説明

有機発光素子

【課題】 より簡便な方法により製造でき、有機発光素子に流す電流による色の劣化が少ない高品質な発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 基板1と、前記基板の上に設けられた下部電極7と、前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層10と、前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極13−1,13−2とを有し、前記上部電極が、第一上部電極13−1と、前記第一上部電極の上に設けられた色変換層14と、前記色変換層の上に、前記第一上部電極に電気的に接触して設けられた第二上部電極13−2とを有する有機発光素子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に関し、特に、高精細で視認性に優れ、携帯端末機または産業用計測器の表示など広範囲に応用可能な有機エレクトロルミネセンス(以下有機ELという)ディスプレイに利用可能な有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に適用される発光素子の一例として、有機化合物の薄膜積層構造を有する有機EL素子が知られている。有機EL素子は、薄膜の自発光型素子であり、低駆動電圧、高解像度、高視野角といった優れた特徴を有することから、それらの実用化に向けて様々な検討がなされている。
【0003】
有機EL素子は、陽極と陰極の間に少なくとも有機発光層を備えた構造を有している。有機発光層は、陽極および陰極に電圧が印加されることによって生じる正孔および電子が再結合することで発光する層である。有機EL素子は、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を介在させた構造を有する。
【0004】
有機EL素子は、有機発光層に添加する色素の種類により、青色、緑色、赤色に発光させることできる。フルカラーディスプレイを実現するためには、画素(ピクセル)に3原色の発光素子をサブピクセルとして配置すればよい。しかし、各色の発光素子の特性はそれぞれ異なるため、サブピクセルの形成とその駆動方法は複雑となり、コストアップの要因となっている。そこで、白色光からカラーフィルターで3原色を得ることが試みられている。そのため、カラーフィルター方式に用いることのできる多色または白色発光の有機EL素子の実現が望まれている。
【0005】
白色発光素子は、例えば混合層タイプの発光層を含む2層以上の発光層を設け、2種以上のドーパントを含有させ、それにより2種以上の発光を得る方法(特許文献1:国際公開第98/08360号パンフレット)、発光層のホスト材料(青緑発光材料)に赤色発光材料を均一にドープする方法(特許文献2:米国特許第5683823号明細書)、青色発光層と緑色発光層を積層し、これに赤色系蛍光性化合物を添加する方法(特許文献3:特許第3366401号公報)、また、正孔輸送層に蛍光色素を添加する方法(特許文献4:特開平6-215874号公報)など種々の方法により検討されている。また、陽極とカラーフィルターの間に設けられた色変換層により、発光層から出射した青緑光の一部を赤色光等に変換し、該赤色光等と一部透過した青緑光とを混合して白色を得る方法が提案されている(特許文献5、6:特開2004-319471号公報、特開平10-22073号公報)。また、発光層から得られた青色光を、陽極と基板または陽極と陰極の間に設けられた蛍光変換層により他の色に変換する方法が提案されている(特許文献7、8:特開2005-056855号公報、特開2002-231452号公報)。
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/08360号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5683823号明細書/特開平9-208946号公報
【特許文献3】特許第3366401号公報
【特許文献4】特開平6-215874号公報
【特許文献5】特開2004-319471号公報
【特許文献6】特開平10-22073号公報
【特許文献7】特開2005-056855号公報
【特許文献8】特開2002-231452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記方式においては、白色発光を得る為に、発光層を2層以上積層し、かつ異なる蛍光色素を複数ドープすることや、発光層が単層でも異なる2種以上の蛍光色素を添加することが必要であった。前者の場合、層数が増えることが、後者の場合、最適な白色発光を得る為には、エネルギーの低い赤色の蛍光色素を非常に低い濃度で制御することが必要である。そのため、両者とも製造上、層の構成が複雑になる、または制御が困難であるなどの問題を抱えていた。また、これらの方法で作成された白色発光素子では、素子に流す電流により有機発光素子が劣化し、色が変化してしまうおそれがあった。
【0008】
色変換層を用いて白色発光を得る場合は、素子に流す電流による色が変化するという問題はない。しかし、色変換層は通常フォトリソグラフィで形成されるが、色変換層の蛍光色素の耐熱性が低いため十分な水分除去ができない場合がある。このため、色変換層内の残留水分が、画素部に浸入することにより、非発光領域(ダークエリア:DA)が発生し、表示品質が低下するというおそれがある。
【0009】
以上に鑑みて、本発明は、より簡便な方法により製造でき、有機発光素子に流す電流による色の劣化が少ない高品質な発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の側面によると、
基板と、
前記基板の上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層と、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極と
を有し、
前記上部電極が、
第一上部電極と、
前記第一上部電極の上に設けられた色変換層と、
前記色変換層の上に、前記第一上部電極に電気的に接触して設けられた第二上部電極と
を有する有機発光素子が提供される。
【0011】
本発明の他の側面によると、
基板と、
前記基板の上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層と、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極と
を有し、
前記下部電極が、
第一下部電極と、
前記第一下部電極の上に設けられた色変換層と、
前記色変換層の上に、前記第一下部電極に電気的に接触して設けられた第二下部電極と
を有する有機発光素子が提供される。
【0012】
本発明の他の側面によると、
複数の画素を個別に駆動して情報の表示を行う有機ELディスプレイのための有機ELパネルであって、
前記画素の各々が、複数種類のサブ画素を有し、
前記サブ画素の少なくとも1種類が、
上記有機発光素子と、
前記有機発光素子と実質的に重複する領域に設けられた色調整層と
を有する、有機ELパネルが提供される。
【0013】
本発明の他の側面によると、上記有機発光素子または上記有機ELパネルを有する、有機ELディスプレイが提供される。
【0014】
本発明の他の側面によると、
基板を供するステップと、
前記基板の上に下部電極を設けるステップと、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触するように有機発光層を設けるステップと、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触するように上部電極を設けるステップと
を含み、
前記上部電極を設けるステップが、
第一上部電極を設けるステップと、
前記第一上部電極の上に色変換層を設けるステップと、
前記色変換層の上に、前記第一上部電極に電気的に接触するように第二上部電極を設けるステップと
を有する有機発光素子の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の他の側面によると、
基板を供するステップと、
