説明

有機発光表示装置

【課題】剥離を抑制して機構強度を向上させた有機発光表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る有機発光表示装置は、 基板部材111と、基板部材111上に形成された絶縁膜160と、絶縁膜160上に形成された金属配線179と、金属配線179上に形成されたシーラント350と、シーラント350上に付着した密封部材210とを含み、金属配線179に複数の結合補強孔1795を形成して、シーラント350と絶縁膜160を接触させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光表示装置に関し、より詳しくは機構強度を向上させた有機発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置(OLED display:organic light emitting diode display)は、自発光特性を有し、液晶表示装置とは違って別途の光源を必要としないため、厚さと重量を低減できる。また、有機発光表示装置は、低消費電力で高輝度かつ高反応速度など高性能を有するため、携帯用電子機器の次世代表示装置として注目されている。
【0003】
一般に有機発光表示装置は、薄膜トランジスタおよび有機発光素子が形成された表示基板と、表示基板を覆う密封部材と、表示基板と密封部材とを互いに合着させるシーラント(sealant)とを含んでいる。ここで、シーラントは両基板の周縁に沿って塗布され、表示基板と密封部材との間の空間を密封する役割を果たしている。この時、シーラントは、表示基板に形成された一部金属配線と接触する。
【0004】
しかし、それぞれ異なる素材で形成されたシーラントと金属配線は、互いの間の界面接着力が余り良くない。そのため、外部の衝撃などによってシーラントと金属配線の接触部分で、表示基板から密封部材までの積層構造に含まれている金属層/非金属層、有機物層/金属酸化物層などの不均質接触構造が簡単に剥離するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためのものであり、その目的は、剥離を抑制して機構強度を向上させた有機発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る有機発光表示装置は、基板部材と、前記基板部材上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されて複数の結合補強孔を有する金属配線と、前記金属配線上に形成されたシーラント(sealant)と、前記シーラント上に付着した密封部材とを含んでいる。
【0007】
前記絶縁膜と前記シーラントは、前記金属配線の結合補強孔を通じて互いに接触していることが好ましい。
【0008】
前記結合補強孔が形成された面積の比率は、前記金属配線の全体面積対比5乃至60%の範囲内であることが好ましい。
【0009】
前記有機発光表示装置において、 前記絶縁膜及び前記シーラントは、全てセラミック系の素材を用いて作られていることが好ましい。
【0010】
前記密封部材もセラミック系の素材を用いて作られていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機発光表示装置によれば、剥離を抑制し、機構強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置の平面図である。
【図2】図1の表示領域の一部を拡大した配置図である。
【図3】図2のIII−III線において切断した断面図である。
【図4】図1のシーラントが形成されている領域の一部を拡大した配置図である。
【図5】図4のV−V線において切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参考にして、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限られるわけではない。
【0014】
また、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示したものであり、本発明が図示したように限定されるわけではない。
【0015】
また、図面において多様な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示している。明細書全体にわたって類似な部分については同一の図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」または「上に」あるという時には、これは他の部分の「すぐ上」にある場合だけでなく、その間に他の部分がある場合も含んでいる。逆に、ある部分が他の部分の「すぐ上」にあるという時には、間に他の部分がないことを意味している。
【0016】
本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似な構成要素については同一の図面符号を付けた。
【0017】
また、図面において、一つの画素に二つの薄膜トランジスタ(TFT)と一つの蓄電素子(capacitor)を備えた2Tr-1Cap構造の能動駆動(active matrix、AM)型有機発光表示装置を示しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。有機発光表示装置は、一つの画素に三つ以上の薄膜トランジスタと二つ以上の蓄電素子を備えていることも可能であり、別途の配線がさらに形成されて多様な構造を有するように形成することもできる。ここで、画素とは、画像を表示する最小単位を言い、有機発光表示装置は複数の画素を通じて画像を表示する。
