説明

有機EL表示装置

【課題】所望のホワイトバランスを容易に調整でき、かつ表示画質の高い有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】複数の画素と、有機EL素子と、データ線ドライバと、画素回路と、ゲート線ドライバと、を備える有機EL表示装置であって、各画素は同一色を発光する2つの有機EL素子からなる有機EL素子群を3つ以上有し、3色以上の色を発光する画素であり、2つの有機EL素子は光放出面側に集光性の高い素子が配置された第1有機EL素子と、光放出面側に集光性の高い素子が配置されていない第2有機EL素子からなり、各画素において、第1有機EL素子についての各色の輝度比率と第2有機EL素子についての各色の輝度比率を異ならせる手段を有することを特徴とする有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescent)素子を用いた表示装置に関し、特に有機EL素子の正面からの光の利用効率を高めることが可能なアクティブマトリクス型有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子では、光が発光層から様々な角度で出射するため、保護層と外部空間との境界面で全反射する光成分が多く発生し、全反射した光成分の中には素子内部に閉じ込められてしまう成分がある。このため、光取り出し効率が低くなるという課題があった。この課題を解決するために、特許文献1では、有機EL素子を封止する酸化窒化シリコン(SiNxOy)膜上に樹脂から成るマイクロレンズアレイを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−039500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように有機EL素子の上にマイクロレンズアレイを配置する構成の場合、マイクロレンズアレイがなければ全反射していた光成分を取り出すことができるという効果に加え、集光の効果が期待できる。これらの効果により有機EL素子を用いた表示装置の正面輝度(正面方向即ち基板の法線方向への光取り出し効率)の向上を実現できる。しかし、マイクロレンズの集光の効果は波長(R、G、B)によって差がある。
【0005】
従って、マイクロレンズがある場合とない場合では正面方向における色度が異なる。このため、マイクロレンズがある有機EL素子は、マイクロレンズがない有機EL素子と同じ輝度比率では所望のホワイトバランスが得られない。よって、所望のホワイトバランスを得るに当たり、マイクロレンズがある有機EL素子とマイクロレンズがない有機EL素子で、R輝度、G輝度、B輝度の比率を異ならせてホワイトバランスを調整する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、所望のホワイトバランスを容易に調整でき、かつ表示画質の高い有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、マトリクス状に配置された複数の画素と、前記各画素に配置された有機EL素子と、前記各画素に画像データに応じたデータ信号を供給するデータ線ドライバと、前記各画素に配置され、複数のトランジスタを有し、前記有機EL素子にデータ信号に応じた駆動電流を供給し、前記有機EL素子を点灯させる画素回路と、前記各トランジスタを駆動するゲート線ドライバと、を備える有機EL表示装置であって、前記各画素は同一色を発光する2つの有機EL素子からなる有機EL素子群を3つ以上有し、3色以上の色を発光する画素であり、前記2つの有機EL素子は光放出面側に集光性の高い素子が配置された第1有機EL素子と、光放出面側に集光性の高い素子が配置されていない第2有機EL素子からなり、前記各画素において、前記第1有機EL素子についての各色の輝度比率と前記第2有機EL素子についての各色の輝度比率を異ならせる手段を有することを特徴とする有機EL表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、共通の画像データから1画素内の「集光性の高い素子有りの領域」と「集光性の高い素子無しの領域」でR輝度、G輝度、B輝度の比率を異ならせることができる。これにより、所望のホワイトバランスを容易に調整でき、かつ表示画質の高い有機EL表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る有機ELパネル、画素構成及び画素配置を示す概略図である。
【図2】本発明に係る有機EL素子を含む副画素の相対輝度−視野角特性である。
【図3】本発明に係る有機ELパネルのモード毎の動作タイミングチャートである。
【図4】本発明に係る有機ELパネルのモード毎の相対輝度−視野角特性である。
【図5】本発明に係る有機ELパネルのモード毎の相対電力特性である。
【図6】本発明に係る有機ELパネルのモード毎の相対駆動電流特性である。
【図7】実施例1の有機ELパネル、画素構成及び画素配置の概略図である。
【図8】実施例1の画素回路である。
【図9】実施例1の有機ELパネルの動作タイミングチャートである。
【図10】実施例2の有機ELパネルの概略図である。
【図11】実施例2の画素回路である。
【図12】1画像データから2つのデータ信号を生成する手段の一例である。
【図13】実施例2の有機ELパネルの動作タイミングチャートである。
【図14】実施例3の画素回路である。
【図15】実施例3の有機ELパネルの動作タイミングチャートである。
【図16】実施例4の画素回路である。
【図17】実施例4の有機ELパネルの動作タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の有機EL表示装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1(a)はマトリクス状に配置された複数の画素(m行n列画素)を有し、各画素に有機EL素子が配置された有機ELパネル11の概略図であり、本発明に係る有機ELパネルの一例である。有機ELパネル11はデータ線15にデータ信号を印加するデータ線駆動回路12、ゲート線16を駆動するゲート線駆動回路13を有する。また、各画素に配置され、複数のトランジスタを有し、有機EL素子にデータ信号に応じた駆動電流を供給し、有機EL素子を点灯させる画素回路14を有する。m行n列画素は各データ線と各ゲート線の交点に配置され、各画素に対応するデータ信号に基づいて表示を行う。
【0012】
データ線駆動回路12は各画素に画像データに応じたデータ信号を供給するデータ線ドライバであり、外部からの画像データを入力し有機EL素子を画像データに応じて駆動する電流量を制御する回路である。ゲート線駆動回路13は画素回路14が有する各トランジスタを駆動する(各トランジスタのゲート端子に接続されたゲート線16を駆動する)ゲート線ドライバであり、該当行の書き込み動作時にパルス信号を発生させる。一般的には1行目から順に書き込み動作を行うため、シフトレジスタやその他の論理回路を搭載し、画素回路14の書き込み動作を行えるようにロジックの信号発生を行う。ゲート線駆動回路13によって書き込み該当行にある画素は、データ線駆動回路12によって駆動されたデータ信号をデータ線15より入力し書き込み動作を行う。
【0013】
図1(b)は本発明の表示装置における画素(例えば、図1(a)中のa行目b列目)に相当する部分を示す部分断面図である。本発明の表示装置の画素は複数の副画素を有している。ここで、「副画素」とは、1つの発光素子が設けられた領域を意味する。図1(b)では、基板上に形成された有機EL素子の上面から(上方向から)光を取り出すトップエミッション型の表示装置を示しているが、本発明はボトムエミッション型の表示装置にも適用できる。
【0014】
本発明では、発光素子としての有機EL素子が上記複数の副画素の各々に形成され、同じ画素に含まれる複数の副画素は互いに視野角特性が異なる(視野角特性A、視野角特性B)。具体的には、各画素は同一色を発光する2つの副画素を有し、前記2つの副画素のうち一方の副画素に設けられた有機EL素子の光放出面側には集光性の高い素子が配置されている。また、各画素は前記2つの副画素の各々に設けられ同一色を発光する2つの有機EL素子からなる有機EL素子群を3つ以上有し、3色以上の色を発光する画素である。有機EL素子群を構成する2つの有機EL素子は、光放出面側に集光性の高い素子が配置された第1有機EL素子(以下、有機EL素子Bと称する)と、光放出面側に集光性の高い素子が配置されていない第2有機EL素子(以下、有機EL素子Aと称する)である。集光性の高い素子としては、マイクロレンズ等を用いるのが好ましい。あるいは、一対の電極間の距離を変えて、有機EL素子AとBのうち一方の素子を正面方向に強め合いの干渉効果を持たせ、他方の素子に斜め方向(正面以外の方向)に強め合いの干渉効果を持たせても良い。
【0015】
異なる領域の各有機EL素子間には領域間を分離する領域分離層22が設けられている。有機EL素子の夫々は一対の電極であるアノード電極21及びカソード電極24と、それらの電極間に挟持された、発光層を含む有機化合物層23(以下、「有機EL層」と称する)を備えている。具体的には、基板20の上に有機EL素子毎にパターニングされたアノード電極21が形成され、アノード電極21の上に有機EL層23が形成され、更に有機EL層23上にカソード電極24が形成されている。
【0016】
アノード電極21は、例えばAg等の高い反射率を持つ導電性の金属材料から形成される。又はそのような金属材料から成る層とホール注入特性に優れたITO(Indium−Tin−Oxide)等の透明導電性材料から成る層との積層体から構成しても良い。
【0017】
カソード電極24は、複数の有機EL素子に対して共通に形成されており、発光層で発光した光を素子外部に取り出し可能な半反射性或いは光透過性の構成を有している。具体的には、素子内部での干渉効果を高めるためにカソード電極24を半反射性の構成とする場合、カソード電極24はAgやAgMg等の電子注入性に優れた導電性の金属材料から成る層を2〜50nmの膜厚で形成することにより構成されている。なお、「半反射性」とは、素子内部で発光した光の一部を反射し一部を透過する性質を意味し、可視光に対して20〜80%の反射率を有するものをいい、「光透過性」とは、可視光に対して80%以上の透過率を有するものをいう。
【0018】
有機EL層23は、少なくとも発光層を含む単層又は複数の層からなる。有機EL層23の構成例としては、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる4層構成、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機EL層23を構成する材料は公知の材料を使用することができる。