前記基板の上に下部電極を設けるステップと、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触するように有機発光層を設けるステップと、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触するように上部電極を設けるステップと
を含み、
前記下部電極を設けるステップが、
第一下部電極を設けるステップと、
前記第一下部電極の上に色変換層を設けるステップと、
前記色変換層の上に、前記第一下部電極に電気的に接触するように第二下部電極を設けるステップと
を有する有機発光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以下に詳細に説明するように、本発明によると、より簡便な方法により製造でき、有機発光素子に流す電流による色の劣化が少ない高品質な発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施の形態によって、限定されるものではない。
【0018】
上記したように、本発明の一の側面によると、
基板と、
前記基板の上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層と、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極と
を有する有機発光素子が提供される。
【0019】
以下に詳細に説明するように、本発明にかかる有機発光素子は、ボトムエミッション型(基板を通過させて有機発光層からの光を利用)およびトップエミッション型(基板を通過させずに有機発光層からの光を利用)のいずれにも適用することができる。
【0020】
上記したように、本発明にかかる有機発光素子は基板を有する。基板は、下部電極、有機発光層、上部電極等、基板の上に設けられる部材の形成に用いられる条件(溶媒、温度等)に耐えるものであることが好ましい。また、基板は、寸法安定性に優れていることが好ましい。特に、有機発光素子がボトムエミッション型である場合、基板は透明基板であることが好ましい。透明基板は、有機発光層から得られた光および色変換層によって変換された光(後述)に対して透明であることが好ましく、可視光(波長400〜700nm)に対して透明であることがさらに好ましい。具体的には、透明基板の材料の例として、ガラス、ならびにポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂が挙げられる。特に好ましくは、透明基板の材料として、ホウケイ酸ガラスまたは青板ガラス等が挙げられる。有機発光素子がトップエミッション型である場合、基板の材料として、任意のものを用いることができる。基板の厚さは、例えば、1.1mmとすることができる。
【0021】
上記したように、本発明にかかる有機発光素子は、前記基板の上に設けられた下部電極をさらに有する。本明細書において、「上に設けられた」は、基板に対して有機発光層の存在する向きに設けられていることを意図する。また、基板の上に下部電極を設けるとは、基板の上に下部電極を直接設ける場合の他、基板の上に、例えばカラーフィルター層を介して下部電極を設ける場合も含む。その他の部材に関しても同様である。なお、下部電極の材料等については、後述する。
【0022】
上記したように、本発明にかかる有機発光素子は、前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層をさらに有する。上記したように、有機発光層は、上部電極および下部電極に電圧が印加されることによって生じる正孔および電子が再結合することで発光する層である。有機発光素子は、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層をさらに有することができる。電子注入効率の改善の観点からは、有機発光素子が少なくとも電子注入層を有することが好ましい。具体的には、有機発光素子は、例えば以下に示す順番で、上記層を有することができる。なお、以下の(1)〜(6)の積層構造を有する有機発光素子にあっては、有機発光層または正孔注入層に陽極が電気的に接触され、有機発光層、電子輸送層または電子注入層に陰極が電気的に接触される。
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子輸送層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子輸送層
(5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
【0023】
上記各層の材料として、公知の材料を用いることができる。特に、青色から青緑色の発光を得る場合、有機発光層の材料の例として、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などを挙げることができる。また、正孔注入層の材料の例として、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物およびm−MTDATAのようなトリフェニルアミン誘導体などを挙げることができる。正孔輸送層の材料の例として、TPD、α−NPDのようなビフェニルアミン誘導体などを挙げることができる。電子輸送層の材料の例として、PBDのようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体などを挙げることができる。電子注入層の材料の例として、アルミニウムのキノリノール錯体や、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらを含む合金、アルカリ金属フッ化物などを挙げることができる。
【0024】
なお、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層および電子注入層の厚さは、例えば、それぞれ100nm、20nm、30nm、30nmおよび1nmとすることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層および電子注入層は、蒸着法等の公知の方法により形成することができる。
【0025】
上記したように、本発明にかかる有機発光素子は、前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極をさらに有する。なお、上部電極の材料等については後述する。
【0026】
上記したように、本発明にかかる有機発光素子にあっては、上部電極および/または下部電極が、第一電極と、前記第一電極の上に設けられた色変換層と、前記色変換層の上に、前記第一電極に電気的に接触して設けられた第二電極とを有する。
【0027】
具体的には、本発明の第一の実施の形態にかかる有機発光素子にあっては、前記上部電極が、第一上部電極と、前記第一上部電極の上に設けられた色変換層と、前記色変換層の上に、前記第一上部電極に電気的に接触して設けられた第二上部電極とを有する。以下に説明するように、本発明の第一の実施の形態にかかる有機発光素子は、ボトムエミッション型およびトップエミッション型のいずれにも適用することができる。
【0028】
具体的には、有機発光素子がボトムエミッション型である場合、前記第一上部電極が、可視光に関して透明な電極であり、前記第二上部電極が、可視光に関して反射性の電極であることが好ましい。また、有機発光素子がトップエミッション型である場合、前記第一上部電極および前記第二上部電極が、可視光に関して透明な電極であることが好ましい。このように、第一および第二上部電極を、それぞれ透明電極および反射性電極とすることで、有機発光層からの光を、基板を通過させて利用するボトムエミッション型とすることができる。また、第一および第二上部電極を、透明電極とすることで、有機発光層からの光を、基板を通過させずに基板の反対側から利用するトップエミッション型とすることができる。
【0029】
図1に、本発明の第一の実施の形態にかかる有機発光素子の一例の断面図を示す。当該有機発光素子は、ボトムエミッション型の素子である。図1に示すように、当該有機発光素子は、透明基板1と、下部電極(陽極)7と、正孔注入層8と、正孔輸送層9と、有機発光層10と、電子輸送層11と、電子注入層12と、第一上部電極(陰極)13−1と、色変換層14と、第二上部電極(陰極)13−2とを有する。
【0030】
