説明

有機発光表示装置

【課題】透過率の向上した有機発光表示装置を提供する。
【解決手段】基板上に透過領域TAと、透過領域を介して互いに離隔した複数の画素領域PAが定義されており、、基板1上に形成され、各画素領域内に位置する複数の薄膜トランジスタと、複数の薄膜トランジスタを覆うパッシベーション膜と、パッシベーション膜上に各薄膜トランジスタと電気的に連結されるように形成され、各画素領域内に位置し、各薄膜トランジスタを遮蔽できるように各薄膜トランジスタと重なって配置された複数の画素電極と、複数の画素電極と対向して透光可能に形成され、透過領域及び画素領域にかけて位置し、透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に形成された第1開口を持つ対向電極と、画素電極と対向電極との間に介在されて発光する有機発光層と、を備える有機発光表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光表示装置に係り、より詳細には透明な有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置は、視野角、コントラスト、応答速度、消費電力などの側面で特性が優秀なため、MP3プレーヤーや携帯電話などの個人用携帯機器からテレビに至るまで応用範囲が拡大しつつある。
【0003】
このような有機発光表示装置は自発光特性を持ち、液晶表示装置とは異なって別途の光源を必要としないので、厚さ及び重量を低減させることができる。
【0004】
また、有機発光表示装置は、装置内部の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)や有機発光素子を透明な形態にすることによって、透明表示装置として形成できる。
【0005】
透明表示装置では、スイッチオフ状態である時、ユーザーから見て透明表示装置の向こう側に位置した事物またはイメージが、有機発光素子だけではなくTFT及びいろいろな配線などのパターン及びこれら間の空間を透過してユーザーに伝えられる(たとえば特許文献1)。
【0006】
しかし、このような透明表示装置であっても、前述した有機発光素子、TFT及び配線自体の透過率はあまり高くなく、これら間の空間も非常に狭くてディスプレイ全体の透過率は高くない。
【0007】
また、前述したパターン、すなわち、有機発光素子、TFT及び配線のパターンにより、ユーザーは歪曲されたイメージを伝達されうる。これは、前記パターン間の間隔が数百nmレベルであるため、可視光波長と同一レベルになって透過された光の散乱を引き起こすからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−128241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、透過率が向上した透明な有機発光表示装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、透過する光の散乱を抑制して、透過イメージの歪曲現象が防止された透明な有機発光表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、基板と、前記基板上に定義された透過領域及び前記透過領域を介して互いに離隔した複数の画素領域のうち、前記基板上の前記各画素領域内に位置する複数の薄膜トランジスタと、前記複数の薄膜トランジスタを覆うパッシベーション膜と、前記パッシベーション膜上に前記各薄膜トランジスタと電気的に連結されていて、前記各画素領域内に位置し、前記各薄膜トランジスタを遮蔽できるように前記各薄膜トランジスタと重なって配置された複数の画素電極と、前記複数の画素電極と対向し、前記透過領域及び前記画素領域にかけて位置し、前記透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に第1開口を持つ対向電極と、前記画素電極と対向電極との間に介在されて発光する有機発光層と、を備える有機発光表示装置を提供する。
【0012】
本発明はまた、基板と、前記基板上に定義された透過領域及び前記透過領域を介して互いに離隔した複数の画素領域のうち、前記基板上の前記複数の画素領域内に位置して、それぞれ少なくとも一つの薄膜トランジスタを備えた複数の画素回路部と、前記画素回路部を覆う第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に前記各画素回路部と電気的に連結されていて、前記各画素回路部を遮蔽できるように前記各画素回路部と重なって配置された複数の画素電極と、前記複数の画素電極と対向し、前記透過領域及び前記画素領域にかけて位置し、前記透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に第1開口を持つ対向電極と、前記画素電極と対向電極との間に介在されて発光する有機発光層と、を備える有機発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透過率の高い有機発光表示装置を得ることができる。
