説明

有機発光材料および素子

下記の単位:
【化1】


を含む発光ポリマー。式中、Xは、S、O、PおよびNの1つであり、Zは、NまたはPであり、Rは、Zに隣接するC原子以外の1つまたは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えられてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光材料および有機発光材料を含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な有機発光素子(OLED)は、その上にアノード、カソードおよび発光層が支持された基板を備えており、発光層はアノードとカソードとの間に位置し、少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント材料を含んでいる。作動時には、アノードを通じて正孔が素子に注入され、カソードを通じて電子が素子に注入される。正孔と電子は発光層において結合して励起子を形成し、次いでこれが放射性崩壊を受けて発光する。
【0003】
OLEDには他の層が存在してもよい。たとえば、アノードから発光層への正孔の注入を補助するために、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)等の正孔注入材料の層をアノードと発光層との間に設けてもよい。さらに、発光層への正孔の輸送を補助するために、正孔輸送層をアノードと発光層との間に設けてもよい。
【0004】
共役ポリマー等のエレクトロルミネッセントポリマーは、情報技術に基づく次世代の消費者製品のための有機発光素子において用いられることになる重要な材料の部類である。ポリマーの使用における主要な関心は、無機半導性材料および有機染料材料とは対照的に、フィルム形成性材料の溶液処理を用いる低コストの素子製造の展望にある。エレクトロルミネッセントポリマーのさらなる利点は、これらが鈴木またはヤマモト重合によって容易に形成できることである。これにより、得られるポリマーの立体規則性の高度な制御が可能になる。
【0005】
最近の10年間で、高効率の材料または効率の良い素子構造の開発によって、有機発光素子の発光効率の改良に多くの努力が払われてきた。さらに一方、新規材料または素子構造の開発により、有機発光素子の寿命の改善に多くの努力が払われてきた。さらに、特定の発光色および電荷輸送特性を有する材料の開発に多くの努力が払われてきた。
【0006】
上記に関連し、発光単位および/または電荷輸送単位として、種々の縮合芳香族誘導体を発光ポリマーに組み込むことが知られている。これらのいくつかを以下に説明する。
【0007】
本出願人は、発光ポリマーにおいて青色発光単位または正孔輸送単位として用いるための種々のカルバゾール誘導体を開発してきた。
【0008】
WO2007/071957には、青色発光単位および/または正孔輸送単位として用いるための下式の単位が開示されている。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R1およびR2はアルキル等の置換基を表す。繰り返し単位は、臭素脱離基を含む対応するモノマーを重合することによって形成することができる。発光ポリマーはまた、フルオレン繰り返し単位等の他の電荷輸送および/または発光繰り返し単位を含んでもよい。
【0011】
Chemistry Letters、36巻、10号、1206〜1207頁(2007)には、下式による発光ポリマーにおけるジチエノチオフェン繰り返し単位の使用が開示されている。
【0012】
【化2】

【0013】
フルオレン繰り返し単位と組み合わせたこれらの繰り返し単位を含む発光コポリマーが開示されている。ポリマーは黄緑色の光を発光することが開示されている。
【0014】
上記に鑑みて、発光単位および/または電荷輸送単位として作用させるために、カルバゾール、ビフェニルアミノ誘導体およびジチエノチオフェン等の多環ヘテロ芳香族単位を発光ポリマーに組み込むことは知られていることが明らかである。
【0015】
上述の多環ヘテロ芳香族単位における1つの問題は、それらが電荷をトラップし、そのためこれらの単位を含むポリマー中の電荷キャリア移動度を低下させる傾向があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の実施形態の目的は、新規な有機発光材料、発光および/または電荷輸送単位を用いて前記材料を製造する方法、および前記材料を含む有機発光素子を提供することである。本発明の実施形態の目的はまた、これまでに記述された多環ヘテロ芳香族単位よりも低い電荷トラップ能を有する単位を提供し、それにより電荷キャリア移動度が改善された発光ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、下記の単位を含むポリマーが提供される。
【0018】
【化3】

