説明

朝鮮人参多糖体抽出物を含む肝疾患予防及び治療用組成物

本発明は、肝保護または肝疾患予防及び治療に使用され得る朝鮮人参多糖体抽出物、及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む、肝疾患予防及び治療用組成物並びに食品組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝保護または肝疾患予防及び治療に使用され得る朝鮮人参多糖体抽出物、及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む、肝疾患予防及び治療用組成物並びに食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2001年統計庁の死亡原因統計結果によれば、肝疾患が韓国における死亡原因の5位を占めており、OECD会員国の[OECD Health Data]に死亡原因統計が収録された29ケ国のうち、肝疾患死亡者の面からみて、韓国(22.3名)は、ハンガリー(57.3名)、メキシコ(43.2名)に次いで3位と高い順位を占めている。現在、全世界の慢性肝疾患患者の数は約6〜8億名に達するほど深刻であるが、肝は、沈黙の臓器であって、疾患初期には自覚症状がなく、肝の損傷度合いが所定の状態に達するまで発見することが難しいので、肝疾患の初期発見はそれだけ難しく、現存する治療剤から恩恵を受けることができる患者は半分程度であり、FDAで認められた肝損傷治療剤または肝硬変予防剤は未だない状況である。それゆえ、肝に負担を与えない長期的な薬物投与が可能であり、且つ患者が容易に摂取できるように、有機化学製品と比較して人体に無害で副作用の少ない天然物質から、新しい肝疾患治療剤の開発が盛んに行われている。
【0003】
肝は、われわれの身に必要な数千種の酵素を生産するヒトの身体臓器のうち、生体内代謝が最も活発に起こる臓器であって、人体内消化器系と全身循環系との間に位置し、各種有毒物質から人体を防御する上で重要である。生体内に入ってきた物質は一応肝を通過するから、肝は栄養素以外にも多くの毒性物質に曝される危険が他の臓器より多いため、それだけ損傷する確率も非常に高い。ところが、肝は再生能力に優れた臓器であって、僅かの損傷がある場合には十分に正常に回復するが、ストレス性慢性疲労、脂肪成分含有飲食物またはアルコールの過度な摂取、各種薬品などのような有害物質、栄養不足、ウイルス感染(HCV、HBVなど)、自己免疫疾患などの刺激に持続的に曝されると、炎症反応と細胞死滅過程を経て肝損傷が生ずる。特に、飲食を介した過多な脂肪摂取または過度なアルコール摂取は、肝の組織に間質がたまる脂肪肝を誘発し、この際、血清中のsGOT(serum glutamate-oxaloacetate transaminase)、sGPT(serum glutamate-pyruvate transaminase)などが増加する。損傷した肝は肝星状細胞が活性化されて肝炎を経て肝線維化に進展し、さらに肝硬変を経て肝癌に進行する。肝硬変は、肝線維化が多く進行して非可逆的な状態となる場合を意味し、各種深刻な合併症、例えば肝癌、腹水症、腹膜炎及び静脈瘤出血などをもたらす。
【0004】
最近では、動物モデルが開発されて肝疾患治療剤の開発に大きく寄与しているが、毒性物質による肝疾患治療剤を開発するためには、四塩化炭素(CCL)で誘導された動物モデルが用いられている。四塩化炭素は、脂肪変性(fatty degeneration)、線維症、肝細胞死及び発癌などを誘発させるもので、毒性物質が肝細胞に及ぼす影響及びその代謝過程の解明に用いられる代表的な物質であって、肝細胞培養、肝切片培養、及びマウスまたはラットへの直接投与方法などを用いた肝毒性の研究に広く用いられている。四塩化炭素は、肝において複合的な機能を果たすシトクロム(cytochrome)P450などの代謝酵素によって代謝され、非常に毒性の強いフリーラジカルであるCClとClを形成する。フリーラジカルのCClは、蓄積された肝中性脂肪または膜リン脂質にある脂肪酸の酸化を誘発して脂質の酸敗を引き起こし、脂質過酸化反応を促進するために酸素と結合する。このような脂質過酸化作用を介して肝臓に脂肪が蓄積され、タンパク質合成能力は減少してグリコゲンに分解され、ミトコンドリア、DNA、細胞膜などの細胞構造物に影響を及ぼして細胞を損傷または死滅させる(Recknagel, R. O., et al., Pharmacol.Rev., 19, pp145-208, 1967; Chang, I.M., et al., Drug and chemical toxicology, 6(5), pp442-453, 1983)。また、TNF−α(tumor necrosis factor)、NO(Nitric oxide)、TGF−β(transforming growth factor)などを活性化させて細胞壊死を誘導し或いは線維化を進行させる(Sato et al., The protective effect of hepatocyte growth-promoting factor (pHGF) against carbon tetrachloride-induced acute liver injury in rat: an ultrastructural study, Med Eletron Microsc 32, 184-192. 1999)。すなわち、四塩化炭素は、肝におけるタンパク質の生合成を抑制し、血中GOT、GPTの増加を引き起こし、組織学的には小葉中心性肝細胞壊死を生じさせる。
【0005】
