説明

有機電子材料精製装置及び有機電子材料の精製方法

【課題】有機電子材料から極性不純物を十分に除去することができる有機電子材料精製装置及びその精製方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る有機電子材料精製装置490は、有機電子材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体420に、対向する電極を介して電圧を印加する電圧印加装置と、前記液状体420から、前記電圧印加装置によって各電極側に引っ張られた極性不純物を分離する分離装置と、を有する。前記液状体420は貯留槽410に貯留される。前記電圧印加装置は、前記貯留槽410内の液状体420に浸漬された少なくとも2つの電極441,442と、電源430と、からなり、前記分離装置は、前記貯留槽410内の液状体420に浸漬され、前記電極間に形成された、一対のセパレータ451,452を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子材料精製装置及び有機電子材料の精製方法に関し、特に、有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造に用いられる有機電子材料の精製装置及びその精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造工程において、有機エレクトロルミネッセンス発光材料をなす有機電子材料を非水系の溶媒に溶解又は非水系の分散媒に分散させた溶液を、インクジェットプリンタ等を用いて、隣接するバンク間で囲まれた画素電極等に塗布することによって発光層を形成する方法がある。
【0003】
しかし、このような有機電子材料を非水系の溶媒又は分散媒に溶解又は分散させた溶液には、水やナトリウムイオン等の極性不純物が混入することがある。この極性不純物は、この有機電子材料を用いた有機エレクトロルミネセンス発光層中で電子トラップ等になり、有機エレクトロルミネセンス表示装置の表示輝度の低下に繋がることがある。
【0004】
そこで、このような有機電子材料を非水系の溶媒又は分散媒に溶解又は分散させた溶液を、イオン交換樹脂に接触させて、イオン交換することで、溶液中の極性不純物を除去する方法が、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−005144号公報
【特許文献2】特開2006−328223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、イオン交換樹脂を用いて有機電子材料から極性不純物を除去する方法では、極性不純物、特にカソードの侵食により表示性能を低下させる水分の除去が十分とはいえなかった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、有機電子材料から極性不純物を十分に除去することができる有機電子材料精製装置、及び、その精製方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係る有機電子材料精製装置は、
非水系の溶媒に溶解又は非水系の分散媒に分散する有機電子材料を精製する有機電子材料精製装置であって、
前記有機電子材料を前記非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体に浸漬した、対向する一対の電極と、
前記一対の電極間に所定の電圧を印加する電圧印加装置と、
前記液状体から、前記電圧印加装置によって前記電圧が印加された前記各電極の少なくとも何れか一方側に引っ張られた前記液状体中の極性不純物を分離する分離装置と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記液状体を貯留する貯留槽を有し、
前記電圧印加装置における前記各電極は、前記貯留槽内に貯留された前記液状体に浸漬するように配置され、
前記電圧印加装置は、前記各電極に電圧を印加する電源を有する、ことも可能である。
【0010】
また、前記分離装置は、前記貯留槽内の前記液状体に浸漬され、前記各電極間に設けられ、前記極性不純物を通過する多孔質膜で形成された、一対のセパレータを有する、ことも可能である。
【0011】
また、前記分離装置は、更に、前記貯留槽内の前記液状体に浸漬され、前記一対のセパレータ間に設けられた、開閉自在の一対の分離用隔壁を有する、ことも可能である。
【0012】
また、前記液状体が流入する上流口と該液状体が排出される下流口とを有する柱状のカラム容器を有し、
前記電圧印加装置における前記各電極は、前記カラム容器内の前記液状体に浸漬するように配置され、
前記電圧印加装置は、前記各電極に電圧を印加する電源を有する、ことも可能である。
【0013】
また、前記カラム容器を複数有し、
前記各カラム容器の前記下流口と前記上流口とが互いに直列に連結されている、ことも可能である。
【0014】
また、前記分離装置は、前記カラム容器内の前記液状体に浸漬され、前記各電極間に設けられた、前記極性不純物を通過する多孔質膜で形成された、セパレータを有する、ことも可能である。
【0015】
また、前記カラム容器の前記上流口に設けられた開閉自在の供給用隔壁と前記下流口に設けられた開閉自在の排出用隔壁とを有し、前記下流口に設けられた前記排出用隔壁を開けて前記精製された液状体が取り出される、ことも可能である。
【0016】
また、前記極性不純物は、アニオン性不純物とカチオン性不純物の少なくともいずれか一つを含む、ことも可能である。
【0017】
また、上記目的を達成するため、この発明の第2の観点に係る有機電子材料の精製方法は、
非水系の溶媒に溶解又は非水系の分散媒に分散する有機電子材料を精製する有機電子材料の精製方法であって、
前記有機電子材料を前記非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体を準備する工程と、
対向する一対の電極を前記液状体に浸漬し、該各電極を介して電圧を印加して、前記液状体中の極性不純物を、前記各電極側の少なくとも何れか一方側に引っ張る工程と、
前記液状体から、前記各電極側に引っ張られた前記極性不純物を分離する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、前記極性不純物を分離する工程は、前記極性不純物を分離した後の前記液状体を、前記一対の電極間に設けられた、前記極性不純物を通過する多孔質膜で形成された一対のセパレータ間に貯留する工程を有する、ことも可能である。
【0019】
