説明

有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法、それにより得られる分散物、並びに、それを含有する着色感光性樹脂組成物及び感光性転写材料、それらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】カラーフィルタの色材として用いたときに高いコントラストを示し、かつ経時安定性に優れた有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法を提供する。また、上記のカラーフィルタを液晶表示装置に実装して使用したときに、良好な表示特性を発揮する有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法、それにより得られる分散物、並びに、それを含有するインクジェットインク、着色感光性樹脂組成物、及び感光性転写材料、それらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】有機顔料をそれに対する良溶媒である第1溶媒に溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となる第2溶媒とを混合し、前記有機顔料をナノ粒子として混合液中に析出させ、次いで、該混合液中の溶媒分を前記第1溶媒および第2溶媒のいずれとも異なる第3溶媒で置換するとともに、その際に質量平均分子量1000以上の高分子化合物を導入する有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタなどに用いられる優れた有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法、それにより得られる分散物、並びに、それを含有する着色感光性樹脂組成物及び感光性転写材料、それらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーとして、例えば粒子を10〜100nmの範囲にまで小サイズ化し、各種の用途に応用する研究が精力的に進められている。ナノメートルサイズにすることで初めて発現する作用効果により、従来予想できなかった新たな特性を引き出そうとするものである。他方、有機顔料の分野についてみると、例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等において、研究開発が進められている。とりわけカラーフィルタおよびそれに用いられるインクジェットインクについては、精密化学技術を用いた高性能化のための取り組みがなされ、その成果が期待されている。
【0003】
カラーフィルタについてみると薄層化が望まれている。これにより液晶表示装置やデジタルカメラ、CCDセンサーなどの画像関連機器の高画素化をはじめとした高性能化を実現することができる。そしてカラーフィルタの色材としては耐候性や耐熱性等を考慮し染料に代わって有機顔料が用いられ、カラーフィルタの厚さはその顔料の粒子径に大きく依存する。すなわち良好な顔料微粒子の開発が画像関連機器の性能向上の鍵をにぎる。具体的には、ナノメートルサイズレベルであり、しかも単分散で安定な顔料微粒子が求められている。また、カラーフィルタを、インクジェット技術を利用して製造する新規製造方法なども検討されている。これによりカラーフィルタの製造効率や設計自由度を大幅に向上させることができる。しかし、この製造方法に用いることができ、十分な性能を発揮するインク材料はまだない。
【0004】
ここで顔料分散物の製造方法についてみると、例えばバインダー中で顔料をニーダーなどで練りこむことにより分散物を得る方法や(特許文献1参照)、ビーズミルなどで顔料を粉砕処理する際に分散剤を加えることで顔料を微細化すると共に、微細化した顔料粒子に分散剤を吸着させ安定な分散物を得る方法などが挙げられる(特許文献2参照)。これらはいずれも粗顔料や顆粒顔料を対象としたものであり、ナノメートルサイズの粒子として得ることは難しい。
さらに詳しくいうと、ニーダーによる混練法では顔料とバインダーあるいは分散剤を均一に混合するために多くの時間とエネルギーを要する上、顔料を微細化する効果はあまり高くない。ビーズミルによる微細化および吸着による方法では、それなりに均一な分散物は得られるものの、顔料を例えば100nm以下に短時間で微細化することは困難である。
【0005】
それに対し最近では、気相法、液相法、レーザーアブレーション法などが研究されている。中でも液相法は、簡易性および生産性に優れた有機粒子の製造法として注目されている(特許文献3参照)。そして具体的に、顔料溶液と貧溶媒とを混合してナノ粒子を析出させ、所定の高分子化合物を添加し、さらにその分散物を濃縮する方法が開示されている(特許文献4参照)。これによりカラーフィルタを高コントラスト化することができるが、さらに改善の余地はある。また液晶表示装置に実際に使用したときの表示特性について、十分な記載はない。
【特許文献1】特開平9−188846号公報
【特許文献2】特開2004−287298号公報
【特許文献3】特開2004−91560号公報
【特許文献4】国際公開第WO2006/121016号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カラーフィルタの色材として用いたときに高いコントラストを示し、かつ経時安定性に優れた有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法の提供を目的とする。また、上記のカラーフィルタを液晶表示装置に実装して使用したときに、良好な表示特性を発揮する有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法、それにより得られる分散物、並びに、それを含有するインクジェットインク、着色感光性樹脂組成物、及び感光性転写材料、それらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記の手段により達成された。
(1)有機顔料をそれに対する良溶媒である第1溶媒に溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となる第2溶媒とを混合し、前記有機顔料をナノ粒子として混合液中に析出させ、次いで該混合液中の溶媒分を前記第1溶媒および第2溶媒のいずれとも異なる第3溶媒で置換するとともに、その際に質量平均分子量1000以上の高分子化合物を導入することを特徴とする有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(2)前記高分子化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【0008】
【化1】

〔式中、Rは(m+n)価の連結基を表し、Rは単結合あるいは2価の連結基を表す。Aは、酸性基、窒素原子を有する塩基性基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基からなる群より選ばれる基を有する1価の有機基、または置換基を有してもよい有機色素構造もしくは複素環を含有する1価の有機基を表す。ただし、n個のAは互いに同一であっても、異なっていてもよい。mは1〜8の数を表し、nは2〜9の数を表し、m+nは3〜10を満たす。Pは高分子化合物残基を表す。〕
(3)前記高分子化合物を添加した後、前記第3溶媒を含む溶媒分を除去して濃縮することを特徴とする(1)または(2)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(4)前記濃縮をろ過により行うことを特徴とする(3)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(5)前記濃縮を乾燥により行うことを特徴とする(3)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(6)前記濃縮を遠心分離により行うことを特徴とする(3)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(7)前記濃縮を溶媒抽出により行うことを特徴とする(3)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(8)前記濃縮を沈降分離により行うことを特徴とする(3)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(9)前記濃縮を、ろ過、乾燥、遠心分離、溶媒抽出、及び沈降分離の2種以上を組み合わせて行うことを特徴とする(3)に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(10)前記濃縮により前記ナノ粒子を凝集させた後、前記第1溶媒、第2溶媒、及び第3溶媒のいずれとも異なる第4溶媒に前記ナノ粒子を再分散させることを特徴とする(3)〜(9)のいずれか1項に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の製造方法により得られた分散物と、バインダーと、重合性基を有するモノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤または光重合開始剤系とを少なくとも含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
(12)インクジェットインクとしたことを特徴とする(11)に記載の着色感光性樹脂組成物。
(13)仮支持体上に、少なくとも、(11)記載の着色感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性転写材料。
(14)(11)もしくは(12)記載の着色感光性樹脂組成物または(13)記載の感光性転写材料を用いて作製したことを特徴とするカラーフィルタ。
(15)(14)記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、経時安定性を有し、カラーフィルタの色材として用いたときに高いコントラストを示す有機顔料ナノ粒子分散物を得ることができる。とくに、単に混練によって混合したのではできない程度にまで、所望の高分子化合物を顔料ナノ粒子と均一に混合して密に吸着させ分散安定性を高めることができるという優れた作用効果を奏する。
また、本発明の分散物はカラーフィルタ用の色材として好適で、該カラーフィルタを液晶表示装置に組み込んで画像表示させたとき良好な表示特性を実現しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン化合物顔料、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0011】
更に詳しくは、たとえば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン化合物顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントイエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン化合物顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、C.I.ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、C.I.ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、C.I.ピグメントブルー15:6(C.I.番号74160)、もしくはC.I.ピグメントブルー15:3(C.I.番号74160)等のフタロシアニン化合物顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール化合物顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、C.I.ピグメントイエロー185(C.I.番号56290)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン化合物顔料が挙げられる。なかでも、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料がより好ましい。
【0012】
C.I.P.R.254、255、264に代表されるピロロピロール化合物顔料についてとくにいうと、カラーフィルタを構成する赤画素の色純度を高めるのに適した吸収域を有し、色再現域を広げられるため、そのカラーフィルタへの利用が試みられている。しかしながら従来の顔料では、色純度やコントラスト等、要求に応えられていない。例えば特開2003−336001号公報に記載されているインクジェット用インク、ビーズ分散やソルトミリングによる方法で得たものなどでは良好なカラーフィルタは得られない。
【0013】
上記ジケトピロロピロール化合物顔料においては、中でもC.I.P.R.254(下記式(Z)で表される化合物)、255(下記式(W)で表される化合物)、264(下記式(V)で表される化合物)が好ましく、C.I.P.R.254が吸収スペクトルの観点でより好ましい。なお、C.I.P.R.254としては、Irgaphor Red B−CF、 Cromophtal DPP Red BO、 Irgazin DPP Red BO、 Microlen DPP RED BP など市販されているあらゆるものを用いることが可能である。C.I.P.R.255としては、 Cromophtal Coral Red C、 Irgazin DPP Red 5Gなどを用いることができる。C.I.P.R.264としては、Hostapeperm Rubin D3B LP2615、 Irgazin DPP Rubin TR などを用いることができる。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明の製造方法においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
本発明の製造方法においては、顔料ナノ粒子を、有機顔料に対して良溶媒である第1溶媒に溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒に対しては相溶性を有し、有機顔料に対しては貧溶媒となる第2溶媒とを混合することにより析出生成させる(以下、この方法を「再沈法」ということもあり、このとき得られる顔料ナノ粒子を含有する分散液を「顔料粒子再沈液」ということもある)。上記第1溶媒と第2溶媒との組み合わせは有機顔料の溶解度に十分な差があることが必要であり、材料に合わせて好ましいものを選択する必要があるが、この工程を可能にする組み合わせであればいかなる選択も可能である。
【0017】
第1溶媒は用いる有機顔料を溶解することが可能で、第2溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料の第1溶媒への溶解性は有機顔料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。有機顔料の第1溶媒への溶解度に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、第1溶媒と第2溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、第1溶媒の第2溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。第1溶媒の第2溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0018】
第1溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が好ましく、水性溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒がさらに好ましく、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が特に好ましい。
【0019】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
また、第1溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液の濃度としては、溶解時の条件における有機顔料の第1溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が好ましい。
有機顔料溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0020】
本発明において有機顔料を第1溶媒中に均一に溶解するとき、酸性でもしくはアルカリ性で溶解することも好ましい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料はアルカリ性で、フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解される。
【0021】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基が挙げられ、なかでも無機塩基が好ましい。
【0022】
使用する塩基の量は特に限定されないが、無機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であることがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0023】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、なかでも無機酸であることが好ましく、硫酸であることがより好ましい。
使用する酸の量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、有機顔料に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
【0024】
アルカリまたは酸を有機溶媒と混合して、第1溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機顔料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0025】
第2溶媒は、有機顔料を溶解する第1溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。第2溶媒としては、有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料の第2溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.000001質量%以上が実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。貧溶媒と良溶媒との相溶性もしくは均一混合性の好ましい範囲は前述のとおりである。
【0026】
第2溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物がこの好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒またはエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0027】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0028】
有機粒子を析出し形成する際の第2溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
有機顔料溶液と第2溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液を第2溶媒に添加して混合することが好ましく、その際に第2溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。
有機顔料溶液と第2溶媒の混合比(第1溶媒/第2溶媒)は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。
混合液中のナノ粒子の濃度は特に限定されないが混合液1000mlに対して有機粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
また、顔料ナノ粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、第2溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0029】
有機粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、重量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。有機顔料粒子(一次粒子)の平均粒径はナノメートルサイズであり、平均粒径が1nm〜1μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお本発明の製造方法で形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
【0030】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。有機顔料粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0031】
有機顔料粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、重量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズなどが挙げられる。
【0032】
本発明の製造方法では、顔料ナノ粒子の分散液を調製するに当り、分散剤を含有させることが好ましい。分散剤を含有させる工程は特に限定されないが、有機顔料溶液および第2溶媒の両方もしくは一方に分散剤を添加して含有させることが好ましい。また、分散剤溶液を上記両液とは別系統で顔料ナノ粒子の形成時に添加することも好ましい。予め分散剤により表面処理を施された顔料粒子を用いることも好ましく、顔料粒子には分散剤の吸着を促進し得るような表面処理が施されていてもよい。分散剤は(1)析出した顔料表面に素早く吸着して、微細なナノ粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである。
【0033】
用いることのできる分散剤として、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料誘導体の、低分子または高分子分散剤を使用することができる。なお、高分子分散剤の分子量は溶液に均一に溶解できるものであれば制限なく用いることができるが、好ましくは分子量1,000〜2,000,000であり、5,000〜1,000,000がより好ましく、10,000〜500,000がさらに好ましく、10,000〜100,000が特に好ましい。高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0034】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
顔料誘導体型分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料誘導体型分散剤、ピペリジル含有顔料誘導体型分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料誘導体型分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料誘導体型分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料誘導体型分散剤、スルホンアミド基を有する顔料誘導体型分散剤、エーテル基を有する顔料誘導体型分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料誘導体型分散剤などがある。
【0038】
本発明の製造方法においては、アミノ基を含有する顔料分散剤を共存させることが好ましい。ここで、アミノ基とは一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基を含み、アミノ基の数は一つでも複数でもよい。顔料骨格にアミノ基を有する置換基を導入した顔料誘導体化合物でも、アミノ基を有するモノマーを重合成分としたポリマー化合物でもよい。これらの例として、例えば、特開2000−239554号公報、2003−96329号公報、2001−31885号公報、特開平10−339949号公報、特公平5−72943号公報に記載の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の製造方法に用いられるアミノ基を有する分散剤としては、それに限定されるものではないが、下記の一般式(D1)、(D3)、および式(D4)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
<1.一般式(D1)で表される化合物>
【0040】
【化3】