式中、Xは、S、O、PおよびNの1つであり、Zは、NまたはPであり、Rは、Zに隣接するC原子以外の1つまたは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えられてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基である。ポリマーは好ましくは発光ポリマーである。
【0019】
Rがアリールまたはヘテロアリールの場合、好ましい任意選択的な置換基としては、1つまたは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えられてもよいアルキル基が挙げられる。
【0020】
式(I)の縮合環系は1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基としては、1つまたは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えられてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、フッ素、シアノおよびアラルキルが挙げられる。
【0021】
本出願人は、式(I)による単位はこれまでに記述された多環ヘテロ芳香族単位よりも電荷トラップ能が低く、それにより電荷キャリア移動度が改善されたポリマーがもたらされることを見出した。
【0022】
1つの好ましい組み合わせによれば、ZはNである。Xは好ましくはSである。しかし、XおよびZの異なったものを選択することによって、望ましい発光および/または電荷輸送特性に合わせて発光ポリマーを調整し、たとえばポリマーの発光色を変化させることができる。
【0023】
同様に、R基を選択することによって、望ましい発光および/または電荷輸送特性に合わせて発光ポリマーを調整することができる。R基を選択して、ポリマーの溶解度等の他の物性を変更することもできる。好ましくはRはアリール基、たとえばトリアリールアミン基を含む。トリアリールアミン基は正孔輸送を助けるために機能することができる。トリアリールアミン基は、ポリマーの溶解度を増大し、それにより溶液処理を助けるために、アルキルまたはアリール基、たとえばアルキル鎖等の可溶化基で置換してもよい。したがって、式(I)の単位は下記の構造を有してもよい。
【0024】
【化4】

式中、XおよびZは先に示されたように定義され、R3は置換基、たとえばアルキルまたはアリール置換基、特にアルキル鎖等の可溶化基である。
【0025】
ポリマー中にどのような他の繰り返し単位が含まれるかによって、上記の繰り返し単位は発光単位または電荷輸送繰り返し単位またはその両方であってよい。ポリマーはフルオレン繰り返し単位等の電子輸送単位を含んでよい。ポリマーはまた、トリアリールアミン等の正孔輸送繰り返し単位を含んでよい。あるいは、本発明の単位は発光単位および正孔輸送単位の両方として機能してもよい。X、ZおよびR基にどの基を選択するかによって、単位は赤色または黄色発光単位となり得る。
【0026】
単位は式(I)のヘテロ芳香族基を通してまたはR基を介して、最も好ましくは式(I)のヘテロ芳香族基を介して、ポリマーに結合させることができる。単位は、ポリマー主鎖における繰り返し単位として、ポリマー主鎖に吊下がった側鎖における繰り返し単位として、または末端封鎖基として、ポリマーに組み込むことができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、式(I)の構造を含むモノマー単位をポリマーに組み込むステップを含む発光ポリマーを製造する方法が提供される。モノマーは式(I)のヘテロ芳香族基の上またはR基の中、好ましくは式(I)のヘテロ芳香族基の上に重合性基を含んでもよい。単位が繰り返し単位としてポリマー主鎖に組み込まれるべき場合には、2つの重合性基Y、たとえば下に示す各ヘテロ芳香族環上のものが利用される。
【0028】
【化5】

【0029】
1つの特に好ましいモノマー単位を下に示す。
【0030】
【化6】

【0031】
単位が末端封鎖基としてポリマーに組み込まれるべき場合には、1つの重合性基のみが必要となる。
【0032】
本発明の別の態様によれば、上述のモノマー単位は発光ポリマーを製造するために用いられる。本発明のさらに別の態様によれば、発光ポリマーはアノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に配置された発光層を備える有機発光素子を製造するために用いられ、ここで発光層は上述の発光ポリマーを含む。
【0033】
ここで本発明を以下の図を参照して例のためのみに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による有機発光素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで下記のモノマー単位に関連して本発明の例を説明する。
【0036】
【化7】

式中、Rはアルキルまたはアリール置換基である。
【0037】
下記の合成経路を用いてモノマーを製造することができる。
【0038】
【化8】

【0039】
合成経路における種々のステップの詳細については、以下の文献に記されている。
ステップ1および2:S.M.H.Kabir他、Heterocycles、2000、671頁。
ステップ3:K.Nozaki他、Angew.Chem.Int.Ed.、2003、2051頁。
ステップ4:T.W.Bunnagel他、Macromolecules、2006、8870頁に類似の方法。
【0040】
上記モノマーの例を下に示す。
【0041】
【化9】

