説明

有機廃棄物処理システム

【課題】 内燃機関を用いる必要のない有機廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】 有機廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥化装置10を有する有機廃棄物処理システムSにおいて、堆肥化装置10から排出される臭気ガスGに含まれる水分Wを分離する脱水処理部30と、脱水処理部30から排出される水分Wを処理する汚水処理部50と、を備える。脱水処理部30としては、冷媒Rにより臭気ガスGを冷却して液化する凝縮器32を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物を発酵させた際に発生する臭気ガスを脱臭可能な有機廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
養鶏場や養豚場において発生する家畜糞(糞尿を含む)、又は生ゴミ等の有機廃棄物を発酵させて堆肥化する技術において、処理過程で発生する排ガスの悪臭対策は、大きな問題となっている。
例えば、水(あるいは薬液)洗浄法、オガ粉吸着法、微生物分解法等が知られているが、これらの脱臭方法は、水(薬液)処理を伴ったり、比較的広い敷地面積を必要としたりすることから、導入が困難な場合が多く、しかもアンモニア以外の臭気成分を除去することが難しい。
そこで、特許文献1に開示されるように、臭気ガスを脱臭炉(ガスタービン)内で燃焼させて臭気成分を高温で熱分解する燃焼脱臭法が検討されている。
【特許文献1】特開2002−364381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、燃焼装置及びその運転コストが高いため、普及が進んでいないという問題がある。
このため、内燃機関を必要としない、簡便で高効率な脱臭装置が望まれている。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、内燃機関を用いる必要のない有機廃棄物処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る有機廃棄物処理システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、有機廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥化装置を有する有機廃棄物処理システムにおいて、前記堆肥化装置から排出される臭気ガスに含まれる水分を分離する脱水処理部と、前記脱水処理部から排出される前記水分を処理する汚水処理部と、を備えるようにした。
この発明によれば、臭気ガスから水分を除去することにより、臭気ガス中のアンモニア濃度を大幅に減少させることができる。そして、分離した汚水を汚水処理部により処理するので、臭気の放出が効果的に防止できる。
【0006】
例えば、前記脱水処理部としては、冷媒により前記臭気ガスを冷却して液化する凝縮器を用いることができる。また、前記脱水処理部として、前記臭気ガスに含まれる前記水分を遠心力により分離する遠心分離機を用いることができる。
また、前記汚水処理部が、複数の汚水処理手段からなり、前記汚水処理手段のうちのいずれかを選択する選択部を備えるものでは、悪臭を含む汚水を効率よく処理できる汚水処理手段を選択する等、最適な汚水処理手段を選択することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。
有機廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥化装置を有する有機廃棄物処理システムにおいて、前記堆肥化装置から排出される臭気ガスに含まれる水分を分離する脱水処理部と、前記脱水処理部から排出される前記水分を処理する汚水処理部と、を備えるようにしたので、臭気ガス中のアンモニア濃度を、容易かつ確実に減少させることができる。
したがって、内燃機関を用いる必要のない有機廃棄物処理システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の有機廃棄物処理システムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る有機廃棄物処理システムSの実施形態の一例を示す構成図である。
有機廃棄物処理システムSは、畜糞(有機廃棄物)Fを発酵させて堆肥化させる堆肥化装置10、堆肥化装置10で発生して臭気ガスGを送気するガス送管20、臭気ガスGから水分(アンモニアを含む)を分離する脱水処理装置30、脱水処理装置30から排出される汚水Wを排出する汚水配管40、汚水Wを処理する汚水処理装置50等を備えて構成される。
【0009】
図2は、本実施形態に係る堆肥化装置10の一例を示す構成図である。
堆肥化装置10としては、例えば、畜糞Fを連続的に好気性発酵させる連続式発酵機が用いられる。
堆肥化装置10は、約10〜30m程度の容量の発酵槽11、畜糞Fの投入口12、畜糞Fを攪拌する攪拌機13、加熱用の電気ヒータ14、発酵槽11内に外気を取り込むための送風管(大気導入部)15及び給気ブロア16等を含んで構成される。