【0041】
一般式(D1)中、AはX−Yとともにアゾ色素を形成しうる成分を表す。前記Aは、ジアゾニウム化合物とカップリングしてアゾ色素を形成しうる化合物であれば任意に選択することができる。前記Aの具体例を以下に示すが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0042】
【化4】

【0043】
一般式(D1)中、Xは単結合又は下記式(i)〜(v)の構造式で表される二価の連結基から選択される基を表す。
【0044】
【化6】

【0045】
一般式(D1)中、Yは下記一般式(D2)で表される基を表す。
【0046】
【化7】

【0047】
一般式(D2)中、Zは、低級アルキレン基を表す。Zは、−(CH−と表されるが、該bは1〜5の整数を表し、好ましくは2又は3を表す。一般式(D2)中、−NR21は、低級アルキルアミノ基、又は窒素原子を含む5乃至6員飽和ヘテロ環基を表す。該−NR21は、低級アルキルアミノ基を表す場合、−N(C2r+1と表され、rは1〜4の整数を表し、好ましくは1又は2を表す。−NR21が、窒素原子を含む5乃至6員飽和ヘテロ環基を表す場合、ピロリジン環、ピペリジン環、及びモルホリン環のいずれかのヘテロ環基が好ましい。
【0048】
前記一般式(D2)における、Z及び−NR21は、それぞれ、低級アルキル基、アルコキシ基を置換基として有していてもよい。前記一般式(D2)中、aは、1又は2を表し、好ましくは2を表す。
【0049】
以下に、前記一般式(D1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
一般式(D1)で表される化合物は例えば特開2000−239554号公報に記載された方法により合成することができる。
【0055】
<2.一般式(D3)で表される化合物>
【0056】
【化13】

【0057】
一般式(D3)中、
Qは、アントラキノン化合物色素、アゾ化合物色素、フタロシアニン化合物色素、キナクリドン化合物色素、ジオキサジン化合物色素、アントラピリミジン化合物色素、アンサンスロン化合物色素、インダンスロン化合物色素、フラバンスロン化合物色素、ピランスロン化合物色素、ペリノン化合物色素、ペリレン化合物色素、及びチオインジゴ化合物色素から選ばれる有機色素残基を表し、なかでもアゾ化合物色素、またはジオキサジン化合物色素であることが好ましく、アゾ化合物色素であることがより好ましい。
は、−CO−、−CONH−Y−、−SONH−Y−、又は−CHNHCOCHNH−Y−を表し、−CO−、−CONH−Y−であることが好ましい。
は置換基を有してもよいアルキレン基又はアリーレン基を表し、なかでもフェニレン、トルイレン、またはヘキシレンであることが好ましく、フェニレンであることがより好ましい。
11およびR12はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基またはR11とR12とで少なくとも窒素原子を含むヘテロ環基を形成してもよい。なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、または窒素原子を含めたピロリジニル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
は−NH−又は−O−を表す。
は水酸基又は一般式(D3a)で表される基を表し、あるいはn1が1の場合−NH−X−Qでもよい。m1は1〜6の整数を表し、2〜3が好ましい。n1は1〜4の整数を表し、1〜2が好ましい。
【0058】
【化14】

【0059】
一般式(D3a)中、Yは−NH−又は−O−を表し、m1、R11、およびR12は一般式(D3)におけるそれらと同じ意味である。以下に一般式(D3)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0060】
【化16】

【0061】
【化17】

【0062】
一般式(D3)で表される化合物は、例えばR11およびR12を有するアミン化合物とR11およびR12を有するアルコール化合物とをハロゲン化トリアジン化合物と反応させ、得られた中間体に色素化合物を反応させて得ることができる。また、特公平5−72943号明細書の記載も参考にすることができる。
【0063】
<3.グラフト共重合体を含有する顔料分散剤>
本発明の顔料ナノ粒子の製造方法においては、アミノ基及びエーテル基を有するグラフト共重合体を含有し、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有する分散剤を用いることも好ましい。
前記グラフト共重合体は、アミノ基及びエーテル基を少なくとも有してなり、その他のモノマー等を共重合体単位として含んでいてもよい。
前記グラフト共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、5000〜50000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、3000未満であると、顔料ナノ粒子の凝集を防ぐことができず、粘度が上昇してしまうことがあり、100000を超えると有機溶剤への溶解性が不足し、粘度が上昇してしまうことがある。なお、該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0064】
前記グラフト共重合体は、(i)末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、(ii)アミノ基とエチレン性不飽和二重結合とを有するモノマーと、(iii)エーテル基を有する重合性モノマーとを共重合体単位として少なくとも含み、必要に応じて(iv)その他のモノマーを共重合単位として含むことが好ましい。
【0065】
これらの共重合体単位の、前記グラフト共重合体における含有量としては、(i)前記重合性オリゴマーが15〜98質量%であることが好ましく、25〜90質量%であることがより好ましく、(ii)アミノ基含有モノマーが1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、(iii)前記エーテル基を有する重合性モノマーが1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
【0066】
前記重合性オリゴマーの含有量が、15質量%未満であると、分散剤としての立体反発効果が得られず、顔料ナノ粒子の凝集が防止できないことがあり、98質量%を超えると、前記窒素含有モノマーの割合が減り有機粒子に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがある。前記窒素含有モノマーの含有量が、1質量%未満であると、有機粒子に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがあり、40質量%を超えると、前記重合性オリゴマーの割合が減ることから、分散剤としての立体反発効果が得られず、有機粒子の凝集を十分に防止できないことがある。前記エーテル基を有する重合性モノマーの含有量が、1質量%未満であると、カラーフィルタ等の製造の際の現像適性が十分でないことがあり、70質量%を超えると、分散剤としての能力が低下することがある。
以下、下記の一般式(E1)〜(E6)に基づきこの分散剤についてさらに説明する。
【0067】
【化18】

【0068】
(i) 重合性オリゴマー
前記重合性オリゴマー(以下、「マクロモノマー」と称することがある。)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基を末端に有するオリゴマーである。本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、該オリゴマーの両末端の内の一方にのみ前記エチレン性不飽和二重結合を有する基を有するのが好ましい。
【0069】
前記オリゴマーとしては、一般的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びブタジエンから選択された少なくとも一種のモノマーから形成された単独重合体又は共重合体などが挙げられ、これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、ポリスチレンなどが好ましい。本発明において、これらのオリゴマーは、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0070】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが好適に挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0071】
本発明においては前記重合性オリゴマーの中でも上記一般式(E6)で表されるオリゴマーが好ましい。
【0072】
前記一般式(E6)において、R61及びR63は、水素原子又はメチル基を表す。R62は、炭素数1〜8のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキレン基を表し、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。Yは、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基、又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜6のアルコール性水酸基、ハロゲンで置換されてもよいアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜10のアリールアルキル基を表す。)を表し、フェニル基又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜4のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキル基を表す。)が好ましい。qは、20〜200を表す。
【0073】
前記重合性オリゴマーの具体例としては、ポリ−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、それらの共重合体であって、分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーが好ましい。
【0074】
前記重合性オリゴマーは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AA−714,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:707S,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AY−707S、AY−714S,東亜合成化学工業(株)社製)、などが挙げられる。
【0075】
本発明における前記重合性オリゴマーの好ましい具体例としては、アルキル(メタ)アクリレートの重合体、及び、アルキル(メタ)アクリレートとポリスチレンとの共重合体から選択される少なくとも1種のオリゴマーであって、数平均分子量が1000〜20000であり、末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。
【0076】
(ii) アミノ基含有モノマー
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、上記一般式(E2)で表される化合物より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0077】
前記一般式(E2)において、R21は、水素原子又はメチル基を表す。R22は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が特に好ましい。
【0078】
は、−N(R23)(R24)、−R25N(R26)(R27)を表す。ここで、R23及びR24は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。R25は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R26及びR27は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0079】
上記のうち、−N(R23)(R24)のR23及びR24は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基が好ましく、−R25−N(R26)(R27)のR25は、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、R26及びR27は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。m2及びn2は、1又は0を表し、m2=1かつn2=1、又は、m2=1かつn2=0が好ましい(即ち、上記一般式(E3)、(E4)で表されるモノマーに対応する)。
【0080】
本発明においては、前記一般式(E2)で表されるモノマーの中でも、上記一般式(E3)及び(E4)のいずれかで表されるモノマーから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0081】
前記一般式(E3)において、R31は、R21と同義である。R32は、R22と同義である。Xは、Xと同義である。
【0082】
前記一般式(E4)において、R41は、R21と同義である。Xは、Xと同義であり、−N(R43)(R44)(ここで、R43及びR44は、R23及びR24と同義である。)、又は、−R45−N(R46)(R47)(ここで、R45、R46及びR47は、それぞれR25、R26及びR27と同義である。)が好ましい。
【0083】
前記一般式(E2)で表されるモノマーの具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド及びN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド、6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類)などが好ましいものとして挙げられる。
【0084】
(iii) エーテル基を有する重合性モノマー
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、上記一般式(E1)で表されるモノマーより選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0085】
前記一般式(E1)において、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。Xは、−OR13又は−OCOR14を表す。ここで、R13は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表す。R14は、炭素数1〜18のアルキル基を表す。また、m3は、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0086】
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、エーテル基を有し、且つ重合性のものであれば特に制限はなく、通常のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。該市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)社製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)社製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)社製)などが挙げられる。
【0087】
(iv) その他のモノマー
前記グラフト共重合体は、前記その他のモノマーを更に共重合体単位として含有していてもよく、該その他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びi−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレート)、グリシジル(メタ)アクリレート、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン)、(メタ)アクリル酸、などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0088】
前記グラフト共重合体における該その他のモノマーの含有量としては、例えば、5〜70重量%が好ましい。前記含有率が、5重量%未満であると、塗布膜の物性の制御ができなくなることがあり、70重量%を超えると、分散剤としての能力が十分に発揮されないことがある。
【0089】
前記グラフト共重合体の好ましい具体例としては、
(11) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(12) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
【0090】
(13) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
(14) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
(15) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
(16) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
【0091】
(17) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(18) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(19) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、
(20) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、などが挙げられる。
なかでも、(11)、(14)、(18)が好ましく、下記式(D4)で表される化合物がより好ましい。式(D4)中、Meはメチル基を表す。
【0092】
【化23】

