説明

有機粘土を含む腐食防止用コーティング剤組成物およびその製造方法

有機溶媒に溶解される単量体または反応基を持つ高分子と硬化剤を主反応成分とし、その他の添加剤を添加して製造する従来の腐食防止用コーティング剤組成物において、前記主反応成分内に超音波によって分散されている有機粘土をさらに含む腐食防止用組成物およびその製造方法を提供する。前記組成物の製造方法は、有機粘土を、超音波を用いて有機溶媒に溶解される単量体または反応基を持つ高分子および/またはアミン基を持つ硬化剤内に均一に分散させた後、これらの有機粘土が均一に分散されている単量体または反応基を持つ高分子と硬化剤とを混合し、ここにその他の添加剤をさらに混合する段階を含んでなる。前記腐食防止用組成物は、自動車用亜鉛鋼板を始めとした各種被コーティング材に被覆され、耐食性を著しく向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機粘土を含む腐食防止用コーティング剤組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、有機溶媒に溶解されるエポキシなどの硬化可能な単量体または高分子、2つ以上のアミン基を持つ硬化剤、および前記単量体または高分子と前記硬化剤のいずれか一方または両方に超音波によって均一に混合、分散される有機粘土を含んでなる腐食防止用コーティング剤組成物およびその製造方法に関する。本発明に係るコーティング剤組成物は、これに限定されないが、特に亜鉛メッキ鋼板などの金属の表面の腐食防止用として使用できる耐食性のコーティング剤である。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷間圧延鋼板に耐食性を付加するために、鋼板の表面に亜鉛などの金属をメッキし、亜鉛メッキ鋼板および各種メッキ鋼板を製造する。このような金属メッキ鋼板は、湿気、空気などに長時間晒されると、金属酸化物、例えば白錆、赤錆などが発生する。
自動車などの用途に用いられる亜鉛−ニッケルメッキ鋼板の耐食性処理として、塗布型クロメート処理の後、有機樹脂を被覆する場合が多かった。ところが、最近では人体に有害なクロムを使用しない趨勢なので、樹脂被覆層の役割が一層重要になる(Park, Chan Seop et al., Polymer Science & Technology, 12(5), 660, 2001)。
【0003】
したがって、クロムを使用することなく耐食性を向上させるための無クロム耐食性コーティング剤およびその製造方法に関して、韓国登録特許第443259号および同第428562号などが知られている。前記登録特許第443259号には、アルミナゾルを基本組成とし、ここにアルキルシラン、特定の水溶性高分子、およびモリブデン含有腐食抑制剤を一定の含量比で含有させて製造したコーティング剤組成物が開示されており、前記登録特許第428562号には、水溶性有機樹脂と無機成分が70:30〜30:70の固形分比で混合された混合樹脂80〜50重量%、金属酸化物のフォスフェイト系耐食性防錆剤10〜40重量%、および有機金属錯化合物1〜20重量%を含んでなるコーティング剤組成物が開示されている。
【0004】
一方、韓国公告特許第2005−63979号には、数平均分子量15,000〜60,000のエポキシ樹脂100重量部、高分子−粘土ナノ複合体5〜30重量部、メラミン樹脂5〜20重量部、ワックス1〜5重量部、および金属粉末80〜300重量部よりなるプリシールド(pre-sealed)鋼板用樹脂組成物が開示されている。
前記韓国公告特許第2005−63979号には、前記組成からなる、高分子−粘土ナノ複合体を含むコーティング剤組成物を、エポキシ樹脂の分子量および含量、硬化剤の含量および高分子−粘土ナノ複合体の含量などを変化させながら亜鉛鋼板にコートした場合、樹脂コーティング物の物性を評価し、前記特許公報の請求の範囲に記載されたような特定の組成比を持つ場合、優れた耐食性および電着塗装性などを持つコーティング剤組成物を得ることができたと開示されている。
【0005】
本発明者らは、前記韓国公告特許第2005−63979号に開示した記載とは異なる分子量の範囲を持つエポキシ樹脂および/またはメラミン系硬化剤に特定の方法によって有機粘土を均一に分散させた後、これをその他のコーティング剤成分と混合して製造したコーティング剤が、より優れた耐食性効果を持つことができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、前記公告特許では、前記公告特許の前記記載した範囲の分子量範囲を持つエポキシ樹脂を使用しない場合、優れた効果を得ることができないと開示したが、これとは異なり、前記公告特許に記載されたものに比べて著しく低い分子量単位を持つエポキシ単量体またはオリゴマーなどを使用する場合にも、本発明の特定の方法によって、エポキシ樹脂と硬化剤である主成分とを混合する前または前記主成分のみを混合した状態で有機粘土を均一に分散させてコーティング剤組成物を製造する場合、前記公告特許で開示したものより優れた耐食性効果を持つコーティング