また、前記液状体を準備する工程は、前記液状体が流入する上流口と該液状体が排出される下流口とを有し、内部に前記一対の電極及び前記一対のセパレータが設けられた柱状のカラム容器を有し、前記上流口から前記カラム容器内に前記液状体を連続的に補充する工程を有し、
前記カラム容器の前記下流口から、前記極性不純物を分離した後の前記液状体を連続的に取り出す工程を含む、ことも可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る有機電子材料精製装置及びその精製方法によれば、非水系の溶媒に溶解する又は非水系の分散媒に分散する有機電子材料に対し、該有機電子材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体に浸漬した一対の電極間に電圧を印加して、液状体中の極性不純物を電極側に引っ張って、これを分離することにより、有機電子材料から極性不純物を十分に除去することができる。これによって精製した液状体を表示装置の発光層を形成する発光層形成用塗布液に適用した場合、発光層形成用塗布液中の極性不純物を十分に少なくすることができて、表示輝度の低下や焼付き等による表示性能の低下が生じることを抑制して、良好な表示性能の表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
[有機電子材料精製装置]
本発明に係わる有機電子材料精製装置の第1の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態に係る有機電子材料精製装置490を説明する図である。そのうち、図1(a)は断面を示す図であり、図1(b)は上方から見た構成を説明する図である。
【0023】
図1(a)に示すように、有機電子材料精製装置490は、貯留槽410と、直流電源430と、陽極電極441と、陰極電極442と、陽極側セパレータ451と、陰極側セパレータ452と、陽極側バルブ471と、陰極側バルブ472と、を有する。
【0024】
なお、陽極電極441及び陰極電極442と、直流電源430と、が本発明における電圧印加装置に相当する。そして、陽極側セパレータ451、陰極側セパレータ452、陽極側バルブ471及び陰極側バルブ472が、本発明における分離装置に相当する。ここで分離とは、電圧印加装置により陽極電極441及び陰極電極442側に引っ張られた極性不純物と、極性不純物が少なくなった液状体420とを空間的に離れさせることである。
【0025】
貯留槽410には、液状体420が貯留される。貯留槽410は例えば無アルカリガラスで形成される。
【0026】
液状体420は、有機電子材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させたものであり、例えば、ポリフルオレン誘導体(有機エレクトロルミネセンス発光材料)をキシレンに溶解させたものである。
【0027】
ここで、非水系の溶媒又は分散媒とは、実質的に水を含まない溶媒又は分散媒を表す。実質的に水を含まない溶媒又は分散媒とは、溶媒又は分散媒中の水の含有量が0.1質量%以下のものである。
【0028】
陽極電極441及び陰極電極442は、液状体420に浸漬される。陽極電極441及び陰極電極442は、例えば白金で形成されるが、金で形成することも可能である。
【0029】
陽極電極441及び陰極電極442は例えば板状であるが、メッシュ状やワイヤー状等で形成することも可能である。
【0030】
陽極電極441と陰極電極442との間の距離は、例えば5センチ以上30センチ以下とすることができる。
【0031】
直流電源430の端部には、陽極端子431及び陰極端子432が設けられている。陽極端子431と陽極電極441とは導線433で結ばれ、陰極端子432と陰極電極442とは導線434で結ばれることにより、直流電源430は、陽極電極441及び陰極電極442に電圧を印加する。
【0032】
陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、陽極電極441と陰極電極442との間に形成される。陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、液状体420に浸漬される。
【0033】
陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、極性不純物を通過する微細な細穴が多数形成された多孔質膜で形成されている。例えば、陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、多数の細孔が形成されているガラスフィルタであるが、例えばセラミックフィルタで形成することも可能である。陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、極性不純物の通過が一方通行のものである不可逆フィルタを用いることが好ましい。また、陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452に用いられる多孔質膜に形成されている細穴の径は1μm以下であることが好ましい。多孔質膜に形成されている細穴の径をこのような大きさにした場合には、有機電子材料として高分子系の材料を用いたとき、高分子系の有機電子材料は分子量が比較的大きいために、多孔質膜の細穴を通過し難いが、一方の極性不純物はNaイオン等であって低分子であるから多孔質膜の細穴を容易に通過することができる。これにより、極性不純物だけが陽極側セパレータ451又は陰極側セパレータ452を通過して、極性不純物を有機電子材料から良好に分離することができる。
【0034】
陽極側セパレータ451と陰極側セパレータ452との間には、開閉自在の一対の陽極側バルブ471及び陰極側バルブ472が設けられている。陽極側バルブ471及び陰極側バルブ472は本発明における分離用隔壁に相当する。
【0035】
図1(b)に示すように、陽極側バルブ471及び陰極側バルブ472は、例えば支点473,474を中心に回動動作することで開閉動作を行う。
【0036】
以下に、上述した有機電子材料精製装置490を用いる有機電子材料の精製方法を説明する。
【0037】
まず、陽極側バルブ471と陰極側バルブ472をそれぞれ開放状態にする。陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、それぞれ、回動の程度を調節することで開閉の程度を調節できる。
【0038】
