説明

有機物脱水濃縮装置および有機物脱水濃縮方法

【課題】蒸発器で蒸発される被処理液中に不純物が含まれている場合でも、分離膜に不純物が付着・堆積するのを防止することができ、さらに、不純物の蓄積、変質、高分子化を抑えることができ、これらによって脱水濃縮性能を良好に維持することのできる有機物脱水濃縮装置および有機物脱水濃縮方法を提供する。
【解決手段】水溶性有機物と水を含む被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器2と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜3を有してなる膜分離装置4とを備えて構成される有機物脱水濃縮装置1において、蒸発器2から膜分離装置4に向けて送り出される被処理液蒸気の一部を凝縮して凝縮液を生成する被処理液蒸気凝縮器23と、蒸発器2の内部における被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられ、被処理液蒸気が潜り抜けて通過できるように、被処理液蒸気凝縮器23からの凝縮液を滞留させる各バブルキャップトレイ15,16とを備え、好ましくは蒸発器2底部に滞留物排出用の流量調整弁10を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器と分離膜とを用いて、水溶性有機物と水とを含む被処理液を脱水・濃縮する有機物脱水濃縮装置および有機物脱水濃縮方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性有機物と水とを含む被処理液を脱水・濃縮する装置として、蒸留装置が広く用いられている。しかし、水溶性有機物は、水と共沸混合物を作る物が多い。例えば、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどである。これらの共沸混合物の蒸留には、第三成分を添加した抽出蒸留が適用されるが、装置が増え、操作が複雑であり、分離に要するエネルギも増加するという欠点がある。このような欠点を解決し得るものとして、例えば特許文献1にて提案されているような分離膜を用いた脱水濃縮方法がある。
【0003】
【特許文献1】特許第3764894号公報
【0004】
特許文献1に係る脱水濃縮方法の実現に供する有機物脱水濃縮装置においては、水溶性有機物と水とを含む被処理液を操作圧50〜150kPaの蒸留塔で蒸留し、該蒸留塔の塔頂部または濃縮段から取り出された留分を凝縮して得られる凝縮液を、蒸発器に供給・加熱して前記蒸留塔の操作圧力より高い圧力の蒸気とし、この高圧の蒸気を分離膜に供給し、水蒸気を選択的に透過させることによって脱水して高濃縮の水溶性有機物を取得している。
【0005】
ところで、水溶性有機物と水とを含む被処理液に不純物が混入した場合、蒸発器内に不純物が蓄積するとともに、被処理液蒸気に同伴して膜分離装置に達し分離膜に付着(吸着)して分離膜の分離性能を劣化させることがある。さらに不純物が反応して高分子化する場合、粘稠な液または固体となり、蒸発器の底部に溜まってしまう。蒸発器の底部に溜まった粘稠な液または固体は、蒸気泡と共に液面に向かって上昇し、液面での蒸気泡の破裂に伴い飛沫状不純物となる。この不純物は、蒸発器で発生された被処理液蒸気に同伴して蒸発器から送り出され、膜分離装置に達し分離膜に付着(吸着)して分離膜の分離性能を劣化させることがある。
【0006】
すなわち、前記従来の脱水濃縮装置では、蒸発器で蒸発される被処理液中に不純物が含まれている場合に、この不純物が被処理液蒸気に同伴して膜分離装置に達し、分離膜に不純物が付着・堆積して、分離膜の性能低下を招き、脱水濃縮性能が悪くなるという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、蒸発器で蒸発される被処理液中に不純物が含まれている場合でも、分離膜に不純物が付着・堆積するのを防止することができ、これによって脱水濃縮性能を良好に維持することのできる有機物脱水濃縮装置および有機物脱水濃縮方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、第1発明による有機物脱水濃縮装置は、
水溶性有機物と水とを含む被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜を有してなる膜分離装置とを備え、前記蒸発器で発生された被処理液蒸気を前記膜分離装置に導入してその被処理液蒸気から水蒸気を分離する有機物脱水濃縮装置において、
前記蒸発器で蒸気化し前記膜分離装置に向けて送り出される被処理液蒸気の一部を凝縮して凝縮液を生成する被処理液蒸気凝縮手段と、
前記蒸発器の内部における被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられ、前記被処理液蒸気凝縮手段からの凝縮液を滞留させる凝縮液滞留手段とを備え、
前記凝縮液滞留手段は、被処理液蒸気が当該凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液を潜り抜けて通過するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、蒸発器は、被処理液をスチームや熱媒などで加熱して蒸気を発生させるばかりでなく、被処理液蒸気凝縮手段および凝縮液滞留手段を備えたものであり、特に後工程の分離膜に対して有害な不純物を被処理液蒸気から除去する機能を備えている。
