説明

有機銀組成物およびその製造方法、それより製造されるインク及びそのインクを用いた導電配線形成方法

【課題】製造費用が低く、簡便な工程で導電配線形成用の有機銀組成物溶液を製造し、これより製造される安定化されたインクを提供し、尚、これを以ってインクジェットプリンターを用いた導電配線を形成する方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機銀組成物溶液は、酸化銀をアミン系化合物とラクトン系化合物(またはラクタム系化合物、カーボネート系化合物、環状酸無水物系化合物)とで反応させて溶解して製造することができ、それにインクジェットプリンターの適合した液流動性を確保するためにアルコールのような有機溶媒、界面活性剤などを添加してインクを製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電配線形成用有機銀溶液およびその製造方法、製造されるインク及びそのインクを用いた導電配線形成方法に関する。より詳細には、酸化銀を有機溶剤に溶解させて有機銀溶液を製造し、これをインクジェットプリンターに適用して導電配線を形成できるインクを提供する。また、製造されたインクをインクジェットプリンターを用いて印刷した後、熱処理することによって様々な基材に導電配線を形成する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の導電配線形成方法は、主にエッチング法、スクリーン印刷法、そして真空蒸着法、スピンコーティング法などが用いられており、基材としては使用目的によってガラス、エポキシ、ポリイミド、シリコンウエハなど様々な基材が用いられている。
【0003】
エッチング法は、基材に導電膜を備え、導電膜中に不要な部分をリソグラフィーを利用して回路以外の導電膜部分は腐食液で溶解・除去し、必要な導電配線のみを残すことによって導電性導電配線を形成する方法である。
【0004】
スクリーン印刷法は、導電性の金属ペーストでスクリーン印刷方法を利用して基材にパターンを印刷して導電配線を形成する方法である。
【0005】
真空蒸着法は、導電性金属を真空を利用して基材にマスクを装着して所望の位置に導電配線を形成する方法である。
【0006】
上記各方法は現在広く使われているが、工程が複雑で、工程時間が比較的に長く、原料の損失、低収率、高費用、および環境問題などの問題が発生する。特に、エッチング液、水洗液、感光フィルムなどの廃棄過程で深刻な環境問題を誘発する。最近、環境問題を理由にメッキ工程で使用される原料に環境侵害物質を排除する傾向があって、その要求される物性の調節が非常に難しい実情である。
【0007】
また、電子機器は次第に小型化、多機能化されており、基板に搭載される抵抗、コンデンサーなどの電子部品の形態も非常に小さな大きさに製造されて多層基板の素子として用いられており、これによる印刷回路基板の配線回路も高度化のために微細で精密なものが要求されている。
【0008】
最近、上記問題点、および産業で要求される印刷回路基板への導電配線形態が非常に多様で複雑になることにより、インクジェットプリンターを用いて回路パターンを形成する方法に関して多く研究・開発されている。
【0009】
インクジェットを用いた導電配線形成方法は、伝導性インクをコンピュータによって設計されたパターン通りにインクジェットプリンターのヘッドから基材に吐出して導電配線を形成する方法である。
【0010】
インクジェットを用いた導電配線形成方法は、上記のすべての問題点を解決するだけでなく、コンピュータおよび周辺器機の発展に伴って容易に回路を設計できるという長所があり、また需要者が要求する製品の少量多品種化を可能にして低費用で需要者に供給し、それによって高価の電子製品などの価格を下げることのできる方法を提供できる。
【0011】
上記のような長所があるにも関わらず、未だにインクジェットを用いた導電配線形成方法が汎用されていない理由は、伝導性インクにある。伝導性インクは大きく2つの要件を取り揃えなければならない。第1に、電気的な性質、すなわち要求される伝導性を表さなければならなく、基材への付着性が良好でなければならない。第2に、インクジェット印刷を可能にするインクの性質、すなわち粘度、表面張力、安全性などを満たさなければならない。
【0012】
上記のような要件を満たすために様々な方法で研究が行われている。
【0013】