一般に用いられる肝疾患の治療方法は、大きく食餌療法と薬剤療法とに区分されており、大部分がこれらの2つの方法を併用している。現在、使用されている代表的な肝疾患治療剤は、シリマリン(silymarin)とビフェニルジカルボン酸ジメチル(biphenyl dimethyl dicarboxylate、BDD)がある。ところが、実際、肝疾患は一つの原因によってのみ発生するのではなく、様々な要因の複合的な作用によって発病するから、根源的な治療概念を有する薬物は殆どない実情である。従って、その治療においてもいずれか一つの作用メカニズムを有する薬剤のみによっては、全ての肝疾患に対して十分に満足すべき高い治療効果を期待することができない。例えば、急性肝疾患の治療の場合、薬物療法の代わりに、休養、高タンパク質食餌及びビタミン類の十分な供給といった方法が推奨される。前記シリマリン、BDDなどの薬物は、予防目的で使用するのではなく、治療目的で、すなわち肝炎治療の必要性がある場合にのみ使用されている。
【0006】
このような動物モデルを用いて、肝機能を保護して肝炎を予防または治療できる薬剤が様々に開発されており、その実例として、インドでは昔からチコリー(Cichorium Intybus)を肝疾患に利用してきたが、主要活性成分のCichorinは、四塩化炭素に曝されたマウスにおいて、75mg/kgの濃度で肝保護効果を有することが確認された(H.Kalantari Ph et al., Protective Property of Cichorium Intybus in CCl4 induced Liver Damage in mice. School of Pharmacy, Ahwaz university of Medical Sciences, Ahwaz, Iran.)。甘草の根から採取されるグリシルリジンは、化学構造上、トリテルペノイド系サポニン物質であって、米国では一般に安全であると思われる物質(GRAS:Generally Recognized as Safe)であると判断され、砂糖菓子、医薬品及びタバコに使用されており、癌と腫瘍の発生の抑制、肝保護効果、及び動脈硬化の改善が報告されたが、過用の際には性機能障害が生ずるおそれがあり、高血圧と浮腫を引き起こすことが報告された。この他にも、ウコン(Curcuma longa L)の肝解毒機能と抗癌作用が報告されたうえ、サポニン系のBupleuroside系列化合物(H. Maysuda et al., Bioorg. Med. Chem., 7, pp2193-2198, 1997)、ナリンギン(naringin)(K.Kawaguchi et al., Eur. J. Pharmacol., 368, pp1560-1567, 2001)、ケイトウ(Cleosia argentea)の種から抽出した多糖体などがDGalN/LPSで誘導された肝損傷モデルにおいて肝機能を保護し、実験動物の致死を抑制すると報告された(K.Hase et al., Biol. Pharm.. Bull., 19, pp567-572, 1996)。さらに、植物成分中に、肝臓の保護または肝炎の治療に効果的な多糖類や糖タンパクなどの成分が含まれていると報告されているが、植物に含まれている多糖類または糖タンパクが、実験的に肝毒性を有意に軽減させ、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae)から得たグルカン(glucan)が、大食細胞を刺激してウイルスに対する抵抗性を強化することが知られている(参照: Science 208:67-69, 1980)。ところが、朝鮮人参属植物の多糖体が肝疾患の予防及び治療に卓越した効果を発揮するという事実は、今まで全く知られていない。
【0007】
一方、本発明者らは、以前に、グルコース、ガラクトース、ガラクツロン酸、及びタンパク質からなる朝鮮人参多糖体が、放射線防御作用(韓国登録特許第144130号)を有するとともに、造血促進作用、骨髄防御作用及び放射線増感作用など(韓国登録特許第0361187号)を有することを報告した。ところが、前述した先行技術文献で報告された多糖体は、その多糖体の含有量及び組成において本発明によって抽出された多糖体とは異なるものであり、前記の疾患におけるそれらの作用メカニズムも互いに異なる。また、前記特許に記載された分離精製法は、工程が複雑で低収量であるため、製剤の開発において有利ではない。しかも、本発明者らは、組成物の構成においてグルコースとガラクトースの含量の変化が、活性に極めて大きい影響を及ぼすことを認めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第144130号
【特許文献2】韓国登録特許第0361187号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Recknagel, R. O., et al., Pharmacol.Rev., 19, pp145-208, 1967
【非特許文献2】Chang, I.M., et al., Drug and chemical toxicology, 6(5), pp442-453, 1983
【非特許文献3】Sato et al., The protective effect of hepatocyte growth-promoting factor (pHGF) against carbon tetrachloride-induced acute liver injury in rat: an ultrastructural study, Med Eletron Microsc 32, 184-192. 1999
【非特許文献4】H.Kalantari Ph et al., Protective Property of CichoriumIntybus in CCl4 induced Liver Damage in mice. Schoolof Pharmacy, Ahwaz university of Medical Sciences, Ahwaz, Iran.