【0019】
基板20には各有機EL素子を独立に駆動できるように画素回路が形成されている。これらの画素回路は複数の薄膜トランジスタ(以下、TFT:Thin−Film−Transistorと称する)から構成されている(不図示)。TFTが形成された基板20は、TFTとアノード電極21とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された層間絶縁膜に覆われている(不図示)。層間絶縁膜上には、画素回路による表面凹凸を吸収し、表面を平坦にするための平坦化膜が形成されている(不図示)。
【0020】
カソード電極24の上には、空気中の酸素や水分から有機EL層23を保護するために保護層25が形成されている。保護層25は、SiN、SiON等の無機材料からなる。或いは、無機材料と有機材料との積層膜からなる。無機膜の膜厚は0.1μm以上10μm以下が好ましく、CVD法で形成することが好ましい。有機膜は工程中に表面に付着して除去できない異物を覆って保護性能を向上させるために使用するため、1μm以上が好ましい。図1(b)では、保護層25を画素分離層22の形状に沿って形成させているが、保護層25の表面が平坦であっても良い。有機材料を使うことで容易に表面を平坦にすることが可能である。
【0021】
本発明の表示装置は、3つの異なる色相を持った有機ELパネルとして構成しても良いし、3色相に限らず、4つの異なる色相を持った有機ELパネルとして構成しても良い。3色相の場合には、例えばR・G・Bの3色相を持った有機ELパネルとし、R・G・Bの3色相の有機EL素子からなる構成としても良いし、白色有機EL素子にR・G・Bの3色相のカラーフィルターを重ねた構成としても良い。この場合、R・G・Bそれぞれの色相を表示する画素からなる画素ユニットが表示単位となる。4色相の場合には、例えばR・G・B・Wの4色相を持った有機ELパネルとしても良い。
【0022】
図1(c)は本発明の有機ELパネルの画素配置の一例である。R画素31、G画素32、B画素33が配置されており、R画素31、G画素32、B画素33の3つで1つの画素ユニットを構成する有機ELパネルである。R画素31はR−1副画素311、R−2副画素312で構成され、各副画素は色相が共にR、かつ互いに光学特性が異なる。G画素32はG−1副画素321、G−2副画素322で構成され、各副画素は色相が共にG、かつ互いに光学特性が異なる。B画素33はB−1副画素331、B−2副画素332で構成され、各副画素は色相が共にB、かつ互いに光学特性が異なる。各画素はRを発光し光学特性の異なる2つの副画素、Gを発光し光学特性の異なる2つの副画素、Bを発光し光学特性の異なる2つの副画素を有する。
【0023】
以下、R−1副画素311、G−1副画素321、B−1副画素331を視野角の広い特性を持つ副画素Aで形成し、R−2副画素312、G−2副画素322、B−2副画素332を正面輝度の高い特性を持つ副画素Bで形成する場合で説明する。ここで、正面輝度の高い特性とは、正面方向即ち基板の法線方向への光取り出し効率が高い特性を意味している。
【0024】
図2は副画素A・Bそれぞれの相対輝度−視野角特性であり、図2中の(a)が副画素Aの相対輝度−視野角特性、(b)が副画素Bの相対輝度−視野角特性を示す。輝度は副画素A・B共に同じ電流を注入し、副画素Aの正面輝度を1としたときの相対輝度値で表している。図2より、副画素Aは視野角が広い。一方、副画素Bは視野角が狭いが、正面輝度が副画素Aの約4倍である。
【0025】
次に、有機ELパネル11の動作について述べる。R・G・B各画素の、光学特性の異なる2つの副画素は、独立して点灯・消灯(発光・非発光)を選択可能な画素回路で駆動する。例えば、R画素ではR−1副画素とR−2副画素を独立して点灯・消灯することができる。
【0026】
R−1副画素311、G−1副画素321、B−1副画素331の輝度比率(発光比率)と、R−2副画素312、G−2副画素322、B−2副画素332の輝度比率を異ならせて点灯させると、所望のホワイトバランスが得られ、高い画質を実現できる。マイクロレンズ等の集光性の高い素子がある場合とない場合では正面方向における色度が異なるため、上記のように点灯させると所望のホワイトバランスが得られる。本発明は、所望のホワイトバランスを得るために、各画素において、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる手段を有する。
【0027】
また、下記3つのモードで駆動を行うと、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。
【0028】
視野角の広い光学特性を持った領域であるR−1副画素311、G−1副画素321、B−1副画素331のみを点灯させると、有機ELパネル11は視野角の広い性能が得られる(以下、「広視野角モード」と称する)。
【0029】
視野角は狭いが、正面輝度の高い光学特性を持った領域であるR−2副画素312、G−2副画素322、B−2副画素332のみを点灯させると、有機ELパネル11は正面輝度の高い性能が得られる(以下、「屋外視認性モード」と称する)。
【0030】
R−2副画素312、G−2副画素322、B−2副画素332を低電流で点灯させ、正面輝度をR−1副画素311、G−1副画素321、B−1副画素331を点灯させた場合と同等にすると、消費電力を低減できる(以下、「省電力モード」と称する)。
【0031】
更に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態、「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態で副画素A・Bを点灯させると、ユーザーシーンに応じてより多様な表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。
【0032】
よって、同一色の有機EL素子A・Bで点灯時間と駆動電流の一方又は両方を異ならせる手段を有すると、上記効果が得られる点でより好ましい。
【0033】
上記3つのモードで駆動を行う画素回路としては、例えば図8・図11・図14の画素回路が好適に用いられる。上記3つのモードのいずれの駆動においても、同一色かつ光学特性の異なる2つの副画素は共通の画像データによって駆動される。各々の副画素における点灯時間・駆動電流は、前述の正面輝度と周辺輝度との相対特性による光学特性と、上記3つのモードに応じて変える。
【0034】
以下、具体的な実施形態で詳細を説明するが、本発明は下記4つの実施形態に限定されるわけではない。
【0035】
〔第1の実施形態〕
本実施形態の表示装置は図1(a)の有機ELパネル、図1(b)の画素構成、図1(c)の画素配置を有する。図1(c)のR−1副画素311、G−1副画素321、B−1副画素331を視野角の広い特性を持つ副画素Aで形成している。図1(c)のR−2副画素312、G−2副画素322、B−2副画素332を正面輝度(正面方向の光取り出し効率)の高い特性を持つ副画素Bで形成している。例えば、有機EL素子Aを含む副画素の表面は平坦面とし、有機EL素子Bを含む副画素にはマイクロレンズ等の集光性の高い素子を形成するのが好ましい。有機EL素子Aを含む副画素と有機EL素子Bを含む副画素との相対輝度−視野角特性は図2の通りである。画素回路としては、例えば図8の画素回路が好適に用いられる。
【0036】
本実施形態では、所望のホワイトバランスを得るために、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる。具体的には、図1(a)のデータ線15が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段としては、例えば図8における、トランジスタのサイズ(W/L比)が互いに異なるTFT(M2)とTFT(M5)がある。この場合、有機EL素子A・Bで電流駆動能力が異なる。
【0037】
ここで、R画素のTFT(M2)の電流駆動能力をDR1、G画素のTFT(M2)の電流駆動能力をDG1、B画素のTFT(M2)の電流駆動能力をDB1とする。また、R画素のTFT(M5)の電流駆動能力をDR2、G画素のTFT(M5)の電流駆動能力をDG2、B画素のTFT(M5)の電流駆動能力をDB2とする。図8では、電流駆動能力比であるDR1:DG1:DB1とDR2:DG2:DB2を異ならせている。DR1:DG1:DB1とDR2:DG2:DB2を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。即ち、R画素、G画素、B画素にデータ信号として同一の電圧データVdataが入力されたとしても、電流駆動能力比に応じてR画素、G画素、B画素の輝度バランスを変更することができ、所望のホワイトバランスに調整可能である。
【0038】
ある所望のホワイトバランスを得る場合において、R画素、G画素、B画素に必要な駆動電流比が有機EL素子AではIR1:IG1:IB1、有機EL素子BではIR2:IG2:IB2とする。この場合、DR1:DG1:DB1=IR1:IG1:IB1、又はDR2:DG2:DB2=IR2:IG2:IB2とすれば良い。このとき、輝度はLR1:LG1:LB1≠LR2:LG2:LB2となる。LR1はR画素における有機EL素子Aの輝度、LG1はG画素における有機EL素子Aの輝度、LB1はB画素における有機EL素子Aの輝度である。LR2はR画素における有機EL素子Bの輝度、LG2はG画素における有機EL素子Bの輝度、LB2はB画素における有機EL素子Bの輝度である。即ち、LR1:LG1:LB1≠LR2:LG2:LB2となるように有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。
【0039】
このように、本実施形態では、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0040】
また、本実施形態では、同一色の有機EL素子A・Bにおいて点灯時間を異ならせると、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。具体的には、図1(a)のデータ線15が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で同一色の有機EL素子A・Bにおける点灯時間を異ならせる。各画素回路内で同一色の有機EL素子A・Bにおける点灯時間を異ならせる手段としては、同一色の有機EL素子A・Bの各々に別々に接続され、同一色の有機EL素子A・Bの各々の点灯・消灯を別々に制御する手段が好ましい。その手段の例が図8におけるP2とTFT(M3)、P3とTFT(M4)である。M3、M4はそれぞれ、有機EL素子A、Bに駆動電流を供給する経路上に設けられ駆動電流の流れを制御するスイッチであり、選択制御線P2、P3によって別々にオン/オフが制御される。以下、このより好ましい態様について図3を用いて説明する。
