説明

有機EL装置及びその駆動方法並びに電子機器

【課題】 走査線選択の周期性に基づくちらつきを抑制して、良好な画像表示を行うことができる有機EL装置及びその駆動方法、並びに当該有機EL装置を備える電子機器を提供する。
【解決手段】 有機EL装置は、複数の走査線と、走査線に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、走査線とデータ線との交点に対応して配設された発光素子、及びその駆動装置を備えている。駆動装置は、データ線に供給する画像信号により表現される階調数に応じて1フレームを複数のサブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5に分割し、これらのサブフレームを単位として発光素子の発光を制御するとともに、走査線毎のサブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように走査線を非順次選択駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置及びその駆動方法並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライト等を必要としない自発光素子として、近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子を備えた有機EL装置が注目されている。有機EL素子は、対向する一対の電極間に有機EL層、即ち発光素子を備えて構成されたものであり、フルカラー表示を行う有機EL装置は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応する発光波長帯域を有する発光素子を備えている。対向する一対の電極間に電圧が印加されると、注入された電子と正孔とが発光素子内で再結合し、これにより発光素子が発光する。このような有機EL装置に形成される発光素子は、通常1μmを下回るほどの薄膜で形成される。また、有機EL装置は、発光素子そのものが発光するため、従来の液晶表示装置に用いられているようなバックライトも必要ない。従って、有機EL装置は、その厚みを極めて薄型化することができるという利点を有する。
【0003】
上記の有機EL装置は、複数の走査線、各走査線に対して直交する方向に延びる複数のデータ線、及び各データ線に並列に延びて上記の一対の電極の一方の電極に接続された複数の電源線、並びにこれらの各線に接続されたスイッチング素子等を備えており、走査線とデータ線との各交点付近に上記の発光素子をマトリクス状に配列した構成である。走査線の何れかが選択されると、選択された走査線に接続されたスイッチング素子がオン状態になり、そのスイッチング素子を介してデータ線から供給される画像信号に応じた電流が電源線から発光素子に流れて発光素子が発光する。走査線を順次走査しつつ各データ線に画像信号を供給することにより、有機EL装置には画像信号に応じた画像が表示される。
【0004】
ところで、有機EL装置の駆動方法は、アナログ駆動とデジタル駆動に大別される。アナログ駆動は、上記のデータ線にアナログ信号を供給して階調を表現する駆動方法である。一方、デジタル駆動は、上記のデータ線にデジタル信号を供給するとともに1フレームを複数のサブフレームに分割して、サブフレームの発光/非発光をデジタル信号により制御することで階調を表現する駆動方法である。このデジタル駆動においては、表現可能な階調数を増やすにはサブフレーム数を増加させなければならないため、階調数の増加に伴って周辺駆動装置の動作周波数が大幅に高くなってしまう。
【0005】
周辺回路の動作周波数を高くせずに多階調化を実現する駆動方法として、以下の特許文献1には、非順次選択駆動方法(飛び越し駆動方法)が開示されている。この非順次選択駆動方法は、走査線を順次走査するのではなく、所定本数の走査線を飛び越して走査する駆動方法である。
【特許文献1】特開2001−166730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された非順次選択駆動方法では、飛び越す走査線の数に規則性があるため発光素子の発光タイミングも規則性が生じてしまい、有機EL装置に表示させる画像によってはちらつきが生じることがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、走査線選択の周期性に基づくちらつきを抑制して、良好な画像表示を行うことができる有機EL装置及びその駆動方法、並びに当該有機EL装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の有機EL装置は、複数の走査線と、当該走査線に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して配設された発光素子と、前記データ線に供給する画像信号により表現される階調数に応じて1フレームを複数のサブフレームに分割し、当該サブフレームを単位として前記発光素子の発光を制御するとともに、前記走査線を非順次選択駆動する駆動装置とを備える有機EL装置において、前記駆動装置は、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように前記走査線を非順次選択駆動することを特徴としている。
この発明によると、走査線毎のサブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように走査線が非順次選択駆動される。このため、走査線選択の周期性に基づくちらつきを抑制することができ、この結果として良好な画像表示を行うことができる。
また、本発明の有機EL装置は、前記駆動装置が、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが1フレーム内の少なくとも一部において不規則となるように前記走査線を非順次選択駆動することが望ましい。
非順次走査駆動を行った場合には、画像に必ずちらつきが生ずる訳ではなく表示する画像に応じてちらつきが生ずる。このため、例えば画像の中央部にちらつきが生じやすい画像の場合には、画像の中央部のみについてちらつきを抑制するための駆動を行いその他の部分は従来の方法で駆動するといった柔軟な運用を行うことができる。
また、本発明の有機EL装置は、前記駆動装置が、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングを不規則にするテーブルを備え、当該テーブルの内容に従って前記走査線を非順次選択駆動することを特徴としている。
この発明によるとテーブルの内容に従って走査線毎のサブフレーム各々の選択タイミングを不規則にしているため、装置構成の複雑化及びコスト上昇をさほど招かずにちらつきを抑制することができる。また、テーブルの内容を変更するだけで走査線の非順次選択の仕方を変えることができるため、装置構成の大幅な変更を招くこともない。
また、本発明の有機EL装置は、前記駆動装置が、前のフレームの状態に応じて次のフレームについて前記非順次選択駆動を行うか否かを制御することを特徴としている。
この発明によると、前のフレームの状態に応じて次のフレームについて非順次選択駆動を行うか否かが制御されるため、例えば静止画を表示するときにちらつきが生ずる可能性が大きい場合には本発明による非順次選択駆動を行い、動画を表示するときにちらつきが生ずる可能性が大きい場合には従来の非順次選択駆動を行うといった柔軟な運用を行うことができる。
