説明

木質化粧板の製造方法

【課題】木質繊維板と表面化粧材とを水性接着剤で加熱圧着した際に生じる反りを低減した木質化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】木質繊維板2を表面に有する複合材4の表面に表面化粧材5を積層一体化する木質化粧板1の製造方法において、撥水剤を含有する木質繊維板2の表面に、イソシアネート化合物を塗布し含浸させ、これを硬化させた後、木質繊維板2の表面に水性接着剤を塗布して表面化粧材5を加熱圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装建材等に使用される木質化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質繊維板またはそれを表面に有する木質繊維板複合材の表面に表面化粧材を積層一体化させた木質化粧板が知られている。木質繊維板は一般的には衝撃力等の外力が加わると欠けや層間剥離が生じやすいという欠点があり、木質化粧板の製造の際、その製造工程で受ける衝撃力によって木質繊維板に部分的に欠けや層間剥離が生じる場合があった。これらは不良品として廃棄されコストアップの一因となっている。そこで特許文献1では、木質繊維板の表面にホルマリン系樹脂以外の高分子化合物を塗布含浸し、高分子化合物が未硬化の状態でその上に水性接着剤を塗布し、さらに表面化粧材を積層し、加熱圧締して木質化粧板を製造することを報告している。特許文献1記載の木質化粧板の製造方法によれば、木質繊維板の表層部に、高分子化合物による高硬度の樹脂含浸層が形成される。これによって、木質繊維板の耐衝撃強度および剥離強度が向上し、製造工程で受ける衝撃力により木質繊維板に生じる欠けや層間剥離を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3462656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記木質化粧板の製造方法においては以下の問題が指摘されている。すなわち、加熱圧締時、水性接着剤に含有する水分等が加熱水となりこの加熱水が木質繊維板内の表面化粧材を積層した側から反対の側の部分に浸透して大きく作用する。加熱水の作用の程度に応じて木質繊維板内の表面化粧材を積層した側の部分が受ける湿熱負荷およびそれに伴う収縮が反対側の部分よりも大きくなり、木質化粧板に反りが発生する。反り量が大きい場合には不良品として廃棄される。
【0005】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、木質繊維板と表面化粧材とを水性接着剤で加熱圧着した際に生じる反りを低減した木質化粧板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、木質繊維板またはそれを表面に有する複合材の表面に表面化粧材を積層一体化する木質化粧板の製造方法において、撥水剤を含有する木質繊維板の表面に、イソシアネート化合物を塗布し含浸させ、これを硬化させた後、木質繊維板の表面に水性接着剤を塗布して表面化粧材を加熱圧着することを特徴とする。
【0007】
この木質化粧板の製造方法において、前記撥水剤は、前記表面化粧材の加熱圧着時の温度よりも溶融温度が高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木質繊維板と表面化粧材とを水性接着剤で加熱圧着した際に生じる反りを低減した木質化粧板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る木質化粧板の製造方法により製造された木質化粧板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る木質化粧板の製造方法により製造された木質化粧板の断面図である。
【0012】
図1の木質化粧板1は、木質繊維板2を表面に有する複合材4とその表面に積層一体化される表面化粧材5とを備えている。複合材4は、木質繊維板2と基板3で構成されている。
【0013】
木質繊維板2は、例えば、中密度繊維板(MDF)や高密度繊維板(HDF)等が用いられる。その他、インシュレーションボードを圧締したもの、ケナフ繊維やジュート繊維、合成繊維等を解繊混合しこれを圧締したもの等を用いることもできる。比重や厚さは特に限定されない。
【0014】
木質繊維板2には、水分の浸入を抑制するためにパラフィンワックスや脂肪酸アミド等の撥水剤が含有されている。
【0015】
