説明

木製独立柱

【課題】被覆材である木製の板材に割れを生じ難くさせると共に、雨水や湿気による影響を受け難くさせ、且つ交換を容易にして、木製柱としての美観を長期間容易に保持できる木製独立柱を提供する。
【解決手段】玄関ポーチ部11に設置される木製ポーチ柱10であって、構造柱12と、構造柱12の側面12aを外側から覆う木製化粧板13とからなる。木製化粧板13は、構造柱12の側面12aに取り付けられた複数の被係止金物14に、当該木製化粧板13の背面13aに取り付けられた複数の係止金物15を上方から各々係止することによって構造柱12の側面12aに取り付けられる。木製化粧板13は、両側縁部に沿って噛合せ切欠き13bを備えており、木製ポーチ柱10の各角部10bにおいて、隣接する一対の木製化粧板13の噛合せ切欠き13bを隙間16を保持して噛み合わせることで、着脱可能な状態で構造柱12の全周を覆って取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製独立柱に関し、特に建物の外部に取り付けて用いるポーチ柱等の木製独立柱に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外部には、屋根やバルコニーやベランダ等の上方構造物からの荷重を支持するための、ポーチ柱等の柱が、壁から離れた独立柱として設けられる場合がある。これらの独立柱は、上方構造物からの荷重を強固に支持すると共に、建物の外部に設けられて耐久性のある材質として、主に鋼製のものが用いられており、また円形断面や角形断面の他、その他の種々の形状に加工したり外周部分に装飾を施すことによって、当該独立柱による建物の外観を向上させる工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年、例えば木造の住宅建築物等において、玄関ポーチ等の独立柱に意匠上のアクセントを与えるものとして、木製柱の使用が好まれているが、屋外に木製柱をそのまま用いても、常時されられる紫外線や風雨に耐えられず、数年もたずに汚れや退色が目立つことになって長期間美観を保持することが難しい。例えば木製柱に防腐処理を施し、表面に耐候性塗料を塗布するなどして、頻繁にメンテナンスをすれば、紫外線や風雨による美観の劣化をある程度防げるが、木材特有の経年劣化による割れを防ぐことは難しく、例えば割れた部分から劣化が著しく進んだ場合には、荷重を支持する構造柱としての性能に影響を与えるため、木製柱を丸ごと交換する必要に迫られることになる。
【0004】
これに対して、荷重を支持する木製の構造柱の外周面を被覆して、例えば窒業材料からなるカバー材や、合板等の木質系基材の表面に化粧板を接着した化粧パネルを取り付けてなる、ポーチ柱等の独立柱が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−140650号公報
【特許文献2】特開2005−344478号公報
【特許文献3】特開2005−350897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記木製の構造柱の外周面を被覆した独立柱は、被覆材としてのカバー材や化粧パネルは、窒業材料や、合板等の木質系基材の表面に化粧板を接着させたものあって、被覆材として木製の板材を用いた木製仕上げとは異なり、木製柱としての木質感を醸し出させることは困難である。また、木製の板材を構造柱の外周面を覆う被覆材として用いる場合には、木製の板材に割れを生じ難くさせたり、雨水や湿気、雑菌等による影響を受け難くさせたり、板材に劣化や陳腐化が生じた際には交換を容易に行えるようにするなど、特別の工夫が必要である。
【0007】
さらに、準耐火建築物や耐火建築物、或いは住宅金融支援機構に定める省令準耐火構造の建築物では、屋外にある柱であっても建物の荷重を支えている場合は主要構造物とみなされ、それぞれに応じた耐火性能を満たす必要があるが、現行運用されているものは窒業系サイディング等の不燃材によって木製の構造柱の外周面を被覆するものがほとんどで、木製の板材を用いた構造柱の木製仕上げはなされていないのが現状である。ここで、木製の板材及び構造柱のみで耐火性能を確保しようとして、例えば「H12年建設省告示第1358号第ニ項ニのハ」に示す燃えしろ設計を行うと、準耐火構造45分の柱でも、175mm角以上の大断面材が必要となり、意匠上の制約が大きくなってしまうと共に、上述のような経年劣化が木製柱に生じれば、耐火性能の保持も困難となる。
