説明

木質ボード積層体

【課題】安全性にすぐれ、かつ生分解性を有し、さらに製造コストの安価な木質ボード積層体を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの木質ボードと、該隣接する2つの木質ボード間に介在させた硬化樹脂組成物層とからなる積層体であって、該硬化樹脂組成物が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該硬化樹脂組成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生分解性を有する木質ボード積層体、その製造方法及びペースト状接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
少なくとも2つの木質ボードをその隣接する2つのボード間に接着剤層を介在させて積層接着した木質ボード積層体は、合板等として広く知られている。
このような木質ボード積層体において、その接着剤としては、その接着力及び価格の点から、尿素樹脂やフェノール樹脂等のホルムアルデヒド含有樹脂が広く用いられている。
しかしながら、このような樹脂の場合、その原料である遊離ホルムアルデヒドを少量含むため、そのホルムアルデヒドがそのボード積層体から微量放散するという問題を含む。
従って、木質ボード積層体の分野においては、ホルムアルデヒド等の有害ガスの放出がなく、安全性にすぐれるとともに、価格の安い製品の開発が強く要望されている。
また、木質ボード積層体は、これを土中に埋めて廃棄処理したときに、生分解するものであることが望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安全性にすぐれ、かつ生分解性を有し、さらに製造コストの安価な木質ボード積層体、その製造方法及び該木質ボード積層体の製造に際して用いるペースト状接着剤を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す木質ボード積層体、その製造方法及び該木質ボード積層体製造用シート状接着剤が提供される。
(1)少なくとも2つの木質ボードと、該隣接する2つの木質ボード間に介在させた硬化樹脂組成物層とからなる積層体であって、該硬化樹脂組成物が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該硬化樹脂組成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体。
(2)少なくとも2つの木質ボードと、該隣接する2つの木質ボード間に介在させた硬化樹脂組成物層とからなる積層体であって、該硬化樹脂組成物が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該硬化樹脂組成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該硬化樹脂組成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体。
(3)該可溶性生分解性物質(A)が、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩及び糖化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の木質ボード積層体。
(4)該不溶性生分解性物質(B)が、不溶性リグニン系物質、植物質粉末及び植物質短繊維の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする前記(2)〜(3)のいずれかに記載の木質ボード積層体。
(5)該硬化樹脂組成物層の上面部及び/又は下面部に生分解性繊維状シートを有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の木質ボード積層体。
(6)前記(1)に記載の木質ボード積層体を製造する方法であって、少なくとも2つの木質ボードをその隣接する2つのボード間に硬化樹脂組成物前駆体を介在させて熱圧着させることからなり、該硬化樹脂組成物前駆体が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体の製造方法。
(7)前記(2)に記載の木質ボード積層体を製造する方法であって、少なくとも2つの木質ボードをその隣接する2つのボード間に硬化樹脂組成物前駆体を介在させて熱圧着させることからなり、該硬化樹脂組成物前駆体が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該予備硬化反応生成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体の製造方法。
(8)該可溶性生分解性物質(A)が、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩及び糖化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の木質ボード積層体の製造方法。
(9)該不溶性生分解性物質(B)が、不溶性リグニン系物質、植物質粉末及び植物質短繊維の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする前記(7)〜(8)のいずれかに記載の木質ボード積層体の製造方法。
(10)該硬化樹脂組成物前駆体の上面部及び/又は下面部に生分解性繊維状シートを有することを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載の木質ボード積層体の製造方法。
(11)木質ボード積層体を製造する際に用いられるペースト状接着剤であって、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体製造用ペースト状接着剤。
(12)木質ボード積層体を製造する際に用いられる、ペースト状接着剤であって、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該予備硬化反応生成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体の製造用ペースト状接着剤。