ここで、被処理液蒸気凝縮手段は、凝縮液滞留手段に滞留させる凝縮液を生成する役割を持ち、被処理液蒸気の一部のみを部分凝縮させて凝縮液滞留手段へ向けて送るように構成される。蒸発量に対する凝縮量の割合は、凝縮液滞留手段に滞留させる凝縮液が確保されればよく、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、特に3質量%未満である。
【0010】
また、被処理液蒸気が凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液を潜り抜けて通過することによって、被処理液蒸気に同伴した不純物が除去される。したがって、「被処理液蒸気が凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液を潜り抜けて通過するように構成されている」とは、不純物を除去する機能を果たすことができるのに充分な接触面積で、被処理液蒸気と凝縮液とが気液接触することを意味しているが、好ましくは凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液によって形成された極めて微細な空孔を潜り抜けて通過すること、より好ましくは凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液の液層を被処理液蒸気が細かい気泡になって潜り抜けて通過することを意味している。
【0011】
本発明において、前記凝縮液滞留手段は、被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられたトレイ部材に被処理液蒸気が通過する通気孔が設けられてなるバブルキャップトレイ或いはシーブトレイのいずれかであることが好ましい(第2発明)。
【0012】
凝縮液滞留手段は、例えば蒸発器の内部の被処理液蒸気の流れ経路途中に(被処理液蒸気の流れ方向を分けるように仕切って)設けられたトレイ部材に、被処理液蒸気が通過する通気孔が設けられ、かつその通気孔を通過後の被処理液蒸気の流れを遮るようにキャップ部材が設けられてなるバブルキャップトレイであることが好ましい。このバブルキャップトレイには、滞留される凝縮液の液深が所定深さを超えたときに、そのバブルキャップトレイから凝縮液を溢流させる凝縮液溢流手段が設けられるのが好ましい。
【0013】
また、凝縮液滞留手段は、例えば蒸発器の内部の被処理液蒸気の流れ経路途中に(被処理液蒸気の流れ方向を分けるように仕切って)設けられたシーブトレイ(円板に多数のキリ孔を設けたトレイ)が好ましい。ここでも、滞留される凝縮液の液深が所定深さを超えたときに、そのシーブトレイから凝縮液を溢流させる凝縮液溢流手段が設けられるのが好ましい。シーブトレイはバブルキャップトレイのように被処理蒸気の流れを遮る部材はないが滞留する液中を気泡が上昇し、気泡の上部液面が流れを遮っており、バブルキャッププトレイに準じるトレイである。
【0014】
すなわち、被処理液蒸気に同伴した不純物は凝縮液滞留手段で除去されるが、凝縮液滞留手段には被処理液蒸気凝縮器からの凝縮液が供給され、且つ凝縮液溢流手段によって下段へ凝縮液が溢流されているから、凝縮液滞留手段の凝縮液は常に置換されており、不純物が濃縮されることはない。
【0015】
本発明において、前記凝縮液滞留手段は、例えば蒸発器の内部の被処理液蒸気の流れ経路途中に配置され、被処理液蒸気と凝縮液とを気液接触可能にする充填物(層)であり、この充填物(層)に対して前記凝縮液を分散させる凝縮液分散手段が設けられる態様であっても良い(第3発明)。
【0016】
本発明においては、蒸発器の底部に被処理液の不純物が高濃度化して滞留するので、必要に応じて不純物を排出するための抜き出し口を蒸発器底部に設け、蒸発器底部に蓄積する不純物を含むボトム液を抜き出すことが好ましい。特に、被処理液中に含まれる不純物が反応して高分子化し易く、かつ分離膜へ飛散すると膜の閉塞を起こすような場合には、蒸発器は、水溶性有機物と水とを含む被処理液を、上部に少なくとも1段以上の滞留段が存在し、下部には滞留段が存在しない位置に供給するとともに、ボトム液の一部を抜き出すことができるように構成され、定量的にまたは一定期間ごとに抜き出せるようにすることが好ましい(第4発明)。
【0017】
また、本発明においては、蒸発器内に複数段の凝縮液滞留段を設けても構わない。その際には、蒸発器は、複数段の凝縮液滞留手段を有し、水溶性有機物と水とを含む被処理液を、上部に少なくとも1段以上、下部にも少なくとも1段以上の滞留段が存在する段と段の間の位置に供給し、不純物が飛散して分離膜に付着・堆積しないようにするとともに、ボトム液の一部を抜き出すことができるように構成し、蒸発器底部のボトム液の排出時に同伴する水溶性有機物成分を少なくするのが好ましい(第5発明)。
なお、蒸発器内に複数段の凝縮液滞留段を設ける場合でも、5段以下、好ましくは3段以下、より好ましくは2段であることが好適である。多数の凝縮液滞留段を設けると蒸発器としての機能(蒸発機能)が効率的でなくなる。
【0018】
本発明の有機物脱水濃縮装置は、水溶性有機物と水とを含む被処理液が、さらに分離膜に有害な不純物を含む処理液である場合に、特に有用である(第6発明)。
【0019】
次に、第7発明による有機物脱水濃縮方法は、