【0018】
図1に示しているように、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置100は、表示基板110と、表示基板110の上部を覆う密封部材210と、表示基板110と密封部材210との間に配置されたシーラント350とを含んでいる。
【0019】
シーラント350は、密封部材210の周縁に沿って配置され、表示基板110と密封部材210とを互いに合着して密封する。以下、シーラント350によって囲まれた表示基板110と密封部材210との間の内部を表示領域(DA)と称する。そして、表示領域(DA)には多数の画素が形成されて画像を表示する。
【0020】
また、密封部材210の大きさは、表示基板110よりも小さく形成される。密封部材210によって覆われていない表示基板110の片側周縁には、集積回路チップ301を実装することができる。
【0021】
以下、図2及び図3を参照して、表示領域(DA)に形成された画素を中心にした有機発光表示装置100の内部構造を説明する。
【0022】
図2に示しているように、表示基板110は、一つの画素ごとにそれぞれ形成されたスイッチング薄膜トランジスタ10と、駆動薄膜トランジスタ20と、蓄電素子80と、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)70とを含んでいる。表示基板110は、一方向に沿って配置されるゲートライン151と、このゲートライン151と絶縁交差するデータライン171と、共通電源ライン172とをさらに含んでいる。ここで、一つの画素は、ゲートライン151、データライン171及び共通電源ライン172を境界にして定義されるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0023】
有機発光素子70は、第1電極710と、第1電極710上に形成された有機発光層720と、有機発光層720(図3に図示)上に形成された第2電極730(図3に図示)とを含んでいる。ここで、第1電極710は、正孔注入電極の正極(+)であり、第2電極730は電子注入電極の負極(-)である。しかし、本発明は必ずこれに限定されるわけではなく、有機発光表示装置100の駆動方法によって第1電極710を負極とし、第2電極730を正極とすることも可能である。第1電極710及び第2電極730からそれぞれ正孔と電子が有機発光層720の内部に注入される。注入された正孔と電子が結合した励起子(exciton)が、励起状態から基底状態に落ちる時に発光が行われる。
【0024】
蓄電素子80は、層間絶縁膜160を間において配置された第1蓄電板158と第2蓄電板178とを含んでいる。ここで、層間絶縁膜160は誘電体となる。蓄電素子80で蓄電された電荷と両蓄電板158、178との間の電圧によって蓄電容量が決定される。
【0025】
スイッチング薄膜トランジスタ10は、スイッチング半導体層131と、スイッチングゲート電極152と、スイッチングソース電極173と、スイッチングドレイン電極174とを含んでいる。駆動薄膜トランジスタ20は、駆動半導体層132と、駆動ゲート電極155と、駆動ソース電極176と、駆動ドレイン電極177とを含んでいる。
【0026】
スイッチング薄膜トランジスタ10は、発光させようとする画素を選択するスイッチング素子として使用される。スイッチングゲート電極152は、ゲートライン151に連結されている。スイッチングソース電極173は、データライン171に連結されている。スイッチングドレイン電極174は、スイッチングソース電極173から離隔して配置され、第1蓄電板158と連結されている。
【0027】
駆動薄膜トランジスタ20は、選択された画素内の有機発光素子70の有機発光層720を発光させるために駆動電源を第1電極710に印加する。駆動ゲート電極155は、第1蓄電板158と連結されている。駆動ソース電極176及び第2蓄電板178は、それぞれ共通電源ライン172と連結されている。駆動ドレイン電極177は、コンタクト孔182を通じて、有機発光素子70の第1電極710と連結されている。
【0028】
このような構造により、スイッチング薄膜トランジスタ10は、ゲートライン151に印加されるゲート電圧によって作動し、データライン171に印加されたデータ電圧を駆動薄膜トランジスタ20に伝達する役割を果たしている。共通電源ライン172から駆動薄膜トランジスタ20に印加された共通電圧とスイッチング薄膜トランジスタ10から伝達されたデータ電圧との差に相当する電圧が蓄電素子80に貯蔵され、蓄電素子80に貯蔵された電圧に対応する電流が駆動薄膜トランジスタ20を通じて有機発光素子70に流れて、有機発光素子70が発光することになる。
【0029】
以下、図3を参照して、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置100の構造について、積層順序にしたがって具体的に説明する。
【0030】
また、以下では駆動薄膜トランジスタ20を中心に薄膜トランジスタの構造について説明する。スイッチング薄膜トランジスタ10については、駆動薄膜トランジスタ20との相違点だけを簡略に説明する。
【0031】
先ず、表示基板110から説明する。第1基板部材111は、ガラス、石英、セラミック、プラスチックなどからなる絶縁性基板で形成されている。しかし、本発明をこれに限定するわけではない。従って、第1基板部材111をステンレス鋼などからなる金属性基板で形成することも可能である。
【0032】