【0041】
図3は本実施形態の有機ELパネルのモード毎の動作タイミングチャートである。図3中で、横軸は時間、縦軸は点灯のON(HI)・OFF(LOW)を示している。図2で正面輝度が有機EL素子Aを含む副画素(a):有機EL素子Bを含む副画素(b)=1:4と仮定し、周辺輝度と電力との関係を設定条件にする。設定条件は以下の通りである。
【0042】
まず、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できる場合について説明する。この2つのモードを実現する場合、有機EL素子Aを含む副画素と有機EL素子Bを含む副画素の正面輝度を同一にする。ここで、図3において、1フレームあたりの各モードの電力比が(a):(b):(c):(d):(e)=16:13:10:7:4の5通りを示すモードを想定する。この場合、(a)は(有機EL素子Aの点灯時間):(有機EL素子Bの点灯時間)=16:0、同様に(b)は12:1、(c)は8:2、(d)は4:3、(e)は0:4となる。なお、1フレームあたりの、有機EL素子Aと有機EL素子Bの電流・時間積の比は、(a)は4:0、(b)は3:1、(c)は2:2、(d)は1:3、(e)は0:4である。画素回路から投入される駆動電流はどの点灯タイミングでも同電流である。
【0043】
このように点灯した場合の、相対輝度−視野角特性を図4に、相対電力特性を図5にそれぞれ示す。図4の(a)〜(e)と図5の(a)〜(e)は図3の(a)〜(e)に対応する。図4より、(e)から(a)に遷移するに従って視野角が広くなり、図5より、(a)から(e)に遷移するに従って消費電力を抑制できることが分かる。従って、(a)のように点灯することで「広視野角モード」を選択でき、(e)のように点灯することで「省電力モード」を選択できると共に、(b)〜(d)のように点灯することで「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態も選択できる。このため、高い画質を実現できる。
【0044】
次に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できる場合について説明する。この2つのモードを実現する場合、有機EL素子Aを含む副画素と有機EL素子Bを含む副画素の正面輝度を同一にしない。ここで、1フレームあたりの各モードの電力比が(a):(b):(c):(d):(e)=4:7:10:13:16の5通りを示すモードを想定する。この場合、(a)は(有機EL素子Aの点灯時間):(有機EL素子Bの点灯時間)=4:0、同様に(b)は3:4、(c)は2:8、(d)は1:12、(e)は0:16となる。なお、1フレームあたりの、有機EL素子Aと有機EL素子Bの電流・時間積の比は、(a)は4:0、(b)は3:1、(c)は2:2、(d)は1:3、(e)は0:4である。
【0045】
このように点灯した場合、(e)から(a)に遷移するに従って視野角が広くなり、(a)から(e)に遷移するに従って正面輝度が高くなる。従って、(a)のように点灯することで「広視野角モード」を選択でき、(e)のように点灯することで「屋外視認性モード」を選択できると共に、(b)〜(d)のように点灯することで「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態も選択できる。このため、高い画質を実現できる。
【0046】
また、本実施形態では、同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ線で書き込む回数を1回にすることができるので、周辺回路の簡素化及び配線等の共通化によりレイアウト効率を高めることができる。更に、データ線15の信号レベルを同一色の有機EL素子A・Bについてほぼ同一のダイナミックレンジを確保できるので、S/N比を高めることができる。
【0047】
〔第2の実施形態〕
本実施形態の表示装置は画素回路が異なることを除き、第1の実施形態と同じである。画素回路としては、例えば図11の画素回路が好適に用いられる。
【0048】
本実施形態では、所望のホワイトバランスを得るために、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる。具体的には、図1(a)のデータ線駆動回路12で同一色の有機EL素子A・Bについて各々のデータ信号を生成してデータ線15に異なる信号を書き込むことにより、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。データ線駆動回路12内(データ線ドライバ内)で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段としては、同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なるデータ信号を生成し供給する手段が好ましい。この場合、各画素回路内に、有機EL素子A・Bの各々に対応するデータ信号を保持する手段を備えているのが良い。データ信号を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。有機ELパネルの動作タイミングチャートは実施例2で示す。
【0049】
有機EL素子A・Bの電流駆動能力比については第1の実施形態で述べた通りである。ある所望のホワイトバランスを得る場合において、R画素、G画素、B画素における各々の有機EL素子Aと、R画素、G画素、B画素における各々の有機EL素子Bに対応するデータ信号をそれぞれ異ならせる。R画素、G画素、B画素に必要な駆動電流比が有機EL素子AではIR1:IG1:IB1、有機EL素子BではIR2:IG2:IB2とする。この場合、IR1/IR2≠IG1/IG2≠IB1/IB2とすれば良い。このとき、輝度はLR1/LR2≠LG1/LG2≠LB1/LB2となる。LR1はR画素における有機EL素子Aの輝度、LG1はG画素における有機EL素子Aの輝度、LB1はB画素における有機EL素子Aの輝度である。LR2はR画素における有機EL素子Bの輝度、LG2はG画素における有機EL素子Bの輝度、LB2はB画素における有機EL素子Bの輝度である。即ち、LR1/LR2≠LG1/LG2≠LB1/LB2となるように有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。
【0050】
このように、本実施形態では、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0051】
また、本実施形態では、同一色の有機EL素子A・Bにおいて点灯時間は同一で駆動電流を異ならせると、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。具体的には、図1(a)のデータ線駆動回路12で同一色の有機EL素子A・Bについて各々のデータ信号を生成してデータ線15に異なる信号を書き込むことにより、各画素回路内で同一色の有機EL素子A・Bに供給する駆動電流を異ならせて実現できる。例えば、同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なるデータ信号を生成し供給する手段で実現できる。以下、このより好ましい態様について図6を用いて説明する。
【0052】
図6は本実施形態の有機ELパネルのモード毎の相対駆動電流特性である。図6中で、横軸は各モード、縦軸は有機EL素子A・Bの相対駆動電流を示している。図2で正面輝度が有機EL素子Aを含む副画素(a):有機EL素子Bを含む副画素(b)=1:4と仮定し、周辺輝度と電力との関係を設定条件にする。設定条件は以下の通りである。
【0053】
まず、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できる場合について説明する。この2つのモードを実現する場合、前述のように有機EL素子Aを含む副画素と有機EL素子Bを含む副画素の正面輝度を同一にする。ここで、図6において、1フレームあたりの各モードの電力比が(a):(b):(c):(d):(e)=16:13:10:7:4の5通りを示すモードを想定する。この場合、(a)は(有機EL素子Aの駆動電流):(有機EL素子Bの駆動電流)=16:0、同様に(b)は12:1、(c)は8:2、(d)は4:3、(e)は0:4となる。なお、1フレームあたりの、有機EL素子Aと有機EL素子Bの電流・時間積の比は、(a)は4:0、(b)は3:1、(c)は2:2、(d)は1:3、(e)は0:4である。
【0054】
このように点灯した場合の、相対輝度−視野角特性、相対電力特性はそれぞれ図4、図5の通りである。図4の(a)〜(e)と図5の(a)〜(e)は図6の(a)〜(e)に対応する。よって、第1の実施形態と同様に、(e)から(a)に遷移するに従って視野角が広くなり、(a)から(e)に遷移するに従って消費電力を抑制できる。従って、第1の実施形態と同様に、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0055】
次に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できる場合について説明する。この2つのモードを実現する場合、前述のように有機EL素子Aを含む副画素と有機EL素子Bを含む副画素の正面輝度を同一にしない。ここで、1フレームあたりの各モードの電力比が(a):(b):(c):(d):(e)=4:7:10:13:16の5通りを示すモードを想定する。この場合、(a)は(有機EL素子Aの駆動電流):(有機EL素子Bの駆動電流)=4:0、同様に(b)は3:4、(c)は2:8、(d)は1:12、(e)は0:16となる。なお、1フレームあたりの、有機EL素子Aと有機EL素子Bの電流・時間積の比は、(a)は4:0、(b)は3:1、(c)は2:2、(d)は1:3、(e)は0:4である。
【0056】
このように点灯した場合、第1の実施形態と同様に、(e)から(a)に遷移するに従って視野角が広くなり、(a)から(e)に遷移するに従って正面輝度が高くなる。従って、第1の実施形態と同様に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0057】