被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜を有してなる膜分離装置とを備え、前記蒸発器で発生された被処理液蒸気を前記膜分離装置に導入してその被処理液蒸気から水蒸気を分離する有機物脱水濃縮装置を用いた、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液から有機物を脱水濃縮する有機物脱水濃縮方法において、
水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液を前記蒸発器に供給して被処理液蒸気を発生させる工程、
前記被処理液蒸気を被処理液蒸気凝縮手段で凝縮して、前記蒸発器の内部における被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられた凝縮液滞留手段に前記被処理液蒸気凝縮手段からの凝縮液を滞留させる工程、
前記被処理液蒸気を、前記凝縮液滞留手段に滞留されている前記凝縮液を潜り抜けて通過させる工程および
前記蒸発器からの被処理液蒸気を前記膜分離装置へ供給して、前記被処理液蒸気から選択的に水蒸気を分離する工程
を含むことを特徴とするものである。
この有機物脱水濃縮方法は、被処理液の不純物が分離膜に有害な不純物である場合に、その有害な不純物による分離膜の脱水濃縮性能の劣化を好適に抑制することができる。
【0020】
本発明において、前記被処理液に含まれる不純物は、分離膜に有害な不純物である(第8発明)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蒸発器で発生された被処理液蒸気が凝縮液滞留手段を通過する際に、その凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液によって、被処理液蒸気に同伴する不純物が捕捉されるので、分離膜に不純物が付着・堆積するのを防止することができ、脱水濃縮性能を良好に維持することができる。
【0022】
特に、凝縮液滞留手段としてバブルキャップトレイ或いはシーブトレイを採用することにより、被処理液蒸気がトレイの凝縮液を潜り抜けて通過する際に、気液接触面積を増やすことができるので、被処理液蒸気に同伴する不純物をより効果的に捕捉することができる。また、バブルキャップトレイに凝縮液溢流手段を設けることで、バブルキャップトレイに滞留される凝縮液の液深が一定に保たれるので、圧力損出を一定に維持することができるので好適である。
【0023】
一方、凝縮液滞留手段として充填物を採用することにより、圧力損出を低く抑えつつ被処理液蒸気に同伴する不純物含有飛沫を捕捉することができる。特に、充填物に対して凝縮液を分散させる凝縮液分散手段を設けることで、被処理液蒸気が充填物の凝縮液を潜り抜けて通過する際に、被処理液蒸気と凝縮液との気液接触面積を増やすことにより、被処理液蒸気に同伴する不純物をより効果的に捕捉することができる。
【0024】
また、蒸発器底部の液抜き出し口によって、必要に応じて定期的に底部に滞留したボトム液の一部を抜き出すことによって、不純物の高濃度化あるいは高分子化を抑制することができる。
【0025】
被処理液は上部に少なくとも1段以上の凝縮液滞留段が存在する位置に供給され、不純物が上部の凝縮液滞留段で捕集され、順次下部の段へ流れ落ち、蒸発器の底部から排出される。被処理液が下部にも1段以上の凝縮液滞留段が存在する位置に供給されると、蒸発器底部では不純物の濃縮が起こり同伴する不純物量が増加するのに対して、この凝縮液滞留段で不純物が希釈されて上段の凝縮液滞留段へ同伴される不純物量が増加することを抑制することができるので不純物除去を効果的に行うことができる。また、蒸発器底部に供給される場合に比べて、不純物の投入開始から、排出までの滞留時間分布を狭く出来、不純物が高分子化し易い場合には高分子化を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明による有機物脱水濃縮装置および有機物脱水濃縮方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置の概略システム構成図が示されている。なお、以下に述べる有機物脱水濃縮装置において、脱水濃縮処理に供される被処理液は、ある目的で使用された後の水溶性有機物の回収品、或いはある工程からの水溶性有機物の回収品であり、水溶性有機物と水の他に不純物を含有するものである。
【0028】
図1に示される有機物脱水濃縮装置1は、被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器2と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜3を有してなる膜分離装置4とを備え、蒸発器2で発生された被処理液蒸気を膜分離装置4に導入してその被処理液蒸気から水蒸気を分離するように構成されている。ここで、分離膜3を透過しなかった非透過蒸気は非透過蒸気凝縮器5で凝縮され、この非透過蒸気凝縮器5による凝縮作用によって得られた凝縮液は脱水濃縮液タンク6に貯留される。一方、分離膜3を透過した透過蒸気は透過蒸気凝縮器7で凝縮され、この透過蒸気凝縮器7による凝縮作用によって得られた凝縮液は透過液受器8に貯留される。なお、図1中符号「9」にて示されるのは、真空ポンプである。また、被処理液中の不純物が多い場合、あるいは不純物が高分子化し易い場合には、必要に応じて(通常は一定の間隔で定期的(断続的)に、或いは極めて少量を連続的に)、流量調節弁10を用いて蒸発器底部のボトム液の一部を抜き出すことができる。