また、本発明の第二の実施の形態にかかる有機発光素子にあっては、前記下部電極が、第一下部電極と、前記第一下部電極の上に設けられた色変換層と、前記色変換層の上に、前記第一下部電極に電気的に接触して設けられた第二下部電極とを有する。第一の実施の形態と同様に、以下の説明するように、本発明の第二の実施の形態にかかる有機発光素子は、ボトムエミッション型およびトップエミッション型のいずれにも適用することができる。
【0031】
具体的には、有機発光素子がボトムエミッション型である場合、前記第一下部電極および前記第二下部電極が、可視光に関して透明な電極であることが好ましい。また、有機発光素子がトップエミッション型である場合、前記第一下部電極が、可視光に関して反射性の電極であり、前記第二下部電極が、可視光に関して透明な電極であることが好ましい。
【0032】
図2に、本発明の第二の実施の形態にかかる有機発光素子の一例の断面図を示す。当該有機発光素子は、ボトムエミッション型の素子である。図1に示すように、当該有機発光素子は、透明基板1と、第一下部電極(陽極)7−1と、色変換層14と、第二下部電極(陽極)7−2と、正孔注入層8と、正孔輸送層9と、有機発光層10と、電子輸送層11と、電子注入層12と、上部電極(陰極)13とを有する。
【0033】
なお、上記したように、第一電極および第二電極は、電気的に互いに接触している。一般に、可視光に関して透明な電極は、通常の電極と比べて低い(例えば1桁以上)導電性を有する。このため、本発明にあっては、互いに電気的に接触した第一電極と第二電極とを有機層への電子注入用の電極と電子導電用の電極として用いることで、透明な電極を用いることによる配線抵抗を減らすことができる。パッシブ駆動する場合は、走査側電極(一般的には上部電極)には、データ側電極よりも大きい電流が流れるので、走査側電極を低抵抗化することが、素子の低電力化の観点から好ましい。
【0034】
また、上部電極が第一上部電極と第二上部電極とを有する態様にあっては、色変換層を第一上部電極および第二上部電極で覆うことで、色変換層の(水分、酸素等に対する)耐環境性を向上させることができる。また、下部電極が第一下部電極と第二下部電極とを有する態様にあっては、以下に詳細に説明するように、色変換層と基板との間にカラーフィルターや保護層などをフォトリソグラフィにより設けた場合であっても、第一下部電極を設けることで、下地からの水分の影響を防止することができる。
【0035】
さらに、第一電極と第二電極とを電気的に接触させて、第一電極と第二電極とを同じ電位にすることにより、色変換層を素子内に設けても、有機発光層に関してホール、電子の流れに変化がなく、色変換層が素子の電気的特性へ与える影響を回避することができる。一方で、上部電極と下部電極との間に色変換層を設けると、色変換層が、電子および/またはホール輸送性を持つ必要があり、使用できる材料も限られ、技術的に困難となる。
【0036】
また、第二電極は、第一電極と実質的に重複する領域に設けられていることが好ましい。本明細書において、「重複する領域」は、有機発光層を基板と垂直な方向から見たときに重なる領域を意図する。すなわち、第一電極と第二電極とは、有機発光層を基板と垂直な方向から見たときに重なることが好ましい。
【0037】
また、色変換層が、前記第一電極と重複する領域内に、第一電極と第二電極とが接触するように設けられていることが好ましい。これにより、第二電極を第一電極と実質的に重複する領域に設けた場合であっても、第一電極と第二電極との電気的な接触を確保することができる。なお、所望の白色発光を得るために、色変換層の面積は、適宜設定することができる。例えば、色変換層の大きさは、直径5μm〜50μmの円形で、5μm〜20μmの間隔で配置することができ、この範囲では発光の視覚的なムラは生じない。なお、本発明にあっては、第一電極と第二電極とが電気的に接触しているため、第一または第二電極から有機発光層(または電子注入層等)への電子および/またはホールの注入は、面での接触を介して行うことができる。このため、本発明にあっては、電子および/またはホールの注入性を損なうことなく、色変換を行うことができる。また、本発明にあっては、色変換層が第一電極と第二電極との間に設けられているため、ガラス界面における反射の問題がなく、有機発光層からの光を有効に利用できる。
【0038】
なお、可視光に関して透明な電極および可視光に関して反射性の電極として、公知の材料を用いることができる。透明な電極を下部電極として用いる場合、平坦性が優れていることからアモルファス膜であることが好ましく、具体的には、透明な電極が、In、Sn、Zn、およびAlからなる群から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含むことが好ましい。また、透明電極が電子注入層または電子輸送層に接する場合、電子注入性を良くするため、金属極薄膜を透明電極として用いることができる。そのような透明電極は、Al、Al−Li合金、Mg、およびMg−Ag合金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。また、反射性の電極が、Al、Ag、Ni、Cr、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。電極の材料として例えばAlを用いる場合、厚さを100nm以上とすると反射性の電極とすることができ、厚さを薄くすることで光の透過率を高くすることができる。本発明にあっては、電極の材料として例えばAlを用いる場合であっても、厚さを50nm以下とすることで、十分な透過率が得られる。
【0039】
また、前記色変換層が、蛍光色素および/または燐光色素を含むことが好ましい。また、前記色変換層が、前記有機発光層からの光を吸収し、前記有機発光層からの光とは異なる波長の光を発することができることが好ましい。色変換層が吸収できる光の波長および色変換層が発することができる光の波長は、有機発光層が発することができる光の波長に応じて、適宜選択することができる。特に、前記有機発光層が、400〜500nmの波長の光(青色から青緑色)を発することができ、前記色変換層が、580m以上の波長の光(赤色)を発することができることが好ましい。
【0040】
具体的には、色変換層の材料の例として、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、4,4−ジフロロ−1,3,5,7−テトラフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−sインダセン、プロパンディニトリル、ナイルレッドなどを挙げることができる。また、色変換層を、複数の材料から形成することもできる。例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体(Alq3)、4,4’−ビス−(2.2’−ジフェニルビニル)、2,5−ビス−(5−tert−ブチル−2−ヘンゾオキサゾルイル)−チオフェン、ビフェニルなどの材料をホスト材料として用い、前記材料を添加することで、色変換層を形成することもできる。なお、上記したように、本発明にあっては色変換層には電圧を印加しない。このため、色変換層として、伝導性の材料に加え、絶縁性の材料を用いることができる。
【0041】
また、色変換層は、有機発光層からの光に対する吸収ピーク波長において1.0以上の吸光度(90%以上の光吸収率)を有することが好ましい。これにより、色変換層からの光(例えば赤色光)の強度を向上させることができる。吸光度は、例えば、単色光を試料に照射し、透過した光の量を測定することで測定することができる。
【0042】