式中、Rは、アルキルまたはアリール置換基、たとえばアルキル鎖等の可溶化基である。
【0042】
下記の合成経路を用いて、このモノマーを製造することができる。
【0043】
【化10】

【0044】
中間体であるニトロ化合物を製造するための代替の経路を下に示す。
【0045】
【化11】

【0046】
本発明の実施形態の他の特徴を下に述べる。
【0047】
一般的な素子構成
図1を参照すると、本発明によるエレクトロルミネッセント素子の構成は、透明なガラスまたはプラスチックの基板1、アノード2およびカソード4を備えている。エレクトロルミネッセント層3がアノード2とカソード4との間に設けられている。
【0048】
実際の素子においては、電極の少なくとも1つは半透明であり、光が吸収されうる(光応答性素子の場合)か、発光されうる(OLEDの場合)ようになっている。アノードが透明な場合には、これは典型的には酸性インジウムスズを含む。
【0049】
電荷輸送層
アノード2とカソード3との間には、電荷輸送、電荷注入または電荷遮蔽層等のさらなる層が位置していてもよい。
【0050】
特に、導電性正孔注入層を設けることが望ましく、この導電性正孔注入層は導電性有機または無機材料から形成されてよく、アノード2とエレクトロルミネッセント層3との間に設けられ、アノードから半導性ポリマーの層(単数または複数)への正孔注入を補助する。ドープされた有機正孔注入材料の例としては、ドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特にEP0901176およびEP0947123に開示されているようなポリスチレンスルホネート(PSS)、ポリアクリル酸またはフッ素化スルホン酸、たとえばNafion(登録商標)等の電荷バランスポリ酸をドープされたPEDT;US5723873およびUS5798170に開示されているようなポリアニリン;およびポリ(チエノチオフェン)が挙げられる。導電性無機材料の例としては、Journal of Physics D:Applied Physics(1996)、29(11)、2750〜2753頁に開示されているようなVOx、MoOxおよびRuOx等の遷移金属酸化物が挙げられる。
【0051】
存在する場合には、アノード2とエレクトロルミネッセント層3との間に位置する正孔輸送層は、好ましくは5.5eV以下、より好ましくは4.8〜5.5eV程度のHOMO準位を有する。HOMO準位はたとえばサイクリックボルタムメトリーによって測定することができる。
【0052】
存在する場合には、エレクトロルミネッセント層3とカソード4との間に位置する電子輸送層は、好ましくは3〜3.5eV程度のLUMO準位を有する。
【0053】
エレクトロルミネッセント層
エレクトロルミネッセント層3はエレクトロルミネッセント材料のみからなっていてもよく、またはエレクトロルミネッセント材料と1つまたは複数のさらなる材料との組み合わせを含んでいてもよい。特にエレクトロルミネッセント材料は、たとえばWO99/48160に開示されているような正孔および/または電子輸送材料とブレンドされていてもよく、または半導性ホストマトリックス中に発光ドーパントを含んでいてもよい。あるいは、エレクトロルミネッセント材料は電荷輸送材料および/またはホスト材料に共有結合していてもよい。
【0054】
エレクトロルミネッセント層3はパターン化されていてもよく、パターン化されていなくてもよい。非パターン化層を含む素子はたとえば照明光源に用いることができる。白色発光素子は特にこの目的に適している。パターン化層を含む素子はたとえばアクティブマトリックスディスプレイまたはパッシブマトリックスディスプレイであってよい。アクティブマトリックスディスプレイの場合には、パターン化エレクトロルミネッセント層は典型的にはパターン化アノード層および非パターン化カソードと組み合わせて用いられる。パッシブマトリックスディスプレイの場合には、アノード層はアノード材料の平行な縞ならびにアノード材料に垂直に配置されたエレクトロルミネッセント材料およびカソード材料の平行な縞から形成されており、エレクトロルミネッセント材料およびカソード材料の縞は典型的にはフォトリソグラフィーによって形成された絶縁材料(「カソードセパレータ」)の縞によって分離されている。
【0055】
層3における使用に適した材料としては、小分子、ポリマーおよびデンドリマー材料、ならびにそれらの組成物が挙げられる。
【0056】
カソード