【0029】
次に、蒸発器2のより具体的な構造について、図2の構造説明図を用いて以下に説明することとする。
【0030】
蒸発器2は、上側蓋体11a、中間筒体11bおよび下側蓋体11cが一体接合されてなる蒸発器本体11と、この蒸発器本体11内に供給された被処理液をスチームまたは熱媒で間接加熱して蒸発させるためにその蒸発器本体11の下部外側面に装着されるジャケット式の加熱器12と、蒸発器本体11内で発生された被処理液蒸気を膜分離装置4に向けて送り出すために上側蓋体11aに接続される被処理液蒸気送出管13とを備えて構成されている。
【0031】
蒸発器本体11における中間筒体11b内の上部空間には、上下方向に互いに所定間隔を存して上段側バブルキャップトレイ15および下段側バブルキャップトレイ16がそれぞれ配設されている。各バブルキャップトレイ15,16は、中間筒体11b内の上部空間を被処理液蒸気の流れ方向に分けるように仕切るトレイ部材17を備えている。このトレイ部材17は、その外周縁が全周に亘って中間筒体11bの内壁面に固着されている。このトレイ部材17には、被処理液蒸気を通過させるための所要の通気孔18が穿設されるとともに、各通気孔18を通過後の被処理液蒸気の流れを遮るようにキャップ部材19が付設されている。なお、各バブルキャップトレイ15,16が本発明における「凝縮液滞留手段」に相当する。
【0032】
上段側バブルキャップトレイ15におけるトレイ部材17において、中間筒体11bの中心線Oを基準としてその一方側(図2では左側)の部分には、上下に貫通するように所要長さの上段側溢流管21が嵌め込まれている。一方、下段側バブルキャップトレイ16におけるトレイ部材17において、中間筒体11bの中心線Oを基準としてその他方側(図2では右側)の部分には、上下に貫通するように所要長さの下段側溢流管22が嵌め込まれている。
【0033】
被処理液蒸気送出管13の外側面には、その管内を流通する被処理液蒸気を冷却水で間接冷却して凝縮させるジャケット式の被処理液蒸気凝縮器(本発明の「被処理液蒸気凝縮手段」に相当する。)23が装着されている。こうして、蒸発器本体11から膜分離装置4に向けて送り出される被処理液蒸気の一部が凝縮されるようになっている。そして、この被処理液蒸気凝縮器23による凝縮作用によって生成された凝縮液は、被処理液蒸気送出管13から滴下され、あるいは被処理液蒸気送出管13から上側蓋体11aの内面壁を伝って流下され、上段側バブルキャップトレイ15に溜められる。
【0034】
上段側バブルキャップトレイ15に溜められる凝縮液の液深が所定深さDを超えたとき、その凝縮液が上段側バブルキャップトレイ15から上段側溢流管21を通って溢流される。こうして、上段側バブルキャップトレイ15に溜められる凝縮液の液深がDで充分な深さで一定に保たれるようになっている。上段側バブルキャップトレイ15から上段側溢流管21を通って溢流された凝縮液は、下段側バブルキャップトレイ16に溜められる。下段側バブルキャップトレイ16に溜められる凝縮液の液深が所定深さDを超えたとき、その凝縮液が下段側バブルキャップトレイ16から下段側溢流管22を通って溢流される。こうして、下段側バブルキャップトレイ16に溜められる凝縮液の液深がDで充分な深さで一定に保たれるようになっている。
【0035】
下段側バブルキャップトレイ16の下方には、その下段側バブルキャップトレイ16から下段側溢流管22を通って溢流される凝縮液を溜めるために、中間筒体11bの内面壁から中間筒体11bの中心線Oに向かって張り出すように中間筒体11bに一体的に設けられる所要容積の溢流液受器24が配されている。なお、この溢流液受器24から溢れ出た凝縮液は、蒸発器本体11内下部に溜められている被処理液と共に再び加熱器12によって加熱・蒸発される。
【0036】
溢流液受器24に溜められる凝縮液の液深が最大深さDにあるとき、下段側溢流管22の下端部がその凝縮液中に浸るように、下段側溢流管22の下端位置が定められている。これにより、蒸発器本体11下部で発生された被処理液蒸気が、下段側バブルキャップトレイ16に溜められている凝縮液を潜り抜けることなく下段側溢流管22を通ってリークするのを防止するようにされている。したがって、蒸発器本体11下部で発生された被処理液蒸気は、下段側バブルキャップトレイ16におけるトレイ部材17の各通気孔18から、そのトレイ部材17と各キャップ部材19との間の隙間を通り、下段側バブルキャップトレイ16に溜められている凝縮液を潜り抜けて上段側バブルキャップトレイ15へと流れることになる。
【0037】
下段側バブルキャップトレイ16に溜められる凝縮液の液深が所定深さDにあるとき、上段側溢流管21の下端部がその凝縮液中に浸るように、上段側溢流管21の下端位置が定められている。これにより、下段側バブルキャップトレイ16上の凝縮液を潜り抜けてきた被処理液蒸気が、上段側バブルキャップトレイ15に溜められている凝縮液を潜り抜けることなく上段側溢流管21を通ってリークするのを防止するようにされている。したがって、下段側バブルキャップトレイ16に溜められている凝縮液を潜り抜けてきた被処理液蒸気は、上段側バブルキャップトレイ15におけるトレイ部材17の各通気孔18から、そのトレイ部材17と各キャップ部材19との間の隙間を通り、上段側バブルキャップトレイ15に溜められている凝縮液を潜り抜けて被処理液蒸気送出管13へと流れることになる。
