説明

有機溶剤含有ガス処理システム

【課題】より少ないエネルギー使用量で、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を回収し、清浄化された処理液を排出する。
【解決手段】有機溶剤含有ガス処理システム1は、有機溶剤回収部10および排水処理部20を備える。有機溶剤回収部10は、被処理ガス(G1)が導入されることにより処理ガス(G2)を排出し加熱ガス(G3)が導入されることにより脱着ガス(G4)を排出する濃縮装置11と、脱着ガス(G4)の一部を凝縮させて凝縮液(E1)として排出する凝縮器34と、凝縮液(E1)を分液して1次処理液(E2)および分離排水(E3)を排出する分液装置36とから構成される。排水処理部20は、分離排水(E3)が導入されることにより清浄化された2次処理液(E4)を排出し加熱ガス(G6)が導入されることにより脱着ガス(G7)を排出する。加熱ガス(G6)は脱着ガス(G4)の残部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤含有ガス処理システムに関し、特に、有機溶剤を含有するガスから有機溶剤を除去し、清浄化された処理液を排出する有機溶剤含有ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場や研究施設等から排出されるガス(以下、被処理ガスという)は有機溶剤を含有している。有機溶剤には塩素系の有機化合物などが含まれている。被処理ガスを大気中にそのまま排出することはできない。有機溶剤含有ガス処理システムは、被処理ガス中に含まれる有機溶剤を除去し、清浄化された処理液を排出する(たとえば下記の特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−149040号公報
【特許文献2】特開2010−29739号公報
【特許文献3】特開2009−273975号公報
【特許文献4】特開2009−262121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より少ないエネルギー使用量で、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を除去し、清浄化された処理液を排出することが可能な有機溶剤含有ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に基づく有機溶剤含有ガス処理システムは、有機溶剤を回収する有機溶剤回収部と、上記有機溶剤回収部から排出された分離排水を清浄化する排水処理部とを備えた有機溶剤含有ガス処理システムである。
【0006】
上記有機溶剤回収部は、第1吸着素子を含み、上記第1吸着素子に上記有機溶剤を含有する被処理ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記第1吸着素子に吸着させるとともに清浄化された処理ガスを排出する第1吸着部と、上記第1吸着素子に第1加熱ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記第1吸着素子から脱着させるとともに上記有機溶剤を含有する第1脱着ガスを排出する第1脱着部と、を有する濃縮装置と、上記第1脱着部から排出された上記第1脱着ガスの一部が導入され、上記第1脱着ガスの上記一部を凝縮させて凝縮液として排出する凝縮器と、上記凝縮液が導入され、比重差に基づいて上記凝縮液を分液し、分液された上記凝縮液の一方を上記有機溶剤を含有する1次処理液として回収するとともに、分液された上記凝縮液の他方を上記1次処理液に比べて低濃度の上記有機溶剤を含有する上記分離排水として排出する分液装置と、から構成される。
【0007】
上記排水処理部は、第2吸着素子を含み、上記第2吸着素子に上記分離排水が導入されることによって上記有機溶剤を上記第2吸着素子に吸着させるとともに清浄化された2次処理液を排出する第2吸着部と、上記第2吸着素子に第2加熱ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記第2吸着素子から脱着させるとともに上記有機溶剤を含有する第2脱着ガスとして排出する第2脱着部と、から構成され、上記第2加熱ガスは、上記濃縮装置における上記第1脱着部から排出された上記第1脱着ガスの残部を含む。
【0008】
好ましくは、上記第2脱着ガスは、上記濃縮装置における上記第1脱着部から排出された上記第1脱着ガスの上記一部とともに上記凝縮器に導入される。
【0009】
好ましくは、上記排水処理部は、上記第2吸着素子にガスを吹き付けることによって上記第2吸着素子に付着した余剰の排水を吹き飛ばしてこれを除去排水として排出する。
【0010】
好ましくは、上記第1吸着素子は、筒状に形成されるとともに筒軸周りに回転可能に構成され、上記第1吸着素子が上記筒軸周りに回転することによって、上記第1吸着部において上記被処理ガス中の上記有機溶剤を吸着した上記第1吸着素子は連続的に上記第1脱着部に移行する。
【0011】