【0014】
また本発明によれば、透過する光の散乱を抑制して、透過イメージの歪曲現象が防止された透明な有機発光表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の望ましい一実施形態による有機発光表示装置を示した断面図である。
【図2】図1の一実施形態をさらに詳細に示した断面図である。
【図3】図1の他の一実施形態をさらに詳細に示した断面図である。
【図4】図2または図3の有機発光部の一例を概略的に示した概略図である。
【図5】図4の画素回路部の一例を含む有機発光部を示した概略図である。
【図6】図5の有機発光部の一例をさらに具体的に示した平面図である。
【図7】図5の有機発光部の一例をさらに具体的に示した平面図である。
【図8】本発明の望ましい一実施形態による有機発光表示装置を示した断面図である。
【図9】本発明の望ましい他の一実施形態による有機発光表示装置を示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の望ましい一実施形態による有機発光表示装置を示した断面図である。
【0018】
図1を参照すれば、本発明の望ましい一実施形態による有機発光表示装置は、基板1の第1面11にディスプレイ部2が備えられる。
【0019】
このような有機発光表示装置で、外光は基板1及びディスプレイ部2を透過して入射される。
【0020】
そして、ディスプレイ部2は、後述するように外光が透過可能に備えられたものであって、図1を見れば、画像が具現される側に位置したユーザーが基板1の図示下部外側に位置した事物やイメージなどを観察可能にできている。
【0021】
図2は、図1の有機発光表示装置をさらに具体的に示した一実施形態であって、前記ディスプレイ部2は、基板1の第1面11に形成された有機発光部21と、この有機発光部21を密封する密封基板23とを備える。
【0022】
前記密封基板23は、透明な部材で形成されて有機発光部21からの画像を見ることが可能であり、かつ有機発光部21への外気及び水分の浸透を遮断する。
【0023】
前記密封基板23と有機発光部21とは、そのエッジがシーラント(図示せず)により密封された構造をとり、これにより、前記密封基板23と有機発光部21との間に空間25を形成する。この空間25には吸湿剤や充填剤などを設けてもよい。
【0024】
前記密封基板23の代わりに、図3から分かるように、薄膜密封フィルム24を有機発光部21上に形成することによって、有機発光部21を外気から保護できる。前記密封フィルム24は、酸化シリコンまたは窒化シリコンのような無機物からなる膜とエポキシ、ポリイミドのような有機物からなる膜が交互に成膜された構造を採ることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、透明な薄膜上の密封構造ならば、いかなるものでも適用できる。
【0025】
図4は、図2または図3の有機発光部21の概略的な構成を示す概略図であり、図5は、図4中の画素回路部PCのより具体的な一例を図示した概略図である。
【0026】
図2ないし図4に示した本発明の望ましい一実施形態によれば、前記有機発光部21は、基板1の第1面(いずれか一方の面)上に定義された透過領域TA及び透過領域TAを介して互いに離隔した複数の画素領域PAを有する。透過領域TAは外光が透過されるように備えられている領域である。複数の画素領域PAは、各画素領域PAが透過領域TAによって区切られた領域となっている。
【0027】
各画素領域PA内には画素回路部PCが備えられており、スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVのような複数の導電ラインが、この画素回路部PCに電気的に連結される。図示していないが、前記画素回路部PCの構成によって、前記スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインV以外にもさらに多様な導電ラインが備えられうる。
【0028】
図5から分かるように、前記画素回路部PCは、スキャンラインSとデータラインDとに連結された第1TFT(TR1)と、第1TFT(TR1)と駆動電源ラインVとに連結された第2TFT(TR2)と、第1TFT(TR1)と第2TFT(TR2)とに連結されたキャパシタCstとを備える。この時、第1TFT(TR1)はスイッチングトランジスタになり、第2TFT(TR2)は駆動トランジスタになる。前記第2TFT(TR2)は、画素電極221と電気的に連結されている。図5で、第1TFT(TR1)と第2TFT(TR2)とはP型に図示されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、少なくとも一つがN型に形成されてもよい。
【0029】
本発明の望ましい一実施形態によれば、スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVを含む導電ラインはいずれも前記画素領域PAを横切るように配され、透過領域TAのみを横切る導電ラインが存在しない。
