説明

木材乾燥装置及び木材乾燥方法

【課題】木材乾燥における放熱時間を短縮する。
【解決手段】内壁部11の内部には、木材100を乾燥させるための乾燥空間111が形成されている。内壁部11と外壁部12との間には、断熱層13が配置されている。真空吸引部2は、断熱層13の内部の空気を吸引することによって、断熱層13の内部を減圧する。加熱部14は、乾燥空間111を加熱することによって木材100を乾燥させる。乾燥終了後、給水部3は、減圧された断熱層13の内部に給水する。排水部4は、給水された断熱層13の内部から水を排出する。木材乾燥における放熱工程を短時間で完了できるので、木材乾燥に要する時間を短縮することが可能になる。放熱時間を短縮した分、木材乾燥における保温時間を長くすれば、木材における割れの発生を低く抑えることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を乾燥させるための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒータを用いた加熱によって木材を乾燥させるための技術が提案されている(下記特許文献1〜5参照)。
【0003】
これらの技術における木材乾燥は、昇温、保温、放熱という3工程からなっている。まず、乾燥室内に木材を搬入した後、ヒータや加熱水蒸気などの加熱手段によって庫内を昇温する。所定温度(例えば80°C〜120°C程度)まで昇温した後、既定の温度範囲で庫内を保温する。また、庫内の空気を排気ファンやポンプにより排気する。これによって木材乾燥を行うことができる。既定時間だけ保温した後、放熱を行い、木材を取り出す。この作業をバッチ式で順次行うことによって、必要量の木材を乾燥させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85542号公報
【特許文献2】特開2006−44135号公報
【特許文献3】特開2005−47100号公報
【特許文献4】特開2004−276438号公報
【特許文献5】特開平8−61848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木材は、製材から乾燥までの待機時間が長いと、自然に割れることがある。木材乾燥に要する時間を短縮できれば、この待機時間を短縮することが可能となる。
【0006】
また、木材の乾燥時間を短縮できれば、木材の生産効率を向上させることができる。このことは、ストックヤードが小さい中小企業において特に重要である。
【0007】
1バッチ当たりの乾燥時間を短縮する方法として、前記した保温工程における保温温度を高く(例えば120°前後に)し、短い保温時間で乾燥させることによって、乾燥時間を短縮することが考えられる。
【0008】
しかしながら、このように高い保温温度とすると、保温工程中において、木材に割れを生じやすくなる。木材の場合、割れを生じても、強度低下には直結しないが、割れを有する木材は、その外観から需要者が受ける印象に起因して、取引価格が低下する可能性がある。
【0009】
一方、放熱時間を短縮することができれば、その分だけ、保温温度を低くする(つまり保温時間を長くする)ことが可能になると考えられる。あるいは、放熱時間の短縮量によっては、1バッチ当たりの乾燥時間を短縮することも可能と考えられる。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、放熱時間を短縮することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決する手段は、以下の項目のように記載できる。
【0012】
(項目1)
乾燥装置本体と、真空吸引部と、給水部と、排水部とを備えており、
前記乾燥装置本体は、内壁部と、外壁部と、断熱層と、加熱部とを備えており、
前記内壁部と前記外壁部とは、いずれも、略筒状に形成されており、
前記内壁部の内部には、木材を乾燥させるための乾燥空間が形成されており、
前記内壁部は、前記外壁部の内側に配置されており、
前記断熱層は、前記内壁部と前記外壁部との間に配置されており、
前記真空吸引部は、前記断熱層の内部の空気を吸引することによって、前記断熱層の内部を減圧するものであり、
前記給水部は、減圧された前記断熱層の内部に給水するものであり、
前記排水部は、給水された前記断熱層の内部から水を排出するものであり、
前記加熱部は、前記内壁部に形成された前記乾燥空間を加熱することによって木材を乾燥させるものである
ことを特徴とする木材乾燥装置。
【0013】
この木材乾燥装置においては、内部が真空とされた断熱層によって、乾燥空間と外部との間を断熱することができる。さらに、この装置では、保温工程終了後に、断熱層の内部に給水することによって、乾燥空間における熱を急速に外部に放出することができる。すなわち、短時間のうちに放熱を行うことが可能となる。また、真空とされた断熱層に給水する場合は、水が断熱層内に吸い込まれることとなり、給水作業を迅速に行うことができる。