第1基板部材111の上にバッファ層120を形成する。バッファ層120は、不純元素の浸透を防止し、表面を平坦化する役割をするものであり、このような役割を遂行できる多様な物質で形成することもできる。一例として、バッファ層120は、窒化ケイ素(SiNx)膜、酸化ケイ素(SiO)膜、酸窒化ケイ素(SiOxNy)膜のうちのいずれか一つを用いる。しかし、バッファ層120は必ず必要なものではなく、第1基板部材111の種類及び工程条件によって省略することもできる。
【0033】
バッファ層120の上には駆動半導体層132が形成される。駆動半導体層132は多結晶シリコン膜で形成されている。また、駆動半導体層132は、不純物をドーピングしないチャンネル領域135と、チャンネル領域135の両側にp+ドーピングして形成されたソース領域136及びドレイン領域137とを含んでいる。この時、ドーピングするイオン物質はホウ素(B)のようなP型不純物であり、主にBを用いている。ここで、このような不純物は薄膜トランジスタの種類によって変わる。
【0034】
本発明の第1実施形態では駆動薄膜トランジスタ20にP型不純物を用いたPMOS構造の薄膜トランジスタを使用したが、これに限定するわけではない。従って、駆動薄膜トランジスタ20にNMOS構造またはCMOS構造の薄膜トランジスタを用いることも可能である。
【0035】
また、図2に示した駆動薄膜トランジスタ20は、多結晶シリコン膜を含む多結晶薄膜トランジスタであるが、図2に図示していないスイッチング薄膜トランジスタ10は、多結晶薄膜トランジスタであることも可能であり、非晶質シリコン膜を含む非晶質薄膜トランジスタであってもよい。
【0036】
駆動半導体層132の上には窒化ケイ素(SiNx)または酸化ケイ素(SiO)などで形成されたゲート絶縁膜140が形成される。ゲート絶縁膜140の上に駆動ゲート電極155を含むゲート配線が形成される。また、ゲート配線は、ゲートライン151、第1蓄電板158及びその他の配線をさらに含んでいる。駆動ゲート電極155は、駆動半導体層132の少なくとも一部、特にチャンネル領域135と重なるように形成される。
【0037】
ゲート絶縁膜140の上には駆動ゲート電極155を覆って層間絶縁膜160が形成される。ゲート絶縁膜140及び層間絶縁膜160は、駆動半導体層132のソース領域136及びドレイン領域137を露出する複数の貫通孔を共に有する。層間絶縁膜160は、ゲート絶縁膜140と同様に、窒化ケイ素(SiNx)または酸化ケイ素(SiO)等のセラミック系の素材を使って形成される。
【0038】
層間絶縁膜160の上には駆動ソース電極176及び駆動ドレイン電極177を含むデータ配線が形成される。また、データ配線は、データライン171、共通電源ライン172、第2蓄電板178及びその他の配線をさらに含んでいる。駆動ソース電極176及び駆動ドレイン電極177は、それぞれ層間絶縁膜160及びゲート絶縁膜140に形成された複数の貫通孔を通じて、駆動半導体層132のソース領域136及びドレイン領域137と連結される。
【0039】
このようにして、駆動半導体層132、駆動ゲート電極155、駆動ソース電極176及び駆動ドレイン電極177を含む駆動薄膜トランジスタ20が形成される。駆動薄膜トランジスタ20の構成は、前述した例に限定されるわけではなく、当該技術分野における専門家が容易に実施できるような公知の構成に多様に変形することができる。
【0040】
層間絶縁膜160の上にはデータ配線172、176、177、178を覆う平坦化膜180が形成される。平坦化膜180は、その上に形成される有機発光素子70の発光効率を上げるために段差をなくして平坦化する役割を果たしている。また、平坦化膜180は、ドレイン電極177の一部を露出させるコンタクト孔182を有する。
【0041】
平坦化膜180は、アクリル系樹脂(polyacrylates resin)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリアミド系樹脂(polyamides resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides rein)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyesters resin)、ポリフェニレン系樹脂(poly phenylenethers resin)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(poly phenylenesulfides resin)、及びベンゾシクロブテン(benzocyclobutene、BCB)のうちの一つ以上の物質などで作ることができる。
【0042】
また、本発明に係る第1実施形態は、前述した構造に限定されるわけではなく、場合によっては平坦化膜180と層間絶縁膜160のうちのいずれか一つを省略する場合もある。
【0043】
平坦化膜180の上には有機発光素子70の第1電極710が形成される。つまり、有機発光表示装置100は、複数の画素ごとにそれぞれ配置された複数の第1電極710を含んでいる。この時、複数の第1電極710は、互いに離隔して配置されている。第1電極710は、平坦化膜180のコンタクト孔182を通じて、ドレイン電極177と連結されている。
【0044】
また、平坦化膜180の上には第1電極710を露出するような開口部を有する画素定義膜190が形成されている。つまり、画素定義膜190は、各画素ごとに形成された複数の開口部を有する。そして、第1電極710は画素定義膜190の開口部に対応するように配置されている。しかし、第1電極710が必ず画素定義膜190の開口部にだけ配置されるわけではなく、第1電極710の一部が画素定義膜190と重なるように画素定義膜190の下に配置されることも可能である。画素定義膜190は、ポリアクリール系樹脂(polyacrylates resin)及びポリイミド系(polyimides)等の樹脂またはシリカ系の無機物などで作ることができる。