【0030】
前記各画素領域PAは発光が行われる領域になるが、このように発光が行われる領域内に画素回路部PCが位置し、スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVを含む導電ラインが横切るため、ユーザーは透過領域TAを通じて外部(ユーザー側から見てディスプレイ部2の向こう側)を見ることができる。この透過領域TAには、後述するように、スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVそれぞれの一部が過ぎるため、透過率を阻害する最も大きい要素のうち一つである導電パターンの面積が最小化する。したがって、透過領域TAの透過率はさらに高くなる。このように本実施形態は、画像が表示される領域を画素領域PAと透過領域TAとに分け、ディスプレイ全体透過率を落とす要素のうち一つである導電パターンの大部分を画素領域PAに配置することによって透過領域TAの透過率を高めて、画像が表示される領域全体の透過率を従来の透明表示装置に比べて向上させるようになる。それだけではなく、本発明は後述するように、透過領域TAの透過率をさらに高めることによって、これらの効果をさらに極大化できる。
【0031】
本実施形態はまた、前述した画素領域PAと透過領域TAとの分離によって透過領域TAを通じて外部を観察する時に、太陽光が画素回路部PC内の素子のパターンと関連して散乱することによって発生する外部イメージ歪曲現象を防止できる。
【0032】
たとえ画素領域PAと画素領域PAとの間の透過領域TAに、スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVを含む導電ラインなどの一部が横切るように配されているとしても、導電ラインは非常に薄く形成されるため、これはユーザーの精密な観察のみによって見つけられるだけであり、有機発光部21の全体透過度には影響を及ぼさず、特に、透明ディスプレイを具現するのには全く問題がない。また、ユーザーが前記画素領域PAに遮蔽された領域ないでは外部イメージを見られないとしても、ディスプレイ領域全体を見た時、前記画素領域PAは、あたかも透明ガラスの表面に複数の点が規則的に配列されているようなものであるため、ユーザーが外部イメージ全体を観察するのにほとんど支障はない。
【0033】
このような画素領域PAと透過領域TAとの全体面積(前記画素領域PAと前記透過領域TAの面積の和)に対して、透過領域TAの面積の比率は20%ないし90%範囲に属するように、画素領域PAと透過領域TAとを形成することが好ましい。
【0034】
画素領域PAと透過領域TAとの全体面積に対して、透過領域TAの面積の比率が20%より小さければ、図1でディスプレイ部2がスイッチオフ状態である時、ディスプレイ部2を透過できる光が少なくて、ユーザーが反対側に位置する事物またはイメージを見難い。すなわち、ディスプレイ部2が透明であるといえなくなってしまう。そして透過領域TAの面積が、画素領域PAと透過領域TAとの全体面積の20%以上であれば、画素領域PAが全体透過領域TAに対して島状に存在し、画素領域PA内にほぼ全ての導電パターンが配されていて太陽光熱の散乱度を最低化させるので、ユーザーは透明ディスプレイとして認識可能になる。そして、後述するように、画素回路部PCに備えられるTFTを酸化物半導体のように透明TFTで形成し、有機発光素子も透明素子で形成する場合には、さらに透明ディスプレイとしての認識が大きくなりうる。
【0035】
画素領域PAと透明領域TAとの全体面積に対して透明領域TAの面積の比率が90%より大きければ、ディスプレイ部2の画素集積度が過度に低くなって、画素領域PAからの発光を通じて安定した画像を具現し難いことになる。すなわち、画素領域PAの面積が小さくなるほど、画像を具現するためには有機発光膜223で発光する光の輝度が高くなければならない。このように、有機発光素子を高輝度状態に作動させれば、寿命が急激に低下するという問題点が生じる。また、一つの画素領域PAのサイズを適正なサイズに維持しつつ透明領域TAの面積比率を90%より大きくすれば、画素領域PAの数が低減して解像度が低下するという問題点が生じるので好ましくないのである。
【0036】
前記画素領域PAと透過領域TAとの全体面積に対して透過領域TAの面積の比率は、40%ないし70%の範囲に属するようにすることがより好ましい。
【0037】
40%未満であっても外部を見ることは可能であるが、40%以上とすることで、前記画素領域PAの面積に比べて透過領域TAの面積がより大きくなるので、ユーザーが透過領域TAを通じて外部をより観察しやすくなる。70%を超過する場合、上記のとおり90%を超えなければ前記画素領域PAによって画像を具現することはできるが、透過領域TAを70%以下とすることで、画素領域PA内に配置する画素回路部PCの設計的制約を少なくすることができる(たとえば配線経路(配線パターン)の配置などの自由度が増す)。
【0038】