【0038】
以上に述べたように構成される有機物脱水濃縮装置1においては、蒸発器本体11下部で発生された被処理液蒸気が、下段側バブルキャップトレイ16におけるトレイ部材17の各通気孔18から、そのトレイ部材17と各キャップ部材19との間の隙間を通り、下段側バブルキャップトレイ16に溜められている凝縮液を潜り抜けて上段側バブルキャップトレイへ15と流れ、さらに、上段側バブルキャップトレイ15におけるトレイ部材17の各通気孔18から、そのトレイ部材17と各キャップ部材19との間の隙間を通り、上段側バブルキャップトレイ15に溜められている凝縮液を潜り抜けて被処理液蒸気送出管13へと流れるようにされている。これにより、被処理液蒸気が下段側バブルキャップトレイ16上の凝縮液を潜り抜ける際に、その被処理液蒸気に同伴する不純物含有飛沫の大部分が下段側バブルキャップトレイ16上の凝縮液によって捕捉される。また、被処理液蒸気が上段側バブルキャップトレイ15上の凝縮液を潜り抜ける際に、その被処理液蒸気に同伴する残りの不純物含有飛沫が上段側バブルキャップトレイ15上の凝縮液によって捕捉される。なお、不純物含有飛沫の捕捉能力が高ければ、バブルキャップトレイは1段であってもよい。また、バブルキャップトレイを3段以上設ける態様もあり得る。
【0039】
本実施形態の有機物脱水濃縮装置1によれば、以下(1)〜(3)の作用効果を得ることができる。
(1)各バブルキャップトレイ15,16に滞留されている凝縮液によって被処理液蒸気に同伴する不純物が捕捉されるので、分離膜3に不純物が付着・堆積するのを防止することができ、脱水濃縮性能を良好に維持することができる。
(2)被処理液蒸気が各バブルキャップトレイ15,16におけるトレイ部材17と各キャップ部材19との隙間を通って各バブルキャップトレイ15,16上の凝縮液を潜り抜けて通過する構造とされているので、被処理液蒸気が凝縮液を潜り抜けて通過する際に泡立たせて気液接触面積を更に増やすことができ、被処理液蒸気に同伴する不純物含有飛沫をより効果的に捕捉することができる。
(3)上段側バブルキャップトレイ15に上段側溢流管21が設けられることによって上段側バブルキャップトレイ15に滞留される凝縮液の液深が所定深さDで一定に保たれるとともに、下段側バブルキャップトレイ16に下段側溢流管22が設けられることによって下段側バブルキャップトレイ16に滞留される凝縮液の液深が所定深さDで一定に保たれるので、圧力損出を一定に抑えつつ所期の飛沫捕捉性能を安定的に維持することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、被処理液蒸気送出管13の外側面に被処理液蒸気凝縮器23を装着し、この被処理液蒸気凝縮器23による凝縮作用によって生成された凝縮液を被処理液蒸気送出管13から上段側バブルキャップトレイ15へと供給するようにされているが、蒸発器本体11から膜分離装置4に向けて送り出される被処理液蒸気の一部を凝縮する凝縮器を蒸発器2とは別に設置し、また凝縮液を上段側バブルキャップトレイ15へと供給するための凝縮液供給管を被処理液蒸気送出管13とは別に蒸発器本体11に設け、蒸発器2とは別に設置される凝縮器で生成された凝縮液をその凝縮液供給管を通して上段側バブルキャップトレイ15へと供給するようにしても良い。
【0041】
供給する被処理液中の不純物が多い場合、または不純物が高分子化し易い場合には、流量調整弁10から定量的に液を抜き出して、不純物の蓄積あるいは高分子化を抑えることができる。さらに、被処理液が下部にも1段以上の凝縮液滞留段が存在する位置に供給されると、蒸発器底部に供給される場合に比べて、不純物の投入開始から、排出までの滞留時間分布を狭く出来、不純物が高分子化し易い場合には高分子化を抑えることができる。
【0042】
〔第2の実施形態〕
図3には、本発明の第2の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置で適用される蒸発器の構造説明図が示されている。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとする(後述する第3の実施形態についても同様)。
【0043】
本実施形態は、第1の実施形態における上段側バブルキャップトレイ15および下段側バブルキャップトレイ16のそれぞれに代えて上段側シーブトレイ15Aおよび下段側シーブトレイ16Aが適用された蒸発器2Aを用いた例に関するものである。ここで、各シーブトレイ15A,16Aは、蒸発器本体11内部を被処理液蒸気の流れ方向に分けるように仕切るトレイ部材17Aに、被処理液蒸気を通過させるための所要の通気孔18Aが単に設けられただけのものである。なお、各シーブトレイ15A,16Aが本発明における「凝縮液滞留手段」に相当する。また、本実施形態においては、第1の実施形態における上段側溢流管21および下段側溢流管22のそれぞれに代えて上段側溢流板21Aおよび下段側溢流板22Aが適用され、上段側溢流板21Aによって上段側シーブトレイ15Aに滞留される凝縮液の液深が所定深さDで一定に保たれるとともに、下段側溢流板22Aによって下段側シーブトレイ16Aに滞留される凝縮液の液深が所定深さDで一定に保たれるようにされている。
本実施形態によっても、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
