説明

有機発光表示装置製造用の基板を整合する方法

【課題】基板とレーザービームとの整合方法を改良する。
【解決手段】ドナー要素から基板へ有機材料を転写させるビームを発生するレーザーによる有機発光表示装置製造用の基板を整合する方法であって、
(a) 該基板上に少なくとも1つの校正マークを設け、
(b) 該基板を該レーザーに対して配置し、該基板と該レーザー及び当該レーザービームとの間で、該レーザービームが該校正マークに当たるまで相対移動をさせ、そして
(c) 該レーザービームが該校正マークに当たった時点を検出することで、該基板の位置及び配向を決定する
ことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナーから基板へ有機材料を転写する方式の有機発光装置(OLED)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤、緑及び青の色画素のような着色画素(通常RGB画素という。)を配列したカラー又はフルカラー有機電場発光(EL)表示装置においては、RGB画素を形成するため発色性有機EL媒体を精密にパターン化する必要がある。基本的な有機ELデバイスは、共通要素として、アノード、カソード、及び該アノードと該カソードとに挟まれた有機EL媒体を含む。有機EL媒体は1又は2層以上の有機薄膜からなることができ、その一つが主として発光、すなわち電場発光を担う。この特定の層を、一般に有機EL媒体の発光層と称する。有機EL媒体中に存在する他の有機層は、主として電子的輸送機能を提供することができ、そして(正孔輸送のための)正孔輸送層又は(電子輸送のための)電子輸送層と呼ばれる。フルカラー有機EL表示パネルのRGB画素を形成する際には、有機EL媒体の発光層又は有機EL媒体全体を精密にパターン化する方法を考案する必要がある。
【0003】
典型的には、電場発光画素は、米国特許第5742129号に記載されているようなシャドーマスク技法により表示装置上に形成される。この技法は有効であるが、いくつかの欠点がある。シャドーマスク技法では、解像度の高い画素サイズを達成することが困難である。さらに、画素が適切な位置に形成されるように基板とシャドーマスクとを整合させることが容易ではない。基板を大きくする場合、アラインメント工程の一部としてシャドーマスクを操作し適切な位置に画素を形成させることが一層困難となる。シャドーマスク技法のさらなる欠点は、マスクのホールが時間とともに目詰まりすることである。マスクのホールが目詰まりすると、EL表示装置上に機能しない画素が生じ、望ましくない。
【0004】
シャドーマスク技法には、一辺が2〜3インチを超える寸法のELデバイスを製造する時に特に明白となる別の問題がある。すなわち、ELデバイスを正確に形成するために必要な精度を有する比較的大きなシャドーマスクを製造することが、極めて困難である。
【0005】
高解像度有機EL表示装置をパターン化するための方法が、米国特許第5851709号(Grandeら)に記載されている。この方法は、(1)対向する第1表面及び第2表面を有する基板を用意し、(2)該基板の第1表面の上に透光性断熱層を形成し、(3)該断熱層の上に吸光層を形成し、(4)該基板に、該第2表面から該断熱層にまで延在する開口部の配列を設け、(5)該吸光層の上に転写可能な発色性有機ドナー層を形成し、(6)該基板の開口部とデバイス上の対応するカラー画素とが配向するように該ドナー基板を表示装置基板に対して精密に整合させ、そして(7)該ドナー基板上の有機層を該表示装置基板に転写させるに十分な熱を該開口部上の吸光層に発生させるための輻射線源を使用する、という工程序列を含む。Grandeらの方法にまつわる問題は、ドナー基板上の開口部の配列をパターン化しなければならないことにある。このことは、ドナー基板と表示装置基板との間で精密に機械的にアラインメントしなければならないことをはじめとする、シャドーマスク技法の場合と同様の問題の多くを生ぜしめる。さらに、ドナーのパターンが固定され、容易に変更できないという問題もある。
【0006】
パターン化されていないドナーシートとレーザーのような精密光源とを使用することにより、パターン化ドナーに見られる困難の一部を取り除くことができる。Wolkらの一連の特許(米国特許第6114088号、同第6140009号、同第6214520号及び同第6221553号)は、ドナーの特定部分をレーザー光で加熱することにより、ドナーシートから基板へELデバイスの発光層を転写することができる方法を教示している。Wolkらは、光を使用することは、大規模デバイスの製造に必要な精密位置合わせが可能となる点で、好ましい感熱転写方式になり得るとコメントしている。確かにレーザー感熱転写法は精密位置合わせを可能にするが、当該基板の正しい領域がドナー材料転写物を受容するように、光線を整列させ方向付ける必要がある。同様に、他の感熱転写法も、当該基板と当該感熱転写手段との間の精密なアラインメント手段に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5742129号明細書
【特許文献2】米国特許第5851709号明細書
【特許文献3】米国特許第5688551号明細書
【特許文献4】米国特許第6114088号明細書
【特許文献5】米国特許第6140009号明細書
【特許文献6】米国特許第6214520号明細書
【特許文献7】米国特許第6211553号明細書
【特許文献8】米国特許第5937272号明細書
【特許文献9】米国特許第6194119号明細書
【特許文献10】米国特許第5578416号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1028001号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基板とレーザービームとを、該基板の熱膨張とは無関係に整合させる一層有効な方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、レーザーと基板とを適切に整合させるのに必要なアラインメント工程数を極力減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、ドナー要素から基板へ有機材料を転写させるビームを発生するレーザーによる有機発光表示装置製造用の基板を整合する方法であって、
(a) 該基板上に少なくとも1つの校正マークを設け、
(b) 該基板を該レーザーに対して配置し、該基板と該レーザー及び当該レーザービームとの間で、該レーザービームが該校正マークに当たるまで相対移動をさせ、そして
(c) 該レーザービームが該校正マークに当たった時点を検出することで、該基板の位置及び配向を決定する