【0093】
前記グラフト共重合体は、前記各共重合体単位となる成分を、例えば、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を使用することができる。グラフト共重合体を含有する顔料分散剤については特開2001−31885号公報の記載を参考にすることもできる。
【0094】
本発明における第3溶媒は、顔料ナノ粒子の生成に用いられる良溶媒(第1溶媒)、貧溶媒(第2溶媒)とは異なる溶媒であり、かつ第1溶媒及び第2溶媒の溶媒のいずれとも相溶する溶媒である。具体的には、例えば水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。この中では水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒、エステル化合物溶媒、およびこれらの混合溶媒が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、およびこれらの混合溶媒がより好ましい。具体的な例としては、エステル化合物溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶媒の中では、乳酸エチル、酢酸エチル、アセトン、エタノールが好ましく、乳酸エチルが特に好ましい。
【0095】
第3溶媒として混合溶媒を用いる場合、溶媒の数およびそれらの混合比は特に限定されず、顔料種、溶媒種、高分子化合物種により適切な混合溶媒を選択することができる。また、第3溶媒の添加量は特に限定されないが、顔料ナノ粒子100質量部に対して、100〜30,000質量部であることが好ましく、500〜10,000質量部であることがより好ましい。なお、後述の第4溶媒を用いるときには、第3溶媒として第4溶媒に相溶性を有するものを選択して用いることが好ましい。
【0096】
本発明の製造方法においては、第3溶媒を溶媒置換用溶媒として用い、これによって顔料ナノ粒子を析出させた顔料粒子再沈液の溶媒分(第1溶媒と第2溶媒との混合溶媒分)を置換するが、このとき対象となる顔料や溶媒種によって次のいずれかの態様により置換することが好ましい。
(a)顔料粒子再沈液に第3溶媒を添加し、その後第1溶媒および第2溶媒を取り除く態様
(b)顔料粒子再沈液から第1溶媒および第2溶媒からなる溶媒分を取り除いて顔料濃縮物を調製し、その後第3の溶媒を加えて再分散する態様
(c)顔料粒子再沈液に第3溶媒を添加しつつ、第1溶媒および第2溶媒からなる溶媒分を取り除く態様
顔料ナノ粒子の不可逆的な凝集などの、顔料分散物の性能低下を招かない限り、(a)〜(c)のいずれの態様であってもよいが、第1溶媒と第2溶媒とからなる溶媒分を効率よく取り除くのに適していることから(b)の態様が好ましい。また、複数の態様を組み合わせたり、同じ態様を繰り返し用いることでより溶媒分の置換率を高めることも可能である。なお溶媒分の除去や再分散の詳しい手順に関しては後述する。
【0097】
溶媒分を置換する際に、溶媒分を減少させるもしくは除去する量は特に限定されないが、溶媒分を減少させる態様においては全溶媒分の50質量%以上を取り除くことが好ましく、75質量%以上を取り除くことがより好ましい。溶媒分を除去する態様においては全溶媒分の80質量%以上を取り除くことが好ましく、90質量%以上を取り除くことがより好ましい。
溶媒分を減少させるもしくは除去することにより溶媒分を減じたとき、残された分散物中の含水率は特に限定されないが、0.01〜3質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。このとき例えば上記の乾燥法等により溶媒分を除去して顔料ナノ粒子の粉末とすることが好ましく、例えば固形分の含率を50〜100質量%とすることが好ましく、70〜100質量%とすることがより好ましい。
【0098】
本発明の製造方法においては第3溶媒によって前記顔料粒子再沈液の溶媒分を置換するが、その溶媒置換の際(本発明において、「溶媒置換の際」とは、溶媒分の置換工程を開始した後、高分子化合物の添加以外の工程を開始するまでの間をいう。具体的には、例えば先に述べた態様(a)〜(c)のいずれかにより溶媒を置換する工程を開始した後、次に溶媒置換後の分散液を濃縮する工程を開始するまでの間をいう。)、質量平均分子量1000以上の高分子化合物を添加するが、その添加の好ましい態様として次のようなものが挙げられる。
(イ)第3溶媒を添加すると同時に、ただし第3溶媒と混合した液とはせず、別々に高分子化合物を添加する態様
(ロ)第3溶媒にあらかじめ高分子化合物を溶解しておき、これを添加する態様
(ハ)第3溶媒で溶媒分を置換した後、高分子化合物を添加する態様
高分子化合物の添加により、顔料ナノ粒子の分散状態を安定化させることができれば、いずれの態様であってもよいが、顔料粒子と高分子化合物を均一に混合しやすいことから、(ロ)の態様が好ましい。また、例えば(ロ)を行った後に(ハ)で高分子化合物を追添するなど、複数の手法を組み合わせてもよい。
【0099】
上記高分子化合物の添加量については、添加する系内の顔料の量に応じて、その顔料を分散するに十分な量以上であればよい。ただし、添加量が多すぎるとその後の分散をしにくくなることがあり、顔料100質量部に対し5〜1000質量部とすることが好ましく、10〜500質量部とすることがより好ましく、10〜250質量部とすることが特に好ましい。なお、ここで添加する高分子化合物は、後述する第4溶媒を用いるときには、第4溶媒中で顔料分散機能を発揮しうるものを選択して用いることが好ましい。
【0100】
上記質量平均分子量1000以上の高分子化合物として、下記一般式(1)で表される高分子化合物を用いることが好ましい。
【化24】

【0101】
前記一般式(1)中、Aは、酸性基、窒素原子を有する塩基性基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される基を有する1価の有機基、または置換基を有してもよい有機色素構造もしくは複素環を含有する1価の有機基を表す。n個のAは同一であっても、異なっていてもよい。
具体的には、Aは特に制限されるものではないが、前記「酸性基を有する1価の有機基」として、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基などを有する1価の有機基が挙げられる。また、前記「窒素原子を有する塩基性基を有する1価の有機基」として、例えば、アミノ基(−NH)を有する1価の有機基、置換イミノ基(−NHR、−NR10)を有する1価の有機基(ここで、R、R、およびR10は各々独立に、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、又は炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。)、下記一般式(a1)で表されるグアニジル基を有する1価の有機基〔一般式(a1)中、Ra1およびRa2は各々独立に、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、又は炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。〕、下記一般式(a2)で表されるアミジニル基を有する1価の有機基〔一般式(a2)中、Ra3およびRa4は各々独立に、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、又は炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。〕などが挙げられる。
【0102】
【化25】

【0103】
前記「ウレア基を有する1価の有機基」として、例えば、−NHCONHR15(ここで、R15は、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、又は炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。)などが挙げられる。
前記「ウレタン基を有する1価の有機基」として、例えば、−NHCOOR16、−OCONHR17(ここで、R16およびR17は各々独立に、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、又は炭素数7以上30以下のアラルキル基を表す。)などが挙げられる。
前記「‘配位性酸素原子を有する基’を有する1価の有機基」としては、例えば、アセチルアセトナト基を有する基、クラウンエーテルを有する基などが挙げられる。
前記「炭素数4以上の炭化水素基を有する1価の有機基」としては、炭素数4以上のアルキル基(例えば、オクチル基、ドデシル基など)、炭素数6以上のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、炭素数7以上のアラルキル基(例えばベンジル基など)などが挙げられる。このとき炭素数に上限はないが、30以下であることが好ましい。 前記「アルコキシシリル基を有する1価の有機基」としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などを有する基が挙げられる。
前記「エポキシ基を有する1価の有機基」としては、例えば、グリシジル基などを有する基が挙げられる。
前記「イソシアネート基を有する1価の有機基」としては、例えば、3−イソシアナトプロピル基などが挙げられる。
前記「水酸基を有する1価の有機基」としては、例えば、3−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。
【0104】
前記Aとして、酸性基、窒素原子を有する塩基性基、ウレア基、又は炭素数4以上の炭化水素基を有する1価の有機基であることが好ましい。
【0105】
また、前記有機色素構造または複素環としては、特に限定されないが、より具体的には、有機色素構造としては、例えば、フタロシアニン化合物、不溶性アゾ化合物、アゾレーキ化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ジオキサジン化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラピリジン化合物、アンサンスロン化合物、インダンスロン化合物、フラバンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、チオインジゴ化合物等が挙げられる。また、複素環としては、例えばチオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等が挙げられる。
【0106】
また、前記有機色素構造または複素環は置換基Tを有していてもよく、該置換基Tとしては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16のアリール基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基等が挙げられる。
【0107】
また、前記Aは下記一般式(4)で表すことができる。
【0108】
【化26】

【0109】
前記一般式(4)において、Bは、酸性基、窒素原子を有する塩基性基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基から選択される基、または置換基を有してもよい有機色素構造または複素環を表し、R18は単結合あるいはa1価の有機もしくは無機の連結基を表す。a1は、1〜5を表し、a1個のBは同一であっても異なっていてもよい。一般式(4)で表される基における好ましい態様は前記Aと同義である。
【0110】
18は、単結合あるいはa1+1価の連結基を表し、a1は1〜5を表す。連結基R18としては、1〜100個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子、および0〜20個の硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。R18は、有機連結基であることが好ましい。
【0111】
18具体的な例として、下記の構造単位又は該構造単位が組み合わさって構成される基を挙げることができる。なお、該連結基R18は前記置換基Tを有していてもよい。
【0112】
【化27】