また、本実施形態では、データ線駆動回路12で各モードにおいて詳細な駆動条件を設定できるので、よりユーザビリティの高い駆動を行うことができる。更に、同一色の有機EL素子A・Bについてガンマ特性等の補正も容易にできるので高品質の駆動を行うことができる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
本実施形態の表示装置は画素回路が異なることを除き、第2の実施形態と同じである。画素回路としては、例えば図14の画素回路が好適に用いられる。
【0059】
本実施形態では、所望のホワイトバランスを得るために、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる。具体的には、図1(a)のデータ線15が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段としては、同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なる電圧(基準電圧)を供給する手段が好ましい。その手段の例が図14における、駆動TFTであるTFT(M2)のゲート端子・TFT(M6)のゲート端子に印加する電圧Vref1、Vref2である。電圧を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。有機EL素子A・Bの電流駆動能力比、駆動電流比及び輝度については第2の実施形態で述べた通りである。有機ELパネルの動作タイミングチャートは実施例3で示す。
【0060】
このように、本実施形態では、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0061】
また、本実施形態では、同一色の有機EL素子A・Bにおいて点灯時間は同一で駆動電流を異ならせると、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。具体的には、図1(a)のデータ線15が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で同一色の有機EL素子A・Bに供給する駆動電流を異ならせて実現できる。例えば、同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なる電圧(基準電圧)を供給する手段で実現できる。以下、このより好ましい態様について説明する。
【0062】
本実施形態における有機ELパネルのモード毎の相対駆動電流特性は図6の通りである。図2で正面輝度が有機EL素子Aを含む副画素(a):有機EL素子Bを含む副画素(b)=1:4と仮定し、周辺輝度と電力との関係を設定条件にする。設定条件は以下の通りである。
【0063】
まず、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できる場合について説明する。第2の実施形態と同様に、1フレームあたりの各モードの電力比が16:13:10:7:4の5通りを示すモードを想定する。この場合、有機EL素子A・Bについて、(a)は16:0、(b)は12:1、(c)は8:2、(d)は4:3、(e)は0:4の駆動電流比率となる。なお、1フレームあたりの、有機EL素子Aと有機EL素子Bの電流・時間積の比は、(a)は4:0、(b)は3:1、(c)は2:2、(d)は1:3、(e)は0:4である。
【0064】
このように点灯した場合、第2の実施形態と同様に、(e)から(a)に遷移するに従って視野角が広くなり、(a)から(e)に遷移するに従って消費電力を抑制できる。従って、第2の実施形態と同様に、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0065】
次に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できる場合の設定条件について説明する。第2の実施形態と同様に、1フレームあたりの各モードの電力比が4:7:10:13:16の5通りを示すモードを想定する。この場合、有機EL素子A・Bについて、(a)は4:0、(b)は3:4、(c)は2:8、(d)は1:12、(e)は0:16の駆動電流比率となる。なお、1フレームあたりの、有機EL素子Aと有機EL素子Bの電流・時間積の比は、(a)は4:0、(b)は3:1、(c)は2:2、(d)は1:3、(e)は0:4である。
【0066】
このように点灯した場合、第2の実施形態と同様に、(e)から(a)に遷移するに従って視野角が広くなり、(a)から(e)に遷移するに従って正面輝度が高くなる。従って、第2の実施形態と同様に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0067】
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、周辺回路の簡素化及び配線等の共通化によりレイアウト効率を高めることができると共に、S/N比を高めることができる。
【0068】
〔第4の実施形態〕
本実施形態の表示装置は画素回路が異なることを除き、第2の実施形態と同じである。画素回路としては、例えば図16の画素回路が好適に用いられる。
【0069】
本実施形態では、所望のホワイトバランスを得るために、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる。具体的には、図1(a)のデータ線15が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段としては、有機EL素子Bに書き込まれるデータ信号を減圧する手段が好ましい。その手段の例が図16における容量C3である。減圧してデータ信号を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。有機EL素子A・Bの電流駆動能力比、駆動電流比及び輝度については第2の実施形態で述べた通りである。有機ELパネルの動作タイミングチャートは実施例4で示す。
【0070】
このように、本実施形態では、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0071】
第1の実施形態〜第3の実施形態では、図3、図6のようにモードの切り替えを(a)から(e)の5段階としたが、分解能を増やすことや、(a)から(e)の間を無段階に可変させることもできる。
【0072】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0073】
〔実施例1〕
図7(a)はマトリクス状に配置された複数の画素(m行n列画素)を有し、各画素に有機EL素子が配置された有機ELパネル80の概略図であり、本実施例の有機ELパネルである。有機ELパネル80は不図示の有機EL素子、データ線駆動回路81(データ線ドライバ)、ゲート線駆動回路82(ゲート線ドライバ)、画素回路83、ゲート線駆動回路84(ゲート線ドライバ)を有する。データ線駆動回路81はデータ線85にデータ信号を印加する。ゲート線駆動回路82はゲート線P1を駆動する。画素回路83は各画素に配置され、複数のトランジスタを有し、有機EL素子にデータ信号に応じた駆動電流を供給し、有機EL素子を点灯させる。ゲート線駆動回路84は表示領域のゲート線(選択制御線)P2、P3を駆動する。各画素はRを発光し光学特性の異なる2つの副画素、Gを発光し光学特性の異なる2つの副画素、Bを発光し光学特性の異なる2つの副画素を有する。それぞれの副画素には有機EL素子が含まれる。図7(a)ではゲート線駆動回路82、表示領域のゲート線駆動回路84は画素群を挟んで左右に配置してあるが、左右どちらか片側に配置しても良いし、画素の書き込み動作の品質を向上すべく同じ機能を左右両側に配置して両側から駆動しても良い。
【0074】
図7(b)は本実施例の表示装置における画素に相当する部分を示す部分断面図である。保護層25より下の層は図1(b)と同様の構成である。有機EL素子Aを含む副画素の表面は平坦面であり、有機EL素子Bを含む副画素にはマイクロレンズ111が形成されている。マイクロレンズ111は樹脂材料を加工することにより形成されており、具体的には型押し等の方法により形成可能である。
【0075】
マイクロレンズが無い副画素では、有機EL層23の発光層から斜めに出射された光は、保護層25から出射する際に更に斜めになって出射するか、あるいは全反射されて外部に取り出すことができない。一方、マイクロレンズ111がある副画素では、有機EL層23の発光層から出射された光は、透明なカソード電極24を透過し、その後保護層25、マイクロレンズ111を透過して外部へ出射される。
【0076】
マイクロレンズ111がある場合には、マイクロレンズが無い場合に比べて出射角度が基板の法線方向に近づく。従って、マイクロレンズ111がある場合の方が基板の法線方向への集光効果が向上する。即ち、表示装置としては正面方向における光の利用効率を高めることができる。また、マイクロレンズ111がある場合には、発光層から斜めに出射された光の出射界面に対する入射角度が垂直に近くなるため全反射する光量が減少する。その結果、光取り出し効率も向上する。
【0077】
このように、本実施例の有機ELパネル80は有機EL素子の光放出面側が平坦な副画素と、有機EL素子の光放出面側(光を取り出す側、即ちトップエミッション型の場合は有機EL素子の上側)にマイクロレンズが形成された副画素を有する。有機EL素子Aを含む副画素はマイクロレンズが無いため視野角の広い光学特性を持ち、有機EL素子Bを含む副画素はマイクロレンズがあるため正面輝度(正面方向の光取り出し効率)の高い光学特性を持つ。
【0078】
図7(c)は本実施例の有機ELパネルの画素配置である。R画素101、G画素102、B画素103が配置されており、R画素101、G画素102、B画素103の3つで1つの画素ユニットを構成する有機ELパネルである。R画素101はR−1副画素1011、R−2副画素1012で形成され、G画素102はG−1副画素1021、G−2副画素1022で形成され、B画素103はB−1副画素1031、B−2副画素1032で形成されている。R−1副画素1011、G−1副画素1021、B−1副画素1031は光放出面側が平坦な副画素であり、R−2副画素1012、G−2副画素1022、B−2副画素1032は有機EL素子の光放出面側にマイクロレンズが形成された副画素である。R−1副画素1011、G−1副画素1021、B−1副画素1031における相対輝度−視野角特性と、R−2副画素1012、G−2副画素1022、B−2副画素1032における相対輝度−視野角特性は、それぞれ図2中の(a)(b)の通りである。
【0079】