ことを特徴とする方法によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有利な効果は、基板上に校正マーク(複数可)を設けることにより、有機材料を転写させる前に当該基板の位置及び配向を決定する有効な方法を実現できることにある。本発明のさらなる有利な効果は、ドナー要素から基板への転写に用いられるものと同じレーザービームを使用することにより、当該基板のレーザーに対する位置及び配向を決定することができることにある。本発明によるアラインメントは精度が高く、校正マークを直接検出することにより提供される。本発明のさらなる有利な効果は、高精度アラインメント情報を、最少の工程数で発現させることができることにある。本発明の別の有利な効果は、異なる画素部位へ材料を転写するためのレーザービームの自動整合が可能となることにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−a】本発明に従い構築されたOLED基板を示す上面図である。
【図1−b】レーザーに対する基板の位置決めを示す横断面図である。
【図2】校正マーク並びに光検出器及びレーザースポットの位置を示す、基板部分の拡大上面図である。
【図3】本発明の方法を可能ならしめる相対移動を提供する装置の一態様を示す略図である。
【図4−a】本発明に従い光線で固定基板/ドナー要素組合せ体を照射するレーザーを示す横断面図である。
【図4−b】本発明の実施において、OLED基板及び該基板に関して適切に配置されたドナー要素を示す横断面図である。
【図5】信号を処理し、校正マークの位置を検出して決定するのに用いられる電気光学式サブシステムを示すブロック図である。
【図6】校正マークの位置を検出する際の全工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語「表示装置」又は「表示パネル」は、ビデオ画像又はテキストを電子的に表示することができるスクリーンをさす。用語「画素」は、当該技術分野で認識されている意味で使用され、表示パネルの一領域であって、他の領域とは独立に発光するように刺激され得る領域をさす。用語「OLEDデバイス」又は「OLED表示装置」は、有機発光ダイオードを画素として含む表示装置、という当該技術分野で認識されている意味で使用される。カラーOLEDデバイスは少なくとも1色の光を放出する。用語「多色」は、異なる領域で異なる色相の光を放出することができる表示パネルをさし、具体的には、異なる色の画像を表示することができる表示パネルをさす。これらの領域は必ずしも隣接しなくてもよい。用語「フルカラー」は、可視スペクトルの赤、緑及び青の各色域で発光し、任意の色相又は色相の組合せで画像を表示することができる多色表示パネルをさす。赤、緑及び青の各色は三原色を構成し、この三原色を適宜混合することにより他のすべての色を発生させることができる。用語「色相」は、可視スペクトル内の発光強度プロファイルをさし、異なる色相は視覚的に識別できる色差を示す。画素又は二次画素とは、一般に、表示パネルにおいてアドレス可能な最小単位をさす。モノクロ表示装置の場合、画素又は二次画素の間に区別はない。用語「二次画素」は、多色表示パネルにおいて使用され、特定の色を発光するために独立にアドレスすることができる画素の部分をさす。例えば、青色二次画素は、青光を放出するためにアドレスすることができる画素の当該部分である。フルカラー表示装置の場合、一つの画素が、三原色の二次画素、すなわち青、緑及び赤で構成されることが一般的である。用語「ピッチ」は、表示パネルにおける2つの画素又は二次画素を隔てる距離をさす。したがって、二次画素ピッチとは、2つの二次画素間の分離を意味する。
【0013】
図1−aに、本発明により構築されたOLED基板10の上面図を示す。OLED基板10は画素部12の配列を含む。画素部分12は、それぞれ電極と組み合わされており、ロウ電極とカラム電極とを重ね合わせたいわゆるパッシブ型表示装置の一部、又は共通アノードと個別薄膜トランジスタ(TFT)とを有するアクティブ型表示装置の一部となり得る。各画素部12は、画素(モノクロ表示装置の場合)又は二次画素(フルカラー表示装置の場合)となり得る。このような装置においては、個々の画素間又は二次画素間の距離が100μm未満であることが望ましい場合がある。
【0014】
基板10は、有機固体、無機固体又は有機・無機混合固体であってドナーから発光性材料を受容する表面を提供するものであることができる。基板10は硬質であっても軟質であってもよく、シートやウェハのような独立した個別の小片として、又は連続ロール体として、加工されることができる。典型的な基板材料として、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、酸化物半導体、窒化物半導体又はこれらの組合せが挙げられる。基板10は、均質材料混合物、材料複合体又は材料多層体であることができる。基板10はOLED基板、すなわちOLED表示装置を製造するために汎用されている基板、例えば、アクティブマトリックス型低温ポリシリコンTFT基板、であることができる。基板10は、所期の発光方向及び校正検出法に応じて、透光性又は不透明のいずれかであることができる。当該基板を通してEL発光を観察する場合及び当該基板を通してレーザースポットを観察する場合には透光性であることが望まれる。このような場合には、一般に透明なガラス又はプラスチックが用いられる。EL発光を上部電極を通して観察する用途の場合には、底部の支持体の透過性が問題になることはないため、透光性、吸光性又は光反射性であることができる。この場合に用いられる支持体としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミックス及び回路基板材料が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の目的に対しては、基板10はOLED基板であることが好ましく、用語「基板」と「OLED基板」とを相互交換的に使用する。
【0015】