【0045】
第1電極710の上には有機発光層720が形成され、有機発光層720の上には第2電極730が形成される。このようにして、第1電極710、有機発光層720及び第2電極730を含む有機発光素子70が形成される。
【0046】
有機発光層720は、低分子有機物または高分子有機物からなる。また、有機発光層720は、発光層、正孔注入層(hole-injection layer、HIL)、正孔輸送層(hole-transporting layer、HTL)、電子輸送層(electron-transportiong layer、ETL)、及び電子注入層(electron-injection layer、EIL)のうちの一つ以上を含む多重膜で形成することができる。これら全てを含む場合、正孔注入層が正極である第1電極710の上に配置され、その上に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が順次積層される。
【0047】
また、図3において、有機発光層720は画素定義膜190の開口部にだけ配置されているが、本発明の実施形態をこれに限定するわけではない。従って、有機発光層720は、画素定義膜190の開口部内で第1電極710の上にだけ形成されるわけではなく、画素定義膜190と第2電極730との間に配置することも可能である。具体的に、有機発光層720は、発光層と共に正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子輸送層(ETL)及び電子注入層(EIL)等の様々な膜をさらに含むことができる。この時、発光層を除く残りの正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子輸送層(ETL)及び電子注入層(EIL)は、製造過程でオープンマスク(open mask)を使用して、第2電極730と同様に第1電極710の上だけではなく、画素定義膜190の上にも形成することができる。つまり、有機発光層720に属する様々な膜のうち、一つ以上の膜が画素定義膜190と第2電極730との間に配置することができる。
【0048】
第1電極710及び第2電極730は、それぞれ透明な導電性物質で形成してもよいし、半透過型または反射型導電性物質で形成することも可能である。第1電極710及び第2電極730を形成する物質の種類によって、有機発光表示装置100は前面発光型、背面発光型または両面発光型となる。
【0049】
一方、本発明の第1実施形態に係る有機発光表示装置100は、前面発光型で形成されている。つまり、有機発光素子70は、封止基板210の方向に光を放出して画像を表示する。そして、第1電極710は反射型導電性物質で作られている。
【0050】
透明な導電性物質としては、ITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)またはIn(酸化インジウム)等の物質を使用できる。反射型物質及び半透過型物質としては、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム/カルシウム(LiF/Ca)、フッ化リチウム/アルミニウム(LiF/Al)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、または金(Au)等の物質を使用することができる。
【0051】
第2電極730の上には密封部材210が対向配置されている。密封部材210は、ガラス及びプラスチックなどのような透明な物質で作られている。密封部材210は、周縁に沿って形成されたシーラント350(図1に図示)を通じて、表示基板110と互いに合着して密封される。
【0052】
以下、図4及び図5を参照して、シーラント350が配置された領域を中心にした有機発光表示装置100の内部構造を説明する。
【0053】
図4及び図5に示しているように、基板部材111の上にバッファ層120、ゲート絶縁膜140及び層間絶縁膜160が順次形成されている。バッファ層120、ゲート絶縁膜140及び層間絶縁膜160に対する詳細な説明は前述した通りである。そして、層間絶縁膜160の上に金属配線179が形成され、このように層間絶縁膜160と金属配線179を対にした積層構造は一対積層に限らず二対積層、三対積層と多層化される場合が多い 。
【0054】
金属配線179は、シーラント350が配置された領域に形成された薄膜トランジスタ20のソース電極176、ドレイン電極177、蓄電素子80の第2蓄電板178、データライン171、共通電源ライン172及びその他の連結ラインのうちの一つ以上である。ここで、連結ラインとは、シーラント350で囲まれた表示領域(DA)に形成された構成と、シーラント350外部の周辺領域に形成された構成とを互いに連結するための配線のことをいう。
【0055】
従って、金属配線179は、表示領域(DA)に形成された薄膜トランジスタ20のソース電極176、ドレイン電極177、蓄電素子80の第2蓄電板178、データライン171及び共通電源ライン172と同一層に同一素材で形成される。
【0056】
また、金属配線179は、複数の結合補強孔1795を有する。結合補強孔1795は、金属配線179の下にある層間絶縁膜160を露出させる。
【0057】