カソード4は、エレクトロルミネッセント層への電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードとエレクトロルミネッセント材料との間に不都合な相互作用が起こる可能性等の他の因子も、カソードの選択に影響する。カソードはアルミニウム層等の単一材料からなっていてもよい。あるいは、これは複数の金属、たとえばWO98/10621に開示されているようなカルシウムとアルミニウム等の仕事関数が低い材料と仕事関数が高い材料との二層;WO98/57381、Appl.Phys.Lett.2002、81(4)、634頁およびWO02/84759に開示されているようなバリウム元素;または金属化合物の薄層、特に電子注入を補助するためのアルカリもしくはアルカリ土類金属の酸化物もしくはフッ化物、たとえばWO00/48258に開示されているようなフッ化リチウム;Appl.Phys.Lett.2001、79(5)、2001頁に開示されているようなフッ化バリウム;および酸化バリウムを含んでもよい。素子中への電子の効率的な注入を得るためには、カソードは好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。金属の仕事関数はたとえばMichaelson、J.Appl.Phys.48(11)、4729頁、1977に見出すことができる。
【0057】
カソードは不透明または透明であってよい。透明なカソードはアクティブマトリックス素子において特に有利である。というのは、そのような素子における透明なアノードを通る発光は、発光画素の下に位置する駆動回路によって少なくとも部分的に遮蔽されるからである。透明なカソードは、透明にするために充分に薄い電子注入材料の層を含むことになる。典型的には、この層は薄いので、この層の側面の電導度は低いことになる。この場合、電子注入材料の層は酸化インジウムスズ等の透明な導電材料のより厚い層と組み合わせて用いられる。
【0058】
透明カソード素子は透明なアノードを有する必要はなく(もちろん、完全に透明な素子が望ましい場合の話だが)、したがって底面発光素子に用いられる透明アノードはアルミニウム層等の反射材料の層によって置き換えられまたは補完され得ることが理解されるであろう。透明カソード素子の例は、たとえばGB2348316に開示されている。
【0059】
封止
光学素子は水分および酸素に影響されやすい傾向がある。したがって、基板は好ましくは素子への水分および酸素の浸透を防ぐための良好なバリア特性を有する。基板は一般にはガラスであるが、特に素子の柔軟性が望まれる場合には代替の基板も用いられ得る。たとえば、基板はプラスチックおよびバリアの交互の層の基板を開示しているUS6268695におけるようにプラスチック、あるいはEP0949850に開示されているような薄いガラスとプラスチックのラミネートを含んでもよい。
【0060】
素子は好ましくは水分および酸素の浸透を防ぐために封止材(図示せず)で封止される。適当な封止材としては、ガラスのシート、たとえばWO01/81649に開示されているようなポリマーと誘電体との交互積層体等の適当なバリア特性を有するフィルム、またはたとえばWO01/19142に開示されているような気密容器が挙げられる。基板または封止材を浸透する可能性がある大気中のいかなる水分および/または酸素をも吸収するためのゲッター材料を、基板と封止材との間に配置してもよい。
【0061】
その他
図1の実施形態には、最初にアノードを基板上に形成し、次いでエレクトロルミネッセント層およびカソードを堆積することによって形成される素子が図示されているが、本発明の素子は最初にカソードを基板上に形成し、次いでエレクトロルミネッセント層およびアノードを堆積することによっても形成することができることが理解されるであろう。
【0062】
共役ポリマー(蛍光性および/または電荷輸送)
適当なエレクトロルミネッセントおよび/または電荷輸送ポリマーとしては、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(アリーレンビニレン)およびポリアリーレンが挙げられる。
【0063】
ポリマーは好ましくはたとえばAdv.Mater.、2000、12(23)、1737〜1750頁およびその参照文献に開示されているようなアリーレン繰り返し単位から選択される第1の繰り返し単位を含む。例示的な第1の繰り返し単位としては、J.Appl.Phys.、1996、79、934頁に開示されているような1,4−フェニレン繰り返し単位;EP0842208に開示されているようなフルオレン繰り返し単位;たとえばMacromolecules、2000、33(6)、2016〜2020頁に開示されているようなインデノフルオレン繰り返し単位;およびたとえばEP0707020に開示されているようなスピロフルオレン繰り返し単位が挙げられる。これらの繰り返し単位の各々は置換されていてもよい。置換基の例としては、C120アルキルまたはアルコキシ等の可溶化基;フッ素、ニトロまたはシアノ等の電子求引基;およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を上昇させるための置換基が挙げられる。
【0064】
特に好ましいポリマーは、置換されていてもよい2,7−連結フルオレン、最も好ましくは式:
【0065】
【化12】