図1−aに、基板10の上の校正マーク40及び42を示す。校正マークは、例えば光学的な、手段によって検出可能な基板10の上の特徴であり、以下で明らかとなるように画素部12に対して発光層を適正に付着させるため基板10の位置及び配向を決定するのに有用である。これらの特徴は、校正マークであるが、アクティブマトリックス又はパッシブマトリックスの一部であることのような、他の目的を有することもできる。基板10の既知の位置に、1又は2以上の校正マークを形成する。校正マーク40及び42は、1又は2以上のOLED表示装置を形成させるため基板10の上に有機材料を転写すべき領域である材料転写領域14の外側にあることが好ましい。校正マーク40及び42は、基板10の上の特定点の識別を可能ならしめるように設計され、そして交差十字線、三角形、十字形、円形、正方形、交差三角形、「×」印その他のある点を定めるのに利用することができる任意形状をはじめとする特定の形状を有することができる。校正マークは、第2の校正マークが使用されない場合には、無限回転対称形(例、円形又は目玉形)であってはならない。単一の校正マークは、その回転対称の程度が、実質的な基板の誤整合が裸眼にもはっきりと見えるようなものであれば、部分回転対称形であってもよい(例、90°間隔で回転対称形である十字形)。好ましい態様では、校正マーク40は十字形である。しかしながら、非回転対称形又は限定回転対称形であればいずれのマークでも当該回転位置の決定を可能ならしめることが実現される。精度を高めるためには、基板10の上に、それぞれ十字形のような特定の形状を有する2つの校正マーク40及び42を、基板10の長さの50%以上の距離を置いて離して設ける態様が好ましい。各校正マークは光検出器の上に配置される。
【0016】
図1−bに、レーザービーム74を発生するレーザー100に対する基板10の配置を表わす横断面図を示す。この態様では、基板10とレーザー100及びレーザービーム74との間で相対移動をさせることによりレーザービーム74が校正マーク42に当たることができるように、レーザー100と光検出器22との間に基板10が配置されている。光検出器22は、レーザービーム74が校正マーク42に当たった時点を検出することができる。
【0017】
図2に、校正マーク40並びに光検出器22及びレーザースポット20の位置を示す、基板10の一部の拡大上面図を示す。光検出器22は、例えばフォトディテクタであることができる。光検出器22は、当たる光、例えばレーザースポット20により提供される光に感光する光検出器22の部分である光検出器有効領域24を含む。この具体的態様では、光検出器22は基板10の下方に配置され、そして基板10は、十分量の光が基板10を通過して光検出器22によって検出されるように、十分な透明性を有する。基板10とレーザー100及びレーザービーム74との間で相対移動をさせることにより、校正マーク40の位置及び配向を検出することができる。相対移動とは、レーザースポット20、基板10及び光検出器22の各位置が相互に変化するように、本装置の1又は2以上の部品を移動させることを意味する。相対移動は、レーザースポット20を移動させる、基板10を移動させる、レーザースポット20及び光検出器22の両方を移動させる、等、各種の方法によって達成することができる。相対移動を、ラスター様式の走査法、すなわち走査線の2次元序列で行うことにより、校正マーク40の画像を構築することができる。校正マークが十字形である好ましい態様では、当該プラス記号の水平線と走査線との間の角度から校正マークの角回転を推定することができる。
【0018】
2つの校正マーク40及び42を採用する好ましい態様では、2つの校正マーク間の距離が長いことにより、回転誤整合角度を単一校正マークの場合よりも正確に決定することができる。この決定は、両方の校正マーク40及び42の中心を測定し、そしてこれらの校正マーク間のラインとレーザースポット走査48とがなす角度を算出することにより、行われる。次いで、この角度を所望の配向と比較して、適当な調整を行うことができる。校正マークの中心がわかることにより、その所望の位置に対するx、y変位を得ることができ、画像の配置が回転的及び並進的に正確となるように基板を適切に並進させ、或いは画像ファイルを変更することができる。
【0019】
その他の態様も可能である。例えば、光検出器22とレーザースポット20とを共に同一面上に、すなわち基板10の上方に配置することも可能である。この場合、基板10は透明である必要はなく、そして光検出器22は基板10の表面からの反射光を検出することとなる。
【0020】
さらに図2には、光検出器の位置46に関連して光検出器の信号強度50の相対強さを示す。レーザースポット走査48が示すように、相対移動によりレーザースポット20の見掛けの位置が変動し、レーザービーム74が校正マーク40に複数の位置で当たることになる。信号強さ44で測定される光検出器信号強度50は、光検出器有効領域24においては、校正マーク40によって減少されない限り、強くなる。光検出器22は、光検出器信号強度50の変化によって、レーザービーム74が校正マーク40に当たった時点を検出することができる。校正マーク、例えば40の検出により、光検出器の相対位置46に対する光検出器信号強度50のような情報を記録して算定することができる。このように、第1方向における校正中心26の位置を決定することができる。追加のレーザースポット走査のような技法により、直交する第2方向における校正マーク40の中心位置を決定することができる。記録された情報を使用して、基板10の位置及び配向を算出することができる。
【0021】
図3に、基板10とレーザー100及びレーザービーム74との間で相対移動を行わせて本発明による方法を可能ならしめる装置18の一態様を示す。該装置18は基板10を移動させるための装置、すなわち、y軸並進ステージ30、x軸並進ステージ32及び押え定盤36付き回転ステージ34を含む。押え定盤36は光検出器22を含むが、本図には明瞭化のため示されていない。レーザー100は、これも図示されていないが、押え定盤36及び基板10の上方の固定位置に配置される。
【0022】
基板10は、これから説明するように、レーザースポット20と基板10との間で相対移動をさせるように、選ばれた位置に対して横方向及び角度的に移動することができる。基板10は、例えば真空押え装置であることができる押え定盤36の上に搭載される。レーザースポット20は、例えばレーザープリントヘッドからのものであることができる。x軸並進ステージ32は、横方向において、マイクロメートルのオーダーの解像度で、基板10を移動させてその位置を設定することができる。x軸並進ステージ32はDover Instruments社のような製造業者から市販されている。x軸並進ステージ32は、一方向における横方向の変位について調整することができ、このように、基板10を横方向に移動可能とすることにより、基板10に対するレーザースポット20の位置を調整することができる。
【0023】
x軸並進ステージ32はy軸並進ステージ30に搭載されている。y軸並進ステージ30は、x軸並進ステージ32と同様であるが、これとは直交するように配置され、したがってx軸並進ステージ32を、ひいては基板10を、垂直方向において、マイクロメートルのオーダーの解像度で、移動させることができる。
【0024】
x軸並進ステージ32には回転ステージ34が搭載されている。回転ステージ34により、押え定盤36及び基板10の角度調整が可能となり、よって基板10を角度的に移動させることができる。
