説明

木質板および床材

【課題】建築表面仕上材、床、壁、天井、柱、あるいは家具、キャビネットなどの化粧材、各種造作などの表面仕上材、特に最表面に耐擦傷性、耐汚染性を有する木質板および床材の提供にある。
【解決手段】針葉樹単独あるいは針葉樹と広葉樹の複合合板からなる表面層1、補強層2、基材3に針葉樹単独あるいは針葉樹と広葉樹の複合合板で構成され、表面層は窒素ガス雰囲気下で紫外線硬化型塗料4を塗布・硬化してなる木質板および床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築表面仕上材、床、壁、天井、柱、あるいは家具、キャビネットなどの化粧材、各種造作などの表面仕上材として好適な木質板および床材、特に最表面に耐擦傷性、耐汚染性を有する木質板および床材に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国の植林政策は、針葉樹を中心に行われ、その中でも杉は成長が早いこともあり、平成14年度国産材素材生産量の45%を占めている。但し、国民の所得の高水準化から国産材は生産コストが高く、輸入外材に比べ採算割れが続き、林業生産者の後継者不足を招き、木を育てるための間伐にも手が回らない状態になって多くの林野が放置されている。当然標準伐期齢を超える立木の蓄積が毎年増加している状況は多くを占める杉材においても同様で、その利用促進は重要な課題である。しかし、杉は他の針葉樹に比べれば、成長が早いが、表面硬さが低く擦傷性や汚染性についても木質板や床材などには適しているとは言えない。杉以外の針葉樹についても、同様である。
【0003】
近年、技術革新により建築資材についての耐久性向上、住宅の耐用年数の長期化が図られているが、床材や表面材などの木質の材料は他の材料に比べて傷みが早いこと、また、需用者は自然志向から木質系を好む傾向があり、また、最近、癒しを求めて生活の中でもペットと共に暮らすことが増え、「耐擦過傷」が不十分なため、ペットの爪のひっかき傷等による劣化、ノミ、シラミ、細菌、屎尿への対応不足、及び生活の中での各種汚染対策、油、カレー類、食紅、毛染めなどにも対応する「耐汚染性能」が求められている。
従来、住宅の床材等の内装部材やテーブルなどの各部材には、針葉樹材の欠点である軟質な早材部の硬度不足から傷が付きやすく、硬さを必要とする製品には広葉樹材が使われている。従って、針葉樹材を用いた床材、テーブル天板などの開発には、軟弱な早材部の表面硬さを広葉樹並みに改質する機能性付与技術の開発が行われている。
平成14年度福島県ハイテクプラザ試験研究報告P79〜P81に針葉樹、特に杉材の表面硬度向上のため、圧密強化することが記載されている。平成15年度福島県ハイテクプラザ試験研究概要によれば、福島、山形、新潟3県共同研究が平成17年度まで計画され、その中間報告としてそれまでの研究を含めた内容の中に水溶性樹脂で処理する、圧密処理する、塗装は硬質的な環境ポリウレタン樹脂塗料を使用することが述べられている。
また、広島県立東部工業技術センター研究報告 第16号(2003)、に平面プレスでの圧密木材、第17号(2003)に多段ロールによる表面圧密による硬度向上について記載されている。岩手県林業技術センター研究成果速報 No.8(H7.6.23)、No.56(H.11.4.22)、No.72(H12.3.21発行)などには赤松材の表面硬さ向上を試みるため水溶性樹脂を含浸する方法、圧密化する方法、単独や組み合わせる方法を提案している。これらはいずれも単板を作成、積層接着し、最後に表面塗装を行う方法である。紙、プラスチック、ガラス、木材、金属、セラミック等の基材の表面を保護するためコーティングする際、活性エネルギー線硬化型高不揮発分タイプの塗料が使用されている。活性エネルギー線としては紫外線を使用することは公知の技術である。そして紫外線を使用する際には、酸素濃度が通常の状態、すなわち、約21%濃度の際には硬化が遅いため色々な工夫がなされている。
特開2004−51653号公報[活性エネルギー線硬化型塗料組成物および硬化皮膜形成法]には、第一工程において通常の酸素濃度状態で紫外線で硬化した後、第二工程においては、酸素濃度15%以下の場合、例えば酸素ガス以外のガスとして窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスから撰ばれる1種類以上の不活性ガスが使用され紫外線硬化が行われている。第一工程ではむしろ完全硬化せずにタックフリー程度に硬化させ、次いで酸素濃度の低い状態で硬化させて優れた表面塗膜を形成させ、塗膜の密着性向上の効果も得ている。ただし、ここの実施例ではどの不活性ガスを使用したのかは記載されていない。炭酸ガスは不活性といわれているが、エネルギーレベルによっては重合反応に寄与する場合も生ずる。また、アルゴンガスも窒素ガスに比べれば高価であり大量に使用することは工業的に不利となる。