下記の特許文献1では伝導性回路を形成する方法に対して技術されている。この方法に用いられるインク組成物は粘着物、添加剤、一つ以上の溶媒を含む。インクは連続タイプ(continuous type)のインクジェットシステムによって選択されたパターンで移動する。次いで、金属粉末がパターンに従って粘着物によって基材に固着し、超過粉末金属は除去され、基質、パターン、金属粉末は金属粉末を溶かすのに十分な温度で加熱して回路パターンを形成する。本発明によって提供されるインクは導電性インクではなく、粘着性のあるインクを基質にパターン化し、それに金属粉末を噴射してパターン外に分布した金属粉末を取り除いて熱を加えて金属粉末を溶融させる方式である。本発明は金属粉末を固着させることができる粘着物の粘度が高くてインクジェット方式には不適切であり、尚、金属粉末を溶融させることができる高温で処理しなければならないので、同様に基材も高温で安定した材料を選択しなければならないという短所がある。
【0014】
基材の選択において、汎用基材を使用できることが最近重要視されている。一例として自動化機器、カムコーダなど回路板が曲がって動く場合と、部品の挿入、構成時に回路基板の屈曲が要される場合に柔軟性で対応できるように製造した基板には、柔軟性基板(Flexible PCB)が用いられるなど、回路基板が使用される機器によって適合した回路基板を選択しなければならないからである。
【0015】
このような基材としてポリイミド、ポリエステルなどの高分子フィルム素材が代表的に挙げられる。
【0016】
しかし、上記のような高分子フィルムは高温で塑性する時、高分子の分解、寸法のバラツキが発生することもあるので、工程での温度範囲が制限的である。
【0017】
また、下記の特許文献2では、フラットパネルディスプレイ(FPD)の電極を形成できる金属超微粒子独立分散液でなるインクジェット用インクに関して記述されている。
【0018】
これは微粉末を製造するためにガス雰囲気上で蒸発法を用いて銀微粉末を溶液に捕集した後に微細な金属微粒子分散液を得て、インクジェットの可能なインクを製造して導電配線を形成する技術が紹介されている。しかし、上記のような方法は、電子ビームプラズマ、レーザー誘導加熱などの装置が必要であり、たくさんの費用が要される。また、このような金属微粒子を用いた場合は、単独で溶剤に分散させることが非常に難しくて高濃度の金属コロイド状を維持しにくく、保存性などの安定性の面で不十分であった。また、金属超微粒子の生成量が少ないので大量生産が困難で、一部の特殊用途以外は使用上に制約があった。
【0019】
その他、最近その有機金属化学物を用いて導電配線形成のための金属ペースト、導電性インクの製造に関する研究が盛んに行われている。
【0020】
このような例として、有機銀溶液を使用してインクジェットプリンターを用いて導電配線を形成する方法として、文献Liquid Ink Jet Printing with MOD Inks for Hybrid Microcircuits(Teng,K.F.,and Vest,R.W.,IEEE Transactions on Components,Hybrids and Mamufacturing Technology,12(4),545-549,1987)で紹介されている。しかし、固形粉が低くて塗布膜が非常に薄く、要求される伝導性が得られないと指摘されている。
【0021】
下記の特許文献3では、金属粉末と有機金属化合物との混合物を、スクリーンプリンティング法を使用して低温(300〜350℃)で塑性し、導電膜および導電配線を形成する方法に対して記述されている。しかし、このような有機金属化合物と金属粉末とを混合して導電性インクを製造する場合は、金属粉末を分散させるような工程を含み、インクジェットを可能にするために粘度を下げなければならないという短所がある。
【0022】
このような点は‘シルバーインクの分散および安全性’という文献(Dispersion and stability of silver inks,B.Y.Tat,M.J.Edirisinghe,2002)で指摘されており、本文献は安定化された分散を行うために3種の分散剤を使用して製造された伝導性インクに関して言及している。
【0023】
この以外にも関連文献は相当数存在するが、これらは全て分散工程を経なければならない。金属微粉末を含むインクを製造するには安定したコロイドを作ることが核心である。しかし、安定したコロイドを得ることは非常に難しく、特別な分散工程、すなわちミリング工程を経なければならない。このような分散工程において、作業ごとに一定の結果を得ることは非常に難しい。平均粒度を所定値以下に維持し、諸般の物性を正確に合わせる作業がまともに行われなければ平均粒径の大きな粒子がインクジェットヘッドのノズルを詰まらせて印刷不良を引き起こし、連続的な導電配線の形成を不可能にする。
【特許文献1】アメリカ特許第5,114,744号公報
【特許文献2】特開平第10−183207号公報