【0113】
前記一般式(1)中、Rは、(m+n)価の連結基を表す。m+nは3〜10を満たす。
前記Rで表される(m+n)価の連結基としては、1〜100個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子、および0〜20個の硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。Rは有機連結基であることが好ましい。
【0114】
の具体的な例として、前記(t−1)〜(t−34)の基又はその複数を組み合わせて構成される基(環構造を形成していてもよい。)を挙げることができる。上記の連結基Rが置換基を有する場合、該置換基としては、前記の置換基Tが挙げられる。
【0115】
は、単結合あるいは2価の連結基を表す。Rとしては、1〜100個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子、および0〜20個の硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。
の具体的な例として、前記t−3〜5、7〜18、22〜26、32、34の基又はその複数を組み合わせて構成される基を挙げることができる。Rは、Rとの連結位置に硫黄原子を有することが好ましい。上記Rが置換基を有する場合、該置換基としては、前記置換基Tが挙げられる。
【0116】
前記一般式(1)中、mは1〜8を表す。mとしては1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
また、nは2〜9を表す。nとしては2〜8が好ましく、2〜7がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
【0117】
前記一般式(1)中、Pは高分子化合物残基(高分子骨格)を表し、通常のポリマーなどから適宜選択することができる。
ポリマーの中でも、高分子骨格を構成するには、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル化合物ポリマー、エーテル化合物ポリマー、ウレタン化合物ポリマー、アミド化合物ポリマー、エポキシ化合物ポリマー、シリコーン化合物ポリマー、及びこれらの変性物、又は共重合体〔例えば、ポリエーテル/ポリウレタン共重合体、ポリエーテル/ビニルモノマーの重合体の共重合体など(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。)を含む。〕からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル化合物ポリマー、エーテル化合物ポリマー、ウレタン化合物ポリマー、およびこれらの変性物又は共重合体からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体が特に好ましい。
更には、前記ポリマーは有機溶媒に可溶であることが好ましい。有機溶媒との親和性が低いと、例えば、顔料分散剤として使用した場合、分散媒との親和性が弱まり、分散安定化に十分な吸着層を確保できなくなることがある。
また、PはRとの連結位置に硫黄原子を有することが好ましい。
【0118】
前記一般式(1)で表される高分子化合物の中でも、下記一般式(2)で表される高分子化合物がより好ましい。
【0119】
【化28】

【0120】
前記一般式(2)において、Aは前記一般式(1)におけるAと同義であり、その具体的な好ましい態様も同様である。また、Aは置換基を有していてもよく、前記置換基Tが挙げられる。
【0121】
前記一般式(2)において、Rは、(x+y)価の連結基を表す。RはRと同義であり好ましい範囲も同様である。このときRはx+y価の連結基であるが、そのxの値及びその好ましい範囲は一般式(1)のnと同じであり、yの値及びその好ましい範囲はmと同じであり、x+yの値及びその好ましい範囲はm+nと同じである。
【0122】
で表される連結基は有機連結基であることが好ましく、その有機連結基の好ましい具体的な例を以下に示す。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0123】
【化29】

【0124】
【化30】

【0125】
上記の中でも、原料の入手性、合成の容易さ、各種溶媒への溶解性の観点から、上記(r−1)、(r−2)、(r−10)、(r−11)、(r−16)、(r−17)の基が好ましい。
【0126】
また、上記のRが置換基を有する場合、該置換基として前記置換基Tが挙げられる。
【0127】
前記一般式(2)において、RおよびRは、各々独立に、単結合あるいは2価の連結基を表す。
前記R、Rで表される「2価の連結基」としては、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐、もしくは環状の、アルキレン基、アリーレン基、もしくはアラルキレン基、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R19)−、−SO−、−SO−、−CO−、又は−N(R20)SO−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基が好ましい(前記R19およびR20は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)。なかでも有機連結基であることが好ましい。
【0128】
前記Rとしては、直鎖もしくは分岐の、アルキレン基もしくはアラルキレン基、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、−SO−、−CO−、又は−N(R20)SO−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基がより好ましく、直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはアラルキレン基、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、又は−CO−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基が特に好ましい。
【0129】
前記Rとしては、単結合、直鎖、もしくは分岐の、アルキレン基、アラルキレン基、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、−SO−、−CO−、又は−N(R20)SO−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基がより好ましく、直鎖もしくは分岐のアルキレン基、アラルキレン基、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、又は−CO−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基が特に好ましい。
【0130】
また、前記R、Rが置換基を有する場合、該置換基としては前記置換基Tが挙げられる。
【0131】
また、一般式(2)中のPは、高分子骨格を表し、通常のポリマーなどから適宜選択することができる。ポリマーの好ましい態様については、前記一般式(1)におけるPと同義であり、その好ましい態様も同様である。
【0132】
前記一般式(2)で表される高分子化合物のうち、特に、Rが前記具体例(r−1)、(r−2)、(r−10)、(r−11)、(r−16)、又は(r−17)であって、Rが、単結合、直鎖もしくは分岐の、アルキレン基もしくはアラルキレン基、−O−、−C(=O)−、−N(R19)−、又は−CO−、あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の有機基であって、Rが単結合、エチレン基、プロピレン基、又は下記一般式(s−a)もしくは(s−b)で表される連結基であって、Pがビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル化合物ポリマー、エーテル化合物ポリマー、ウレタン系ポリマー、又はこれらの変性物であって、yが1〜2であって、xが3〜6である高分子化合物が特に好ましい。なお、下記基中、R21は水素原子又はメチル基を表し、lは1又は2を表す。
【0133】
【化31】

【0134】
本発明の製造方法に用いられる高分子化合物の質量平均分子量は1000以上であるが、質量平均分子量で3000〜100000であることが好ましく、5000〜80000であることがより好ましく、7000〜60000であることが特に好ましい。質量平均分子量が前記範囲内であると、ポリマーの末端に導入された複数の官能基の効果が十分に発揮され、固体表面への吸着性、ミセル形成能、界面活性性に優れた性能を発揮、良好な分散性と分散安定性を達成することができる。なお本発明の製造方法において分子量とは、特に断らない限り、質量平均分子量をいう。分子量の測定方法としては、クロマトグラフィー法、粘度法、光散乱法、沈降速度法等が挙げられるが、本発明では、特に断らない限りゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量を用いる。
【0135】
本発明の製造方法に好ましく用いられる一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0136】
【化32】

【0137】
【化33】

【0138】
【化34】

【0139】
【化35】

【0140】
【化36】

【0141】
【化37】

【0142】
【化38】

【0143】
【化39】

【0144】
前記一般式(1)もしくは(2)で表される高分子化合物は例えば下記の各方法により合成することができる。
1.カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等から選択される官能基を末端に導入したポリマーと、複数の官能基(前記一般式中のA又はA)を有する酸ハライド、あるいは複数の官能基(前記一般式中のA又はA)を有するアルキルハライド、あるいは複数の官能基(前記一般式中のA又はA)を有するイソシアネート等とを高分子反応させる方法。
2.末端に炭素−炭素二重結合を導入したポリマーと、複数の官能基(前記一般式中のA又はA)を有するメルカプタンとをマイケル付加反応させる方法。
3.末端に炭素−炭素二重結合を導入したポリマーと、複数の官能基(前記一般式中のA又はA)を有するメルカプタンとをラジカル発生剤存在下で反応させる方法。
4.末端に複数のメルカプタンを導入したポリマーと、炭素−炭素二重結合を導入した官能基(前記一般式中のA又はA)とをラジカル発生剤存在下で反応させる方法。
5.複数の官能基(前記一般式中のA又はA)を有するメルカプタン化合物を連鎖移動剤として、ビニルモノマーをラジカル重合する方法。
なかでも、合成上の容易さから2、3、4、5が好ましく、3、4、5がより好ましく、5が特に好ましい。なお、これらの合成方法については特願2006−129714号明細書の段落0184〜0216に記載の内容を参考にすることができる。
【0145】
質量平均分子量1000以上の高分子化合物として以下の酸性基を有する高分子化合物(以下、この化合物を「酸性基含有高分子化合物」ということもある。)を用いることもでき、該高分子化合物としてカルボキシル基を有する高分子化合物であることが好ましく、(A)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位の少なくとも1種および(B)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位の少なくとも1種を含有する共重合化合物がより好ましい。
前記(A)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位であることが好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸から導かれた繰り返し単位であることがより好ましく、前記(B)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましく、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位であることがより好ましく、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェネチルアクリレート、フェネチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、または3−フェニルプロピルメタクリレートから導かれた繰り返し単位であることが特に好ましい。
【0146】
【化40】

