート法にて、回転数4000回転、回転時間30秒の条件にて薄膜を作成した。得られた薄膜は常温下で乾燥したものと、105℃中で1時間乾燥したものの2種類を作成した。さらに、対照として真空蒸着法を用いたTPPO−Burst薄膜も作成した。得られた薄膜の製膜性をセイコーインスツルメンツ製の操作プローブ顕微鏡(SPI4000N)を用いて、原子間力顕微鏡(AFM)にて表面状態を観察した。表面状態の指標として算術平均粗さ(Ra)を用いて定量的に評価を実施した。
【0121】
また、表面状態が下地の影響を受けることが予想されることから、基板として石英基板および透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)の2種類を使用した。透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)は、次の方法で作成した。正孔注入材料としてバイエル社製のPEDT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)の水溶液を用いた。この溶液を透明電極上に滴下し、1000rpmの回転で180秒間スピンコートを行い、正孔注入層(PEDT/PSS)を形成した。その後、正孔輸送層兼発光層は次のようにして形成した。まず、バイアル瓶にPVKを所定量入れ、次にPVK100重量部に対してIr(ppy)3を10重量部入れた。その後、溶媒THF1mLに対してPVKが14mgになるように、THFにPVKおよびIr(ppy)3を溶解した。この溶液を下層である正孔注入層上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)を形成した。
得られた算術平均粗さ(Ra)の結果を、乾燥条件、基板/下地およびTPPO−Burstを溶解した溶媒と共に、表に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
参考のため、下地材料の成膜性を表に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
表1が示すとおり石英基板上にTPPO−Burstを各種アルコール溶媒を用いてスピンコートした薄膜の表面の算術平均粗さRaは、1nm以下であり有機電界発光素子を作製するに十分な平滑さであることがわかる。
【0127】
さらに、表2では、実際に有機電界発光素子の正孔輸送層兼発光層として用いられる導電性高分子PVK:Ir(ppy)3上に、TPPO−Burstを、各種アルコール溶媒を用いてスピンコートした薄膜の表面の算術平均粗さRaを示している。この際のRaは、10nm以下であり、有機電界発光素子を作製するに十分な平滑さであることがわかる。また、メタノール溶媒を用いスピンコートした薄膜表面のRaが約9nmであるのに対し、他の溶媒を用いスピンコートした薄膜表面は、Raが1桁程度小さくい0.7nm以下であることがわかる。よって、メタノールよりも他の溶媒の方がスピンコートに適していることがわかる。
【0128】
(3)比較例3に係る有機電界発光素子の作製
正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を設けない以外は、実施例3と同様にして素子を作製し、これを比較例3とした。なお、正孔輸送層兼発光層は、正孔注入層上に、実施例3と同じPVK:Ir(ppy)3のTHF溶液を2000rpmの回転で30秒間スピンコートすることで形成した。正孔輸送層兼発光層の膜厚は90nmであった。
【0129】
(4)有機電界発光素子の電圧−輝度特性および電流−輝度特性
実施例3および比較例3に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、電圧−輝度特性および電流−輝度特性を調べた。
図10は、実施例3および比較例3に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
図11は、実施例3および比較例3に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【0130】
図10に示す電圧−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、約6Vの駆動電圧の低下が観察される。また、図11に示す電流−輝度特性から明らかなとおり、TPPO−Burstを用いることにより、電流当たりの輝度が向上していることがわかる。
【0131】
(5)有機電界発光素子の電圧−EL効率特性
実施例3および比較例3に係る素子の電圧−EL効率特性を調べた。図12は、実施例3および比較例3に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【0132】
図12から明らかなとおり、電子輸送層としてTPPO−Burstを積層することにより、EL効率を3.8倍程度に向上させることができる。
【0133】
(実施例4)
4,4’−ビス−(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−Trimer]の合成
TPPO−Trimerを、下記の反応式のように、ホスフィンオキシド(中間物質)の合成、中間物質からの合成という工程で合成した。
【0134】
【化29】
【0135】
(中間物質の合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.54g(105mmol)に1,4−ジブロモベンゼン29.3g(124mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(以下、THF)溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、ジクロロフェニルホスフィンオキシド6.99g(35.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量=436、分子量+2=438、分子量+4=440を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量4.93g(11.30mmol)、収率31.6%)。
【0136】
(中間物質からの合成)
中間物質2.42g(5.55mmol)と、中間物質1であるジフェニルホスフィンオキシド4.48g(22.1mmol)を溶媒ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)55.6mL、酢酸パラジウム(以下、Pd(OAc)2)250mg(1.11mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(以下、dppp)688mg(1.67mmol)、N−エチルジイソプロピルアミン(edpa)10mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、さらに真空中330〜340℃で昇華精製を行って白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=679を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−Trimerであることを確認した(収量2.12g(3.12mmol)、収率56%、Tm:346℃、Tg:105℃)。
【0137】
(実施例5)
4,4’,4”−トリス−(ジ−p−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(p−CH3)Burst]の合成
TPPO−(p−CH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ−p−トリル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0138】
【化30】
【0139】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.0g(123.5mmol)にp−ブロモトルエン25g(145.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.64g(62.59mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルにて再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=231を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量5.76g(25.02mmol)、収率40%)。
【0140】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.88g(12.51mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.07g(2.08mmol)を溶媒DMSO20.8mL、Pd(OAc)293.3mg(0.416mmol)、dppp257mg(0.624mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=963を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(p−CH3)Burstであることを確認した(収量1.17g(1.22mmol)、収率59%、Tm:335℃、Tg:133℃)。
【0141】
(実施例6)
4,4’,4”−トリス−(ジ−o−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(o−CH3)Burst]の合成
TPPO−(o−CH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ−o−トリル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0142】
【化31】
【0143】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.0g(123.5mmol)にo−ブロモトルエン25g(145.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.64g(62.59mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルにて再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=231を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量6.67g(29.0mmol)、収率46%)。
【0144】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.89g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.07g(2.08mmol)を溶媒DMSO20.8mL、Pd(OAc)293.3mg(0.416mmol)、dppp257mg(0.624mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=963を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(o−CH3)Burstであることを確認した(収量1.50g(1.56mmol)、収率75%、Tm:310℃、Tg:133℃)。
【0145】
(実施例7)
4,4’,4”−トリス−(ジ−m−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(m−CH3)Burst]の合成
TPPO−(m−CH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ−m−トリル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0146】
【化32】
【0147】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片1.63g(67.1mmol)にm−ブロモトルエン12.5g(72.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液を、塩化ホスホリル5.96g(38.90mmol)の乾燥THF溶液にゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)30mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=231を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量4.13g(17.9mmol)、収率56%)。
【0148】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.90g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.10g(2.14mmol)を溶媒DMSO 21.0mL、Pd(OAc)293mg(0.42mmol)、dppp260mg(0.63mmol)、edpa4mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=963を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(m−CH3)Burstであることを確認した(収量1.32g(1.37mmol)、収率64%)。
【0149】
(実施例8)
4,4’,4”−トリス−(ビス−(4−メトキシ−フェニル)−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(p−OCH3)Burst]の合成
TPPO−(p−OCH3)Burstを、
【0150】
TPPO−(p−OCH3)Burst(生成物)は、下記の反応式のように、ジ(4−メトキシ―フェニル)ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0151】
【化33】
【0152】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.92g(120.2mmol)にp−ブロモアニソール25.0g(134mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.69g(60.3mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にシクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=263を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量8.20g(31.3mmol)、収率52%)。
【0153】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a3.30g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.07g(2.08mmol)を溶媒DMSO20.8mL、Pd(OAc)293.3mg(0.624mmol)、dppp257mg(0.416mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い、白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1059を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(p−OCH3)Burstであることを確認した(収量1.56g(1.47mmol)、収率71%、Tm:378℃、Tg:127℃)。
【0154】
(実施例9)
4,4’,4”−トリス−(ビス−(2−メトキシ−フェニル)−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(o−OCH3)Burst]の合成
TPPO−(o−OCH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ(2−メトキシ―フェニル)ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0155】
【化34】
【0156】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片1.51g(62.1mmol)にo−ブロモアニソール12.5g(66.8mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル4.43g(32.1mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)8mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にシクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=263を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量4.38g(16.7mmol)、収率52%)。
【0157】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.00g(7.63mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド0.655g(1.27mmol)を溶媒DMSO13.0mL、Pd(OAc)257.2mg(0.254mmol)、dppp157mg(0.381mmol)、edpa2.3mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い、白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1059を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(o−OCH3)Burstであることを確認した(収量0.80g(0.755mmol)、収率56%)。
【0158】
(実施例10)
トリス−(4’−ジフェニルホスフィニル−ビフェニル−4−イル)−ホスフィンオキシド[TBPO−(DPPO)Burst]の合成
TBPO−(DPPO)Burstを、下記の反応式のように、ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aからの合成という工程で合成した。
【0159】
【化35】
【0160】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片4.8g(197.5mmol)に4,4’−ジブロモビフェニル74.9g(240mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、塩化ホスホリル10.2g(66.6mmol)(反応物質)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)50mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量=743、分子量+2=745、分子量+4=747を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量38.1g(51.3mmol)、収率77%)。
【0161】
(中間物質aからの合成)
中間物質a0.6g(1.16mmol)と、ジフェニルホスフィンオキシド1.4g(6.69mmol)を溶媒DMSO 11.6mL、Pd(OAc)252.4mg(0.233mmol)、dppp144mg(0.349mmol)、edpa2.1mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い、得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1107を確認し、得られた結晶が目的とするTBPO−(DPPO)Burst であることを確認した(収量0.618g(0.70mmol)、収率61%)。
【0162】
(実施例11)
4,4’,4”−トリス−(1−ナフチル−フェニル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(α−NPPO)Burst]の合成
TPPO−(α−NPPO)Burstを、下記の反応式のように、1−ナフチル−フェニル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0163】
【化36】
【0164】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.15g(129.6mmol)に1―ブロモナフタレン28.35g(137mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液を、ジクロロフェニルホスフィン26.0g(145mmol)の乾燥THF溶液へゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)21mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=253を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量12.7g(50.3mmol)、収率36%)。
【0165】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a4.03g(16.0mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.17g(2.28mmol)を溶媒DMSO22.8mL、Pd(OAc)2144mg(0.643mmol)、dppp377mg(0.915mmol)、edpa4.2mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にシクロヘキサン/トルエンで再結晶を行い、白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1029を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(α−NPPO)Burstであることを確認した(収量1.75g(1.70mmol)、収率75%)。
【0166】
(実施例12)
4,4’,4”−トリス−(ジ−1−ナフチル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(α−DNPO)Burst]の合成
TPPO−(α−DNPO)Burstを、下記の反応式のように、ジ−1−ナフチルホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0167】
【化37】
【0168】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片12.6g(519mmol)に1―ブロモナフタレン114g(551mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル34.0g(246mmol)の乾燥THF溶液へゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩加熱還流した。その溶液に塩酸溶液(濃度18%)200mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後エーテルで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=303を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量52.8g(175mmol)、収率71%)。
【0169】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a13.59g(45mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド3.86g(7.5mmol)を溶媒DMSO75mL、Pd(OAc)2338mg(1.5mmol)、dppp927mg(2.25mmol)、edpa13.5mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1179を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(DNPO)Burstであることを確認した(収量6.03g(5.11mmol)、収率68%)。
【0170】
(実施例13)
1,3,5−トリス(ジフェニルホスフィニル)ベンゼン[TDPPOBという]の合成
TDPPOBを、下記の反応式のように、1,3,5−トリブロモベンゼン(反応物質1a)とジフェニルホスフィンオキシド(中間物質1)を用いて合成した。
【0171】
【化38】
【0172】
市販の1,3,5−トリブロモベンゼン(反応物質1a)0.63g(2mmol)とジフェニルホスフィンオキシド(中間物質1)1.21g(6.0mmol)を溶媒DMSO20mL、Pd(OAc)293mg(0.41mmol)、edpa3.7mL、dppp261mg(0.63mmol)の存在下において100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離後に再結晶を行い、更に真空中で昇華精製を行った。得られた物質のFAB質量分析を行い、分子量=679を確認し、得られた物質が目的とするTDPPOB(生成物質)であることを確認した(収量0.64g(0.94mmol)、収率47%、Tg79.7℃)。
【0173】
(実施例14)
トリス−(ジビフェニル−ホスフィニル)トリフェニルホスフィンオキシド[TRIS−(DBPPO)−TPPO−Burst]の合成
TRIS−(DBPPO)−TPPO−Burstを、下記の反応式のように、DBPPO(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0174】
【化39】
【0175】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片10.4g(428mmol)に4−ブロモビフェニル100.0g(388.5mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル29.5g(213.6mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)40mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルにて再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=355を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量22.73g(64.2mmol)、収率30%)。
【0176】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a18.5g(52.3mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド3.9g(7.6mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)2250mg(1.1mmol)、dppp460mg(1.1mmol)、edpa7.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にシクロヘキサンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1335を確認し、得られた結晶が目的とするTRIS−(DBPPO)−TPPO−Burstであることを確認した(収量2.8g(2.1mmol)、収率28%)。
【0177】
(実施例15)
ビス−(ジビフェニル−ホスフィニル)−ビフェニレン[BIS(DBPPO)−BPの合成
BIS(DBPPO)−BP]を、下記の反応式のように、DBPPO(中間物質a)および4,4’−ジブロモビフェニルからの合成という工程で合成した。
【0178】
【化40】
【0179】
(中間物質aおよび4,4’−ジブロモビフェニルからの合成)
中間物質a18.49g(52.2mmol)と、4,4’−ジブロモビフェニル3.61g(11.6mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)2250mg(1.1mmol)、dppp460mg(1.1mmol)、edpa7.9mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=858を確認し、得られた結晶が目的とするBIS(DBPPO)−BPであることを確認した(収量7.7g(9.0mmol)、収率77%)。
【0180】
(実施例16)
トリス−(t−ブチル−ジフェニル−ホスフィニル)トリフェニルホスフィンオキシド[TRIS−(t−Bu−DPPO)−TPPO−Burst]の合成
TRIS−(t−Bu−DPPO)−TPPO−Burstを、下記の反応式のように、t−Bu−DPPO(中間物質c)の合成、中間物質cおよびbからの合成という工程で合成した。
【0181】
【化41】
【0182】
(中間物質cの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.85g(117.3mmol)に4−t−ブチル−ブロモベンゼン25.0g(117.3mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.10g(58.66mmol)の乾燥THF溶液にゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)30mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=315を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質cであることを確認した(収量8.65g(18.4mmol)、収率47%)。
【0183】
(中間物質cおよびbからの合成)
中間物質c15.5g(49.4mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド4.2g(8.2mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)2270mg(1.2mmol)、dppp510mg(1.2mmol)、edpa8.4mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にトルエン−クロロホルムで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1215を確認し、得られた結晶が目的とするTRIS−(t−Bu−DPPO)−TPPO−Burstであることを確認した(収量1.5g(1.2mmol)、収率15%)。
【0184】
(実施例17)
4,4’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−ビフェニル[TPPO−Dimer]の合成
TPPO−Dimerを、下記の反応式のように、中間物質1であるジフェニルホスフィンオキシドの合成、中間物質1からの合成という工程を経て合成した。
【0185】
【化42】
【0186】
(中間物質1の合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.4g(98.8mmol)にブロモベンゼン17.2g(110mmol)の乾燥THF溶液を溶媒が還流しないように冷却しながら滴下し、グリニャール試薬(反応物質1)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル(反応物質2)5.18g(37.5mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に1mol/L塩酸を滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム相を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルより再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=203を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質1であることを確認した。(3.57g(17.7mmol)、収率47%)
【0187】
(中間物質1からの合成)
中間物質1の4.04g(20mmol)と市販の4,4’−ジブロモビフェニル(反応物質3)3.12g(10mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)289.8mg(0.4mmol)、dppp247mg(0.6mmol)、edpa9mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離後に再結晶を行い、更に真空中で昇華精製を行った。得られた物質のFAB質量分析を行い、分子量=555を確認し、得られた物質が目的とするTPPO−Dimer(生成物質)であることを確認した。(4.56g(8.22mmol)、収率82%)
【0188】
(実施例18)
[4,4’−ビス[(1−ナフチル)−フェニル−ホスフィニル]]−ビフェニル[α−NPPOB]の合成
α−NPPOBを、下記の反応式のように、(1−ナフチル)−フェニル−ホスフィンオキシド(中間物質1d)の合成、中間物質1dからの合成という工程を経て合成した。
【0189】
【化43】
【0190】
(中間物質1dの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.15g(129.6mmol)に1―ブロモナフタレン28.35g(137mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質1d)を調製した。その溶液を、ジクロロフェニルホスフィン(反応物質2d)26.0g(145mmol)の乾燥THF溶液へゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)21mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=253を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質1dであることを確認した(収量12.7g(50.3mmol)、収率36%)。
【0191】
(中間物質1dからの合成)
中間物質1 5.04g(20mmol)と市販の4,4’−ジブロモビフェニル(反応物質3)3.12g(10mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)289.8mg(0.4mmol)、dppp247mg(0.6mmol)、edpa9mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離後に再結晶を行い、更に真空中で昇華精製を行った。得られた物質のFAB質量分析を行い、分子量=655を確認し、得られた物質が目的とするα−NPPOB(生成物質)であることを確認した。(5.15g(7.87mmol)、収率79%)
【0192】
(実施例19)
実施例17で調製したTPPO−Dimerの特性を評価した。
[TPPO−Dimerの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
得られたTPPO−Dimerのイオン化ポテンシャルを理研計器(株)製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず、6.8eV以上であった。バンドギャップは4.07eVであった。TPPO−Dimerは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TPPO−Dimerは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0193】
(ガラス転移温度)
TPPO−DimerのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが90.8℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)のTg63℃よりも高く、TPPO−Dimerが耐熱性に優れていることがわかる。
【0194】
[TPPO−Dimerを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてTPPO−Dimerを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(TPPO−Dimer)/陰極(MgAg)
【0195】
すなわち、ITOで構成される透明電極(100nm)付きのガラス基板上に、TPDを真空蒸着法によって蒸着し、ホール輸送層を形成した。真空度は2.0×10-4Paであり(実施例20以降も同じ)、ホール輸送層の膜厚は55nmである。ホール輸送層の上に、発光層としてAlq3を蒸着して成膜した。発光層の膜厚は20nmとした。蒸着速度は0.2nm/secとした。発光層の上に、TPPO−Dimerを用いて蒸着を行い、厚さ30nmの電子輸送層を形成した。電子輸送層の上に、陰極としてMgAg電極を100nm蒸着し、陰極を得た。