【特許文献3】大韓民国公開公報第2000−75549号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上記問題点を克服するために、本発明は、製造費用が低く、簡便な工程で導電配線形成用の有機銀組成物溶液を製造し、これより製造される安定化されたインクを提供し、尚、これを以ってインクジェットプリンターを用いた導電配線を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは上述したように、既存の分散方法の短所を解消し、安定で経済的な生産の可能なインクを製造するために、酸化銀で有機銀を製造する過程において以下のような事実を見つけた。
【0026】
酸化銀はアミン系化合物とラクトン系化合物との混合物に非常によく溶解する。これはアミン系化合物がラクトン系化合物の分子構造を変形させ、この変形された化合物が銀イオンと結合して有機銀組成物を形成するからであると推測される。アミン系化合物はラクトン系化合物の構造を変更させる機能をすると同時に上記有機銀組成物を溶解させる機能をする。
【0027】
繰り返される実験により、上記ラクトン系化合物だけでなくラクタム系化合物、カーボネート系化合物(carbonate-based compound)、環状酸無水物系化合物も同様の機能をすることを見つけた。
【0028】
上記のように、本発明の有機銀組成物溶液は酸化銀、アミン系化合物、ラクトン系化合物(またはラクタム系化合物、カーボネート系化合物、環状酸無数物系化合物)よりなっており、それにインクジェットプリンターの適合した液流動性を確保するためにアルコールのような有機溶媒、界面活性剤などを添加して伝導性インクを製造した。
【0029】
以下、本発明の有機銀組成物、これより製造される伝導性インクの順に説明する。
【0030】
有機銀組成物溶液は、酸化銀5〜40重量%、炭素数1〜12のアミン系化合物20〜85重量%、ラクトン、カルボン酸、そして環状酸無水物系化合物が単独またはこれらの混合物10〜20重量%として構成される。
【0031】
本発明において酸化銀の使用は、硝酸銀や塩化銀を用いて有機銀組成物を製造する場合において付加物として生成する塩素イオン、硝酸などのイオン化合物を取り除かなければならないという工程を避けることができ、上記酸化銀は分子当りの銀原子の含量が98%であって有機銀溶液の製造に非常に有利である。
【0032】
アミン系化合物は通常、アミノ基を含む化合物を指しており、例えば、Cの数が1〜12の直鎖状または分岐状のアルキルアミン、Cの数が1〜8の環状アルキルアミン、アミノアルコール化合物など、Cの数が1〜12の直鎖状または分岐状のアルキルジアミン化合物など、Cの数が1〜8の環状のアルキルジアミン化合物など、N−メチルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−プロピル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、N−ジメチルエチレンジアミン、3−メトキシプロピルアミンなどが挙げられるが、これに限定されず、当該の産業分野で通常の知識を有する者によって使用されることのできる同一性の範囲内の化合物が選択され得る。また、これらの中の単一成分を使用してもよく、2種以上の混合物でなる群から選択されたものを使用してもよい。
【0033】
この際、アミン係化合物は、有機銀溶液を塗布して熱処理する時に容易に脱離するものがよく、沸点は−10℃〜200℃のものがよく、好ましくは10℃〜120℃、より好ましくは40℃〜100℃のものがよい。
【0034】
ラクトン系化合物としては、β−プロピオラクトン、γ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−チオブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、δ−バレロラクトン、1,6−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2,7−ジオン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−メチレン−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、ラクチド、グリコリド、テトロン酸、2(5H)−ヒュラノン(hyuranone)、β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、メバロニックラクトン、5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトンなどが挙げられ、ラクタム系化合物としては、2−アゼチドン(azethidone)、2−ピロリジノン、5−メトキシ−2−ピロリジノン、5−メチル−2−ピロリジノン、N−メチルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、1−ビニール−2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、2−アザシクロラクトン、N−メチルカプロラクタム、2−アザシクロノナノン、N−アセチルカプロラクタムなどが挙げられ、カーボネート系化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルカーボネート、ビニレンカーボネートなどが挙げられ、環状酸無水物としては、イタコン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、グルタル酸無水物、オクタデシル無水コハク酸(octadecylsuccinic anhydride)、2,2−ジメチル無水コハク酸(dimethylsuccinic anhydride)、2−ドデケン−1−イル無水コハク酸(2-dodeken-1-ylsuccinic anhydride)、ヘキサフルオログルタル酸無水物(hexafluoroglutaric anhydride)、3,3−ジメチルグルタル酸無水物(3,3-dimetylglutaric anhydride)、3−エチル−3−メチルグルタル酸無水物(3-ethyl-3-methyl glutaric anhydride)、3,5−ジアセチルテトラヒドロピラン−2,4,6−トリオン、ジグリコール酸無水物などが挙げられるがこれらに限定されず、当該の産業分野で通常の知識を有する者によって使用されることのできる同一性の範囲内の化合物が選択され得る。これらの中の単一成分を使用してもよく、2種以上の混合物でなる群から選択されたものを使用してもよい。
【0035】
酸化銀を上記のアミン系化合物の単一または混合溶媒と、ラクトン系化合物(または、ラクタム系化合物、カーボネート系化合物、環状酸無水物系化合物)の単一または混合溶媒との混合物に溶解させ、溶解速度を増加させるために超音波分散機を用いて有機銀組成物溶液を製造した。この有機銀組成物溶液は、固形粉が5〜40%であって従来の技術で得られたものより相当多い。固形粉が多いので、この有機銀組成物溶液は従来の導電パターン方法であるスクリーン印刷法などに用いられる金属ペーストとしても使用可能である。
【0036】
上記のような方法で製造された高濃度の有機銀組成物溶液に、インクジェットプリンターの適合した液流動性を確保するためにアルコールのような有機溶媒、界面活性剤を添加して伝導性インクを製造した。
【0037】
本発明の伝導性インク組成物は、有機銀組成物溶液10〜90重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%の有機銀溶液と、これとは相溶性を有する有機溶媒9.9〜85重量%、好ましくは9.8〜70重量%、より好ましくは19.5〜50重量%、そして非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%でなってもよい。
【0038】
この際、溶剤は50〜300℃、好ましくは150〜300℃、より好ましくは200〜250℃の沸点を有する極性溶媒を単独あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
【0039】
また、溶剤の沸点が100℃より低い場合はインクジェットヘッドノズルの目詰まり現象が発生することがあり、導電膜および導電配線の形成後に表面の割れ、表面の荒れが現れることがある。
【0040】
また、溶剤の量は粘度調節用として用いられるが、これは塗膜の厚さ、インクジェットヘッドノズルの大きさなどを考慮して調節することが可能である。この際、粘度は2〜100cps、好ましくは2〜50cps、より好ましくは2〜25cpsを有することが好ましい。
【0041】
界面活性制の場合はイオン性、非イオン性界面活性剤のどちらの一方に限らず、単独あるいは2種以上の混合物として用いられることができる。これは基材の表面の表面張力すなわちインクの基材に対する濡れ特性の調節用として用いられるが、通常32〜50dyne/cmで表面張力を調節することが好ましい。
【0042】
32dyne/cmより表面張力が低い場合は、基材に噴射した後に基材においてあまりにも早い速度で広がるので要求される解像度を維持することができず、50dyne/cmより高い場合は、ノズルから噴射されるインクの量が必要な分まで噴射されず十分な塗膜の厚さを得ることができなくなる。
【0043】
