説明

有機性廃水処理方法及び該システム

【課題】 脱水助剤の添加量を増加することなく前処理過程における脱水効率の向上が可能であり、さらには廃棄物全体の資源化率を向上させることができる有機性廃水処理方法及び該システムを提供する。
【解決手段】 浄化槽汚泥を含む有機性廃水を前処理する前処理設備と、該前処理した処理液を生物処理する生物処理設備と、を備えた有機性廃水処理システムにおいて、
前記前処理設備が、前記有機性廃水を夾雑物除去することなくそのまま脱水する脱水設備2と、該脱水設備に並行に設けられた夾雑物除去設備1からなり、前記有機性廃水20の少なくとも一部を分岐して前記脱水設備2に導入するとともに、該分岐した他の有機性廃水20を前記夾雑物除去設備1に導入し、前記脱水設備2からの脱水分離液と前記夾雑物除去設備からの夾雑物分離液を前記生物処理設備3に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽汚泥、し尿等の有機性廃水を前処理した後に生物処理する技術に関し、特に、前処理における脱水効率を向上させ、脱水汚泥の燃料化、堆肥化等の有効利用を図る有機性廃水処理方法及び該システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水の処理では、生物処理を行う前に、この生物処理を効率的に且つ円滑に行うために夾雑物除去、脱水等の前処理を行うのが一般的である。このような前処理を備えた従来の有機性廃水の処理を図6に示す(特許文献1等参照)。まず、夾雑物除去設備51にて、受け入れられた有機性廃水から夾雑物を除去した後、さらに除渣液に凝集剤を添加して脱水設備52に導入し、遠心分離機、ベルトプレスなどの脱水設備52にて脱水し、固液分離しつつ汚泥の脱水を行い、脱水分離液を浮遊汚泥方式による生物処理設備53に投入し、主にBOD、T−N(全窒素)などを処理し、生物処理液を固液分離装置54にて固液分離し、上澄み液に対し、高度処理設備55にて、凝集分離、活性炭処理等の高度処理を施してT−P(リン)、COD、色度成分を除去した後に系外排出していた。
一方、固液分離設備54にて発生する余剰汚泥57、凝集汚泥58は、前記脱水設備52にて有機性廃水と混合して脱水したり、また余剰汚泥57及び凝集汚泥58を独立して脱水していた。
【0003】
このような脱水設備を備えた処理システムでは、脱水により得られた脱水汚泥は、汚泥処理設備にてメタン発酵、脱水、堆肥化、緩衝、焼却、若しくはこれらを組み合わせた設備により処理されていた。
ここで、処理対象とされる有機性廃水としては、し尿、浄化槽汚泥等が挙げられる。し尿とは、汲み取り式便所等から排出される生し尿である。また、浄化槽汚泥とは、合併処理浄化槽、コミュニティプラント、農業集落排水施設、漁業集落排水施設、単独処理浄化槽等から収集され、生し尿や生活排水等が一旦各々の施設にて生物処理をなされた後の生物処理残渣をいう。
【0004】
近年、廃棄物全体の資源化率向上と、効率的処理に鑑み、脱水設備において、含水率を70%以下まで脱水し、この脱水汚泥を燃料としてごみ焼却施設等に搬入されるケースがある。このように、脱水汚泥を燃料として利用可能な形態とすることは、資源化に際して非常に有益な方法である。
そこで、脱水効率を向上させるには、処理対象に有機性の繊維状物質を含有させた状態で脱水処理することが有効である。
ところが、特許文献1等に記載される従来の方法では、脱水の前段で夾雑物除去を行っており、夾雑物として繊維状物質を殆ど除去してしまうため、脱水性を高く維持することは困難であった。
従って、特許文献2(特開2002−219500号公報)では、有機性汚泥に合成繊維と凝集剤を添加して凝集させた後、脱水処理する方法を提案しており、外部添加する合成繊維により脱水性を向上させることを可能としている。
【0005】
【特許文献1】特許第3368938号公報