パラフィンワックスの具体例としては、石油抽出系や合成系の直鎖炭化水素系パラフィンワックス、分岐炭化水素系パラフィンワックス、これらを空気酸化した直鎖炭化水素系酸化パラフィンワックス、分岐炭化水素系酸化パラフィンワックス、分子量400〜4000程度の低分子ポリエチレンや低分子ポリプロピレン、さらにこれらを空気酸化した酸化ポリエチレンや酸化ポリプロピレン、低分子ポリエチレンや低分子ポリプロピレンの無水マレイン酸部分付加物等が挙げられる。脂肪酸アミドの具体例としては、N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−メチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。これらの撥水剤は、単独もしくは複数種組合わせて使用することができる。
【0016】
撥水剤は、後述する木質繊維板2と表面化粧材5との加熱圧着時の温度よりも高い溶融温度を有するものが好ましく用いられる。このような溶融温度を有する撥水剤を木質繊維板2に含浸させることで、水性接着剤に含有する水分由来の加熱水による加熱圧着時の撥水剤の溶出を低減し、木質繊維板2の寸法収縮を抑制することができ、反りをより低減することができる。木質繊維板2と表面化粧材5との加熱圧着時の温度よりも高い溶融温度を有する撥水剤を用いる場合、その加熱圧着時の温度と同じもしくはそれよりも低い溶融温度を有する撥水剤を組合わせて使用することもできる。
【0017】
撥水剤は、木質繊維板2への水分の浸入を抑制し且つ強度を損なわない程度に木質繊維板2に含有されており、好ましくは木質繊維板2に対して1wt%以上含有されている。より好ましくは1.2wt%以上である。上限値は、特に制限されないが、木質繊維板2の強度低下等を考慮して例えば5wt%に設定することができる。
【0018】
このような撥水剤は、木質繊維板2を作製する際、工程上で繊維へスプレー散布し混合させる方法や、板形状に成形した後に、例えば、塗布、散布、浸漬等の方法によって木質繊維板2に含浸させることができる。
【0019】
本実施形態では、撥水剤を含有する木質繊維板2の表面にイソシアネート化合物を塗布し含浸させ、硬化させている。
【0020】
イソシアネート化合物とは、分子中にイソシアネート基を持つ化合物のことである。具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートテトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリエチレンジイソシアネート等が挙げられる。こられは、単独もしくは複数種組合わせて使用することができる。必要に応じて架橋促進剤等を混合してもよい。
【0021】
イソシアネート化合物は、一般的には木質繊維板2への浸透性が良好であるが、浸透性向上のために、例えば、重量平均分子量200〜500程度の低分子量のものを用いることが好ましい。また、溶剤、無溶剤に限らず希釈成分との混合物を用いることもできる。イソシアネート化合物の浸透性が良好であれば、木質繊維板2との硬化(架橋)バラツキも少なくなる。また、木質繊維板2の表面にも残らないので後述する水性接着剤が弾かれることなくこの水性接着剤を塗布でき、表面化粧材5の接着強度の安定性が向上する利点もある。
【0022】
イソシアネート化合物の木質繊維板2への塗布は、例えば、ロールコーターやフローコーター等、一般的な塗布装置を用いて行うことができる。塗布されたイソシアネート化合物は木質繊維板2内に浸透する。イソシアネート化合物を木質繊維板2に塗布する前に、木質繊維板2およびイソシアネート化合物のうち少なくとも一方を予め温めておくことが好ましい。このようにすることで、イソシアネート化合物の粘度が低下して流動性が向上し、より効果的に木質繊維板2内に含浸させることができる。イソシアネート化合物の木質繊維板2への塗布時あるいはその後、木質繊維板2を真空引きすることもできる。木質繊維板2の裏面側から真空引きすることにより、イソシアネート化合物を木質繊維板2内に強制的にしみ込ませることができるなど、より短時間で且つ確実に木質繊維板2内に含浸させることができる。
【0023】
イソシアネート化合物の塗布量は、木質繊維板2の厚さや木質繊維板2と表面化粧材5との加熱圧着時の温度等によって適宜設定される。例えば、2〜3mm厚の木質繊維板2に表面化粧材5を水性接着剤を用いて100℃±5℃、1分程度で加熱圧着する場合、イソシアネート化合物の固形分で20〜150g/mの範囲で塗布することが好ましい。その範囲内でイソシアネート化合物を塗布することにより木質繊維板2の表層部分から少し内側部分に良好に浸透し、反り抑制効果がより高められる。