導電膜および導電配線を形成する方法としては、圧電素子によってその震動でインク滴を噴射するピエゾ方式と、熱を利用して内部に気泡を発生させ、これによってインク滴を押し出すサーマル方式と、バブルジェット方式(登録商標名)とがある。しかし、熱を利用してインクを噴射する場合は、有機銀分子の分解を発生させてノズルの目詰まりや液の安全性が低下され得る。
【0044】
本発明では、ピエゾ方式のインクジェットノズルを用いることが好ましく、より好ましくは周波数の調節、インク貯蔵部の温度調節、ノズルの大きさの制御、適用基材の温度調節を可能にするインクジェットプリント装置を使用することが好ましい。
【0045】
上記のように、インクジェット噴射方式を用いて形成された導電膜および導電配線は加熱・熱処理を通じて最終伝導性が得られるが、加熱・熱処理の条件によって膜の外観特性、付着性、伝導性が左右される。
【0046】
通常、熱処理条件は100〜150℃で10〜30分、連続して200〜300℃で10〜30分間行うことができ、この際、窒素、アルゴン、水素などを単独あるいは混合ガス雰囲気として行い、塑性時間、膜の特性、そして伝導度特性の向上を図ることができる。
【0047】
本発明のように製造された導電膜および導電配線の伝導性は約9.8×10-6〜6.9×10-5Ωにて得られ、導電配線としての優れた伝導性を有する。
【発明の効果】
【0048】
上記のような結果で、少ない工程数、低工程費用で高濃度の有機銀溶液およびインクジェット用インクの製造方法を提供することができ、インクジェット印刷、熱処理の後に既存の方式に比べて基材付着性、印刷性および高伝導性を付与する導電膜および導電配線形成技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
上記の内容を以下の実施例および比較例で本発明をより具体的に説明する。しかし、次の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0050】
実施例1
コンデンサーが設けられた円底フラスコに、酸化銀(I)40gを60重量%のエチルアミン(水溶液)100gに入れて超音波を利用して分散させながら10℃を維持し、30分間攪拌した。次いで、この溶液にγ−ブチロラクトン30gとメチルエチルケトン30gとの混合液を5ml/分の速度で滴下した後、次いで、容器を95〜100℃を維持しながら40分間還流させ、酸化銀を溶解させた。反応混合物を10℃で減圧蒸留して過量のエチルアミンを取り除いて有機銀組成物溶液を製造した。この際に得られた最終固形粉から36.5%の淡緑色の有機銀組成物溶液を得ることができた。
【0051】
実施例2
コンデンサーが設けられた円底フラスコに、酸化銀(I)40gを70重量%のイソプロピルアミン(水溶液)100gに入れて超音波を利用して分散させながら10℃を維持し、30分間撹拌した。次いで、この溶液にγ−ブチロラクトン30gとメチルエチルケトン40gとの混合液を5ml/分の速度で滴下した後、次いで、容器を95〜100℃を維持しながら40分間還流させ、酸化銀を溶解させた。反応混合物を10℃で減圧蒸留して過量のイソプロピルアミンを取り除いて有機銀錯体溶液を製造した。この際に得られた最終固形粉から33.6%の淡緑色の有機銀溶液を得ることができた。
【0052】
実施例3
コンデンサーが設けられた円底フラスコに、酸化銀(I)40gを70重量%のイソプロピルアミン(水溶液)100gに入れて超音波を利用して分散させながら10℃を維持し、30分間撹拌した。次いで、この溶液にカルボン酸プロピレン30gとアセトニトリル40gとの混合液を5ml/分の速度で滴下した後、次いで、容器を95〜100℃を維持しながら40分間還流させ、酸化銀を溶解させた。反応混合物を10℃で減圧蒸留して過量のイソプロピルアミンを取り除いて有機銀錯体溶液を製造した。この際に得られた最終固形粉から35.6%の淡緑色の有機銀溶液を得ることができた。
【0053】
実施例4
コンデンサーが設けられた円底フラスコに、酸化銀(I)40gを60重量%のベンジルアミン(水溶液)100gに入れて超音波を利用して分散させながら10℃を維持し、30分間撹拌した。次いで、この溶液に炭酸エチレン(ethylene carbonate)30gとアセトニトリル40gとの混合液を5ml/分の速度で滴下した後、次いで、容器を95〜100℃を維持しながら40分間還流させ、酸化銀を溶解させた。反応混合物を35℃で減圧蒸留して過量のベンジルアミンを取り除いて有機銀錯体溶液を製造した。この際に得られた最終固形粉から32.0%の黒褐色の有機銀溶液を得ることができた。
【0054】
実施例5