なお、色変換層を挟まない場合、電極の厚さは、例えば100nmとすることができる。また、色変換層を挟む第一電極および第二電極の厚さは、例えば、色変換層の厚さを100nmとした場合、以下のように設定することができる。上部電極間に色変換層を設け、ボトムエミッション型とする場合、第一上部電極(透明)および第二上部電極(反射性)の厚さは、それぞれ20〜50nmおよび100〜200nmとすることができる。上部電極間に色変換層を設け、トップエミッション型とする場合、第一上部電極(透明)および第二上部電極(透明)の厚さは、それぞれ100〜150nmおよび100〜200nmとすることができる。下部電極間に色変換層を設け、ボトムエミッション型とする場合、第一下部電極(透明)および第二下部電極(透明)の厚さは、それぞれ100〜200nmおよび100〜150nmとすることができる。下部電極間に色変換層を設け、トップエミッション型とする場合、第一下部電極(反射性)および第二下部電極(透明)の厚さは、それぞれ100〜200nmおよび20〜50nmとすることができる。なお、色変換層と有機発光層とに挟まれる電極は、可視光に対し透明であり、キャリア注入性が良いことが好ましい。キャリア注入性は、材料によって決まる。素子の外側の電極は、素子構成に応じて反射性または透過性が良く、低配線抵抗であることが好ましい。外側の電極を透明とする場合は、透過性と配線抵抗を膜厚で制御すると、これらはトレードオフの関係にあるので、バランスを考慮して設定する。
【0043】
なお、色変換層の厚さは、所望の白色発光を得るために、適宜設定することができる。特に、色変換層の厚さが、100〜200nmであることが好ましい。この範囲において、好適に吸光度を最適化することができる。
【0044】
なお、下部電極および上部電極のいずれを陽極または陰極とすることもできるが、一般に、光取出し側に設置される透明電極の酸化物材料は、仕事関数が大きく、ホール注入性に有利なことから陽極に用いられるため、ボトムエミッション型とする場合、下部電極を陽極、上部電極を陰極とし、トップエミッション型とする場合、下部電極を陰極、上部電極を陽極とする構成をとり易い。
【0045】
また、電極は、公知の任意の方法で形成することができる。例えば、電極を形成する方法の例として、DCスパッタ法等のスパッタ法や、蒸着法等を挙げることができる。また、その際のパターニングの方法の例として、リフトオフ法や、通常のフォトリソグラフィ法等を挙げることができる。
【0046】
また、色変換層は、公知の任意の方法で形成することができる。例えば、色変換層を形成する方法の例として、真空蒸着法、インクジェット法およびスピンコート法等を挙げることができる。ここで、上記したように、色変換層が、前記第一電極と重複する領域内に、第一電極と第二電極とが接触するように設けられていることが好ましい。このため、色変換層を形成した際に第一電極の一部が露出するように、色変換層を形成することが好ましい。具体的には、第一電極と重複する領域の外側および第一電極と重複する領域の一部を覆うマスクを用いて、色変換層を形成することが好ましい。
【0047】
なお、従来のように、基板の上にカラーフィルター、色変換層、平坦化層、パシベーション層、下部電極(陽極)、有機発光層および上部電極(陰極)を、この順に設ける場合、色変換層に用いる材料の劣化を防ぐために、平坦化層やパシベーション層を設ける際の処理温度が、例えば200℃以下に制限される。しかしながら、本発明にあっては、電極内に色変換層を設けるため、平坦化層やパシベーション層を設けた後に色変換層を設けることができる。このため、本発明にあっては、平坦化層やパシベーション層を設ける際の処理温度を従来より高くすることができ、カラーフィルター等に含まれる水分の除去をより完全に除去し、また、より良質な平坦化層やパシベーション層を得ることができる。ひいては、本発明にあっては、水分等の影響で発生すると考えられるダークエリアやダークスポットの発生を防ぐことができる。
【0048】
また、従来のように、基板の上にカラーフィルター、色変換層、平坦化層、パシベーション層、下部電極(陽極)、有機発光層および上部電極(陰極)を、この順に設ける場合、一般に、色変換層はフォトリソグラフィにより設けられていた。これは、色変換層を蒸着により設けようとする場合、各サブピクセル毎にマスクを用いて成膜する必要があり、高精度のアライニングが必要となる。しかしながら、本発明にあっては、電極内に色変換層を設け、有機発光層からの光を補う補色層として色変換層を用いるため、色変換層を設ける際にマスク成膜する必要がなく、精細度の問題を考慮することなく蒸着により色変換層を形成することができる。
【0049】
また、本発明にかかる有機発光素子は、第一電極と色変換層との間および/または第二電極と色変換層との間に設けられた色変換層保護層をさらに有することが好ましい。特に、色変換層保護層を、第一電極と色変換層との間および第二電極と色変換層との間の両方に設け、色変換層を色変換層保護層により封止することが好ましい。色変換層保護層の材料の例として、MgF2、CaF2等を挙げることができる。これらの材料は、真空紫外から10μmに至る赤外領域まで広い波長域にわたって高透過性であり、耐水性、耐薬品性、耐熱性など、化学的および物理的に安定である。色変換層保護層の厚さは、100〜200nmとすることができる。また、色変換層保護層は、蒸着法等の公知の方法で設けることができる。
【0050】
また、本発明にかかる有機発光素子は、前記上部電極の上に設けられた封止構造をさらに有することが好ましい。封止構造として、公知の任意のものを用いることができる。例えば、封止構造として、乾燥窒素雰囲気下において、UV硬化接着剤により封止ガラスを接着することができる。また、封止構造として、上部電極の上に、パッシベーション膜として利用されるSiN層を設けることもできる。
【0051】
例えば、図1に示したように、ボトムエミッション型で、第一および第二上部電極(陰極)間に色変換層を有する有機発光素子にあっては、下部電極(陽極)および上部電極(陰極)間に電圧を印加すると、有機発光層は、全方向に光(例えば青色光または青緑色光)を発する。有機発光層からの光の一部は、第一上部電極(陰極)を透過し、色変換層に到達する。色変換層に到達した光は色変換層に吸収され、その波長は、有機発光層からの光とは異なる波長の光(例えば赤色)に変換される。色変換された光も全方向に発光する。このため、当該有機発光素子にあっては、有機発光層から発せられた光(例えば青色光または青緑色光)に加えて、色変換層により色変換された光(例えば赤色光)を利用することで、より広い波長域を有する光が得られる。特に、有機発光層に青色光または青緑色光を発するものを用いた場合であっても、色変換層から赤色光を得ることで、全体として白色を発する有機発光素子が提供される。なお、第二上部電極(陰極)を反射性の電極とすることで、色変換された光をより有効に利用することができる。トップエミッション型あるいは第一および第二下部電極(陽極)間に色変換層を有する有機発光素子についても、同様である。
【0052】
また、赤色発光層と青色発光層とを積層することで白色光を得るような構造の有機発光素子にあっては、各々の発光層のドーパント濃度、膜厚などに応じて、発光色および電気的特性が変化してしまう。また、電子、ホールが流れる素子中に色変換層を単純に設ける場合、色変換層が、電子および/またはホール輸送性を持つ必要があり、使用できる材料も限られ、技術的に困難となる。一方で、本発明によれば、電気エネルギーを必要とするELによる発光を行うのは有機発光層(例えば青色から青緑色)のみであり、有機発光層からの光のみでは不足する色の光(例えば赤色)については、有機発光層からの光の一部を吸収しフォトルミネセンス(PL)によって得る。このため、一つの有機発光層にドーパントとして様々な色素を添加する必要はなく、色素がエネルギーのトラップになり発光効率を低下させることなく安定に発光できる。
【0053】
さらに、上記したように、従来は、白色光を得るために二層から構成される発光層などが考案されており、ドーパント濃度制御が問題になっていた。本発明にあっては、色変換層を用いるため、発光層は単一発光でよくなり、複雑な設計が不要となる。このように、本発明にかかる有機発光素子は、比較的簡便な方法により製造することができる。
【0054】
また、上記したように、本発明の他の側面によると、複数の画素を個別に駆動して情報の表示を行う有機ELディスプレイのための有機ELパネルが提供される。本発明にかかる有機ELパネルは、前記画素の各々が、複数種類のサブ画素(例えば青色、緑色および赤色のサブ画素)を有する。また、前記サブ画素の少なくとも1種類が、前記有機発光素子と、前記有機発光素子と実質的に重複する領域に設けられた色調整層とを有する。具体的には、前記上部電極が直線状であり、前記下部電極が直線状であり、前記上部電極および前記下部電極が行列状に設けられていることが好ましい。なお、上記したように、本発明にかかる有機ELパネルにあっては、ボトムエミッション型およびトップエミッション型のいずれの有機発光素子を適用することができる。
【0055】