【非特許文献5】H. Maysuda et al., Bioorg. Med. Chem., 7, pp2193-2198, 1997
【非特許文献6】K.Kawaguchi et al., Eur. J. Pharmacol., 368, pp1560-1567, 2001
【非特許文献7】K.Hase et al., Biol. Pharm.. Bull., 19, pp567-572, 1996
【非特許文献8】Science 208:67-69, 1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
改善され効果的な肝炎治療剤または肝細胞保護剤の開発は行われ続けなければならず、本発明の目的もここにある。そこで、本発明者らは、白参(white ginseng)を水で抽出した後、濃縮し、エタノールを加えて、沈殿した多糖体を得、得られた多糖体が、マンノース1.2〜2.8重量%、グルコース64.1〜82.8重量%、ガラクトース10.0〜26.6重量%、及びアラビノース0.6〜5.4重量%を含み、試験管内の実験と四塩化炭素で誘発された肝疾患動物モデルにおいて、多様なメカニズムで肝を保護または治療する非常に優れた効能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の目的は、肝保護または肝疾患予防及び治療に使用され得る朝鮮人参多糖体抽出物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記朝鮮人参多糖体抽出物の製造方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む、肝疾患予防及び治療用組成物を提供することにある。
本発明の更なる目的は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む、肝線維化抑制組成物を提供することにある。
本発明の更なる目的は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む、肝保護及び肝機能改善効果を有する食品組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明の朝鮮人参多糖体は、代表的な肝毒性物質としての四塩化炭素、またはアセトアミノフェンによる肝損傷を有意に減少させるとともに、効果的に体内炎症反応を調節する。従って、本発明の朝鮮人参多糖体は、ストレス、飲酒による肝損傷、過度な薬物または食品により誘発された肝毒性を減少させるうえに、体内の炎症反応を調節して肝を保護する治療剤として使用することができる。また、経口投与または腹腔内投与の2つの投与方法のいずれにおいても効果があり、長期服用しても肝に何らの異常ももたらさないので、予防目的で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、朝鮮人参多糖体を様々な濃度で腹腔内投与したときに、肝毒性がないことを示す図である。
【図2】図2は、朝鮮人参多糖体の投与によって、四塩化炭素による肝毒性が有意に減少することを示す図である。
【図3】図3は、朝鮮人参多糖体の投与によって、アセトアミノフェンによる肝損傷が効果的に抑制されることを示す図である。
【図4】図4は、四塩化炭素による肝損傷が、朝鮮人参多糖体の投与によって減少することを示す肝組織染色写真である。
【図5】図5は、四塩化炭素によって損傷した肝組織において、朝鮮人参多糖体の投与により、シトクロムP450−2E1の発現が減少することを示す写真である。
【図6】図6は、四塩化炭素により誘発された肝損傷において、増加したケモカインが朝鮮人参多糖体の投与によって減少することを示す写真である。
【図7】図7は、朝鮮人参多糖体の投与による炎症性サイトカインの減少を示す写真である。
【図8】図8は、朝鮮人参多糖体の投与によって肝線維化が阻害されることを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記目的を達成するための一態様として、本発明は、肝保護または肝疾患予防及び治療に使用され得る朝鮮人参多糖体抽出物に関する。
【0015】
本発明に使用される朝鮮人参属植物の例としては、Panax ginseng C.A.Mayer、Panax quinquefolium、Panax notoginseng、Panax pseudoginseng、Panax japonicum、Panax vietnamensis Ha et Grushv.などが挙げられ、それらの中でも、特にPanax ginseng C.A.Mayerから由来したGinseng Radix Alba、すなわち白参が好ましい。白参は、Panax ginseng C.A.Mayerの細根と周皮とを除去してから乾燥させたものである。
【0016】
本発明に係る多糖体は、マンノース1.2〜2.8重量%、グルコース64.1〜82.8重量%、ガラクトース10.0〜26.6重量%、及びアラビノース0.6〜5.4重量%の糖を含む。
【0017】