そして、陽極電極441と陰極電極442との間に直流電圧を印加する。印加する直流電圧は、両極間を流れる電流が5μA以下、望ましくは1μA程度となるように制御され、数ボルト以上数100ボルト以下とすることができ、より具体的には10ボルト以上300ボルト以下とすることができる。
【0039】
直流電圧が印加されることにより、不純物として含まれる水は電気分解され、アニオン性不純物461は陽極側セパレータ451を通過して陽極電極441に引き寄せられる。一方、カチオン性不純物462は陰極側セパレータ452を通過して陰極電極442に引き寄せられる。
【0040】
陽極側セパレータ451及び陰極側セパレータ452は、多孔質膜で形成されているから、極性不純物はセパレータを通過して、陽極電極441及び陰極電極442に引き寄せられる。
【0041】
陽極電極441に引き寄せられるアニオン性不純物461には、硫酸イオン、蟻酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオン及びハロゲン化物イオンのうち少なくともいずれか一つが含まれる。
【0042】
一方、陰極電極442に引き寄せられるカチオン性不純物462には、オキソニウムイオン、Ia族金属イオン、IIa族金属イオン、VIa族金属イオン、VIIa族金属イオン及びIIb族金属イオンのうち少なくともいずれか一つが含まれる。
ここで、オキソニウムイオンとは、水素イオンと水分子とのクラスター(化学式Hで表される。)若しくはカチオン性不純物と水分子とのクラスターである。カチオン性不純物462とは、具体的には、Ca、Cr、Fe、Pd、Na、Mg、Ni、Sn、K等である。
【0043】
陽極側セパレータ451と陰極側セパレータ452との間に挟まれた部分では、アニオン性不純物461及びカチオン性不純物462が除去されており、液状体420が精製されている。
【0044】
その後は、例えば陽極側バルブ471及び陰極側バルブ472を回動動作することにより、それぞれを閉じる。陽極側バルブ471及び陰極側バルブ472を閉じれば、陽極電極441及び陰極電極442に電圧を印加することを停止しても、陽極側セパレータ451と陰極側セパレータ452との間に挟まれた部分では、液状体420は精製されたままである。精製された液状体420は例えばポンプ等により汲み取ることができる。この精製された液状体420を後述するように例えば有機EL発光層形成用塗布液として用いる。
以上のように、本実施形態における有機電子材料精製装置490による有機電子材料の精製方法によれば、液状体420に含まれるアニオン性不純物461及びカチオン性不純物462を良好に除去するこができ、これを用いた有機EL表示装置の製造方法で形成された有機EL表示装置では、有機EL発光層140に含まれる極性不純物を充分少なくすることができ、これにより、後述するように、表示輝度の低下や焼付き等による表示性能の低下が生じることを抑制して、良好な表示性能を得ることができる。
【0045】
[有機エレクトロルミネッセンス表示装置]
次に、上述した有機電子材料精製装置490を用いて製造する有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという。)表示装置800を説明する。
【0046】
図2は、本発明に係る有機EL表示装置を上部から見た構成を説明する図であり、図3は、本発明に係る有機EL表示装置の表示画素の一例を説明する、図2の切断線I−Iに沿った面の矢視断面図である。
【0047】
有機EL表示装置800は、図2に示されるように、ガラス基板110と、画素電極(陽極)120と、バンク130と、有機EL層100と、上部電極(陰極)160と、からなる表示パネルを有する。
【0048】
図3に示されるように、有機EL層100は、正孔注入層190と有機EL発光層140の二層構造である。ここで、有機EL発光層140は、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層を含む。
【0049】
有機EL表示装置の発光方式としてはボトムエミッション型及びトップエミッション型があり、本実施形態に係る有機EL表示装置800の発光方式は、ボトムエミッション型の発光方式を有する場合の一例について示すものである。
【0050】
ガラス基板110の上には、ゲート層210が設けられる。さらに、ガラス基板110の上には、ゲート層210を覆って、絶縁層220も設けられる。絶縁層220の上には画素電極120(陽極)が設けられる。画素電極120は、例えばドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In)等の透明導電材料から形成される。
【0051】
絶縁層220の上には半導体膜260が設けられる。半導体膜260の上には、ソース・ドレイン240が絶縁膜230を挟んで設けられる。ソース・ドレイン240の上には、ドレイン・ライン250が設けられる。ドレイン・ライン250の上に層間絶縁膜150が設けられる。層間絶縁膜150は、隣り合う画素電極120同士を電気的に絶縁する。
【0052】
層間絶縁膜150の上には隔壁として機能するバンク130が設けられている。層間絶縁膜150とバンク130とで囲まれた開口内の画素電極120の上に、正孔注入層190、有機EL発光層140、上部電極160(陰極)がこの順に積層されている。ここで、上部電極160は、通常、全ての画素電極120に対して共通のべた電極として設けられているが、図2においては、便宜上、画素電極120に対向する領域を上部電極160として示している。
【0053】
上部電極160は、電子注入をしやすくするため、例えば、AlLi、FLi、MgIn、Li、Na、Mg、Ca等の金属を単体であるいは合金で用いることができる。
【0054】
上部電極160の上には、パッシベーション膜200が設けられる。パッシベーション膜200の上に接着層180が設けられる。そして、接着層180の上に封止ガラス170が設けられている。
【0055】
有機EL発光層140は、後述するように、上述した実施形態に係る有機電子材料精製装置490によって、有機EL発光材料を精製して得られる有機EL発光層形成用塗布液を用いて形成される。
【0056】
[有機EL表示装置の製造装置]
上述した有機EL表示装置800は、以下に示すような有機EL表示装置の製造装置700を用いて製造することができる。
【0057】
図4は、本実施形態に係る有機EL表示装置の製造装置700を説明する図である。有機EL表示装置の製造装置700は、図4に示すように、有機電子材料精製装置490と、ガラス基板110を載置するステージ310と、ステージ移動機構部320と、位置合わせ検出部340と、ノズル移動機構部380と、制御部330と、を有する。
【0058】