【0024】
木質繊維板2に含浸させたイソシアネート化合物の硬化(架橋)方法は、常温環境に放置して湿気硬化させてもよいし、加熱して架橋促進させてもよい。
【0025】
イソシアネート化合物が硬化すると、イソシアネート化合物と木質繊維板2の繊維とが強固に結びついたイソシアネート化合物の硬化層6が木質繊維板2内に形成される。図1では、木質繊維板2内のうち表面側の部分に硬化層6が形成されているが、イソシアネート化合物の浸透の程度によっては表面から裏面に至る木質繊維板2内全体に硬化層6が形成される場合もある。
【0026】
このように、木質繊維板2内において少なくとも表面側の部分にイソシアネート化合物の硬化層6が形成されると、木質繊維板2と表面化粧材5とを水性接着剤で加熱圧着した際、水性接着剤に含有する水分等の加熱水の木質繊維板2内への浸透が低減される。これによって、木質繊維板2は加熱水の作用による湿熱負荷を受けにくくなり、寸法収縮が抑制されるなど寸法安定性が向上する。さらに木質繊維板2に含浸させていた撥水剤の溶出が硬化層6の存在により抑制され、この撥水剤の撥水効果によっても水性接着剤に含有する水分等の加熱水の木質繊維板2内への浸透が低減される。このようにイソシアネート化合物の硬化とそれに伴う撥水剤の溶出抑制の効果との相乗効果により、水性接着剤に含有する水分等の加熱水が木質繊維板2内に浸透しにくくなり、その加熱水の作用による湿熱負荷が低減して寸法安定性が向上し、反り量が低減する。
【0027】
本実施形態では、木質繊維板2の表面に水性接着剤を塗布し、その上に表面化粧材5を載置して加熱圧着している。これによって、図1に示すように表面化粧材5は水性接着剤の接着剤層7を介して木質繊維板2の表面に積層一体化される。
【0028】
表面化粧材5は、例えば、突板、単板、印刷シート等であり、その表面に塗装が施されているものを用いることもできる。表面化粧材5として水分が含浸した湿式突板を用いた場合、従来法による木質繊維板2への加熱圧着時に木質繊維板2の表面側の部分が受ける湿熱負荷が特に大きくなり木質化粧板1の反り量も大きくなるが、本方法によれば木質化粧板1の反り量を低減することができる。
【0029】
水性接着剤は、例えば、エマルジョン系接着剤、水溶性接着剤、水分散型接着剤等であり、酢酸ビニル樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等の樹脂を含有するものが用いられる。
【0030】
図1では、木質繊維板2の裏面側に、合板、OSB(Oriented Strand Board)、無機質板等からなる基板3が上記水性接着剤等で接着されている。本実施形態では、基板3と木質繊維板2とを接着して複合化した後、木質繊維板2にイソシアネート化合物を塗布し含浸させ、硬化させた後、水性接着剤を塗布し、表面化粧材5を載置して加熱圧着している。なお、基板3と木質繊維板2との接着工程は、イソシアネート化合物の木質繊維板2への塗布前でなくてもよい。例えば、イソシアネート化合物の含浸硬化後、水性接着剤の塗布前に行ってもよいし、表面化粧材5の加熱圧着後に行ってもよい。
【0031】
以上のようにして得られた木質化粧板1は、反りの程度が小さく、床材や収納建具材等の内装建材等に好ましく用いられる。
【0032】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば図1の木質化粧板1は、表面化粧材5が貼り合わされる基材として木質繊維板2と基板3との複合材4が採用されているが、基材は表面に木質繊維板を有している複合材であればよく、また、木質繊維板のみで基材が構成されていてもよい。
【実施例】
【0033】
<実施例1>
低融点タイプの撥水剤を含有する木質繊維板と基板とを水性ビニルウレタン樹脂で接着複合した板を準備し、木質繊維板の表面にイソシアネート化合物をロールコーターで塗布して含浸させた。次いで、25℃で4日間放置してイソシアネート化合物を硬化させた後、木質繊維板の表面に酢酸ビニル樹脂系の水性接着剤を塗布し、さらに表面化粧材を載置して110℃、1MPa、1分保持の条件で加熱圧着して木質化粧板を得た。なお、撥水剤を含有する木質繊維板は、木質繊維板作製時、繊維に撥水剤をスプレー散布し混合して得たものである。
【0034】
使用した撥水剤、木質繊維板、基板、イソシアネート化合物、および表面化粧材は下記の通りである。
【0035】
・撥水剤(低融点タイプ)
ポリエチレン酸化WAX、融点65℃、木質繊維板に対して1.2wt%添加
・木質繊維板
MDF2.7mm厚、比重0.7
・基板