ところで、第1の実施形態および第2の実施形態においては、トレイ部材17;17Aに溢流管21,22または溢流板21A,22Aが設けられる態様例を示したが、これら溢流管21,22または溢流板21A,22Aが設けられない態様もあり得る。この場合、蒸発器本体11の発生蒸気量と、被処理液蒸気凝縮器23から供給される凝縮液量と、トレイ部材17;17Aに穿設される通気孔18;18Aの開孔面積とからトレイ部材上の凝縮液の液深が決まる。
【0045】
〔第3の実施形態〕
図4には、本発明の第3の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置で適用される蒸発器の構造説明図が示されている。
【0046】
本実施形態は、第1の実施形態における各バブルキャップトレイ15,16に代えて、蒸発器本体11内部に被処理液蒸気と凝縮液とを気液接触可能になるように充填される充填物(層)25が配置された蒸発器2Bを用いた例に関するものである。ここで、充填物25としては、金属板や金網などの充填物素材を規則的に多数配列してなる規則充填物、またはラシヒリングやポールリングなどに代表されるような不規則充填物のいずれを採用しても良い。
また、本実施形態においては、充填物25の上方で被処理液蒸気送出管13の直下位置に、被処理液蒸気送出管13から滴下される凝縮液を充填物25に対して分散させる分散板26が設けられている。この分散板26は、例えばパンチングメタルのような多数の孔を有する板状部材で構成される。なお、分散板26が本発明における「凝縮液分散手段」に相当する。
【0047】
本実施形態によっても、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、凝縮液滞留手段として充填物25が採用されているので、圧力損出を低く抑えつつ被処理液蒸気に同伴する不純物含有飛沫を捕捉することができる。また、この充填物25に対して凝縮液を分散させる分散板26が設けられているので、充填物25中において被処理液蒸気と凝縮液との気液接触がより良好に行われ、被処理液蒸気に同伴する不純物をより効果的に捕捉することができる。
【0048】
なお、被処理液中の不純物が蒸発器加熱壁面の温度では化学変化するが、その温度より10〜30℃低い温度では化学変化しない場合には、被処理液を蒸発器上部に設置された凝縮液滞留部分の最上段に供給してもよい。図4に示すように充填物25を使用する場合には分散板26を設けるが、被処理液をこの分散板26へ供給してもよい。分散板26の板面上に適切な個数の噴霧ノズルを取り付けて噴霧される被処理液と蒸気との接触を向上させても良い。
【0049】
以上、本発明の有機物脱水濃縮装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0050】
本発明の有機物脱水濃縮方法は、本発明の有機物脱水濃縮装置を好適に用いるようにした有機物の脱水濃縮方法に関するものである。代表として、第1の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置1を好適に用いるようにした有機物の脱水濃縮方法について以下に説明することとする。
すなわち、本発明の有機物脱水濃縮方法は、
被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器2と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜3を有してなる膜分離装置4とを備え、蒸発器2で発生された被処理液蒸気を膜分離装置4に導入してその被処理液蒸気から水蒸気を分離する有機物脱水濃縮装置1を用いた、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液から有機物を脱水濃縮する有機物脱水濃縮方法において、
水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液を蒸発器2に供給して被処理液蒸気を発生させる工程、
被処理液蒸気を被処理液蒸気凝縮手段23で凝縮して、蒸発器2の内部における被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられた凝縮液滞留手段15,16に被処理液蒸気凝縮手段23からの凝縮液を滞留させる工程、
被処理液蒸気を、凝縮液滞留手段15,16に滞留されている凝縮液を潜り抜けて通過させる工程および
蒸発器2からの被処理液蒸気を膜分離装置4へ供給して、被処理液蒸気から選択的に水蒸気を分離する工程
を含むことを特徴とするものである。
【0051】
蒸発器2は、被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させるようにスチームや熱媒などを用いて加熱する。このような操作は、通常の蒸発器で行われる操作であり、特に限定されないが操作圧50〜700kPaG、好ましくは50〜400kPaG、より好ましくは50〜200kPaGで好適に行うことができる。被処理液蒸気凝縮手段23は、被処理液蒸気の一部のみを部分凝縮させるものであって、蒸発器2から膜分離装置4へ送付される被処理液蒸気の経路途中に好適に備えられるが、蒸発器2内部の被処理液蒸気の流れ経路途中に備えても構わない。通常冷却水によって好適に凝縮を行うことができる。凝縮液は全量が蒸発器2の凝縮液滞留手段15,16へ送られることが好ましい。また、蒸発量に対する凝縮量の割合が、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、特に3質量%未満となるように、冷却水の温度や量を制御できるように構成されていることが好適である。