ステージ移動機構部320は、ステージ310を所定方向に移動させる。位置合わせ検出部340は、例えばガラス基板110上に形成された位置合わせマークの位置を検出する。
【0059】
第1供給装置350は、赤色の有機EL発光層形成用塗布液を赤色用ノズル355に供給する。第2供給装置360は、緑色の有機EL発光層形成用塗布液を緑色用ノズル365に供給する。第3供給装置370は、青色の有機EL発光層形成用塗布液を青色用ノズル375に供給する。赤色用ノズル355、緑色用ノズル365、及び、青色用ノズル375は、例えばノズルプリント法あるいはインクジェット法にて各色の有機EL発光層形成用塗布液を吐出して、対象物に塗布する。
【0060】
ノズル移動機構部380は、赤色用ノズル355、緑色用ノズル365、青色用ノズル375を所定方向に移動させる。制御部330は、ステージ移動機構部320と、位置合わせ検出部340と、第1供給装置350と、第2供給装置360と、第3供給装置370と、ノズル移動機構部380と、の動作を制御する。
【0061】
各色の有機EL発光層形成用塗布液の塗布を受けるガラス基板110の上には、上述したように、複数本のストライプ状の画素電極120が形成され、画素電極120を囲むように層間絶縁膜150及びバンク130が設けられ、さらに画素電極120の上には正孔注入層190が形成されている。
【0062】
第1供給部350は、赤色の有機EL発光層形成用塗布液を供給する赤色塗布液供給源351と、この赤色塗布液供給源351から赤色の有機EL発光層形成用塗布液を取り出すためのポンプ352と、赤色の有機EL発光層形成用塗布液の流量を検出する流量計353と、赤色の有機EL発光層形成用塗布液中の異物を除去するためのフィルタ354とを備えている。ポンプ352は、赤色塗布液供給源351の貯留槽410の例えば下面に設けられた取出口415から、陽極側バルブ471と陰極側バルブ472間に貯留されている、精製された赤色の有機EL発光層形成用塗布液を吸引して取り出す。
【0063】
第2供給部360は、緑色の有機EL発光層形成用塗布液を供給する緑色塗布液供給源361と、この緑色塗布液供給源361から緑色の有機EL発光層形成用塗布液を取り出すためのポンプ362と、緑色の有機EL発光層形成用塗布液の流量を検出する流量計363と、緑色の有機EL発光層形成用塗布液中の異物を除去するためのフィルタ364とを備えている。ポンプ352は、緑色塗布液供給源361の貯留槽410の例えば下面に設けられた取出口415から、陽極側バルブ471と陰極側バルブ472間に貯留されている、精製された緑色の有機EL発光層形成用塗布液を吸引して取り出す。
【0064】
第3供給部370は、青色の有機EL発光層形成用塗布液を供給する青色塗布液供給源371と、この青色塗布液供給源371から青色の有機EL発光層形成用塗布液を取り出すためのポンプ372と、青色の有機EL発光層形成用塗布液の流量を検出する流量計373と、青色の有機EL発光層形成用塗布液中の異物を除去するためのフィルタ374とを備えている。ポンプ352は、青色塗布液供給源371の貯留槽410の例えば下面に設けられた取出口415から、陽極側バルブ471と陰極側バルブ472間に貯留されている、精製された青色の有機EL発光層形成用塗布液を吸引して取り出す。
【0065】
位置合わせ検出部340としては、例えば、CCDカメラを採用している。位置合わせ検出部340は、制御部330からの指示を受けると、ガラス基板110の四隅にそれぞれ形成された位置合わせマークをそれぞれ撮像し、これらの撮像した位置合わせマークの画像データを制御部330に出力する。
【0066】
制御部330は、位置合わせ検出部340で撮像された画像データに基づいて位置合わせマークの位置を算出する。制御部330には、CADを使って設計された画素電極120等のレイアウトデータが予め与えられている。制御部330は、位置合わせマークの位置の算出結果と、予め与えられているレイアウトデータとに基づいて、塗布のポイントを算出する。
【0067】
赤色塗布液供給源351には、有機電子材料精製装置490にて極性不純物の含有量が低減された赤色の有機EL発光層形成用塗布液が供給される。なお、図4では、赤色の有機EL発光層形成用塗布液が供給される様子のみ図示しているが、緑色塗布液供給源361にも、有機電子材料精製装置490にて極性不純物の含有量が低減された緑色の有機EL発光層形成用塗布液が供給され、また、青色塗布液供給源371にも、有機電子材料精製装置490にて極性不純物の含有量が低減された青色の有機EL発光層形成用塗布液が供給される。
【0068】
[有機EL表示装置の製造方法]
次に、上述した有機EL表示装置の製造装置700を用いる有機EL表示装置800の製造方法について説明する。
図5A〜図5Lは、本実施形態に係る有機EL表示装置800の製造工程を説明する図である。
【0069】
本実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法は、上記の有機電子材料精製装置490により、有機EL発光材料を非水系の又は分散媒に含有させた液状体に、電圧を印加することで極性不純物を除去することにより得られる有機EL発光層形成用塗布液を用いて、有機EL発光層を形成する工程を有するものである。
【0070】
ここで、有機EL発光層形成用塗布液とは、有機EL発光材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体から、本発明の有機電子材料精製装置により、電圧を印加することで極性不純物を除去することにより得られる塗布液である。
【0071】
まず、図5Aに示すように、ガラス基板110の上にゲート電極層210を設ける。
次に、図5Bに示すように、ガラス基板110の上に、ゲート電極層210を覆うように絶縁層220を設け、絶縁層220の上に半導体層261を設け、半導体層260の上には絶縁膜層231を設けることで、3層デポを行う。
【0072】
次に、図5Cに示すように、絶縁膜層231をエッチング処理して、絶縁膜230を形成する。
次に、図5Dに示すように、半導体層261をエッチング処理して、半導体膜260を形成する。そして、半導体膜260の上にソース・ドレインメタル層を形成し、これをパターニングしてソース・ドレイン電極240を形成する。
【0073】
次に、図5Eに示すように、絶縁層220の上に、均一的な厚さでスパッタや蒸着等によりITO成膜を形成する。そして、そのITO成膜に、レジストとしてフェノールノボラック樹脂等を使用して、フォトリソグラフィー処理により、絶縁層220の上に所定の間隔で画素電極120を形成する。画素電極120の厚さは30nm〜100nmである。なお、ウエットエッチング処理若しくはドライエッチング処理等を施すことにより画素電極120を形成するようにしてもよい。