剤組成物を製造することができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、超音波を用いた新規の方法によって有機粘土を均一に分散させたエポキシ単量体またはオリゴマーとメラミン系硬化剤を含む新規の腐食防止用コーティング剤組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、超音波によってエポキシ単量体またはオリゴマーおよび/またはメラミン系硬化剤に予め有機粘土を均一に分散させた後、これらをその他の添加剤と混合することにより耐食性を向上させた、腐食防止用コーティング剤組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、有害なクロム(Cr)成分を全く使用しないことにより環境に優しい、亜鉛メッキ鋼板などの金属の表面用耐食性コーティング剤組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、その他の多様な表面に適用することにより耐食性を向上させることが可能なコーティング剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好適な第1様態では、エポキシ樹脂単量体またはオリゴマー100重量部、2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤5〜80重量部、および前記エポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと前記硬化剤のいずれか一方または両方に均一に混合、分散される有機粘土0.1〜20重量部を含む腐食防止用コーティング剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の好適な第2様態では、数平均分子量340〜2000g/moleのエポキシ単量体またはオリゴマー100重量部、2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤5〜80重量部、および前記エポキシ単量体またはオリゴマーと前記硬化剤のいずれか一方または両方に均一に混合、分散される有機粘土0.1〜20重量部を含む腐食防止用コーティング剤組成物を提供する。
前記本発明の好適な様態において、エポキシ単量体またはオリゴマーと硬化剤のいずれか一方または両方に均一に混合、分散される有機粘土は、好ましくは超音波によって均一に混合、分散されることを特徴とする。また、このような有機粘土の混合、分散は、前記2成分を混合する前に各成分に対して行われてもよく、前記2成分を混合した後、この混合物に対して行われてもよい。
【0009】
したがって、本発明の好適な第3様態では、第1および第2様態による腐食防止用コーティング剤組成物の製造方法として、
(i)100重量部のエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと5〜30重量部の2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤のいずれか一方または両方に、超音波を用いて総重量0.1〜20重量部の有機粘土を均一に分散させた後、前記有機粘土が分散されたエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと硬化剤とを混合する段階、或いは
(ii)100重量部のエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと5〜30重量部の2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤とを混合した後、ここに超音波を用いて総重量0.1〜20重量部の有機粘土を均一に分散させる段階を含んでなる、均一に分散された有機粘土を含む腐食防止用コーティング剤組成物の製造方法を提供する。
好ましくは、本発明に係る腐食防止用組成物は、前述したエポキシ樹脂、硬化剤および有機粘土などの主成分以外に、その他の添加剤成分、例えばコーティング剤組成物内で硬化反応に参与しないアルミナ、シリカゾルなどの無機物質、溶接性を向上させるための金属粉末、潤滑性を向上させるためのワックス、フォスフェイト系耐食性防錆剤、および有機金属錯化合物などをさらに含むことができ、これらの他にも、当該分野における通常の知識を有する者によく知られているその他の添加剤成分をさらに含むことができる。当該分野における通常の知識を有する者であれば、コーティング剤組成物の用途に応じて前記その他の添加剤成分の中から任意のものを多様に選択して使用することができることは明白である。これらその他の添加剤成分は、前述した好適な様態に係る本発明の腐食防止用コーティング剤組成物の製造方法において、段階(i)または(ii)の過程によってコーティング剤組成物の主成分を混合した後、ここに添加して混合できる。
【0010】