図8は本実施例の画素回路である。ゲート線P1はTFT(M1)のゲート端子に接続され、有機EL素子Aの選択制御線P2はTFT(M3)のゲート端子に接続され、有機EL素子Bの選択制御線P3はTFT(M4)のゲート端子に接続されている。データ線はTFT(M1)のドレイン端子に接続され、データ信号として電圧データVdataがデータ線から入力される。有機EL素子Aのアノード電極はTFT(M3)のソース端子に接続され、カソード電極は接地電位CGNDに接続されている。有機EL素子Bのアノード電極はTFT(M4)のソース端子に接続され、カソード電極は接地電位CGNDに接続されている。TFT(M3)のドレイン端子はTFT(M2)のドレイン端子に接続され、TFT(M2)のソース端子は電源電位に接続されている。TFT(M4)のドレイン端子はTFT(M5)のドレイン端子に接続され、TFT(M5)のソース端子は電源電位に接続されている。TFT(M1)のソース端子は容量C1の一端及びTFT(M2)のゲート端子に接続されている。容量C1の他端は電源電位に接続されている。
【0080】
本実施例では、所望のホワイトバランスを得るために、図7(a)のデータ線85が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段は図8における、トランジスタのサイズ(W/L比)が互いに異なるM2とM5である。この場合、有機EL素子A・Bで電流駆動能力が異なる。
【0081】
ここで、R画素のTFT(M2)の電流駆動能力をDR1、G画素のTFT(M2)の電流駆動能力をDG1、B画素のTFT(M2)の電流駆動能力をDB1とする。また、R画素のTFT(M5)の電流駆動能力をDR2、G画素のTFT(M5)の電流駆動能力をDG2、B画素のTFT(M5)の電流駆動能力をDB2とする。図8では、電流駆動能力比であるDR1:DG1:DB1とDR2:DG2:DB2を異ならせている。DR1:DG1:DB1とDR2:DG2:DB2を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。即ち、R画素、G画素、B画素にデータ信号として同一の電圧データVdataが入力されたとしても、電流駆動能力比に応じてR画素、G画素、B画素の輝度バランスを変更することができ、所望のホワイトバランスに調整可能である。
【0082】
ある所望のホワイトバランスを得る場合において、R画素、G画素、B画素に必要な駆動電流比が有機EL素子AではIR1:IG1:IB1、有機EL素子BではIR2:IG2:IB2とする。この場合、DR1:DG1:DB1=IR1:IG1:IB1、又はDR2:DG2:DB2=IR2:IG2:IB2とすれば良い。このとき、輝度はLR1:LG1:LB1≠LR2:LG2:LB2となる。LR1はR画素における有機EL素子Aの輝度、LG1はG画素における有機EL素子Aの輝度、LB1はB画素における有機EL素子Aの輝度である。LR2はR画素における有機EL素子Bの輝度、LG2はG画素における有機EL素子Bの輝度、LB2はB画素における有機EL素子Bの輝度である。即ち、LR1:LG1:LB1≠LR2:LG2:LB2となるように有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。
【0083】
次に、図8の画素回路の動作を図9のタイミングチャートを用いて説明する。図9中で、横軸は時間、縦軸はP1〜P3のON(HI)・OFF(LOW)を示している。P2とP3は有機EL素子A・Bの発光を司る信号である。
【0084】
図9中のデータ書き込み期間について説明する。
【0085】
この期間では、P1にはHIレベル、P2とP3にはLOWレベルの信号が入力され、M1がON、M3とM4がOFFとなる。この時、M3とM4は導通状態でないため、有機EL素子A・Bには電流が流れない。VdataによりM1の電流駆動能力に応じた電圧が、M2及びM5のゲート端子と電源電位V1の間に配置されたC1に生じる。即ち、データ信号が書き込まれる(Vdataが入力される)。上記では、M1、M3、M4がnMOS、M2がpMOSの場合について述べているが、M1、M3、M4がpMOSの場合には、HI・LOWレベルを逆にする必要がある。
【0086】
図9中の発光期間について説明する。
【0087】
有機EL素子Aに電流を供給する時は、P1にはLOWレベル、P2にはHIレベル、P3にはLOWレベルの信号が入力され、M1がOFF、M3がON、M4がOFFとなる。この時、M3は導通状態であるため、C1に生じた電圧により、M2の電流駆動能力に応じた電流が有機EL素子Aに供給され、その供給された電流に応じた輝度で有機EL素子Aが発光する。P2がHIレベルの期間中、有機EL素子Aが発光し、その積算光量が有機EL素子Aの輝度となる。
【0088】
有機EL素子Bに電流を供給する時は、P1にはLOWレベル、P2にはLOWレベル、P3にはHIレベルの信号が入力され、M1がOFF、M3がOFF、M4がONとなる。この時、M4は導通状態であるため、C1に生じた電圧により、M5の電流駆動能力に応じた電流が有機EL素子Bに供給され、その供給された電流に応じた輝度で有機EL素子Bが発光する。P3がHIレベルの期間中、有機EL素子Bが発光し、その積算光量が有機EL素子Bの輝度となる。
【0089】
本実施例では、図8の画素回路の上記動作により、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0090】
また、本実施例では、同一色の有機EL素子A・Bにおいて点灯時間を異ならせると、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。各画素回路内で同一色の有機EL素子A・Bにおける点灯時間を異ならせる手段は図8におけるP2とM3、P3とM4である。以下、このより好ましい態様について説明する。
【0091】
本実施例では、有機EL素子Bの光放出面側に配置したマイクロレンズにより、有機EL素子AおよびBに同じ電流を供給し発光させた場合の正面輝度は、有機EL素子Aを含む副画素:有機EL素子Bを含む副画素=1:4となる。この時、有機EL素子Aと有機EL素子Bの1フレームあたりの電流・時間積の比=4:0、3:1、2:2、1:3、0:4の5通り(図9(a)〜(e)参照)とする。この正面輝度の比と電流・時間積の比を考慮して有機EL素子Aと有機EL素子Bの点灯時間を設定する。
【0092】
まず、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できる場合について説明する。上記正面輝度の比と電流・時間積の比より、有機EL素子A・Bについては、16:0、12:1、8:2、4:3、0:4の5通りの点灯時間比率となる。本実施例では、同一色を発光する2つの有機EL素子の各々に別々に接続され、前記2つの有機EL素子の各々の点灯・消灯を別々に制御する手段を有するため、上記5通りの点灯時間比率を満たすようなM3とM4のON・OFFの設定が可能となる。このように点灯した場合、第1の実施形態で述べたように、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0093】
次に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できる場合について説明する。上記正面輝度の比と電流・時間積の比より、有機EL素子A・Bについては、4:0、3:4、2:8、1:12、0:16の5通りの点灯時間比率となる。本実施例では、同一色を発光する2つの有機EL素子の各々に別々に接続され、前記2つの有機EL素子の各々の点灯・消灯を別々に制御する手段を有するため、上記5通りの点灯時間比率を満たすようなM3とM4のON・OFFの設定が可能となる。このように点灯した場合、第1の実施形態で述べたように、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0094】
また、本実施例では、有機EL素子A・Bが点灯する時に投入される瞬時電流は一定なので、画素回路は有機EL素子A・Bを同一の電流値で駆動することができる。具体的には、図9(a)(e)のように有機EL素子A・Bのいずれかのみ発光する場合については、入力するデータ信号は同一の値で良いので、有機EL素子Bに供給されるデータ信号のダイナミックレンジを広く取ることができ、S/N比を高めることができる。図9(b)〜(d)についても、電流値を同じ値で駆動できるので、画素回路のデータ信号の書き込み1回で、有機EL素子A・B両方を駆動できる。
【0095】
〔実施例2〕
図10はマトリクス状に配置された複数の画素(m行n列画素)を有し、各画素に有機EL素子が配置された有機ELパネル80の概略図であり、本実施例の有機ELパネルである。有機ELパネル80は不図示の有機EL素子、データ線駆動回路81(データ線ドライバ)、ゲート線駆動回路82(ゲート線ドライバ)、画素回路83、ゲート線駆動回路84(ゲート線ドライバ)を有する。データ線駆動回路81はデータ線85にデータ信号を印加する。ゲート線駆動回路82はゲート線P1、P2を駆動する。画素回路83は各画素に配置され、複数のトランジスタを有し、有機EL素子にデータ信号に応じた駆動電流を供給し、有機EL素子を点灯させる。ゲート線駆動回路84は表示領域のゲート線(選択制御線)P3を駆動する。各画素はRを発光し光学特性の異なる2つの副画素、Gを発光し光学特性の異なる2つの副画素、Bを発光し光学特性の異なる2つの副画素を有する。それぞれの副画素には有機EL素子が含まれる。図10ではゲート線駆動回路82、表示領域のゲート線駆動回路84は画素群を挟んで左右に配置してあるが、左右どちらか片側に配置しても良いし、画素の書き込み動作の品質を向上すべく同じ機能を左右両側に配置して両側から駆動しても良い。本実施例の表示装置の画素構成、画素配置は図7(b)(c)と同じであるため説明を省略する。
【0096】
図11は本実施例の画素回路である。ゲート線P1、P2はそれぞれTFT(M1)のゲート端子、TFT(M5)のゲート端子に接続されている。有機EL素子A・Bの両方の選択制御線P3はTFT(M3)のゲート端子及びTFT(M4)のゲート端子に接続されている。データ線は容量C1の一端及び容量C2の一端に接続され、データ信号として電圧データVdataがデータ線から入力される。容量C1の一端と容量C2の一端には図10のデータ線駆動回路81で生成された異なるデータ信号V1、V2がデータ線から供給される。有機EL素子Aのアノード電極はTFT(M3)のソース端子に接続され、カソード電極は接地電位CGNDに接続されている。有機EL素子Bのアノード電極はTFT(M4)のソース端子に接続され、カソード電極は接地電位CGNDに接続されている。TFT(M3)のドレイン端子はTFT(M1)のソース端子及びTFT(M2)のドレイン端子に接続され、TFT(M2)のソース端子は電源電位に接続されている。TFT(M4)のドレイン端子はTFT(M5)のソース端子及びTFT(M6)のドレイン端子に接続され、TFT(M6)のソース端子は電源電位に接続されている。TFT(M1)のドレイン端子はTFT(M2)のゲート端子及び容量C1の他端に接続され、TFT(M5)のドレイン端子はTFT(M6)のゲート端子及び容量C2の他端に接続されている。