【0074】
次に、図5Fに示すように、ソース・ドレイン電極240の上にアノードラインメタル層を形成し、これをパターニングしてアノードライン250を設ける。
【0075】
次に、アノードライン250の上に、例えばポリイミド溶液を例えば1〜3μmの厚さで均一的にスピンコーティングにより塗布する。そして設けたポリイミドの膜をフォトリソグラフィー処理により、図5Gに示すように、画素電極120が位置する部分を除去するようにしてパターニングした後にキュアする。このようにして、層間絶縁膜150を形成する。層間絶縁膜150は、画素電極120の間の領域に設けられており、画素電極120の周縁部を覆うことにより、隣接する画素電極120同士の短絡を防止する。層間絶縁膜150は、例えば複数の開口を有する編み目状あるいはストライプ状で、厚さが150nm〜300nmの膜から構成されている。層間絶縁膜150は、例えば窒化珪素または酸化珪素等の硅素化合物から形成される。
【0076】
次に、図5Hに示すように、バンク130を層間絶縁膜150の上に形成する。バンク130の形成は、例えばポリスチレン等のネガ型の感光性樹脂にフォトマスクを介して光を照射することで形成される。
【0077】
そして、酸素プラズマ処理若しくはUVオゾン処理により画素電極120の親液化を行う。この酸素プラズマ処理若しくはUVオゾン処理をすることで、画素電極120に塗布を行う正孔注入層形成用塗布液が画素電極120全体に広がり、均一な膜厚を形成することができる。
【0078】
次に、正孔注入層形成用塗布液を例えばノズルプリント法あるいはインクジェット法にてバンク130で囲まれた画素電極120の上に塗布する。塗布後は、ホットプレート上で100℃以上の温度条件で乾燥を行うことで、図5Iに示すように、正孔注入層190が形成される。
【0079】
次に、形成された正孔注入層190の上に、上述した実施形態に係る有機電子材料精製装置490によって精製された有機EL発光層形成用塗布液が塗布される。塗布は、赤色用ノズル355、緑色用ノズル365、及び、青色用ノズル375から、例えばノズルプリント法あるいはインクジェット法にて各色の有機EL発光層形成用塗布液が間欠的に、あるいは連続的に吐出されることによって行われる。塗布は、窒素ガス雰囲気中で行うことが望ましい。有機EL発光材料は酸素や水蒸気等に接触すると特性変化を生じることがありうる。そのため、窒素ガス雰囲気中で塗布することで、有機EL発光材料の特性変化を起こりにくくすることが可能となる。
【0080】
有機EL発光層形成用塗布液の粘度は1〜20mPa・sであり、好ましくは2〜8mPa・sである。
【0081】
有機EL発光層形成用塗布液が塗布された後は、窒素雰囲気中でホットプレートによる乾燥、あるいは、真空中でのシーズヒータによる乾燥を行い、残留液体の除去をすることで、図5Jに示すように、有機EL発光層140が形成される。
【0082】
次に、図5Kに示すように、有機EL発光層140の上に、膜厚が例えば100nmの上部電極160が設けられる。上部電極160は、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いて形成することができる。
【0083】
次に、図5Lに示すように、上部電極160の上に上部絶縁層200が設けられる。
そして、上部絶縁層200の上に接着層180を設け、さらに接着層180の上に封止ガラス170を形成する。具体的には、封止ガラス170の一方の面にディスペンサを用いてエポキシ系紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布する。そして封止ガラス170の接着剤が塗布された面と接着層180が配置された面とを位置あわせして貼り合わせて、紫外線を照射させて接着剤を硬化させる。これにより封止ガラス170と接着層180が配置された面とが固定される。これにより、図1及び図2に示すような、実施形態に係る有機EL表示装置800が形成される。
【0084】
本実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法で形成された有機EL表示装置では、有機EL発光層140に含まれる極性不純物を十分少なくすることができる。これにより、有機EL発光層140に含まれる極性不純物が少ないから、有機EL発光材料や画素電極120及び上部電極160へのダメージを低減させることができる。特に、比較的不安定なアルカリ金属及びアルカリ土類金属及びその化合物が用いられる上部電極160(陰極)へのダメージを低減することができる。
【0085】
また、有機EL発光層140中の極性不純物が少ないため、この極性不純物が、有機EL発光層140に印加される直流バイアスにより移動して、各層間の界面(例えば有機EL発光層140と正孔注入層190との界面)に集中することによって起こるキャリア注入効率の低下や焼付きを、起こりにくくすることができる。
【0086】
さらには、有機EL発光層140中の極性不純物の含有量を低減させることで、有機EL発光層140の電気抵抗を高く維持して、発光に寄与しないリーク電流を低減させ、有機EL発光層140の温度上昇を起こりにくくすることができる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係わる有機電子材料精製装置の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、有機電子材料精製装置490は、液状体420は貯留槽410に貯留されていたが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。図6は、第2の実施形態に係る有機電子材料精製装置490を説明する図である。第2の実施形態に係る有機電子材料精製装置490は、図6に示すように、液状体420が柱状に形成されたカラム容器491を連続的に流れるように構成されていることを特徴とするものである。このカラム容器491の形状としては、角柱形状や円筒形状等任意の形状を用いることができる。なお、上記第1の実施形態と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化または省略する。
【0088】