(13)該可溶性生分解性物質(A)が、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩及び糖化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする前記(11)又は(12)に記載の木質ボード積層体製造用ペースト状接着剤。
(14)該不溶性生分解性物質(B)が、不溶性リグニン系物質、植物質粉末及び植物質短繊維の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする前記(12)〜(13)のいずれかに記載の木質ボード積層体製造用ペースト状接着剤。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる木質ボードには、木材からなるものや、木粉成形物からなるもの等の従来公知の各種の木質(セルロース質)板状体が包含される。本発明で用いる木質ボードにおいて、その厚さは特に制約されないが、通常、5〜30mm、好ましくは9〜15mmである。
【0006】
本発明の木質ボード積層体は、少なくとも2つの木質ボードを、その隣接する2つのボード間に硬化樹脂組成物(接着剤)層を介して積層接着した構造を有する。この木質ボード積層体における木質ボードの数は、2〜5、好ましくは2〜3である。本発明の木質ボード積層体は、2つの木質ボードの積層体であることができる他、3〜5枚の単板(厚さ:0.5〜3mm)を積層接着させた合板等であることができる。
【0007】
本発明で木質ボードの間に介在させる硬化樹脂組成物層(接着剤層)の1つの態様は、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物(X)の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該硬化反応生成物中10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%であることを特徴とする硬化樹脂組成物層である。
【0008】
本発明で木質ボード間に介在させる硬化樹脂組成物層(接着剤層)の他の態様は、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物(Y)の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該硬化反応生成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該硬化反応生成物中10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である硬化樹脂組成物層である。
【0009】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミン、ソルビトール等の低分子量ポリオール:ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体等のポリエーテルポリオール:ポリカプロラクトン、ポリ−β−メチル−δ−プチロラクトン、ジオールと二塩基酸からのポリエステル等が挙げられる。その他、水酸基含有液状ポリブタジエン、ポリカーボネートジオール、アクリルポリオール、ひまし油変性物、やし油変性物等が挙げられる。
【0010】
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネートおよび芳香族系ポリイソシアネートの他、それらの変性体が包含される。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられ、脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。ポリイソシアネート変性体としては、例えば、ウレタンプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートビューレット、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリマー、イソホロンジイソシアネートトリマー等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いる好ましいポリイソシアネートは、(i)ジイソシアネート又は(ii)ジイソシアネートと、3〜6価、好ましくは3〜4価のポリイソシアネートとの混合物である。この混合物において、該ポリイソシアネートの割合は、ジイソシアネート換算モル量で、即ち、n(n:3〜4の数)価のポリイソシアネート1モルを、n/2モルのジイソシアネートと換算(例えば、3価のポリイソシアネート1モルは、1.5モルのジイソシアネートとして換算する)して、0.5〜2モル、好ましくは0.7〜1.5モルである。
【0012】
本発明で用いるポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)としては、従来公知の各種のものが用いられる。このようなものには、可溶性リグニン系物質(リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩)の他、糖化合物、可溶性天然高分子、リグニン及び糖化合物のポリカプロラクトン誘導体等が包含される。
【0013】
前記リグニンスルホン酸部分中和塩は、スルホン酸基とスルホン酸塩基の両方を有し、ポリオールに可溶性のリグニン物質を意味する。リグニンスルホン酸塩は、従来、サルファイトパルプ製造工程で副産される安価なものであるが、通常のポリオールには不溶性であるため、リグニンスルホン酸塩をそのまま原料とするポリウレタンは知られていない。これまでは、リグニンスルホン酸塩を、ヒドロキシメチル化してポリオール可溶として、分子内に組み込んだポリウレタンが知られている程度である。このようなポリウレタンはコスト高となり、安価なリグニンスルホン酸塩の特徴が生かされていない。