更に、本発明の有機EL装置は、前記駆動装置が、隣接する走査線における前記サブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように前記非順次選択駆動を行うことを特徴としている。
隣接した走査線におけるサブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有する場合にはちらつきが生じやすいため、隣接する走査線におけるサブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように非順次選択駆動を行うことでちらつきを効果的に抑制することができる。
上記課題を解決するために、本発明の有機EL装置の駆動方法は、複数の走査線と、当該走査線に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して配設された発光素子とを備える有機EL装置の駆動方法であって、前記データ線に供給する画像信号により表現される階調数に応じて1フレームを複数のサブフレームに分割し、当該サブフレームを単位として前記発光素子の発光を制御するとともに、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように前記走査線を非順次選択駆動することを特徴としている。
この発明によると、走査線毎のサブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように走査線が非順次選択駆動される。このため、走査線選択の周期性に基づくちらつきを抑制することができ、この結果として良好な画像表示を行うことができる。
また、本発明の有機EL装置の駆動方法は、前記走査線の非順次選択駆動が、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが1フレーム内の少なくとも一部において不規則となるように行われることを特徴としている。
非順次走査駆動を行った場合には、画像に必ずちらつきが生ずる訳ではなく表示する画像に応じてちらつきが生ずる。このため、例えば画像の中央部にちらつきが生じやすい画像の場合には、画像の中央部のみについてちらつきを抑制するための駆動を行いその他の部分は従来の方法で駆動するといった柔軟な運用を行うことができる。
また、本発明の有機EL装置の駆動方法は、前記走査線の非順次選択駆動が、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングを不規則にするテーブルの内容に従って行われることを特徴としている。
この発明によるとテーブルの内容に従って走査線毎のサブフレーム各々の選択タイミングを不規則にしているため、テーブルの内容を変更するだけで走査線の非順次選択の仕方を変えることができる。
また、本発明の有機EL装置の駆動方法は、前記走査線の非順次選択駆動が、前のフレームの状態に応じて行われることを特徴としている。
この発明によると、前のフレームの状態に応じて次のフレームについて非順次選択駆動を行うか否かが制御されるため、例えば静止画を表示するときにちらつきが生ずる可能性が大きい場合には本発明による非順次選択駆動を行い、動画を表示するときにちらつきが生ずる可能性が大きい場合には従来の非順次選択駆動を行うといった柔軟な運用を行うことができる。
更に、本発明の有機EL装置の駆動方法は、前記走査線の非順次選択駆動が、隣接する走査線における前記サブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように行われることを特徴としている。
隣接した走査線におけるサブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有する場合にはちらつきが生じやすいため、隣接する走査線におけるサブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように非順次選択駆動を行うことでちらつきを効果的に抑制することができる。
本発明の電子機器は、上記の何れかに記載の有機EL装置を備えたことを特徴としている。
この構成によれば、良好な表示特性を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による有機EL装置及びその駆動方法並びに電子機器について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0010】
〔有機EL装置〕
図1は、本発明の一実施形態による有機EL装置の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態の有機EL装置1は、1フレームを時間比の異なる5つのサブフレームに分割し、発光させるサブフレームを適宜選択することによって中間調を表現する時分割階調方式を採用している。
【0011】
図1に示す通り、本実施形態の有機EL装置1は、周辺駆動装置2と表示パネル部3とを含んで構成される。周辺駆動装置2は、CPU(中央処理装置)4、主記憶部5、グラフィックコントローラ6、ルックアップテーブル(LUT)7、タイミングコントローラ8、及びビデオRAM(VRAM)9を含んで構成される。尚、CPU4に変えてMPU(演算処理装置)を備える構成であっても良い。また、表示パネル部3は、表示パネル11、行選択ドライバ13、及びデータドライバ14を含んで構成される。
【0012】
周辺駆動装置2が備えるCPU(中央処理装置)は、主記憶部5に記憶された画像データを読み出し、主記憶部5を用いて展開処理等の各種処理を行ってグラフィックコントローラ6に出力する。グラフィックコントローラ6は、CPU4から出力された画像データを元に表示パネル部3に対応した画像データ及び同期信号(垂直同期信号、水平同期信号)を生成する。グラフィックコントローラ6は生成した画像データをVRAM9に転送し、生成した同期信号をタイミングコントローラ8に出力する。
【0013】
VRAM9は、グラフィックコントローラ6から出力された画像データを表示パネル部3のデータドライバ14に出力し、タイミングコントローラ8は水平同期信号を表示パネル部3のデータドライバ14に出力するとともに、垂直同期信号を表示パネル部3の行選択ドライバ13に出力する。尚、VRAM9からの画像データとタイミングコントローラ8からの同期信号(水平同期信号及び垂直同期信号)とは同期が取られて表示パネル11に出力される。
【0014】
ルックアップテーブル7には、画像データの転送順を規定するデータが格納されている。グラフィックコントローラ6は、ルックアップテーブル7に格納されているデータを参照し、このデータに基づいた順番でVRAM9に画像データを転送する。尚、ルックアップテーブル7に格納されたデータに基づいた画像データの転送についての詳細は後述する。
【0015】
〔表示パネル部3〕
図2は、表示パネル部3の構成を示すブロック図である。図2に示す通り、表示パネル部3の表示パネル11は、行方向に沿って延びるn本(nは自然数)の走査線Y1〜Ynと、行方向に直交する列方向に沿って延びる3m本(mは自然数)のデータ線X1〜X3mとを備えている。また、表示パネル11には、走査線Y1〜Ynとデータ線X1〜X3mとの交差部に対応する位置に複数の画素20を有している。つまり、各画素20は、行方向に沿って延びる複数の走査線Y1〜Ynと、列方向に沿って延びる複数のデータ線X1〜X3mとの交点にそれぞれ配置され電気的に接続されることによりマトリクス状に配列されている。