【0025】
図4−aに、本発明に従い光線で固定基板/ドナー要素組合せ体を照射するレーザー100の横断面図を示す。レーザー100は、変調多チャンネル式線形レーザー光線を放出する多チャンネル式レーザーであることができる。並進ステージは、明瞭化のため、図示されていない。ドナー要素16が、基板10と転写関係をなすように、レーザー100と基板10との間に配置されている。すなわち、ドナー要素16は、基板10に接触するように配置されるか(図示なし)、基板10から一定の間隔を置いて保持される。ドナー要素16は、加圧手段96によって所定の位置に保持される。加圧手段96は、透明支持体であってもよいし、ドナー要素16を基板10と密接な関係で固定するため気体で加圧されるチャンバであってもよい。
【0026】
レーザー100は、多チャンネル式、すなわち多重変調チャンネル式の線形レーザー光線であることができるレーザービーム74を、プリントレンズ94を通して放出する。図示の明瞭化のため、レーザービーム74は、個別にアドレス可能な複数のチャンネルのレーザー光として多チャンネル性であり得ることを強調するため一連のラインとして描かれている。これらのチャンネルが隣接的であって、連続バンド状レーザー光として照射挙動し得ることは理解される。レーザービーム74は、透明である加圧手段96を通してドナー要素16の上に向けられ、そしてドナー要素16の非転写面に当たる。レーザー100と基板10との間で相対移動をさせながらレーザービーム74を変調させることにより、所望のパターンを得ることができる。
【0027】
図4−bに、本発明の実施において、OLED基板及び該基板に関して適切に配置されたドナー要素を示す横断面図を示す。ドナー要素16と基板10は転写関係にある。すなわち、ドナー要素16は基板10の上に、又はそれに近接して、配置される。ドナー要素16は支持体68、エネルギー吸収層70及び有機材料層72を含む。ドナー要素16はパターン化されていない、すなわち、エネルギー吸収層70及び有機材料72が支持体68の表面に一様にコーティングされている。ドナー要素16の非転写面76をレーザービーム74で選択的に照射し、該ビームがエネルギー吸収材料70の選択部分に吸収されそこを加熱し、よって有機材料72の選択部分を加熱することにより、ドナー要素16の転写面78から基板10へ有機材料72が転写される。選択的照射は、レーザービーム74と基板10との間で相対移動をさせ、基板10の決定された位置及び配向に従いレーザービーム74を活性化させることにより行い、ドナー要素16から基板10の所望の位置(例、画素部12)に有機材料72を転写させる。レーザービーム74は、タイミングに従い、又は位置に従い、活性化させることができる。有機材料72の選択された部分が気化又は昇華することにより、基板10への転写時に有機層82となる。
【0028】
エネルギー吸収層70は、レーザービーム74を基板10にまでは通過させない。一態様では、基板10の整合を、ドナー要素16を基板10の上に配置する前に行うことができる。別の態様では、ドナー要素16は校正マーク40及び42の領域にはエネルギー吸収層70を含まないため、校正マーク40及び42の領域において十分に透明であり、ドナー要素16は十分な光を通過させ、それが校正マーク40及び42に当たり、本発明の方法を可能にする。この場合、ドナー要素16を基板10の上に配置してから整合工程を実施することができる。
【0029】
支持体68は、少なくとも以下の要件を満たす数種の材料のいずれでできていてもよい。当該支持体は、本発明を実施する際の支持体のロール間搬送又はスタック型シート搬送及び予備被覆工程を許容するに十分な柔軟性及び引張強さを兼ね備えなければならない。支持体68は、片面が加圧された状態での光熱誘導式転写工程に際して、また水蒸気のような揮発性成分を除去するために企図されるいかなる予備加熱工程に際しても、構造的団結性を維持できることが必要である。さらに、支持体68は、片面上に比較的薄い有機ドナー材料のコーティングを受容し、このコーティングを、被覆された支持体の予想される保存期間内に劣化させることなく保持することができる必要もある。これらの要件を満たす支持体材料の例として、金属箔、当該支持体上のコーティングの転写性有機材料を転写させる際に予測される支持体温度より高いガラス転移温度を示す特定のプラスチック箔及び繊維強化プラスチック箔が挙げられる。好適な支持体材料の選定は既知の工学的手法によることができるが、本発明の実施に有用な支持体として構成されるときに、選ばれた支持体材料の特定の側面がさらなる検討に値することが認識されている。例えば、当該支持体が、転写性有機材料による予備コーティングの前に、多段階洗浄及び表面調製工程を必要とすることもあり得る。当該支持体材料が輻射線透過性材料である場合には、当該支持体の内部又は表面に輻射線吸収材料を含めると、適当なフラッシュランプからの輻射線フラッシュ又は適当なレーザーからのレーザー光を使用する時の当該ドナー支持体の加熱効果が高くなり、これに応じて転写性有機ドナー材料の当該支持体から基板への転写性が向上することとなり有利となり得る。
【0030】
エネルギー吸収層70は、スペクトルの所定部分の輻射線を吸収して熱を発生することができる。エネルギー吸収層70は、譲受人共通の米国特許第5578416号明細書に記載されている色素のような色素、カーボンのような顔料、又はニッケル、クロム、チタン、等のような金属であることができる。
【0031】
典型的なOLEDデバイスは下記の層を、通常、アノード、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードの順序で、含有することができる。これらのいずれか又はすべてが有機材料72を含むことができ、このため有機層を形成する。有機材料72は、正孔注入性材料、正孔輸送性材料、電子輸送性材料、発光性材料、ホスト材料又はこれら材料の任意の組合せであることができる。
【0032】
正孔注入性(HI)材料
常に必要であるものではないが、有機発光表示装置に正孔注入層を設けることが有用となる場合が多い。正孔注入層は、後続の有機層の薄膜形成特性を改良し、かつ、正孔を正孔輸送層に注入し易くするように機能し得る。正孔注入層に使用するのに適した材料として、米国特許第4720432号に記載されているようなポルフィリン系化合物や、米国特許第6208075号に記載されているようなプラズマ蒸着フルオロカーボンポリマーが挙げられるが、これらに限定はされない。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入性材料が、欧州特許出願公開第0891121号A1及び同第1029909号A1に記載されている。
【0033】
正孔輸送性(HT)材料