上記したように、本発明にかかる有機ELパネルは、本発明にかかる有機発光素子を有する。有機発光素子は、上部電極と下部電極とが重複する領域に設けられていることが好ましい。なお、色変換を行うことなしに有機発光層から得られる光をそのまま利用することができるサブ画素については、色変換層を有さない有機発光素子を用いることができる。図3に、本発明にかかる有機ELパネルの模式的な平面図を示す。簡単のために、図3中、色変換層以外の要素は省略されている。色変換層は、円形状、四角形状、矩形状等の単位部分が所定の間隔で配置されたパターンで設けることができる。また、色変換層は、各々のサブ画素に対して設けてもよく、また複数のサブ画素に対して一体として設けても良い。すなわち、一の側面では、前記色変換層が、円形状または四角形状(図3(a)参照)であり、前記上部電極と前記下部電極とが重複する領域内に設けられていることが好ましい。特に、色変換層が円形状である場合、第一電極と第二電極とが電気的に接触する面積がより大きくなり、電極から有機発光層への電子注入性が良好である。また、他の側面では、図3(b)に示すように、前記色変換層が、矩形状であり、前記上部電極または前記下部電極と重複する領域内に設けられていることが好ましい。
【0056】
また、上記したように、本発明にかかる有機ELパネルは、前記有機発光素子と実質的に重複する領域に設けられた色調整層を有する。ここで、色調整層は、有機発光素子からの光の一部の波長域を遮断することができるカラーフィルター層、もしくは有機発光素子からの光を吸収し、有機発光素子からの光とは異なる波長の光を発することができる色変換層、またはそれらの両方の機能を有する層を意図するものとする。特に、上記したように、本発明にあっては、第一電極と第二電極との間に色変換層を設けることにより、安定な白色光を得ることができるので、本発明にかかる有機ELパネルは、光の一部の波長域を遮断することができるカラーフィルター層を有することが好ましい。ボトムエミッション型の有機発光素子を用いる場合、有機発光素子に対して基板側に、色調整層を設ける。逆に、トップエミッション型の有機発光素子を用いる場合、有機発光素子に対して基板とは反対側に、色調整層を設ける。本発明にかかる有機ELパネルは、各サブ画素における所定の色の光を得るために、色調整層を有する。具体的には、青色、緑色および赤色の光を得るために、青色フィルター層、緑色フィルター層および赤色フィルター層を有することが好ましい。色調整層の材料として、公知のものを用いることができる。色調整層の厚さは、0.5〜2μm、例えば1μmとすることができる。色調整層は、公知の任意の方法で形成することができる。例えば、色調整層は、所定の材料をスピンコート法により塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングすることで形成することができる。
【0057】
さらに、ボトムエミッション型の有機発光素子を用いる場合、本発明にかかる有機ELディスプレイは、前記有機発光素子と前記色調整層との間に設けられた平坦化層をさらに有することが好ましい。平坦化層の材料として、公知のものを用いることができる。平坦化層の厚さは、ガラス基板上で測定して1〜2μm、例えば1μmとすることができる。平坦化層は、公知の任意の方法で形成することができる。例えば、平坦化層は、UV硬化型樹脂をスピンコート法により塗布し、UV照射により硬化させることで形成することができる。
【0058】
さらに、ボトムエミッション型の有機発光素子を用いる場合、本発明にかかる有機ELディスプレイは、前記有機発光素子と前記平坦化層との間に設けられたパシベーション層をさらに有することが好ましい。パシベーション層の材料として、Si、Al等の酸化膜、窒化膜、あるいは酸窒化膜等の公知のものを用いることができる。パシベーション層の厚さは、例えば300nmとすることができる。パシベーション層は、公知の任意の方法で形成することができる。例えば、パシベーション層は、RFスパッタ法により形成することができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施例によって限定されるものではない。
【0060】
実施例1,2および比較例1,2として、画素数60×80×RGB、画素ピッチ0.33mmの有機ELディスプレイを作製した。また、実施例3および比較例3として、2mm四方の白色有機発光素子を作製した。
【0061】
[実施例1:ボトムエミッション型、上部電極(陰極)間に色変換層]
図4に、実施例1にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。実施例1にかかる有機ELディスプレイは、色変換方式を採用したボトムエミッション型のディスプレイである。図4に示すように、実施例1にかかる有機ELディスプレイは、透明基板101と、青色フィルター層102と、緑色フィルター層103と、赤色フィルター層104と、高分子平坦化層105と、パシベーション層106と、下部電極(陽極)107と、正孔注入層108と、正孔輸送層109と、有機発光層110と、電子輸送層111と、電子注入層112と、第一上部電極(陰極)113−1と、色変換層114と、第二上部電極(陰極)113−2とを有する。
【0062】
透明基板101として、コーニングガラス(50×50×1.1mm)を用いた。
【0063】
透明基板101上に、以下のように青色フィルター層102を形成した。青色フィルター層102の材料として、カラーモザイクCB−7001(富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)を用いた。この材料を、透明基板101上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施した。これにより、線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚1μmのラインパターンを有する青色フィルター層102を形成した。
【0064】
その後、透明基板101上に、以下のように緑色フィルター層103を形成した。緑色フィルター層103の材料として、カラーモザイクCG−7001(富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)を用いた。この材料を、青色フィルター層のラインパターンが形成されている透明基板101上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施した。これにより、線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚1μmのラインパターンを有する緑色フィルター層103を形成した。
【0065】
その後、透明基板101上に、以下のように赤色フィルター層104を形成した。赤色フィルター層104の材料として、カラーモザイクCR−7001(富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)を用いた。この材料を、青色フィルター層および緑色フィルター層のラインパターンが形成済されている透明基板101上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施した。これにより、線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚1μmのラインパターンを有する赤色フィルター層104を形成した。
【0066】
その後、色調整層(青色フィルター層102、緑色フィルター層103および赤色フィルター層104)上に、以下のように高分子平坦化層105を形成した。高分子平坦化層105の材料として、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)を用いた。この材料を、色調整層の上に、スピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯により照射した。これにより、ガラス基板上で膜厚1μmの高分子平坦化層105を形成した。この時、色調整層のパターンに変形はなく、高分子平坦化層の上面は平坦であった。
【0067】
なお、青色フィルター層の作製から、高分子平坦化層の作製における処理は、210℃〜250℃で実施した。
【0068】