好ましくは、上記第1吸着素子は、ハニカム構造を有している、好ましくは、上記第2吸着素子は、活性炭、活性炭素繊維、およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より少ないエネルギー使用量で、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を除去し、清浄化された処理液を排出することが可能な有機溶剤含有ガス処理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システムを示すシステム構成図である。
【図2】実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システムに用いられる濃縮装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0015】
図1は、実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1を示すシステム構成図である。図2は、有機溶剤含有ガス処理システム1に用いられる濃縮装置11を示す斜視図である。図1を参照して、有機溶剤含有ガス処理システム1は、有機溶剤回収部10と排水処理部20とを備えている。
【0016】
[有機溶剤回収部10]
有機溶剤回収部10は、濃縮装置11、送風機30、加熱装置32、凝縮器34、および分液装置36から構成される。
【0017】
(濃縮装置11)
図2を参照して、濃縮装置11は、第1吸着素子としての吸着素子13を含んでいる。吸着素子13は、筒状に形成されるとともに、筒軸15周りに矢印A方向に回転可能に構成される。吸着素子13は、活性炭、活性炭素繊維またはゼオライト等のうちいずれかまたは複数を含んでいるとよい。吸着素子13は、ハニカム構造を有しているとよい。
【0018】
濃縮装置11は、第1吸着部としての吸着部12および第1脱着部としての脱着部14を有している。吸着素子13が回転することによって、吸着素子13は吸着部12および脱着部14を連続的に順次通過する。当該通過によって、吸着素子13は吸着部12(吸着状態)および脱着部14(脱着状態)に交互に移行する。当該移行は、バッチ式の濃縮装置などによって実現されてもよい。バッチ式の濃縮装置においては、ダンパーまたはバルブの操作によって吸着素子13が吸着部12(吸着状態)および脱着部14(脱着状態)に順次切り替えられる。
【0019】
図1および図2(主として図1)を参照して、吸着部12は、配管ラインL1を通して各種工場等(図示せず)に接続されている。配管ラインL1の途中には、凝縮器34(詳細は後述する)から延びる配管ラインL8が合流している。吸着部12には、各種工場等から排出された被処理ガス(G1)と凝縮器34から排出された未凝縮ガス(G5)との混合ガスが導入される。配管ラインL8にはバルブV8が設けられている。バルブV8の流量調節によって、吸着部12には被処理ガス(G1)のみが導入されてもよい。
【0020】
吸着部12における吸着素子13は、上記の混合ガスに接触する。混合ガスに含有される有機溶剤は、吸着素子13に吸着される。混合ガスは清浄化され、吸着部12に接続された配管ラインL2から処理ガス(G2)として排出される。
【0021】
吸着部12において有機溶剤を吸着した吸着素子13は、脱着部14に移行する。ここで、送風機30から、不活性ガスまたは水蒸気などが配管ラインL3を通して加熱装置32に供給される。加熱装置32が不活性ガスまたは水蒸気などを加熱することによって、第1加熱ガスとしての加熱ガス(G3)が生成される。脱着部14に移行した吸着素子13には、配管ラインL4を通してこの加熱ガス(G3)が供給される。加熱ガス(G3)の温度は、上記の被処理ガス(G1)と未凝縮ガス(G5)とからなる混合ガスの温度に比べて高い値に設定されるとよい。
【0022】
上記の処理ガス(G2)が通流される配管ラインL2と送風機30とは接続されていてもよい。当該接続によって、清浄化された処理ガス(G2)の一部または全部から加熱ガス(G3)が生成されることができる。
【0023】
脱着部14における吸着素子13は、加熱ガス(G3)に接触する。吸着素子13に吸着していた有機溶剤は、吸着素子13から脱着される。有機溶剤を高濃度に含有する第1脱着ガスとしての脱着ガス(G4)は、脱着部14から配管ラインL5に排出される。
【0024】
配管ラインL5の下流側は、配管ラインL6および配管ラインL7に分岐している。脱着ガス(G4)の一部は、配管ラインL6を通して凝縮器34に導入される。脱着ガス(G4)の残部は、配管ラインL7を通して排水処理部20(詳細は後述する)における加熱装置38に導入される。凝縮器34および加熱装置38への脱着ガス(G4)の導入量は、バルブV6およびバルブV7の流量調節によってそれぞれ制御される。
【0025】
(凝縮器34・分液装置36)
配管ラインL6の途中には、排水処理部20(詳細は後述する)から延びる配管ラインL22が合流している。凝縮器34には、脱着部14から配管ラインL6に排出された脱着ガス(G4)の一部と、排水処理部20から配管ラインL22に排出された第2脱着ガスとしての脱着ガス(G7)との混合ガスが導入される。配管ラインL22にはバルブV22が設けられている。バルブV22の流量調節によって、凝縮器34には脱着部14からの脱着ガス(G4)の一部のみが導入されることもできる。