本発明の朝鮮人参多糖体抽出物は、肝保護または肝疾患予防及び治療に使用され得、前記肝疾患は、脂肪肝、肝壊死、肝線維化、肝硬変、急/慢性肝炎及び肝癌を含む。
【0018】
本発明者らは、次の方法で本発明の朝鮮人参多糖体の肝保護効果を確認した。
具体的には、肝機能改善効果は様々なバイオマーカーを測定して評価し、代表的なバイオマーカーとしては、肝損傷の血清バイオマーカー、例えばALT(Alanine aminotransferase)、AST(Aspartate aminotransferase)、ALP(Alkaline phosphatase)、総ビリルビン及びアルブミンなどを使用した。肝細胞に壊死または損傷がある場合、それらの数値は正常範囲を逸脱し、薬物が肝細胞保護効果を有する場合、正常範囲に復帰する。
【0019】
まず、本発明者らは、本発明の朝鮮人参多糖体を単回投与または長期投与しても、対照群との間に、前述した肝損傷バイオマーカー値に有意差が見られないことを見出した。これは、本発明の朝鮮人参多糖体が、肝毒性を全く示さずに肝保護効能を有することを示唆する(図1及び表2参照)。
【0020】
また、本発明の朝鮮人参多糖体は、肝毒性物質、例えば四塩化炭素やアセトアミノフェンなどの投与によってマウスに肝損傷を誘導したとき、血清の肝損傷バイオマーカー値、脂質過酸化物の生成、四塩化炭素の代謝に対応する肝酵素「シトクロムP450−2E1」、及び肝損傷を加重させる炎症性サイトカイン及びケモカインの生成を有意に減少させた(図2〜図8参照)。
【0021】
また、劇症の炎症または組織変質の結果として生じる肝線維化が、朝鮮人参多糖体による前処理または後処理によって有意に減少したことから、肝線維化の防止または治療効能があることが示唆された(図8参照)。
【0022】
以上の実験結果より、本発明の朝鮮人参多糖体が肝保護または肝疾患予防及び治療に非常に有用であることが分かる。
【0023】
別の態様として、本発明は、前記朝鮮人参多糖体を朝鮮人参属植物から抽出する方法に関する。
【0024】
本発明に係る朝鮮人参多糖体抽出方法は、(a)人参属植物を細切して乾燥させた後、水に入れて0〜180℃で0.5〜20時間冷浸または加熱して抽出液を得る段階と、(b)前記抽出液を濃縮した後、有機溶媒を用いて多糖体を沈殿及び分離する段階と、(c)分離された多糖体から有機溶媒を除去して多糖体を得る段階とを含んでなる。
【0025】
前記段階(a)で、反応温度があまり低ければ、抽出量が非常に少ないうえ、工程の円滑な進行が難しく、逆に、前記段階(a)で反応温度があまり高ければ、一部の多糖が変質する可能性があるので好ましくなく、反応時間があまり短ければ、抽出量が非常に少なく、逆に、反応時間があまり長ければ、工程の経済性が低下するので好ましくない。前記「冷浸」は約0〜25℃で浸漬することを意味し、前記「加熱」は約50〜180℃で浸漬することを意味する。使用される水の量は、特に制限されるのではなく、容易な抽出のために朝鮮人参の根などの体積を基準として8〜20倍の水を使用することができる。本発明の具体的な実施例では、6年根朝鮮人参1kgを細切して乾燥させた後、水8Lで抽出した。
【0026】
前記段階(b)で、抽出液は、多糖体の効果的な回収のために濃縮するが、例えば、真空〜760mmHgの減圧条件で20〜90℃で加熱して濃縮することができる。濃縮された抽出液に有機溶媒を付加して多糖体を沈殿させるが、好ましくは、0.1〜1Mの塩化ナトリウム及び0.1〜1Mの低級アルコールまたはアセトンを使用する。有機溶媒は、抽出液の体積を基準として1〜5倍、好ましくは2〜4倍容で使用する。前記低級アルコールとしてはC5以下のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びペンタノールなどを使用することができ、好ましくはエタノールを、さらに好ましくは70〜90%(v/v)のエタノールを使用する。多糖体の分離は、濾過(限外濾過などを含む)、遠心分離、イオン交換樹脂、吸着樹脂及び透析などの多様な方法によって行われ得る。本発明の具体的な実施例では、前記抽出液を56℃で減圧蒸留し、濃縮された朝鮮人参溶液を80%(v/v)のエタノールで飽和させて沈殿物を収得した後、これを水で透析して分離した。
【0027】
前記段階(c)で有機溶媒を除去した後、乾燥を行って多糖体を粉末として得ることもできる。そのような乾燥方法として、熱風、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などが使用され得る。本発明の具体的な実施例では、前記段階(b)で得た分離液を凍結乾燥して朝鮮人参多糖体を製造した。
【0028】
以上、本発明に係る朝鮮人参多糖体の抽出方法について説明したが、朝鮮人参多糖体の抽出効率または純度を高めるために、一部工程の変形または付加を加えることができ、これらはいずれも本発明のカテゴリーに含まれるものと解釈されるべきである。
【0029】
更なる態様として、本発明は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む肝疾患予防及び治療用組成物、並びに前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む肝線維化抑制組成物に関する。