【0016】
図3は、表示パネル11の左上隅に位置する画素20の構成を示す回路図である。図3に示す通り、表示パネル11の左上隅に位置する画素20は、赤色の光を放射する画素20Rと、発光層から緑色の光を放射する画素20Gと、発光層から青色の光を放射する画素20Bを有している。画素20Rには、走査線Y1を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT21と、このスイッチング用TFT21を介してデータ線X1から供給される画素信号を保持する保持容量22と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT23と、この駆動用TFT23を介して赤用電源線Lrに電気的に接続したときに赤用電源線Lrから駆動電流が流れ込む画素電極(電極)24と、この画素電極24と共通陰極(電極)26との間に挟み込まれた有機EL素子25Rとが設けられている。
【0017】
画素20Gには、走査線Y1を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT21と、このスイッチング用TFT21を介してデータ線X2から供給される画素信号を保持する保持容量22と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT23と、この駆動用TFT23を介して緑用電源線Lgに電気的に接続したときに緑用電源線Lgから駆動電流が流れ込む画素電極(電極)24と、この画素電極24と共通陰極(電極)26との間に挟み込まれた有機EL素子25Gとが設けられている。
【0018】
同様に、画素20Bには、走査線Y1を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT21と、このスイッチング用TFT21を介してデータ線X3から供給される画素信号を保持する保持容量22と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT23と、この駆動用TFT23を介して青用電源線Lbに電気的に接続したときに青用電源線Lbから駆動電流が流れ込む画素電極(電極)24と、この画素電極24と共通陰極(電極)26との間に挟み込まれた有機EL素子25Bとが設けられている。表示パネル11に設けられる他の画素も同様に、画素20R,20G,20Bから構成されている。
【0019】
上記構成の画素20において、走査線Y1が駆動されてスイッチング用TFT21がオン状態になると、そのときのデータ線X1〜X3の電位が画素20R,20G,20Bの保持容量22にそれぞれ保持される。次いで、各保持容量22の状態に応じて、画素20R,20G,20Bに設けられた駆動用TFT23各々のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT23のチャネルを介して赤用電源線Lr,緑用電源線Lg、青用電源線Lbの各々から各画素20R,20G,20Bの画素電極24にそれぞれ電流が流れ、有機EL素子25R,25G,25Bの各々を介して共通陰極50に電流が流れる。すると、有機EL素子25R,25G,25Bは流れる電流量に応じて発光する。
【0020】
図2に戻り、表示パネル11には、列方向に沿って複数の赤用電源線Lr、緑用電源線Lg、及び青用電源線Lbが対応する画素20R,20G,20Bに隣接して配線されている。赤用電源線Lr、緑用電源線Lg、及び青用電源線Lbには、それぞれ対応する赤用電源供給線LR、緑用電源供給線LG、及び青用電源供給線LBを介して赤用駆動電圧VR、緑用駆動電圧VG、青用駆動電圧VBが供給される。後述するように、本実施形態では、非順次選択駆動により走査線Y1〜Ynを駆動するとともに、1フレームをサブフレームに分割し、発光させるサブフレームを適宜選択することのより1フレームの画像を表示パネル11上に表示している。
【0021】
〔周辺駆動装置2〕
次に、周辺駆動装置2について説明する。前述した通り、周辺駆動装置2は、表示パネル部3に対して画像データ及び同期信号を出力する訳であるが、これらを基本クロック信号CLKに同期させて出力する。図4は、周辺駆動装置2から表示パネル部3に出力される各信号のタイミングチャートである。図4に示す通り、周辺駆動装置2は、データドライバスタートパルスSPX、データドライバクロック信号CLX、及びデータドライバクロック反転信号CBXを生成して表示パネル部3に設けられたデータドライバ14に出力する。
【0022】
データドライバスタートパルスSPXは、走査線Y1〜Ynの一つを選択する毎に出力され、その選択した一つの走査線Y1〜Yn上の各画素20を図2において左から右へ点順次で選択するための信号である。データドライバクロック信号CLX及びデータドライバクロック反転信号CBXは、相補信号であって上記のデータドライバスタートパルスSPXを順番にシフトさせるための信号である。本実施形態では、画素20は、赤用の画素20R、緑用の画素20G、青用の画素20Bを一つの組としている。
【0023】
そして、データドライバクロック信号CLX、データドライバクロック反転信号CBXに応答して1組を1単位としてデータドライバスタートパルスSPXがシフトされて、図2において左から右に順番に1組の画素20R,20G,20Bを選択するようになっている。また、周辺駆動装置2は、基本クロック信号CLKに基づいてラッチ転送信号LATを生成してデータドライバ14に出力する。ラッチ転送信号LATは、選択された走査線上の各画素20において点順次で書き込まれたデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBを所定のタイミングで保持(ラッチ)するための信号である。
【0024】
また、図4に示す通り、周辺駆動装置2は、kビット(kは自然数)の行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1、行選択ドライバ出力制御信号INHY、及び行選択ドライバラッチ転送信号LATYを生成して表示パネル部3に設けられた行選択ドライバ13に出力する。行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1は、それぞれ走査線Y1〜Ynを特定するアドレス信号であって、その行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1が出力される順番は非順次であって、周辺駆動装置2に設けられたグラフィックコントローラ6によって制御される。従って、周辺駆動装置2は、非順次に出力される行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1に対して、その行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1に対応して選択される走査線Y1〜Yn上の各画素20のためのデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBをこれに合わせてデータドライバ14に出力するようになっている。
【0025】