(式中、R1およびR2は、水素または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される)の繰り返し単位を含む。より好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つは置換されていてもよいC4〜C20アルキルまたはアリール基を含む。
【0066】
ポリマーは、素子のどの層において用いられるかおよび共繰り返し単位の性質に依存して、正孔輸送、電子輸送および発光の1つまたは複数の機能を提供することができる。
【0067】
特に、
− 9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイルのホモポリマー等のフルオレン繰り返し単位のホモポリマーは、電子輸送を提供するために用いられ得る。
− トリアリールアミン繰り返し単位、特に繰り返し単位1:
【0068】
【化13】

(式中、Ar1およびAr2は置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、nは1以上、好ましくは1または2であり、RはHまたは置換基、好ましくは置換基である)を含むコポリマー。Rは好ましくはアルキルまたはアリールまたはヘテロアリール、最も好ましくはアリールまたはヘテロアリールである。式1の単位のアリールまたはヘテロアリール基のいずれも置換されていてもよい。好ましい置換基としては、アルキルおよびアルコキシ基が挙げられる。繰り返し単位のアリールまたはヘテロアリール基のいずれも直接結合または2価の連結原子もしくは基によって連結されていてもよい。好ましい2価の連結原子および基としては、O、S;置換N;および置換Cが挙げられる。
【0069】
式1を満たす特に好ましい単位としては、式2〜4の単位が挙げられる。
【0070】
【化14】

式中、Ar1およびAr2は上で定義した通りであり、Ar3は置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールである。存在する場合には、Ar3の好ましい置換基としては、アルキルおよびアルコキシ基が挙げられる。
【0071】
この型の特に好ましい正孔輸送ポリマーは、フルオレン繰り返し単位およびトリアリールアミン繰り返し単位のコポリマーである。
【0072】
− 上述の繰り返し単位の1つおよびヘテロアリーレン繰り返し単位を含むコポリマーは、電荷輸送または発光に用いることができる。好ましいヘテロアリーレン繰り返し単位は、式7〜21から選択される。
【0073】
【化15】

式中、R6およびR7は同一または異なっており、それぞれ独立に水素または置換基、好ましくはアルキル、アリール、パーフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。製造の容易さのためには、R6およびR7は好ましくは同一である。より好ましくは、これらは同一であり、それぞれフェニル基である。
【0074】
【化16】