【0030】
本発明の朝鮮人参多糖体を医薬として使用する場合、薬学的製剤及びその投与方法において各種公知の方法を適用することができる。朝鮮人参多糖体を肝保護または肝疾患予防及び治療用薬学的組成物に製剤化する場合、有効成分に悪影響を及ぼさない限りは、必要に応じて医薬に使用される各種補助剤、例えば担体またはその他の添加剤、すなわち安定剤、緩和剤、乳化剤などを使用することができる。本発明の組成物は、前記有効成分以外に、薬学的に適し且つ生理学的に許容される補助剤を用いて製造することができ、前記補助剤としては、溶媒などの可溶化剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤及び香味剤を使用することができる。
【0031】
投与のために、本発明の薬学的組成物は、前述した有効成分に加えて、1種以上の薬学的に許容される担体を含有することができる。
【0032】
薬学的に許容される担体としては、生理食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、またはこれらの1種以上の混合液を使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。ひいては、文献『Remington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing company、Easton PA』に開示されている方法など、関連技術分野における適切な方法を用いて、各疾患に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0033】
本発明の組成物は、顆粒剤、散剤、被覆錠、錠剤、カプセル剤、坐剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤、及び活性化合物の徐放型製剤など、いかなる剤形としても調製することができる。
【0034】
本発明の朝鮮人参多糖体組成物の含有量は、通常の方法に従い、薬学的な剤形により広範囲に変更できる。
【0035】
本発明の組成物は、目的に応じて静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻側内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内及び皮内経路といった通常の経路を介して投与することができる。
【0036】
本発明の薬学的組成物の有効成分である朝鮮人参多糖体の投与量は、患者の状態と肝疾患の程度に応じて多様化され得るが、成人1日あたり10mg/kg〜500mg/kgの範囲内で調節できる。組成物の投与量は、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の種類及び含量、剤形の種類及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率(%)、治療期間、同時に使用される薬物などの多様な因子に応じて調節できる。
【0037】
更なる態様として、本発明は、前記朝鮮人参多糖体抽出物を有効成分として含む、肝保護及び肝機能改善効果を有する食品組成物に関する。
【0038】
本発明の食品組成物は、機能性食品、栄養補助剤(nutritional supplement)、栄養剤(nutrient)、ファーマフード(pharmafood)、健康食品(health food)、栄養補助食品(nutraceutical)、デザイナーフード(designer food)、食品添加剤(food additives)など全種類の食品を包含する。朝鮮人参多糖体を添加して調製することが可能な食品としては、例えば、各種食品類、飲料、チューインガム、茶、ビタミン複合体及び機能性食品類などがある。
【0039】
また、本発明の朝鮮人参多糖体は、肝保護または肝疾患予防効果を目的として、食品または飲料に添加することができる。その際、食品または飲料には、前記抽出物は、全食品重量に対し0.01〜20重量%、健康飲料組成物100mLに対し0.02〜10g加えることができる。
【0040】
本発明の健康飲料組成物は、朝鮮人参多糖体組成物を必須成分として上記に示した比で含有する以外は、風味剤、栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、香味剤(合成及び天然香味剤)、着色剤、充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などの他の一般的な添加剤を制限なく含有することができる。上記以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物、例えばレバウジオシドA、グリシルリジンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のため、果肉を含有することができる。かかる成分は単独で或いは組み合わせて使用することができる。前記添加剤の配合比率は、本発明の組成物100重量部当たり通常0〜約20重量部の範囲である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を下記の製造実施例及び実験例によって詳細に説明する。但し、下記の製造実施例及び実験例は、より容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0042】