本発明者らは、リグニンスルホン酸塩を酸で部分的に加水分解して部分中和塩型とすると、このリグニンスルホン酸部分中和塩は容易にポリオールに溶解し、このリグニンスルホン酸部分中和塩を溶解状で含むポリオール溶液をポリイソシアネートと縮合反応させることにより、リグニンスルホン酸成分をポリウレタン分子鎖に含むすぐれた物性を有する生分解性ポリウレタンが得られることを見出した。
【0014】
前記リグニンスルホン酸部分中和塩は、リグニンスルホン酸塩を、酸を用いて部分的に加水分解することあるいはイオン交換法で部分的に陽イオン交換することにより得ることができる。この場合、そのリグニンスルホン酸塩には、ナトリウム塩やカリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が包含される。その部分加水分解の程度は、通常その5%水溶液のpHが1〜8、好ましくは2.5〜6、より好ましくは3〜4を示す程度であり、ポリオールに溶解する程度であればよい。
【0015】
本発明で用いるリグニンスルホン酸部分中和塩において、そのスルホン酸基は、部分的に脱スルホン化することができる。この脱スルホン化は、リグニンスルホン酸塩を部分的に加水分解する前に行うことができる。この場合の脱スルホン化は、例えば、そのリグニンスルホン酸塩をアルカリ性条件下、高圧高温で酸化反応することにより行うことができる。この部分スルホン化率は、リグニン物質に結合する全スルホン酸基の5〜90%、好ましくは10〜50%程度である。
【0016】
可溶性リグニンとしては、前記可溶性リグニンの他、ソルボルシスリグニンを挙げることができる。
【0017】
前記糖化合物には、糖蜜、単糖、少糖、多糖、糖アルコール等が包含され、ポリオールに可溶性のものであれば任意のものが用いられる。このような糖化合物には、例えば、グルコース、ガラクトース、キシロース、乳糖、マンノース、タロース、ラムノース、アラビノース、グルコシルマンノース、リキソース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、リボース、エリトロース、トレオース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、ペンツロース、テトロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ラクトース、トレハロース、コウジビオース、ソホロース、ニゲロース、ラミナリビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ブランテオビオース、ツラノース、ビシアノース、アガロビオース、シラビオース、ルチノース、プリメプロース、キシロビオース、ロジメナビオース、エリトリトール、メソエリトリトール、マルチトール、ラクチトール、D−トレイトール、D−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、D−マンニトール、アリトール、高級アルジトール等の他、デンプン、デキストラン、マンナン、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、キトサン、(上記糖化合物のポリカプロラクトン誘導体)等が挙げられる。
【0018】
前記糖蜜としては、精糖蜜や廃糖蜜が用いられる。
【0019】
本発明で用いるポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)としては、従来公知の各種のものが用いられる。このようなものには、ヒドロキシル基含有植物質粉末や、ヒドロキシル基含有植物質短繊維の他、生分解性樹脂(ポリエステル、ポリ乳酸等)が包含される。
【0020】
ヒドロキシル基含有植物質粉末としては、従来公知のもの、例えば、パルプ粉末、クラフトリグニン粉末、バガス粉末、木粉末、茶殻粉末、コーヒー豆がら粉末、コーヒー豆粉末等の各種天然高分子粉末が挙げられる。この植物質高分子粉末の平均粒径は、0.01〜3mm、好ましくは0.1〜2mmである。植物質高分子粉末の平均粒径が前記範囲より大きくなると、混合が不均一となり、ポリイソシアネートとの反応性も悪くなり、又前記範囲より小さくなると得られるポリウレタン複合体の圧縮強度や弾性率が低下する。本発明において用いるヒドロキシル基含有植物質短繊維としては、木綿繊維、麻繊維、バナナ繊維、パルプ、木材、ヤシ殻繊維等の植物質天然高分子繊維が挙げられる。この植物質高分子繊維の平均の太さは、0.01〜2mm、好ましくは0.02〜1mmである。繊維の長さは5mm以下、好ましくは3mm以下であり、その下限値は1mm程度である。植物質高分子短繊維の寸法は前記より大きくなると、混合が不均一となり、ポリイソシアネートとの反応性も悪くなり、また前記範囲より小さくなると得られるポリウレタン複合体の圧縮強度や弾性率が低下する。
【0021】
本発明においては、ポリオールとポリウレタンとをウレタン化反応させるために、従来公知のウレタン化反応触媒を用いるのが好ましい。ウレタン化反応触媒としては、通常、金属系やアミン系の触媒が用いられる。
本発明では、アミン系触媒の使用が好ましい。このアミン系触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、1−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾ−ル等が挙げられる。
【0022】
前記金属系ウレタン化触媒には、鉛系やスズ系の触媒が包含される。その具体例としては、例えば、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
【0023】
ウレタン化反応触媒の使用割合は、前記した反応混合物X中又は前記した反応混合物Y中、アミン系触媒の場合、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜20重量%であり、金属系触媒の場合、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0024】