行選択ドライバラッチ転送信号LATYは、図4に示す通り、行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1が入力される毎に出力される信号である。また、行選択ドライバ出力制御信号INHYは、図4に示す通り、各サブフレームにおいて最初の走査線を選択する際に1回だけHレベルとなり、以後はLレベルとなる信号である。
【0026】
周辺駆動装置2は、主記憶部5に記憶されている画像データに基づいて、各画素20(20R,20G,20B)の赤用デジタルデータ信号VDR、緑用デジタルデータ信号VDG、青用デジタルデータ信号VDBを生成する。周辺駆動装置2は、生成したこれらデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBを前述したデータドライバクロック信号CLX及びデータドライバクロック反転信号CBXに同期してデータドライバ14に出力する。
【0027】
つまり、周辺駆動装置2は、データドライバクロック信号CLX及びデータドライバクロック反転信号CBXに同期して選択された走査線上の各画素20(20R,20G,20B)であって左から右に順番に点順次に選択画素のデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBを出力する。デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBは、2値のデジタルデータであって、対応する画素20の有機EL素子25R,25G,25Gを発光させるか否かを決定するデータである。そして、デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBがHレベルの場合には発光させるデータで、デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBがLレベルの場合には発光させないデータとしている。
【0028】
ところで、周辺駆動装置2は、1フレームを4つの時間比の異なるサブフレーム及び1つの補助フレームに分割し、発光させるサブフレームを適宜選択するとともに非順次選択駆動により走査線Y1〜Ynを駆動することによって階調を表現している。尚、ここでの補助サブフレームは、各画素20(20R,20G,20B)の有機EL素子25R,25G,25Bを発光させない場合に用いられるサブフレームである。図5は、サブフレームの概念を説明するための図である。
【0029】
図5に示す通り、画像データの階調を16階調で表現するため、1フレームを4つの第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び1つの補助サブフレームSF5に分割し、第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5の期間TL1〜TL4及び期間TL5を、TL1:TL2:TL3:TL4:TL5=1:2:4:8:2となる時間比で設定されている。尚、この時間比はあくまでも一例であって、適宜任意の時間比に設定することができる。
【0030】
そして、階調データDが「15」階調の場合、第1〜第4サブフレームSF1〜SF4の全てを選択し、発光期間T(=TL1+TL2+TL3+TL4)でだけ発光させて、「15」階調の画像データの輝度の発光が得られるようにする。また、例えば画像データが「6」階調の場合、第2サブフレームSF2及び第3サブフレームSF3のみを選択して、その発光期間T(=TL2+TL3)だけ発光させることによって、画素20を「6」階調の輝度で発光をさせる。つまり、データ線X1〜X3mに「15」階調に対応する最も大きなデータ電流Imaxを供給し、画像データの階調に応じて発光期間Tを変更することによって、画素20をその画像データの階調に対応する輝度で発光させる。
【0031】
このため、周辺駆動装置2、各画素20毎にその画素20の画像データに基づいて1フレームの各サブフレームSF1〜SF4におけるデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBを作成する。つまり、周辺駆動装置2は、各サブフレームSF1〜SF4において有機EL素子25R,25G,25Bの発光・非発光を決める2値からなるデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBを作成する。更に、周辺駆動装置2は、非順次選択駆動を行うに際してルックアップテーブル7に格納されたデータに基づいた順で作成したデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBの転送を行っている。
【0032】
〔行選択ドライバ13〕
次に、行選択ドライバ13について説明する。図6は、行選択ドライバ13の構成を示す回路図である。図6に示す通り、行選択ドライバ13は、周辺駆動装置2からの行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1、行選択ドライバ出力制御信号INHY、及び行選択ドライバラッチ転送信号LATYを入力としている。行選択ドライバ13は、デコーダ13f、選択回路13g、及びレベルシフタ13hを含んで構成されている。
【0033】
デコーダ13fは、複数のインバータ回路80、複数のNAND回路81、及び走査線Y1〜Ynに対応して設けられたn個のNOR回路82を有し、kビットの行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1を入力する。このデコーダ13fは、入力したkビットの行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1に基づいてn本の走査線Y1〜Ynの中の1本の走査線を特定し、その特定した走査線に対応するNOR回路82からLレベルの出力信号を出力する。従って、行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1が入力されるごとに、n個のNOR回路82の中のいずれか一つからHレベルの出力信号を次段の選択回路13gに出力する。
【0034】
選択回路13gは、走査線Y1〜Ynに対応してn個の保持回路85を有している。各保持回路85は、スイッチ85a、ラッチ部85b、NOR回路85c,85d、及びインバータ回路85eを有している。スイッチ85aはNチャネルMOSトランジスタからなり、対応するNOR回路82とラッチ部85bとの間に接続されていて、そのゲートにHレベルの行選択ドライバラッチ転送信号LATYが入力されると、NOR回路82からの出力信号をラッチ部85bにラッチさせる。
【0035】
Hレベルの行選択ドライバラッチ転送信号LATYは、図4に示す通り、行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1が入力される毎に出力される。従って、全ての保持回路85のラッチ部85bうちの対応する一つのラッチ部85bのみがHレベルの出力信号をラッチし残る全てのラッチ部85bはLレベルの出力信号をラッチすることになる。
【0036】
ラッチ部85bは2個のインバータ回路からなり、NOR回路82からの出力信号をラッチする。ラッチ部85bがラッチした出力信号は、NOR回路85cに出力される。NOR回路85cは、2入力端子のNOR回路であって、一方の入力端子にはラッチ部85bがラッチした出力信号が入力され、他方の入力端子には、行選択ドライバ出力制御信号INHYが入力される。行選択ドライバ出力制御信号INHYは、図4に示す通り、各サブフレームSF1〜SF5において、最初の走査線を選択する際に、1回だけHレベルとなり、以後はLレベルとなる信号である。