【0014】
(項目2)
さらにコントローラを備えており、
前記コントローラは、下記の動作を実行する、項目1に記載の木材乾燥装置:
(1)前記乾燥空間内部に木材が搬入された後、前記真空吸引部により、前記断熱層の内部を減圧して真空とする動作;
(2)既定の終了条件を満足するまで、前記加熱部により、前記乾燥空間を保温する動作;
(3)前記保温が終了した後、前記給水部により、前記断熱層の内部に水を供給する動作。
【0015】
コントローラを設けることにより、木材乾燥作業を少なくとも部分的に自動化することができる。
【0016】
(項目3)
さらにリリーフ用吸気口を備えており、
前記リリーフ用吸気口は、前記断熱層の内部に連通されており、
かつ、前記リリーフ用吸気口は、前記断熱層の内部の空気圧が既定値以下となったときに、外気を前記断熱層に導入する構成となっている
項目1又は2に記載の木材乾燥装置。
【0017】
リリーフ用吸気口を設けることにより、断熱層内部の空気圧が既定値以下となるおそれを低減することができる。これにより、内壁部又は外壁部の過剰な変形を防止できる。
【0018】
(項目4)
さらに扉を備えており、
前記扉は、前記内壁部に形成された乾燥空間を、開閉可能なように閉鎖する構成となっており、
さらに、前記扉を開けた状態では、前記乾燥空間の内部に、乾燥させるべき木材を搬入可能とされている
項目1〜3のいずれか1項に記載の木材乾燥装置。
【0019】
(項目5)
以下のステップを備える木材乾燥方法:
(1)木材を乾燥させるための乾燥空間の内部に木材が搬入された後、前記乾燥空間の周囲に、前記乾燥空間と外部との間の断熱を行うための、内部が真空とされた断熱層を形成するステップ;
(2)その後、既定の終了条件を満足するまで、前記乾燥空間を保温するステップ;
(3)前記保温が終了した後、内部が真空とされている前記断熱層の内部に水を供給するステップ。
【0020】
内部が真空とされている断熱層の内部に水を供給することにより、水を断熱層内に迅速に送り込むことができ、放熱時間を短縮することが可能となる。
【0021】
(項目6)
さらに以下のステップを備える項目5に記載の木材乾燥方法:
(4)前記ステップ(3)の後、前記断熱層に供給された水を排出するステップ;
(5)その後、前記乾燥空間の内部に別の木材を搬入するステップ;
(6)その後、前記断熱層内の空気を排出することにより、前記断熱層の内部を真空とするステップ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、断熱層の内部に水を送り込むことによって、木材を保温した後の放熱を迅速に行うことができる。すなわち、本発明では、放熱時間を短縮することが可能となる。これにより、木材の保温温度を低くし、あるいは、木材の乾燥時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る木材乾燥装置の概略を示す説明図である。
【図2】図1の木材乾燥装置における乾燥装置本体の概略的な横断面図である。
【図3】図1の木材乾燥装置を用いた木材乾燥方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態の木材乾燥装置は、図1に示すように、乾燥装置本体1と、真空吸引部2と、給水部3と、排水部4と、蒸気発生部5と、扉6と、コントローラ7とを備えている。
【0025】
(乾燥装置本体)
乾燥装置本体(以下単に「本体」ということがある)1は、内壁部11と、外壁部12と、断熱層13と、加熱部14とを備えている。
【0026】
内壁部11と外壁部12とは、いずれも、略筒状に形成されている(図1及び図2参照)。内壁部11と外壁部12とは、本実施形態では、いずれも円筒状とされているが、角筒状であってもよく、要するに、内部に必要な空間が形成可能な形状であればよい。
【0027】
内壁部11の内部には、木材100を乾燥させるための乾燥空間111が形成されている(図2参照)。乾燥空間111には、木材を積み重ねるための適宜な支持部材が配置されている。内壁部11は、外壁部12の内側に配置されている。内壁部11には、蒸気発生部5からの蒸気を受け入れるための吸気口112と、乾燥空間111内部の空気を排出するための排気口113とが形成されている。排気口113には、空気排出用の装置、例えば排気ファン(図示せず)が接続されている。また、乾燥空間111の内部には、温度計(図示せず)が配置されており、乾燥空間内部111の温度をコントローラ7に送ることができるようになっている。
【0028】
外壁部12には、真空吸引部2からの配管を接続するための排気口121と、リリーフ用吸気口122とが取り付けられている。排気口121及びリリーフ用吸気口122は、断熱層13の内部に連通されているものである。リリーフ用吸気口122は、断熱層13の内部の空気圧が既定値以下となったときに、外気を断熱層に導入する構成となっている。
【0029】