本発明の木質ボード積層体を製造するには、塗布型接着剤として、前記した液状ないしペースト状の混合物X又は混合物Yあるいはそれらのペースト状予備硬化反応生成物(以下、これらを混合物等とも言う)を、積層接着すべき2つの木質ボードの一方又は両方の接着面に塗布し、その2つの木質ボードを積層し、この状態において該混合物等をウレタン化反応(硬化反応)させる。この場合、その反応温度は20〜150℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。反応圧力は、常圧又は加圧が採用される。
【0025】
前記のようにして木質ボード積層体を製造する場合、その積層体の機械的強度を高めるために、積層すべき2つの木質ボードの一方のボードと、接着剤として用いる前記混合物等との間あるいは2つの各ボードと前記混合物等との間に、生分解性繊維状シートを介在させることが好ましい。この場合には、上面及び/又は下面部に該生分解性繊維状シートを有する接着剤層を介在した木質ボード積層体が得られる。
前記繊維状シートには、生分解性樹脂の繊維から形成された不織布、織布、編布等が包含される。このシートにおいて、その厚さは、0.05〜3mm、好ましくは0.1〜2mmである。
前記生分解性樹脂には、従来公知の各種のもの、例えば、脂肪族ポリエステルやポリ乳酸等が包含される。
【0026】
前記ウレタン化反応においては、ポリオールとポリイソシアネートとの硬化反応(ウレタン化反応)が生起し、そして、生分解性物質(A)又は(B)がヒドロキシル基を持つ物質の場合には、それらのヒドロキシル基とポリイソシアネートとの間のウレタン化反応も生起する。この硬化反応によって2つのボード間には硬化樹脂組成物層が形成される。
【0027】
ポリイソシアネートの使用割合は、混合物X又はY中に存在する反応性ヒドロキシル基の当量数に対し、そのイソシアネート当量数で、0.5〜1.5倍当量、好ましくは0.7〜1.3倍当量である。ポリイソシアネートは、通常、混合物X又はY中、1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%である。
【0028】
本発明で用いる前記混合物X、Yは、液状ないしペースト状で用いることができる。
【0029】
本発明による前記ペースト状接着剤は、混合物X又は混合物Yの予備硬化反応生成物であることが好ましい。このペースト状予備硬化反応生成物は、その硬化反応の程度によってその粘度が異なるが、本発明の場合、その粘度は、塗布作業に応じて適宜選定すれがよい。
【0030】
本発明の木質ボード積層体において、そのボード数は2つ又はそれ以上であるが、3つ以上のボードを有する積層体も、前記と同様にして製造することができる。
【0031】
本発明の木質ボード積層体において、そのボード間に存在する硬化樹脂組成物層(接着剤層)は、発泡体層とすることもできる。この場合には、発泡剤としての水を、前記混合物XやYに適量加えればよい。
【0032】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳述する。
【0033】
実施例1
廃糖蜜1部をポリエチレングリコール200(PEG200)2部に溶解して、糖蜜ポリオール(MP)を調製した。このMPに、表1に示すCBP含有量(wt%)となるように、コーヒー豆殻粉末(CBP)(粒子直径約350〜710μm)を混合した。さらに、得られた混合物に、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.015部加え、さらに、NCO/OHが1.2となるようにあらかじめ算出した重量のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加えて、温度30℃で約10分間かきまぜた。このようにして得られた混合物は、ペースト状のポリウレタン前駆体(硬化樹脂組成物前駆体)であり、熱硬化性を有するものであった。
次に、このポリウレタン前駆体を、厚さ1mmのベニヤ板の2枚の間に厚さ8mmのペースト状膜として介在させ、その2枚のベニヤ板を、その上下方向から100kg/cmの圧縮力下で120℃の温度で2時間熱プレスした。
このようにして、全体の厚さが1cmの木質パネル(木質ボード積層体)を作製した。この木質パネルの機械的物性を表1に示す。
なお、表1に示すCBP含有率(wt%)は、次式で表されるものである。
CBP含有率(wt%)=A/B×100
A:CBP重量
B:CBP重量とMP重量の合計重量
【0034】
【表1】

【0035】
実施例2
実施例1において、CBPのかわりにコーヒー抽出残渣(CG)(粒子直径約350〜710μm)を用いた以外は同様にして木質パネルを作製した。この木質パネルを作製した。得られた木質パネルの機械的物性を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例3
実施例1において、CBPのかわりに木粉(WM,粒子直径約150〜250μm)を用いた以外は、同様にして木質パネルを作製した。得られた木質パネルの機械的物性を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
実施例4
実施例1において、一方のベニヤ板とポリウレタン前駆体シートとの間及び他方のベニヤ板とポリウレタン前駆体シートとの間にそれぞれポリ乳酸不織布(厚さ:0.5mm)を介在させた以外は同様にして木質パネルを作製した。この木質パネルの機械的物性を表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
実施例5
実施例4において、CBPのかわりにCGを用いた以外は、同様にして木質パネルを作製した。得られた木質パネルの機械的物性を表5に示す。
【0042】
【表5】

【0043】
実施例6
実施例4において、CBPのかわりにWMを用いた以外は、同様にして木質パネルを作製した。得られた木質パネルの機械的物性を表6に示す。
【0044】
【表6】