【0196】
(比較例4)
電子輸送材料としてTPPO−Dimerを用いず、更に発光層(Alq3)の膜厚を50nmとした以外は、実施例19と同様にして素子を作製し、これを比較例4とした。
【0197】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例19および比較例4に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、輝度−電圧特性を調べた。
図13は、実施例19および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示す。
【0198】
図13に示すように、実施例19では比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、TPPO−Dimerは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【0199】
(実施例20)
実施例13で調製したTDPPOBの特性を評価した。
[TDPPOBの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
TDPPOBのイオン化ポテンシャルを理研計器株式会社製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず、6.8eV以上であった。バンドギャップは3.98eVであった。TDPPOBは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TDPPOBは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0200】
(ガラス転移温度)
得られたTDPPOBのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが79.7℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているTPDのTg63℃よりも高く、TDPPOBが耐熱性に優れていることがわかる。
【0201】
[TDPPOBを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてTDPPOBを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(TDPPOB)/陰極(MgAg)
【0202】
すなわち、電子輸送材料としてTDPPOBを用いて電子輸送層(膜厚は30nm)を形成した以外は、実施例19と同様にして素子を作製した。
【0203】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例20に係る有機電界発光素子に電圧を印加して、輝度−電圧特性を調べた。図14は、実施例20に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示し、上記した比較例4に係る素子のグラフと併せて共に示す。
【0204】
図14に示すように、実施例20では、比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、TDPPOBは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【0205】
(実施例21)
実施例4で調製したTPPO−Trimerの特性を評価した。
[TPPO−Trimerの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
TPPO−Trimerのイオン化ポテンシャルを理研計器株式会社製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず6.8eV以上であった。バンドギャップは4.02eVであった。TPPO−Trimerは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TPPO−Trimerは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0206】
(ガラス転移温度)
得られたTPPO−TrimerのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが105℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)のTg63℃よりも高く、TPPO−Trimerが耐熱性に優れていることがわかる。
【0207】
[TPPO−Trimerを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてTPPO−Trimerを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(TPPO−Dimer)/陰極(MgAg)
【0208】
すなわち、電子輸送材料としてTPPO−Trimerを用いて電子輸送層(膜厚は30nm)を形成した以外は、実施例19と同様にして素子を作製した。
【0209】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例21に電圧をそれぞれ印加して、輝度−電圧特性を調べた。図15は、実施例21に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示し、上記した比較例4に係る素子のグラフと併せて共に示す。
【0210】
図15に示すように、実施例21では、比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、TPPO−Trimerは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【0211】
(実施例22)
実施例18で調製したα−NPPOBの特性を評価した。
[α−NPPOBの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
得られたα−NPPOBのイオン化ポテンシャルを理研計器(株)製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず6.8eV以上であった。バンドギャップは3.92eVであった。α−NPPOBは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、α−NPPOBは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0212】
(ガラス転移温度)
得られたα−NPPOBのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが125℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)のTg63℃よりも高く、α−NPPOBが耐熱性に優れていることがわかる。
【0213】
[α−NPPOBを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてNPPOBを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(α−NPPOB)/陰極(MgAg)
【0214】
すなわち、電子輸送材料としてα−NPPOBを用いて電子輸送層(膜厚は30nm)を形成した以外は、実施例19と同様にして素子を作製した。
【0215】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例22に電圧をそれぞれ印加して、輝度−電圧特性を調べた。図16は、実施例22に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示し、上記した比較例4に係る素子のグラフと併せて共に示す。
【0216】
図16に示すように、実施例22では、比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、α−NPPOBは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【符号の説明】
【0217】
1 透明電極付きのガラス基板
2 正孔輸送層兼発光層
3 電子輸送層
4 陰極
5 正孔注入層
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルコール系溶媒に可溶な有機半導体リン含有化合物(以下、「リン含有有機化合物」ともいう)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光物質として有機材料を用いた有機電界発光素子は、陽極から注入される正孔(ホール)と陰極から注入される電子が再結合して励起状態の分子(励起子)を形成し、その励起子が基底状態にもどる際にエネルギーを放出することにより発光する。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック(Eastman Kodak)社のタン氏(C.W.Tang)らは、陽極と陰極との間に有機膜を積層した有機電界発光素子を発表し、低電圧駆動で高輝度の発光を実現した(C.W.Tang 他, 「Applied Physics Letters」,1987, 第51巻, p.913:非特許文献1)。
【0004】
このタン氏らの発表以来、有機電界発光素子について、RGBの三原色の発光、輝度向上、安定性、積層構造、作製方法などの研究が盛んに行われている。現在では、有機電界発光素子は、携帯電話やカーオーディオ用のディスプレイとして一部実用化が始まっており、液晶ディスプレイに代わる次世代のフラット・ディスプレイとして有望視されている。
【0005】
有機電界発光素子は、電子輸送材料が発光材料と組み合わせて用いられることが多い。
電子輸送材料は、陰極から注入された電子を効率よく発光層に輸送するために用いられ、また正孔を阻止するのにも役立っている。電子輸送材料としては、例えばオキサジアゾール誘導体や、緑色発光材料として広く用いられているAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)が用いられている。
【0006】
また、有機電界発光素子における有機膜の作製方法は、乾式法と湿式法の二つに大別される。乾式法としては、真空蒸着法やCVD法などが挙げられ、湿式法としては、スピンコート法やインクジェット法などが挙げられる。
乾式法による有機電界発光素子は、真空蒸着により形成されるために、容易に多層膜が形成できる。それにより、乾式法により作製された有機電界発光素子は、正孔注入層、電子注入層、正孔阻止層などの導入が可能になる。よって、正孔および電子のキャリア注入バランスをとることが可能になり高効率、高輝度が実現でき、すでにディスプレイデバイスが実用化されるに至っている。しかしながら、大面積の素子を作製するための装置が大掛かりとなり、生産性に劣るという欠点がある。
【0007】
一方、湿式法は、大面積を一度に塗布することが可能なため、大面積の素子でも容易に作製でき、生産性が高い。このように、生産性やコストを考慮した場合、乾式法よりも湿式法が優れている。特に、高分子系の材料では、真空蒸着による薄膜作製が困難な場合が多いので、主に湿式法が採用されている。
【0008】
特開2002−63989号公報(特許文献1)には、式:
R3P=O
(式中、Rは同一または異なるアリール基などの置換基であり、Rの少なくとも1つは蛍光性骨格である)で表される有機蛍光体を含む発光素子が開示されている。
また、特開2004−204140号公報(特許文献2)には、式:
(Ar)3P=O
(式中、Arは同一または異なるアリール基またはヘテロアリール基であり、Arの少なくとも1つはα位で連結したナフチル基であり、かつArの少なくとも1つは蛍光性骨格または電荷輸送性骨格を含む)で表される発光素子用材料が開示されている。
上記の公報には、蛍光性骨格として、フェナンスリル、アントラニル、ピレニル、ペリレニルなどの縮合環が例示されている。
しかしながら、本発明のリン含有有機化合物は、上記の公報に記載の有機蛍光体や発光素子用材料の構造と類似するものの、α位で連結したナフチル基や蛍光性骨格などを有さず、構造が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−63989号公報
【特許文献2】特開2004−204140号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.W.Tang 他, 「Applied Physics Letters」,1987, 第51巻, p.913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の電子輸送材料では、湿式法で有機膜を作製する場合に次のような課題があった。
すなわち、電子輸送材料を溶媒に溶かして製膜を行う湿式法において、従来の電子輸送材料ではクロロホルム、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)などの限られた溶媒しか使用できなかった。よって、それ以外の溶媒を使用すると全く溶けずに製膜自体ができないか、製膜できたとしても製膜後に電子輸送材料が結晶化し、素子として使用することができなかった。
【0012】
このため、下層である有機膜がクロロホルム、トルエン、THFなどに可溶な場合には、その下層の有機膜上に湿式法で電子輸送層を製膜すると、下層の有機膜が同じ溶媒で溶解し損傷してしまう。その結果、膜質が一定にならなかったり、ピンホールが形成されたりして、優れた有機電界発光素子を作製することができなかった。
【0013】
特に、湿式法により製膜が行われる高分子系の材料は、クロロホルム、トルエン、THFなどの溶媒にしか溶解しないため、高分子物質で製膜した層の上に、湿式法で電子輸送層を製膜することはできなかった。
【0014】
(本発明の目的)
そこで、本発明の目的は、有機電界発光素子の電子輸送層が、湿式法を用いて、下層の有機膜を傷めることなく、下層の有機膜の上に表面が平滑な電子輸送層を形成できるリン含有有機化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、有機電界発光素子の電子輸送材料として、特定のリン含有有機化合物を用いることにより、湿式法を用いて下層の有機膜を傷めることなく、下層の有機膜の上に電子輸送層を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
かくして、本発明の1つの観点によれば、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層と、該正孔輸送層上に湿式法で形成された電子輸送層とを有し、該電子輸送層の材料が、アルコール系溶媒に可溶なリン含有有機化合物である有機電界発光素子が提供される。
【0017】
また、本発明の別の観点によれば、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子の製造方法において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物を用いて正孔輸送層を形成するステップと、アルコール系溶媒で溶解した電子輸送層の材料としてのリン含有有機化合物を用いる湿式法により、上記正孔輸送層上に電子輸送層を形成するステップとを含む有機電界発光素子の製造方法が提供される。
【0018】
本発明のさらなる別の観点によれば、一般式(4):
【化1】
【0019】
(式中、Ar11は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい、フェニル基またはナフチル基を表す)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は、3つのハロゲン原子で置換されたベンゼンまたは2つのハロゲン原子で置換されたベンゼンもしくはビフェニルを表す)
の化合物、または
【0020】
一般式(5):
【化2】
【0021】
(式中、Ar13は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい、フェニル基またはビフェニル基を表すが、但しAr13の少なくとも2つは、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたフェニル基またはビフェニル基である)
で表される化合物との縮合物であるリン含有有機化合物が提供される。
【0022】
また、本発明の他の観点によれば、式(9):
【化3】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)、または
式(10):
【化4】
(式中、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいは式(9)と連結するフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表されるジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を少なくとも3つ有するリン含有有機化合物が提供される。
【0023】
さらに、本発明の他の観点によれば、上記一般式(4)の化合物と、式:Ar12の化合物、または上記一般式(5)の化合物とを、溶媒中、縮合触媒および塩基の存在下で縮合させてリン含有有機化合物を得ることからなるリン含有有機化合物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層の上に、アルコール系溶媒で電子輸送材料を溶解した溶液を用いた湿式法により電子輸送層を設けることで、有機電界発光素子を作製する。これにより、下層である正孔輸送層が、上層である電子輸送層の製膜時に使用するアルコール系溶媒によって溶解することはないため、湿式法を用いて下層の有機膜を傷めることなく、下層の有機膜の上に電子輸送層を形成することができる。その結果、有機層の膜質が一定になり、ピンホールの形成も防止できるので、低電圧で優れた発光特性を示し、長寿命の有機電界発光素子を得ることができる。
【0025】
上記のリン含有有機化合物は、イオン化ポテンシャル、バンドギャップ、ガラス転移温度などの性質が十分であり、良好な電子輸送能、正孔阻止能、耐熱性を備えている。したがって、上記のリン含有有機化合物を用いれば、低電圧で優れた発光特性を示し、長寿命の有機電界発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【図2】比較例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【図3】上記の実施例1および比較例1に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