【0147】
式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。Rは下記一般式(III)で表される基を表す。Rは水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表す。R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。iは1〜5の数を表す。Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。Rは下記一般式(V)で表される基を表す。Rは炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を表す。R10及びR11は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。jは1〜5の数を表す。
また、(A)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位と、前記(B)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位との重合比率としていえば、繰り返し単位(A)の全繰り返し単位数に対する数量比%が3〜40であることが好ましく、5〜35であることがより好ましい。
【0148】
カルボキシル基を有する高分子化合物として、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、側鎖にカルボキシル基を有するセルロース誘導体等があげられる。特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体や、アクリル酸またはメタクリル酸と、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルと、他のビニル化合物の多元共重合体を挙げることができる。
ビニル化合物の例としては、スチレン又は置換されたスチレン(例えばビニルトルエン、ビニルエチルベンゼン)、ビニルナフタリン又は置換されたビニルナフタリン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられ、スチレンが好ましい。
【0149】
質量平均分子量1000以上の高分子化合物して、上記化合物のほか、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアミド、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子化合物化合物も使用できる。また、酸性基を有する高分子化合物としては、ポリビニル硫酸、縮合ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0150】
また、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−6745(エフカ社製))、ソルスパース5000(ゼネカ(株)社製);オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)社製)、W001(裕商社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上森下産業(株)社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(ゼネカ(株)社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)社製)およびイソネットS−20(三洋化成(株)社製)が挙げられる。また、2000−239554号公報に記載の顔料分散剤や、特公平5−72943号公報に記載の化合物(C)や、特開2001−31885号公報に記載の合成例1の化合物なども好適に用いることができる。
【0151】
分子量1000以上の高分子化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよく、分子量1000未満の化合物と併用してもよい。
【0152】
次に、溶媒置換時あるいは溶媒置換後に濃縮する好ましい態様について説明する。
濃縮態様は特に限定されるものではなく、例えば、回分式あるいは連続式のろ過、遠心分離、圧搾脱水、蒸発乾燥、溶媒抽出、あるいは沈降分離に類する固液分離法が所望の濃度まで濃縮でき、顔料粒子を変質させない点で特に好ましい。濃縮はかならずしも一回の操作で終了する必要はなく、同じ手法を複数回繰り返して、あるいは複数の手法を組み合わせて段階的に濃縮を行ってもよい。また、一旦濃縮(第1濃縮)した顔料分散物を前述の溶媒置換のように再度希釈し、その後再濃縮(第2濃縮)することで目的の顔料濃度を持つ分散物を得てもよい。
【0153】
ろ過としては、一般的なろ紙を用いた吸引ろ過のほかに、加圧ろ過、真空ろ過、クロスフローろ過などであってもよい。使用するフィルタについても紙、布、高分子、不織布、セラミック、金属などを材質とした、ディスク型、カートリッジ型など種々のフィルタエレメントを目的により用いてよい。これらの手法の中では、より微細な粒子を高速にろ過できることから、限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いた加圧ろ過や、メンブレンフィルタを用いたクロスフローろ過が好ましい。
【0154】
限外ろ過による場合、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することができる。リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13 122(1975)およびNo.16 351(1977)が知られている。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的のナノ顔料粒子分散物を処理する上では、粒子の凝集を抑えるために最適条件を見いだすことが好ましい。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。こうして補充する溶媒には、通常イオン交換または蒸留して得られた純水を用いるが、純水の中に分散剤、分散剤の貧溶媒を混合してもよいし、ナノ粒子分散物に直接添加してもよい。
【0155】
限外ろ過膜は、すでにモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)社、ダイセル化学(株)社、(株)東レ社、(株)日東電工社などから市販されているが、総膜面積や洗浄性の観点より、スパイラル型もしくは中空糸型が好ましい。また、膜を透過することができる成分のしきい値の指標となる分画分子量は、用いられる分散剤の分子量より決定する必要があるが、5,000以上50,000以下のものが好ましく、5,000以上15,000以下のものがより好ましい。
【0156】
遠心分離としては、一般的な遠心機を用いた遠心沈降分離のほかに、有孔壁による遠心ろ過、フィルタによる遠心ろ過、無孔壁による遠心脱水、スキミングなどを用いることができる。これらの中では、より微細な粒子をろ過できることから、フィルタによる遠心ろ過が好ましい。
【0157】
遠心分離についてどのような装置を用いてもよいが、例えば、汎用の装置(例えば、(株)コクサン製H130A型遠心分離機)の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)を有するものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。
遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
【0158】
圧搾脱水としては、ろ布内に分散物を充填して圧搾するスクイーザー(例えば、(株)栗田機械製作所製KM73型脱水機)やフィルタープレス機を用いた脱水法のほか、生成する顔料分散物の性状を損なわないものであれば、ろ室内の分散物を直接圧搾する手法であってもよい。
圧搾条件に関して特に制約はないが、顔料の過度の乾燥を防止する観点から、操作温度は0℃〜80℃が好ましく、10℃〜30℃が特に好ましい。圧搾圧については、使用する機器に対して好適であれば特に制約されない。
【0159】
乾燥としては、凍結による乾燥、減圧による乾燥、加熱による乾燥、あるいはこれらを組み合わせてもよい。
【0160】
凍結乾燥の方法は特に限定されず、当業者が利用可能な方法であればいかなるものを採用してもよい。例えば、冷媒直膨方法、重複冷凍方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、間接加熱凍結方法が挙げられるが、好ましくは冷媒直膨方法、間接加熱凍結方法、より好ましくは間接加熱凍結方法を用いるのがよい。いずれの方法においても、予備凍結を行なった後凍結乾燥を行なうことが好ましい。予備凍結の条件は特に限定されないが、凍結乾燥を行なう試料がまんべんなく凍結されている必要がある。
【0161】
間接加熱凍結方法の装置としては、小型凍結乾燥機、FTS凍結乾燥機、LYOVAC凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、三重熱交換真空凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、HULL凍結乾燥機が挙げられるが、好ましくは小型凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、より好ましくは小型凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機を用いるのがよい。
【0162】
凍結乾燥の温度は特に限定されないが、例えば−190〜−4℃、好ましくは−120〜−20℃、より好ましくは−80〜−60℃程度である。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、当業者が適宜選択可能であるが、例えば、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、さらに好ましくは、5〜10Pa程度で行なうのがよい。凍結乾燥時間は、例えば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間程度である。もっとも、これらの条件は当業者に適宜選択可能である。凍結乾燥方法については、例えば、製剤機械技術ハンドブック:製剤機械技術研究会編、地人書館、p.120−129(2000年9月);真空ハンドブック:日本真空技術株式会社編、オーム社、p.328−331(1992年);凍結及び乾燥研究会会誌:伊藤孝治他、No.15、p.82(1965)などを参照することができる。
【0163】
減圧乾燥装置は特に制限はないが、例えば、汎用の真空乾燥器およびロータリーポンプや、液を撹拌しながら加熱減圧乾燥できる装置、液を加熱減圧した管中に通すことによって連続的に乾燥ができる装置等が挙げられる。
加熱減圧乾燥温度は30〜230℃が好ましく、35〜200℃がより好ましく、40〜180℃が特に好ましい。減圧時の圧力は、100〜100000Paが好ましく、300〜90000Paがより好ましく、500〜80000Paが特に好ましい。
【0164】
加熱乾燥の装置としては、通常の装置を単体であるいは組み合わせて用いることができる。例えば、熱風を用いる乾燥機としては棚型乾燥機、バンド乾燥機、撹拌乾燥機、流動層乾燥機、噴霧乾燥機、気流乾燥機など、熱伝導を利用する乾燥機としてはドラム乾燥機、多重管乾燥機、円筒乾燥機、スクリュー乾燥機などが好適に用いられる。また、溶媒組成によっては凍結乾燥機や赤外線乾燥機も使用することが可能である。これらの装置の中では、撹拌乾燥機、円筒乾燥機、スクリュー乾燥機などが好ましく用いられる。
乾燥条件については、溶媒を蒸発させることが可能であり、かつ顔料や分散剤などの材料が変性しない範囲であれば特に制約されない。ただし使用する溶媒種によっては、許される温度範囲では乾燥速度が遅くなることも考えられるため、その際は乾燥速度を増加させる目的で、乾燥機の種類によって減圧、撹拌混合、多段化などの手段を組み合わせることが可能である。
上記の装置は単体で用いることはもちろん、効率を向上させる目的で複数の装置を組み合わせてもよい。
【0165】
溶媒抽出に用いる溶媒は特に限定されず、分散物との相溶性が低く、かつ顔料粒子に対して適度の親和性を持つ溶媒であればよい。静置後に明瞭な界面を形成する溶媒であることが好ましい。該溶媒を用いて抽出する場合の使用量、添加条件についても特に制約はない。
【0166】
濃縮抽出に用いられる抽出溶媒は特に限定されないが、ナノ粒子分散液の分散溶媒(例えば、水性溶媒)と実質的に混じり合わず(本発明において、実質的に混じり合わずとは、相溶性が低いことをいい、溶解量50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この溶解量に特に下限はないが、通常の溶媒の溶解性を考慮すると1質量%以上であることが実際的である。混合後、静置すると界面を形成する溶媒であることが好ましい。また、この抽出溶媒は、ナノ粒子が抽出溶媒中で再分散しうる弱い凝集(ミリングまたは高速撹拌などの高いせん断力を加えなくても再分散が可能であるフロック)を生ずる溶媒であることが好ましい。このような状態であれば、粒子サイズを変化させる強固な凝集を起こさず、目的のナノ顔料粒子を抽出溶媒で湿潤させる一方、フィルタろ過などにより容易に水などの分散溶媒を除去することができる点で好ましい。抽出溶媒としてはエステル化合物溶媒、アルコール化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましく、エステル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒または脂肪族化合物溶媒がより好ましく、エステル化合物溶媒が特に好ましい。
【0167】
エステル化合物溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール化合物溶媒としては、例えば、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。また、抽出溶媒は上記の好ましい溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
【0168】
抽出溶媒の量はナノ粒子を抽出できれば特に制約されないが、濃縮して抽出することを考慮してナノ粒子分散液より少量であることが好ましい。これを体積比で示すと、ナノ粒子分散液を100としたとき、添加される抽出溶媒は1〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜90の範囲であり、20〜80の範囲が特に好ましい。多すぎると濃縮化に多大な時間を要し、少なすぎると抽出が不十分で分散溶媒中にナノ粒子が残存する。
抽出溶媒を添加した後、分散液と十分に接触するように撹拌混合することが好ましい。撹拌混合は通常の方法を用いることができる。抽出溶媒を添加し混合するときの温度に特に制約はないが、1〜100℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。抽出溶媒の添加、混合はそれぞれの工程を好ましく実施できるものであればどのような装置を用いてもよいが、例えば、分液ロート型の装置を用いて実施できる。
【0169】
ナノ粒子分散液の分散溶媒と濃縮抽出液を分離するため、フィルタろ過することが好ましい。フィルタろ過の装置は、例えば、加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどが挙げられる。フィルタろ過により、残された分散溶媒の除去を行い、濃縮抽出液中のナノ粒子をさらに濃縮して濃縮ナノ粒子液とすることが好ましい。
【0170】
沈降分離としては、デカンテーション、分液ロートによる分離のほか、重力によって粒子を沈降させ、濃厚部分のみを分離して取り出すことができれば特に制約はない。
【0171】
本発明の製造方法によれば、必要に応じて、濃縮により、凝集状態にある有機粒子を再分散することができる。
上述した抽出溶媒、遠心分離、乾燥などにより濃縮化した有機顔料粒子液に含まれる有機顔料粒子は、通常、その濃縮化により凝集をおこしている。このとき再度良好な分散状態を得るためには、再分散可能な程度に凝集させたフロックとして得ることが好ましい。
そのため、通常の分散化方法を用いて分散化した程度では微粒子化に不十分であり、さらに微細化効率の高い方法が必要となる場合がある。このようなときにおいても上述した質量平均分子量1000以上の高分子化合物を含有させたため、例えば後述する第4溶媒により有機顔料粒子を好適に再分散させることができる。
【0172】
濃縮後の顔料分散物における顔料濃度は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。これは先に述べた第1濃縮及び第2濃縮について同様である。濃度の上限については特に制約は無いが、濃縮度が高くなるにつれて顔料粒子の凝集が起こりやすくなるほか、濃縮に時間がかかることがあるため、実用上は90質量%以下が好ましい。
【0173】
本発明の製造方法においては、第3溶媒による溶媒置換の後、その溶媒分を除去して濃縮し、その濃縮液に第4溶媒を導入することが好ましい。すなわち、第3溶媒による溶媒置換後、再度第4溶媒により溶媒置換することが好ましい。第4溶媒は、水系溶媒、有機溶媒のいずれも使用することが可能であり、顔料分散物の用途に応じて好ましい溶媒を選択してよい。水系溶媒としては、水、酸およびアルカリの水溶液などが挙げられる。有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒、エステル化合物溶媒などが挙げられる。
【0174】
第4溶媒として例えば、エステル化合物、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素化合物、例えばトルエン、キシレシ等が挙げられる。これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0175】