前記画素領域PAには、この画素領域PAに対応する面積として画素回路部PCと電気的に連結された画素電極221が備えられ、前記画素回路部PCは、前記画素電極221に遮蔽されるように前記画素電極221と重なる。そして、前述したスキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVを含む導電ラインも、いずれもこの画素電極221を通過するように配置されている。本発明の望ましい一実施形態によれば、前記画素電極221は画素領域PAの面積と同一であるか、またはこれより若干小さくすることが望ましい。したがって、図6から分かるように、ユーザーが見る時、画素電極221により前述した画素回路部PCが遮蔽された状態になり、導電ラインの相当部分も遮蔽された状態になる。これにより、ユーザーは透過領域TAを通じては導電ラインの一部が見得るだけで、前述したようにディスプレイ全体としては透過率が向上し、透過領域TAを通じて外部イメージがよく見られるようになる。
【0039】
一方、本発明は、前記透過領域TAでの外光透過率をさらに高めるために、前記透過領域TAの少なくとも一部に対応する位置の対向電極222に第1開口224を形成する。これについての詳細な説明は後述する。
【0040】
図7及び図8は、前記有機発光部21をさらに詳細に説明するための一実施形態を示した平面図及び断面図であり、図5に示した画素回路部PCを具現したものである。
【0041】
図7及び図8による本発明の望ましい一実施形態によれば、前記基板1の第1面11上にバッファ膜211が形成され、このバッファ膜211上に第1TFT(TR1)、キャパシタCst及び第2TFT(TR2)が形成される。
【0042】
まず、前記バッファ膜211上には、第1半導体活性層212a及び第2半導体活性層212bが形成される。
【0043】
前記バッファ膜211は、不純元素の浸透を防止して表面を平坦化する役割を行うものであって、このような役割を行える多様な物質で形成されうる。一例として、前記バッファ膜211は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタンまたは窒化チタンなどの無機物や、ポリイミド、ポリエステル、アクリルなどの有機物またはこれらの積層体で形成されうる。前記バッファ膜211は必須構成要素ではなく、必要に応じては備われないこともある。
【0044】
前記第1半導体活性層212a及び第2半導体活性層212bは多結晶シリコンで形成されうるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、酸化物半導体で形成されうる。たとえば、G−I−Z−O層[(In)a(Ga)b(ZnO)c層](a、b、cはそれぞれ、a≧0、b≧0、c>0の条件を満たす実数)でありうる。このように第1半導体活性層212a及び第2半導体活性層212bを酸化物半導体で形成する場合には、透光度がさらに高くなりうる。
【0045】
前記第1半導体活性層212a及び第2半導体活性層212bを覆うようにゲート絶縁膜213がバッファ膜211上に形成され、ゲート絶縁膜213上に第1ゲート電極214a及び第2ゲート電極214bが形成される。
【0046】
第1ゲート電極214a及び第2ゲート電極214bを覆うようにゲート絶縁膜213上に層間絶縁膜215が形成され、この層間絶縁膜215上に第1ソース電極216aと第1ドレイン電極217a及び第2ソース電極216bと第2ドレイン電極217bが形成されて、それぞれ第1半導体活性層212a及び第2半導体活性層212bとコンタクトホールを通じてコンタクトされる。
【0047】
図8からみれば、前記スキャンラインSは、第1ゲート電極214a及び第2ゲート電極214bの形成と同時に形成されうる。そして、データラインDは、第1ソース電極216aと同時に形成され、かつ第1ソース電極216aに連結されるように形成され、駆動電源ラインVは、第2ソース電極216bと同時に形成され、かつ第2ソース電極216bに連結されるように形成される。
【0048】
キャパシタCstは、第1ゲート電極214a及び第2ゲート電極214bの形成と同時に下部電極220aが、第1ドレイン電極217aと同時に上部電極220bが形成される。
【0049】
前記のような第1TFT(TR1)、キャパシタCst及び第2TFT(TR2)の構造は必ずしもこれに限定されるものではなく、多様な形態のTFT及びキャパシタの構造が適用できるということはいうまでもない。
【0050】
これらの第1TFT(TR1)、キャパシタCst及び第2TFT(TR2)を覆うようにパッシベーション膜218が形成される。前記パッシベーション膜218は、上面が平坦化した単一または複数層の絶縁膜になりうる。このパッシベーション膜218は、無機物及び/または有機物で形成されうる。
【0051】
前記パッシベーション膜218上には図7及び図8から分かるように、第1TFT(TR1)、キャパシタCst及び第2TFT(TR2)を遮蔽するように画素電極221が形成され、この画素電極221は、パッシベーション膜218に形成されたビアホールにより第2TFT(TR2)のドレイン電極217bに連結される。前記各画素電極221は、図7から分かるように、互いに独立した島状に形成される。