【特許文献2】特開2002−219500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、特許文献1等のように夾雑物除去設備を設けた構成では、夾雑物除去設備において、紙、ビニールなどの夾雑物を除去する際に、処理液中の粗繊維分を除去するため、脱水設備において、脱水性が悪くなり、脱水汚泥の含水率を低く保つことは困難性を有していた。脱水汚泥の含水率を低くするためには、凝集剤などの脱水助剤の使用量が多くなるという問題を有しているとともに、固形物回収率を犠牲にした運転となるため、固形物回収率低下に伴い、BOD、T−Nなどの汚濁物質も後段側へ流出することとなるため、後段の生物処理設備への負荷が大きくなるなどの問題を有していた。
また、固液分離設備として膜分離装置を採用する場合には、膜分離の前段において、生物処理にて塊状化した繊維分を除去するため、余剰汚泥中にも汚泥の脱水性向上に寄与する繊維分が残留せず、さらに問題が深刻となっていた。
さらに、特許文献2に記載されるように、PET等の廃プラスチックを繊維状に加工して脱水設備に供給した場合、脱水汚泥中に廃プラスチックが残留する。この脱水汚泥を固形燃料として焼却設備に供給する場合は問題とならないが、脱水汚泥を堆肥化する際には堆肥化設備において廃プラスチックは分解できず、堆肥に残留することとなるため問題であった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、脱水助剤等の薬剤の添加量を増加することなく前処理過程における脱水効率の向上が可能であり、さらには廃棄物全体の資源化率を向上させることができる有機性廃水処理方法及び該システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
浄化槽汚泥を含む有機性廃水を前処理した後に生物処理する有機性廃水処理方法において、
前記前処理が、前記有機性廃水を夾雑物除去することなくそのまま脱水する処理であり、該脱水により得られた脱水分離液を前記生物処理することを特徴とする。
また、前記前処理にて、前記有機性廃水の少なくとも一部を分岐させ、該分岐した有機性廃水を夾雑物除去して夾雑物分離液を得るとともに、他の有機性廃水を前記脱水して脱水分離液を得て、前記夾雑物分離液と前記脱水分離液を混合して前記生物処理することを特徴とする。
【0008】
これらの発明によれば、受け入れた有機性廃水の少なくとも一部若しくは全量を、夾雑物除去することなく脱水しているため、該夾雑物中に含まれる繊維分を利用して脱水性が向上するため、高効率で低含水率、高固形物回収率となる脱水を可能とする。延いては、有機性廃水を燃料化して焼却設備に投入することが可能であるため、廃棄物の資源化が達成できる。また、この脱水性向上効果により、脱水助剤の使用量を低減でき、コスト低減が可能となる。さらに、脱水設備内の脱水面での汚泥の剥離性が良くなるため、目詰まりによるトラブルが防止できるとともに、洗浄水量の大幅低減を図ることができる。また、洗浄水量の低減により、後段の生物処理、固液分離、高度処理における設備のコンパクト化を図ることができる。さらにまた、夾雑物除去と脱水を一元化することができ、機器点数の低減を図ることができる。
【0009】
また、浄化槽汚泥を主体とする浄化槽汚泥系有機性廃水とともに、し尿を主体とするし尿系有機性廃水を処理する有機性廃水処理方法において、
前記前処理にて、前記し尿系有機性廃水を夾雑物除去して夾雑物分離液を得るとともに、前記浄化槽汚泥系有機性廃水を前記脱水して脱水分離液を得て、前記夾雑物分離液と前記脱水分離液を混合して前記生物処理することを特徴とする。
本発明は、し尿に比べ、固形性汚濁物質を多量に含むとともに性状変動が激しい浄化槽汚泥のみを脱水して固液分離することで、効率的に生物処理への流入負荷の低減、不可安定化を図ることができる。また、し尿中の夾雑物は、粗大であるとともにビニール等配管の目詰まり原因となる物質を含んでいる。従って、比較的粒度が細かく、均質である浄化槽汚泥中の夾雑物のみを利用することで、安定した汚泥脱水が可能となる。