【0097】
ここで、図10のデータ線駆動回路81における、異なるデータ信号Vdata=V1、V2を生成する手段について説明する。異なるデータ信号の生成手段としては、2つの処理ブロックを用意すれば良い。図12は1画像データから2つのデータ信号を生成する手段の構成例である。画像データが2つの処理ブロックに入力されると、例えば処理1のブロックにおいて有機EL素子A用にデータ処理してデータ信号を生成し、処理2のブロックにおいて有機EL素子B用にデータ処理してデータ信号を生成する。処理ブロックにおいては、抵抗比を有機EL素子A用或いは有機EL素子B用に変更した抵抗ラダー回路によるアナログ処理でデータ信号を生成しても良いし、デジタル信号処理後のデータをDAコンバータによってデータ信号を生成しても良い。生成した有機EL素子A用のデータ信号と有機EL素子B用のデータ信号はスイッチで切り替えてデータ線に出力される。
【0098】
本実施例では、所望のホワイトバランスを得るために、図7(a)のデータ線駆動回路81で同一色の有機EL素子A・Bについて各々のデータ信号を生成してデータ線85に異なる信号を書き込む。これにより、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。データ線駆動回路81内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段は図11における同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なるデータ信号を生成し供給する手段である。データ信号を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。
【0099】
有機EL素子A・Bの電流駆動能力比については実施例1で述べた通りである。ある所望のホワイトバランスを得る場合において、R画素、G画素、B画素における各々の有機EL素子Aと、R画素、G画素、B画素における各々の有機EL素子Bに対応するデータ信号をそれぞれ異ならせる。R画素、G画素、B画素に必要な駆動電流比が有機EL素子AではIR1:IG1:IB1、有機EL素子BではIR2:IG2:IB2とする。この場合、IR1/IR2≠IG1/IG2≠IB1/IB2とすれば良い。このとき、輝度はLR1/LR2≠LG1/LG2≠LB1/LB2となる。LR1はR画素における有機EL素子Aの輝度、LG1はG画素における有機EL素子Aの輝度、LB1はB画素における有機EL素子Aの輝度である。LR2はR画素における有機EL素子Bの輝度、LG2はG画素における有機EL素子Bの輝度、LB2はB画素における有機EL素子Bの輝度である。即ち、LR1/LR2≠LG1/LG2≠LB1/LB2となるように有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。
【0100】
次に、図11の画素回路の動作を図13(a)(b)のタイミングチャートを用いて説明する。図13(a)(b)中で、横軸は時間、縦軸はP1〜P3のON(HI)・OFF(LOW)、データ線の電圧・M2のゲート電位M2g・M6のゲート電位M6gを示している。
【0101】
図13(a)は1フレームにおける書き込みと発光動作を示したタイミングチャートである。t1〜t2までを各行の書き込み期間、t2〜t3までを全行の発光期間とする。
【0102】
まず、図13(a)の書き込み期間(t1〜t2)について説明する。P3は1水平期間毎に書き込みが行われるように、ゲート線駆動回路82から随時パルスが出力される。書き込みが行われる該当行、例えばa行においてP3(a)から2つのHIパルスが出力される。データ線ではデータ信号Vdataが出力される。該当行では有機EL素子A、有機EL素子Bの順にデータ信号Vdataがデータ線駆動回路81より出力される。
【0103】
図13(b)にて画素回路の書き込みの詳細動作を説明する。
【0104】
t4〜t5の期間では、有機EL素子Aに書き込むデータ信号Vdata=V1をデータ線に出力する。
【0105】
t5〜t6の期間では、P1(a)、P3(a)がHIになり、M1とM3がONの状態になる。M2のゲート端子は有機EL素子Aのアノード電極と同電位(V4)になる。この時、有機EL素子Aには電流が流れるので発光するが、問題にならないレベルになるようにこの期間を制御する。
【0106】
t6〜t7の期間では、M3がOFFの状態になる。この時、M1はON状態のままであり、M2はダイオード接続状態になる。t5〜t6の期間でM2のゲート電位はV4から、電源電位(以下、Voledと称する)からM2の閾値電圧Vthを引いた電圧(V3)に収束する。
【0107】
t7〜t8の期間では、P1(a)がLOWになり、M1はOFF状態になる。この時、容量C1間にはV1、Voled−Vthの差電圧が蓄えられ、有機EL素子Aに対する書き込み動作が終了する。また、データ線は有機EL素子Bに書き込むデータ信号Vdata=V2をデータ線に出力する。
【0108】
t8〜t9の期間では、P2(a)、P3(a)がHIになり、M5とM4がONの状態になる。M6のゲート端子は有機EL素子Bのアノード電極と同電位(V6)になる。この時、有機EL素子Aには電流が流れるので発光するが、問題にならないレベルになるようにこの期間を制御する。
【0109】
t9〜t10の期間では、M4がOFFの状態になる。この時、M5はON状態のままであり、M6はダイオード接続状態になる。t8〜t9の期間でM6のゲート電位はV6から、電源電位(以下、Voledと称する)からM6の閾値電圧Vthを引いた電圧(V5)に収束する。
【0110】
t10〜t11の期間では、P2(a)がLOWになり、M5はOFF状態になる。この時、容量C2間にはV2、Voled−Vthの差電圧が蓄えられ、有機EL素子Bに対する書き込み動作が終了する。
【0111】
t11以降では、他行の書き込み期間に移行する。データ線は対象画素のデータ信号に合わせて変化する。M2のゲート電位、M6のゲート電位はデータ線の変化に応じて変化するが、容量C1、C2の電位差は書き込み時の状態を保持したまま変動する。
【0112】
次に、図13(a)の発光期間(t2〜t3)について説明する。m行目まで書き込みが終わると、全行のP3(1〜m)は発光期間でHIのパルスを一斉に出力する。データ線に出力される信号Vdataは固定電位Vrefになる。M2のゲート電位、M6のゲート電位は書き込み時の容量端子間の電位差を保持したまま他の行の書き込み信号に応じて変化するが、発光時の電圧Vrefに確定した状態ではそれぞれ、V3−(V1−Vref)、V5−(V2−Vref)となる。
【0113】
TFTの電圧−電流特性は一般に、β(電流増幅率)×(Vgs(ゲート−ソース間電圧)−Vth)2で表される。この式から有機EL素子Aに流れる電流Id1を算出する。M2のゲート電位は、(Voled−Vth)−(V1−Vref)となり、Vgsの電圧は、Voled−(Voled−Vth−(V1−Vref))、即ちVgs=Vth+V1−Vrefとなる。従って、
Id1=β(電流増幅率)×(V1−Vref)2 (式1)
となる。同様にして、有機EL素子Bに流れる電流Id2は、
Id2=β(電流増幅率)×(V2−Vref)2 (式2)
となる。
【0114】
本実施例では、図11の画素回路の上記動作により、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0115】
また、本実施例では、同一色の有機EL素子A・Bにおいて点灯時間は同一で駆動電流を異ならせると、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。具体的には、図10のデータ線駆動回路81で同一色の有機EL素子A・Bについて各々のデータ信号を生成してデータ線85に異なる信号を書き込むことにより、同一色の有機EL素子A・Bに供給する駆動電流を異ならせて実現できる。同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なるデータ信号を生成し供給する手段で実現できる。以下、このより好ましい態様について説明する。
【0116】
本実施例では、有機EL素子Bの光放出面側に配置したマイクロレンズにより、有機EL素子AおよびBに同じ電流を供給し発光させた場合の正面輝度は、有機EL素子Aを含む副画素:有機EL素子Bを含む副画素=1:4となる。この時、有機EL素子Aと有機EL素子Bの1フレームあたりの電流・時間積の比=4:0、3:1、2:2、1:3、0:4の5通りとする。この正面輝度の比と電流・時間積の比を考慮して有機EL素子Aと有機EL素子Bの駆動電流を設定する。
【0117】
まず、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できる場合について説明する。上記正面輝度の比と電流・時間積の比より、有機EL素子A・Bについては、16:0、12:1、8:2、4:3、0:4の5通りの駆動電流比率となる。本実施例では、同一色を発光する2つの有機EL素子毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なるデータ信号を生成し供給する手段を有するため、上記5通りの駆動電流比率を満たすようなデータ信号V1、V2の設定が可能となる。このように点灯した場合、第2の実施形態で述べたように、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0118】
次に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できる場合について説明する。上記正面輝度の比と電流・時間積の比より、有機EL素子A・Bについては、4:0、3:4、2:8、1:12、0:16の5通りの駆動電流比率となる。本実施例では、同一色を発光する2つの有機EL素子毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なるデータ信号を生成し供給する手段を有するため、上記5通りの駆動電流比率を満たすようなデータ信号V1、V2の設定が可能となる。このように点灯した場合、第2の実施形態で述べたように、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0119】