【0037】
従って、NOR回路85cは、行選択ドライバ出力制御信号INHYがLレベルで、ラッチ部85bからLレベルの信号が出力されると、次段のインバータ回路85eからLレベルの信号を出力する。また、NOR回路85cは、行選択ドライバ出力制御信号INHYがLレベルで、ラッチ部85bからHレベルの信号が出力されると、次段のインバータ回路85eからHレベルの信号を出力する。この信号は、走査信号SC1〜SCnとしてレベルシフタ13hのバッファ回路87を介して対応する走査線Y1〜Ynに出力される。
【0038】
以上の構成により、第1サブフレームSF1において、例えば上から第1番目の走査線Y1→第24番目の走査線Y24→第100番目の走査線Y100→第200番目の走査線Y200→第2番目の走査線Y2→…といった、非順次の選択が、周辺駆動装置2から出力される行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1に基づいて行われる。このとき、周辺駆動装置2は、データドライバ14に対して、走査線Y1上の各画素20→走査線Y24の各画素20→走査線Y100の各画素20→走査線Y200の各画素20→走査線Y2の各画素20→……の順でその各画素20のデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBが点順次で出力する。そして、選択された走査線上の各画素20がデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBに基づいてデータ電流IDR,IDG,IDBに相対した供給電流Ioledで発光動作する。
【0039】
〔データドライバ14〕
次に、データドライバ14について説明する。図7は、データドライバ14の構成を示す回路図である。図7に示す通り、データドライバ14は、周辺駆動装置2からのデータドライバスタートパルスSPX、データドライバクロック信号CLX、及びデータドライバクロック反転信号CBXを入力する。また、データドライバ14は、周辺駆動装置2から赤用デジタルデータ信号VDR、緑用デジタルデータ信号VDG、青用デジタルデータ信号VDBを入力する。更に、データドライバ14は、周辺駆動装置2からラッチ転送信号LATを入力する。そして、データドライバ14は、これら各信号に基づいて各データ線X1〜X3mに走査線Y1〜Ynの選択動作に同期してデータ線X1〜X3mの各々を駆動するためのデータ電流Id1〜Id3mを供給する。
【0040】
データドライバ14は、シフトレジスタ14a、第1ラッチ回路14b、及び第2ラッチ回路14cを含んで構成されている。以下、これらの構成について順に説明する。
【0041】
[シフトレジスタ14a]
図7に示す通り、シフトレジスタ14aは、3m本のデータ線X1〜X3mであって3本のデータ線を1組としその組数に対応した数(m個)の保持回路40を有している。尚、図7では、説明の便宜上、3個の保持回路40のみを図示している。各保持回路40は、インバータ回路41、ラッチ部42、NAND回路43、及びインバータ回路44から構成されている。
【0042】
各保持回路40のインバータ回路41は、奇数段目の保持回路40のインバータ回路41にはデータドライバクロック信号CLXが、偶数段目の保持回路40のインバータ回路41にはデータドライバクロック反転信号CBXが同期信号として入力される。奇数段目の保持回路40のインバータ回路41は、データドライバクロック信号CLXの立ち上がりに応答してデータドライバスタートパルスSPXを入力しラッチ部42に出力する。偶数段目の保持回路40のインバータ回路41は、データドライバクロック反転信号CBXの立ち上がりに応答してデータドライバスタートパルスSPXを入力しラッチ部42に出力する。
【0043】
各保持回路40のラッチ部42は、2個のインバータ回路からなり、奇数段目の保持回路40のラッチ部42にはデータドライバクロック反転信号CBXが、偶数段目の保持回路40のラッチ部42にはデータドライバクロック信号CLXが同期信号として入力される。奇数段目の保持回路40のラッチ部42は、データドライバクロック反転信号CBXの立ち上がりに応答してインバータ回路41からのデータドライバスタートパルスSPXを入力し保持する。偶数段目の保持回路40のラッチ部42は、データドライバクロック信号CLXの立ち上がりに応答してインバータ回路41からのデータドライバスタートパルスSPXを入力し保持する。各ラッチ部42は、保持したデータドライバスタートパルスSPXを次段の保持回路40のインバータ回路41に出力する。
【0044】
従って、周辺駆動装置2から出力されたHレベルのデータドライバスタートパルスSPXは、データドライバクロック信号CLX及びデータドライバクロック反転信号CBXに同期して、3本のデータ線X1〜X3に対応する保持回路40から順番にデータ線X3m−2〜X3mに対応する保持回路40までシフトされていく。
【0045】
保持回路40のNAND回路43は、その入力端子の一方がラッチ部42の出力端子に接続され、他方が次段の保持回路40に設けられたラッチ部42の出力端子に接続されている。従って、各保持回路40のNAND回路43は、その保持回路40のラッチ部42及び次段の保持回路40のラッチ部42が共にHレベルのデータドライバスタートパルスSPXを保持すると、Lレベルの信号を出力する。そして、NAND回路43は、その保持回路40のラッチ部42がそのデータドライバスタートパルスSPXをシフトさせるとHレベルの信号を出力する。以後、新たなデータドライバスタートパルスSPXをラッチ部42がそれぞれ保持するまで、NAND回路43はHレベルの信号を出力する。
【0046】
尚、保持回路40(NAND回路43)から出力される信号がLレベルに立ち下がってからHレベルに立ち上がるまでの期間は、データドライバクロック信号CLX(走査ドライバクロック反転信号CBX)の1/2周期となる。各保持回路40に設けられたNAND回路43の出力信号は、インバータ回路44を介してレベル反転されて反転出力信号UBXとして第1ラッチ回路14bに出力される。尚、図4では、m個のNAND回路43に基づく反転出力信号UBXを、図7中の左側から順にUBX1,UBX2,UBX3,…,UBXm−1,UBXmと表記している。
【0047】
[第1ラッチ回路14b]
第1ラッチ回路14bは、シフトレジスタ14aに設けられる各保持回路40から順番に出力される反転出力信号UBXを入力している。また、第1ラッチ回路14bは、各画素20R,20G,20B毎の赤用デジタルデータ信号VDR、緑用デジタルデータ信号VDG、青用デジタルデータ信号VDBを、各保持回路40から順番に出力される反転出力信号UBXに同期して入力する。
【0048】
第1ラッチ回路14bは、各保持回路40に対応した数の第1メモリ部45を有している。各第1メモリ部45は、3個のラッチ部45R,45G,45Bと3個のNチャネルMOSトランジスタからなるスイッチQR1,QG1,QB1を有している。スイッチQR1,QG1,QB1は、そのゲートに反転出力信号UBXが入力されており、Hレベルの反転出力信号UBXが入力されるとオン状態となる。
【0049】