【0010】
また、前記脱水の前段にて、前記有機性廃水を破砕することを特徴とする。これにより、脱水設備の目詰まり等の不具合を防止できる。
さらに、前記有機性廃水に脱水助剤を添加し濃縮して濃縮分離液と濃縮汚泥を得た後、該濃縮汚泥を前記脱水し、前記脱水分離液と前記濃縮分離液を前記生物処理することを特徴とする。
このように有機性廃水を濃縮した後に脱水することにより、脱水に流入する水量を低減することができるので、脱水設備のコンパクト化及び低動力化、さらには脱水助剤使用量の低減を図ることが可能となる。
さらにまた、前記脱水の上流側で、前記有機性廃水に繊維状物質を供給することを特徴とする。
前記繊維状物質とは、例えば、古紙、プラスチック破砕物等が挙げられる。これにより、繊維分による脱水性の向上を図ることができ、高価である無機凝集剤や高分子凝集剤等の脱水助剤の使用量を低減でき、低コスト化が図れる。
【0011】
また、系内の臭気ガスを少なくともアルカリ洗浄により脱臭処理する有機性廃水処理方法であって、前記アルカリ洗浄により生じたアルカリ洗浄廃液を、前記有機性廃水の受入槽に供給することを特徴とする。これにより、前記浄化槽汚泥中に含有される生活排水由来の油脂成分が鹸化反応により分散され、ポンプの詰まりや配管の閉塞を防止することが可能となる。
さらに、系内の臭気ガスを少なくとも酸洗浄により脱臭処理する有機性廃水の処理方法であって、前記酸洗浄により生じた酸洗浄廃液を、前記脱水の前段にて前記有機性廃水に供給することを特徴とする。これは、前記脱水される汚泥のpHが酸性側に移行することにより凝集性が向上するため、脱水における脱水効率が向上し、また脱水助剤の供給量を大幅に低減することができる。
【0012】
また、システムの発明として、浄化槽汚泥を含む有機性廃水を前処理する前処理設備と、該前処理した処理液を生物処理する生物処理設備と、を備えた有機性廃水処理システムにおいて、
前記前処理設備が、前記有機性廃水を夾雑物除去することなくそのまま脱水する脱水設備であることを特徴とする。
また、前記前処理設備が、前記脱水設備と、該脱水設備に並行に設けられた夾雑物除去設備からなり、前記有機性廃水の少なくとも一部を分岐して前記脱水設備に導入するとともに、該分岐した他の有機性廃水を前記夾雑物除去設備に導入し、前記脱水設備からの脱水分離液と前記夾雑物除去設備からの夾雑物分離液を前記生物処理設備に導入することを特徴とする。
【0013】
また、浄化槽汚泥を主体とする浄化槽汚泥系有機性廃水を受入れる浄化槽汚泥受入槽と、し尿を主体とするし尿系有機性廃水を受入れるし尿受入槽と、を備え、
前記前処理設備が、前記脱水設備と、該脱水設備に並行に設けられた夾雑物除去設備からなり、
前記浄化槽汚泥受入槽からの有機性廃水を前記脱水設備に導入するとともに、前記し尿受入槽からの有機性廃水を前記夾雑物除去設備に導入し、前記脱水設備からの脱水分離液と前記夾雑物除去設備からの夾雑物分離液を前記生物処理設備に導入するようにしたことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記脱水設備の上流側に、前記有機性廃水を破砕する破砕手段を設けたことを特徴とする。
さらにまた、前記前処理設備が、前記脱水設備の上流側に、脱水助剤を供給する脱水助剤供給手段と、該脱水助剤を供給した有機性廃水を濃縮する濃縮設備と、を備えたことを特徴とする。
また、前記脱水設備の上流側に、前記有機性廃水に繊維状物質を供給する繊維状物質供給手段を設けたことを特徴とする。
さらに、系内の臭気ガスを脱臭処理する脱臭設備を備え、該脱臭設備が酸洗浄手段とアルカリ洗浄手段を有し、前記アルカリ洗浄手段からのアルカリ洗浄廃液を前記有機性廃水の受入槽に供給し、前記酸洗浄塔からの酸洗浄廃液を前記脱水設備の上流側に供給するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のごとく本発明によれば、系内に存在する汚泥脱水性向上効果のある物質を有効に活用することで、低含水率、高固形物回収率脱水を高効率で以って実現できる。また、外部からの脱水助剤の添加量低減が可能であるとともに、低動力での脱水が可能となる。