【0052】
前記パッシベーション膜218上には、前記画素電極221のエッジを覆うように画素定義膜219が形成され、画素電極221上には、有機発光層223と対向電極222とが順次積層される。前記対向電極222は、全体画素領域PAと透過領域TAとにかけて形成される。
【0053】
前記有機発光層223は、低分子または高分子有機膜が使われうる。低分子有機膜を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、発光層(EML:Emission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などが単一あるいは複合の構造で積層されて形成され、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc:copper phthalocyanine)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとして多様に適用できる。これら低分子有機膜は、真空蒸着の方法で形成されうる。この時、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は共通層であって、赤色、緑色、青色のピクセルに共通に適用できる。したがって、図7とは異なって、これら共通層は対向電極222のように、全体画素領域PAら及び透過領域TAを覆うように形成されうる。
【0054】
前記画素電極221はアノード電極の機能を行い、前記対向電極222はカソード電極の機能を行えるが、もちろん、これら画素電極221と対向電極222との極性は互いに逆になってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記画素電極221は反射電極になり、前記対向電極222は透明電極になりうる。前記画素電極221は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca及びこれらの化合物で形成された反射膜と、仕事関数の高いITO、IZO、ZnO、またはInなどとを含んで備えられうる。そして、前記対向電極222は、仕事関数の小さな金属、すなわち、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Caなどで形成されうる。したがって、前記有機発光部21は、対向電極222の方向に画像を具現する前面発光型になる。
【0056】
このように画素電極221が反射電極として備えられる場合、その下部に配置された画素回路部は画素電極221により遮蔽された状態になり、これにより、図7からみれば、対向電極222の上部外側でユーザーは、画素電極221の下部の第1TFT(TR1)、キャパシタCst及び第2TFT(TR2)の各パターンとスキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVの一部を観察できなくなる。
【0057】
このように画素電極221が反射電極として備えられることによって発光された光が観察者側にのみ発散されるので、観察者の逆方向に消失される光量を低減させられる。また、前述したように、画素電極221がその下部の画素回路の多様なパターンを遮蔽する役割を行うので、観察者がさらに鮮明な透過イメージを見ることができる。
【0058】
しかし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、前記画素電極221も透明電極で備えられうる。この場合、仕事関数の高いITO、IZO、ZnO、またはInなどで備えられる。このように画素電極221が透明な場合、ユーザーが対向電極222の上部外側で、画素電極221の下部の第1TFT(TR1)、キャパシタCst及び第2TFT(TR2)の各パターンとスキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVの一部を見ることができる。しかし、前記画素電極221が透明であっても光の透過率が100%になれないので、透過される光に損失が発生し、前記導電パターンも画素電極221の領域内に配されるものであるため、画素電極221により外光の透過率がさらに落ちることから、これら導電パターンに直接外光が入射される時に比べて、外光との干渉効果が落ちる。したがって、これら導電パターンに直接外光が入射される時に比べて外部イメージの歪曲現象を低減させることができる。
【0059】
前記パッシベーション膜218、ゲート絶縁膜213、層間絶縁膜215及び画素定義膜219は、透明な絶縁膜で形成することが望ましい。この時、前記基板1は、前記絶縁膜が持つ全体的な透過率より大きいか、または同じ透過率を持つ。
【0060】
前記パッシベーション膜218は、特許請求範囲の第1絶縁膜に対応する。そして、前述したゲート絶縁膜213、層間絶縁膜215及び画素定義膜219は、特許請求の範囲の第2絶縁膜になる。