また沸点が180℃〜250℃である高沸点溶剤を必要によって使用することができる、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、ブチルラクテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−エチルヘキシルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γブチルラクトン、トリプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコール−n−ブチルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールジアセテートなどが挙げられる。
【0176】
第4溶媒の含有量は特に限定されないが、第4溶媒を添加した後の分散物全量に対して第4溶媒を10〜95質量%とすることが好まく、20〜90質量%とすることがより好ましい。なお第4溶媒は後述する着色感光性樹脂組成物に含有させる樹脂組成物用溶媒として用いてもよい。
【0177】
溶媒置換時あるいは第4溶媒を添加して再分散させるとき、すなわち前工程にて濃縮したナノ顔料粒子を再分散させる必要がある場合、例えば超音波による分散機や、物理的剪断力により分散する分散機を用いることができる。
用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(顔料分散技術−表面処理と分散剤の使い方および分散性評価−技術情報協会 1999参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましく、5〜30℃が特に好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
剪断力を加えて濃縮した顔料ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。液温の調節に関しては、超音波照射による方式と同一のものが使用でき、好ましい温度も同様である。
これらの機器は単体で用いても、組み合わせて使用しても良く、例えばディゾルバで仮分散を行い、ビーズミルで微分散を行うような使い方も可能である。前工程で作成された濃縮物の分散に対する難易度と、分散後に要求される粒子径に応じて使用する機器を選定することができる。
【0178】
本発明のカラーフィルタを形成する透明基板としては、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板を用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレート、トリ酢酸セルロース、ポリスチレン、ポリカーボネイト等の公知の樹脂フィルムを用いてもよい。
上記基板は、予めカップリング処理を施しておくことにより、着色感光性樹脂組成物、又は感光性樹脂転写材料との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、700〜1200μmが一般的に好ましく、500〜1100μmが特に好ましい。
【0179】
基板上に着色層を形成する態様としては、カラーフィルタの作製法として通常のものであれば特に限定されない。例えば、スピンコータやスリットコータ、ロールコータ、あるいはこれらに類似の装置を用いて塗布することで感光性樹脂層を基板上に形成し、その後露光/現像する、という工程を色の数だけ繰り返すことにより、カラーフィルタを得ることができる(具体的には、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリット状ノズル、及びスリットコータが好適に用いられる。)。さらに、一旦、上記着色感光性樹脂組成物により仮支持体上に感光性樹脂層を形成し、それをラミネータにて基板上に転写した後に露光/現像して着色層を形成する手法や、いわゆるインクジェット方式によって基板上に着色層を形成する手段も好適に用いられる。
【0180】
着色感光性樹脂組成物とするときに用いられるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0181】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは(モノマー又はオリゴマーとしては、分子量200〜1,000のものが好ましい。)、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0182】
本発明のカラーフィルタは、前記の顔料ナノ粒子分散物を少なくとも1種類使用してなるものであれば、用途に応じて単一の色相のみを持つものであっても、あるいは例えば黒色、赤色、青色、緑色のように4種の異なる色相を持つものでもよい。また、フィルタとなる場合の基板上における着色層のパターンについても制限されるものではなく、例えば赤色、青色、緑色のパターンを黒色層からなるブラックマトリクスで区分したパターンとしてもよい。該着色層の形成については、光に述べた態様のうち、所望のパターンを得るのに適した任意の態様を用いることができる。
【0183】
本発明のカラーフィルタは高いコントラスト比を持つことを特徴としており、これ を備えた液晶表示装置について特に方式の限定はなく、VA方式、IPS方式などの表示形式の表示装置とすることができる。
【実施例】
【0184】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0185】
(実施例1・比較例1)
ジメチルスルホキシド(第1溶媒)(和光純薬工業(株)社製)1,000mLに、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液(和光純薬工業(株)社製)20mL、C.I.ピグメント・レッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、イルガフォア・レッド BT−CF)20,000mg、ポリビニルピロリドンK25(和光純薬工業(株)社製、質量平均分子量35,000)45,000mgを添加し顔料溶液を調製した。
これとは別に貧溶媒(第2溶媒)として、1N塩酸(和光純薬工業(株)社製)2,000mLを含有したイオン交換水10,000mLを用意した。この貧溶媒を25℃に温度コントロールし、4枚羽根プロペラにより500rpmで攪拌しつつ、前述の顔料溶液を無脈流ポンプを用いて流速100mL/min.で全量注入することにより、顔料濃度0.18質量%の顔料ナノ粒子分散液を調製した。
この顔料粒子分散液を、ポリプロピレンろ布をセットした遠心ろ過機((株)コクサン製H110A)を用いて遠心ろ過し(第1濃縮)、顔料濃度12質量%の顔料分散物を得た。
【0186】
次に、前記の一般式(1)で表される高分子化合物(C−1)20,000mgを乳酸エチル(第3溶媒)(和光純薬工業(株)社製)50,000mLに溶解させた高分子溶液を用意した。上述の濃縮した顔料分散物80,000mgをこの高分子溶液に投入し、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所社製US−300T)を用いて分散した。その後、孔径0.1μmのPTFEフィルタ(住友電工ファインポリマー(株)社製FP−010)を用いて吸引ろ過し(第2濃縮)、顔料濃度20質量%のペースト状顔料分散物(1)を得た。
【0187】
高分子化合物として(C−18)20,000mgを使用した以外は、顔料分散物(1)と同様にして顔料分散物(2)を作製した。
【0188】
第3溶媒を乳酸エチル25,000mLと酢酸エチル(和光純薬工業(株)社製)25,000mLとの混合溶媒とした以外は、顔料分散物(1)と同様にして顔料分散物(3)を作製した。
【0189】
顔料分散物(1)と同様にして溶媒置換後、超音波ホモジナイザーで分散した分散液を濃縮(第2濃縮)するにつき、100℃に設定したオーブン(ヤマト科学(株)社製DN410I)内で、窒素環境下で乾燥した。時折取り出して撹拌しつつ乾燥を続け、顔料濃度21質量%の顔料分散物(4)を得た。
【0190】
顔料分散物(1)と同様にして溶媒置換後、超音波ホモジナイザーで分散した分散液を濃縮(第2濃縮)するにつき、遠心分離機((株)コクサン社製H−40F)にて10,000rpmで遠心処理し、上澄みを除去することで顔料濃度14質量%の顔料分散物(5)を得た。
【0191】
顔料分散物(1)の場合と同様にして、顔料濃度0.18質量%の顔料ナノ粒子分散液を作製した。次に、一般式(1)で表される高分子化合物(C−1)400mgを酢酸エチル(第3溶媒)1,000mLに溶解させた高分子溶液を用意した。顔料分散液1,000mlに対しこの高分子酢酸エチル溶液800mlを加え、15℃に保った状態で350rpmで30分間撹拌した後1日静置し、顔料粒子を酢酸エチルに抽出し(第2濃縮)濃縮抽出液とした。
この濃縮抽出液を、孔径0.1μmのPTFEフィルタを用いてろ過することにより、顔料濃度26%の顔料分散物(6)を得た。
【0192】
顔料分散物(1)と同様にして溶媒置換後、超音波ホモジナイザーで分散した分散液を濃縮するにつき、密栓したガラス容器に入れて25℃に保った状態で4週間静置し(第2濃縮)、上澄みを除去することで顔料濃度11質量%の顔料分散物(7)を得た。
【0193】
顔料分散物(5)と同様にして溶媒置換後、超音波ホモジナイザーで分散した分散液を、遠心分離機にて10,000rpmで遠心処理し、上澄みを除去することで顔料濃度14質量%まで濃縮した。さらに、この濃縮物を100℃に設定したオーブン内で、窒素環境下で乾燥した(第2濃縮)。時折取り出して撹拌しつつ乾燥を続け、顔料濃度28質量%の顔料分散物(8)を得た。
【0194】
高分子化合物としてメタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体(モル比30/70、重量平均分子量15,000)20,000mgを使用した以外は、顔料分散物(1)と同様にして顔料濃度22質量%の顔料分散物(9)を得た。
【0195】
顔料分散物(1)と同様にして顔料濃度0.18質量%の顔料ナノ粒子分散液を調製した後、遠心ろ過機で濃縮し、顔料濃度12質量%の顔料分散物を得た。
この顔料分散物80,000mgを乳酸エチル50,000mLに超音波ホモジナイザーを用いて分散した後、孔径0.1μmのPTFEフィルタを用いて吸引ろ過し、顔料濃度19質量%のペースト状顔料分散物(A)を得た。
【0196】
顔料分散物(1)と同様にして顔料濃度0.18質量%の顔料ナノ粒子分散液を調製した後、調製した有機顔料粒子分散液に500mlの2−(1−メトキシ)プロピルアセテート(和光純薬工業(株)社製)を加えて25℃で10分間、500rpmで撹拌した後1日静置し、顔料粒子を2−(1−メトキシ)プロピルアセテート相に抽出し、濃縮抽出液とした。この濃縮抽出液を、孔径0.1μmのPTFEフィルタを用いてろ過することにより、ぺースト状の濃縮顔料(顔料濃度31質量%)を得た。
このペースト状顔料分散物と高分子化合物(C−1)とを質量比2:1でニーダー((株)日本精機製作所社製NSV−1)に仕込み、2時間混練することで、顔料濃度21質量%の顔料分散物(B)を得た。
【0197】
双腕型ニーダー((株)モリヤマ社製S1−1)にC.I.ピグメントレッド254を80,000mg、塩化ナトリウムを80,000mg、高分子化合物(C−1)を80,000mg仕込み、80℃で15時間混練した。混練後80℃の1質量%塩酸水溶液500部に取り出し、1時間攪拌後、ろ過することで顔料濃度22質量%の顔料分散物(C)を得た。
【0198】
作製した顔料分散物の性能評価を行った。評価項目は、(i)顔料粒子について、カラーフィルタ用の色材として用いた場合に色の鮮やかさに影響するその分散度の指標として膜試料のコントラストを測定し、(ii)取り扱いの容易さに影響する顔料粒子分散液の安定性の指標として増粘幅の測定を行った。
【0199】
[コントラスト測定]
顔料分散物(1)〜(6)及び(A)〜(C)にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えてそれぞれ顔料濃度10質量%となるように調整し、超音波ホモジナイザーで分散した。こうして作製した10質量%顔料分散液をそれぞれ顔料分散液(1)〜(6)及び(A)〜(C)とした。これをスピンコーター(ミカサ社製1H−D7)を用いて75mm×75mmのガラス基板上に厚みが2μmとなるように塗布し、ホットプレートで100℃で2分乾燥することにより、膜試料(1)〜(6)及び(A)〜(C)を作製した。各膜試料について下記のとおりにしてコントラスト及び分散安定性を測定した。
【0200】
バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518)の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/mになるように設定した。
【0201】
[分散性の経時安定性(増粘幅)の測定]
顔料分散物(1)〜(6)及び(A)〜(C)の作製直後に測定した粘度と、20℃に保持した状態で36時間静置後に測定した粘度を比較し、その差(増粘幅)をそれぞれ求めることで分散性の経時安定性を評価した。なお、粘度測定には振動粘度計((株)CBCマテリアルズ社製VM−10A)を用いた。
【0202】
[表1]分散度(コントラスト)および安定性(増粘幅)評価
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料分散物 膜試料のコントラスト 増粘幅[mPa・s]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1) 21,200 11.3
(2) 18,560 12.2
(3) 19,760 9.1
(4) 17,420 8.7
(5) 18,090 22.1
(6) 11,660 7.6
(7) 17,010 60.4
(8) 20,500 5.1
(9) 12,220 15.1
(A) 610 −
(B) 12,840 18.7
(C) 5,760 27.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0203】
表1に示したとおり、本発明の製造方法で製造した顔料分散物よりなる顔料分散液(1)〜(6)は、高分子化合物を使用しなかったもの(A)、抽出による濃縮を行った後に高分子化合物を添加したもの(B)、ミリングによって顔料粒子と高分子分散剤とを混練した分散物(C)と比べて概して高いコントラストを示した。このことからカラーフィルタにしたときに黒のしまり等に優れた良好な画像表示特性を示しうることが分かる。
また、顔料分散物の経時安定性を比較すると、本発明の製造方法により製造した顔料分散物(1)〜(6)よりなる顔料分散液(1)〜(6)は、顔料分散物(A)〜(C)よりなる顔料分散液(A)〜(C)と比べて増粘幅が小さく高い分散安定性を示した(高分子化合物を使用しなかった顔料分散物(A)は36時間後にかなりの粒子が沈降しており、比較できないため測定を行わなかった。また、顔料分散液(5)と(7)に対して、顔料分散液(1)〜(4)、(6)、(8)〜(9)は分散安定性がより良好であった。その理由は明らかではないが、顔料分散物(5)と(7)では沈降によって顔料を濃縮したが、その濃縮物の顔料濃度が低めであったことが寄与していると考えられる。)。
これらの結果より、本発明の製造方法によれば、カラーフィルタ用の色材として用いた場合に高いコントラストを示し、かつ高い経時安定性を有する優れた顔料ナノ粒子分散物が得られることが分かる。
【0204】
(実施例2・比較例2)
[カラーフィルタ(スリット状ノズルを用いた塗布による作製)および液晶表示装置の作製]
《ブラック(K)画像の形成》
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃で3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・ジャパン社製、商品名:MH−1600)にて、下記表に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、EBR(エッジ・ビード・リムーバー)にて基板周囲の不要な塗布液を除去し、120℃3分間プリベークして膜厚2.4μmの感光性樹脂層K1を得た。
【0205】
着色感光性樹脂組成物K1は、まず表に記載の量のカーボンブラック、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液(DPHA液)、重合開始剤2、界面活性剤をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で、150rpmで30分間攪拌することによって得た。なお、以下に示す感光性樹脂組成物R1、G1、B1についても同様の手順で調製した。
【0206】
[表2]着色感光性樹脂組成物K1 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カーボンブラック 28
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.5
メチルエチルケトン 47
バインダー 10
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 4.5
重合開始剤2 0.182
界面活性剤 0.041
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<重合開始剤2>
2,4−ビス(トリクロロメチル)―6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチルアミノ)−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン
<バインダー>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
(=40/25/35[モル比])のランダム共重合物、Mn:42,000:25部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:75部
<ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA:70部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:30部
<界面活性剤>
・下記構造物1:24部
・メチルエチルケトン:76部
【0207】
【化42】