また、本実施例では、各TFTの閾値が製造ばらつきを持っているプロセスに対して、上記式1及び式2よりVthによらない駆動をすることができ、ばらつきを抑え、かつ安定した品質で駆動することができる。
【0120】
〔実施例3〕
本実施例の有機ELパネルは図10と同じであり、本実施例の表示装置の画素構成、画素配置は図7(b)(c)と同じであるため説明を省略する。
【0121】
図14は本実施例の画素回路であり、図11の画素回路と一部異なる。図11の画素回路と異なる点は、TFT(M5)のゲート端子にゲート線P1が接続されている点、TFT(M7)、TFT(M8)、TFT(M9)、TFT(M10)、電圧線Vref1、電圧線Vref2が追加されている点である。TFT(M7)のドレイン端子はデータ線に接続され、TFT(M7)のソース端子は容量C1の一端に接続されている。TFT(M8)のソース端子は電圧線Vref1に接続され、TFT(M8)のドレイン端子は容量C1の一端に接続されている。TFT(M9)のドレイン端子はデータ線に接続され、TFT(M9)のソース端子は容量C2の一端に接続されている。TFT(M10)のソース端子は電圧線Vref2に接続され、TFT(M10)のドレイン端子は容量C2の一端に接続されている。TFT(M7)のゲート端子、TFT(M8)のゲート端子、TFT(M9)のゲート端子、及びTFT(M10)のゲート端子はゲート線P1に接続されている。TFT(M7)とTFT(M8)、又はTFT(M9)とTFT(M10)は一方がON状態の場合、他方がOFF状態であり、相補的に動作する。
【0122】
本実施例では、所望のホワイトバランスを得るために、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる。具体的には、図7(a)のデータ線85が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段は図14におけるM2のゲート端子・M6のゲート端子に印加する電圧Vref1、Vref2である。電圧を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。有機EL素子A・Bの電流駆動能力比、駆動電流比及び輝度については実施例2で述べた通りである。
【0123】
次に、図14の画素回路の動作を図15(a)(b)のタイミングチャートを用いて説明する。図15(a)(b)中で、横軸は時間、縦軸はP1とP3のON(HI)・OFF(LOW)、データ線の電圧・M2のゲート電位M2g・M6のゲート電位M6gを示している。
【0124】
図15(a)は1フレームにおける書き込み動作と発光動作を示したタイミングチャートである。t1〜t2までは1行目の書き込み期間であり、t2〜t3までは1行目の発光期間かつ1行目以外の行の書き込み期間である。1行目からm行目まで順次書き込み動作の後、発光動作を行い、m行目の後は再び1行目から順次動作を繰り返す。データ線にはデータ信号Vdataが出力される。
【0125】
図15(b)にて画素回路の書き込みの詳細動作を説明する。
【0126】
t4〜t5の期間では、データ信号Vdata=V1をデータ線に出力する。
【0127】
t5〜t6の期間では、P1(a)、P3(a)がHIになり、M1、M3、M4、M5、M7、M9がONの状態になる。M2のゲート電位は有機EL素子Aのアノード電極と同電位(V4)になる。M6のゲート電位は有機EL素子Bのアノード電極と同電位(V6)になる。この時、有機EL素子A、有機EL素子Bには電流が流れるので発光するが、問題にならないレベルになるようにこの期間を制御する。また、容量C1、C2の一端はデータ信号Vdata=V1となる。
【0128】
t6〜t7の期間では、M3とM4がOFFの状態になる。この時、M1とM5はON状態のままであり、M2とM6はダイオード接続状態になる。t5〜t6の期間でM2のゲート電位はV4から、電源電位(以下、Voledと称する)からM2の閾値電圧Vth1を引いた電圧(V3)に収束する。M6のゲート電位はV4から、電源電位(以下、Voledと称する)からM6の閾値電圧Vth2を引いた電圧(V5)に収束する。
【0129】
t7〜t8の期間では、P1(a)がLOWになり、M1、M5、M7、M9はOFF状態になる。この時、容量C1間にはV1、Voled−Vth1の差電圧が蓄えられ、有機EL素子Aに対する書き込み動作が終了する。また同時に、容量C2間にはV1、Voled−Vth2の差電圧が蓄えられ、有機EL素子Bに対する書き込み動作も終了する。更に、M8とM10がON状態になるので、容量C1の一端は電圧Vref1となり、容量C2の一端は電圧Vref2となる。容量C1、C2の電位差は書き込み時の状態を保持したまま変動し、その結果、M2のゲート電位、M6のゲート電位はそれぞれ、V3−(V1−Vref1)、V5−(V1−Vref2)となる。
【0130】
t8以降では、P3(a)がHIになり、a行目は発光動作を行う。また、次の行(a+1行目)の書き込み期間に移行する。
【0131】
TFTの電圧−電流特性は一般に、β(電流増幅率)×(Vgs(ゲート−ソース間電圧)−Vth)2で表される。この式から有機EL素子Aに流れる電流Id1を算出する。M2のゲート電位は、Vg=(Voled−Vth1)−(V1−Vref1)となり、Vgsの電圧は、Voled−(Voled−Vth1−(V1−Vref))、即ちVgs=Vth1+V1−Vrefとなる。従って、
Id1=β×(V1−Vref1)2 (式3)
となる。同様にして、有機EL素子Bに流れる電流Id2は
Id2=β×(V1−Vref2)2 (式4)
となる。
【0132】
本実施例では、図14の画素回路の上記動作により、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0133】
また、本実施例では、同一色の有機EL素子A・Bにおいて点灯時間は同一で駆動電流を異ならせると、ユーザーシーンに応じた表示ができ、高い画質を実現できる点でより好ましい。具体的には、図10のデータ線85が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で同一色の有機EL素子A・Bに供給する駆動電流を異ならせて実現できる。同一色の有機EL素子A・B毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なる電圧(基準電圧)を供給する手段で実現できる。以下、このより好ましい態様について説明する。
【0134】
本実施例では、有機EL素子Bの光放出面側に配置したマイクロレンズにより、有機EL素子AおよびBに同じ電流を供給し発光させた場合の正面輝度は、有機EL素子Aを含む副画素:有機EL素子Bを含む副画素=1:4となる。この時、有機EL素子Aと有機EL素子Bの1フレームあたりの電流・時間積の比=4:0、3:1、2:2、1:3、0:4の5通りとする。この正面輝度の比と電流・時間積の比を考慮して有機EL素子Aと有機EL素子Bの駆動電流を設定する。
【0135】
まず、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できる場合について説明する。上記正面輝度の比と電流・時間積の比より、有機EL素子A・Bについては、16:0、12:1、8:2、4:3、0:4の5通りの駆動電流比率となる。本実施例では、同一色を発光する2つの有機EL素子毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なる電圧を供給する手段を有するため、上記5通りの駆動電流比率を満たすような電圧Vref1、Vref2の設定が可能となる。このように点灯した場合、第3の実施形態で述べたように、「広視野角モード」と「省電力モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「省電力モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0136】
次に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できる場合について説明する。上記正面輝度の比と電流・時間積の比より、有機EL素子A・Bについては、4:0、3:4、2:8、1:12、0:16の5通りの駆動電流比率となる。本実施例では、同一色を発光する2つの有機EL素子毎に有する各駆動トランジスタのゲート端子にそれぞれ異なる電圧を供給する手段を有するため、上記5通りの駆動電流比率を満たすような電圧Vref1、Vref2の設定が可能となる。このように点灯した場合、第3の実施形態で述べたように、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」を選択できると共に、「広視野角モード」と「屋外視認性モード」の中間的な状態も選択できるため、高い画質を実現できる。
【0137】
また、本実施例では、各TFTの閾値が製造ばらつきを持っているプロセスに対して、上記式3及び式4よりVthによらない駆動をすることができ、ばらつきを抑え、かつ安定した品質で駆動することができる。
【0138】
そして、電圧Vref1と電圧Vref2が異なるので、M2とM6が同じ電流増幅率βかつ同一データ信号V1を書き込んだとしても、有機EL素子Aと有機EL素子Bに異なる電流Id1及びId2を流すことが可能となる。
【0139】
〔実施例4〕
本実施例の有機ELパネルは図10と同じであり、本実施例の表示装置の画素構成、画素配置は図7(b)(c)と同じであるため説明を省略する。
【0140】
図16は本実施例の画素回路であり、図11の画素回路と一部異なる。図11の画素回路と異なる点は、TFT(M5)のゲート端子にゲート線P1が接続されている点、TFT(M6)のソース端子とゲート端子の間に容量C3が接続されている点である。
【0141】
本実施例では、所望のホワイトバランスを得るために、有機EL素子Aについての各色の輝度比率と有機EL素子Bについての各色の輝度比率を異ならせる。具体的には、図7(a)のデータ線85が同一色の有機EL素子A・Bに同一のデータ信号を書き込み、各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる。各画素回路内で有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせる手段は図16における、TFT(M6)のソース端子とゲート端子の間に接続されている容量C3である。減圧してデータ信号を異ならせることで、有機EL素子A・Bで駆動電流を異ならせてホワイトバランスの調整を行うことができる。有機EL素子A・Bの電流駆動能力比、駆動電流比及び輝度については実施例2で述べた通りである。