【0075】
エレクトロルミネッセントコポリマーは、たとえばWO00/55927およびUS6353083に開示されているように、エレクトロルミネッセント領域および正孔輸送領域と電子輸送領域の少なくとも1つを含んでいてもよい。正孔輸送領域と電子輸送領域の一方のみが備えられる場合には、エレクトロルミネッセント領域が他方の正孔輸送および電子輸送の機能を備えていてもよい。あるいは、エレクトロルミネッセントポリマーを正孔輸送材料および/または電子輸送材料とブレンドしてもよい。正孔輸送繰り返し単位、電子輸送繰り返し単位および発光繰り返し単位の1つまたは複数を含むポリマーは、ポリマー主鎖またはポリマー側鎖に該単位を備えていてもよい。
【0076】
そのようなポリマーの中の異なった領域は、US6353083のようにポリマー主鎖に沿って、またはWO01/62869のようにポリマー主鎖から吊下がった基として備えられていてもよい。
【0077】
重合方法
これらのポリマーを調製するための好ましい方法は、たとえばWO00/53656に記載されているようなスズキ重合およびたとえばT.Yamamoto、「Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」、Progress in Polymer Science、1993、17、1153〜1205頁に記載されているようなヤマモト重合である。これらの重合方法はいずれも、金属錯体触媒の金属原子がモノマーのアリール基と脱離基との間に挿入される「金属挿入」を介して作用する。ヤマモト重合の場合にはニッケル錯体触媒が用いられる。スズキ重合の場合にはパラジウム錯体触媒が用いられる。
【0078】
たとえばヤマモト重合による線状ポリマーの合成においては、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが用いられる。同様に、スズキ重合の方法によれば、少なくとも1つの反応性基はボロン酸またはボロン酸エステル等のホウ素誘導体基であり、他の反応性基はハロゲンである。好ましいハロゲンは塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0079】
したがって、本出願を通して説明したようなアリール基を含む繰り返し単位および末端基は、適当な脱離基を有するモノマーから誘導することができることが理解されるであろう。
【0080】
位置規則的、ブロックおよびランダムコポリマーを調製するためにはスズキ重合を用いることができる。特に、1つの反応性基がハロゲンで、他の反応性基がホウ素誘導体基である場合には、ホモポリマーまたはランダムコポリマーを調製することができる。あるいは、第1のモノマーの両方の反応性基がホウ素で、第2のモノマーの両方の反応性基がハロゲンである場合には、ブロックまたは位置規則的、特にAB型のコポリマーを調製することができる。
【0081】
ハロゲン化物の代替として金属挿入に関与することができる他の脱離基としては、トシレート、メシレートおよびトリフレートを含む基が挙げられる。
【0082】
溶液処理
単一のポリマーまたは複数のポリマーを溶液から堆積させて層5を形成することができる。ポリアリーレン、特にポリフルオレンに対する適当な溶媒としては、トルエンおよびキシレン等のモノ−またはポリ−アルキルベンゼンが挙げられる。特に好ましい溶液堆積方法はスピンコーティングおよびインクジェット印刷である。
【0083】
スピンコーティングは、エレクトロルミネッセント材料のパターン化が不要な場合の素子、たとえば照明用途または単純な単色セグメント化ディスプレイに特に適している。
【0084】
インクジェット印刷は、情報量が多いディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に適している。OLEDのインクジェット印刷は、たとえばEP0880303に記載されている。
【0085】
その他の溶液堆積方法としては、ディップコーティング、ロール印刷およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0086】
素子の複数の層を溶液処理によって形成する場合には、当業者は、たとえば1つの層を架橋した後に次の層を堆積させること、または隣接する層のうちの第1の層を形成する材料が第2の層を堆積させるために用いる溶媒に溶解しないようにこれらの層の材料を選択することによって、隣接する層の相互混合を防ぐ方法について熟知しているであろう。
【0087】
発光色
「赤色エレクトロルミネッセント材料」は、エレクトロルミネッセンスによって600〜750nm、好ましくは600〜700nm、より好ましくは610〜690nmの範囲の波長、および最も好ましくは650〜660nm付近に放射ピークを有する放射を発する有機材料を意味する。
【0088】
「緑色エレクトロルミネッセント材料」は、エレクトロルミネッセンスによって510〜580nm、好ましくは510〜570nmの範囲の波長を有する放射を発する有機材料を意味する。
【0089】
「青色エレクトロルミネッセント材料」は、エレクトロルミネッセンスによって400〜500nm、より好ましくは430〜500nmの範囲の波長を有する放射を発する有機材料を意味する。
【0090】
リン光発光体のためのホスト
先行技術において、Ikaiら、Appl.Phys.Lett.、79、No.2、2001、156頁に開示され、CBPとして知られている4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニルおよびTCTAとして知られている4,4',4''−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン;およびMTDATAとして知られているトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミン等のトリアリールアミン等の「小分子」ホストを含む数多くのホストが記載されている。ポリマーもホストとして知られており、特にたとえばAppl.Phys.Lett.2000、77(15)、2280頁に開示されたポリ(ビニルカルバゾール)等のホモポリマー;Synth.Met.2001、116、379頁、Phys.Rev.B 2001、63、235206頁およびAppl.Phys.Lett.2003、82(7)、1006頁にあるポリフルオレン;Adv.Mater.1999、11(4)、285頁にあるポリ[4−(N−4−ビニルベンジルオキシエチル,N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−tert−ブチルフェニルナフタルイミド)];およびJ.Mater.Chem.2003、13、50〜55頁にあるポリ(パラ−フェニレン)が知られている。コポリマーもホストとして知られている。
【0091】
金属錯体(リン光性および蛍光性)
好ましい金属錯体には、式(22)の置換されていてもよい錯体が含まれる。
ML1q2r3s
(22)
式中、Mは金属であり、L1、L2およびL3のそれぞれは配位基であり、qは整数であり、rおよびsはそれぞれ独立に0または整数であり、(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計はM上で利用可能な配位部位の数に等しく、式中aはL1上の配位部位の数、bはL2上の配位部位の数、cはL3上の配位部位の数である。
【0092】
重元素Mは強いスピン軌道相互作用を誘起し、三重項またはより高い状態からの迅速な項間交差および発光(リン光)を可能にする。適当な重金属Mとしては、
− セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウムおよびネオジム等のランタニド金属;および
− d−ブロック金属、特に2列および3列のもの、即ち元素39〜48および72〜80、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金
が挙げられる。
【0093】
f−ブロック金属のための適当な配位基としては、カルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノールおよびイミノアシル基を含むシッフ塩基等の酸素または窒素供与系が挙げられる。知られているように、発光性ランタニド金属錯体には、金属イオンの第1励起状態よりも高い三重項励起エネルギー準位を有する増感基(単数または複数)が必要である。発光は金属のf−f遷移に由来し、したがって発光色は金属の選択によって決定される。鋭い発光は一般的に狭く、ディスプレイ用途に有用な純粋色の発光をもたらす。
【0094】
d−ブロック金属は、三重項励起状態からの発光に特に適している。これらの金属は、ポルフィリンまたは式(23)の二座配位子等の炭素または窒素供与体と、有機金属錯体を形成する。
【0095】
【化17】