【0208】
超高圧水銀灯を有すプロキシミティ型露光機(日立電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量300mJ/cmでパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)にて23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、ブラック(K)の画像Kを得た。引き続き、220℃で30分間熱処理した。
【0209】
《レッド(R)画素の形成》
前記画像Kを形成した基板に、下記表に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物R1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Rを形成した。
該感光性樹脂層R1膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.80
【0210】
[表3]着色感光性樹脂組成物R1 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料組成物A(CIPR254) 50
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.5
メチルエチルケトン 34
バインダー 0.53
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.42
重合開始剤1 0.13
重合開始剤2 0.044
フェノチアジン 0.014
界面活性剤 0.09
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0211】
<R顔料組成物A>
・顔料分散液(1) 8質量部
・分散剤(一般式(D1)で表される化合物)(7) 0.8質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 8質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(第4溶媒) 83質量部
なお、顔料分散液(1)は比較例1にて作製したものと同一であり、以降の実施・比較例においても断りなき場合同一のものを使用する。
<重合開始剤1>
2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾール
【0212】
《グリーン(G)画素の形成》
前記画像Kと画素Rを形成した基板に、下記表に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物G1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Gを形成した。該感光性樹脂層G1膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
【0213】
[表4]着色感光性樹脂組成物G1 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料組成物1(CIPG36) 28.5
Y顔料組成物1(CIPY150) 15.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29.8
メチルエチルケトン 25.5
シクロヘキサノン 1.1
バインダー 2.1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.7
重合開始剤1 0.13
重合開始剤2 0.054
フェノチアジン 0.044
界面活性剤 0.067
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0214】
<G顔料分散物1>
・C.I.P.G.36 18質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 12質量部
・シクロヘキサノン 35質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 35質量部
<Y顔料分散物1>
御国色素(株)社製の「商品名:CFエローEX3393」
【0215】
《ブルー(B)画素の形成》
前記画像K、画素R及び画素Gを形成した基板に、下記表に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物B1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Bを形成し、カラーフィルタ(101)を得た。
該感光性樹脂層B1膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.67
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.075
【0216】
[表5]着色感光性樹脂組成物B1 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料組成物1(CIPB15:6) 8.5
B顔料組成物2(CIPB15:6、CIPV23) 15.3
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29.0
メチルエチルケトン 24
バインダー 16.6
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 4.0
重合開始剤1 0.133
重合開始剤2 0.024
フェノチアジン 0.019
界面活性剤 0.066
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0217】
<B顔料分散物1>
御国色素(株)社製の「商品名:CFブルーEX3357」
<B顔料分散物2>
御国色素(株)社製の「商品名:CFブルーEX3383」
【0218】
カラーフィルタ(101)の作製に用いた顔料分散液(1)に代え、顔料分散液(2)〜(9)及び(A)〜(C)を用いた以外同様にして、カラーフィルタ(102)〜(109)及び(10A)〜(10C)をそれぞれ作製した。
【0219】
《液晶表示装置の作製及び評価》
上記カラーフィルタ(101)〜(109)及び(10A)〜(10C)を用い、下記のとおりMVAモードの液晶表示装置(101)〜(109)及び(10A)〜(10C)をそれぞれ作製し画質評価を行った。
【0220】
(ITO電極の形成)
カラーフィルタが形成されたガラス基板をスパッタ装置に入れて、100℃で1300Å厚さのITO(インヂウム錫酸化物)を全面真空蒸着した後、240℃で90分間アニールしてITOを結晶化し、ITO透明電極を形成した。
(スペーサの形成)
特開2004−240335号公報の[実施例1]に記載のスペーサ形成方法と同様の方法で、上記で作製したITO透明電極上にスペーサを形成した。
(液晶配向制御用突起の形成)
下記のポジ型感光性樹脂層用塗布液を用いて、前記スペーサを形成したITO透明電極上に液晶配向制御用突起を形成した。但し、露光、現像、及び、ベーク工程は、以下の方法を用いた。所定のフォトマスクが感光性樹脂層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティ露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cmでプロキシミティ露光した。続いて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間基板に噴霧しながら現像した。こうして、感光性樹脂層の不要部(露光部)を現像除去することにより、カラーフィルタ側基板上に、所望の形状にパターニングされた感光性樹脂層よりなる液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を得た。次いで、該液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を230℃下で30分ベークすることにより、液晶表示装置用基板上に硬化された液晶配向制御用突起を形成した。
<ポジ型感光性樹脂層用塗布液処方>
・ポジ型レジスト液(富士フイルムエレクトロニクス
マテリアルズ(株)社製FH−2413F) : 53.3質量部
・メチルエチルケトン : 46.7質量部
・メガファックF−780F(大日本インキ化学工業(株)社製):0.04質量部
【0221】
上記で得られた液晶表示装置用基板上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置にエポキシ樹脂のシール剤を印刷すると共に、MVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板を熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0222】
被験者10人に装置番号を見せずにランダムに並べた上記液晶表示装置(101)〜(109)及び(10A)〜(10C)をそれぞれ見せた。黒のしまり及び色鮮やかさに関して画質が最も良いものから順に、相対評価で12点から1点までの点数をつけさせた。得られた点数をそれぞれの液晶表示装置について合計して画質評価結果とした。結果を表6に示す。なお合計点数が高い方が好ましいことは言うまでも無いが、最低基準として20点以上であれば通常の家庭用の液晶表示装置として要求を満足するレベルである。
【0223】
[表6]液晶表示装置の画質評価結果
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
液晶表示装置 評価結果(合計点数)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(101) 99
(102) 78
(103) 95
(104) 69
(105) 67
(106) 51
(107) 85
(108) 97
(109) 55
(10A) 10
(10B) 48
(10C) 23
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0224】
表6に示したとおり、本発明の製造方法により製造した顔料ナノ粒子分散物を用いた液晶表示装置(101)〜(109)は、比較のための液晶表示装置(10A)〜(10C)に対し、概して高画質を実現した。この結果より、本発明によれば、分散物の優れた特性を維持して、液晶表示装置として実際に表示させたときにも良好な画像表示性能を発揮しうることが分かる。
【0225】
(実施例3・比較例3)
[カラーフィルタ(感光性樹脂転写材料のラミネートによる作製)および液晶表示装置の作製]
《感光性樹脂転写材料の作製》
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記処方P1から成る中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、前記着色感光性樹脂組成物K1を塗布、乾燥させ、該仮支持体の上に乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.4μmの感光性樹脂層を設け、最後に保護フイルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着した。
こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)とブラック(K)の感光性樹脂層とが一体となった感光性樹脂転写材料を作製し、作製したものを感光性樹脂転写材料K2とした。
※感光性樹脂転写材料K1は本特許の実施例では存在しないが、サンプル名の把握しやすさのためここで作製したサンプルをK2とした。
【0226】
<熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1>
・メタノール 11.4質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.40質量部
・メチルエチルケトン 55.1質量部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジル
メタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=50/17/6/27、
分子量:9.5万、Tg:約70℃) 5.77質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)
=65/35、分子量:1万、Tg:約100℃) 14.2質量部
・ビスフェノールAにペンタエチレングリコールモノメタクリレートを
2当量脱水縮合した化合物(新中村化学工業(株)社製、
商品名:2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)
フェニル]プロパン) 10質量部
・界面活性剤 0.5質量部
なお、界面活性剤は表2に記載のものと同じである。
【0227】
<中間層用塗布液:処方P1>
・PVA205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ社製、
ケン化度=88%、重合度550) 32.2質量部
・ポリビニルピロリドン(和光純薬工業(株)社製、
K−25) 17.1質量部
・蒸留水 530質量部
・メタノール 417質量部
【0228】
次に、前記感光性樹脂転写材料K2の作製において用いた着色感光性樹脂組成物K1を、下記表7〜9に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物R2、G2及びB2に変更し、それ以外は上記と同様の方法により、感光性樹脂転写材料R2、G2及びB2を作製した。尚、着色感光性樹脂組成物R2、G2及びB2の調製方法は、それぞれ前記着色感光性樹脂組成物R1、G1及びB1の調製方法に準ずる。
【0229】
[表7]着色感光性樹脂組成物R2 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料組成物A(CIPR254) 50
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.5
メチルエチルケトン 34
バインダー 0.53
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.42
重合開始剤1 0.13
重合開始剤2 0.044
フェノチアジン 0.014
添加剤 0.58
界面活性剤 0.09
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
なお、表7に記載の組成物の内、添加剤は、燐酸エステル系特殊活性剤(楠本化成(株)社製、商品名:HIPLAAD ED152)を用いた。また、R顔料組成物A、バインダー、重合開始剤1および2は、表2及び表3に記載のものと同じである。
【0230】
[表8]着色感光性樹脂組成物G2 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料組成物1(CIPG36) 28.5
Y顔料組成物1(CIPY150) 15.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29.8
メチルエチルケトン 25.5
シクロヘキサノン 1.2
バインダー 2.5
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.6
重合開始剤1 0.1
重合開始剤2 0.055
フェノチアジン 0.046
界面活性剤 0.063
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
なお、G顔料組成物1、Y顔料組成物1は表4に記載のものに同じである。
【0231】
[表9]着色感光性樹脂組成物B2 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
前記B顔料組成物1(CIPB15:6) 8.5
前記B顔料組成物2(CIPB15:6、CIPV23) 15.3
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29.2
メチルエチルケトン 22。5
バインダー 16.2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 4.1
重合開始剤1 0.13
重合開始剤2 0.026
フェノチアジン 0.02
界面活性剤 0.066
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
なお、B顔料組成物1および2は表5に記載のものに同じである。
【0232】
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱し、次のラミネータに送った。
前記感光性樹脂転写材料K2の保護フイルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃に加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した。
【0233】
次に、トリエタノールアミン系現像液(商品名「T−PD2」(富士写真フイルム社製)を純水で12倍に希釈した液)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(商品名「T−CD1」(富士写真フイルム社製)を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像しパターニング画像を得た。
引き続き洗浄剤(商品名「T−SD3(富士写真フイルム社製)」を純水で10倍に希釈した液)を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、ブラック(K)の画像を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cmの光でポスト露光後、220℃、15分熱処理した。
この画像Kを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0234】
〔レッド(R)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料R2を用い、前記感光性樹脂転写材料K1と同様の工程で、熱処理済みのレッド(R)の画素Rを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は35℃35秒とした。該感光性樹脂層R2の膜厚及び顔料(C.I.P.R.254)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.90
この画像K、及び画素Rを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0235】
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料G2を用い、前記感光性樹脂転写材料R2と同様の工程で、熱処理済みのグリーン(G)の画素Gを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は34℃45秒とした。該感光性樹脂層G101の膜厚及び顔料(C.I.P.G.36及びC.I.P.Y.150)の塗布量を表以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
この画像K、画素R、および画素Gを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0236】
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料B2を用い、前記感光性樹脂転写材料R2と同様の工程で、熱処理済みのブルー(B)の画素Bを得た。但し露光量は30mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は36℃40秒とした。該感光性樹脂層B101の膜厚及び顔料(C.I.P.B.15:6及びC.I.P.V.23)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
この画素R、画素G、画素B、および画像Kを形成した基板を240℃で50分ベークしてカラーフィルタを作製し、作製したフィルタを(201)とした。
【0237】
カラーフィルタ(201)の作製に用いた顔料分散液(1)に代え、顔料分散液(2)〜(9)及び(A)〜(C)を用いた以外同様にして、カラーフィルタ(202)〜(209)及び(20A)〜(20C)をそれぞれ作製した。
【0238】
《液晶表示装置の作製及び評価》
カラーフィルタ(201)〜(209)及び(20A)〜(20C)を用いて、実施例2・比較例2に記載の手法と同様にしてMVAモード液晶表示装置(201)〜(209)及び(20A)〜(20C)をそれぞれ作製し、実施例2・比較例2に記載の方法で画質評価を行った。結果を表9に示す。
【0239】
[表9]液晶表示装置の画質評価結果
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
液晶表示装置 評価結果(合計点数)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(201) 89
(202) 83
(203) 94
(204) 69
(205) 69
(206) 69
(207) 75
(208) 96
(209) 55
(20A) 10
(20B) 47
(20C) 24
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0240】
表9に示されるように、スリットコータによりカラーフィルタを作製した比較例2と同様、本発明の製造方法により製造した顔料ナノ粒子分散物を用いた液晶表示装置(201)〜(209)は、高い画質を実現することが可能であった。
【0241】
(実施例4・比較例4)
[インクジェットインク、カラーフィルタ(インクジェット法による作製)および液晶表示装置の作製]
《感光性樹脂転写材料の作製》
着色感光性樹脂組成物として表10に示される着色感光性樹脂組成物K3を用いたほかは、実施例3・比較例3に記載の処方と同様にして感光性樹脂転写材料を作製し、作製したものを感光性樹脂転写材料K3とした。
【0242】
[表10]着色感光性樹脂組成物K3 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散物3 30
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.3
メチルエチルケトン 34
シクロヘキサノン 8.6
バインダー 14
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 5.8
重合開始剤2 0.22
フェノチアジン 0.006
界面活性剤 0.058
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0243】
表10に記載の組成物の内、K顔料分散物3の組成は以下の通りである
・カーボンブラック(デグッサ社製、商品名Nipex35) 13.1質量部
・前記顔料分散剤A 0.65質量部
・バインダー 6.72質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53質量部
なお、表10内およびK顔料分散物3に使用のバインダーは表2に記載のものと同じである。また、重合開始剤2および界面活性剤も表2に記載のものと同じである。
【0244】
〔遮光性を有する隔壁の形成〕
実施例3・比較例3の[ブラック(K)画像の形成]に記載の手法に従い、洗浄したガラス基板上に感光性樹脂転写材料K3をラミネートした。その後、仮支持体を剥離し、実施例3・比較例3と同様に露光を行った。ただし、露光量は100mJ/cmとした。マスク形状は格子状で、画素と遮光性を有する隔壁との境界線に該当する部分における、遮光性を有する隔壁側に凸な角の曲率半径は0.6μmとした。次いで、実施例3・比較例3と同様にして現像と洗浄、およびポスト露光を行い、遮光性を有する隔壁パターンをガラス基板上に得た。
【0245】
《プラズマ撥水化処理》
遮光性を有する隔壁を形成した前記基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にてプラズマ撥水化処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :95sccm
圧力 :40Pa
RFパワー :50W
処理時間 :30sec
【0246】
《カラーフィルタ用インクジェットインクの調製》
表11〜13に示される処方により赤、緑、青カラーフィルタ用インクジェットインクを調製し、それぞれインクジェットインクR3、G3、B3とした。
【0247】
[表11]インクジェットインクR3 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料組成物B(CIPR254) 49.6
1,3−ブチレングリコールジアセテート(第4溶媒、ダイセル化学工業社製)
8.5
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製、
KAYARAD D330) 4.12
フェノチアジン 0.018
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<R顔料組成物B>
・顔料分散液(1) 9質量部
・分散剤(一般式(D1)で表される化合物)(7) 0.75質量部
・1,3−ブチレングリコールジアセテート 90質量部
【0248】
[表12]インクジェットインクG3 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料組成物1(CIPG36) 28.8
Y顔料組成物1(CIPY150) 15.2
1,3−ブチレングリコールジアセテート(第4溶媒、ダイセル化学工業社製)
9.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.32
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製、
KAYARAD D330) 4.22
フェノチアジン 0.018
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0249】
[表13]インクジェットインクB3 (単位:質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料組成物1(CIPG36) 8.47
Y顔料組成物1(CIPY150) 15.0
1,3−ブチレングリコールジアセテート(第4溶媒、ダイセル化学工業社製)
8.8
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート溶液 3.32
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製、
KAYARAD D330) 4.22
フェノチアジン 0.018
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0250】
上記インクジェットインクR3、G3、B3の各成分の作製は以下のように行った。まず、顔料組成物以外の配合成分と溶剤を攪拌混合して溶解分散し、モノマー溶液を得た。そして、顔料組成物を少量ずつモノマー溶液中に添加しながらディソルバー攪拌し、その後超音波分散機で分散処理することで、インクジェットインクR3、G3、B3をそれぞれ調製した。
【0251】
《画素形成》
調整したインクジェットインクR3、G3、B3を使用し、以下に記載の要領でカラーフィルタを作製した。
インクジェットヘッドとしてDimatix社製SE−128を、吐出制御装置としてDimatix社製 ApolloIIを用いた。インクジェットヘッドを自動2次元移動ステージ(駿河精機(株)社製KS211−200)上に搭載し、[遮光性を有する隔壁の形成]で作製した隔壁の間隙に所定インク量が吐出されるように、ステージを移動させながら吐出制御装置によるヘッドからの吐出を同期させた。上記記載のインクジェットインクR3、G3、B3は各々別のヘッドに充填されており、各ヘッドはXYステージ上に固定され、各々のインクが所定の位置に着弾するように、吐出制御装置により3つのヘッドを独立に制御した。
所望の濃度になるまでインク組成物の吐出を行い、カラーパターンを基板上に作製した。その後100℃に設定したオーブン内で2分間乾燥させた後、230℃に設定したオーブン内で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタを作製した。作製したカラーフィルタを(301)とした。
【0252】
カラーフィルタ(301)の作製に用いた顔料分散液(1)に代え、顔料分散液(2)〜(9)及び(A)〜(C)を用いた以外同様にして、カラーフィルタ(302)〜(309)及び(30A)〜(30C)をそれぞれ作製した。
【0253】
《液晶表示装置の作製及び評価》
カラーフィルタ(301)〜(309)及び(30A)〜(30C)を用いて、実施例2・比較例2の《液晶表示装置の作製及び評価》に記載の手法と同様にしてMVAモード液晶表示装置(301)〜(309)及び(30A)〜(30C)を作製し、画質評価を行った。結果を表14に示す。
[表14]液晶表示装置の画質評価結果
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
液晶表示装置 評価結果(合計点数)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(301) 100
(302) 78
(303) 88
(304) 64
(305) 76
(306) 52
(307) 80
(308) 94
(309) 58
(30A) 10
(30B) 52
(30C) 22
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表14に示されるように、スリットコータによりカラーフィルタを作製した比較例2、転写によりカラーフィルタを作製した比較例3と同様、本発明の製造方法により製造した顔料ナノ粒子分散物を用いた液晶表示装置(301)〜(309)は、(30A)〜(30C)に比較し高い画質を実現することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料をそれに対する良溶媒である第1溶媒に溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となる第2溶媒とを混合し、前記有機顔料をナノ粒子として混合液中に析出させ、次いで、該混合液中の溶媒分を前記第1溶媒および第2溶媒のいずれとも異なる第3溶媒で置換するとともに、その際に質量平均分子量1000以上の高分子化合物を導入することを特徴とする有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項2】
前記高分子化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。