有機材料72として有用な正孔輸送性材料は、芳香族第三アミンのような化合物を含むことがよく知られている。芳香族第三アミンとは、その少なくとも一つが芳香族環の環員である炭素原子にのみ結合している3価窒素原子を1個以上含有する化合物であると解される。一つの形態として、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えば、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン又は高分子アリールアミンであることができる。トリアリールアミン単量体の例が、米国特許第3180730号(Klupfelら)に示されている。1以上のビニル基で置換された、及び/又は少なくとも一つの活性水素含有基を含む、その他の好適なトリアリールアミンが、譲受人共通の米国特許第3567450号及び同第3658520号(Brantleyら)に記載されている。
【0034】
より好ましい種類の芳香族第三アミンは、米国特許第4720432号及び同第5061569号に記載されているような芳香族第三アミン部分を2個以上含有するものである。このような化合物には、下記構造式(A)で表わされるものが含まれる。
【0035】
【化1】

【0036】
上式中、Q1及びQ2は各々独立に選ばれた芳香族第三アミン部分であり、そしてGは、アリーレン、シクロアルキレン又は炭素-炭素結合のアルキレン基のような結合基である。一つの実施態様において、Q1及びQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造体(例、ナフタレン)を含有する。Gがアリール基である場合、それはフェニレン部分、ビフェニレン部分又はナフタレン部分であることが便利である。
構造式(A)を満たし、かつ、2つのトリアリールアミン部分を含有する有用な種類のトリアリールアミンは、下記構造式(B)で表わされる。
【0037】
【化2】

【0038】
上式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、アリール基もしくはアルキル基を表わすか、又は、R1及びR2は一緒にシクロアルキル基を完成する原子群を表わし、そして
3及びR4は、各々独立に、アリール基であってそれ自体が下記構造式(C)で示されるようなジアリール置換型アミノ基で置換されているものを表わす。
【0039】
【化3】

【0040】
上式中、R5及びR6は各々独立に選ばれたアリール基である。一つの実施態様において、R5及びR6の少なくとも一方は、多環式縮合環構造体(例、ナフタレン)を含有する。
別の種類の芳香族第三アミンはテトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、アリーレン基で結合された、構造式(C)で示したようなジアリールアミノ基を2個含む。有用なテトラアリールジアミンには、下記構造式(D)で表わされるものが含まれる。
【0041】
【化4】

【0042】
上式中、Areは各々独立に選ばれたアリーレン基、例えば、フェニレン又はアントラセン部分であり、
nは1〜4の整数であり、そして
Ar、R7、R8及びR9は各々独立に選ばれたアリール基である。
典型的な実施態様では、Ar、R7、R8及びR9の少なくとも一つが多環式縮合環構造体(例、ナフタレン)である。
【0043】
上記構造式(A)、(B)、(C)、(D)の各種アルキル、アルキレン、アリール及びアリーレン部分も、各々それ自体が置換されていてもよい。典型的な置換基として、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、並びにフッ化物、塩化物及び臭化物のようなハロゲンが挙げられる。各種アルキル及びアルキレン部分は、典型的には約1〜6個の炭素原子を含有する。シクロアルキル部分は3〜約10個の炭素原子を含有し得るが、典型的には、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルの環構造体のように、5個、6個又は7個の環炭素原子を含有する。アリール部分及びアリーレン部分は、通常はフェニル部分及びフェニレン部分である。
【0044】
正孔輸送層は、芳香族第三アミン化合物の単体又は混合物で形成することができる。具体的には、構造式(B)を満たすトリアリールアミンのようなトリアリールアミンを、構造式(D)が示すようなテトラアリールジアミンと組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合、後者を、トリアリールアミンと電子注入及び輸送層との間に挿入された層として配置する。以下、有用な芳香族第三アミンを例示する。
【0045】
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[4(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
ポリ(N-ビニルカルバゾール)
N,N’-ジ-1-ナフタレニル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-ターフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-ターフェニル
4,4’-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(8-フルオルアンテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’-テトラ(2-ナフチル)-4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル
4,4’-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4’-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
【0046】
別の種類の有用な正孔輸送性材料として、欧州特許第1009041号に記載されているような多環式芳香族化合物が挙げられる。さらに、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン及びPEDOT/PSSとも呼ばれているポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)のようなコポリマー、といった高分子正孔輸送性材料を使用することもできる。
【0047】
発光性材料