式中、Ar4およびAr5は同一または異なっていてよく、独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールから選択され、X1およびY1は同一または異なっていてもよく、独立に炭素または窒素から選択され、Ar4およびAr5は一緒になって縮合していてもよい。X1が炭素でY1が窒素である配位子が特に好ましい。
【0096】
二座配位子の例を下に示す。
【0097】
【化18】

【0098】
Ar4およびAr5のそれぞれは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい。これらの置換基の2つ以上は連結されて環、たとえば芳香環を形成していてもよい。特に好ましい置換基としては、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662およびUS2002−182441に開示されているような、錯体の発光を青色シフトさせるために用い得るフッ素またはトリフルオロメチル;JP2002−324679に開示されているようなアルキルまたはアルコキシ基;WO02/81448に開示されているような、発光材料として用いられた時に錯体への正孔輸送を補助するために用い得るカルバゾール;WO02/68435およびEP1245659に開示されているような、さらなる基を結合するために配位子を官能化するように作用することができる臭素、塩素またはヨウ素;およびWO02/66552に開示されているような、金属錯体の溶液処理性を得るか向上させるために用い得るデンドロンが挙げられる。
【0099】
発光性デンドリマーは、典型的には1つまたは複数のデンドロンに結合した発光性コアを含み、各デンドロンは分岐点および2つ以上の樹状分岐を含む。好ましくは、デンドロンは少なくとも部分的に共役しており、コアおよび樹状分岐の少なくとも1つはアリールまたはヘテロアリール基を含む。d−ブロック元素とともに用いるのに適した他の配位子としては、ジケトネート、特にアセチルアセトネート(acac)、トリアリールホスフィンおよびピリジンが挙げられ、そのそれぞれは置換されていてもよい。
【0100】
主族金属錯体は、配位子に基づく発光または電荷移動発光を示す。これらの錯体については、発光色は金属の他、配位子の選択によっても決定される。
【0101】
ホスト材料と金属錯体とは、物理的なブレンドの形態で組み合わせてもよい。あるいは、金属錯体をホスト材料に化学的に結合させてもよい。ポリマー性ホストの場合、たとえばEP1245659、WO02/31896、WO03/18653およびWO03/22908に開示されているように、金属錯体はポリマー主鎖に結合した置換基として化学的に結合してもよく、ポリマー主鎖中の繰り返し単位として組み込まれてもよく、またはポリマーの末端基として提供されてもよい。
【0102】
広範囲の蛍光性低分子量金属錯体が知られており、有機発光素子において実証されてきた[たとえばMacromol.Sym.125(1997)1〜48頁、US−A 5,150,006、US−A 6,083,634およびUS−A 5,432,014を参照]。2価または3価金属のための適当な配位子としては、たとえば8−ヒドロキシキノレートおよびヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナト(II)等の、酸素−窒素または酸素−酸素供与性原子(一般的には置換基酸素原子を有する環窒素原子または置換基酸素原子を有する置換基窒素原子もしくは酸素原子)を有するオキシノイド、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボン、ならびにサリシラートアミノカルボキシレートおよびエステルカルボキシレート等のカルボン酸が挙げられる。任意選択的な置換基としては、発光色を変化させ得る(ヘテロ)芳香族環上のハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリールまたはヘテロアリールが挙げられる。
【0103】
本発明を特にその好ましい実施形態を参照して示し、説明してきたが、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の形態および詳細において種々の変更が可能であることは、当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の単位:
【化1】