【0008】
本発明は、上述のような技術的課題を鑑みてなされたものであり、被覆材として用いる木製の板材に割れを生じ難くさせたり、雨水や湿気、雑菌等による影響を受け難くさせたり、板材に劣化や陳腐化が生じた際には交換を容易に行えるようにして、木製柱としての美観を長期間容易に保持することのできる木製独立柱を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、大断面材とすることなく、例えば省令準耐火構造の建築物としての耐火性能を十分に確保することのできる木製独立柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、建物の外部に取り付けて用いる木製独立柱において、上方からの荷重を支持する角形断面を有する構造柱と、該構造柱の4側面を外側から覆って各々取り付けられる4枚の木製化粧板とからなり、前記木製化粧板は、前記構造柱の各側面に上下方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数の被係止金物に、当該木製化粧板の背面に上下方向に前記被係止金物と同様の間隔をおいて取り付けられた複数の係止金物を、当該木製化粧板を前記構造柱に沿ってスライド移動させることで上方から各々係止することによって前記構造柱の各側面に各々取り付けられるようになっており、前記木製化粧板は、各々背面の両側縁部に沿ってL字形に切り欠いた噛み合せ切欠きを備えており、前記木製独立柱の各角部において、隣接する一対の前記木製化粧板の噛み合せ切欠き同士を隙間を保持して噛み合わせることで、前記4枚の木製化粧板が、順序を問わずに着脱可能な状態で、且つ拘束を緩めた状態で、前記構造柱との間に通気空間を保持してこれの全周を覆って一体として取り付けられている木製独立柱を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の木製独立柱は、当該木製独立柱の各角部における、隣接する一対の前記木製化粧板の噛み合せ切欠きの間に保持された隙間に、防水パッキン材が介装されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の木製独立柱は、前記構造柱の各側面を覆って耐火被覆材が取り付けられており、前記被係止金物は、該耐火被覆材の外側に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の木製独立柱は、該構造柱の各側面を覆って透湿防水シートが取り付けられており、前記被係止金物は、該透湿防水シートの外側に取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の木製独立柱によれば、被覆材として用いる木製の板材に割れを生じ難くさせたり、雨水や湿気、雑菌等による影響を受け難くさせたり、板材に劣化や陳腐化が生じた際には交換を容易に行えるようにして、木製柱としての美観を長期間容易に保持することができる。
【0015】
また、本発明の木製独立柱は、構造柱の各側面を覆って耐火被覆材を取り付け、被係止金物を耐火被覆材の外側に取り付けるようにすれば、大断面材とすることなく、例えば省令準耐火構造の建築物としての耐火性能を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】玄関ポーチ部に、本発明の好ましい一実施形態に係る木製独立柱を設置した状態を説明する、(a)は略示側面図、(b)は略示断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る木製独立柱の構成を説明する横断面図である。
【図3】構造柱に木製化粧板を着脱可能に取り付ける状況を説明する分解斜斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係る木製独立柱10は、図1(a)、(b)に示すように、例えば木造の住宅建築物の玄関ポーチ部11の張出し屋根11を支持する柱として、住宅建築物の外部に設けられ、玄関ポーチ部11に木製柱の木質感による意匠上のアクセントを与えるものである。また、本実施形態の木製独立柱10は、建物の外部に設けられて紫外線や風雨にされることによる劣化を効果的に抑制する機能を備えると共に、木製柱としての美観を長期間保持できる機能を備えており、且つ例えば省令準耐火構造の建築物としての十分な耐火性能を有する構造を備えている。