ラッチ部45Rは、2個のインバータ回路からなり、スイッチQR1を介して赤用デジタルデータ信号VDRが入力されるようになっている。また、ラッチ部45Gは、2個のインバータ回路からなり、スイッチQG1を介して緑用デジタルデータ信号VDGが入力されるようになっている。同様に、ラッチ部45Bは、2個のインバータ回路からなり、スイッチQB1を介して青用デジタルデータ信号VDBが入力されるようになっている。
【0050】
そして、各ラッチ部45R,45G,45Bは、対応する保持回路40からのLレベルの反転出力信号UBXに応答して、その時の周辺駆動装置2から出力された赤用デジタルデータ信号VDR、緑用デジタルデータ信号VDG、青用デジタルデータ信号VDBをそれぞれ保持する。つまり、第1ラッチ回路14bの各第1メモリ部45は、図中左側から順番に対応する保持回路40から出力される反転出力信号UBXに応答して、赤用デジタルデータ信号VDR、緑用デジタルデータ信号VDG及び青用デジタルデータ信号VDBを記憶する。そして、各第1メモリ部45に記憶された各デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBは第2ラッチ回路14cに出力される。
【0051】
[第2ラッチ回路14c]
第2ラッチ回路14cは、各第1メモリ部45に対応した数の第2メモリ部46を有している。各第2メモリ部46は、3個のラッチ部46R,46G,46Bと3個のNチャネルMOSトランジスタからなるスイッチQR2,QG2,QB2を有している。スイッチQR2,QG2,QB2は、そのゲートにラッチ転送信号LATが入力されており、Hレベルのラッチ転送信号LATが入力されるとオン状態となる。
【0052】
ラッチ部46Rは、2個のインバータ回路からなり、スイッチQR2を介して前段のラッチ部45Rが保持した赤用デジタルデータ信号VDRが入力されるようになっている。また、ラッチ部46Gは、2個のインバータ回路からなり、スイッチQG2を介して前段のラッチ部45Gが保持した緑用デジタルデータ信号VDGが入力されるようになっている。同様に、ラッチ部46Bは、2個のインバータ回路からなり、スイッチQB2を介して前段のラッチ部45Bが保持した青用デジタルデータ信号VDBが入力されるようになっている。
【0053】
そして、第2メモリ部46の各ラッチ部46R,46G,46Bは、Hレベルのラッチ転送信号LATに応答して、対応する第1メモリ部45の各ラッチ部46R,46G,46Bから赤用デジタルデータ信号VDR、緑用デジタルデータ信号VDG、青用デジタルデータ信号VDBをそれぞれ保持する。このHレベルのラッチ転送信号LATは、第2ラッチ回路14cの全ての第2メモリ部46に同時に出力される。従って、第1ラッチ回路14bの全ての第1メモリ部45に記憶された各デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBは、一斉に対応する第2ラッチ回路14cの第2メモリ部46に記憶される。そして、第2ラッチ回路14cの各第2メモリ部46に記憶された各デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBは、データ線X1〜X3mにデータ電流Id1〜Id3mとして出力される。
【0054】
次に、上記構成における有機EL表示装置1の動作について説明する。まず、周辺駆動装置2が備えるCPU(中央処理装置)は、主記憶部5に記憶された画像データを読み出し、主記憶部5を用いて展開処理等の各種処理を行ってグラフィックコントローラ6に出力する。1フレーム分の画像データがグラフィックコントローラ6に入力されると、グラフィックコントローラ6は、各画素20毎に第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5におけるデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBを作成する

【0055】
そして、1フレーム分の各画素20の第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5におけるデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBが作成されると、グラフィックコントローラ6は、ルックアップテーブル7に格納されたデータを読み出して、デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBの転送順を入れ替える。また、グラフィックコントローラ6は、デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBの転送順の入れ替えとともに、行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1の入れ替えも行う。ここで、グラフィックコントローラ6は、走査線Y1〜Yn毎の第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5の選択タイミングが不規則となるようにデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBの転送順及び行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1の入れ替えを行う。
【0056】
以上の処理が終了すると、グラフィックコントローラ6は、入れ替えを行ったデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBをVRAM9に出力するとともに、入れ替えを行った行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1を同期信号とともにタイミングコントローラ8に出力する。そして、デジタルデータ信号VDR,VDG,VDBは、図4に示すデータドライバスタートパルスSPX、データドライバクロック信号CLX、及びデータドライバクロック反転信号CBX並びにラッチ転送信号LATとともにデータドライバ14へ出力され、行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1は、行選択ドライバ出力制御信号INHY及び行選択ドライバラッチ転送信号LATYとともに行選択ドライバ13へ出力されて表示パネル11の表示が行われる。
【0057】
図8は、本実施形態による有機EL装置の駆動方法を説明するための図であって、(a)は、従来の駆動方法を示す図であり、(b)は本発明を適用した駆動方法を示す図である。図8(a)の左側縦方向沿って記されている番号(「1」〜「10」)は走査線Y1〜Ynの番号(行番号)を表しており、横方向に時間を取ってある。行番号「1」の走査線を参照すると、1フレーム期間が4つのサブフレームSF1〜SF4と1つの補助サブフレームSF5とに分割されていることが分かる。
【0058】
尚、図8(a)においては理解を容易にするため、サブフレームSF1の1/3の時間を単位として時間方向に時間を区切って図示している。このため、例えば行番号「1」の走査線を参照すると、サブフレームSF1については時間方向に3つのマスに区切られており、サブフレームSF1の2倍の時間比に設定されたサブフレームSF2については、時間方向に6つのマスに区切られていることが分かる。
【0059】