(式中、Xは、S、O、PおよびNの1つであり、Zは、NまたはPであり、Rは、Zに隣接するC原子以外の1つまたは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えられてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基である)を含むポリマー。
【請求項2】
ZがNである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
XがSである、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
Rがアリール基を含む、請求項1から3のいずれかに記載のポリマー。
【請求項5】
Rがトリアリールアミン基を含む、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
式(I)の単位が下記の構造:
【化2】

(式中、XおよびZは請求項1から3のいずれか一項に定義されたものであり、R3はアルキルまたはアリール置換基である)を有する、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
Rが可溶化基である、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
式(I)の単位が発光単位である、請求項1から7のいずれかに記載のポリマー。
【請求項9】
式(I)の単位が黄色発光単位である、請求項8に記載の発光ポリマー。
【請求項10】
1つまたは複数のさらなる電荷輸送および/または発光単位を含むコポリマーである、請求項1から9のいずれかに記載のポリマー。
【請求項11】
1つまたは複数のさらなる電荷輸送および/または発光単位が電子輸送単位を含む、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
電子輸送単位がフルオレン繰り返し単位である、請求項11に記載のポリマー。
【請求項13】
1つまたは複数のさらなる電荷輸送および/または発光単位が正孔輸送繰り返し単位を含む、請求項10から12のいずれかに記載のポリマー。
【請求項14】
正孔輸送単位が、トリアリールアミン繰り返し単位である、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
式(I)の単位が、式(I)のヘテロ芳香族環を介してまたはR基を介してポリマーに結合している、請求項1から14のいずれかに記載のポリマー。
【請求項16】
式(I)の単位が、ポリマー主鎖における繰り返し単位として、ポリマー主鎖に吊下がった側鎖における繰り返し単位として、または末端封鎖基として、ポリマーに組み込まれている、請求項1から15のいずれかに記載のポリマー。
【請求項17】
スズキ重合またはヤマモト重合を用いてモノマーを重合し、それぞれのモノマーが少なくとも1つの反応性基を有する、請求項1から16のいずれかに記載のポリマーを調製する方法。
【請求項18】
反応性基が、ボロン酸またはボロン酸エステル等のホウ素誘導体基、ハロゲン、トシレート、メシレートおよびトリフレートから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アノード、
カソード、および
アノードとカソードとの間に配置され請求項1から16のいずれかに記載のポリマーを含むエレクトロルミネッセント層
を備える有機発光素子(OLED)。
【請求項20】
アノードとエレクトロルミネッセント層との間に、アノードからエレクトロルミネッセント層の中への正孔注入を補助する導電性正孔注入層を備える、請求項19に記載のOLED。
【請求項21】
溶液処理によって、請求項1から16のいずれか一項に記載の発光ポリマーを溶液から堆積させてOLEDの層を形成するステップを含む、請求項19または請求項20に記載のOLEDを作製する方法。
【請求項22】
溶液処理法がスピンコーティングまたはインクジェット印刷である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項19または請求項20に記載のOLEDを備える光源。
【請求項24】
フルカラーディスプレイである、請求項23に記載の光源。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529975(P2011−529975A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520582(P2011−520582)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001869
【国際公開番号】WO2010/013002
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】