【図4】上記の実施例1および比較例1に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【図5】本発明の実施例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【図6】比較例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
【0027】
【図7】上記の実施例2および比較例2に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
【図8】上記の実施例2および比較例2に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【図9】上記の実施例2および比較例2に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【図10】本発明の実施例3および比較例3に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
【図11】上記の実施例3および比較例3に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【図12】上記の実施例3および比較例3に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【0028】
【図13】実施例19および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【図14】実施例20および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【図15】実施例21および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【図16】実施例22および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層と、該正孔輸送層上に湿式法で形成された電子輸送層とを有し、該電子輸送層の材料は、アルコール系溶媒に可溶なリン含有有機化合物である。
本発明において用いられる用語「可溶」とは、膜形成のために用いる湿式法において実用に耐え得る程度の溶解性を意味し、例えば、少なくとも0.1g/L以上が好ましい。
【0030】
電子輸送層の材料は、湿式法では、アルコール系溶媒に可溶な有機化合物であり、乾式法では、10-3Pa以下で蒸着性を有する有機化合物であり、これらの有機化合物の中でも非イオン性有機化合物が好ましく、リン含有有機化合物が特に好ましい。
リン含有有機化合物としては、下記の一般式(1)〜(3)で表される化合物が利用できる。
【0031】
【化5】
(式中、Ar1〜Ar3は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよい芳香族環残基を表す)
【0032】
【化6】
(式中、Ar1〜Ar6は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよい芳香族環残基を表し、Ar7〜Ar9は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基を表す)
【0033】
【化7】
(式中、R1またはR2は、互いに同一または異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アリール基またはジアリールホスフィニル基を表し、R1とR2はそれらが結合するベンゼン環の炭素原子と共に互いに一緒になって置換または無置換の芳香環を形成することができ、nは1または2である)
【0034】
一般式(1)および(2)における「芳香族環残基」としては、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、トリアジン環、フラン環、ピラジン環、ピリジン環などの単環式の芳香族環残基および複素環、ナフタレン環、アントラセン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フェナントレン環、フルオレン環、フロ[3,2−b]フラン環などの縮合多環式の芳香族環残基および複素環、ビフェニル環、ターフェニル環、ビチオフェン環、ビフラン環などの環集合式の芳香族環残基および複素環、アクリジン環、イソキノリン環、インドール環、カルバゾール環、カルボリン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、シンノリン環、チオナフテン環、1,10−フェナントロリン環、フェノチアジン環、プリン環、ベンゾフラン環、シロール環などの芳香族環残基と複素環との組み合わせからなるものが挙げられる。
【0035】
一般式(2)における「アリレン基」としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フェナントレン基、ターフェニレン基、ピレニレン基などの芳香族炭化水素基が挙げられ、これは無置換でも置換されていてもよい。
一般式(3)における「アリール基」としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基が挙げられ、これは無置換でも置換されていてもよい。
【0036】
「アリール基」および「芳香族環残基」における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アリール基およびジアリールホスフィニル基などが挙げられる。
【0037】
本発明のリン含有有機化合物は、非イオン性有機化合物であるのが好ましい。非イオン性有機化合物であれば、有機電界発光素子として駆動した際の電気化学的安定性高く、さらに結晶化し難く素子の寿命の点で好ましい。
本発明のリン含有有機化合物は、分子量300〜5000が好ましく、より好ましくは、アルコール溶媒への溶解性、蒸着の観点から、湿式法に用いる場合には、300〜1500、乾式法に用いる場合には、300〜1200とされる。
【0038】
本発明によれば、陽極と陰極の間に挟まれた複数の有機化合物層を備えた有機電界発光素子の製造方法において、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物を用いて正孔輸送層を形成するステップと、アルコール系溶媒で溶解した電子輸送層の材料としてのリン含有有機化合物を用いる湿式法または乾式法により、上記正孔輸送層上に電子輸送層を形成するステップとを含む有機電界発光素子の製造方法が提供される。
本発明により製造される有機電界発光素子の電子輸送層表面の算術平均粗さ(Ra)は、有機電界発光素子の発光特性向上の観点から、10nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以下とされる。
そこで、一般式(1)〜(3)で表されるリン含有有機化合物は、電子輸送材料であって、アルコール系溶媒に可溶な電子輸送層の材料として用いられる。
【0039】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールのような炭素数1〜6の直鎖または分岐状の脂肪族アルコール溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコール系溶媒などが挙げられ、炭素数1〜6の直鎖または分岐状の脂肪族アルコール溶媒が好ましい。または、これらを複数混合して用いることもできる。
【0040】
湿式法としては、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、キャスティング法、ロール塗工法、スクリーン、グラビアあるいはオフセットなどの印刷法などが挙げられる。
【0041】
なお、湿式法で電子輸送層を製膜する際は、上記したアルコール系溶媒にアルコール系溶媒以外の溶媒を混合して使用することもできる。
また、有機電界発光素子の製造における他の工程は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
乾式法としては、真空蒸着法、CVD法などが挙げられる。
【0042】
本発明の電子輸送材料を用いた有機電界発光素子について説明する。
有機電界発光素子は、例えば次のような層構成によって形成される。
(1)基板、陽極、発光層、陰極(背面電極)
(2)基板、陽極、発光層、単層又は複数層の電子輸送材料を有する有機物層、陰極
(3)基板、陽極、単層又は複数層の正孔輸送材料を有する有機物層、発光層、陰極
(4)基板、陽極、単層又は複数層の正孔輸送材料を有する有機物層、発光層、単層又は複数層の電子輸送材料を有する有機物層、陰極
上記の(1)〜(4)の素子は、それぞれ正孔注入層および/または電子注入層を備えてもよい。
【0043】
基板と陰極のいずれの側から発光を取り出すかによって材料を選択する。基板側から発光を取り出す場合には、基板と陽極を透明材料で形成し、陰極側から発光を取り出す場合には、陰極を透明材料で形成する。
有機電界発光素子は、さらにホールブロック層(正孔阻止層)や電子注入層を有していてもよい。
また、発光層が正孔輸送材料または電子輸送材料を含み、正孔輸送層兼発光層または電子輸送層兼発光層の形態にしてもよい。
さらに、発光層の正孔輸送層側および/または電子輸送層側に発光材料をドーピングしてもよい。
【0044】
基板の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、ガラス、プラスチック、金属薄膜、シリコン、石英などが挙げられる。また、基板に蛍光色変換フィルター膜、カラーフィルター膜、誘電体反射膜などを用いて発色光をコントロールすることもできる。
【0045】
陽極の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、インジウム錫オキシド(ITO)、酸化チタン、酸化錫;金、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウムなどの金属単体あるいはこれらの合金;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィドなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。これらの電極材料は単独で用いてもよく、複数併用することもできる。
また、電極の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、ゾルゲル法、スピンコート法、インクジェット法などの薄膜形成法などが挙げられる。
【0046】
陰極の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロムなどの金属単体あるいはこれらの合金;酸化錫インジウム(ITO)などの金属酸化物などが挙げられる。
また、陰極は一層または多層のいずれの構成でもよい。
また、電極の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0047】
正孔輸送層の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、湿式法で層を形成する場合には、アルコール系溶媒を用いた湿式法による電子輸送層の形成時に、その湿式法で用いられるアルコール系溶媒で溶解しないものの中から選択される。
正孔輸送層の材料は、例えば、導電性高分子、低分子有機半導体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリカーボネートなどの絶縁性高分子に低分子有機半導体を分散した複合材料、あるいはこれらを複数混ぜ合わせた複合材料が挙げられる。
【0048】
導電性高分子としては、ポリジオクチルフルオレン(POF)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフェニレン(PP)、ポリフルオレン(PF)、ポリチオフェン(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリアセチレン(PA)、これらを複数混ぜ合わせた複合材料、あるいはこれらの導電性高分子の誘導体または共重合体、その他これらの導電性高分子とポリアセン類や蛍光色素との共重合体などが挙げられる。
【0049】
低分子有機半導体としては、フェニレンジアミン誘導体(例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)など)、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フェニルスチレン誘導体、あるいはこれらを複数混ぜ合わせた複合材料などが挙げられる。
【0050】
正孔注入層の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、PEDT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)、銅フタロシアニンなどが挙げられる。
【0051】
電子注入層の材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、フッ化リチウムやフッ化セシウムなどのフッ化アルカリ金属、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムなどのアルカリ土類金属、アセチルアセトナトリチウム、キノリノレートリチウムなどのリチウム錯体、バソフェナントロリンリンやバソクプロインへナトリウム金属やリチウム金属をドープした複合膜などが挙げられる。
【0052】
本発明で好ましいリン含有有機化合物は、一般式(4):
【化8】
【0053】
(式中、Ar11は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい、フェニル基またはナフチル基を表す)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は、3つのハロゲン原子で置換されたベンゼンまたは2つのハロゲン原子で置換されたベンゼンもしくはビフェニルを表す)
の化合物、または
【0054】
一般式(5):
【化9】
【0055】
(式中、Ar13は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい、フェニル基またはビフェニル基を表すが、但しAr13の少なくとも2つは、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたフェニル基またはビフェニル基である)
で表される化合物との縮合物である。
【0056】
上記の縮合物としては、下記の副式(6)〜(8)で表される化合物が好ましい。
【化10】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar12'は、n=2のときフェニレン基またはビフェニレン基を表し、n=3のときベンゼントリイル基を表す)
【0057】
【化11】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニレン基またはビフェニレン基を表す)
【化12】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニレン基またはビフェニレン基を表し、Ar13''はフェニル基またはビフェニル基を表す)
【0058】
副式(6)〜(8)におけるAr11、Ar12、Ar12'、Ar13、Ar13'およびAr13''は、表現が異なる部分があるが、一般式(1)におけるAr1〜Ar3ならびに一般式(2)および(3)におけるAr1〜Ar9と基本的に共通する。
置換基Ar11における「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
置換基Ar11における「低級アルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基(t-ブチルともいう)などが挙げられる。
置換基Ar11における「低級アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
置換基Ar11としては、無置換のフェニル基、メチル基、t-ブチル基またはメトキシ基で置換されたフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が特に好ましい。
副式(6)〜(8)のAr11において、フェニル基とナフチル基が混在する場合には、例えば、同一のリン原子に結合する2つのAr11の一方がフェニル基で、他方がナフチル基である場合が挙げられる。
【0059】
副式(6)(n=2)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。なお、以下の化合物は骨格のみを示し、Ar11が置換されている場合の置換基の記載を省略する。
【0060】
【化13】
【0061】
副式(6)(n=3)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0062】
【化14】
【0063】
副式(7)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
副式(8)で表されるリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0067】
【化17】
【0068】
上記以外にリン含有有機化合物としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
なお、以上の具体例はあくまで代表的なものであり、特にこれらに限定されるものではない。
【0073】
本発明のリン含有有機化合物は、式(9):
【化21】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)、または
【0074】
式(10):
【化22】
【0075】
(式中、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいは式(9)と連結するフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表されるジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を少なくとも3つ有するのが好ましい。
上記の部分構造を少なくとも3つ有するリン含有有機化合物は、有機電界発光素子の電子輸送層の材料として優れた電子輸送効果を有する。
【0076】
本発明のリン含有有機化合物の合成には、公知の方法を適用することができる。
本発明のリン含有有機化合物は、上記一般式(4)の化合物(化合物4)と、式:Ar12の化合物(化合物Ar)または上記一般式(5)の化合物(化合物5)とを、溶媒中、縮合触媒および/または塩基の存在下で縮合(脱ハロゲン化水素反応)させることにより得ることができる。