断熱層13は、内壁部11と外壁部12との間に配置されている。断熱層13は、扉6を閉めた状態では、内部に空気が実質的に侵入しない密閉空間となるものである。
【0030】
加熱部14は、内壁部11に形成された乾燥空間111を加熱することによって木材100を乾燥させるものである(図1参照)。加熱部14としては、乾燥空間111内に配置された適宜なヒータを用いることが可能である。あるいは、加熱部14としては、乾燥空間111の外部に配置された加熱装置から、高温空気などの適宜な乾燥用媒質を木材100に向けて送り込む構成とすることも可能である。
【0031】
(真空吸引部)
真空吸引部2は、断熱層13の内部の空気を吸引することによって、断熱層13の内部を減圧するものである。真空吸引部2は、この実施形態では、外壁部12の排気口121に配管を介して接続された真空ポンプにより構成されている。
【0032】
(給水部)
給水部3は、減圧された断熱層13の内部に給水するものである。給水部3は、この実施形態では、貯水部31と給水ポンプ(図示せず)とから構成されている。貯水部31は、例えば、雨水を溜めることができるようになっており、給水ポンプによって断熱層13の内部に雨水を供給できるようになっている。ただし、給水部3として、水道水や井戸水を断熱層13に供給する構成を採用することも可能である。なお、本実施形態における水とは、水の如くに熱容量が大きくて扱いが容易な流動性媒質、すなわち、水と等価な物質であればよい。
【0033】
(排水部)
排水部4は、給水された断熱層13の内部から水を排出するものである。この実施形態では、排水部4は、断熱層13から貯水部31に水を送り出す排水ポンプ(図示せず)によって構成されている。ただし、排水部4は、水の自重によって排水するものであってもよく、また、貯水部31以外に排水する構成であってもよい。
【0034】
(蒸気発生部)
蒸気発生部5は、乾燥装置本体1の吸気口112を介して、内壁部11の乾燥空間111に蒸気を供給するものである。蒸気発生部5は、具体的には、蒸気ボイラと必要な配管によって構成することができる。
【0035】
(扉)
扉6は、内壁部11に形成された乾燥空間111を、開閉可能なように閉鎖する構成となっている。すなわち、本実施形態の乾燥装置本体1においては、扉6を開けた状態において、乾燥空間111の内部に、乾燥させるべき木材100を搬入可能とされている。具体的には、図1に示されるように、内壁部11及び外壁部12の端部(図1において右端部)は開口されており、この開口を介して木材100を乾燥空間111に搬入できるようになっている。そして、扉6を閉じることにより、乾燥空間111及び断熱層13を実質的に密閉できるようになっている。
【0036】
(コントローラ)
コントローラ7は、この実施形態では、パーソナルコンピュータと、その動作に必要なコンピュータプログラムとの組み合わせによって構成されている。コントローラ7は、この実施形態では、少なくとも下記の動作を実行する構成となっている。
(1)乾燥空間111の内部に木材100が搬入された後、真空吸引部2により、断熱層13の内部を減圧して真空とする動作;
(2)既定の終了条件を満足するまで、加熱部14により、乾燥空間111を保温する動作;
(3)乾燥空間111の保温が終了した後、給水部3により、断熱層13の内部に水を供給する動作。
【0037】
コントローラ7の詳しい動作については、木材の乾燥方法として説明する。
【0038】
(本実施形態における木材乾燥方法)
次に、前記した木材乾燥装置を用いて木材を乾燥させる方法について、図3をさらに参照しながら説明する。
【0039】
(図3のステップSA−1)
初期状態では、図1に示されるように、扉6が開いている状態であるとする。この状態で、乾燥装置本体1の内壁部11における乾燥空間111に、木材100を搬入する(図2参照)。ついで、扉6を閉め、乾燥空間111と断熱層13とを密閉する。
【0040】
(図3のステップSA−2)
ついで、コントローラ7は、真空吸引部2により、断熱層13内部の空気を吸引して、断熱層13の内部を真空とする。ここで、真空とは、必要な程度まで減圧されている状態をいうものとする。これにより、乾燥空間111の周囲に、乾燥空間111と外部との間の断熱を行うための、内部が真空とされた断熱層13を形成することができる。
【0041】
(図3のステップSA−3)
ついで、コントローラ7は、次のようにして昇温工程を行う。
【0042】
(蒸気導入)
コントローラ7は、蒸気発生部5から発生した蒸気を、内壁部11の吸気口112を介して乾燥空間111の内部に導入する。これにより、蒸気を木材100の表面に接触させ、木材100の表面を加湿すると共に、加温することができる。このように、昇温工程において蒸気を導入することによって、木材表面における割れの発生率を低く抑えることができる。
【0043】
(加熱部による加熱)
また、コントローラ7は、加熱部14を動作させて、乾燥室内を加温する。