図8(a)に示す通り、従来の駆動方法においては、まず行番号「1」の走査線、行番号「7」の走査線、及び行番号「3」の走査線の順で非順次選択駆動される。ここで、行番号「1」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF1が選択され、行番号「7」の走査線が選択されたときにはサブフレームSF4が選択され、行番号「3」の走査線が選択されたときには補助サブフレームSF5が選択されている。
【0060】
次に、行番号「1」の走査線、行番号「10」の走査線、行番号「2」の走査線、行番号「8」の走査線、行番号「4」の走査線、及び行番号「2」の走査線の順で非順次選択駆動される。ここで、行番号「1」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF2が選択され、行番号「10」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF3が選択され、先に行番号「2」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF1が選択され、行番号「8」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF4が選択され、行番号「4」の走査線が駆動されたときには補助サブフレームSF5が選択され後に行番号「2」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF2が選択される。以下、図8(a)に示す通りの非順次選択駆動が行われる。
【0061】
以上の走査及びサブフレームの選択を行うと、図8(a)に示す通り、1フレーム内において、選択したサブフレームが時間方向及び走査線の並び方向(図8(a)中の縦方向)に規則性を有する。これによって、各画素20に設けられた有機EL素子25R,25G,25Bの発光タイミングに規則性が生じて有機EL装置1に表示させる画像によってはちらつきが生じることがある。これに対し、本発明を適用した駆動方法では、走査線毎の第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5の選択タイミングが不規則となるようにデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBの転送順及び行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1の入れ替えを行っている。
【0062】
図8(b)においては、図8(a)と同様に、図左側縦方向沿って走査線Y1〜Ynの番号(行番号)を番号「1」〜「10」として表している。尚、図8(a)中の走査線に相当するサブフレームの選択を行っている走査線の行番号を括弧書きで表している。図8(b)においても、行番号「1」の走査線を参照すると、1フレーム期間が4つのサブフレームSF1〜SF4と1つの補助サブフレームSF5とに分割されていることが分かる。尚、図8(b)においても、理解を容易にするため、サブフレームSF1の1/3の時間を単位として時間方向に時間を区切って図示している。
【0063】
図8(b)に示す通り、本発明を適用した駆動方法においては、まず行番号「1」の走査線、行番号「5」の走査線、及び行番号「10」の走査線の順で非順次選択駆動される。ここで、行番号「1」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF1が選択され、行番号「5」の走査線が選択されたときにはサブフレームSF4が選択され、行番号「10」の走査線が選択されたときには補助サブフレームSF5が選択されている。
【0064】
次に、行番号「1」の走査線、行番号「9」の走査線、行番号「6」の走査線、行番号「8」の走査線、行番号「3」の走査線、及び行番号「6」の走査線の順で非順次選択駆動される。ここで、行番号「1」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF2が選択され、行番号「9」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF3が選択され、先に行番号「6」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF1が選択され、行番号「8」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF4が選択され、行番号「3」の走査線が駆動されたときには補助サブフレームSF5が選択され後に行番号「6」の走査線が駆動されたときにはサブフレームSF2が選択される。以下、図8(b)に示す通りの非順次選択駆動が行われる。
【0065】
図8(b)を参照すると、走査線の選択順は変わっているもののサブフレームの選択順は変わってないことが分かる。つまり、本実施形態の駆動方法では、走査線の選択及びサブフレームの選択に関しては隣接する走査線におけるサブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように図8(a)の走査線の順番を入れ替える駆動と等価な駆動が行われている。以上の走査及びサブフレームの選択を行うと、図8(b)に示す通り走査線毎の第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5の選択タイミングが不規則になっていることが分かる。このため、表示画像のちらつきを抑制することができ、この結果として良好な画像表示を行うことができる。
【0066】
尚、以上説明した実施形態では、1フレーム内において走査線毎の第1〜第4サブフレームSF1〜SF4及び補助サブフレームSF5の選択タイミングが不規則となるようにデジタルデータ信号VDR,VDG,VDBの転送順及び行選択ドライバアドレス信号AY0〜AYk−1の入れ替えを行う場合を例に挙げて説明したが、1フレーム内の一部のみについて入れ替えを行うようにしても良い。
【0067】
本実施形態では、走査線の選択及びサブフレームの選択に関しては図8(a)の走査線の順番を入れ替える駆動と等価な駆動を行っているため、例えば画像の中央部のみについてちらつきを抑制するための駆動を行いその他の部分は従来の方法で駆動するといった柔軟な運用を容易に行うことができる。また、駆動方法を変更するには、ルックアップテーブル7に格納されたデータの内容を変更するだけで良いため、装置構成の複雑化及びコスト上昇をさほど招かずにちらつきを抑制することができる。また、テーブルの内容を変更するだけで走査線の非順次選択の仕方を変えることができるため、装置構成の大幅な変更を招くこともない。
【0068】
更に、前のフレームの状態に応じて次のフレームについて本実施形態の駆動方法を適用するか否かを制御するようにしても良い。かかる駆動を行うことにより、例えば静止画を表示するときにちらつきが生ずる可能性が大きい場合には本発明による非順次選択駆動を行い、動画を表示するときにちらつきが生ずる可能性が大きい場合には従来の非順次選択駆動を行うといった柔軟な運用を行うことができる。
【0069】
尚、上記実施形態では、16階調の階調表示を行う場合を例に挙げて説明したが、32階調、128階調、256階調等の階調表示を行う場合にも本発明を適用することができる。また、上記実施形態では、電気光学素子として有機EL素子25R,25G,25Bについて具体化したが、無機エレクトロルミネッセンス素子に具体化してもよい。つまり、無機エレクトロルミネッセンス素子からなる無機エレクトロルミネッセンス表示装置に応用してもよい。更に、上記実施形態では、有機EL素子を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)FED(Field Emission Display)やSED(Surface-Conductive Electron-Emitter Display)等にも適用可能である。