そして、堆肥化装置10は、発酵熱及び電気ヒータ14の熱を利用して発酵槽11内の温度を調整しつつ、給気ブロア16によって発酵槽11内に強制的に空気を導入し、畜糞Fの発酵を促進させる。
畜糞Fを発酵させると、臭気成分(アンモニア、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等)を含む気体(以下、臭気ガスG)が、発酵槽11の容量の約10〜30%程度の量だけ発生する。したがって、発酵槽11を大容量化すると、臭気ガスGの発生量も増大する。
【0010】
ガス送管20は、発酵槽11内の排気口と後述する脱水処理装置30の給気口とを連通し、発酵槽11内で発生する臭気ガスGを排気ブロア21により脱水処理装置30の容器32aに圧送する。
また、ガス送管20には、ガス送管20と堆肥化装置10の送風管15と連通するバイパス管22が設けられるとともに、このバイパス管22には、開度が調整可能な制御弁23が設けられる。
これにより、制御弁23の開度を調整することにより、堆肥化装置10から脱水処理装置30に送気される臭気ガスGの一部或いは全てを堆肥化装置10の発酵槽11内に戻し入れることができる。また、脱水処理装置30の容器32aに圧送する臭気ガスGの流量を制御することができる。
【0011】
脱水処理装置30は、臭気ガスGに含まれる水分を分離する装置であって、凝縮器32と冷却塔34と冷媒Rを流通させる冷媒配管36とを含んで構成される。
凝縮器32は、臭気ガスG及び汚水Wを収容する容器32aと冷媒配管36とを含んで構成され、容器32a内の気体を冷媒配管36により冷却して液化するものである。
冷却塔34は、冷媒配管36とを含んで構成され、冷媒配管36内を流通する冷媒Rから熱を奪って冷却させるものである。
冷媒配管36は、冷媒Rを流通させる配管であって、冷媒Rとして水等を用いることができる。
そして、容器32a内にガス送管20を介して臭気ガスGが圧送されると、臭気ガスGは冷媒配管36に触れることにより冷却され、臭気ガスGに含まれる水分(アンモニアを含む)が液化し、容器32a内の底部に汚水Wとして収容される。
また、凝縮器32の容器32aの上部には、容器32a内の上部に収容された気体、すなわち、水分が除去された臭気ガスGを大気放出する排気管32bが接続される。更に、凝縮器32の容器32aの底部には、容器32a内の底部に収容された液体、すなわち、臭気ガスGから分離されたアンモニアを含む汚水Wを排出する汚水配管40が接続される。
【0012】
汚水配管40は、凝縮器32の容器32aの底部と後述する汚水処理装置50とを連通し、凝縮器32内で発生する汚水Wを汚水処理装置50に流す配管である。
なお、汚水配管40は、複数の分岐配管42,44と、脱水処理装置30から排出される汚水Wを複数の分岐配管42,44のいずれに流すかを選択可能な三方弁46とを備える。
【0013】
汚水処理装置50は、アンモニアを含む汚水Wを分解して浄化する装置であって、浄化槽52と、公共施設としての下水処理施設54が用いられる。なお、浄化槽52としては、単独処理浄化槽、合併処理浄化槽のいずれであってもよい。
そして、浄化槽52には、分岐配管42が接続され、下水処理施設54には、分岐配管44が接続される。
【0014】
以上のような構成を備える有機廃棄物処理システムSでは、発酵槽11に投入された畜糞Fは、発酵槽11において所定のサイクルで発酵されて堆肥となり、堆肥は発酵槽11から随時取り出される。例えば、発酵槽11に畜糞Fを投入してから約2日後には、当初60〜70%あった水分が好気性発酵により乾燥して30%まで減り、有機肥料が出来上がる。
また、畜糞Fの発酵と同時に、臭気成分(アンモニア等)を含む臭気ガスGが発生する。そして、発生した臭気ガスGは、発酵槽11の排気口からガス送管20を介して脱水処理装置30に圧送される。
【0015】
脱水処理装置30に圧送される臭気ガスGは、発酵熱により、最大75℃程度の温度を有している。また、畜糞Fの水分も含んでいるため、高湿である。
このような高温高湿の臭気ガスGは、凝縮器32の容器32aに流入すると、容器32a内に配置された冷媒配管36により冷却されて、臭気ガスGに含まれる水分が液化して、容器32a内の底部に汚水Wとして収容される。この際、臭気ガスGに含まれていたアンモニア成分も汚水Wとして容器32a内の底部に収容される。
このようにして、容易かつ確実に、臭気ガスGからアンモニア成分を含む水分が分離される。したがって、臭気ガスGからはアンモニア成分の大部分が取り除かれ、臭気が低減される。
そして、臭気が低減した臭気ガスGは、排気管32bから外部に放出される。
具体的には、発酵槽11の排出された臭気ガスGには、約3000ppm程度のアンモニア成分が含まれていたが、排気管32bから外部に放出された臭気ガスGでは、アンモニア成分が約1000ppm程度まで低減された。
【0016】
凝縮器32の容器32aの底部に収容された汚水Wは、汚水配管40を介して汚水処理装置50に流れる。この際、汚水配管40に設けられた三方弁46を操作することにより、汚水Wの流出先として、浄化槽52又は下水処理施設54が選択される。