〔式中、Rは(m+n)価の連結基を表し、Rは単結合あるいは2価の連結基を表す。Aは、酸性基、窒素原子を有する塩基性基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、および水酸基からなる群より選ばれる基を有する1価の有機基、または置換基を有してもよい有機色素構造もしくは複素環を含有する1価の有機基を表す。ただし、n個のAは互いに同一であっても、異なっていてもよい。mは1〜8の数を表し、nは2〜9の数を表し、m+nは3〜10を満たす。Pは高分子化合物残基を表す。〕
【請求項3】
前記高分子化合物を添加した後、前記第3溶媒を含む溶媒分を除去して濃縮することを特徴とする請求項1または2に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項4】
前記濃縮をろ過により行うことを特徴とする請求項3に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項5】
前記濃縮を乾燥により行うことを特徴とする請求項3に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項6】
前記濃縮を遠心分離により行うことを特徴とする請求項3に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項7】
前記濃縮を溶媒抽出により行うことを特徴とする請求項3に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項8】
前記濃縮を沈降分離により行うことを特徴とする請求項3に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項9】
前記濃縮を、ろ過、乾燥、遠心分離、溶媒抽出、及び沈降分離の2種以上を組み合わせて行うことを特徴とする請求項3に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項10】
前記濃縮により前記ナノ粒子を凝集させた後、前記第1溶媒、第2溶媒、及び第3溶媒のいずれとも異なる第4溶媒に前記ナノ粒子を再分散させることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の有機顔料ナノ粒子分散物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法により得られた分散物と、バインダーと、重合性基を有するモノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤または光重合開始剤系とを少なくとも含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【請求項12】
インクジェットインクとしたことを特徴とする請求項11に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項13】
仮支持体上に、少なくとも、請求項11記載の着色感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性転写材料。
【請求項14】
請求項11もしくは12記載の着色感光性樹脂組成物または請求項13記載の感光性転写材料を用いて作製したことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項15】
請求項14記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−231169(P2008−231169A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69668(P2007−69668)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】