【0052】
分離膜3は、被処理液蒸気から水蒸気を選択的に透過させることができれば、特に限定されない。ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、高分子量ポリビニルアルコールなどのポリマーからなるものでも、ゼオライト、ジルコニア等の無機物からなるものでも構わない。そして、膜分離装置4の形態も、例えば非対称ポリイミド中空糸膜からなる中空糸分離膜モジュール、多孔質からなる管状の支持体にゼオライトを成膜した管状分離膜エレメントを具備するシェルアンドチューブ型モジュールなどの従来公知のものなどを好適に用いることができる。これらの例としては、限定するものではないが、ポリイミド中空糸膜を用いた特開2000−262838号公報、特開2001−62257号公報など、ゼオライト膜を用いた特開2003−93844号公報、特開2006−263574号公報、特開2007−203210号公報などに記載されたものを好適に挙げることができる。
【0053】
分離膜3の透過性能としては、使用時において、好ましくは水蒸気透過速度(P'H2O)が0.5×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上、より好ましくは1.0×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上であって、水蒸気と水溶性有機物蒸気との透過速度の比が好ましくは50以上、より好ましくは100以上のものが好適である。
【0054】
蒸発器2から排出した被処理液蒸気は、5〜20℃程度過熱した後で、膜分離装置4へ供給されるのが好適である。膜分離装置4の操作条件は、採用した膜分離装置で通常行われる公知の条件をそのまま用いることができる。例えば、ポリイミド中空糸膜を用いた場合には、特開2000−262838号公報、特開2001−62257号公報など、ゼオライト膜を用いた場合には、特開2003−93844号公報、特開2006−263574号公報、特開2007−203210号公報などに記載された具体的な装置や方法を好適に採用することができる。
【0055】
本発明において、被処理液は、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含むものである。例えば半導体の製造工程ではアルコール類のような水溶性有機物によって部品洗浄を行うことがあるが、その際に使用された後の水溶性有機物には、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物を含む。この水溶性有機物を精製して再使用するためには、含有された不純物を除きながら水溶性有機物を脱水濃縮する必要がある。
また、例えば発酵アルコール水溶液を精製脱水して高純度アルコールを得る際にも、発酵アルコール水溶液には、もろみ塔や蒸留塔で処理した後も、発酵原料や発酵条件に基づいてセルロースなどの不溶成分、原料に由来する金属イオンや塩類、アルデヒド類などの発酵によって副生した化学物質が混入しているので、含有する不純物を除きながらアルコール類を脱水濃縮する必要がある。
さらに、化学プロセスでは、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液がしばしば発生するので、このような場合にも、含有された不純物を除きながら水溶性有機物を脱水濃縮する必要がある。
本発明の脱水濃縮方法は、このような処理液を好適に脱水濃縮できる。
【0056】
水溶性有機物としては、特に限定されないが、沸点が50〜250℃好ましくは60〜220℃の水溶性の有機化合物であって、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸ブチルなどのエステル類、ヘキサンなどの炭化水素類、シクロヘキサンなど脂環系炭化水素類などを挙げることができる。
【0057】
本発明において、目的とする水溶性有機物と水以外の全てのものが不純物であるが、分離膜に有害な不純物としては、ピリジンなどのピリジン類、フェノールなどのフェノール類、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、鉄イオンなどの金属イオンや、塩化ナトリウムや塩化マグネシウムなどの塩類などのイオン性化合物、有機又は無機の酸化合物、有機又は無機のアルカリ化合物、特開平9−103633号公報に記載されているハロゲン化合物、アンモニア、オゾン、シラン、六フッ化タングステンなど、さらに、例えばアルデヒド類のような化合物が高分子化した高分子物質や、原料に由来する例えばセルロースなどの無機或いは有機の不溶性或いは不揮発性の不純物がある。これらが分離膜3に付着・堆積すると、分離膜3の性能低下を招き、脱水濃縮性能が悪くなるという問題を生じる。
【0058】
本発明の水溶性有機物の脱水濃縮方法は、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液から水溶性有機物を好適に脱水濃縮できるが、不純物が前述のような分離膜3に有害なものである場合には、分離膜3の性能低下を抑制することができるので特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置の概略システム構成図