さらに、脱臭設備における廃液を有効利用することにより、より一層の脱水効率向上が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明にて処理対象とされる有機性廃水は、浄化槽汚泥、し尿、若しくはこれらが混合した廃液等の有機性廃水とする。尚、前記浄化槽汚泥とは、合併処理浄化槽、コミュニティプラント、農業集落排水施設、漁業集落排水施設、単独処理浄化槽等から収集された汚泥を言い、し尿とは、汲み取り式便所等から回収された生し尿をいう。
図1〜5は本発明の実施例1〜5に係る有機性廃水処理システムの全体ブロック図である。
【実施例1】
【0017】
図1に示した実施例1に係る有機性廃水処理システムは、浄化槽汚泥を含む有機性廃水を処理する構成となっているが、し尿等の他の有機性廃水が混合していても良い。同図に示すように、この有機性廃水処理システムは、ライン上流から下流に向かって、有機性廃水20の少なくとも一部が導入される夾雑物除去設備1と、これと並列に設けられ、他の有機性廃水20が導入される脱水設備2と、前記夾雑物除去設備1にて夾雑物を除去された夾雑物分離液と、前記脱水設備2にて分離された脱水分離液21とが混合して導入される生物処理設備3と、該生物処理設備3からの生物処理液が導入される固液分離設備4と、該固液分離設備4にて分離された固液分離液が導入される高度処理設備5と、前記脱水設備2から排出される脱水汚泥22が導入される汚泥処理設備6と、を備えるとともに、前記固液分離設備4からの余剰汚泥23及び/又は前記高度処理設備5からの凝集汚泥24を前記脱水設備2の上流側に返送する返送ラインと、を備えている。
【0018】
前記夾雑物除去設備1は、有機性廃水20から夾雑物を除去する設備であり、スクリーン等が挙げられる。本実施例では、この夾雑物除去設備1を設けない構成としても良く、この場合、前記有機性廃水20の全量を前記脱水設備2に流入させる。
前記脱水設備2は、有機性廃水20を所定の含水率となるまで脱水する設備であり、例えば、遠心分離装置やベルトプレス、スクリュープレス等のろ布式脱水装置等が挙げられる。該脱水設備2では、無機凝集剤、高分子凝集剤等の脱水助剤を添加した後に脱水することが好ましい。
また、前記脱水設備2の入口側に、破砕手段を設けることが好ましく、これにより有機性廃水中の大径の夾雑物を小粒径化できるため、該脱水設備2の目詰まり等の不具合を防止できる。
【0019】
前記生物処理設備3は、微生物の分解作用により処理液中の有機物を分解する設備であり、生物学的脱窒素処理設備、生物膜処理設備、曝気処理設備、嫌気性発酵設備等を一又は適宜組み合わせて用いることができる。
前記固液分離設備4は、生物処理液を固液分離液と固液分離汚泥23とに分離する装置であり、重力沈降方式、遠心分離方式、、膜分離方式、凝集分離方式、浮上分離方式等を用いることができる。
前記高度処理装置5としては凝集分離装置、活性炭吸着塔等が挙げられ、前記固液分離後の処理液が放流水準に満たない場合に必要に応じて設置すると良い。
前記汚泥処理設備6は、前記脱水設備2から排出される脱水汚泥22の乾燥、焼却、堆肥化等を行なう設備である。尚、脱水汚泥22は、所定の含水率以下まで脱水したら焼却炉等の燃料として用いることもできる。
【0020】
以上の構成を有するシステムについて、その作用を処理方法とともに説明する。