【0077】
例えば、上記副式(6)の化合物(n=2)を得る場合、化合物Ar12の1モルに対して、化合物4の使用量は2.0〜4.5モル程度である。
つぎに、上記副式(6)の化合物(n=3)を得る場合、化合物Ar12の1モルに対して、化合物4の使用量は3.0〜7.5モル程度である。
また、上記副式(7)の化合物を得る場合、化合物5の1モルに対して、化合物4の使用量は3.0〜7.5モル程度である。
さらに、上記副式(8)の化合物を得る場合、化合物5の1モルに対して、化合物4の使用量は2.0〜4.5モル程度である。
【0078】
上記の溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げら、これらの中でも、収率の点で、DMSOが好ましい。
【0079】
上記の縮合触媒としては、例えば、酢酸パラジウム[Pd(OAc)2]、酢酸ニッケル[Ni(OAc)2]、およびPd(OAc)2−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[dppp]、Pd(OAc)2−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[dppe]、Pd(OAc)2−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン[dppb]、Ni(OAc)2−dppe、Ni(OAc)2−dpppのような白金族元素とビスホスフィノアルカンとの錯化合物が挙げられる。これらの中でも、Pd(OAc)2、Pd(OAc)2−dpppおよびPd(OAc)2−dppbが収率の点から好ましい。
触媒の使用量は、化合物4の1モルに対して0.005〜0.1モル程度である。
【0080】
上記の塩基は、縮合により生成されるハロゲン化水素を捕捉する機能を有する。
このような塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミンやN−エチルジイソプロピルアミン[edpa]のような脂肪族第3級アミンやピリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン[DMAP]のような芳香族第3級アミンが挙げられ、これらの中でも、沸点の点で、edpaおよびDMAPが好ましい。
塩基の使用量は、生成するハロゲン化水素の理論量を捕捉するに十分な量、すなわち化合物4の1モルに対して、1.0〜1.2モル程度である。
【0081】
本発明による縮合反応における反応温度は、好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜130℃である。
また、反応時間は、反応温度などの条件にもよるが、通常、1〜48時間程度で十分である。
【0082】
反応後、公知の方法により、得られた反応溶液から目的化合物を分離する。例えば、クロロホルム/蒸留水を用いて、反応溶液から目的化合物を抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮する。得られた目的化合物をさらに精製処理に付してもよい。例えば、残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離後に再結晶を行い、さらに真空中で昇華精製する。
このようにして得られたリン含有有機化合物は、有機電界発光素子の電子輸送材料として用いることができる。
【0083】
上記のリン含有有機化合物の中でも、有機電界発光素子の電子輸送材料として次の化合物が特に好ましい。
【0084】
副式(6)の化合物:
【化23】
【0085】
副式(7)の化合物:
【化24】
【0086】
【化25】
【0087】
副式(8)の化合物:
【化26】
【0088】
本発明のリン含有有機化合物は、一般に用いられる有機半導体の特性を備えるものと考えられ、デバイスとしての応用が期待できる。このような応用デバイスとしては、有機感光体、有機薄膜レーザー、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機揮発性メモリ、有機不揮発性メモリ、耐電防止剤などが挙げられ、それらの応用製品としては、液晶ディスプレイ用TFT基板、有機EL用TFT基板、有機集積回路、コピー、FAX、携帯電話、非接触ICカードおよびタグ、パーソナルコンピューターなどが挙げられる。
【0089】
本発明のリン含有有機化合物は、ジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を有することから、本明細書においては、リン含有有機化合物を「トリアリールホスフィンオキシド化合物」ともいう。
【0090】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
(1)4,4’,4”−トリス(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド(「TPPO−Burst」ともいう)の合成
実施例1として、次式で示されるTPPO−Burstを合成した。
【0092】
【化27】
【0093】
TPPO−Burst(生成物質)は、以下に示す反応式のように、トリフェニルホスフィンオキシド(中間物質6)の合成、ジフェニルホスフィンオキシド(中間物質7)の合成、および中間物質6および中間物質7からの合成という工程を経て調製した。
【0094】
【化28】
【0095】
(1−1)トリフェニルホスフィンオキシド(中間物質6)の合成
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.40g(98.8mmol)に1,4−ジブロモベンゼン26.0g(110mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質6a)を調製した。その溶液に、オキシ塩化リン(反応物質6b)4.6(30mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)を17mL滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム相を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後に再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量=515、分子量+2=517、分子量+4=519を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質6であることを確認した(収量5.21g(10.1mmol)、収率34%)。
【0096】
(1−2)ジフェニルホスフィンオキシド(中間物質7)の合成
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.4g(98.8mmol)にブロモベンゼン17.2g(110mmol)の乾燥THF溶液を溶媒が還流しないように冷却しながら滴下し、グリニャール試薬(反応物質7a)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル(反応物質7b)5.18g(37.5mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に1mol/L塩酸を滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム相を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後に再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=203を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質7であることを確認した(3.57g(17.7mmol)、収率47%)。
【0097】
(1−3)中間物質6および中間物質7からの生成物質であるTPPO−Burstの合成
中間物質7 2.55g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.06g(2.05mmol)を溶媒DMSO20mL、Pd(OAc)293.3mg(0.416mmol)、dppp257mg(0.623mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、さらに、2×10-4Paの真空度で昇華精製した。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=879を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−Burstであることを確認した(収量1.39g(1.58mmol)、収率77%、Tm:399℃、Tg:149℃)。
【0098】
(2)TPPO−Burstの性質
(2−1)イオン化ポテンシャル、バンドギャップ
TPPO−Burstのイオン化ポテンシャルを理研計器株式会社製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず6.8eV以上であった。バンドギャップは3.96eVであった。TPPO−Burstは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TPPO−Burstは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0099】
(2−2)ガラス転移温度
得られたTPPO−BurstのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが149℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)のTg63℃よりも高く、TPPO−Burstが耐熱性に優れていることがわかる。
【0100】
(3)TPPO−Burstを用いた有機電界発光素子の作製
図1は、実施例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いて素子を作製し、これを実施例1とした。素子構成の詳細は、以下の通りである(図1参照)。
透明電極(ITO)/正孔輸送層兼発光層(POF)/電子輸送層(TPPO−Burst)/陰極(MgAg)
【0101】
すなわち、酸化錫インジウム(ITO)で構成される透明電極(100nm)付きのガラス基板1をアルカリ洗剤、蒸留水、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で二回ずつ順次超音波洗浄し、乾燥させた。
【0102】
導電性高分子物質であるPOF(ポリジオクチルフルオレン)を塩化メチレンで溶解し、溶液の濃度が塩化メチレン1mLに対しPOF10mgとなるように調製した。この溶液をITO電極上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、正孔輸送層兼発光層2を形成した。得られたPOFの膜厚は50nmであった。
【0103】
次に、電子輸送材料としてTPPO−Burstをメタノールに溶解し、溶液の濃度がメタノール1mLに対しTPPO−Burst16mgとなるように調製した。この溶液を上記POFの正孔輸送層兼発光層上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、電子輸送層3を形成した。この際、下層の正孔輸送層兼発光層はスピンコートの前後で厚みに変化はなく、損傷なかった。得られた電子輸送層の膜厚は50nmであった。
【0104】
さらに、電子輸送層の上に、陰極4としてMgAg電極を共蒸着した(Mg:Ag=10:1)。MgAg電極の膜厚は、100nmであった。
【0105】
(4)比較例1有機電界発光素子の作製
図2は、比較例1に係る有機電界発光素子を示す説明図である。図2に示すように、正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を設けない以外は、実施例1と同様にして素子を作製し、これを比較例1とした。なお、導電性高分子物質であるPOFは、溶液の濃度が塩化メチレン1mLに対しPOF16mgとなるように調製してスピンコートを行い、膜厚は100nmであった。
【0106】
(5)有機電界発光素子の電圧−輝度特性および電流−輝度特性
実施例1および比較例1に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、電圧−輝度特性および電流−輝度特性を調べた。
図3は、実施例1および比較例1に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
図4は、実施例1および比較例1に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【0107】
図3に示す電圧−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、大幅な駆動電圧の低下が確認できる。これは、TPPO−Burstを設けることでMgAg電極からの電子の注入障壁が低くなったためと考えられる。
【0108】
また、図4に示す電流−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、電流当たりの輝度が大幅に向上していることがわかる。これは、TPPO−Burstによるキャリア閉じこめ効果により、電子と正孔の注入バランスが改善されたためと考えられる。
【0109】
(実施例2)
(1)正孔注入層を設けた有機電界発光素子の作製
図5は、実施例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
図5に示すように、透明電極と正孔輸送層兼発光層2の間に正孔注入層5を設けた以外は、実施例1と同様にして素子を作製し、これを実施例2とした。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(POF)/電子輸送層(TPPO−Burst)/陰極(MgAg)
【0110】
すなわち、正孔注入材料としてバイエル社製のPEDT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)の水溶液を用いた。この溶液を透明電極上に滴下し、1000rpmの回転で180秒間スピンコートを行い、正孔注入層5を形成した。さらに、実施例1と同様に、順次、正孔輸送層兼発光層、電子輸送層、陰極を積層して、素子を作製した。この際、正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を積層する際、正孔輸送層兼発光層および正孔注入層はスピンコートの前後で厚みに変化はなく、損傷はなかった。これは、正孔輸送層兼発光層材料であるPOFおよび正孔注入層材料であるPEDT/PSSが、アルコール系溶媒(本実施例ではメタノール)に不溶なためである。
【0111】
(2)比較例2に係る有機電界発光素子の作製
図6は、比較例2に係る有機電界発光素子を示す説明図である。
図6に示すように、正孔輸送層兼発光層2の上に電子輸送層を設けない以外は、実施例2と同様にして素子を作製し、これを比較例2とした。
【0112】
(3)有機電界発光素子の電圧−輝度特性および電流−輝度特性
実施例2および比較例2に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、電圧−輝度特性および電流−輝度特性を調べた。
図7は実施例2および比較例2に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
図8は実施例2および比較例2に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【0113】
図7に示す電圧−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、約3Vの駆動電圧の低下が観察される。また、図8に示す電流−輝度特性から明らかなとおり、正孔注入層としてPEDT/PSSを積層したことにより、PEDT/PSSを積層していない実施例1(図4参照)と相違して、電流−輝度特性の乱れが無くなったことがわかる。これは、PEDT/PSSを積層することによって有機層全体の膜厚が厚くなり、その結果、透明電極(陽極)と背面電極(陰極)同士の接触による導通を防止できたためと推察される。
【0114】
(4)有機電界発光素子の電圧−EL効率特性
実施例2および比較例2に係る素子の電圧−EL効率特性を調べた。図9は、実施例2および比較例2に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【0115】
図9から明らかなとおり、電子輸送層としてTPPO−Burstを積層することにより、EL効率を5倍程度に向上させることができる。
【0116】
(実施例3)
(1)有機電界発光素子の作製
正孔輸送層兼発光層を形成する材料として、PVK(ポリビニルカルバゾール)とIr(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)を用いた以外は、図2に示す実施例2と同じ構成で素子を作製し、これを実施例3とした。素子構成の詳細は、以下の通りである。
【0117】
透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)/電子輸送層(TPPO−Burst)/陰極(MgAg)
【0118】
正孔輸送層兼発光層は次のようにして形成した。まず、バイアル瓶にPVKを所定量入れ、次にPVK100重量部に対してIr(ppy)3を10重量部入れた。その後、溶媒THF1mLに対してPVKが14mgになるように、THFにPVKおよびIr(ppy)3を溶解した。この溶液を下層である正孔注入層上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、正孔輸送層兼発光層を形成した。正孔輸送層兼発光層の膜厚は60nmであった。
【0119】
さらに、実施例2と同様に、順次、電子輸送層、陰極を積層し、素子を作製した。なお、電子輸送層の膜厚は60nmであった。実施例2と同様、正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を積層する際、正孔輸送層兼発光層および正孔注入層はスピンコートの前後で厚みに変化はなく、損傷はなかった。
【0120】
TPPO−Burstの湿式および乾式における算術表面粗さ(Ra)を以下の方法で測定した。TPPO−Burstを溶解する溶媒として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールを用いた。それぞれの溶媒1mLに対して、TPPO−Burstが16mgとなるように溶解した溶液を、スピンコート法にて、回転数4000回転、回転時間30秒の条件にて薄膜を作成した。得られた薄膜は常温下で乾燥したものと、105℃中で1時間乾燥したものの2種類を作成した。さらに、対照として真空蒸着法を用いたTPPO−Burst薄膜も作成した。得られた薄膜の製膜性をセイコーインスツルメンツ製の操作プローブ顕微鏡(SPI4000N)を用いて、原子間力顕微鏡(AFM)にて表面状態を観察した。表面状態の指標として算術平均粗さ(Ra)を用いて定量的に評価を実施した。