コンデンサーが設けられた円底フラスコに、酸化銀(I)40gを60重量%のイソプロピルアミン(水溶液)100gに入れて超音波を利用して分散させながら10℃を維持し、30分間撹拌した。次いで、この溶液に無水コハク酸20gとメチルエチルケトン40gとの混合液を5ml/分の速度で滴下した後、次いで、容器を95〜100℃を維持しながら40分間還流させ、酸化銀を溶解させた。反応混合物を10℃で減圧蒸留して過量のイソプロピルアミンを取り除いて有機銀錯体溶液を製造した。この際に得られた最終固形粉から29.8%の黒灰色の有機銀溶液を得ることができた。
【0055】
実施例6
コンデンサーが設けられた円底フラスコに、酸化銀(I)40gを70重量%のエチルアミン(水溶液)100gに入れて超音波を利用して分散させながら10℃を維持し、30分間撹拌した。次いで、この溶液にε−カプロラクタム30gとメチルエチルケトン40gとの混合液を5ml/分の速度で滴下した後、次いで、容器を95〜100℃を維持しながら40分間還流させ、酸化銀を溶解させた。反応混合物を10℃で減圧蒸留して過量のエチルアミンを取り除いて有機銀錯体溶液を製造した。この際に得られた最終固形粉から33.6%の黒褐色の有機銀溶液を得ることができた。
【0056】
実施例7
上記実施例1の有機銀溶液15gに,ジメチルスルホキシド5g、イソプロピルアルコール5g、およびSulfinol−465(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.001gを添加してインクジェット用インクを製造した。この際、固形粉は22%であり、表面張力は37dyne/cm、粘度は12cpsであった。
【0057】
実施例8
上記実施例2の有機銀溶液15gに、ジメチルスルホキシド5g、イソプロピルアルコール5g、およびSulfinol−465(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.001gを添加してインクジェット用インクを製造した。この際、固形粉は20%であり、表面張力は36dyne/cm、粘度は10cpsであった。
【0058】
実施例9
上記実施例3の有機銀溶液15gに、コハク酸二トリル5g、イソプロピルアルコール5g、およびSulfinol−465(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.001gを添加してインクジェット用インクを製造した。この際、固形粉は21%であり、表面張力は38dyne/cm、粘度は10cpsであった。
【0059】
実施例10
上記実施例4の有機銀溶液15gに、N−メチルピロリジノン5g、ジアミノエタノール2g、およびSulfinol−465(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.001gを添加してインクジェット用インクを製造した。この際、固形粉は19%であり、表面張力は37dyne/cm、粘度は25cpsであった。
【0060】
実施例11
上記実施例5の有機銀溶液15gに、プロピオニトリル5g、アミノエタノール2g、および5重量%のBYK−346(商標名;BYK社製造)水溶液0.001gを添加してインクジェット用インクを製造した。この際、固形粉は19%であり、表面張力は33dyne/cm、粘度は11cpsであった。
【0061】
実施例12
上記実施例6の有機銀溶液15gに、N−メチルピロリジノン5g、ジアミノエタノール1g、イソプロピルアルコール1g、およびSulfinol−465(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.001gを添加してインクジェット用インクを製造した。この際、固形粉は19%であり、表面張力は35dyne/cm、粘度は17cpsであった。
【0062】
比較例1
フラスコに、ステアリン酸ナトリウム(水溶液30%)30gに硝酸銀(水溶液45%)10gを滴下してステアリン酸銀を製造し、セパレータを用いて硝酸ナトリウムを取り除いてキシレンに3%の固形粉の有機銀溶液を製造した。そして、有機銀溶液50gにソルフィノール−104H(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.03gを添加してインクジェット印刷用インクを製造した。この際の表面張力は35dyne/cm、粘度は11cpsであった。
【0063】
比較例2
フラスコに、クエン酸ナトリウム水溶液(固形粉40%)350gとの硫酸第一鉄水溶液(固形粉30%)250gとを混合した。次いで、10%の硝酸銀水溶液を滴下しながら4,000rpmの速度で撹拌して銀コロイド溶液を得た。このコロイド溶液を蒸留水で数回遠心分離してイオンを取り除いて乾燥させ、微細な銀粉末を得た。得られた銀粉末3.5gに、エチレングリコール20g、蒸留水50g、およびSulfinol−465(商標名;エアー・プロダクツ社製造)0.01gを添加して固形粉5%のインクジェット印刷用インクを製造した。この際の表面張力は40dyne/cm、粘度は8cpsであった。