まず、システム内に受け入れた有機性廃水20の少なくとも一部を分岐させ、該分岐した有機性廃水20を夾雑物除去設備1に導入し、廃水中の夾雑物を除去する。また、前記分岐した他の有機性廃水20は、脱水設備2に導入し、必要に応じて脱水助剤を添加した後、該脱水設備2にて所定の含水率となるまで脱水する。このとき、前記分岐させる有機性廃水20の量は、該有機性廃水20の性状に応じて決定すると良い。例えば、浄化槽汚泥を主体とした有機性廃水であって、し尿の含有率が高い場合には前記夾雑物除去設備1に導入する廃水の量を多くし、浄化槽汚泥を主体とする場合にはこの分岐量を少なくする。さらに、前記夾雑物除去設備1からの夾雑物分離液と前記脱水設備2からの脱水分離液を混合して生物処理設備3に導入して生物処理して主にBOD、T−N(全窒素)などを処理し、該生物処理後の処理液を固液分離設備4にて固液分離した後、固液分離液を高度処理設備5にて凝集沈殿処理、活性汚泥処理等の高度処理を施してT−P(リン)、COD、色度成分を除去した後に処理水は放流する。
また、前記固液分離設備4にて分離して得られた余剰汚泥23、前記高度処理設備5にて凝集沈殿処理して得られた凝集汚泥24は、前記脱水設備2に返送して、有機性廃水20とともに脱水処理する。
また、前記脱水設備2から排出される脱水汚泥22は、汚泥処理設備6にて燃料化、焼却、乾燥、堆肥化、埋立て等の処理がなされる。
【0021】
本実施例1によれば、受け入れた有機性廃水20の少なくとも一部若しくは全量を、夾雑物除去することなく脱水しているため、夾雑物が残存した状態で有機性廃水が脱水設備に導入することにより、該夾雑物中に含まれる繊維分を利用して脱水性が向上するため、高効率で低含水率、高固形物回収率となる脱水を可能とする。延いては、有機性廃水を燃料化して焼却設備に投入することが可能であるため、廃棄物の資源化が達成できる。
また、この脱水性向上効果により、脱水助剤の使用量を低減でき、コスト低減が可能となる。
さらに、脱水設備内の脱水面での汚泥の剥離性が良くなるため、目詰まりによるトラブルが防止できるとともに、洗浄水量の大幅低減を図ることができる。特に、ろ布式の脱水設備を採用する場合にはこの効果が顕著となる。そして、洗浄水量の低減により、後段の生物処理設備3、固液分離設備4、高度処理設備5のコンパクト化を図ることができる。
さらにまた、夾雑物除去設備1と脱水設備2を一元化することができ、機器点数の低減を図ることができる。
また、含有される繊維分が少ない余剰汚泥や凝集汚泥を脱水するに当たり、前処理工程の前記脱水設備2に導入して有機性廃水20とともに脱水処理することにより、夾雑物中の繊維分を活用でき、系内汚泥全体に対し、汚泥の脱水性向上を図ることができる。
【実施例2】
【0022】
図2に本実施例2に係る有機性廃水処理システムを示す。以下、本実施例2及び実施例5において、前記実施例5と略同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2に係る有機性廃水処理システムでは、浄化槽汚泥を含む有機性廃水を処理対象とし、し尿等の他の有機性廃水が混合していても良い。
本実施例2に係るシステムでは、前記実施例1の構成に加えて、有機性廃水20に脱水助剤を供給する脱水助剤供給手段7と、該脱水助剤を供給した廃水を濃縮汚泥25と濃縮分離液26に分離する汚泥濃縮設備8と、を備えている。さらに、前記濃縮汚泥25は脱水設備2に導入し、前記濃縮分離液26は、前記脱水設備2からの脱水分離液21とともに生物処理設備3に導入するようにしている。
前記脱水助剤供給手段7では、有機性廃水20に無機凝集剤、高分子凝集剤等の脱水助剤を供給する手段である。
前記汚泥濃縮設備8としては、スクリーン等が用いられる。
本実施例によれば、汚泥濃縮設備8を備えることにより、脱水設備2に流入する水量を低減することができるので、脱水設備2のコンパクト化及び低動力化、さらには脱水助剤使用量の低減を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0023】
図3に本実施例3に係る有機性廃水処理システムを示す。実施例3に係る有機性廃水処理システムでは、浄化槽汚泥を含む有機性廃水を処理対象とし、し尿等の他の有機性廃水が混合していても良い。