特開2001−121516号公報[表面塗装木質仕上材]には、樹脂の含浸を可能とするシート基材に熱硬化性樹脂を含浸させてなる樹脂含浸シートを台板上に重ね合せ、この樹脂含浸シート上に樹脂の含浸を可能とする化粧板を重ね合わせ、その上に撥水性塗膜を形成した表面塗装木質仕上げ材である。この技術の特徴は、樹脂の含浸可能なシートに熱硬化性樹脂を含浸させ、補強すると共に表面が撥水性を有するために有機ケイ素化合物を含む塗料を塗布し構成された木質仕上材である。
【特許文献1】特開2004−51653号公報
【特許文献2】特開2001−121516号公報
【非特許文献1】平成14年度福島県ハイテクプラザ試験研究報告
【非特許文献2】平成15年度福島県ハイテクプラザ試験研究概要
【非特許文献3】広島県立東部工業技術センター研究報告 第16号(2003)
【非特許文献4】同県立東部工業技術センター研究報告 第17号(2003)
【非特許文献5】岩手県林業技術センター研究成果速報 No.8(H7.6.23)
【非特許文献6】同センター研究成果速報 No.56(H.11.4.22)
【非特許文献7】同センター研究成果速報 No.72(H12.3.21発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、国内の針葉樹の1/2以上を占める杉材の有効活用を図り、杉材を含む針葉樹材の表面硬さを高め、耐擦傷性、耐汚染性に優れた木質板および床材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による木質板および床材は、基材として針葉樹または針葉樹と広葉樹の複合板を複数層からなるものと補強性を有するシートを組み合わせ、針葉樹と広葉樹単板との積層材に紫外線硬化型塗料を塗布、窒素ガス雰囲気下で表面硬化することにより耐擦傷性、耐汚染性、を有する表面層との複合された木質板および床材を得る。
【0006】
本発明を完成するに至ったのは、基材として杉類を主とする針葉樹類あるいは針葉樹類と広葉樹類からなるもので、表面層は前記基材を窒素雰囲気下で紫外線硬化型塗料を塗布・硬化させたものと、その中間層にシート状補強層を組み合わせて成型して得られたものである。基材として使用する針葉樹類単独あるいは針葉樹と広葉樹の組み合わせだけでは、表面の硬さが足りず、従来から耐擦傷性、耐汚染性については不満であった。改良のためにこれらに樹脂を含浸したり、表面に塗装することにより表面硬さを付与させることが試みられてきた。勿論、各種塗料例えば1成分系塗料や2成分反応型塗料があり、夫々が室温硬化型や加熱硬化型があり、工程上の点では一長一短があった。
その後、紫外線硬化型の塗料が知られ、熱エネルギーや工程短縮のメリットから使用されるようになった。しかし、紫外線硬化型塗料の場合、酸素があると反応が遅く工程上の生産性が熱硬化や自然硬化に比べいくらかは改善されていても更に改善が求められている。更に、ここでは橋かけが進む必要があり、通常の空気中の雰囲気で硬化速度が遅いことは橋かけも遅くなっている。
基材の表面を性能改良する紫外線硬化型塗料を塗布したのみでは、目的とする性能は満足するものではない。木質板および床材は木材自体の硬さの感触と表面の要求特性が満足するものでなくてはならない。従って基材の部分は一様ではなく、適度な感触と同時に表面近くにおいては硬さや強靱さも必要となる。そのためには基材を均一層でその上に表面塗装を施したものではなく、表面層の下には補強層が必要であり、薄い補強シートを設置し、また、複数基材を重ねる際に、基材自体の強度が異なるものを使用するとよいものである。
【0007】
更に詳しく各部の構成及びここに使用する材料について述べる。ここの木質板および床材は、針葉樹と広葉樹との複合板に窒素ガス雰囲気下で紫外線硬化型塗料を塗布硬化(以下NUV塗装という。)した表面板と、補強シートと針葉樹または針葉樹と広葉樹の複合材からなる基材、あるいは広葉樹または針葉樹の表面をNUV塗装した表面板、補強シート、広葉樹、針葉樹、単独、または針葉樹と広葉樹の複合材からなる基材から構成されている。
以下、各構成部材について述べる。まず、表面板に使用する針葉樹と広葉樹の複合板、針葉樹、広葉樹あるいは合板に限らずいずれについても同様であるが、これらの素地を研磨、下塗り処理{(UVシーラー)、UV硬化、乾燥を行い、(必要により複数回も可)}、中塗り処理{UV硬化、中間研磨}、上塗り(NUV塗料使用)硬化して得られる。最終上塗り塗装はNUV塗装により著しい工程のスピードアップ硬化の完結性が得られる。空気中の酸素濃度は通常21%であるが、この濃度を10%以下にすることによりその効果は非常に大きく、5%以下にすると更に好ましい。