【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的物性にすぐれた木質ボード積層体を安価に製造することができる。この木質ボード積層体は、内装材(床材、壁材等)や外装材(水が入ると性能低下を起こすため最外装材としては不適ですが、最外装面を塗装するなどすればOKです)等として広く用いることができる。そして、この木質ボード積層板は、生分解性を有することから、その使用済み後には、土中に埋設処理することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの木質ボードと、該隣接する2つの木質ボード間に介在させた硬化樹脂組成物層とからなる積層体であって、該硬化樹脂組成物が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該硬化樹脂組成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体。
【請求項2】
少なくとも2つの木質ボードと、該隣接する2つの木質ボード間に介在させた硬化樹脂組成物層とからなる積層体であって、該硬化樹脂組成物が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物の硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該硬化樹脂組成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該硬化樹脂組成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体。
【請求項3】
該可溶性生分解性物質(A)が、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩及び糖化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質ボード積層体。
【請求項4】
該不溶性生分解性物質(B)が、不溶性リグニン系物質、植物質粉末及び植物質短繊維の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の木質ボード積層体。
【請求項5】
該硬化樹脂組成物層の上面部及び/又は下面部に生分解性繊維状シートを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の木質ボード積層体。
【請求項6】
請求項1に記載の木質ボード積層体を製造する方法であって、少なくとも2つの木質ボードをその隣接する2つのボード間に硬化樹脂組成物前駆体を介在させて熱圧着させることからなり、該硬化樹脂組成物前駆体が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載の木質ボード積層体を製造する方法であって、少なくとも2つの木質ボードをその隣接する2つのボード間に硬化樹脂組成物前駆体を介在させて熱圧着させることからなり、該硬化樹脂組成物前駆体が、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該予備硬化反応生成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体の製造方法。
【請求項8】
該可溶性生分解性物質(A)が、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩及び糖化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項6又は7に記載の木質ボード積層体の製造方法。
【請求項9】
該不溶性生分解性物質(B)が、不溶性リグニン系物質、植物質粉末及び植物質短繊維の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項7〜8のいずれかに記載の木質ボード積層体の製造方法。
【請求項10】
該硬化樹脂組成物前駆体の上面部及び/又は下面部に生分解性繊維状シートを有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の木質ボード積層体の製造方法。
【請求項11】
木質ボード積層体を製造する際に用いられるペースト状接着剤であって、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体製造用ペースト状接着剤。
【請求項12】
木質ボード積層体を製造する際に用いられるペースト状接着剤であって、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、(iii)該ポリオールに溶解する可溶性生分解性物質(A)及び(iv)該ポリオールに溶解しない不溶性生分解性物質(B)を含有する混合物の予備硬化反応生成物からなり、該可溶性生分解性物質(A)と該不溶性生分解性物質(B)との合計量が該予備硬化反応生成物中10〜90重量%であり、該可溶性生分解性物質(A)の割合が該予備硬化反応生成物中10〜50重量%であることを特徴とする木質ボード積層体の製造用ペースト状接着剤。
【請求項13】
該可溶性生分解性物質(A)が、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸部分中和塩及び糖化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項11又は12に記載の木質ボード積層体製造用ペースト状接着剤。
【請求項14】
該不溶性生分解性物質(B)が、不溶性リグニン系物質、植物質粉末及び植物質短繊維の中から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項12〜13のいずれかに記載の木質ボード積層体製造用ペースト状接着剤。

【公開番号】特開2006−43885(P2006−43885A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−68761(P2003−68761)
【出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(390013815)学校法人金井学園 (20)
【Fターム(参考)】