本実施例3に係るシステムでは、前記実施例2の構成に加えて、汚泥濃縮設備8にて分離された濃縮汚泥25に対して、繊維状物質を外部添加する繊維状物質供給手段9を設けた構成となっている。前記繊維状物質とは、例えば、古紙、プラスチック破砕物等が挙げられる。前記濃縮汚泥25と前記繊維状物質を混合して前記脱水設備2にて脱水することにより、さらに繊維分による脱水性の向上を図ることができ、高価である無機凝集剤や高分子凝集剤等の脱水助剤の使用量を低減でき、低コスト化が図れる。
【実施例4】
【0024】
図4に本実施例4に係る有機性廃水処理システムを示す。実施例4に係る有機性廃水処理システムでは、し尿を主体とするし尿系有機性廃水20aし尿系廃水(以下、し尿と呼称する)と、浄化槽汚泥を主体とする浄化槽汚泥系有機性廃水20b(以下、浄化槽汚泥と呼称する)を処理対象とする。
本実施例4に係るシステムでは、前記実施例1の構成において、前記夾雑物除去設備1にはし尿20aを導入し、前記脱水設備2には浄化槽汚泥20bを導入するようにし、夫々性状に応じて導入位置を異ならせた構成としている。また、し尿20aの供給ラインと、浄化槽汚泥20bの供給ラインとの間にこれらをバイパスするライン27を設け、該バイパスライン27上にバルブ28を設ける構成としても良い。かかる構成においては、前記夾雑物除去設備1若しくは前記脱水設備2の何れかに不具合が生じ、停止せざるを得ない場合には、前記バルブ28を開閉制御して、稼動する設備側へ廃水を流入させるようにする。また、浄化槽汚泥20bが、し尿等の夾雑物を多く含有する廃水である場合には、前記バルブ28を制御して夾雑物除去設備1側へ廃水を流入させるようにし、ポンプの詰まりを防止すると良い。
【0025】
このように、し尿に比べ、固形性汚濁物質を多量に含むとともに、性状変動が激しい浄化槽汚泥のみを脱水設備2にて固液分離することで、効率的に生物処理設備3への流入付加の低減、不可安定化を図ることができる。
また、し尿中の夾雑物は、粗大であるとともにビニール等配管の目詰まり原因となる物質を含んでいる。従って、比較的粒度が細かく、均質である浄化槽汚泥中の夾雑物のみを利用することで、安定した汚泥脱水が可能となる。
尚、本実施例において、前記夾雑物除去設備1を、例えば4mm以上の目開きを有する粗目スクリーンとし、夾雑物除去を行った後に浄化槽汚泥系有機性廃水20bと混合し、脱水設備2にて脱水を行うようにしても良い。
【0026】
さらに、実施例4の具体的構成について図5に示す。同図に示されるように、し尿受入槽10に貯留されたし尿20aは、圧送ポンプ11により夾雑物除去設備1に送給され、ここで廃水中の夾雑物29aが除去される。該夾雑物29aは、後述する汚泥貯留槽12に送給される。前記夾雑物29aが除去された分離液29bは、一旦分離液貯留槽12に貯められる。
一方、浄化槽汚泥受入槽13に貯留された浄化槽汚泥20bは、圧送ポンプ14により汚泥貯留槽15に送給され、ここで前記夾雑物29a、後段の生物処理後の余剰汚泥23、凝集処理汚泥24などと混合された後、圧送ポンプ16にて破砕機17に送られる。これらの汚泥は該破砕機16にて破砕された後、脱水助剤供給手段18にて脱水助剤を添加された後、脱水設備2に導入され、ここで所定含水率まで脱水される。該脱水設備2にて発生した脱水分離液21は、一旦分離液貯留槽19に貯められる。また、前記脱水設備2からの脱水分離汚泥22は、汚泥処理設備6に導入され、燃料化、焼却、乾燥、堆肥化等の処理がなされる。
【0027】
前記分離液貯留槽12及び前記分離液貯留槽19に貯留された分離液は、混合されて生物処理設備3に送られ、生物処理された後に固液分離設備4にて固液分離液と余剰汚泥23とに分離される。前記固液分離液は高度処理設備5にて凝集沈殿処理、活性炭吸着処理等が施された後に放流される。また、前記余剰汚泥23及び前記高度処理設備5からの凝集汚泥24は、前記汚泥貯留槽12に返送される。
【0028】