【0018】
そして、本実施形態の木製独立柱10は、建物(住宅建築物)の外部の玄関ポーチ部11に取り付けて用いる木製ポーチ柱10であって、図2及び図3にも示すように、上方からの荷重を支持する角形断面を有する構造柱12と、構造柱12の4側面12aを外側から覆って各々取り付けられる木製の板材である4枚の木製化粧板13とからなる。木製化粧板13は、構造柱12の各側面12aに上下方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数の被係止金物14に、当該木製化粧板13の背面13aに上下方向に被係止金物14と同様の間隔をおいて取り付けられた複数の係止金物15を、当該木製化粧板13を前記構造柱12に沿ってスライド移動させることで上方から各々係止することによって構造柱12の各側面12aに各々取り付けられるようになっている(図3参照)。木製化粧板13は、各々背面13aの両側縁部に沿ってL字形に切り欠いた噛み合せ切欠き13bを備えており(図2参照)、木製ポーチ柱10の各角部10bにおいて、隣接する一対の木製化粧板13の噛み合せ切欠き13b同士を隙間16を保持して噛み合わせることで、4枚の木製化粧板13が、順序を問わずに着脱可能な状態で、且つ拘束を緩めた状態で、構造柱12との間に通気空間17を保持してこれの全周を覆って一体として取り付けられている。
【0019】
また、本実施形態では、構造柱12の各側面12aを覆って耐火被覆材18が取り付けられており、被係止金物14は、この耐火被覆材18の外側に取り付けられている。
【0020】
本実施形態では、木製ポーチ柱10を構成する構造柱12は、例えば105mm角の正方形断面を有する木製角材であって、好ましくは張出し屋根11aからの荷重を強固に支持できるように、公知の各種の高耐久構造柱を用いて形成することができる。構造柱12は、図1に示すように、玄関ポーチ部11の土間部11bに取り付けられた柱受け金物19を介して、下端部が固定されると共に、上端面に張出し屋根11aの梁部材11cが固定されることにより、張出し屋根11の荷重を下方から強固に支持できるようになっている。
【0021】
ここで、柱受け金物19は、例えば4角形の鋼製プレートからなるベース部19aと、ベース部19aの中央から垂直に立設する例えば鋼製パイプからなる脚部19bと、脚部19bの上端に一体接合された例えば上端が開口面となった鋼製箱体部19cとからなる。柱受け金物19は、アンカーボルト等を介して、ベース部19aを土間部11bのコンクリートに固定することにより、土間部11bに強固に取り付けられる。構造柱12の下端部を、鋼製箱体部19cの上端の開口面から挿入装着して鋼製箱体部19cに固定することにより、構造柱12は、土間部19から支持された状態で垂直に立設する。また、構造柱12の上端部は、公知の各種の接合金物(図示せず)を介して、張出し屋根11aの梁部材11cに接合固定される。
【0022】
そして、本実施形態では、構造柱12の外周面における、下端の柱受け金物19の鋼製箱体部19cと上端の張出し屋根11aの梁部材11cとの間に挟まれる部分には、図2に示すように、4方の側面12aを連続して覆うようにして、耐火被覆材18が取り付けられている。耐火被覆材18としては、ケイ酸カルシウム板、木片セメント板、ALC板、窒業系サイディング、モルタル、合板等を用いることができる。また、耐火被覆材18の厚さを薄くしたい場合には、好ましくは1.0〜10mm程度の厚さの、公知の各種の熱膨張性耐火シートや発泡系耐火シートを用いることができる。より好ましくは、例えばWO2006/82645号公報に記載の発泡系耐火シートや、特許第3707530号公報に記載の発泡系耐火塗料を用いることができる。
【0023】
これらの耐火被覆材18は、例えば構造柱12に向けて200mm程度のピッチで釘やビスを打込む等、公知の各種の方法を用いて、構造柱12の外周面を連続して覆った状態で取り付けることができる。構造柱12の各側面12aを覆って耐火被覆材18が取り付けられていることにより、木製ポーチ柱10を、例えば175mm角以上の大断面材とすることなく、相当の耐火性能を備える木製柱とすることが可能になる。