【0070】
〔電子機器〕
次に、本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、上述したEL表示装置1を表示部として備えるものであり、具体的には図9に示すものが挙げられる。図9は、本発明の電子機器の例を示す図である。図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、携帯電話1000は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1001を備える。図9(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(b)において、時計1100は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1101を備える。図9(c)は、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、上述したEL表示装置1を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。図9(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、上述したEL表示装置1を有した表示部1001,1101,1206を備えているので、表示部を構成するEL表示装置の発光素子の長寿命化が図られたものとなる。
【0071】
尚、本実施形態の有機EL装置1は、上記の電子機器以外に、ビューワ、ゲーム機等の携帯情報端末、電子書籍、電子ペーパ等種々の電子機器に適応できる。また、有機EL装置1は、ビデオカメラ、デジタルカメラ、カーナビゲーション、カーステレオ、運転操作パネル、パーソナルコンピュータ、プリンタ、スキャナ、テレビ、ビデオプレーヤー等種々の電子機器にも適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態による有機EL装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】表示パネル部3の構成を示すブロック図である。
【図3】表示パネル11の左上隅に位置する画素20の構成を示す回路図である。
【図4】周辺駆動装置2から表示パネル部3に出力される各信号のタイミングチャートである。
【図5】サブフレームの概念を説明するための図である。
【図6】行選択ドライバ13の構成を示す回路図である。
【図7】データドライバ14の構成を示す回路図である。
【図8】本実施形態による有機EL装置の駆動方法を説明するための図である。
【図9】本発明の電子機器の例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1……有機EL装置
2……周辺駆動装置(駆動装置)
7……ルックアップテーブル(テーブル)
25R,25G,25B……有機EL素子(発光素子)
SF1〜SF4……サブフレーム
SF5……補助サブフレーム
X1〜X3m……データ線
Y1〜Yn……走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、当該走査線に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して配設された発光素子と、前記データ線に供給する画像信号により表現される階調数に応じて1フレームを複数のサブフレームに分割し、当該サブフレームを単位として前記発光素子の発光を制御するとともに、前記走査線を非順次選択駆動する駆動装置とを備える有機EL装置において、
前記駆動装置は、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように前記走査線を非順次選択駆動することを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが1フレーム内の少なくとも一部において不規則となるように前記走査線を非順次選択駆動することを特徴とする請求項1記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングを不規則にするテーブルを備え、当該テーブルの内容に従って前記走査線を非順次選択駆動することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前のフレームの状態に応じて次のフレームについて前記非順次選択駆動を行うか否かを制御することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、隣接する走査線における前記サブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように前記非順次選択駆動を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
複数の走査線と、当該走査線に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して配設された発光素子とを備える有機EL装置の駆動方法であって、
前記データ線に供給する画像信号により表現される階調数に応じて1フレームを複数のサブフレームに分割し、当該サブフレームを単位として前記発光素子の発光を制御するとともに、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが不規則となるように前記走査線を非順次選択駆動することを特徴とする有機EL装置の駆動方法。
【請求項7】
前記走査線の非順次選択駆動は、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングが1フレーム内の少なくとも一部において不規則となるように行われることを特徴とする請求項6記載の有機EL装置の駆動方法。
【請求項8】
前記走査線の非順次選択駆動は、前記走査線毎の前記サブフレーム各々の選択タイミングを不規則にするテーブルの内容に従って行われることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の有機EL装置の駆動方法。
【請求項9】
前記走査線の非順次選択駆動は、前のフレームの状態に応じて行われることを特徴とする請求項6から請求項8の何れか一項に記載の有機EL装置の駆動方法。
【請求項10】
前記走査線の非順次選択駆動は、隣接する走査線における前記サブフレーム各々の選択タイミングが規則性を有しないように行われることを特徴とする請求項6から請求項9の何れか一項に記載の有機EL装置の駆動方法。
【請求項11】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−251315(P2006−251315A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67187(P2005−67187)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】