【0061】
本発明を具現する一実施形態においては、透過領域TAの透光率をさらに高めるために、前記対向電極222の透過領域TAに対応する少なくとも一部領域に、対向電極222が開口された第1開口224を形成する。前述したように、透過領域TAの外光透過率を高めるためには、透過領域TAの面積を広げるか、または透過領域TAに形成される材料の透過率を高めねばならない。ところが、透過領域TAの面積を広げるのは、画素回路部PCの設計に対する制限により限界があって、結局透過領域TAに形成される材料の透過率を高めねばならない。
【0062】
イメージが対向電極222の方向に具現される前面発光型構造で形成する場合であっても、前記対向電極222は金属からなるため、光の透過には限界がある。といっても、対向電極222の透過率を低くするためにその厚さを薄くするか、または透過率の高い伝導性金属酸化物材料を使用する場合、対向電極222の抵抗を過度に高くする恐れがあって望ましくない。
【0063】
本発明を具現する一実施形態では、このような問題を解決するために、対向電極222に第1開口224を形成して、透過領域TAでの外光透過率を顕著に向上させた。
【0064】
前記第1開口224の平面パターンは、必ずしも図4ないし図7に示した例に限定されるものではなく、透過領域TAに多様なパターンで形成されうる。たとえば、透過領域TAに沿って横方向に直線状に延びたチャンネル形態であるか、または透過領域TAに沿って縦方向に直線状に延びたチャンネル形態でありうる。また、透過領域TAの一部にのみドット形態にパターニングされてもよい。
【0065】
図9は、本発明の他の一実施形態を図示したものであって、透過領域TAの絶縁膜にも別途の開口を形成したものである。
【0066】
前記開口は、スキャンラインS、データラインD及び駆動電源ラインVに接触しない範囲内で可能なかぎり広く形成されることが望ましいが、前記第1開口224に連結されるように形成されることが望ましい。
【0067】
前記画素回路部PCを覆うパッシベーション膜218に第2開口225が形成され、残りのゲート絶縁膜213、層間絶縁膜215及び画素定義膜219に第3開口226が形成される。第2開口225及び第3開口226は第4開口227をなす。
【0068】
図9で、バッファ膜211には開口を延長していないが、これは基板1の外側から浸透される不純物を遮断するためのものであって、場合によっては、前記第4開口227はバッファ膜211にまで延長できる。
【0069】
このように透過領域TAに第1開口224以外にも第4開口227を形成することによって、透過領域TAでの透光度をさらに高めることができ、これにより、ユーザーの外部イメージの観察がさらに容易になりうる。
【0070】
本発明は添付した図面に示した一実施形態を参考として説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は特許請求の範囲のみによって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、有機発光表示装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0072】
221 画素電極、
224 第1開口、
D データライン、
PA 画素領域、
PC 画素回路部、
S スキャンライン、
TA 透過領域、
V 駆動電源ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に定義された透過領域及び前記透過領域を介して互いに離隔した複数の画素領域のうち、前記基板上の前記各画素領域内に位置する複数の薄膜トランジスタと、
前記複数の薄膜トランジスタを覆うパッシベーション膜と、
前記パッシベーション膜上に前記各薄膜トランジスタと電気的に連結されていて、前記各画素領域内に位置し、前記各薄膜トランジスタを遮蔽できるように前記各薄膜トランジスタと重なって配置された複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と対向し、前記透過領域及び前記画素領域にかけて位置し、前記透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に第1開口を持つ対向電極と、
前記画素電極と対向電極との間に介在されて発光する有機発光層と、を備える有機発光表示装置。
【請求項2】
前記画素電極の面積は、前記画素領域のうち一つの面積と同じであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記各薄膜トランジスタと電気的に連結された複数の導電ラインをさらに備え、前記導電ラインは、いずれも前記各画素電極と重なって配列されたことを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記透過領域の面積は、前記画素領域と前記透過領域の面積の和に対して20%ないし90%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記パッシベーション膜は、前記透過領域及び前記画素領域に形成されており、透明な物質からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記基板が持つ透過率は、前記パッシベーション膜の透過率より大きいか、または同じであることを特徴とする請求項5に記載の発光表示装置。