製造実施例1.朝鮮人参多糖体の製造
6年根朝鮮人参1kgを細切して乾燥させた後、水8Lで抽出して水可溶性画分を56℃で減圧蒸留し、濃縮された朝鮮人参溶液を80(v/v)%のエタノールで飽和させて沈殿物を得た後、これを水で透析したうえ、凍結乾燥して朝鮮人参多糖体を製造した。
【0043】
製造実施例2.朝鮮人参多糖体の構成糖分析
製造実施例1の朝鮮人参多糖体20mgに2M−HCl 2mLを加えて100℃で24時間加熱して酸加水分解した後、1200rpmで5分間遠心分離して上澄液を取った。ここに2M−NaOHを加えて中和し、減圧濃縮した後、0.3M−NaOH 400μLを加えた。単糖類標準品は、100nM/0.3M−NaOH 100μLで作った後、試料と共にそれぞれ100μLを取った。 単糖類標準品及び試料各100μLに0.5M−PMP(1-phenyl-3-methyl-5-pyrazolone)メタノール溶液100μLを加えて70℃で30分間反応させた。その後、室温で冷却し、0.3M−HCl 100μLで中和した後、残余PMPをクロロホルムで抽出して除去し、上澄液である水溶液層を取って濃縮した。2倍量の水で希釈して孔径0.45μmのフィルターを通過させた後、高速液体クロマトグラフィー法で分析した。その条件は次のとおりである。
機器:Waters HPLC System(515 HPLC pumps)
ディテクター:Waters 490E UV Detector(検出波長:250nm)
カラム:Zorbax Extended−C18 column(4.6cmI.d×250mm、5μm)
カラム温度:35℃
流速:1mL/min
試料注入量:10μL
移動相:50mM Sodium phosphate(pH6.9)
−Buffer A:15% Acetonitrile(ACN)in Sod.phosphate buffer、
−Buffer B:40% Acetonitrile(ACN)in Sod.phosphate buffer
[グラディエント条件]時間(分) %A %B
Initial 100 0
10 92 8
30 80 20
50 100 0
【0044】
【表1】

【0045】
上記表1に示すように、朝鮮人参多糖体は、マンノース1.2〜2.8重量%、グルコース64.1〜82.8重量%、ガラクトース10.0〜26.6重量%、及びアラビノース0.6〜5.4重量%を含む糖から構成されている。
【0046】
(実験例)
前記製造実施例から朝鮮人参多糖体を製造した後、四塩化炭素により肝毒性が誘発された動物を対象として、次の生体内実験と試験管内実験を行った。
【0047】
実験例1.朝鮮人参多糖体単独投与の肝毒性実験
BALB/c雄マウスに、朝鮮人参多糖体を10、50、100、200mg/kgの投与量でそれぞれ腹腔内注射し、48時間後にマウスの血液を採取して血漿を分離した後、ALT、AST、ALP、総ビリルビン、及びアルブミンといった肝損傷の血清バイオマーカー値を測定した。対照群には、リン酸緩衝液を同様の方法で投与した。朝鮮人参多糖体単独投与群では、濃度を問わず、対照群と比較して、全ての肝損傷血清バイオマーカー値には、有意な変化は見られなかった(図1参照)。
【0048】
実験例2.朝鮮人参多糖体の長期投与が肝に及ぼす影響
BALB/c雄マウス(グループ当たり4匹)に朝鮮人参多糖体を1週に2回ずつ、100mg/kgを20週間経口投与し、2週ごとにグループ当たり4匹ずつ、マウスの眼球から血液を採取して血清を分離し、長期投与が肝毒性を誘発するかどうかを確認するため、血清バイオマーカーであるALT値を評価した。20週間にわたり、合計4000mg/kgの朝鮮人参多糖体を経口投与しても、対照群に比べてALT及びAST値には変化は見られず、朝鮮人参多糖体の長期投与に肝毒性作用のないことが示唆された(表2参照)。
【0049】
【表2】

【0050】
実験例3.朝鮮人参多糖体の四塩化炭素誘発肝損傷に対する肝保護効果
朝鮮人参多糖体の肝保護効果を評価するため、四塩化炭素により肝損傷を誘発したマウスにおいて、肝損傷の血清バイオマーカー値を測定した。BALB/c雄マウスに、朝鮮人参多糖体100mg/kg、及び陽性対照群として、肝保護効果を有することが立証され、既に広く用いられているシリマリン400mg/kgをそれぞれ腹腔内注射し、24時間後に四塩化炭素15μg/kgをオイルに溶解して腹腔内注射した。24時間経過後、マウスの血液を採取して血漿を分離し、ALT及びAST値を測定した。対照群としては、リン酸緩衝液およびオリーブ油を同一の方法で投与した。
【0051】