有機材料72として有用な発光性材料は周知である。米国特許第4769292号及び同第5935721号に詳述されているように、有機EL要素の発光層(LEL)は発光材料又は蛍光材料を含み、その領域において電子-正孔対が再結合する結果として電場発光が生じる。発光層は、単一材料で構成することもできるが、より一般的には、ホスト材料に単一又は複数種のゲスト化合物をドープしてなり、そこで主として当該ドーパントから発光が生じ、その発光色にも制限はない。発光層に含まれるホスト材料は、後述する電子輸送性材料、上述した正孔輸送性材料、又は正孔-電子再結合を支援する別の材料、であることができる。ドーパントは、通常は高蛍光性色素の中から選ばれるが、リン光性化合物、例えば、国際公開第98/55561号、同第00/18851号、同第00/57676号及び同第00/70655号に記載されているような遷移金属錯体も有用である。ドーパントは、ホスト材料中、0.01〜10質量%の範囲内で塗布されることが典型的である。
【0048】
ドーパントとしての色素を選定するための重要な関係は、当該分子の最高被占軌道と最低空軌道との間のエネルギー差として定義されるバンドギャップポテンシャルの対比である。ホストからドーパント分子へのエネルギー伝達の効率化を図るためには、当該ドーパントのバンドギャップがホスト材料のそれよりも小さいことが必須条件となる。
【0049】
有用性が知られているホスト及び発光性分子として、米国特許第4769292号、同第5141671号、同第5150006号、同第5151629号、同第5294870号、同第5405709号、同第5484922号、同第5593788号、同第5645948号、同第5683823号、同第5755999号、同第5928802号、同第5935720号、同第5935721号及び同第6020078号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0050】
8-ヒドロキシキノリン及び類似の誘導体の金属錯体(下記構造式E)は、電場発光を支援することができる有用なホスト化合物の一種であり、特に、500 nmよりも長い波長の光(例、緑色、黄色、橙色及び赤色)を放出させるのに適している。
【0051】
【化5】

【0052】
上式中、Mは金属を表わし、nは1〜3の整数であり、そしてZは、各々独立に、縮合芳香族環を2個以上有する核を完成する原子群を表わす。
上記より、当該金属は1価、2価又は3価になり得ることが明白である。当該金属は、例えば、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムのようなアルカリ金属、マグネシウムもしくはカルシウムのようなアルカリ土類金属、又はホウ素もしくはアルミニウムのような土類金属であることができる。一般に、有用なキレート化金属であることが知られているものであれば、1価、2価又は3価のいずれの金属でも使用することができる。
【0053】
Zは、その少なくとも一つがアゾール環又はアジン環である2個以上の縮合芳香族環を含有する複素環式核を完成する。必要であれば、当該2個の必須環に、脂肪族環及び芳香族環の双方を含む追加の環を縮合させてもよい。分子の嵩高さが機能向上を伴うことなく増大することを避けるため、通常は環原子の数を18以下に維持する。
【0054】
以下、有用なキレート化オキシノイド系化合物の例を示す。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)〕
CO-2:マグネシウムビスオキシン〔別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)〕
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム〕
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)〔別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)〕
CO-7:リチウムオキシン〔別名、(8-キノリノラト)リチウム〕
【0055】
9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(下記構造式F)は、電場発光を支援することができる有用なホスト化合物の一種であり、特に、400 nmよりも長い波長の光(例、青色、緑色、黄色、橙色及び赤色)を放出させるのに適している。
【0056】
【化6】

【0057】
上式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各環上の1又は2以上の置換基であってそれぞれ下記のグループから独立に選ばれるものを表わす。
第1グループ:水素、又は炭素原子数1〜24のアルキル;
第2グループ:炭素原子数5〜20のアリール又は置換アリール;
第3グループ:アントラセニル、ピレニルまたはペリレニルの縮合芳香族環の完成に必要な4〜24個の炭素原子;
第4グループ:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルその他の複素環式系の縮合芳香族環の完成に必要な炭素原子数5〜24のヘテロアリール又は置換ヘテロアリール;
第5グループ:炭素原子数1〜24のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ又はアリールアミノ;及び
第6グループ:フッ素、塩素、臭素又はシアノ
【0058】
ベンズアゾール誘導体(下記構造式G)は、電場発光を支援することができる有用なホスト化合物の一種であり、特に、400 nmよりも長い波長の光(例、青色、緑色、黄色、橙色及び赤色)を放出させるのに適している。
【0059】
【化7】

【0060】
上式中、nは3〜8の整数であり、
ZはO、NR又はSであり、
R’は、水素、炭素原子数1〜24のアルキル(例えば、プロピル、t-ブチル、ヘプチル、等)、炭素原子数5〜20のアリールもしくはヘテロ原子置換型アリール(例えば、フェニル及びナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルその他の複素環式系)、ハロ(例、クロロ、フルオロ)、又は縮合芳香族環の完成に必要な原子群、であり、
Lは、アルキル、アリール、置換アルキル又は置換アリールからなる結合ユニットであって、当該複数のベンズアゾール同士を共役的又は非共役的に連結させるものである。
有用なベンズアゾールの一例として2,2’,2”-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]が挙げられる。
【0061】
望ましい蛍光性ドーパントには、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン、チオピラン、ポリメチン、ピリリウム及びチアピリリウムの各化合物の誘導体並びにカルボスチリル化合物が包含される。以下、有用なドーパントの具体例を挙げるが、これらに限定はされない。