【0044】
(排気)
さらに、コントローラ7は、図示しない排気装置を動作させることによって、乾燥空間111内部の空気を排気口113から外部に排出する。ここで、乾燥空間111からの排気量は、乾燥空間への気体(例えば蒸気)の導入量より多くなるように設定することが好ましい。このようにすると、乾燥空間111を若干負圧とすることができ、木材100内部の水分を効率的に放出させることができる。
【0045】
(蒸気導入の停止)
コントローラ7は、乾燥空間111の温度を監視しており、既定温度(例えば100°C)となったら、蒸気発生部15からの蒸気導入を停止し、次の保温工程に移行する。
【0046】
(図3のステップSA−4)
ついで、コントローラ7は、加熱部14を制御することによって、乾燥空間111の温度を既定温度に保持する。保持する時間は、予めコントローラ7で設定されており、例えば10〜20時間程度である。ただし、木材100の含水量を監視することにより、保温時間を動的に制御することも可能である。この保温工程においても、乾燥空間111からの排気は継続される。保温工程は、この実施形態では、既定温度において、既定時間の間、行われる。すなわち、既定の終了条件を満足するまで保温工程が行われる。本実施形態では、保温工程により木材100を乾燥させることができる。
【0047】
本実施形態の木材乾燥装置においては、内部が真空とされた断熱層13によって、乾燥空間111と外部との間を断熱することができるので、保温工程における熱エネルギーの放出量を低く抑えることができ、その結果、エネルギーの利用効率を高めることができるという利点がある。
【0048】
(図3のステップSA−5)
保温工程終了後、コントローラ7は、内部が真空とされている断熱層13の内部に、給水部3によって給水する。すなわち、給水部3は、貯水部31に溜められていた水を断熱層13の内部に供給する。
【0049】
本実施形態では、保温工程終了後に、断熱層13の内部に給水しているので、、乾燥空間111の内部における熱を急速に外部に放出することができる。すなわち、保温工程後の放熱工程を短時間で完了させることができる。
【0050】
前記したとおり、保温温度と保温時間とはトレードオフの関係にあり、保温温度を下げた場合は、保温時間を長くする必要がある。保温温度を上げると、保温時間は短縮できるが、木材に割れを生じやすくなる。すなわち、従来は、木材の割れを避けるために保温工程の時間を長くすると、1バッチあたりに必要な時間が延びるという問題があった。これに対して、本実施形態では、放熱時間を短縮することができるので、その分、保温時間を長くすることが可能となる。これにより、木材の割れを防ぎつつ、木材乾燥効率(単位時間当たりに乾燥できる木材量)を向上させることができる。また、保温時間を一定とすれば、放熱時間を短縮することにより、木材乾燥における1バッチあたりの時間を短縮することも可能である。
【0051】
本実施形態では、内部が真空とされている断熱層13の内部に水を供給するので、水が断熱層13の内部に吸い込まれることとなる。その結果、給水ポンプの駆動力が弱くても、水を断熱層13の内部に迅速に送り込むことができるという利点がある。したがって、本実施形態では、放熱時間を一層短縮することが可能となる。また、低い能力の給水ポンプを利用することができれば、設備に必要な費用を低下させることもできる。さらに、本実施形態では、条件によっては、給水ポンプの設置を省略し、給水バルブの開閉だけで十分な給水を行うことも可能と考えられ、この場合には、設備費用をさらに低下させることが可能となる。
【0052】
(図3のステップSA−6)
ついで、コントローラ7は、断熱層13の内部に滞留している水を、排水部4により、外部に排出する。具体的には、排水部4の排水バルブを開いたり、あるいは、排水ポンプを駆動することにより排水する。排出された水はある程度加温されているので、貯水部31に戻して、自然に冷却することが好ましい。このようにすれば、水の再利用が可能である。また、通常の木材乾燥では、1バッチ当たりの時間は20時間以上であると考えられるので、加温された水を放置するだけで十分に冷却できると考えられる。もちろん、木材の状態によっては、より短い乾燥時間となる場合もあり、その場合は、複数の貯水部を切り替えるなどの適宜な手段によって対応が可能である。
【0053】
(図3のステップSA−7)
ついで、排水完了後、コントローラ7は、作業者に対して、排水が完了したことを、例えばランプ点灯などの適宜な手段によって知らせる。ここで、コントローラ7は、乾燥空間111の内部の温度が既定値以下(例えば外気温+20°C)となった場合にランプを点灯するという制御であることが好ましい。このようにすれば、作業の安全性を高めることができる。ただし、乾燥空間111内の温度を別の方法で作業者に知らせる構成とすることは可能である。
【0054】
(図3のステップSA−8)
ついで、作業者は、扉6を開き、乾燥空間111の内部から、乾燥された木材100を搬出する。ここまでで、木材乾燥における1バッチが終了する。