【請求項7】
前記パッシベーション膜は、前記透過領域及び前記画素領域に形成され、前記透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に第2開口を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
前記第2開口は、前記第1開口と連結されたことを特徴とする請求項7に記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
前記透過領域に対応する位置に複数の絶縁膜が備えられ、前記絶縁膜は、前記透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に第3開口を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
前記第3開口は、前記第1開口と連結されたことを特徴とする請求項9に記載の有機発光表示装置。
【請求項11】
前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一つは、透明電極であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の発光表示装置。
【請求項12】
基板と、
前記基板上に定義された透過領域及び前記透過領域を介して互いに離隔した複数の画素領域のうち、前記基板上の前記複数の画素領域内に位置して、それぞれ少なくとも一つの薄膜トランジスタを備えた複数の画素回路部と、
前記画素回路部を覆う第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に前記各画素回路部と電気的に連結されていて、前記各画素回路部を遮蔽できるように前記各画素回路部と重なって配置された複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と対向し、前記透過領域及び前記画素領域にかけて位置し、前記透過領域のうち少なくとも一部に対応する位置に第1開口を持つ対向電極と、
前記画素電極と対向電極との間に介在されて発光する有機発光層と、を備える有機発光表示装置。
【請求項13】
前記画素電極は、前記各画素領域と同じ領域に形成されたことを特徴とする請求項12に記載の有機発光表示装置。
【請求項14】
前記各画素回路部と電気的に連結された複数の導電ラインをさらに備え、前記各導電ラインは、いずれも前記各画素領域を通過するように配列されたことを特徴とする請求項12または13に記載の有機発光表示装置。
【請求項15】
前記透過領域の面積は、前記画素領域と前記透過領域の面積の和に対して20%ないし90%の範囲内であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項16】
前記透過領域及び前記画素領域には前記第1絶縁膜及び複数の第2絶縁膜が配置され、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜は透明な物質からなることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項17】
前記基板が持つ透過率は、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜の透過率より大きいか、または同じであることを特徴とする請求項15に記載の発光表示装置。
【請求項18】
前記透過領域及び前記画素領域には、前記第1絶縁膜及び複数の第2絶縁膜が配置され、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜のうち少なくとも一つは、前記透過領域に対応する位置に第4開口を備えたことを特徴とする請求項12〜17のいずれか一つに記載の有機発光表示装置。
【請求項19】
前記第4開口は、前記第1開口と連結されたことを特徴とする請求項18に記載の有機発光表示装置。
【請求項20】
前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一つは透明電極であることを特徴とする請求項12〜19のいずれか一つに記載の発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−150992(P2011−150992A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153114(P2010−153114)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】