前記組成物の成分のうち、2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤は、1次アミン、2次アミン、3次アミン、4次アミンおよび全てのアミン誘導体を含む硬化剤であって、主にメラミン系硬化剤を意味する。
エポキシ単量体は、両末端にエポキシ基が付いており、アミン基などと反応して高分子が生成される。本発明で使用可能なエポキシ単量体は、ハロゲン基、アミン基などの官能基を持つ変性エポキシ単量体も含む。エポキシの重合または硬化に用いられる2つ以上のアミン基を持つメラミン誘導体としては、メトキシメチルメラミン(Methoxymethyl Melamine)、メトキシメチルブトキシメチルメラミン(Methoxy Methyl Butoxymethyl Melamine)、ヘキサメトキシメチルメラミン(Hexa Methosymethyl Melamine)などがある。
高分子と粘土のナノ複合材は、引張強度などの機械的物性、耐熱性、湿気、酸素などの気体に対する透過防止効果が優れて現在多くの研究が行われている。粘土は層状構造を持つシリケートなどからなる無機化学物質に対する総称であるが、それぞれの層は、不規則な円板形であって、1nmの厚さおよび約0.1~100μm程度の直径を持つ。
【0011】
粘土の種類としては、カオリン(Kaoline)、サーパンタイン(Serpentine)、マイカ(Mica)、バーミキュライト(Vermiculite)、スメクタイト(Smectite)、フィロシリケート(Phyllosilicate)などがある。スメクタイトの種類としては、ベントナイト(Bentonite)、モンモリロナイト(Montmorillonite)、サポナイト(Saponite)、アルマゴサイト(Armargosite)、メタベントナイト(Metabentonite)、ヘクトライト(Hectorite)、バイデライト(Beidellite)、ステベンサイト(Stevensite)、ハロイサイト(halloysite)、ノントロナイト(Nontronite)などがある。
【0012】
本発明の組成物に用いられる有機粘土としては、例えばSouthern Clay社などから例えばCloisite 30Bなどの商品名で販売されている有機粘土を使用し、或いは当該分野における公知の多様な方法によって一般粘土を有機化させて使用することができる。
本発明は、プリシールド鋼板だけでなく、他の金属素材の表面保護用として用いられるエポキシ単量体またはそれらのオリゴマー(数平均分子量340〜2000g/mole)を主剤樹脂とする溶剤型腐食防止コーティング剤組成物としても使用できる。
以下、本発明を下記の実施例によって詳細に記述する。ところが、これら実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0013】
実施例1
溶剤型コーティング液の主反応成分としては、数平均分子量380g/moleのエポキシ単量体とメラミン系硬化剤を使用した。
これらの主反応成分それぞれに、そしてこれらの主反応成分の混合物に有機粘土を分散させてナノ複合材型コーティング剤組成物を製造した。
エポキシ単量体は、Kukdo化学で生産するYD−128(diglycidyl ether of Bisphenol-A, Epoxy equivalent weight of 186.4g/eq, number average molecular weight of 372.8g/mole)を使用し、硬化剤は、Cytec社(Cytec Industries Inc.)のメラミン誘導体と東京化成工業のDDS(4,4'-diaminodiphenylsulfone)を使用した。有機粘土はSouthern−clay社のCloisite 30Bを使用したが、Cloisite 30Bはモンモリロナイト(MMT)の層間に有機物、すなわちメチル、タロウ、ビス−2−ヒドロキシエチル、四級アンモニウムイオンを導入させたものである。
【0014】
表1の試料1は、有機粘土が含まれていないコーティング液であって、一般攪拌器を用いて組成成分を混合した。試料2は、2.5重量部のCloisite 30Bを100重量部のエポキシ単量体に超音波(最大出力750w)を用いて20分間分散させ、2.5重量部のCloisite 30Bを75重量部のメラミン系硬化剤に超音波を用いて20分間分散させ、それぞれ製造されたエポキシ/有機粘土(有機粘土が分散されているエポキシ単量体)とメラミン系硬化剤/有機粘土(有機粘土が分散されているメラミン系硬化剤)をDDS10重量部と共にさらに20分間超音波を用いて混合した。試料3はエポキシ樹脂100重量部に有機粘土5重量部を、試料4はメラミン系硬化剤75重量部に有機粘土5重量部を、それぞれ超音波を用いて20分間分散させた後、混合してコーティング剤を作った。試料5は反応主成分としてのエポキシ100重量部、メラミン系硬化剤75重量部およびDDS10重量部を先ず一般攪拌器を用いて混合した後、ここに有機粘土5重量部を超音波を用いて20分間分散させた。
【0015】
表1の5試料が同一の粘度を持つようにキシレンの量(エポキシ100重量部に対してキシレン約20〜40重量部)を調節し、一般攪拌器を用いて混合した。5試料の粘度が同一になれば、バーコーターによるコーティングフィルムの厚さが同一になって組成差による耐食性の変化が分かる。