【0142】
次に、図16の画素回路の動作を図17(a)(b)のタイミングチャートを用いて説明する。図17(a)(b)中で、横軸は時間、縦軸はP1とP3のON(HI)・OFF(LOW)、データ線の電圧・M2のゲート電位M2g・M6のゲート電位M6gを示している。
【0143】
図17(a)は1フレームにおける書き込み動作と発光動作を示したタイミングチャートである。t1〜t2までを各行の書き込み期間とし、t2〜t3までを全行の発光期間とする。
【0144】
まず、図17(a)の書き込み期間(t1〜t2)について説明する。ゲート線P3は1水平期間ごとに書き込みが行われるように、ゲート線駆動回路82から随時パルスが出力される。書き込みが行われる該当行、例えばa行においてP3(a)から1つのHIパルスが出力される。データ信号線にはデータ信号Vdataが出力される。
【0145】
図17(b)にて画素回路の書き込みの詳細動作を説明する。
【0146】
t4〜t5の期間では、データ信号Vdata=V1をデータ信号線に出力する。
【0147】
t5〜t6の期間では、P1(a)、P3(a)がHIになり、TFT(M1)、TFT(M3)、TFT(M4)、TFT(M5)がONの状態になる。TFT(M2)のゲート電位M2gは有機EL素子Aのアノード電極と同電位(V4)になる。TFT(M6)のゲート電位M6gは有機EL素子Bのアノード電極と同電位(V6)になる。この時、有機EL素子A、有機EL素子Bには電流が流れるので発光するが、問題にならないレベルになるようにこの期間を制御する。
【0148】
t6〜t7の期間では、TFT(M3)、TFT(M4)がOFFの状態になる。この時TFT(M1)、TFT(M5)はON状態のままであり、TFT(M2)、TFT(M6)はダイオード接続状態になる。t5〜t6の期間でTFT(M2)のゲート電位はV4から電源電位(以下、Voledと称する)からTFT(M2)の閾値電圧Vth1を引いた電圧(V3)に収束する。TFT(M6)のゲート電位はV4から電源電位(以下、Voledと称する)からTFT(M6)の閾値電圧Vth2を引いた電圧(V5)に収束する。
【0149】
t7〜t8の期間では、P1(a)がLOWになり、TFT(M1)、TFT(M5)はOFF状態になる。この時容量C1間には、V1、Voled−Vth1の差電圧が蓄えられ、有機EL素子Aに対する書き込み動作が終了する。また同時に、容量C2間には、V1、Voled−Vth2の差電圧が蓄えられ、有機EL素子Bに対する書き込み動作も終了する。
【0150】
t8以降では、他の行の書き込み期間に移行する。データ信号線は対象画素のデータ信号に合わせて変化する。TFT(M2)、TFT(M6)のゲート電位は、データ信号線の変化に応じて変化するが、容量C1、C2の電位差は書き込み時の状態を保持したまま変動する。
【0151】
次に、図17(a)の発光期間(t2〜t3)について説明する。m行目まで書き込みが終わると、全行のP3(1〜m)は発光期間でHIのパルスを一斉に出力する。データ信号線に出力される信号Vdataは固定電位Vrefになる。TFT(M2)、TFT(M6)のゲート電位は書き込み時の容量端子間の電位差を保持したまま他の行の書き込み信号に応じて変化するが、発光時の電圧Vrefに確定した状態ではそれぞれ次の通りになる。TFT(M2)のゲート電位はV3−(V1−Vref)、TFT(M6)のゲート電位はV5−(V1−Vref)×C2/(C2+C3)となる。TFT(M6)のゲート電位に関しては、容量C3を有するため、容量C2と容量C3の容量比によって分圧される。
【0152】
TFTの電圧―電流特性は一般に、β(電流増幅率)×(Vgs(ゲート−ソース間電圧)−Vth)2で表される。この式から有機EL素子Aに流れる電流Id1を算出する。M2のゲート電位は、Vg=(Voled−Vth1)−(V1−Vref)となり、Vgsの電圧は、Voled−(Voled−Vth1−(V1−Vref))、即ちVgs=Vth1+V1−Vrefとなる。従って、
Id1=β×(V1−Vref)2 (式5)
となる。同様にして有機EL素子Bに流れる電流Id2は、
Id2=β×{(V1−Vref)×C2/(C2+C3)}2 (式6)
となる。
【0153】
本実施例では、図16の画素回路の上記動作により、有機EL素子A・Bにおける各色の輝度比率を異ならせることができるため、ホワイトバランスの調整ができ、高い画質を実現できる。
【0154】
また、本実施例では、各TFTの閾値が製造ばらつきを持っているプロセスに対して、上記式5及び式6よりVthによらない駆動をすることができ、ばらつきを抑え、かつ安定した品質で駆動することができる。
【0155】
そして、TFT(M6)のゲート端子とソース端子の間に容量C3を有する。このため、TFT(M2)とTFT(M6)が同じ電流増幅率β、かつ同一データ信号V1を書き込んだとしても、有機EL素子Aと有機EL素子Bに異なる電流Id1及びId2を流すことが可能となる。また、TFT(M2)のゲート端子とソース端子の間に容量C4を設け、容量比C1/C4、C2/C3を異ならせても良い。
【0156】
このように、容量を所望の値に設定することで、同一データ信号を画素回路に入力しても有機EL素子Aと有機EL素子Bに流す電流を異ならせることが可能なため、ホワイトバランスを容易に調整できる画質の高い表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0157】
11、80:有機ELパネル、12、81:データ線駆動回路、13、82:ゲート線駆動回路、14、83:画素回路、20:基板、21:アノード電極、22:画素分離層、23:有機化合物層(有機EL層)、24:カソード電極、25:保護層、31、101:R画素、32、102:G画素、33、103:B画素、311、1011:R画素のR−1副画素、312、1012:R画素のR−2副画素、321、1021:G画素のG−1副画素、322、1022:G画素のG−2副画素、331、1031:B画素のB−1副画素、332、1032:B画素のB−2副画素、84:表示領域のゲート線駆動回路、111:マイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素と、
前記各画素に配置された有機EL素子と、
前記各画素に画像データに応じたデータ信号を供給するデータ線ドライバと、
前記各画素に配置され、複数のトランジスタを有し、前記有機EL素子にデータ信号に応じた駆動電流を供給し、前記有機EL素子を点灯させる画素回路と、
前記各トランジスタを駆動するゲート線ドライバと、
を備える有機EL表示装置であって、
前記各画素は同一色を発光する2つの有機EL素子からなる有機EL素子群を3つ以上有し、3色以上の色を発光する画素であり、
前記2つの有機EL素子は光放出面側に集光性の高い素子が配置された第1有機EL素子と、光放出面側に集光性の高い素子が配置されていない第2有機EL素子からなり、
前記各画素において、前記第1有機EL素子についての各色の輝度比率と前記第2有機EL素子についての各色の輝度比率を異ならせる手段を有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記集光性の高い素子はマイクロレンズであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記各画素回路は駆動電流を供給する駆動トランジスタを、同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々で有し、
前記輝度比率を異ならせる手段は、W/L比が互いに異なり、かつ同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々に駆動電流を供給する前記駆動トランジスタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記各画素回路は駆動電流を供給する駆動トランジスタを、同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々で有し、
前記輝度比率を異ならせる手段は、前記データ線ドライバ内に設けられており、前記各駆動トランジスタのゲート端子に異なるデータ信号を生成し供給する手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記各画素回路は駆動電流を供給する駆動トランジスタを、同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々で有し、
前記輝度比率を異ならせる手段は、前記各駆動トランジスタのゲート端子に異なる電圧を供給する手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記各画素回路は駆動電流を供給する駆動トランジスタを、同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々で有し、
前記輝度比率を異ならせる手段は、前記各駆動トランジスタのゲート端子に一端が接続されデータ信号を減圧する容量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子で点灯時間を異ならせる手段を有することを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記点灯時間を異ならせる手段は、同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々に別々に接続され、同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子の各々の点灯・消灯を別々に制御する手段であることを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
同一色の前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子で駆動電流を異ならせる手段を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−113980(P2012−113980A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262295(P2010−262295)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】