汚水処理装置50として、浄化槽52や下水処理施設54等のように、複数の装置を設けるのは、例えば、汚水Wの処理能力により流入させる装置、施設を選択可能とするためである。或いは、汚水処理のランニングコストを比較して、汚水Wを流入させる装置、施設を選択可能とするためである。
具体的には、凝縮器32から排出される汚水Wの量は、約360L/日程度であるため、例えば、300Lを浄化槽52で処理し、残りの60Lについては、三方弁46を切り替えて下水処理施設54に流すようにすることができる。
このように、汚水処理のランニングコストを抑えるように最適な汚水処理装置を選択したり、急激な汚水Wの増加に対応したりすることが可能となる。
【0017】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0018】
発酵槽11の排出された臭気ガスGから水分を分離する脱水処理装置30として、凝縮器32を用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、遠心分離機を用いてもよい。遠心分離機を用いることにより、臭気ガスGから水分を容易かつ確実に分離することができる。
【0019】
また、凝縮器32において水分が分離された後の臭気ガスGを、排気管32bから外部に放出する場合について説明したが、これに限らない。臭気ガスGを内燃機関(ディーゼルエンジン)に導入して燃料とともに燃焼させることにより、臭気成分を高温で熱分解し、同時に、その内燃機関を駆動源として発電を行うようにしてもよい。
そして、発電された電力を堆肥化装置10の攪拌機13等の駆動電力として用いることにより、有機廃棄物処理システムの低ランニングコスト化を図ることができる。また、水分の少ない臭気ガスGを内燃機関に導入できるので、燃焼効率の向上や、内燃機関の長寿命化を図ることもできる。
【0020】
また、一つの堆肥化装置10に一つの脱水処理装置30が連結する場合について説明したが、これに限らない。例えば、一つの堆肥化装置10に複数の脱水処理装置30を連結したり、複数の堆肥化装置10に一つの脱水処理装置30を連結したりする場合であってもよい。
【0021】
また、脱水処理装置30として、例えば、凝縮器32の下流側に遠心分離機を連結してもよい。同様に、遠心分離機の下流側に凝縮器32を連結してもよい。或いは、凝縮器32と遠心分離機とを並列に配置して、いずれの装置に臭気ガスGを圧送するかを選択できるように構成してもよい。
【0022】
汚水処理装置50として、浄化槽52や公共施設としての下水処理施設54について説明したが、これに限らない。例えば、リアクタ等を用いてもよい。
また、浄化槽52を複数配置してもよいし、浄化槽とリアクタ等を混在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の有機廃棄物処理システムSを示す概念図である。
【図2】本実施形態に係る堆肥化装置10の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0024】
S…有機廃棄物処理システム
G…臭気ガス
W…汚水(水分)
R…冷媒
10…堆肥化装置
30…脱水処理装置(脱水処理部)
32…凝縮器
46…三方弁(選択部)
50…汚水処理装置(汚水処理部)
52…浄化槽(汚水処理手段)
54…下水処理施設(汚水処理手段)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥化装置を有する有機廃棄物処理システムにおいて、
前記堆肥化装置から排出される臭気ガスに含まれる水分を分離する脱水処理部と、
前記脱水処理部から排出される前記水分を処理する汚水処理部と、
を備えることを特徴とする有機廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記脱水処理部は、冷媒により前記臭気ガスを冷却して液化する凝縮器であることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記脱水処理部は、前記臭気ガスに含まれる前記水分を遠心力により分離する遠心分離機であることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記汚水処理部は、複数の汚水処理手段からなり、前記汚水処理手段のうちのいずれかを選択する選択部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の有機廃棄物処理システム。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−273632(P2006−273632A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93068(P2005−93068)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000198318)石川島検査計測株式会社 (132)
【Fターム(参考)】