【0062】
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0063】
その他の有機発光性材料として、高分子物質、例えば、譲受人共通の米国特許第6194119号B1(Wolkら)及びその中の文献に記載されているポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ-ポリフェニレンビニレン、ポリ-パラ-フェニレン誘導体及びポリフルオレン誘導体、を使用することもできる。
【0064】
電子輸送性(ET)材料
本発明の有機ELデバイスに使用するのに好ましい電子輸送性材料は、オキシン(通称8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリン)それ自体のキレートをはじめとする金属キレート化オキシノイド系化合物である。このような化合物は、電子の注入及び輸送を助長し、しかも高い性能レベルを示すと共に、薄膜への加工が容易である。企図されるオキシノイド系化合物の例は、既述の構造式(E)を満たす化合物である。
【0065】
その他の電子輸送性材料として、米国特許第4356429号に記載されている各種ブタジエン誘導体、及び米国特許第4539507に記載されている各種複素環式蛍光増白剤が挙げられる。既述の構造式(G)を満たすベンズアゾールも有用な電子輸送性材料となる。
【0066】
その他の電子輸送性材料として、高分子物質、例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレンその他の導電性高分子有機材料、例えば、譲受人共通の米国特許第6221553号明細書及びその中の文献に記載されているもの、を使用することもできる。
【0067】
単一層が、発光と電子輸送の双方を支援する機能を発揮し得る場合もあり、その場合には発光性材料と電子輸送性材料を含むことになる。
【0068】
アノード材料
導電性アノード層は基板上に形成され、そしてEL発光を当該アノードを介して観察する場合には、当該発光に対して透明又は実質的に透明であることが必要である。本発明に用いられる一般的な透明アノード材料はインジウム錫酸化物及び酸化錫であるが、例示としてアルミニウム又はインジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウムインジウム酸化物及びニッケルタングステン酸化物をはじめとする他の金属酸化物でも使用することができる。これらの酸化物の他、アノード材料として、窒化ガリウムのような金属窒化物、セレン化亜鉛のような金属セレン化物、及び硫化亜鉛のような金属硫化物を使用することもできる。EL発光を上部電極を介して観察する用途の場合には、アノード材料の透過性は問題とならず、透明、不透明又は反射性を問わずいずれの導電性材料でも使用することができる。このような用途向けの導体の例として、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム及び白金が挙げられるが、これらに限定はされない。典型的なアノード材料は、透過性であってもそうでなくても、4.1 eV以上の仕事関数を有する。望ましいアノード材料は、一般に、蒸発法、スパッタ法、化学的気相成長(CVD)法又は電気化学法のような適当な手段のいずれかによって付着される。アノード材料は、周知のフォトリソグラフ法によってパターン化することもできる。
【0069】
カソード材料
アノードを介して発光させる場合には、本発明に用いられるカソード材料は、ほとんどすべての導電性材料を含んでなることができる。望ましい材料は、下部の有機層との良好な接触が確保されるよう良好なフィルム形成性を示し、低電圧での電子注入を促進し、かつ、良好な安定性を有する。有用なカソード材料は、低仕事関数金属(<4.0eV)又は合金を含むことが多い。好適なカソード材料の1種に、米国特許第4885221号明細書に記載されているMg:Ag合金(銀含有率1〜20%)を含むものがある。別の好適な種類のカソード材料として、低仕事関数金属又は金属塩の薄層に、これより厚い導電性金属の層をキャップしてなる二層形が挙げられる。このようなカソードの一つに、米国特許第5677572号明細書に記載されている、LiF薄層にこれより厚いAl層を載せてなるものがある。その他の有用なカソード材料として、米国特許第5059861号、同第5059862号及び同第6140763号明細書に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0070】
カソードを介して発光を観察する場合には、当該カソードは透明又はほぼ透明でなければならない。このような用途の場合、金属が薄くなければならないか、又は透明導電性酸化物もしくはこれら材料の組合せを使用しなければならない。米国特許第5776623号明細書に透光性カソードが詳述されている。カソード材料は、蒸発法、スパッタ法又は化学的気相成長法により付着させることができる。必要な場合には、例えば、マスク介在蒸着法、米国特許第5276380号及び欧州特許出願公開第0732868号明細書に記載の一体型シャドーマスク法、レーザーアブレーション法及び選択的化学的気相成長法をはじめとする多くの周知の方法により、パターンを形成させてもよい。
【0071】
図5に、信号を処理し、校正マークの位置を検出するのに用いられる電気光学式サブシステムの一態様のブロック図を示す。これらのサブシステムには、ホストPC102、画像処理装置104及び移動制御エレクトロニクス106が含まれる。これらは独立したユニットであってもよいし、画像処理装置104もしくは移動制御エレクトロニクス106又はこれらの両方がホストPC102に内蔵されていてもよい。ホストPC102は画像処理装置104と連絡し、ホストPCが光検出器22及び23に入射する光量を測定することができる。画像処理装置104、光検出器22が与える信号108を増幅し、かつ、光検出器23が与える信号110を増幅する。画像処理装置104は、このように増幅された信号をホストPC102に提供する。ホストPC102は、このように増幅された信号を使用して、40のような校正マークの検出で得られた情報を計算することにより、基板10の位置及び配向を決定することができる。ホストPC102は、移動制御エレクトロニクス106にも接続されている。移動制御エレクトロニクスは、装置18を構成する並進ステージ及び回転ステージの移動及び位置を制御する。これにより、レーザー100と基板10との間で相対移動が行われ、よって基板10の上にレーザースポットが走査48される。このような相対移動を提供することにより、校正マーク40及び光検出器22を含む基板10の部分の上をレーザービーム74で走査することができる。次いで、レーザースポット走査48に垂直な方向において相対移動を行わせ、当該工程を繰り返すことができる。この間に、光検出器22からの出力を監視して、移動制御エレクトロニクス106からの位置情報と相関させることができる。このようにして、画像処理装置104は、校正マーク40の位置のラスター画像を構築することができる。同様の方法で、光検出器23において、校正マーク42の位置のラスター画像を得ることができる。