【0055】
その後、作業者は、必要があれば、ステップSA−1に戻り、コントローラ7を用いつつ、前記した工程を繰り返す。すなわち、乾燥空間の内部に別の木材を搬入し(ステップSA−1)、その後、断熱層13内の空気を排出することにより、断熱層13の内部を真空とする(ステップSA−2)などのステップを行う。
【0056】
本実施形態では、コントローラ7を設けたので、木材乾燥作業を少なくとも部分的に自動化することができる。ただし、コントローラ7の設置を省略することも可能であり、この場合は、作業者が前記のステップを順次行う。また、コントローラ7が受け持つ制御の範囲も適宜に変更可能であり、前記は単なる一例である。
【0057】
さらに、本実施形態では、リリーフ用吸気口122を外壁部12に設けたので、断熱層13内部の空気圧が既定値以下となったときに外気を導入することができいる。これにより、内壁部11又は外壁部12の過剰な変形を防止できるという利点もある。
【0058】
なお、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0059】
1 乾燥装置本体
11 内壁部
111 乾燥空間
112 内壁部の吸気口
113 内壁部の排気口
12 外壁部
121 外壁部の排気口
122 リリーフ用吸気口
13 断熱層
14 加熱部
2 真空吸引部
3 給水部
31 貯水部
4 排水部
5 蒸気発生部
6 扉
7 コントローラ
100 木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥装置本体と、真空吸引部と、給水部と、排水部とを備えており、
前記乾燥装置本体は、内壁部と、外壁部と、断熱層と、加熱部とを備えており、
前記内壁部と前記外壁部とは、いずれも、略筒状に形成されており、
前記内壁部の内部には、木材を乾燥させるための乾燥空間が形成されており、
前記内壁部は、前記外壁部の内側に配置されており、
前記断熱層は、前記内壁部と前記外壁部との間に配置されており、
前記真空吸引部は、前記断熱層の内部の空気を吸引することによって、前記断熱層の内部を減圧するものであり、
前記給水部は、減圧された前記断熱層の内部に給水するものであり、
前記排水部は、給水された前記断熱層の内部から水を排出するものであり、
前記加熱部は、前記内壁部に形成された前記乾燥空間を加熱することによって木材を乾燥させるものである
ことを特徴とする木材乾燥装置。
【請求項2】
さらにコントローラを備えており、
前記コントローラは、下記の動作を実行する、請求項1に記載の木材乾燥装置:
(1)前記乾燥空間内部に木材が搬入された後、前記真空吸引部により、前記断熱層の内部を減圧して真空とする動作;
(2)既定の終了条件を満足するまで、前記加熱部により、前記乾燥空間を保温する動作;
(3)前記保温が終了した後、前記給水部により、前記断熱層の内部に水を供給する動作。
【請求項3】
さらにリリーフ用吸気口を備えており、
前記リリーフ用吸気口は、前記断熱層の内部に連通されており、
かつ、前記リリーフ用吸気口は、前記断熱層の内部の空気圧が既定値以下となったときに、外気を前記断熱層に導入する構成となっている
請求項1又は2に記載の木材乾燥装置。
【請求項4】
さらに扉を備えており、
前記扉は、前記内壁部に形成された乾燥空間を、開閉可能なように閉鎖する構成となっており、
さらに、前記扉を開けた状態では、前記乾燥空間の内部に、乾燥させるべき木材を搬入可能とされている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の木材乾燥装置。
【請求項5】
以下のステップを備える木材乾燥方法:
(1)木材を乾燥させるための乾燥空間の内部に木材が搬入された後、前記乾燥空間の周囲に、前記乾燥空間と外部との間の断熱を行うための、内部が真空とされた断熱層を形成するステップ;
(2)その後、既定の終了条件を満足するまで、前記乾燥空間を保温するステップ;
(3)前記保温が終了した後、前記断熱層の内部に水を供給するステップ。
【請求項6】
さらに以下のステップを備える請求項5に記載の木材乾燥方法:
(4)前記ステップ(3)の後、前記断熱層に供給された水を排出するステップ;
(5)その後、前記乾燥空間の内部に別の木材を搬入するステップ;
(6)その後、前記断熱層内の空気を排出することにより、前記断熱層の内部を真空とするステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−152749(P2011−152749A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16773(P2010−16773)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(302033252)株式会社エンゼルハウス (1)
【Fターム(参考)】