【0026】
凝縮器34は、冷却水などを用いて上記の混合ガスを凝縮させる。上記の混合ガスは、凝縮液(E1)と未凝縮ガス(G5)とに分離される。未凝縮ガス(G5)は、凝縮器34から配管ラインL8に排出される。未凝縮ガス(G5)は、配管ラインL1を流れる被処理ガス(G1)と混合され、吸着部12へと導入されるとよい。未凝縮ガス(G5)の温度は凝縮器34の冷却によって低下している。被処理ガス(G1)が未凝縮ガス(G5)とともに吸着部12へ導入されることによって、吸着部12における吸着効率が向上する。
【0027】
凝縮液(E1)は、凝縮器34から配管ラインL9に排出され、分液装置36に導入される。分液装置36への凝縮液(E1)の導入量は、配管ラインL9に設けられたバルブV9によって調節されることができる。分液装置36に導入された凝縮液(E1)は、比重差に基づいて、有機溶剤を高濃度に含有する1次処理液(E2)と有機溶剤をわずかに含有する分離排水(E3)とに分液される。1次処理液(E2)は、分液装置36から配管ラインL10に排出された後、回収タンクなど(図示せず)によって回収される。分離排水(E3)は、分液装置36から配管ラインL11に排出される。
【0028】
[排水処理部20]
分離排水(E3)の有機溶剤の含有量は、上記の分液によって大幅に減少している。排水処理部20は、分離排水(E3)をさらに清浄化する。
【0029】
排水処理部20は、処理槽21と、処理槽22と、加熱装置38とを有している。処理槽21および処理槽22は、第2吸着素子としての吸着素子23,24をそれぞれ収容している。吸着素子23,24は、有機溶剤を含有する液体に接触することによって、当該液体中の有機溶剤を吸着する。吸着素子23,24は、高温のガスに接触することによって、吸着した有機溶剤を脱着する。
【0030】
吸着素子23,24は、活性炭、活性炭素繊維、またはゼオライト等のうちいずれかまたは複数を含んでいるとよい。好適には、吸着素子23,24としては、粒状、粒体状、またはハニカム状などの活性炭またはゼオライトが利用されるが、より好適には、活性炭素繊維が利用される。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、液体との接触効率が高く、特に液体中の有機溶剤に対する吸着速度が速くなり、他の吸着素子に比べて極めて高い吸着効率を実現できる。
【0031】
吸着素子23,24として利用可能な活性炭素繊維の物性は、特に限定されるものではないが、BET比表面積が700〜2000m/g、細孔容積が0.4〜0.9cm/g、平均細孔径が17〜18Åのものが好ましい。これは、BET比表面積が700m/g未満、細孔容積が0.4m/g未満、平均細孔径が17Å未満のものでは、有機溶剤の吸着量が低くなるためであり、またBET比表面積が2000m/gを超え、細孔容積が0.9m/gを超え、平均細孔径が18Åを超えるものでは、細孔径が大きくなることで分子量の小さな物質等の吸着能力が低下したり、強度が弱くなったり、素材のコストが高くなって経済的に不利になったりするためである。
【0032】
有機溶剤含有ガス処理システム1においては、分離排水(E3)を通流する配管ラインL11の下流側が、配管ラインL13および配管ラインL12に分岐している。配管ラインL13は処理槽21に接続される。処理槽21には、配管ラインL13に対応するように配管ラインL15が設けられる。配管ラインL12は処理槽22に接続される。処理槽22には、配管ラインL12に対応するように配管ラインL14が設けられる。配管ラインL15および配管ラインL14は、合流して配管ラインL16に接続される。
【0033】
加熱装置38には、配管ラインL17が接続される。配管ラインL17の途中には、配管ラインL23が合流しているとよい。配管ラインL17の下流側は、配管ラインL19および配管ラインL18に分岐している。配管ラインL19は処理槽21に接続される。処理槽21には、配管ラインL19に対応するように配管ラインL21が設けられる。配管ラインL18は処理槽22に接続される。処理槽22には、配管ラインL18に対応するように配管ラインL20が設けられる。配管ラインL21および配管ラインL20は、合流して配管ラインL22に接続される。配管ラインL22は、途中で配管ラインL24に分岐しているとよい。
【0034】
配管ラインL12,L13,L14,L15,L17,L18,L19,L20,L21,L22,L23,L24には、バルブV12,V13,V14,V15,V17,V18,V19,V20,V21,V22,V23,V24がそれぞれ設けられる。
【0035】
処理槽21および処理槽22は、バルブV12〜V15およびバルブV18〜V21の開閉操作によって、交互に吸着部(吸着状態)および脱着部(脱着状態)として機能する。処理槽21が吸着部として機能している場合には、処理槽22は脱着部として機能する。処理槽21が脱着部として機能している場合には、処理槽22は吸着部として機能する。排水処理部20においては、バルブV12〜V15およびバルブV18〜V21の開閉操作によって、吸着部および脱着部が経時的に交互に切り替わるように構成されている。