表1の5試料をバーコーターを用いて亜鉛メッキ鋼板にコートし、鋼板の温度が250℃に保たれるオーブンで60秒間反応させ、コーティング剤が約2.0g/mの付着量でコートされた亜鉛メッキ鋼板を製作した。
コートされた亜鉛メッキ鋼板を各試料当り4枚ずつ塩水噴霧装置(Saltwater Spray Tester、SST)に入れ、適切な時間間隔で表面状態を写真として記録し、赤錆が発生するときの時間を肉眼で測定して平均値を耐食性結果として表1にまとめた。塩水噴霧試験器は、36℃で塩水噴霧圧1kg/cm、相対湿度99%の条件で運転した。
試料1と比較して、有機粘土が5重量部で含まれた全てのコーティング剤組成物は向上した耐食性を示した。
【0016】
【表1】

【0017】
X線回折器(ポハン加速器、4C1と5C2、SAXS)で測定した結果、分散過程において、エポキシ単量体とメラミン系硬化剤はClosite 30Bの層間にそれぞれ浸透して層間間隔を1.8nmからそれぞれ8.3nmと3.8nmに増加させたことが分かった。一般攪拌器を用いて分散させる場合には、このような層間間隔の増加を観察することができなかった。
【0018】
実施例2
溶剤型コーティング液の主反応成分としては平均分子量380g/moleのエポキシ単量体とメラミン系硬化剤を使用した。選択的に、樹脂成分として、平均分子量5,000〜50,000のキシレンに溶けるポリウレタン樹脂をさらに含むこともできる。これらの主反応成分それぞれに有機粘土を分散させてナノ複合材型コーティング剤組成物を製造した。
表2の試料7は、2.5重量部のCloisite 30Bをエポキシ単量体100重量部に超音波(最大出力750w)を用いて20分間分散させ、また、2.5重量部のClosite 30Bをメラミン系硬化剤15重量部に超音波を用いて20分間分散させて、それぞれ製造されたエポキシ/有機粘土(有機粘土が分散されているエポキシ単量体)とメラミン系硬化剤/有機粘土(有機粘土が分散されているメラミン系硬化剤)をポリウレタン10重量部およびDDS10重量部と共にさらに20分間超音波を用いて混合した。
試料6は、有機粘土が含まれていない試料なので、超音波を使用せずに一般攪拌器を用いて混合した。
【0019】
X線回折器(ポハン加速器、4C1と5C2、SAXS)で測定した結果、分散過程において、エポキシ単量体とメラミン系硬化剤はClosite30Bの層間にそれぞれ浸透して層間間隔を1.8nmからそれぞれ8.3nmと3.8nmに増加させたことが分かった。一般攪拌器を用いて分散させる場合には、このような層間間隔の増加を観察することができなかった。
表2の2試料が同一の粘度を持つようにキシレンの量を調節し、一般攪拌器を用いて混合した。2試料の粘度が同一になれば、バーコーター(bar coater)によるコーティングフィルムの厚さが同一になって組成差による耐食性の変化が分かる。
【0020】
表2の2試料をバーコーターを用いて亜鉛メッキ鋼板にコートし、鋼板の温度が250℃に保たれるオーブンで60秒間反応させることにより、コーティング剤が約2.0g/mの付着量でコートされた亜鉛メッキ鋼板を製作した。
コートされた亜鉛メッキ鋼板を各試料当り3枚ずつ塩水噴霧装置(Saltwater Spray Tester、SST)に入れ、適切な時間間隔で表面状態を写真として記録し、赤錆が発生するときの時間を肉眼で測定して平均値を耐食性結果として表2にまとめた。
表2の2種のコーティング剤に対する塩水噴霧実験結果を参照すると、有機粘土が添加されていないコーティング液は平均792時間経過の際に赤錆が発生した。ところが、有機粘土が添加されているコーテイング液は1848時間まで赤錆の発生がなかった。
【0021】
コーティング後の溶接性を確保するために、金属粉末およびその他の添加剤を腐食防止コーティング剤に添加させてコーティング液を製造することができる。表2の2試料にそれぞれ同量の金属粉末とその他の添加剤を混合して亜鉛メッキ鋼板にコーティングおよび硬化させて耐食性を実験した結果、有機粘土含有コーティング剤の耐食性がさらに優れることが分かった。また、表2の2試料にそれぞれ金属粉末とその他の添加剤を同量添加してコートし、硬化させ、コップ加工した後、密着性実験を行った。また、コップ加工の後、熱湯(100℃)に1時間浸漬した後の密着性実験である沸騰水密着性実験を行った。
【0022】
密着性実験は、接着テープを同一の大きさにして鋼板に付着させた後、瞬間的に引っ張ったときにコーティングが剥がれるか否かから確認した。コップ加工後の密着性実験では、有機粘土が添加されていないコーティング液の場合と、有機粘土が添加されているナノ複合材型コーティング液の場合はいずれもコーティングが剥がれなかった。ところが、コップ加工後の沸騰水密着性実験の結果、有機粘土が添加されているコーティング液(試料7)の場合はコーティングが剥がれなかったが、有機粘土が添加されていないコーティング液(試料6)の場合は一部のコーティングが剥がれた。また、コップ加工よりさらに過酷な条件であるクロスカット後の密着性実験においても、有機粘土が添加されているコーティング液の場合は、コーティングが剥がれず、安定したコーティング面を維持していることが分かった。クロスカット密着性実験はコーティング面の横、縦1cmの範囲に剃刀で線を入れて100個の面を作った後、接着テープを着脱することにより、密着性を評価するのである。