【0121】
また、表面状態が下地の影響を受けることが予想されることから、基板として石英基板および透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)の2種類を使用した。透明電極(ITO)/正孔注入層(PEDT/PSS)/正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)は、次の方法で作成した。正孔注入材料としてバイエル社製のPEDT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)の水溶液を用いた。この溶液を透明電極上に滴下し、1000rpmの回転で180秒間スピンコートを行い、正孔注入層(PEDT/PSS)を形成した。その後、正孔輸送層兼発光層は次のようにして形成した。まず、バイアル瓶にPVKを所定量入れ、次にPVK100重量部に対してIr(ppy)3を10重量部入れた。その後、溶媒THF1mLに対してPVKが14mgになるように、THFにPVKおよびIr(ppy)3を溶解した。この溶液を下層である正孔注入層上に滴下し、4000rpmの回転で30秒間スピンコートを行い、正孔輸送層兼発光層(PVK:Ir(ppy)3)を形成した。
得られた算術平均粗さ(Ra)の結果を、乾燥条件、基板/下地およびTPPO−Burstを溶解した溶媒と共に、表に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
参考のため、下地材料の成膜性を表に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
表1が示すとおり石英基板上にTPPO−Burstを各種アルコール溶媒を用いてスピンコートした薄膜の表面の算術平均粗さRaは、1nm以下であり有機電界発光素子を作製するに十分な平滑さであることがわかる。
【0127】
さらに、表2では、実際に有機電界発光素子の正孔輸送層兼発光層として用いられる導電性高分子PVK:Ir(ppy)3上に、TPPO−Burstを、各種アルコール溶媒を用いてスピンコートした薄膜の表面の算術平均粗さRaを示している。この際のRaは、10nm以下であり、有機電界発光素子を作製するに十分な平滑さであることがわかる。また、メタノール溶媒を用いスピンコートした薄膜表面のRaが約9nmであるのに対し、他の溶媒を用いスピンコートした薄膜表面は、Raが1桁程度小さくい0.7nm以下であることがわかる。よって、メタノールよりも他の溶媒の方がスピンコートに適していることがわかる。
【0128】
(3)比較例3に係る有機電界発光素子の作製
正孔輸送層兼発光層の上に電子輸送層を設けない以外は、実施例3と同様にして素子を作製し、これを比較例3とした。なお、正孔輸送層兼発光層は、正孔注入層上に、実施例3と同じPVK:Ir(ppy)3のTHF溶液を2000rpmの回転で30秒間スピンコートすることで形成した。正孔輸送層兼発光層の膜厚は90nmであった。
【0129】
(4)有機電界発光素子の電圧−輝度特性および電流−輝度特性
実施例3および比較例3に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、電圧−輝度特性および電流−輝度特性を調べた。
図10は、実施例3および比較例3に係る素子の電圧−輝度の関係を示す特性図である。
図11は、実施例3および比較例3に係る素子の電流−輝度の関係を示す特性図である。
【0130】
図10に示す電圧−輝度特性から明らかなとおり、電子輸送材料としてTPPO−Burstを用いることにより、約6Vの駆動電圧の低下が観察される。また、図11に示す電流−輝度特性から明らかなとおり、TPPO−Burstを用いることにより、電流当たりの輝度が向上していることがわかる。
【0131】
(5)有機電界発光素子の電圧−EL効率特性
実施例3および比較例3に係る素子の電圧−EL効率特性を調べた。図12は、実施例3および比較例3に係る素子の電圧−EL効率の関係を示す特性図である。
【0132】
図12から明らかなとおり、電子輸送層としてTPPO−Burstを積層することにより、EL効率を3.8倍程度に向上させることができる。
【0133】
(実施例4)
4,4’−ビス−(ジフェニルホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−Trimer]の合成
TPPO−Trimerを、下記の反応式のように、ホスフィンオキシド(中間物質)の合成、中間物質からの合成という工程で合成した。
【0134】
【化29】
【0135】
(中間物質の合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.54g(105mmol)に1,4−ジブロモベンゼン29.3g(124mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(以下、THF)溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、ジクロロフェニルホスフィンオキシド6.99g(35.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量=436、分子量+2=438、分子量+4=440を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量4.93g(11.30mmol)、収率31.6%)。
【0136】
(中間物質からの合成)
中間物質2.42g(5.55mmol)と、中間物質1であるジフェニルホスフィンオキシド4.48g(22.1mmol)を溶媒ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)55.6mL、酢酸パラジウム(以下、Pd(OAc)2)250mg(1.11mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(以下、dppp)688mg(1.67mmol)、N−エチルジイソプロピルアミン(edpa)10mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、さらに真空中330〜340℃で昇華精製を行って白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=679を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−Trimerであることを確認した(収量2.12g(3.12mmol)、収率56%、Tm:346℃、Tg:105℃)。
【0137】
(実施例5)
4,4’,4”−トリス−(ジ−p−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(p−CH3)Burst]の合成
TPPO−(p−CH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ−p−トリル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0138】
【化30】
【0139】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.0g(123.5mmol)にp−ブロモトルエン25g(145.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.64g(62.59mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルにて再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=231を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量5.76g(25.02mmol)、収率40%)。
【0140】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.88g(12.51mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.07g(2.08mmol)を溶媒DMSO20.8mL、Pd(OAc)293.3mg(0.416mmol)、dppp257mg(0.624mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=963を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(p−CH3)Burstであることを確認した(収量1.17g(1.22mmol)、収率59%、Tm:335℃、Tg:133℃)。
【0141】
(実施例6)
4,4’,4”−トリス−(ジ−o−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(o−CH3)Burst]の合成
TPPO−(o−CH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ−o−トリル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0142】
【化31】
【0143】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.0g(123.5mmol)にo−ブロモトルエン25g(145.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.64g(62.59mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルにて再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=231を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量6.67g(29.0mmol)、収率46%)。
【0144】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.89g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.07g(2.08mmol)を溶媒DMSO20.8mL、Pd(OAc)293.3mg(0.416mmol)、dppp257mg(0.624mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=963を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(o−CH3)Burstであることを確認した(収量1.50g(1.56mmol)、収率75%、Tm:310℃、Tg:133℃)。
【0145】
(実施例7)
4,4’,4”−トリス−(ジ−m−トリル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(m−CH3)Burst]の合成
TPPO−(m−CH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ−m−トリル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0146】
【化32】
【0147】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片1.63g(67.1mmol)にm−ブロモトルエン12.5g(72.9mmol)の乾燥ジエチルエーテル溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液を、塩化ホスホリル5.96g(38.90mmol)の乾燥THF溶液にゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)30mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=231を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量4.13g(17.9mmol)、収率56%)。
【0148】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.90g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.10g(2.14mmol)を溶媒DMSO 21.0mL、Pd(OAc)293mg(0.42mmol)、dppp260mg(0.63mmol)、edpa4mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=963を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(m−CH3)Burstであることを確認した(収量1.32g(1.37mmol)、収率64%)。
【0149】
(実施例8)
4,4’,4”−トリス−(ビス−(4−メトキシ−フェニル)−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(p−OCH3)Burst]の合成
TPPO−(p−OCH3)Burstを、
【0150】
TPPO−(p−OCH3)Burst(生成物)は、下記の反応式のように、ジ(4−メトキシ―フェニル)ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0151】
【化33】
【0152】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.92g(120.2mmol)にp−ブロモアニソール25.0g(134mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.69g(60.3mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)14mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にシクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=263を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量8.20g(31.3mmol)、収率52%)。
【0153】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a3.30g(12.6mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.07g(2.08mmol)を溶媒DMSO20.8mL、Pd(OAc)293.3mg(0.624mmol)、dppp257mg(0.416mmol)、edpa3.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い、白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1059を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(p−OCH3)Burstであることを確認した(収量1.56g(1.47mmol)、収率71%、Tm:378℃、Tg:127℃)。
【0154】
(実施例9)
4,4’,4”−トリス−(ビス−(2−メトキシ−フェニル)−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(o−OCH3)Burst]の合成
TPPO−(o−OCH3)Burstを、下記の反応式のように、ジ(2−メトキシ―フェニル)ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0155】
【化34】
【0156】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片1.51g(62.1mmol)にo−ブロモアニソール12.5g(66.8mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル4.43g(32.1mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)8mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にシクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=263を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量4.38g(16.7mmol)、収率52%)。
【0157】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a2.00g(7.63mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド0.655g(1.27mmol)を溶媒DMSO13.0mL、Pd(OAc)257.2mg(0.254mmol)、dppp157mg(0.381mmol)、edpa2.3mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い、白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1059を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(o−OCH3)Burstであることを確認した(収量0.80g(0.755mmol)、収率56%)。
【0158】
(実施例10)
トリス−(4’−ジフェニルホスフィニル−ビフェニル−4−イル)−ホスフィンオキシド[TBPO−(DPPO)Burst]の合成
TBPO−(DPPO)Burstを、下記の反応式のように、ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aからの合成という工程で合成した。
【0159】
【化35】