その後、高分子平坦化層105上に、以下のようにパシベーション層106を形成した。パシベーション層106は、RFスパッタ法により、スパッタターゲットにSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いて、室温で形成した。これにより、パシベーション層106として、300nmのSiOx膜を形成した。
【0069】
その後、パシベーション層106上に、以下のように下部電極(陽極)107を形成した。まず、パッシベーション層の上面に、DCマグネトロンスパッタ法にて下部電極材料のインジウムスズ酸化物(IZO)を200nmの膜厚で全面に成膜した。その後、フォトレジストを用いたフォトリソグラフ法により、IZOのストライプパターンに形成し、下部電極を形成した。具体的には、ポジ型フォトレジストTFR−1150(東京応化工業(株)製)を全面に塗布し、線幅0.094mm、ピッチ0.11mmのストライプパターンとなるように、露光、現像を行い、ポストベークを行った。その後、フォトレジストパターンをマスクとし、シュウ酸により不要部のIZOをエッチングし、NMP等の溶剤にてレジスト剥離することによって、IZOのストライプパターンを形成した。
【0070】
その後、下部電極(陽極)107を形成した透明基板101を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、下部電極(陽極)107上に、正孔注入層108、正孔輸送層109、有機発光層110、電子輸送層111および電子注入層112を、真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内圧は1×10-4Paまで減圧した。正孔注入層108として、銅フタロシアニン(CuPc)を100nm積層した。正孔輸送層109として、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を20nm積層した。有機発光層110として、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm積層した。電子輸送層111として、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体(Alq3)を20nm積層した。電子注入層112として、LiFを1nm積層した。正孔注入層108、正孔輸送層109、有機発光層110および電子輸送層111は、0.1nm/sの蒸着速度で、電子注入層112は0.025nm/sの蒸着速度で、それぞれ成膜した。また、これらの層の構成は、ブルーグリーンの発光を主とするものである。以下に、各層に用いた材料の構造式を示す。
【0071】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0072】
その後、真空を破らずに、電子注入層112上に、第一上部電極(陰極)113−1、色変換層114および第二上部電極(陰極)113−2を順次成膜した。第一に、電子注入層112上に、以下のように第一上部電極(陰極)113−1を形成した。成膜は、下部電極(陽極)107のラインと垂直で線幅0.3mm、ピッチ0.33mmのストライプパターンが得られるマスクを用いて、蒸着法により実施した。この際、蒸着時の真空度は1×10-6torr、蒸着速度は0.5nm/sの条件で蒸着した。これにより、第一上部電極(陰極)113−1として、膜厚30nmのAl層を形成した。
【0073】
その後、真空を破らずに、第一上部電極(陰極)113−1上に、以下のように色変換層114を形成した。成膜は、下部電極(陽極)107と第一上部電極(陰極)113−1が重複する領域内に、少なくとも下部電極(陽極)107と第一上部電極(陰極)113−1の重複する領域の第一上部電極(陰極)113−1の一部が露出するようにしたマスクを用いて、マスク蒸着により実施した。より具体的には、直径20μmの円形の色変換層を40μm間隔で等間隔に配置した。(すなわち、一辺が60μmの平面ひし形格子の頂点に色変換層のパターンを配置した。)成膜に際して真空槽内圧は1×10-4Paまで減圧した。色変換層114の材料として、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)を用いた。これにより、膜厚100nmの色変換層114を成膜した。
【0074】
その後、真空を破らずに、色変換層114上に、以下のように第二上部電極(陰極)113−2を形成した。成膜は、第一上部電極(陰極)113−1上のラインと同じストライプパターンが得られるマスクを用いて、蒸着法により実施した。これにより、第二上部電極(陰極)113−2として、厚さ100nmのAl層を形成した。
【0075】
その後、得られた有機発光素子をグローブボックス内乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において、封止ガラス(図示せず)とUV硬化接着剤を用いて封止した。
【0076】
[実施例2:ボトムエミッション型、下部電極(陽極)間に色変換層]
以下の点以外は実施例1と同様に、実施例2にかかる有機ELディスプレイを作製した。図5に、実施例2にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。図5に示すように、実施例2にかかる有機ELディスプレイは、透明基板201と、青色フィルター層202と、緑色フィルター層203と、赤色フィルター層204と、高分子平坦化層205と、パシベーション層206と、第一下部電極(陽極)207−1と、色変換層214と、第二下部電極(陽極)207−2と、正孔注入層208と、正孔輸送層209と、有機発光層210と、電子輸送層211と、電子注入層212と、上部電極(陰極)213とを有する。
【0077】
実施例2にかかる有機ELディスプレイにあっては、パシベーション層206上に、以下のように第一下部電極(陽極)207−1、色変換層214および第二下部電極(陽極)207−2を形成した。第一に、DCマグネトロンスパッタにて、膜厚100nmのIZOを成膜し、第一下部電極となる層を形成した。その後、基板を、蒸着チャンバー内へ搬送し、実施例1と同様に色変換層をマスク蒸着にて形成した。その後、真空を破らず、対向スパッタ法により、IZOを100nm成膜し、第二下部電極となる層を形成した。その後、成膜チャンバーから基板を取り出し、実施例1における下部電極と同様に、フォトリソグラフィ法により、IZOを色変換層と共にパターニングした。パターンの寸法は、実施例1と同様とした。
【0078】
また、電子注入層212を形成した後真空を破らずに、電子注入層212の上に、上部電極(陰極)213を形成した。成膜は、上部電極(陰極)213は、第一および第二下部電極(陽極)207−1,207−2のラインと垂直で幅0.30mm、空隙0.03mmギャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、蒸着法により実施した。これにより、上部電極(陰極)213として、膜厚100nmのAlを形成した。
【0079】
[比較例1:ボトムエミッション型]
以下の点以外は実施例1と同様に、比較例1にかかる有機ELディスプレイを作製した。図6に、比較例1にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。図6に示すように、比較例1にかかる有機ELディスプレイは、透明基板501と、青色フィルター層502と、緑色フィルター層503と、赤色フィルター層504と、高分子平坦化層505と、パシベーション層506と、下部電極(陽極)507と、正孔注入層508と、正孔輸送層509と、青色発光層510−1と、赤色発光層510−2と、電子輸送層511と、電子注入層512と、上部電極(陰極)513とを有する。
【0080】
比較例1にかかる有機ELディスプレイにあっては、以下のように、青色発光層510−1を形成した。青色発光層のホスト物質は、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、ゲストは、4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)、ゲストのホストに対する濃度比は2%として共蒸着を行った。これにより、膜厚10nmの青色発光層510−1を形成した。