【0024】
また、本実施形態では、構造柱12の各側面12aを覆って透湿防水シート20が取り付けられており、被係止金物14は、この透湿防水シート20の外側に取り付けられている。すなわち、透湿防水シート20は、構造柱12の各側面12aを覆って取り付けられた耐火被覆材18を、外側からさらに被覆して取り付けられることにより、構造柱12の各側面12aを覆って配設されることになる。
【0025】
ここで、透湿防水シート20としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等からなる、公知の各種の透湿防水シートを用いることができる。透湿防水シート20は、タッカーや粘着テープ等によって、耐火被覆材18の外側に連続した状態で容易に取り付けることができる。構造柱12の各側面12aを覆って透湿防水シート20が取り付けられていることにより、耐火被覆材18や構造柱12への雨水等による水の浸入を効果的に防いで、木製ポーチ柱10の耐久性をさらに向上させることが可能になる。
【0026】
本実施形態では、耐火被覆材18及び透湿防水シート20によって覆われた構造柱12の4方の側面12aには、各々、被係止金物14が、図3に示すように、上下方向に所定の間隔をおいて複数取り付けられている。本実施形態では、被係止金物14は、例えば横長矩形の帯板形状を有する鋼製プレートからなる。被係止金物14は、耐火被覆材18及び透湿防水シート20によって覆われた角形断面の構造柱12の各角部分に沿って上下方向に延設して取り付けられた、両側のL字受け部材21(図2参照)の間に跨るようにして、両端部分を当該L字受け部材21に各々接合することにより、構造柱12の各側面12aの中央部分に、上下方向に例えば150〜1000mm程度の所定の間隔をおいて複数取り付けられる。これによって、各被係止金物14の背面側には、両側のL字受け部材21の間隔部分において、後述する係止金物15の係合片15aが係着される係着スリット14a(図2参照)が、耐火被覆材18及び透湿防水シート20との間に保持される。
【0027】
ここで、L字受け部材21は、例えば0.3〜15mm程度の厚さを有し、スペーサとして機能する部材である。L字受け部材21は、例えば鉄やアルミニウム等の合金類、又は合成樹脂や木材からなり、等辺L字形状の内側面を耐火被覆材18及び透湿防水シート20によって覆われた構造柱12の各角部分に密着させた状態で、構造柱12の上下方向の略全長に亘って取り付けられる。これによって、構造柱12の4方の側面12aには、中央部分を上下方向に延設して、L字受け部材21の厚さと同様の深さを有する段差溝が形成される。この段差溝に跨るようにして被係止金物14が取り付けられることで、被係止金物14の背面側に係着スリット14aが保持されることになる。
【0028】
そして、本実施形態では、木製ポーチ柱10を構成する4枚の木製化粧板13は、例えば9〜30mm程度の厚さを有する木製の板材であって、構造柱12の幅よりも大きな幅を有している。また木製化粧板13の背面13aの両側縁部には、L字形に切り欠いた噛み合せ切欠き13bが形成されている。木製化粧板13は、隣接する一対の木製化粧板13の噛み合せ切欠き13b同士を隙間16を保持しつつ互いに噛み合わせた状態で、後述する係止金物15を介して、構造柱12の4側面12aを外側から覆って各々取り付けられる。
【0029】
ここで、4枚の木製化粧板13は、L字形に切り欠いた噛み合せ切欠き13b同士を互いに噛み合わせて取り付けられることにより、順序を問わずに着脱可能な状態で、且つ耐火被覆材18及び透湿防水シート20によって覆われた構造柱12の全周を隙間無く覆った状態で、構造柱12の外側に各々設置されることになる。また、4枚の木製化粧板13は、各角部において噛み合わされる噛み合せ切欠き13bの間に僅かな隙間16が保持されていることにより、過度に拘束された状態となるのを効果的に回避することが可能になる。さらに、4枚の木製化粧板13は、その木裏を外側に向けた状態で取り付けられることが好ましい。木製化粧板13がその木裏を外側に向けた状態で取り付けられることにより、乾燥収縮によって木製化粧板13が湾曲変形した場合でも、噛み合せ切欠き13bの隙間16を拡大させ難くなり、雨水等の浸入が妨げられることで、耐久性及び意匠性の低下を防ぐことが可能になる。