【0160】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片4.8g(197.5mmol)に4,4’−ジブロモビフェニル74.9g(240mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、塩化ホスホリル10.2g(66.6mmol)(反応物質)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)50mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量=743、分子量+2=745、分子量+4=747を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量38.1g(51.3mmol)、収率77%)。
【0161】
(中間物質aからの合成)
中間物質a0.6g(1.16mmol)と、ジフェニルホスフィンオキシド1.4g(6.69mmol)を溶媒DMSO 11.6mL、Pd(OAc)252.4mg(0.233mmol)、dppp144mg(0.349mmol)、edpa2.1mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い、得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1107を確認し、得られた結晶が目的とするTBPO−(DPPO)Burst であることを確認した(収量0.618g(0.70mmol)、収率61%)。
【0162】
(実施例11)
4,4’,4”−トリス−(1−ナフチル−フェニル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(α−NPPO)Burst]の合成
TPPO−(α−NPPO)Burstを、下記の反応式のように、1−ナフチル−フェニル−ホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0163】
【化36】
【0164】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.15g(129.6mmol)に1―ブロモナフタレン28.35g(137mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液を、ジクロロフェニルホスフィン26.0g(145mmol)の乾燥THF溶液へゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)21mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=253を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質であることを確認した(収量12.7g(50.3mmol)、収率36%)。
【0165】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a4.03g(16.0mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド1.17g(2.28mmol)を溶媒DMSO22.8mL、Pd(OAc)2144mg(0.643mmol)、dppp377mg(0.915mmol)、edpa4.2mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にシクロヘキサン/トルエンで再結晶を行い、白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1029を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(α−NPPO)Burstであることを確認した(収量1.75g(1.70mmol)、収率75%)。
【0166】
(実施例12)
4,4’,4”−トリス−(ジ−1−ナフチル−ホスフィニル)−トリフェニルホスフィンオキシド[TPPO−(α−DNPO)Burst]の合成
TPPO−(α−DNPO)Burstを、下記の反応式のように、ジ−1−ナフチルホスフィンオキシド(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0167】
【化37】
【0168】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片12.6g(519mmol)に1―ブロモナフタレン114g(551mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル34.0g(246mmol)の乾燥THF溶液へゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩加熱還流した。その溶液に塩酸溶液(濃度18%)200mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後エーテルで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=303を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量52.8g(175mmol)、収率71%)。
【0169】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a13.59g(45mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド3.86g(7.5mmol)を溶媒DMSO75mL、Pd(OAc)2338mg(1.5mmol)、dppp927mg(2.25mmol)、edpa13.5mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にメタノール/トルエンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1179を確認し、得られた結晶が目的とするTPPO−(DNPO)Burstであることを確認した(収量6.03g(5.11mmol)、収率68%)。
【0170】
(実施例13)
1,3,5−トリス(ジフェニルホスフィニル)ベンゼン[TDPPOBという]の合成
TDPPOBを、下記の反応式のように、1,3,5−トリブロモベンゼン(反応物質1a)とジフェニルホスフィンオキシド(中間物質1)を用いて合成した。
【0171】
【化38】
【0172】
市販の1,3,5−トリブロモベンゼン(反応物質1a)0.63g(2mmol)とジフェニルホスフィンオキシド(中間物質1)1.21g(6.0mmol)を溶媒DMSO20mL、Pd(OAc)293mg(0.41mmol)、edpa3.7mL、dppp261mg(0.63mmol)の存在下において100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離後に再結晶を行い、更に真空中で昇華精製を行った。得られた物質のFAB質量分析を行い、分子量=679を確認し、得られた物質が目的とするTDPPOB(生成物質)であることを確認した(収量0.64g(0.94mmol)、収率47%、Tg79.7℃)。
【0173】
(実施例14)
トリス−(ジビフェニル−ホスフィニル)トリフェニルホスフィンオキシド[TRIS−(DBPPO)−TPPO−Burst]の合成
TRIS−(DBPPO)−TPPO−Burstを、下記の反応式のように、DBPPO(中間物質a)の合成、中間物質aおよびbからの合成という工程で合成した。
【0174】
【化39】
【0175】
(中間物質aの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片10.4g(428mmol)に4−ブロモビフェニル100.0g(388.5mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル29.5g(213.6mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)40mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルにて再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=355を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質aであることを確認した(収量22.73g(64.2mmol)、収率30%)。
【0176】
(中間物質aおよびbからの合成)
中間物質a18.5g(52.3mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド3.9g(7.6mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)2250mg(1.1mmol)、dppp460mg(1.1mmol)、edpa7.7mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にシクロヘキサンで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1335を確認し、得られた結晶が目的とするTRIS−(DBPPO)−TPPO−Burstであることを確認した(収量2.8g(2.1mmol)、収率28%)。
【0177】
(実施例15)
ビス−(ジビフェニル−ホスフィニル)−ビフェニレン[BIS(DBPPO)−BPの合成
BIS(DBPPO)−BP]を、下記の反応式のように、DBPPO(中間物質a)および4,4’−ジブロモビフェニルからの合成という工程で合成した。
【0178】
【化40】
【0179】
(中間物質aおよび4,4’−ジブロモビフェニルからの合成)
中間物質a18.49g(52.2mmol)と、4,4’−ジブロモビフェニル3.61g(11.6mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)2250mg(1.1mmol)、dppp460mg(1.1mmol)、edpa7.9mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後に再結晶を行い、得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=858を確認し、得られた結晶が目的とするBIS(DBPPO)−BPであることを確認した(収量7.7g(9.0mmol)、収率77%)。
【0180】
(実施例16)
トリス−(t−ブチル−ジフェニル−ホスフィニル)トリフェニルホスフィンオキシド[TRIS−(t−Bu−DPPO)−TPPO−Burst]の合成
TRIS−(t−Bu−DPPO)−TPPO−Burstを、下記の反応式のように、t−Bu−DPPO(中間物質c)の合成、中間物質cおよびbからの合成という工程で合成した。
【0181】
【化41】
【0182】
(中間物質cの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.85g(117.3mmol)に4−t−ブチル−ブロモベンゼン25.0g(117.3mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル8.10g(58.66mmol)の乾燥THF溶液にゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に塩酸溶液(濃度36%)30mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体に少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=315を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質cであることを確認した(収量8.65g(18.4mmol)、収率47%)。
【0183】
(中間物質cおよびbからの合成)
中間物質c15.5g(49.4mmol)と、中間物質bであるトリフェニルホスフィンオキシド4.2g(8.2mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)2270mg(1.2mmol)、dppp510mg(1.2mmol)、edpa8.4mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム層を分離し、濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる分離後にトルエン−クロロホルムで再結晶を行い白色結晶を得た。得られた結晶のFAB質量分析を行い、分子量=1215を確認し、得られた結晶が目的とするTRIS−(t−Bu−DPPO)−TPPO−Burstであることを確認した(収量1.5g(1.2mmol)、収率15%)。
【0184】
(実施例17)
4,4’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−ビフェニル[TPPO−Dimer]の合成
TPPO−Dimerを、下記の反応式のように、中間物質1であるジフェニルホスフィンオキシドの合成、中間物質1からの合成という工程を経て合成した。
【0185】
【化42】
【0186】
(中間物質1の合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片2.4g(98.8mmol)にブロモベンゼン17.2g(110mmol)の乾燥THF溶液を溶媒が還流しないように冷却しながら滴下し、グリニャール試薬(反応物質1)を調製した。その溶液に、亜リン酸ジエチル(反応物質2)5.18g(37.5mmol)の乾燥THF溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌し、その溶液に1mol/L塩酸を滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム相を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルであるカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後にジエチルエーテルより再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=203を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質1であることを確認した。(3.57g(17.7mmol)、収率47%)
【0187】
(中間物質1からの合成)
中間物質1の4.04g(20mmol)と市販の4,4’−ジブロモビフェニル(反応物質3)3.12g(10mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)289.8mg(0.4mmol)、dppp247mg(0.6mmol)、edpa9mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離後に再結晶を行い、更に真空中で昇華精製を行った。得られた物質のFAB質量分析を行い、分子量=555を確認し、得られた物質が目的とするTPPO−Dimer(生成物質)であることを確認した。(4.56g(8.22mmol)、収率82%)
【0188】
(実施例18)
[4,4’−ビス[(1−ナフチル)−フェニル−ホスフィニル]]−ビフェニル[α−NPPOB]の合成
α−NPPOBを、下記の反応式のように、(1−ナフチル)−フェニル−ホスフィンオキシド(中間物質1d)の合成、中間物質1dからの合成という工程を経て合成した。
【0189】
【化43】
【0190】
(中間物質1dの合成)
窒素雰囲気下において、金属マグネシウム片3.15g(129.6mmol)に1―ブロモナフタレン28.35g(137mmol)の乾燥THF溶液を滴下し、グリニャール試薬(反応物質1d)を調製した。その溶液を、ジクロロフェニルホスフィン(反応物質2d)26.0g(145mmol)の乾燥THF溶液へゆっくり滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。その溶液に塩酸溶液(濃度36%)21mLを滴下した。その溶液を蒸留水/クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を分離し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。さらに分離後シクロヘキサンで再結晶を行った。晶出した結晶のFAB質量分析を行い、分子量+1=253を確認し、得られた結晶が目的とする中間物質1dであることを確認した(収量12.7g(50.3mmol)、収率36%)。
【0191】
(中間物質1dからの合成)
中間物質1 5.04g(20mmol)と市販の4,4’−ジブロモビフェニル(反応物質3)3.12g(10mmol)を溶媒DMSO中、Pd(OAc)289.8mg(0.4mmol)、dppp247mg(0.6mmol)、edpa9mLの存在下、100℃で反応させた。その溶液をクロロホルム/蒸留水で抽出し、クロロホルム相を分離し濃縮した。残った粘性液体を少量のクロロホルムに溶かし、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離後に再結晶を行い、更に真空中で昇華精製を行った。得られた物質のFAB質量分析を行い、分子量=655を確認し、得られた物質が目的とするα−NPPOB(生成物質)であることを確認した。(5.15g(7.87mmol)、収率79%)
【0192】
(実施例19)
実施例17で調製したTPPO−Dimerの特性を評価した。
[TPPO−Dimerの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
得られたTPPO−Dimerのイオン化ポテンシャルを理研計器(株)製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず、6.8eV以上であった。バンドギャップは4.07eVであった。TPPO−Dimerは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TPPO−Dimerは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0193】
(ガラス転移温度)
TPPO−DimerのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが90.8℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)のTg63℃よりも高く、TPPO−Dimerが耐熱性に優れていることがわかる。
【0194】