本実施形態の有機電子材料精製装置490では、カラム容器上流口492から、液状体420がカラム容器491の中に流入される。そして、液状体420はカラム容器下流口493から排出される。カラム容器上流口492には上流側バルブ475が設けられており、カラム容器下流口493には下流側バルブ476が設けられている。上流側バルブ475は本発明の供給用隔壁に相当し、下流側バルブ476は本発明の排出用隔壁に相当する。上流側バルブ475及び下流側バルブ476の開閉の程度を調整することにより、カラム容器491を流れる液状体420の流体速度を調整することができる。
【0089】
液状体420は、カラム容器491内に設けられている陽極電極441と陰極電極442との間を通過することで、アニオン性不純物461は陽極側セパレータ451を通過して陽極電極441に引き寄せられる。一方、カチオン性不純物462は陰極側セパレータ452を通過して陰極電極442に引き寄せられる。なお、アニオン性不純物461を含む液状体420は、陽極側排出口494から排出され、カチオン性不純物462を含む液状体420は、陰極側排出口495から排出される。
【0090】
ここで、カラム容器491の長さ、幅等の値は特に限定するものではないが、液状体420中の極性不純物の除去動作は、液状体420がカラム容器491内の陽極電極441と陰極電極442との間を通過する間に逐次行われ、このカラム容器491の長さ、幅等の値が、液状体420がカラム容器491内の陽極電極441と陰極電極442との間を通過する時間内に極性不純物の除去動作が充分に行われる値に設定されていることが好ましい。
【0091】
また、カラム容器491を流れる液状体420の流体速度も、任意のものを設定することができる。もっとも、あまり流体速度を上昇させすぎると極性不純物が陽極電極441及び陰極電極442に引き寄せられにくくなる。そこで、カラム容器491を流れる液状体420の流体速度は、極性不純物が陽極電極441及び陰極電極442に十分に引き寄せられる範囲の値に設定されることが好ましい。
【0092】
カラム容器下流口493から排出される、極性不純物が除去された有機EL発光層形成用塗布液は、逐次、赤色塗布液供給源351に連続的に補充されるから、有機EL表示装置の製造過程における生産性を向上させることができる。
【0093】
なお、図6では、赤色の有機EL発光層形成用塗布液が供給されるようすのみ図示しているが、緑色塗布液供給源361にも、有機電子材料精製装置490にて極性不純物の含有量を低減された緑色の有機EL発光層形成用塗布液が供給され、また、青色塗布液供給源371にも、有機電子材料精製装置490にて極性不純物の含有量を低減された青色の有機EL発光層形成用塗布液が供給される。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係わる有機電子材料精製装置の第3の実施形態について説明する。上記第2の実施形態に係る有機電子材料精製装置490では、液状体420は、単一のカラム容器491を連続的に流れる構成としたが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。図7は、第3の実施形態に係る有機電子材料精製装置590の要部を説明する図である。第3の実施形態に係る有機電子材料精製装置590は、図7に示すように、複数の、例えば2個のカラム容器491が直列に連結された構成を有し、液状体420が連結された複数のカラム容器491内を連続的に流れるように構成されていることを特徴とするものである。なお、図7においては、2つのカラム容器491が水平方向に連結された形態としたが、図6における配置と同様に、垂直方向に連結されているものであってもよい。なお、上記各実施形態と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化または省略する。
【0095】
有機電子材料精製装置590は、有機電子材料精製装置490aのカラム容器491と、有機電子材料精製装置490bのカラム容器491とを直列に連結させている。有機電子材料精製装置490aは上流側であり、有機電子材料精製装置490bは下流側である。
【0096】
すなわち、有機電子材料精製装置490aのカラム容器下流口493と有機電子材料精製装置490bのカラム容器491のカラム容器上流口492とが連結されている。
【0097】
本実施形態においては、有機電子材料精製装置490aのカラム容器下流口493から排出される液状体420は極性不純物が除去されており、これが更に有機電子材料精製装置490bのカラム容器上流口492に流入する。そして、有機電子材料精製装置490bによって更に極性不純物が除去された液状体420がカラム容器491のカラム容器下流口493から排出されて、連続的に第一供給部350に流入する。これにより、液状体420中の極性不純物の除去が多段階に行われ、より多くの極性不純物を除去することができる。
【0098】
このように複数の有機電子材料精製装置490a及び490bを直列的に連結することにより、有機電子材料精製装置490a及び490bとして上記第2の実施形態における有機電子材料精製装置490と同等のものを用い、液状体420の流体速度を同じとした場合には、上記第2の実施形態の場合よりも多くの極性不純物を除去することができる。また、極性不純物の除去量を上記第2の実施形態の場合と同等とする場合には、各カラム容器491を流れる液状体420の流体速度を向上させることができて、生産性をさらに上昇させることができる。
【0099】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態では、有機電子材料はポリフルオレン誘導体としたが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、正孔注入層190を形成する有機電子材料としては、フェニルアミン系、或いはフタロシアニン系の酸化バナジウムや酸化モリブデン等が好適に用いられる。また、各色発光要素層を形成するための有機電子材料としては、シクロペンタジエン誘導体やトリフェニルアミン誘導体等の色素系発光材料、アルミキノリノール錯体等の金属錯体系発光材料、或いはポリパラフェニレンビニレン誘導体等の高分子系発光材料が好適に用いられる。
【0100】
上述の各実施形態では、非水系の溶媒又は分散媒はキシレンとしたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、ジクロロヘキサノン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等のエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、これらの混合溶媒、等を用いることができる。
【0101】