【0036】
以下具体的に説明する。処理槽21が吸着部として機能し、処理槽22が脱着部として機能している場合、配管ラインL11を流れる分離排水(E3)は、配管ラインL13を通して処理槽21にのみ導入される。吸着素子23は有機溶剤を含有する分離排水(E3)に接触する(図中実線で示す矢印参照)。分離排水(E3)中の有機溶剤は吸着素子23に吸着される。分離排水(E3)は清浄化され、配管ラインL15から配管ラインL16を通して2次処理液(E4)として排出される。
【0037】
一方、加熱装置38は、濃縮装置11からの脱着ガス(G4)の残部を加熱することによって、配管ラインL17に第2加熱ガスとしての加熱ガス(G6)を排出する。加熱ガス(G6)は、配管ラインL18を通して処理槽22にのみ導入される。吸着素子24は、加熱ガス(G6)に接触する(図中実線で示す矢印参照)。吸着素子24に吸着していた有機溶剤は、吸着素子24から脱着される。有機溶剤を含有する第2脱着ガスとしての脱着ガス(G7)は、処理槽22から配管ラインL20を通して配管ラインL22に排出される。
【0038】
処理槽21が脱着部として機能し、処理槽22が吸着部として機能する場合には、配管ラインL11を流れる分離排水(E3)は、配管ラインL12を通して処理槽22にのみ導入される。吸着素子24は有機溶剤を含有する分離排水(E3)に接触する(図中点線で示す矢印参照)。分離排水(E3)中の有機溶剤は吸着素子24に吸着される。分離排水(E3)は清浄化され、配管ラインL14から配管ラインL16を通して2次処理液(E4)として排出される。
【0039】
一方、加熱装置38は、濃縮装置11からの脱着ガス(G4)の残部を加熱することによって、配管ラインL17に第2加熱ガスとしての加熱ガス(G6)を排出する。加熱ガス(G6)は、配管ラインL19を通して処理槽21にのみ導入される。吸着素子23は、加熱ガス(G6)に接触する(図中点線で示す矢印参照)。吸着素子23に吸着していた有機溶剤は、吸着素子23から脱着される。有機溶剤を含有する第2脱着ガスとしての脱着ガス(G7)は、処理槽21から配管ラインL21を通して配管ラインL22に排出される。
【0040】
上記のようにして排出された2次処理液(E4)の有機溶剤の含有量は、排水処理部20の清浄化によって分離排水(E3)の有機溶剤の含有量に比べてさらに大幅に低下している。2次処理液(E4)は、通常の下水として処理されることが可能となっている。
【0041】
上記のようにして排水処理部20から排出された脱着ガス(G7)を通流する配管ラインL22は、配管ラインL6に接続されているとよい。脱着ガス(G7)は、濃縮装置11における脱着部14から排出された脱着ガス(G4)の一部とともに、凝縮器34において冷却および凝縮されることができる。
【0042】
処理槽21が吸着部から脱着部に切り替わるまでの間(または処理槽22が吸着部から脱着部に切り替わるまでの間)に、脱水処理(パージ処理)が実施されてもよい。処理槽21が吸着部から脱着部に切り替わる際、バルブV17,V15,V13,V22が閉塞される。バルブV23,V19,V21,V24が開放される。配管ラインL23および配管ラインL19を通して、処理槽21に空気などのガス(G8)が導入される。吸着素子23にガス(G8)が吹きつけられる。吸着素子23の表面に付着した余剰の水分は吹き飛ばされ、除去排水(E5)として処理槽21から排出される。
【0043】
除去排水(E5)は、配管ラインL21を通して配管ラインL24に排出される。除去排水(E5)を通流する配管ラインL24は、配管ラインL11に接続されているとよい。除去排水(E5)は、分液装置36から排出された分離排水(E3)とともに、再び排水処理部20において清浄化されることが可能となる。
【0044】
(作用・効果)
有機溶剤含有ガス処理システム1は、吸着素子22,23の脱着処理のために、濃縮装置11(脱着部14)から排出された脱着ガス(G4)の残部を効果的に活用している。脱着ガス(G4)は、脱着部14における脱着作用によって高温となっている。高温の脱着ガス(G4)を活用することによって、吸着素子22,23の脱着処理のために必要なエネルギーは少なくてすむ。
【0045】
加熱装置38は、脱着ガス(G4)を所望の温度に達するまで加熱する。脱着ガス(G4)が脱着部14から排出された時点で所望の温度に達している場合には、加熱装置38を設けない(または加熱装置38を駆動させない)ことも可能である。
【0046】
有機溶剤含有ガス処理システム1によれば、有機溶剤回収部10のバックアップ装置として排水処理部20が機能する。排水処理部20から排出される2次処理液(E4)は、ほとんど有機溶剤を含有しておらず、通常の下水として処理されることが可能となっている。
【0047】
有機溶剤回収部10および排水処理部20において吸着処理および脱着処理が交互に連続的に繰り返される。有機溶剤含有ガス処理システム1によれば、長期にわたってシステムを停止させることなく被処理ガス(G1)の清浄化を連続的に行なうことができる。
【0048】