【0023】
【表2】

【0024】
実施例3
前述した実施例1で説明した方法の通りに、平均分子量2,000g/moleのエポキシオリゴマーに有機粘土(Cloisite 30B)を超音波発生器(最大出力750w)を用いて分散させた後、他の組成物と混合するときにさらに超音波発生器を用いてコーティング剤(試料9)を製造し、その構成成分および重量割合を表3にまとめた。
コーティング剤組成物を、実施例1で説明した方法によって亜鉛メッキ鋼板にコートした後、オーブンで硬化させた。コートされた亜鉛メッキ鋼板を各試料当り3枚ずつ塩水噴霧装置(SST)に入れて耐食性を測定した。実施例1と2とは異なり、実施例3では塩水噴霧装置を42℃で運転して赤錆が短時間内に発生するようにし、コートされた亜鉛メッキ鋼板の表面に赤錆が発生する時間の平均を表3にまとめた。
有機粘土が添加されたコーティング剤(試料9)の耐食性は、平均744時間であって、有機粘土が添加されていないコーティング剤(試料8)より耐食性に優れた。
【0025】
【表3】

【0026】
実施例4
前述した実施例1と2の有機粘土を含むコーティング剤の製造は、有機粘土の含量をエポキシ単量体100重量部に対して5重量部にして製造したが、有機粘土の含量を最適化するために有機粘土の含量を変化させてコーティング剤を製造した。また、実施例1、2および3とは異なり、超音波による分散および混合を1回のみ行った。すなわち、表4の試料11、12、13を製造するとき、エポキシ単量体、ポリウレタン、メラミン系硬化剤、DDSおよび有機粘土を表4にまとめた通りに全て混合した後、超音波発生器を用いて20分間分散させた。有機粘土が添加されていない試料は288時間経過の際に赤錆が発生したが、有機粘土が添加されている試料は288時間経過の際に赤錆が発生しなかった。有機粘土の含量が2.5重量部のときは、有機粘土が添加されていないコーティング液より100%以上向上した624時間経過の際に赤錆が発生し、 有機粘土の含量が6.5重量部のときは、720時間経過の際に赤錆が発生し、有機粘土の含量が4.5重量部のときは、792時間経過の際に赤錆が発生した。このような結果からみて、有機粘土含有鋼板コーティング用コーティング液に添加される有機粘土の最適含量は4.5重量部程度であることが分かった。
【0027】
有機粘土の含量が4.5重量部のとき、コーティング液を鋼板にコートした後、硬化させてコーティング層をフィルムの形で分離してXRD(ポハン加速器、5C2、SAXS)で分析した。Closite 30Bの固有d−spacingは1.8nmであるが、硬化後のd−spacingは4.7nmと測定された。この点から、粘土がよく分散されていることが分かり、有機粘土がよく分散されて遮断特性が向上し、耐食性にも優れるものと判断される。
【0028】
【表4】

【0029】
実施例5
有機粘土を除いた残りの亜鉛メッキ鋼板コーティング剤の組成は同一であり、有機粘土を樹脂に対して3重量部または5重量部で添加するときに分散方法を異にして試料を製造した。表5の試料14、15、16を互いに比較すると、試料14は、有機粘土を含んでおらず、試料15は、有機粘土がエポキシとメラミン系硬化剤に分散されるとき、および有機粘土がコーティング剤に混合されるときに一般攪拌器が20分間使用された。試料16は、試料15と同一の組成比であるが、有機粘土がエポキシとメラミン系硬化剤に分散されるとき、および有機粘土がコーティング剤で混合されるときに超音波発生器を20分間使用した。前記実施例で使用されたコーティングおよび硬化方法を使用し、42℃に温度が固定されたSSTで耐食性を測定した。
【0030】
耐食性実験結果より、有機粘土が耐食性の向上に寄与すること、また、超音波発生器で分散および混合させた方が、有機粘土の層間にまで樹脂または硬化剤を拡散させるので、一般攪拌器による単純混合によって製造した場合より耐食性に優れることが分かる。表5の組成物の構成比が同じ試料17、18、19、20を互いに比較すると、試料17は有機粘土を一般攪拌器によって分散させ、試料18、19、20はそれぞれエポキシ、メラミン系硬化剤、およびエポキシ/メラミン系硬化剤に超音波によって分散させた後、混合するときにさらに超音波発生器を使用した。
エポキシまたはメラミン系硬化剤に有機粘土が分散されるとき、およびこれらの成分が共に混合されるときに超音波を使用した場合(試料18、19、20)の耐食性は、408〜444時間であって、超音波を使用していない場合(試料17)の耐食性より著しく優れた。
【0031】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0032】