上述の各実施形態では、有機EL層100は、正孔注入層190と有機EL発光層140の二層構造としているが、有機EL層100として更に電子注入層を設けることもできる。したがって、正孔注入層190、有機EL発光層140、電子注入層の三層構造であっても良いし、有機EL発光層140、電子注入層からなる二層構造であっても良いし、有機EL発光層140からなる一層構造であっても良い。また、正孔注入層190と有機EL発光層140との間に電子をブロッキングする機能があるインターレイヤーを設けることもできる。このように有機EL層の層構造は任意に設定することができる。
【0102】
上述の各実施形態では、有機EL発光材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体から極性不純物を除去するものとしたが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば正孔注入材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体から極性不純物を除去するように構成することも可能である。また、例えば電子注入材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体から極性不純物を除去するように構成することも可能である。また、例えば電子輸送材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体から極性不純物を除去するように構成することも可能である。更に、インターレイヤーを形成するための材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体から極性不純物を除去するように構成することも可能である。
【0103】
また、上述の各実施形態では、有機EL発光材料を非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体に直流電圧を印加し、極性不純物を除去することで有機EL発光層形成用塗布液を得る構成としたが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、該有機EL発光層形成用塗布液をさらに精製することも可能である。
【0104】
即ち、例えば、まず、該有機EL発光層形成用塗布液を貯留槽410から取りだし、非水系の溶媒又は分散媒を乾燥させ、粉状体を得る。
一方で、非水系の溶媒又は分散媒としてのキシレンを、図1に示す有機電子材料精製装置490に入れ、陽極電極441と陰極電極442との間に数10ボルトから数100ボルト程度の直流電圧が印加させ、キシレンに含有される極性不純物を除去することでキシレンを精製する。
そして、この精製したキシレンに、非水溶媒を乾燥させた該粉状体を所定の濃度で溶解させることにより、有機EL発光層形成用塗布液を得るのである。
【0105】
上述の各実施形態では、有機EL発光層をノズルプリント法で形成したが、スピンコート法、印刷法等により形成することも可能である。
【0106】
上述の第3の実施形態では、有機電子材料精製装置490は二つ直列に接続されたが、このような実施形態に限定されることはなく、三つ以上の有機電子材料精製装置490を直列に接続する構成を用いることも可能である。かかる場合には、さらにカラム容器491を流れる液状体420の流体速度を上昇させることができ、極性不純物除去の歩留まりをさらに向上させることができる。また、二つ以上の有機電子材料精製装置490を並列に接続する構成を用いることも可能である。かかる場合には、極性不純物を除去する液状体420の単位時間当たりの処理量を増加させることができる。
【0107】
また、本発明は、有機EL層形成用塗布液を塗布して有機EL層を形成する場合に限らず、有機薄膜トランジスタ、或いは太陽電池等の有機電子材料を用いた他の有機電子素子を製造する場合に、広く適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】第1の実施形態に係る有機電子材料精製装置を説明する図であり、そのうち(a)は断面図であり、(b)は上方から説明する図である。
【図2】本発明に係る有機EL表示装置を上部から見た構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る有機EL表示装置の表示画素の一例を説明する、図2の切断線I−Iに沿った面の矢視断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造装置を説明する図である。
【図5A】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、ガラス基板を載置する工程を説明する図である。
【図5B】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、3層デポを行う工程を説明する図である。
【図5C】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、絶縁膜の形成工程を説明する図である。
【図5D】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、ソース・ドレイン電極の形成工程を説明する図である。
【図5E】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、画素電極の形成工程を説明する図である。
【図5F】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、アノードラインの形成工程を説明する図である。
【図5G】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、層間絶縁膜の形成工程を説明する図である。
【図5H】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、バンクの形成工程を説明する図である。
【図5I】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、正孔注入層の形成工程を説明する図である。
【図5J】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、有機EL発光層の形成工程を説明する図である。
【図5K】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、上部電極の形成工程を説明する図である。