【図2】第1の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置で適用される蒸発器の構造説明図
【図3】第2の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置で適用される蒸発器の構造説明図
【図4】第3の実施形態に係る有機物脱水濃縮装置で適用される蒸発器の構造説明図
【符号の説明】
【0060】
1 有機物脱水濃縮装置
2,2A,2B 蒸発器
3 分離膜
4 膜分離装置
10 流量調整弁
15 上段側バブルキャップトレイ(凝縮液滞留手段)
15A 上段側シーブトレイ(凝縮液滞留手段)
16 下段側バブルキャップトレイ(凝縮液滞留手段)
16A 下段側シーブトレイ(凝縮液滞留手段)
17,17A トレイ部材
18,18A 通気孔
19 キャップ部材
21 上段側溢流管(凝縮液溢流手段)
21A 上段側溢流板(凝縮液溢流手段)
22 下段側溢流管(凝縮液溢流手段)
22A 下段側溢流板(凝縮液溢流手段)
23 被処理液蒸気凝縮器(被処理液蒸気凝縮手段)
25 充填物(凝縮液滞留手段)
26 分散板(凝縮液分散手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機物と水とを含む被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜を有してなる膜分離装置とを備え、前記蒸発器で発生された被処理液蒸気を前記膜分離装置に導入してその被処理液蒸気から水蒸気を分離する有機物脱水濃縮装置において、
前記蒸発器で蒸気化し前記膜分離装置に向けて送り出される被処理液蒸気の一部を凝縮して凝縮液を生成する被処理液蒸気凝縮手段と、
前記蒸発器の内部における被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられ、前記被処理液蒸気凝縮手段からの凝縮液を滞留させる凝縮液滞留手段とを備え、
前記凝縮液滞留手段は、被処理液蒸気が当該凝縮液滞留手段に滞留されている凝縮液を潜り抜けて通過するように構成されていることを特徴とする有機物脱水濃縮装置。
【請求項2】
前記凝縮液滞留手段は、被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられたトレイ部材に被処理液蒸気が通過する通気孔が設けられてなるバブルキャップトレイ或いはシーブトレイのいずれかである請求項1に記載の有機物脱水濃縮装置。
【請求項3】
前記凝縮液滞留手段は、被処理液蒸気の流れ経路途中に配置され、被処理液蒸気と凝縮液とを気液接触可能にする充填物であり、
この充填物に対して前記凝縮液を分散させる凝縮液分散手段が設けられている請求項1に記載の有機物脱水濃縮装置。
【請求項4】
前記蒸発器は、水溶性有機物と水とを含む被処理液を、上部に少なくとも1段以上の滞留段が存在し、下部には滞留段が存在しない位置に供給するとともに、ボトム液の一部を抜き出すことができるように構成されている請求項1に記載の有機物脱水濃縮装置。
【請求項5】
前記蒸発器は、複数段の凝縮液滞留手段を有し、水溶性有機物と水とを含む被処理液を、上部に少なくとも1段以上、下部にも少なくとも1段以上の滞留段が存在する段と段の間の位置に供給するとともに、ボトム液の一部を抜き出すことができるように構成されている請求項1に記載の有機物脱水濃縮装置。
【請求項6】
さらに分離膜に有害な不純物を含む被処理液から、前記水溶性有機物を脱水濃縮するために用いられる請求項1に記載の有機物脱水濃縮装置。
【請求項7】
被処理液を蒸発させて被処理液蒸気を発生させる蒸発器と、水蒸気を選択的に透過させる分離膜を有してなる膜分離装置とを備え、前記蒸発器で発生された被処理液蒸気を前記膜分離装置に導入してその被処理液蒸気から水蒸気を分離する有機物脱水濃縮装置を用いた、水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液から有機物を脱水濃縮する有機物脱水濃縮方法において、
水溶性有機物と水とそれ以外の不純物とを含む被処理液を前記蒸発器に供給して被処理液蒸気を発生させる工程、
前記被処理液蒸気を被処理液蒸気凝縮手段で凝縮して、前記蒸発器の内部における被処理液蒸気の流れ経路途中に設けられた凝縮液滞留手段に前記被処理液蒸気凝縮手段からの凝縮液を滞留させる工程、
前記被処理液蒸気を、前記凝縮液滞留手段に滞留されている前記凝縮液を潜り抜けて通過させる工程および
前記蒸発器からの被処理液蒸気を前記膜分離装置へ供給して、前記被処理液蒸気から選択的に水蒸気を分離する工程
を含むことを特徴とする有機物脱水濃縮方法。
【請求項8】
前記被処理液に含まれる不純物は、分離膜に有害な不純物である請求項7に記載の有機物脱水濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−148751(P2009−148751A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304675(P2008−304675)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000230582)日本化学機械製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】