[実施例]
図1を参照して、有機溶剤含有ガス処理システム1を使用して行なった性能試験およびその結果について説明する。
【0049】
当該試験において用いた被処理ガス(G1)としては、水分およびフェノール(Phenol)系の有機溶剤を含む。被処理ガス(G1)の水成分については、湿度(RH)が50%、流量が58.3kg/hrである。被処理ガス(G1)の有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が100ppm、流量が2kg/hrである。
【0050】
被処理ガス(G1)とともに吸着部12に導入される未凝縮ガス(G5)の水成分については、流量が67.0kg/hrである。未凝縮ガス(G5)の有機溶剤(フェノール)成分については、濃度40ppm、流量が0.1kg/hrである。
【0051】
被処理ガス(G1)と未凝縮ガス(G5)とが混合されることによって得られる混合ガスの各成分を測定したところ、水成分については湿度が52%、流量が59.3kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については濃度が95ppm、流量が2.1kg/hrである。
【0052】
この混合ガスは濃縮装置11の吸着部12に導入される。清浄化された処理ガス(G2)は吸着部12から排出される。処理ガス(G2)の各成分を測定したところ、水成分については、湿度が56.0kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が6ppm、流量が0.1kg/hrである。処理ガス(G2)は十分に清浄化されていることがわかる。
【0053】
有機溶剤を吸着した脱着部14における吸着素子13に対して、加熱ガス(G3)が導入される。脱着部14から脱着ガス(G4)が排出される。この脱着ガス(G4)の一部とともに、排水処理部20からの脱着ガス(G7)が凝縮器34に導入される。脱着ガス(G7)の各成分を測定したところ、水成分については流量12.2kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が1500ppm、流量が0.29kg/hrである。
【0054】
脱着ガス(G4)の一部と脱着ガス(G7)とは混合されて混合ガスを形成する。この混合ガスの各成分を測定したところ、水成分については、流量が89.5kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が1000ppm、流量が2.0kg/hrである。この混合ガスは凝縮器34に導入される。
【0055】
凝縮器34において上記の混合ガスは冷却される。凝縮器34からは、冷却によっては凝縮しなかった未凝縮ガス(G5)が排出される。上述のとおり、未凝縮ガス(G5)の水成分については、流量が67.0kg/hrである。未凝縮ガス(G5)の有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が40ppm、流量が0.1kg/hrである。未凝縮ガス(G5)は、被処理ガス(G1)とともに吸着部12に導入される。
【0056】
凝縮器34の冷却によって得られた凝縮液(E1)の各成分を測定したところ、水成分については流量が4.0kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については流量が1.9kg/hrである。
【0057】
凝縮液(E1)は、分液装置36によって分液される。分液によって得られる1次処理液(E2)の各成分を測定したところ、水成分についてはほとんど含まれておらず(流量が0.05kg/hr)、有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が1.68kg/hrである。有機溶剤が、1次処理液(E2)として適切に回収可能なことがわかる。
【0058】
分液によって得られる分離排水(E3)の各成分を測定したところ、水成分については流量が4kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については濃度が10000mg/L、流量が0.04kg/hrである。分液装置36の分液によっても、分離排水(E3)には有機溶剤が微量に含まれていることがわかる。
【0059】
分離排水(E3)は、排水処理部20の吸着部(処理槽21または処理槽22)に導入される。当該吸着部における吸着によって、分離排水(E3)は清浄化されて2次処理液(E4)として排出される。2次処理液(E4)の各成分を測定したところ、水成分については流量が3.0kg/hr、有機溶剤(フェノール)成分については、濃度が0.5mg/L、流量が1.5mg/hrである。排水処理部20の清浄化によって、2次処理液(E4)としては、通常の下水として処理されることが可能となっていることがわかる。
【0060】
上述のとおり、加熱装置38による脱着処理によって排水処理部20から排出される脱着ガス(G7)の各成分は、水成分については、流量が12.2kg/hr、有機溶剤成分については、濃度が1500ppm、流量が0.29kg/hrである。加熱装置38によって、吸着素子23,24に対して適切に脱着処理が実施されていることがわかる。