【0030】
また、本実施形態では、木製ポーチ柱10の各角部10bにおける、隣接する一対の木製化粧板13の噛み合せ切欠き13bの間に保持された隙間16には、防水パッキン材22が介装されている。噛み合せ切欠き13bの間の隙間16に防水パッキン材22が介装されていることにより、当該隙間16を介した耐火被覆材18や構造柱12への雨水等による水の浸入を効果的に防いで、木製ポーチ柱10の耐久性をさらに向上させることが可能になる。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、木製化粧板13の背面13aには、係止金物15が、上下方向に被係止金物14と同様の例えば150〜1000mm程度の所定の間隔をおいて複数取り付けられている。係止金物15は、帯板形状を有する鋼製プレートからなり、例えば接着剤等を介して、木製化粧板13の背面13aに密着させると共に、互いに平行に横方向に延設させた状態で取り付けられる。また、係止金物15の中央部分には、例えば鋼製プレートに切り込みを入れると共に曲折加工を施して、内側に僅かに突出した後に直角に折れ曲がって下方に延設する、全体として扁平なL字断面形状を有する係合片15aが設けられている。
【0032】
各木製化粧板13を、構造柱12の各側面12aに沿って上方から下方にスライド移動させて係止金物15を被係止金物14に各々係止する際に、これらの複数の係止金物15の係合片15aを、上述の各被係止金物14の係着スリット14aに各々係着することにより、木製化粧板13が、構造柱12との間に通気空間17を保持しつつ構造柱12の4側面12aを外側から覆って、各々着脱可能に安定した状態で取り付けられることになる。これによって、本実施形態の木製ポーチ柱10が形成されることになる。
【0033】
また、本実施形態では、係止金物15は、その一端部に、直角に折れ曲がった折曲り挿入片15bを備えると共に、その他端部に、内側への段差によって木製化粧板13の背面13aとの間に挿入スペースを形成するスペーサ片15cを備えている(図2参照)。木製化粧板13を構造柱12の4側面12aの外側に各々取り付ける際に、隣接する各一対の側面12aを覆う各一対の木製化粧板13に取り付けられた係止金物15を、一方の係止金物15の一端部の折曲り挿入片15bを他方の係止金物15の他端部のスペーサ片15cの裏側に挿入配置することで互いに係止することにより(図2参照)、4枚の木製化粧板13に各々設けられた係止金物15の一体化を図って、さらに安定した状態で木製化粧板13を取り付けることが可能になる。
【0034】
そして、上述の構成を備える本実施形態の木製独立柱(木製ポーチ柱)10によれば、被覆材として用いる木製の板材である木製化粧板13に割れを生じ難くさせたり、雨水や湿気、雑菌等による影響を受け難くさせたり、交換を容易に行えるようにして、木製柱としての美観を長期間容易に保持することが可能になる。
【0035】
すなわち、本実施形態によれば、木製化粧板13は、構造柱12の各側面12aに取り付けられた複数の被係止金物14に、当該木製化粧板13の背面13aに取り付けられた複数の係止金物15を上方から各々係止することによって構造柱12の各側面12aに各々取り付けられるようになっており、木製化粧板13は、背面13aの両側縁部に噛み合せ切欠き13bを備えており、木製ポーチ柱10の各角部10bにおいて、隣接する一対の木製化粧板13の噛み合せ切欠き13b同士を隙間16を保持して噛み合わせることで、木製化粧板13が、構造柱12との間に通気空間17を保持して取り付けられているので、噛み合せ切欠き13bの間に隙間16が保持されて拘束を緩めた状態となっていることにより、木製化粧板13に割れが生じるのを効果的に抑制することが可能になる。また、木製化粧板13と構造柱12との間に通気空間17が保持されていることにより、雨水や湿気、雑菌等による影響を受け難くなる。