【0081】
また、以下のように、赤色発光層510−2を形成した。赤色発光層のホストはDPVBi、ゲストは4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−p−ジメチルアミノスチリル−4H−ピラン(DCM)、ゲストのホストに対する濃度比は1%として共蒸着を行った。これにより、膜厚30nmの赤色発光層510−2を形成した。
【0082】
また、以下のように、上部電極(陰極)513を形成した。すなわち、上部電極(陰極)は、実施例1における第二上部電極(陰極)と同様に、マスク蒸着により100nmのAl層を形成した。
【0083】
[比較例2:ボトムエミッション型]
以下の点以外は実施例1と同様に、比較例2にかかる有機ELディスプレイを作製した。図7に、比較例2にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。図7に示すように、比較例2にかかる有機ELディスプレイは、透明基板601と、青色フィルター層602と、緑色フィルター層603と、赤色フィルター層604と、ブラックマトリクス615と、色変換層614と、パッシベーション層606と、下部電極(陽極)607と、正孔注入層608と、正孔輸送層609と、有機発光層610と、電子輸送層611と、電子注入層612と、上部電極(陰極)613とを有する。なお、上部電極(陰極)613は、比較例1と同様に形成した。
【0084】
比較例2にかかる有機ELディスプレイにあっては、コーニング1737ガラス601上に、ブラックマトリクス(CK-7001:富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)605、赤色カラーフィルター(CR-7001:富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)604、緑色カラーフィルター(CG-7001:富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)603、青色カラーフィルター(CB-7001:富士フィルムエレクトロニックマテリアルズ製)602を、フォトリソグラフ法により形成した。各層の膜厚はそれぞれ1μmとした。
【0085】
また、以下のように、色変換層614を形成した。フォトレジストVPA100(新日鐵化学製)25gに対し、クマリン6を0.05g、ローダミンBを0.04g添加し、塗布液とした。これを塗布することにより、膜厚2μmの色変換層614を形成した。
【0086】
さらに、スパッタ法にて、0.5μmのSiOx膜からなるパッシベーション層606を形成した。膜厚以外は、実施例1におけるパッシぺーション層と同様の条件で成膜した。
【0087】
なお、色変換層の形成は、180℃で実施した。この温度は、実施例1における温度より30℃〜70℃低い。
【0088】
[実施例3:トップエミッション型、下部電極(陰極)間に色変換層]
図8に、実施例3にかかる有機発光素子の断面図を示す。実施例3にかかる有機発光素子は、色変換方式を採用したトップエミッション型の素子である。図8に示すように、実施例3にかかる有機発光素子は、透明基板301と、第一下部電極(陰極)313−1と、色変換層314と、第二下部電極(陰極)313−2と、電子輸送層311と、有機発光層310と、正孔輸送層309と、正孔注入層308と、上部電極(陽極)307とを有する。
【0089】
透明基板301上に、以下のように第一下部電極(陰極)313−1を形成した。第一下部電極として、マスクを用い、DCマグネトロンスパッタ法により、膜厚100nm、線幅2mmのAlラインパターンを形成した。
【0090】
その後、真空を破らずに、第一下部電極(陰極)313−1上に、以下のように色変換層314を形成した。成膜は、0.1nm/sの蒸着速度でマスク蒸着により実施した。色変換層の材料として、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)を用いた。これにより、膜厚100nmの色変換層314を成膜した。色変換膜の形状は、実施例1と同様とした。
【0091】
その後、真空を破らずに、色変換層314の上に、第二下部電極(陰極)313−2を形成した。マスク蒸着により、透明電極313−2として、膜厚30nmのMg−Ag合金層を積層した。
【0092】
その後、透明電極313−2上に、電子輸送層311、有機発光層310、正孔輸送層309および正孔注入層308を順次形成した。各層の材料、厚さ、成膜方法、成膜条件等は、実施例1と同様とした。
【0093】
その後、正孔注入層308上に、上部電極(陽極)307を形成した。成膜は、上部電極は、マスクを用いて対向スパッタによりIZOを200nm成膜した。出来上がった上部電極パターンは、下部電極を直行するような2mm幅のラインパターンとした。
【0094】
その後、上部電極(陽極)307上に、以下のように封止膜(図示せず)を形成した。封止膜の材料として、パッシベーション膜として利用されるSiNを用いた。成膜は、プラズマCVDにより、SiH4(シラン)ガスおよびN2(窒素)ガスを用い、各々の流量を15sccmおよび300sccmとし、RFパワーを15W、チャンバ内温度を150℃、チャンバ内圧力を1.2torrとして実施した。封止膜の膜厚は5μmとした。
【0095】
[比較例3:トップエミッション型]
以下の点以外は実施例3と同様に、比較例3にかかる有機発光素子を作製した。図9に、比較例3にかかる有機発光素子の断面図を示す。図9に示すように、比較例3にかかる有機発光素子は、透明基板701と、下部電極(陰極)713と、電子注入層712と、電子輸送層711と、赤色発光層710−1と、青色発光層710−2と、正孔輸送層709と、正孔注入層708と、上部電極(陽極)707とを有する。下部電極713は、膜厚を100nmとした以外は、実施例3における第二下部電極(陰極)と同様とした。青色発光層710−1および赤色発光層710−2の材料、厚さ、成膜方法、成膜条件等は、比較例1と同様とした。
【0096】
[評価1:輝度保持率、色度変化等の評価]
実施例1〜3および比較例1,3にかかる有機ELディスプレイおよび有機発光素子について、以下のように輝度保持率、色度変化等の評価を行った。第一に、実施例1および比較例1について、それぞれ3つの有機ELディスプレイを作製し、以下の条件で駆動させた。また、実施例2については、2つの有機ELディスプレイを作製し、同様の条件で駆動させた。また、実施例3および比較例3について、それぞれ3つの有機発光素子を作製し、同様の条件で駆動させた。
(駆動方法)
線順次走査:駆動周波数60Hz,デューティ1/60
電流密度 0.366A/cm2
【0097】
これらの有機ELディスプレイおよび有機発光素子について、以下のように特性の評価を行った。第一に、作製直後の初期特性として、直流電流の測定により電圧−電流特性および電流−輝度特性を測定することで、1000時間の連続駆動を行った後の保持率を測定した。また、作製直後および1000時間の連続駆動を行った後の、駆動電流密度の変化に対するCIE色度座標の変化を測定し、x値の変動を比較した。表1に、実施例1〜3および比較例1,3について、連続駆動後の輝度保持率、ならびに、作製直後および連続駆動後における駆動電流密度の変化に対する色度変化を示す。輝度保持率は、1000時間の連続駆動後の電流密度0.1A/cm2における輝度の作製直後に対する保持率(%)として示す。色度変化は、作製直後および1000時間の連続駆動を行った後のそれぞれにおいて、駆動電流密度を10-4A/cm2〜1A/cm2の範囲で変化させた際の、各駆動電流密度におけるEL発光スペクトルから色度を算出し、色度の最大値から最小値を引いた値を示す。
【0098】
なお、特性評価には、ケースレー(KEITHLEY)社ソースメータ2400、トプコンBM−8輝度計を使用した。また、ELスペクトルは、浜松ホトニクスPMA−11オプチカルマルチチャンネルアナライザーにより測定した。
【0099】
表1に示すように、全ての実施例において、初期および駆動後のCIE−x値変動の値は、0.005以下(測定精度以下)であった。このように、本発明にかかる有機発光素子を用いた場合、初期特性および輝度保持率を落とすことなく、初期および駆動後の駆動電流密度による色度変化を抑えることが可能となる。ここから、本発明によると、安定した白色発光有機EL素子およびフルカラー有機ELディスプレイが提供されることが分かる。