【0061】
また、濃縮装置11から排出された高温の脱着ガス(G4)を排水処理部20の脱着処理に活用しない場合には、加熱ガスの加温に水蒸気を年間8700hr稼動した場合の水蒸気の使用量は約31t/年であるのに対して、濃縮装置11から排出された高温の脱着ガス(G4)を排水処理部20の脱着処理に活用した場合には、同条件下において、水蒸気の使用量は約2t/年である。これにより、高温の脱着ガス(G4)を活用することによって、吸着素子22,23の脱着処理のために必要なエネルギーが少なくてすむことが確認できた。
【0062】
以上、本発明に基づいた実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 有機溶剤含有ガス処理システム、10 有機溶剤回収部、11 濃縮装置、12 吸着部、13,23,24 吸着素子、14 脱着部、15 筒軸、20 排水処理部、21 処理槽、22 処理槽、30 送風機、32,38 加熱装置、34 凝縮器、36 分液装置、A 矢印、L1〜L24 配管ライン、V6〜V9,V12〜V15,V17〜V24 バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を回収する有機溶剤回収部と、前記有機溶剤回収部から排出された分離排水を清浄化する排水処理部とを備えた有機溶剤含有ガス処理システムであって、
前記有機溶剤回収部は、
第1吸着素子を含み、前記第1吸着素子に前記有機溶剤を含有する被処理ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記第1吸着素子に吸着させるとともに清浄化された処理ガスを排出する第1吸着部と、前記第1吸着素子に第1加熱ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記第1吸着素子から脱着させるとともに前記有機溶剤を含有する第1脱着ガスを排出する第1脱着部と、を有する濃縮装置と、
前記第1脱着部から排出された前記第1脱着ガスの一部が導入され、前記第1脱着ガスの前記一部を凝縮させて凝縮液として排出する凝縮器と、
前記凝縮液が導入され、比重差に基づいて前記凝縮液を分液し、分液された前記凝縮液の一方を前記有機溶剤を含有する1次処理液として回収するとともに、分液された前記凝縮液の他方を前記1次処理液に比べて低濃度の前記有機溶剤を含有する前記分離排水として排出する分液装置と、から構成され、
前記排水処理部は、
第2吸着素子を含み、前記第2吸着素子に前記分離排水が導入されることによって前記有機溶剤を前記第2吸着素子に吸着させるとともに清浄化された2次処理液を排出する第2吸着部と、前記第2吸着素子に第2加熱ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記第2吸着素子から脱着させるとともに前記有機溶剤を含有する第2脱着ガスとして排出する第2脱着部と、から構成され、
前記第2加熱ガスは、前記濃縮装置における前記第1脱着部から排出された前記第1脱着ガスの残部を含む、
有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項2】
前記第2脱着ガスは、前記濃縮装置における前記第1脱着部から排出された前記第1脱着ガスの前記一部とともに前記凝縮器に導入される、
請求項1に記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項3】
前記排水処理部は、前記第2吸着素子にガスを吹き付けることによって前記第2吸着素子に付着した余剰の排水を吹き飛ばしてこれを除去排水として排出する、
請求項1または2に記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項4】
前記第1吸着素子は、筒状に形成されるとともに筒軸周りに回転可能に構成され、
前記第1吸着素子が前記筒軸周りに回転することによって、前記第1吸着部において前記被処理ガス中の前記有機溶剤を吸着した前記第1吸着素子は連続的に前記第1脱着部に移行する、
請求項1から3のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項5】
前記第1吸着素子は、ハニカム構造を有している、
請求項1から4のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項6】
前記第2吸着素子は、活性炭、活性炭素繊維、およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含む、
請求項1から5のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−55822(P2012−55822A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200974(P2010−200974)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】