さらに、4枚の木製化粧板13は、両側縁部のL字形に切り欠いた噛み合せ切欠き13b同士を噛み合わせると共に、複数の被係止金物14に、複数の係止金物15を、上方から各々係止することによって構造柱12の外側に取り付けらていることにより、木製化粧板13に劣化や陳腐化が生じた際には容易に交換することができるので、木製化粧板13を必要に応じて適宜容易に交換して、木製柱としての美観を長期間容易に保持することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態の木製独立柱(木製ポーチ柱)10によれば、構造柱12の各側面12aを覆って耐火被覆材18が取り付けられているので、耐火被覆材18の厚さを抑制することにより、大断面材とすることなく、例えば省令準耐火構造の建築物としての耐火性能を十分に確保することが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、構造柱の各側面を覆って耐火被覆材や透湿防水シートを取り付ける必要は必ずしも無い。また、木製化粧板の下端部に通気水切材を設けて、木製化粧板と構造柱との間の通気空間への通気を促進したり、木製化粧板の外周面に沿って流下する雨水等による水の水切りを促進するようにすることもできる。さらに、木製独立柱が立設する部分の天井面にくぼみ部を設けて、木製化粧板を構造柱に沿って上下方向にスライド移動させることによる木製化粧板の着脱作業を、容易に行えるようにすることもできる。
【0038】
さらにまた、木製化粧板が取り付けられる構造柱は、正方形の断面形状を有する角材である必要は必ずしもなく、矩形の断面形状を有する角材であっても良い。扁平な壁柱等の、複数の角材や面材を組立てて形成された構造柱であっても良い。木製化粧板は、構造柱の断面形状に対応させて、異なる幅の複数種類のものを用いることもできる。木製独立柱は木製ポーチ柱である必要は必ずしも無い。
【符号の説明】
【0039】
10 木製独立柱(木製ポーチ柱)
10a 角部
11 玄関ポーチ部
12 構造柱
12a 側面
13 木製化粧板
13a 背面
13b 噛み合せ切欠き
14 被係止金物
14a 係着スリット
15 係止金物
15a 係合片
16 噛み合せ切欠き間の隙間
17 通気空間
18 耐火被覆材
19 柱受け金物
20 透湿防水シート
21 L字受け部材
22 防水パッキン材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外部に取り付けて用いる木製独立柱において、
上方からの荷重を支持する角形断面を有する構造柱と、該構造柱の4側面を外側から覆って各々取り付けられる4枚の木製化粧板とからなり、
前記木製化粧板は、前記構造柱の各側面に上下方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数の被係止金物に、当該木製化粧板の背面に上下方向に前記被係止金物と同様の間隔をおいて取り付けられた複数の係止金物を、当該木製化粧板を前記構造柱に沿ってスライド移動させることで上方から各々係止することによって前記構造柱の各側面に各々取り付けられるようになっており、
前記木製化粧板は、各々背面の両側縁部に沿ってL字形に切り欠いた噛み合せ切欠きを備えており、
前記木製独立柱の各角部において、隣接する一対の前記木製化粧板の噛み合せ切欠き同士を隙間を保持して噛み合わせることで、前記4枚の木製化粧板が、順序を問わずに着脱可能な状態で、且つ拘束を緩めた状態で、前記構造柱との間に通気空間を保持してこれの全周を覆って一体として取り付けられている木製独立柱。
【請求項2】
前記木製独立柱の各角部における、隣接する一対の前記木製化粧板の噛み合せ切欠きの間に保持された隙間に、防水パッキン材が介装されている請求項1記載の木製独立柱。
【請求項3】
前記構造柱の各側面を覆って耐火被覆材が取り付けられており、前記被係止金物は、該耐火被覆材の外側に取り付けられている請求項1又は2に記載の木製独立柱。
【請求項4】
前記構造柱の各側面を覆って透湿防水シートが取り付けられており、前記被係止金物は、該透湿防水シートの外側に取り付けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の木製独立柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−52325(P2012−52325A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194451(P2010−194451)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】