【図5L】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を説明する図であり、絶縁層の形成工程を説明する図である。
【図6】第2の実施形態に係る有機電子材料精製装置を説明する図である。
【図7】第3の実施形態に係る有機電子材料精製装置の要部を説明する図である。
【符号の説明】
【0109】
100…有機EL層、110…ガラス基板、120…画素電極、130…バンク、140…有機EL発光層、150…層間絶縁膜、160…上部電極、170…封止ガラス、180…接着層、190…正孔注入層、210…ゲート層、220…絶縁層、230…絶縁膜、240…ソース・ドレイン、250…ドレイン・ライン、260…半導体膜、310…ステージ、320…ステージ移動機構部、330…制御部、340…位置合わせ検出部、350…第1供給装置、360…第2供給装置、370…第3供給装置、380…ノズル移動機構部、410…貯留槽、420…液状体、430…直流電源、431…陽極端子、432…陰極端子、433…導線、441…陽極電極、442…陰極電極、451…陽極側セパレータ、452…陰極側セパレータ、461…アニオン性不純物、462…カチオン性不純物、471…陽極側バルブ、472…陰極側バルブ、473…支点、474…支点、490…有機電子材料精製装置、491…カラム容器、492…カラム容器上流口、493…カラム容器下流口、590…有機電子材料精製装置、700…有機EL表示装置の製造装置、800…有機EL表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系の溶媒に溶解又は非水系の分散媒に分散する有機電子材料を精製する有機電子材料精製装置であって、
前記有機電子材料を前記非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体に浸漬した、対向する一対の電極と、
前記一対の電極間に所定の電圧を印加する電圧印加装置と、
前記液状体から、前記電圧印加装置によって前記電圧が印加された前記各電極の少なくとも何れか一方側に引っ張られた前記液状体中の極性不純物を分離する分離装置と、を有する、
ことを特徴とする有機電子材料精製装置。
【請求項2】
前記液状体を貯留する貯留槽を有し、
前記電圧印加装置における前記各電極は、前記貯留槽内に貯留された前記液状体に浸漬するように配置され、
前記電圧印加装置は、前記各電極に電圧を印加する電源を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の有機電子材料精製装置。
【請求項3】
前記分離装置は、前記貯留槽内の前記液状体に浸漬され、前記各電極間に設けられ、前記極性不純物を通過する多孔質膜で形成された、一対のセパレータを有する、
ことを特徴とする請求項2記載の有機電子材料精製装置。
【請求項4】
前記分離装置は、更に、前記貯留槽内の前記液状体に浸漬され、前記一対のセパレータ間に設けられた、開閉自在の一対の分離用隔壁を有する、
ことを特徴とする請求項3記載の有機電子材料精製装置。
【請求項5】
前記液状体が流入する上流口と該液状体が排出される下流口とを有する柱状のカラム容器を有し、
前記電圧印加装置における前記各電極は、前記カラム容器内の前記液状体に浸漬するように配置され、
前記電圧印加装置は、前記各電極に電圧を印加する電源を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の有機電子材料精製装置。
【請求項6】
前記カラム容器を複数有し、
前記各カラム容器の前記下流口と前記上流口とが互いに直列に連結されている、
ことを特徴とする請求項5記載の有機電子材料精製装置。
【請求項7】
前記分離装置は、前記カラム容器内の前記液状体に浸漬され、前記各電極間に設けられた、前記極性不純物を通過する多孔質膜で形成された、セパレータを有する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の有機電子材料精製装置。
【請求項8】
前記カラム容器の前記上流口に設けられた開閉自在の供給用隔壁と前記下流口に設けられた開閉自在の排出用隔壁とを有し、前記下流口に設けられた前記排出用隔壁を開けて前記精製された液状体が取り出される、
ことを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の有機電子材料精製装置。
【請求項9】
前記極性不純物は、アニオン性不純物とカチオン性不純物の少なくともいずれか一つを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の有機電子材料精製装置。
【請求項10】
非水系の溶媒に溶解又は非水系の分散媒に分散する有機電子材料を精製する有機電子材料の精製方法であって、
前記有機電子材料を前記非水系の溶媒又は分散媒に含有させた液状体を準備する工程と、
対向する一対の電極を前記液状体に浸漬し、該各電極を介して電圧を印加して、前記液状体中の極性不純物を、前記各電極側の少なくとも何れか一方側に引っ張る工程と、
前記液状体から、前記各電極側に引っ張られた前記極性不純物を分離する工程と、
を含むことを特徴とする有機電子材料の精製方法。
【請求項11】
前記極性不純物を分離する工程は、前記極性不純物を分離した後の前記液状体を、前記一対の電極間に設けられた、前記極性不純物を通過する多孔質膜で形成された一対のセパレータ間に貯留する工程を有する、
ことを特徴とする請求項10記載の有機電子材料の精製方法。
【請求項12】
前記液状体を準備する工程は、前記液状体が流入する上流口と該液状体が排出される下流口とを有し、内部に前記一対の電極及び前記一対のセパレータが設けられた柱状のカラム容器を有し、前記上流口から前記カラム容器内に前記液状体を連続的に補充する工程を有し、
前記カラム容器の前記下流口から、前記極性不純物を分離した後の前記液状体を連続的に取り出す工程を含む、
ことを特徴とする請求項10記載の有機電子材料の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図5K】
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【図5L】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−199848(P2009−199848A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39627(P2008−39627)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】