上述したように、本発明によれば、超音波によってコーティング剤の主反応成分それぞれに、または主反応成分の混合物に予め有機粘土を分散させた後、これらの主成分をその他の添加剤と共に混合して製造したコーティング剤組成物が公知のナノ−粘土ナノ複合体含有コーティング剤組成物に比べて著しく優れた耐食性を有し、溶接性や密着性などの他の物性にも優れた。したがって、本発明に係るコーティング剤組成物は、亜鉛メッキ鋼板だけでなく、他の金属の表面にも有利に適用されて耐食性を大幅向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂単量体またはオリゴマー100重量部、2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤5〜80重量部、および前記エポキシ単量体または前記オリゴマーと硬化剤のいずれか一方または両方に均一に混合、分散される有機粘土0.1〜20重量を含む、腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項2】
前記有機粘土の混合および分散は、超音波によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ単量体またはオリゴマーの数平均分子量が340〜2000g/moleであることを特徴とする、請求項1に記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項4】
前記有機粘土は、天然または合成のモンモリロナイト(Montmorillonite)、ヘクトライト(Hectorite)、ハロイサイト(halloysite)、ベントナイト(bentonite)、ノントロナイト(Nontronite)、およびバイデライト(Beidellite)よりなる群から選ばれるスメクタイト層状化合物から選ばれた有機粘土であることを特徴とする、請求項1に記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項5】
前記有機粘土は、モンモリロナイトにメチル、タロウ、ビス−2−ヒドロキシエチル、四級アンモニウムイオンを層間に導入させて有機化されたものであることを特徴とする、請求項4に記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項6】
前記有機粘土は、エポキシ単量体を基準として36重量%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項7】
アルミナゾル、シリカゾル、金属粉末、ワックスおよびフォスフェイト系耐食性防錆剤よりなる群から選ばれる添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項8】
前記エポキシ単量体は、ハロゲン基またはアミン基を含む変性エポキシ単量体であることを特徴とする、請求項1の記載の腐食防止用コーティング剤組成物。
【請求項9】
(i)100重量部のエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと5〜30重量部の2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤のいずれか一方または両方に、超音波を用いて総重量0.1〜20重量部の有機粘土を均一に分散させた後、前記有機粘土が分散されているエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと硬化剤とを混合する段階、或いは
(ii)100重量部のエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと5〜30重量部の2つ以上のアミン系官能基を持つ硬化剤とを混合した後、ここに超音波を用いて総重量0.1〜20重量部の有機粘土を均一に分散させる段階を含んでなる、均一に分散された有機粘土を含む腐食防止用コーティング剤組成物の製造方法。
【請求項10】
(i)段階または(ii)段階の後、アルミナゾル、シリカゾル、金属粉末、ワックスおよびフォスフェイト系耐食性防錆剤よりなる群から選ばれる添加剤を、前記有機粘土が分散されているエポキシ樹脂単量体またはオリゴマーと硬化剤の混合物に添加して混合する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の耐食性コーティング剤組成物でコートされた亜鉛メッキ鋼板。


【公表番号】特表2009−516017(P2009−516017A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539922(P2008−539922)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004588
【国際公開番号】WO2007/055498
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508138025)コリア インスティテュート オブ インダストリアル テクノロジー (3)
【Fターム(参考)】