【0100】
【表1】

【0101】
[評価2:DA発生の評価]
実施例1および比較例2にかかる有機ELディスプレイについて、以下のようにダークエリア(DA)発生の評価を行った。各有機ELディスプレイを、85℃の高温環境で輝度100cd/m2にて500h駆動させた。これらを一定時間ごとに取り出した後、顕微鏡下で一定面積の画素を観察し、発光面のDAの変化を観察した。その結果、比較例2にかかる有機ELディスプレイにおいては、50μm以上のDAが1〜3個/cm2見られたが、実施例1にかかる有機ELディスプレイにおいては、50μm以上のDAはほとんど見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1に、本発明の第一の実施の形態にかかる有機発光素子の一例の断面図を示す。
【図2】図2に、本発明の第二の実施の形態にかかる有機発光素子の一例の断面図を示す。
【図3】図3に、本発明にかかる有機ELパネルの模式的な平面図を示す。
【図4】図4に、実施例1にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。
【図5】図5に、実施例2にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。
【図6】図6に、比較例1にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。
【図7】図7に、比較例2にかかる有機ELディスプレイの断面図を示す。
【図8】図8に、実施例3にかかる有機発光素子の断面図を示す。
【図9】図9に、比較例3にかかる有機発光素子の断面図を示す
【符号の説明】
【0103】
1〜701:基板
7〜707:下部電極
8〜708:正孔注入層
9〜709:正孔輸送層
10〜710:発光層
11〜711:電子輸送層
12〜712:電子注入層
13〜713:上部電極
14〜614:色変換層
102〜602:青色フィルター層
103〜603:緑色フィルター層
104〜604:赤色フィルター層
105〜505:平坦化層
106〜606:パシベーション層
615:ブラックマトリクス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層と、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極と
を有し、
前記上部電極が、
第一上部電極と、
前記第一上部電極の上に設けられた色変換層と、
前記色変換層の上に、前記第一上部電極に電気的に接触して設けられた第二上部電極と
を有する有機発光素子。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触して設けられた有機発光層と、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触して設けられた上部電極と
を有し、
前記下部電極が、
第一下部電極と、
前記第一下部電極の上に設けられた色変換層と、
前記色変換層の上に、前記第一下部電極に電気的に接触して設けられた第二下部電極と
を有する有機発光素子。
【請求項3】
前記第一上部電極が、可視光に関して透明な電極であり、前記第二上部電極が、可視光に関して反射性の電極であり、前記有機発光素子がボトムエミッション型である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第一上部電極および前記第二上部電極が、可視光に関して透明な電極であり、前記有機発光素子がトップエミッション型である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記第一下部電極および前記第二下部電極が、可視光に関して透明な電極であり、前記有機発光素子がボトムエミッション型である、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第一下部電極が、可視光に関して反射性の電極であり、前記第二下部電極が、可視光に関して透明な電極であり、前記有機発光素子がトップエミッション型である、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記透明な電極が、In、Sn、ZnおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも一つの酸化物、および/または、Al、Al−Li合金、Mg、およびMg−Ag合金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項3〜6のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記反射性の電極が、Al、Ag、Ni、Cr、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項3または6に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記色変換層が、蒸着法により形成されたものである、請求項1〜8のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記色変換層が、前記有機発光層からの光に対する吸収ピーク波長において1.0以上の吸光度を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項11】
複数の画素を個別に駆動して情報の表示を行う有機ELディスプレイのための有機ELパネルであって、
前記画素の各々が、複数種類のサブ画素を有し、
前記サブ画素の少なくとも1種類が、
請求項1〜10のいずれかに記載の有機発光素子と、
前記有機発光素子と実質的に重複する領域に設けられた色調整層と
を有する、有機ELパネル。
【請求項12】
前記上部電極が直線状であり、前記下部電極が直線状であり、前記上部電極および前記下部電極が行列状に設けられており、
前記色変換層が、円形状であり、前記上部電極と前記下部電極とが重複する領域内に設けられている、または
前記色変換層が、矩形状であり、前記上部電極または前記下部電極と重複する領域内に設けられている、
請求項11に記載の有機ELパネル。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の有機発光素子、または請求項11または12に記載の有機ELパネルを有する、有機ELディスプレイ。
【請求項14】
基板を供するステップと、
前記基板の上に下部電極を設けるステップと、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触するように有機発光層を設けるステップと、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触するように上部電極を設けるステップと
を含み、
前記上部電極を設けるステップが、
第一上部電極を設けるステップと、
前記第一上部電極の上に色変換層を設けるステップと、
前記色変換層の上に、前記第一上部電極に電気的に接触するように第二上部電極を設けるステップと
を有する有機発光素子の製造方法。
【請求項15】
基板を供するステップと、
前記基板の上に下部電極を設けるステップと、
前記下部電極の上に、前記下部電極に電気的に接触するように有機発光層を設けるステップと、
前記有機発光層の上に、前記有機発光層に電気的に接触するように上部電極を設けるステップと
を含み、
前記下部電極を設けるステップが、
第一下部電極を設けるステップと、
前記第一下部電極の上に色変換層を設けるステップと、
前記色変換層の上に、前記第一下部電極に電気的に接触するように第二下部電極を設けるステップと
を有する有機発光素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−115419(P2007−115419A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302484(P2005−302484)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】