ユーカリ合板、9.5mm厚
・イソシアネート化合物
メチレンビスジイソシアネート(MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート)とポリエチレンジイソシアネートとの混合物、重量平均分子量:約400、塗布量(固形分):60g/m
・表面化粧材
湿式突板、0.2mm厚、樹種:ブナ、含水率:約90%
<実施例2>
実施例1において低融点タイプの撥水剤とともに下記の高融点タイプの撥水剤を含有させた木質繊維板を用いた以外は、実施例1と同様にして木質化粧板を得た。
【0036】
・撥水剤(高融点タイプ)
パラフィンWAX、融点115℃、木質繊維板に対して1.2wt%添加(低融点タイプの撥水剤と高融点タイプの撥水剤とが木質繊維板に対して合計2.4wt%添加されている)
<比較例1>
実施例1においてイソシアネート化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして木質化粧板を得た。
<比較例2>
実施例2においてイソシアネート化合物を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして木質化粧板を得た。
<比較例3>
実施例1においてイソシアネート化合物を塗布後、25℃で4日間放置してイソシアネート化合物を硬化させる代わりに、イソシアネート化合物が硬化する前(イソシアネート化合物を塗布してから10分後)に表面化粧材を水性接着剤で加熱圧着したこと以外は、実施例1と同様にして木質化粧板を得た。
<比較例4>
実施例2においてイソシアネート化合物を塗布後、25℃で4日間放置してイソシアネート化合物を硬化させる代わりに、イソシアネート化合物が硬化する前(イソシアネート化合物を塗布してから10分後)に表面化粧材を水性接着剤で加熱圧着したこと以外は、実施例2と同様にして木質化粧板を得た。
<比較例5>
実施例1においてイソシアネート化合物の代わりに、下記のフェノール樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして木質化粧板を得た。
【0037】
・フェノール樹脂
重量平均分子量:約400、塗布量(固形分):60g/m
以上のようにして得られた木質化粧板に発生した反り量を測定し合否を判定した。その結果を表1に示す。なお、木質繊維板に発生した反り量の測定方法および合否の判定基準は下記のとおりである。
<反り量の測定方法と合否の判定基準>
木質化粧板のサイズは幅30cm×長さ180cmとし、表面化粧材の加熱圧着前後での幅方向の反り量を測定した。凸反りを+、凹反りを−とし、反り量が、幅反りが目立たない−0.5mm以上+0.5mm以下の範囲の場合には合格「○」とし、その範囲から外れる場合には不合格「×」とした。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果より、実施例1,2で得られた木質化粧板は、反り量が抑えられていることが確認できた。特に実施例2で得られた木質化粧板は、表面化粧材の加熱圧着時の温度よりも溶融温度が高い撥水剤を木質繊維板に含浸させているので、反り量が効果的に抑えられている。比較例1〜5で得られた木質化粧板は、イソシアネート化合物を用いていないか、もしくはイソシアネート化合物を用いていても未硬化の状態で表面化粧材を加熱圧着したので、反り量が大きくなっている。
【符号の説明】
【0040】
1 木質化粧板
2 木質繊維板
4 複合材
5 表面化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維板またはそれを表面に有する複合材の表面に表面化粧材を積層一体化する木質化粧板の製造方法において、撥水剤を含有する前記木質繊維板の表面に、イソシアネート化合物を塗布し含浸させ、これを硬化させた後、前記木質繊維板の表面に水性接着剤を塗布して前記表面化粧材を加熱圧着することを特徴とする木質化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記撥水剤は、前記表面化粧材の加熱圧着時の温度よりも溶融温度が高いことを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−45789(P2012−45789A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188850(P2010−188850)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】