その結果、四塩化炭素誘発肝損傷群に比べて、シリマリン処理肝損傷群ではALT及びASTがそれぞれ68%及び60%減少したが、これに対し、朝鮮人参多糖体処理肝損傷群ではそれぞれ82%及び87%減少しており、朝鮮人参多糖体の優れた肝保護効果が示唆された(図2参照)。
【0052】
実験例4.朝鮮人参多糖体のアセトアミノフェン誘発肝損傷に対する肝保護効果
われわれが通常タイレノールとして知っているアセトアミノフェンは、過多服用の際またはアルコールと共に服用する際に深刻な肝損傷をもたらすことが報告されている。前述した朝鮮人参多糖体がアセトアミノフェンによる肝損傷に対して肝保護効果を示すかどうかを評価するため、BALB/c雄マウスに朝鮮人参多糖体を100mg/kg腹腔内注射し、24時間後にアセトアミノフェン500mg/kgを温かいリン酸緩衝溶液に溶解して腹腔内注射した。24時間経過後にマウスの血液を採取して血漿を分離した後、ALT及びAST値を測定した。対照群としては、リン酸緩衝液を同様の方法で投与した。
【0053】
その結果、朝鮮人参多糖体処理肝損傷群では、アセトアミノフェン誘発肝損傷群に比べて、ALT及びASTがそれぞれ84%及び87%減少した。従って、朝鮮人参多糖体は、四塩化炭素だけでなく、アセトアミノフェンによる肝損傷に対しても、優れた肝保護効果を有することが示唆された(図3)。
【0054】
実験例5.朝鮮人参多糖体の肝の脂質過酸化物の生成減少
薬物が流入すると、肝で代謝作用が起こると同時に酸化作用が増加して脂質過酸化物が生成されるが、このような脂質酸化物は肝損傷を増加させ得る要因となる。朝鮮人参多糖体処理肝損傷群が、四塩化炭素による肝損傷誘発対照群に比べて優れた肝保護効果を示したので、脂質過酸化物を測定するために肝組織を採取した。採取した肝組織を生理食塩水に入れて粉砕した後、ThioBarbituric Acid Reactive Substances assay(TBARS assay kit)により脂質過酸化物であるmalonyldialdehyde(MDA)を測定した。
【0055】
その結果、四塩化炭素によって肝損傷が誘発された群ではMDAが有意に増加したが、朝鮮人参多糖体の投与によりMDA値が43%減少し、四塩化炭素により誘発される脂質過酸化物の生成に対する朝鮮人参多糖体の抑制効果が示唆された。
【0056】
【表3】

【0057】
実験例6.肝組織免疫染色実験
四塩化炭素誘発肝損傷に対する朝鮮人参多糖体の肝保護効果を解剖病理学的に観察するため、BALB/c雄マウスに朝鮮人参多糖体100mg/kgまたはリン酸緩衝液を腹腔内注射し、24時間後に四塩化炭素15μg/kgをオリーブ油に溶解して腹腔内注射した。24時間経過後に肝を摘出し、パラホルマリン溶液で固定した後、パラフィンに包埋して3〜5μm厚の切片とし、ヘマトキシリン−エオシン(Hematoxylin-Eosin)染色を行って組織切片を調製し、顕微鏡下で観察した。
【0058】
その結果、対照群に比べて、四塩化炭素誘発肝損傷群では広範囲な壊死組織を観察することができるが、朝鮮人参多糖体処理群では殆ど正常組織に近い所見を示した(図4参照)。
【0059】
実験例7.朝鮮人参多糖体のシトクロムP450及び炎症性サイトカイン生成に及ぼす影響
7−1.シトクロムP450−2E1タンパク質量の測定
多くの薬物は、シトクロムP450経路を介して代謝されるが、四塩化炭素は主にシトクロムP450−2E1によって代謝されるので、肝組織におけるシトクロムP450−2E1の発現をウエスタンブロットを用いて観察した。前述した実験と同様の方法で朝鮮人参多糖体またはリン酸緩衝液を投与し、24時間経過後に四塩化炭素を注射して肝損傷を誘発した。24時間後に肝組織を収集して常法によりタンパク質を抽出し、10% SDS−PAGEゲルを用いてタンパク質を分離し、抗シトクロムP450−2E1抗体と反応させて、その発現を観察した。
【0060】
その結果、四塩化炭素処理群では、シトクロムP450−2E1の発現量が有意に減少したが、朝鮮人参多糖体処理群では、シトクロムP450−2E1の発現に対照群との間で差は見られなかった。また、四塩化炭素によるシトクロムP450−2E1発現の減少は、朝鮮人参多糖体により、正常水準まで回復することが認められた(図5参照)。
【0061】
7−2.炎症性サイトカイン発現量の測定
肝損傷の進行にサイトカインが関与することが示唆されているので、肝組織よりRNAを単離してcDNAを合成し、各サイトカインプライマーを用いて逆転写PCR(Reverse Transcriptation Polymerase Chain Reaction、RT−PCR)を行った。RT-PCR生成物は、1.5%アガロースゲルで電気泳動し、発現量を測定した。
【0062】