また、本実施例に係るシステムでは、し尿受入槽10、浄化槽受入槽13、汚泥貯留槽15、生物処理設備3等の各設備から臭気ガス32、33、34が発生する。これらの臭気ガスは、酸洗浄塔30及びアルカリ洗浄塔31を備えた脱臭設備に収集される。前記酸洗浄塔30は、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)等の酸性剤の供給により、アンモニア、トリメチルアミン等の臭気成分を中和して除去する装置である。前記アルカリ洗浄塔31は、水酸化ナトリウム(NaOH)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の供給により、硫化水素、メチルカプタン等の臭気成分を中和して除去する装置である。
前記酸洗浄塔30からの酸洗浄廃液35と、前記アルカリ洗浄塔からのアルカリ洗浄廃液36は夫々別個に回収し、前記アルカリ洗浄廃液36は前記浄化槽受入槽36に供給する。これにより、前記浄化槽汚泥20b中に含有される生活排水由来の油脂成分が鹸化反応により分散され、ポンプの詰まりや配管の閉塞を防止することが可能となる。また、前記酸洗浄廃液35は、前記脱水設備2の上流側、例えば汚泥貯留槽12等に供給する。これは、前記脱水処理される汚泥のpHが酸性側に移行することにより凝集性が向上するため、脱水性が向上し、また脱水助剤の供給量を大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、脱水効率が高く、且つ不純物混入を防止できるシステムであるため、脱水汚泥の燃料化、堆肥化の何れにおいても有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1に係る有機性廃水処理システムの全体ブロック図である。
【図2】本発明の実施例2に係る有機性廃水処理システムの全体ブロック図である。
【図3】本発明の実施例3に係る有機性廃水処理システムの全体ブロック図である。
【図4】本発明の実施例4に係る有機性廃水処理システムの全体ブロック図である。
【図5】図5に示した実施例4の具体的な構成を示す全体ブロック図である。
【図6】従来の有機性廃水処理システムの全体ブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1 夾雑物除去設備
2 脱水設備
3 生物処理設備
4 固液分離設備
5 高度処理設備
6 汚泥処理設備
7 脱水助剤供給手段
8 汚泥濃縮設備
9 繊維状物質供給手段
10 し尿受入槽
13 浄化槽受入槽
15 汚泥貯留槽
17 破砕機
18 脱水助剤供給手段
20 有機性廃水
30 酸洗浄塔
31 アルカリ洗浄塔
35 酸洗浄廃液
36 アルカリ洗浄廃液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽汚泥を含む有機性廃水を前処理した後に生物処理する有機性廃水処理方法において、
前記前処理が、前記有機性廃水を夾雑物除去することなくそのまま脱水する処理であり、該脱水により得られた脱水分離液を前記生物処理することを特徴とする有機性廃水処理方法。
【請求項2】
前記前処理にて、前記有機性廃水の少なくとも一部を分岐させ、該分岐した有機性廃水を夾雑物除去して夾雑物分離液を得るとともに、他の有機性廃水を前記脱水して脱水分離液を得て、前記夾雑物分離液と前記脱水分離液を混合して前記生物処理することを特徴とする請求項1記載の有機性廃水処理方法。
【請求項3】
浄化槽汚泥を主体とする浄化槽汚泥系有機性廃水とともに、し尿を主体とするし尿系有機性廃水を処理する請求項1記載の有機性廃水処理方法において、
前記前処理にて、前記し尿系有機性廃水を夾雑物除去して夾雑物分離液を得るとともに、前記浄化槽汚泥系有機性廃水を前記脱水して脱水分離液を得て、前記夾雑物分離液と前記脱水分離液を混合して前記生物処理することを特徴とする有機性廃水処理方法。
【請求項4】