【0064】
実施例13
上記実施例7〜12および比較例1〜2のインクを用いてポリエチレン容器に充填し、ピエゾ方式のインクジェットプリンターヘッドFO76000(商標名;エプソン社製造)を装着した平板プリンターを用いてホウケイ酸塩基板、ポリイミドフィルムであるKepton(商標名;デュポン社製造)にそれぞれ線幅200μm、長さ50mm、横10mm、縦10mmの印刷を3回実施し、熱処理をして最終導電配線および導電膜を得た。この際の熱処理条件は100℃で30分間処理した後に連続して250℃で30分間処理し、処理後にこれに対する特性は下記表1に詳しく表されている。
【0065】
【表1】

【0066】
(1)付着性の評価:セロテープ(商標名;3M社製造)を印刷面に貼った後、剥離させてセロテープに転写された状態を評価
良好(テープへの転写なし)
普通(テープへの転写が少量発生)
不良(テープにほとんど転写発生)
(2)印刷性の評価:100℃、30分間乾燥工程後の表面および染みの特性
良好(印刷表面に見掛け上問題がなく、線の形態が明らかな場合)
普通(印刷表面に部分的に塗布が偏った場合)
不良(印刷表面に塗布が片方に偏り、線に切れた部分が発生した場合)
(3)基材A:ホウケイ酸塩基板
(4)基材B:ポリイミドフィルム
【0067】
実施例14
上記実施例7〜12および比較例1〜2のインクを用いてポリエチレン容器に充填し、ピエゾ方式のインクジェットプリンターヘッドFO76000(商標名;エプソン社製造)を装着した平板プリンターを用いてホウケイ酸塩基板、ポリイミドフィルムであるKepton(商標名;デュポン社製造)にそれぞれ線幅200μm、長さ50mm、横100mm、縦100mmの印刷を3回実施し、熱処理をして最終導電配線および導電膜を得た。この際の熱処理条件は100℃で30分間処理、150℃で15分間処理した後に連続して300℃で30分間処理し、処理後にこれに対する特性は下記表2に詳しく表されている。
【0068】
【表2】

【0069】
(1)付着性の評価、(2)印刷性、(3)基材A、および(4)基材Bの内容は表1と同様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属組成物において、アミン系化合物から選択された1種以上の化合物と、酸化銀と反応して有機銀を形成する有機化合物から選択された1種以上の化合物との混合物に酸化銀を反応させて溶解して製造されることを特徴とする有機銀組成物。
【請求項2】
前記有機化合物はラクトン系化合物から1種以上選択され、単独または混合されて使用されることを特徴とする請求項1記載の有機銀組成物。
【請求項3】
前記有機化合物はラクタム系化合物から1種以上選択され、単独または混合されて使用されることを特徴とする請求項1記載の有機銀組成物。
【請求項4】
前記有機化合物はカーボネート系化合物から1種以上選択され、単独または混合されて使用されることを特徴とする請求項1記載の有機銀組成物。
【請求項5】
前記有機化合物は環状酸無水物系化合物から1種以上選択され、単独または混合されて使用されることを特徴とする請求項1記載の有機銀組成物。
【請求項6】
アミン系化合物20〜85重量%と、酸化銀と反応して有機銀を形成する有機化合物10〜20重量%と、酸化銀5〜40重量%とよりなることを特徴とする請求項1記載の有機銀組成物。
【請求項7】
インク組成物において、請求項1〜6のいずれか一項によって製造された有機銀組成物、有機溶剤、界面活性剤よりなるインク組成物。
【請求項8】
有機銀組成物10〜90重量%と、有機溶剤9.9〜85重量%と、界面活性剤0.1〜10重量%とよりなる請求項6記載のインク組成物。
【請求項9】
有機金属組成物の製造方法において、アミン系化合物から選択された1種以上の化合物と、請求項2〜6のいずれかに記載の有機化合物を混合し、この混合物に酸化銀を反応させて溶解して有機銀組成物を製造することを特徴とする有機銀組成物の製造方法。
【請求項10】
伝導性インクをインクジェット方式によって塗布して導電配線を形成する方法において、請求項7記載のインクを使用することを特徴とする導電配線方法。

【公表番号】特表2006−525322(P2006−525322A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507776(P2006−507776)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000699
【国際公開番号】WO2004/085165
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505362609)
【Fターム(参考)】