【0072】
図6は、このような2つのマークを使用して校正マークの位置を検出してOLED表示装置の製造に用いられる基板を整合させる全工程を示すブロック図である。当該工程は、並進/回転ステージの上で基板に校正マークを配置することから始まる(工程122)。校正マークが適切に配置されている光検出器の領域上で第1方向においてレーザーを走査するように相対移動を行わせる(工程124)。画像処理装置104及びホストPC102で入射強度を測定し、図2に示したように当該走査に沿った位置に対する強度を求める(工程130)。ホストPC102は、当該走査が光検出器上の最後の走査であるかどうかを決定する(工程132)。最後の走査に達していない場合には、並進ステージを当該走査方向に垂直な方向に進ませ(工程134)、そして本工程を繰り返す。光検出器の走査が完了した場合には(工程132)、ホストPCは、さらに走査すべき校正マークがあるかどうかを決定する(工程138)。さらに校正マークがある場合には、次の校正マークの開始位置へレーザービームを移動させるように相対移動を行い(工程140)、そしてその走査工程を繰り返す(工程124以降)。最後の校正マークを走査したら、ホストPC102は、当該校正マークの横方向及び回転方向の絶対位置を決定する。
【0073】
例えば、40及び42のような校正マークの検出から算定された情報に基づいて、基板10の位置及び配向を決定することができる。誤整合が存在する場合には、当該校正マークの既知位置を使用して、回転ステージ及び並進ステージを調整し、画像ファイルを調整し、画像の開始を調整し、又はこれらの処置のいくつかを組み合わせることで、画像を正確な位置にレーザー転写させることができる(工程142)。このような処置には、機械式又はデジタル式並進、機械式又はデジタル式回転、及び転写すべき画像の機械式又はデジタル式延伸、が含まれ得る。このような方法は当該技術分野では周知である。転写は、基板10に対して転写関係をなすようにドナーシートを配置し、レーザービーム74と基板10との間で相対移動をさせ、基板10の決定された位置及び配向に従いレーザービーム74を活性化させることにより、ドナー要素16から基板10の所望の位置(例、画素部12)に有機材料72を転写させる。レーザービーム74は、タイミングに従い、又は位置に従い、活性化させることができる(工程144)。その後、工程は終了する(工程148)。
【符号の説明】
【0074】
10 基板
12 画素部
14 材料転写領域
16 ドナー要素
20 レーザースポット
22 光検出器
24 光検出器有効領域
26 校正中心
30 y軸並進ステージ
32 x軸並進ステージ
34 回転ステージ
36 押え定盤
40、42 校正マーク
44 信号強さ
48 レーザースポット走査
46 光検出器位置
50 光検出器信号強度
68 支持体
70 エネルギー吸収層
72 有機材料
74 レーザービーム
76 非転写面
78 転写面
82 有機層
96 加圧手段
100 レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー要素から基板へ有機材料を転写させるビームを発生するレーザーによる有機発光表示装置製造用の基板を整合する方法であって、
(a) 該基板上に少なくとも1つの校正マークを設け、
(b) 該基板を該レーザーに対して配置し、該基板と該レーザー及び当該レーザービームとの間で、該レーザービームが該校正マークに当たるまで相対移動をさせ、そして
(c) 該レーザービームが該校正マークに当たった時点を検出することで、該基板の位置及び配向を決定する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ドナー要素から基板へ有機材料を転写させるビームを発生するレーザーを用いて基板を整合させて有機発光表示装置を製造する方法であって、
(a) 該基板上に少なくとも1つの校正マークを設け、
(b) 該基板を該レーザーに対して配置し、該基板と該レーザー及び当該レーザービームとの間で、該レーザービームが該校正マークに当たるまで相対移動をさせ、
(c) 該レーザービームが該校正マークに当たった時点を検出することで、該基板の位置及び配向を決定し、そして
(d) 該レーザービームと該基板との間で相対移動をさせ、該基板の決定された位置及び配向に従い該レーザービームを活性化させることにより、該ドナー要素から該基板上へ有機材料を転写させる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
ドナー要素から基板へ有機材料を転写させるビームを発生するレーザーを用いて基板を整合させて有機発光表示装置を製造する方法であって、
(a) 該基板上に、それぞれが特定の形状を有する2以上の校正マークを設け、
(b) 該基板を該レーザーに対して配置し、該基板と該レーザー及び当該レーザービームとの間で、該レーザービームが1つの校正マークに当たるまで相対移動をさせ、
(c) 該レーザービームが該校正マークに当たった時点を検出することで、当該複数の校正マークの検出から算定された情報に基づいて、該基板の位置及び配向を決定し、そして
(d) 該レーザービームと該基板との間で相対移動をさせ、該基板の決定された位置及び配向に従い該レーザービームを活性化させることにより、該ドナー要素から該基板上へ有機材料を転写させる
ことを特徴とする方法。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図2】
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【図3】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−77046(P2011−77046A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259232(P2010−259232)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2003−304207(P2003−304207)の分割
【原出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】