[TPPO−Dimerを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてTPPO−Dimerを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(TPPO−Dimer)/陰極(MgAg)
【0195】
すなわち、ITOで構成される透明電極(100nm)付きのガラス基板上に、TPDを真空蒸着法によって蒸着し、ホール輸送層を形成した。真空度は2.0×10-4Paであり(実施例20以降も同じ)、ホール輸送層の膜厚は55nmである。ホール輸送層の上に、発光層としてAlq3を蒸着して成膜した。発光層の膜厚は20nmとした。蒸着速度は0.2nm/secとした。発光層の上に、TPPO−Dimerを用いて蒸着を行い、厚さ30nmの電子輸送層を形成した。電子輸送層の上に、陰極としてMgAg電極を100nm蒸着し、陰極を得た。
【0196】
(比較例4)
電子輸送材料としてTPPO−Dimerを用いず、更に発光層(Alq3)の膜厚を50nmとした以外は、実施例19と同様にして素子を作製し、これを比較例4とした。
【0197】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例19および比較例4に係る素子に電圧をそれぞれ印加して、輝度−電圧特性を調べた。
図13は、実施例19および比較例4に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示す。
【0198】
図13に示すように、実施例19では比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、TPPO−Dimerは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【0199】
(実施例20)
実施例13で調製したTDPPOBの特性を評価した。
[TDPPOBの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
TDPPOBのイオン化ポテンシャルを理研計器株式会社製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず、6.8eV以上であった。バンドギャップは3.98eVであった。TDPPOBは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TDPPOBは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0200】
(ガラス転移温度)
得られたTDPPOBのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが79.7℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているTPDのTg63℃よりも高く、TDPPOBが耐熱性に優れていることがわかる。
【0201】
[TDPPOBを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてTDPPOBを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(TDPPOB)/陰極(MgAg)
【0202】
すなわち、電子輸送材料としてTDPPOBを用いて電子輸送層(膜厚は30nm)を形成した以外は、実施例19と同様にして素子を作製した。
【0203】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例20に係る有機電界発光素子に電圧を印加して、輝度−電圧特性を調べた。図14は、実施例20に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示し、上記した比較例4に係る素子のグラフと併せて共に示す。
【0204】
図14に示すように、実施例20では、比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、TDPPOBは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【0205】
(実施例21)
実施例4で調製したTPPO−Trimerの特性を評価した。
[TPPO−Trimerの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
TPPO−Trimerのイオン化ポテンシャルを理研計器株式会社製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず6.8eV以上であった。バンドギャップは4.02eVであった。TPPO−Trimerは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、TPPO−Trimerは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0206】
(ガラス転移温度)
得られたTPPO−TrimerのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが105℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)のTg63℃よりも高く、TPPO−Trimerが耐熱性に優れていることがわかる。
【0207】
[TPPO−Trimerを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてTPPO−Trimerを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(TPPO−Dimer)/陰極(MgAg)
【0208】
すなわち、電子輸送材料としてTPPO−Trimerを用いて電子輸送層(膜厚は30nm)を形成した以外は、実施例19と同様にして素子を作製した。
【0209】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例21に電圧をそれぞれ印加して、輝度−電圧特性を調べた。図15は、実施例21に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示し、上記した比較例4に係る素子のグラフと併せて共に示す。
【0210】
図15に示すように、実施例21では、比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、TPPO−Trimerは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【0211】
(実施例22)
実施例18で調製したα−NPPOBの特性を評価した。
[α−NPPOBの性質]
(イオン化ポテンシャル、バンドギャップ)
得られたα−NPPOBのイオン化ポテンシャルを理研計器(株)製の紫外線光電子分光分析装置(AC−2)を用いて測定したところ、測定範囲の6.8eVまででは閾値は検出されず6.8eV以上であった。バンドギャップは3.92eVであった。α−NPPOBは、電子輸送材料、正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として一般的に用いられているバソクプロイン(イオン化ポテンシャル:6.8eV、バンドギャップ:3.7eV)と比べ、イオン化ポテンシャルが高いと予想され、更にバンドギャップも大きい。したがって、α−NPPOBは、正孔阻止能が高く、励起子閉じ込め効果が高い。よって、燐光発光素子の正孔阻止材料および励起子閉じ込め材料として有望である。
【0212】
(ガラス転移温度)
得られたα−NPPOBのTgをセイコー電子社製DSC−6200により示差熱分析測定したところ、Tgが125℃と高い値を示した。これは、正孔輸送材料として一般的に用いられているTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)のTg63℃よりも高く、α−NPPOBが耐熱性に優れていることがわかる。
【0213】
[α−NPPOBを用いた有機電界発光素子の作製]
電子輸送材料としてNPPOBを用い、有機電界発光素子を作製した。素子構成の詳細は、以下の通りである。
透明電極(ITO)/ホール輸送層(TPD)/発光層(Alq3)/電子輸送層(α−NPPOB)/陰極(MgAg)
【0214】
すなわち、電子輸送材料としてα−NPPOBを用いて電子輸送層(膜厚は30nm)を形成した以外は、実施例19と同様にして素子を作製した。
【0215】
[有機電界発光素子の輝度−電圧特性]
実施例22に電圧をそれぞれ印加して、輝度−電圧特性を調べた。図16は、実施例22に係る素子の輝度−電圧の関係を示す特性図を示し、上記した比較例4に係る素子のグラフと併せて共に示す。
【0216】
図16に示すように、実施例22では、比較例4よりも低電圧で発光が見られた。これにより、α−NPPOBは優れた電子輸送性を有していることがわかる。
【符号の説明】
【0217】
1 透明電極付きのガラス基板
2 正孔輸送層兼発光層
3 電子輸送層
4 陰極
5 正孔注入層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(4):
【化1】
(式中、Ar11は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい、フェニル基またはナフチル基を表す)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は、3つのハロゲン原子で置換されたベンゼンまたは2つのハロゲン原子で置換されたベンゼンもしくはビフェニルを表す)
の化合物、または
一般式(5):
【化2】
(式中、Ar13は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい、フェニル基またはビフェニル基を表すが、但しAr13の少なくとも2つは、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたフェニル基またはビフェニル基である)
で表される化合物との縮合物であるアルコール系溶媒に可溶な有機半導体リン含有化合物。
【請求項2】
前記有機半導体リン含有化合物が、
副式(6):
【化3】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar12'は、n=2のときフェニレン基またはビフェニレン基を表し、n=3のときベンゼントリイル基を表す)
で表される請求項1に記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項3】
前記有機半導体リン含有化合物が、
副式(7):
【化4】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表される請求項1または2に記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項4】
前記有機半導体リン含有化合物が、
副式(8):
【化5】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいはフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表される請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項5】
前記有機半導体リン含有化合物が、
前記副式(6)の化合物:
【化6】
前記副式(7)の化合物:
【化7】
【化8】
前記副式(8)の化合物:
【化9】
から選択される請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項6】
式(9):
【化10】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)、または
式(10):
【化11】
(式中、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいは式(9)と連結するフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表されるジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を少なくとも3つ有する有機半導体リン含有化合物。
【請求項7】
一般式(4):
【化12】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は上記式Ar12における定義と同義である)
の化合物、または
一般式(5):
【化13】
(式中、Ar13は一般式(5)における定義と同義である)
で表される化合物とを、溶媒中、縮合触媒および塩基の存在下で縮合させて有機半導体リン含有化合物を得ることからなる有機半導体リン含有化合物の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒がジメチルスルホキシドであり、前記縮合触媒が酢酸パラジウムまたは酢酸パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンまたは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンとの錯化合物であり、前記塩基がトリアルキルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンまたはN,N’−ジメチルアミノピリジンである請求項7に記載の有機半導体リン含有化合物の製造方法。
【請求項1】
一般式(4):
【化1】
(式中、Ar11は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい、フェニル基またはナフチル基を表す)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は、3つのハロゲン原子で置換されたベンゼンまたは2つのハロゲン原子で置換されたベンゼンもしくはビフェニルを表す)
の化合物、または
一般式(5):
【化2】
(式中、Ar13は、互いに同一または異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい、フェニル基またはビフェニル基を表すが、但しAr13の少なくとも2つは、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたフェニル基またはビフェニル基である)
で表される化合物との縮合物であるアルコール系溶媒に可溶な有機半導体リン含有化合物。
【請求項2】
前記有機半導体リン含有化合物が、
副式(6):
【化3】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar12'は、n=2のときフェニレン基またはビフェニレン基を表し、n=3のときベンゼントリイル基を表す)
で表される請求項1に記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項3】
前記有機半導体リン含有化合物が、
副式(7):
【化4】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表される請求項1または2に記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項4】
前記有機半導体リン含有化合物が、
副式(8):
【化5】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義であり、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいはフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表される請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項5】
前記有機半導体リン含有化合物が、
前記副式(6)の化合物:
【化6】
前記副式(7)の化合物:
【化7】
【化8】
前記副式(8)の化合物:
【化9】
から選択される請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機半導体リン含有化合物。
【請求項6】
式(9):
【化10】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)、または
式(10):
【化11】
(式中、Ar13'は、互いに同一または異なって、フェニル基またはビフェニル基、あるいは式(9)と連結するフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で表されるジアリールホスフィンオキシド骨格で表される部分構造を少なくとも3つ有する有機半導体リン含有化合物。
【請求項7】
一般式(4):
【化12】
(式中、Ar11は一般式(4)における定義と同義である)
で表される化合物と、式:
Ar12
(式中、Ar12は上記式Ar12における定義と同義である)
の化合物、または
一般式(5):
【化13】
(式中、Ar13は一般式(5)における定義と同義である)
で表される化合物とを、溶媒中、縮合触媒および塩基の存在下で縮合させて有機半導体リン含有化合物を得ることからなる有機半導体リン含有化合物の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒がジメチルスルホキシドであり、前記縮合触媒が酢酸パラジウムまたは酢酸パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンまたは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンとの錯化合物であり、前記塩基がトリアルキルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンまたはN,N’−ジメチルアミノピリジンである請求項7に記載の有機半導体リン含有化合物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−82209(P2012−82209A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263822(P2011−263822)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2006−512572(P2006−512572)の分割
【原出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2006−512572(P2006−512572)の分割
【原出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
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