金属配線179の上にはシーラント350が形成され、シーラント350の上に密封部材210が付着される。そして、シーラント350は、金属配線179の結合補強孔1795を通じて層間絶縁膜160と集積接触する。具体的に、シーラント350は、一方が密封部材210と接触し、他方が金属配線179、金属配線179の結合補強孔1795を通じて露出した層間絶縁膜160及び金属配線179が形成されていない領域の層間絶縁膜160とそれぞれ接触している。これにより、シーラント350は密封部材210と表示基板110とを互いに合着密封する。この時、層間絶縁膜160とシーラント350には樹脂系の素材(例えば、ポリイミドとTEOS系SiO2)を適宜選択して、金属配線179に結合補強孔1795を開口・形成して、なるべく直後に層間絶縁膜160の表面にシランカップリング処理を行い、シーラント350を塗布・重合することが望ましい。
【0058】
また、シーラント350は、セラミック系(主に酸化物)の素材を用いて作られる。一例として、フリット(低融点金属酸化物混合組成物)が挙げられ、この場合の金属配線素材は酸化物親和性の高いアルミニウムを用いることが望ましい。
【0059】
このように、セラミック系の素材で作られたシーラント350は、金属配線179との界面接着力が相対的に非常に弱い。その反面、シーラント350は、同じセラミック系の素材で作られた層間絶縁膜160とは相対的に高い界面接着力を有する。
【0060】
従って、金属配線179に複数の結合補強孔1795を貫通形成することによって、互いに接着したシーラント350と金属配線179が他部の衝撃などによって剥離することを効果的に抑制することができる。つまり、シーラント350が金属配線179の結合補強孔1795を通じて、層間絶縁膜160と集積接着するので、シーラント350と金属配線179との間の相対的に弱い接着状態を補完できることになる。
【0061】
また、結合補強孔1795を形成する面積の比率は、金属配線179の全体面積対比5%乃至60%の範囲内に属する。ここで、結合補強孔1795が形成された面積の比率が5%より小さいと、シーラント350と金属配線179との間の相対的に弱い接着状態を補完することが難しい。その反面、結合補強孔1795が形成された面積の比率が60%より大きいと、接着力は向上するが、金属配線179の抵抗が大きくなるという問題点がある。
【0062】
また、密封部材210もシーラント350と同様に、セラミック系の素材で作られる。従って、密封部材210とシーラント350との間についても相対的に高い界面接着力を有する。
【0063】
このような構成によって、有機発光表示装置100は剥離を抑制し、機構強度を向上させることができる。
【0064】
以下、表1を参照して実験例及び比較例についての実験結果を説明する。
【0065】
実験は、実験例となる多数の有機発光表示装置と、比較例となる多数の有機発光表示装置にそれぞれ圧力を加えて、強制的に剥離させる方法で実施した。この時、実験例に使用した有機発光表示装置は、本発明の実施形態で示したように金属配線に結合補強孔を形成した。そして、実験例に使用した有機発光表示装置における結合補強孔の形成された面積の比率は、金属配線の全体面積対比10%である。一方、比較例に使用した有機発光表示装置は、金属配線に結合補強孔を形成していない。
【表1】

【0066】
表1に示しているように、実験例が比較例に比べて相対的に剥離していないことが分かる。また、剥離する時の圧力も実験例のほうが高いことが分かる。つまり、実験例が比較例よりも高い圧力に耐えられることが分かる。
【0067】
このような実験を通じて、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置100は、向上した機構強度を有することが分かる。
【0068】
以上、前述したように、望ましい実施形態を通じて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱しない限り、多様な修正及び変形が可能であることを、本発明の属する技術分野に従事する者であれば、簡単に理解できる。
【符号の説明】
【0069】
10 スイッチング薄膜トランジスタ
20 駆動薄膜トランジスタ
70 有機発光素子
80 蓄電素子
100 有機発光表示装置
110 表示基板
120 バッファ層
140 ゲート絶縁膜
151 ゲートライン
160 層間絶縁膜
171 データライン
172 共通電源ライン
179 金属配線
210 密封部材
301 集積回路チップ
350 シーラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部材と、
前記基板部材上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されて複数の結合補強孔を有する金属配線と、
前記金属配線上に形成されたシーラント(sealant)と、
前記シーラント上に付着した密封部材と
を含むことを特徴とする有機発光表示装置。
【請求項2】
前記絶縁膜と前記シーラントは、前記金属配線の結合補強孔を通じて互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記結合補強孔が形成された面積の比率は、前記金属配線の全体面積対比5乃至60%の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記絶縁膜及び前記シーラントは、全てセラミック系の素材を用いて作られていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記密封部材もセラミック系の素材を用いて作られていることを特徴とする請求項4に記載の有機発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−67603(P2010−67603A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189498(P2009−189498)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】