その結果、四塩化炭素誘発肝損傷群では、炎症の代表的指標であるTNF−α(Tumor Necrosis Factor-α)の発現が増加したが、肝細胞の再生に関与するIFN−γ(interferon-γ)及びIL−6(interleukin-6)の発現は減少した。これに対し、朝鮮人参多糖体処理群では、対照群に比べてIFN−γ及びIL−6の発現が僅か増加する傾向が見られた。また、朝鮮人参多糖体は、四塩化炭素誘発肝損傷群において増加したTNF−α発現を減少させ、減少したIFN−γ及びIL−6発現を増加させた。また、四塩化炭素誘発肝損傷群では、炎症反応を介する細胞変質または線維症の初期指標であるα−SMA(α-Smooth Muscle Actin)の発現が大幅に増加したが、朝鮮人参多糖体の前処理によって有意に減少した(図7参照)。
【0063】
7−3.ケモカイン発現量の測定
炎症時のケモカイン分泌の劇的な増加は、好酸球またはT細胞を炎症組織に選択的に移動させる。ところが、細胞損傷に反応して免疫細胞が肝臓に集まると、肝損傷を悪化させるおそれがあるので、ケモカイン発現量を測定した。前述と同様に肝を摘出し、RNAを単離してRT−PCRを行った。四塩化炭素処理群において、MCP−1(Monocyte Chemotactic Protein-1)、MIP−2(Macrophage Inflammatory Protein-2)、KC(Keratinocyte-derived chemokine)など、好酸球を炎症組織に移動させるケモカインが顕著に増加したが、朝鮮人参多糖体で前処理することによって、有意に減少した(図6参照)。
【0064】
実験例8.朝鮮人参多糖体の肝線維化抑制作用
代表的な線維化の指標因子としてα−SMAが広く知られており、前記実験群の肝組織においてその発現量を検討したが、肝細胞(HepG2)について試験管内実験により、他の因子とともに検討した。肝細胞を線維化誘発因子であるTGF−βで5nM/mLの濃度で処理し、次いで、朝鮮人参多糖体で濃度(12.5〜200μg/mL)と時間(前後20時間)を変えて処理した後、α−SMAの発現量を調べた。
【0065】
その結果、TGF−β処理の2時間前及び2時間後に、朝鮮人参多糖体(50μg/mL以上)で処理したとき、α−SMA、フィブロネクチン及びコラーゲン値が大幅に減少し、肝線維化に対する朝鮮人参多糖体の優れた防止及び治療効果が示唆された(図8参照)。
【0066】
上述した実験例から、本発明の朝鮮人参多糖体が、四塩化炭素及びアセトアミノフェンなどの肝毒性物質により誘導された肝損傷を迅速に回復させる効果を有するとともに、肝保護効果を有し、長期投与しても肝毒性が全く現れないことが示された。さらに、劇症の炎症反応または組織変質の結果生じる肝線維化が、朝鮮人参多糖体前処理または後処理により有意に減少し、肝線維化に対する保護及び治療効果が示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノース1.2〜2.8重量%、グルコース64.1〜82.8重量%、ガラクトース10.0〜26.6重量%、及びアラビノース0.6〜5.4重量%を含む、肝保護または肝疾患予防及び治療用朝鮮人参多糖体抽出物。
【請求項2】
前記肝疾患が脂肪肝、肝壊死、肝線維化、肝硬変、急/慢性肝炎、または肝癌を含む、請求項1に記載の朝鮮人参多糖体抽出物。
【請求項3】
(a)人参属植物を水に入れて0〜180℃で0.5〜20時間冷浸または加熱して抽出液を得る段階と、
(b)前記抽出液を減圧蒸留して濃縮した後、有機溶媒を用いて多糖体を沈殿及び分離する段階と、
(c)分離された多糖体から有機溶媒を除去して多糖体を得る段階とを含んでなる、肝保護または肝疾患予防及び治療用成分としての請求項1に記載の朝鮮人参多糖体抽出物の製造方法。
【請求項4】
有効成分としての請求項1に記載の朝鮮人参多糖体抽出物、及び薬学的に許容される担体を含む、肝疾患予防及び治療用組成物。
【請求項5】
前記肝疾患が脂肪肝、肝壊死、肝線維化、肝硬変、急/慢性肝炎または肝癌を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
有効成分としての請求項1に記載の朝鮮人参多糖体抽出物、及び薬学的に許容される担体を含む、肝線維化抑制用組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の朝鮮人参多糖体抽出物を含む、肝保護及び肝機能改善効果を有する食品組成物。
【請求項8】
食品組成物が、機能性食品、栄養補助剤、栄養剤、ファーマフード、健康食品、栄養補助食品、デザイナーフードまたは食品添加剤の製造に使用される、請求項7に記載の食品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−516543(P2011−516543A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503902(P2011−503902)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001789
【国際公開番号】WO2009/125964
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510268037)コリア インスティテュート オヴ レディオロジカル アンド メディカル サイエンシーズ (1)
【Fターム(参考)】