前記脱水の前段にて、前記有機性廃水を破砕することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の有機性廃水処理方法。
【請求項5】
前記有機性廃水に脱水助剤を添加し濃縮して濃縮分離液と濃縮汚泥を得た後、該濃縮汚泥を前記脱水し、前記脱水分離液と前記濃縮分離液を前記生物処理することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の有機性廃水処理方法。
【請求項6】
前記脱水の上流側で、前記有機性廃水に繊維状物質を供給することを特徴とする請求請求項1乃至3の何れかに記載の有機性廃水処理方法。
【請求項7】
系内の臭気ガスを少なくともアルカリ洗浄により脱臭処理する請求項1記載の有機性廃水処理方法であって、前記アルカリ洗浄により生じたアルカリ洗浄廃液を、前記有機性廃水の受入槽に供給することを特徴とする有機性廃水処理方法。
【請求項8】
系内の臭気ガスを少なくとも酸洗浄により脱臭処理する請求項1記載の有機性廃水の処理方法であって、前記酸洗浄により生じた酸洗浄廃液を、前記脱水の前段にて前記有機性廃水に供給することを特徴とする有機性廃水処理方法。
【請求項9】
浄化槽汚泥を含む有機性廃水を前処理する前処理設備と、該前処理した処理液を生物処理する生物処理設備と、を備えた有機性廃水処理システムにおいて、
前記前処理設備が、前記有機性廃水を夾雑物除去することなくそのまま脱水する脱水設備であることを特徴とする有機性廃水処理システム。
【請求項10】
前記前処理設備が、前記脱水設備と、該脱水設備に並行に設けられた夾雑物除去設備からなり、前記有機性廃水の少なくとも一部を分岐して前記脱水設備に導入するとともに、該分岐した他の有機性廃水を前記夾雑物除去設備に導入し、前記脱水設備からの脱水分離液と前記夾雑物除去設備からの夾雑物分離液を前記生物処理設備に導入することを特徴とする請求項9記載の有機性廃水処理システム。
【請求項11】
浄化槽汚泥を主体とする浄化槽汚泥系有機性廃水を受入れる浄化槽汚泥受入槽と、し尿を主体とするし尿系有機性廃水を受入れるし尿受入槽と、を備え、
前記前処理設備が、前記脱水設備と、該脱水設備に並行に設けられた夾雑物除去設備からなり、
前記浄化槽汚泥受入槽からの有機性廃水を前記脱水設備に導入するとともに、前記し尿受入槽からの有機性廃水を前記夾雑物除去設備に導入し、前記脱水設備からの脱水分離液と前記夾雑物除去設備からの夾雑物分離液を前記生物処理設備に導入するようにしたことを特徴とする請求項9記載の有機性廃水処理システム。
【請求項12】
前記脱水設備の上流側に、前記有機性廃水を破砕する破砕手段を設けたことを特徴とする請求項9記載の有機性廃水処理システム。
【請求項13】
前記前処理設備が、前記脱水設備の上流側に、脱水助剤を供給する脱水助剤供給手段と、該脱水助剤を供給した有機性廃水を濃縮する濃縮設備と、を備えたことを特徴とする請求項9記載の有機性廃水処理システム。
【請求項14】
前記脱水設備の上流側に、前記有機性廃水に繊維状物質を供給する繊維状物質供給手段を設けたことを特徴とする請求項9記載の有機性廃水処理システム。
【請求項15】
系内の臭気ガスを脱臭処理する脱臭設備を備え、該脱臭設備が酸洗浄手段とアルカリ洗浄手段を有し、前記アルカリ洗浄手段からのアルカリ洗浄廃液を前記有機性廃水の受入槽に供給し、前記酸洗浄塔からの酸洗浄廃液を前記脱水設備の上流側に供給するようにしたことを特徴とする請求項9記載の有機性廃水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−314908(P2006−314908A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139287(P2005−139287)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】