基材は杉を主とする合板を使用するが、勿論杉だけには限らない。ラーチのようなカラマツ類、桧類、広葉樹類あるいは針葉樹と広葉樹との複合材でもよく、合板にするために樹脂例えばメラミン樹脂やユリア樹脂、フェノール樹脂、を含浸させたりすることが出来る。これらを貼合わせるためには、メラミン・ユリア樹脂を始めフェノール樹脂、エポキシ樹脂系の接着剤を使用して多層の合板とし、使用する。表面硬度は単独で硬さを発揮するのもよいが、基材が適度な硬さを持つことも必要である。勿論、合板を作成する際に中間に補強層を挿入することは何等問題なく好ましいものである。補強層は各種プラスチックフィルムや各種不織布など適宜使用することが出来る。その際、使用するものに必要な接着剤を使用することは当然である。
このように基材に杉などの針葉樹を主とし、広葉樹も含めた合板などにより余りこれまで活用されなかった木材の活用の道が開ける。特に杉などの針葉樹は前に述べているように単独では表面の硬さが劣り、単独では使用できずいろいろな試みがなされてきた。単に表面に硬い塗料を塗布したり、紫外線硬化塗料を用いたりしているが、硬さの不十分さもあり、不活性ガス中での紫外線硬化可能な塗料を使用することにより、さらに使用拡大が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の木質板または床材は、NUV塗装が従来の熱硬化型塗装に比較して硬化ラインを短縮することが出来るので、工場スペース、稼働エネルギーの省エネルギーを図ることが出来、養生時間も不要で著しく生産性を向上させるものである。
【0009】
また、従来の空気中で行うUV硬化は空気中の酸素により硬化の阻害が発生するが、NUV塗装方法は、窒素雰囲気下でUV照射を行うことで、酸素による硬化阻害を減らし、効率良く表面の硬化重合度を上げることが出来る。
【0010】
よって、この発明の木質板あるいは床材は、ペットの爪の引っ掻き、カレー粉、毛染め液にも耐える高レベルの耐擦傷性、耐汚染性、抗菌性能を具備するため、用途・需要を飛躍的に拡大し、伐期を迎えた国産針葉樹の利用促進に多大の貢献をするものである。また、美観を原因とする張り替えサイクルを延長し、省資源に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に最良の形態を示す。本発明のNUV塗装床材は、基材3と表面層1との間に補強層2を介在して一体に構成される。そして表面層1の表面に図示しないが、NUV塗装が塗布される。
【実施例1】
【0012】
以下、この発明のNUV塗装床材を図2に示す実施例1にしたがって説明する。
比較例として基材、補強層および表面層は実施例1と同一構成とし窒素ガスを使用しない状態で紫外線硬化を行ったものである。
一般に、床材は基材と表面層から構成されている。本発明のNUV塗装床材は、図2に示すように基材3と表面層1との間に補強層2を介在して一体に構成される。
そして表面層1の表面にNUV塗装4が塗布される。前記基材3は、針葉樹合板または針葉樹と広葉樹との複合合板を用いる。その単板の積載構成は3プライ以上で、その基材3の厚みは補強層2を含めて5mm以上である。前記表面層1は、表面に針葉樹単板1aを、その内側に広葉樹単板1bを積層した複合単板から構成される。各単板の厚みは,0.20mm以上である。
前記補強層2はプラスチックシートあるいは不織布などを用いることが出来る。この表面は基材、表面層との接着が可能なように表面処理が施されており、適切な接着剤を使用して一体化する。その厚みは、0.30mm(平均)である。
前記表面層1の表面のNUV硬化塗装4は、特殊ウレタンアクリレートおよびエポキシアクリレートを主体とした組成のUV硬化型塗料を、オプチ(溝きり)ロールを用いて窒素雰囲気下で数回の塗装工程で厚膜塗装を行い、鏡面仕上げをしたものである。
【実施例2】
【0013】
図3に示すように基材7と、表面層5とのその間に補強層6を介在一体に構成される。
前記基材7は広葉樹合板、針葉樹合板または針葉樹と広葉樹との複合合板を用いる。その基材7の厚みは補強層6を含めて5mm以上である。
前記表面層5は、表面に広葉樹単板5aを、その内側に針葉樹単板5bを積層した複合単板から構成される。各単板の厚みは0.20mm以上である。
前記補強層6は、実施例1と同様にプラスチックシートあるいは不織布などを用いることが出来る。この表面は基材、表面層との接着が可能なように表面処理が施されており、適切な接着剤を使用して一体化する。その厚みは0.30mm(平均)である。
前記表面層5の表面のNUV硬化塗装8は、前記実施例1と同様に、特殊ウレタンアクリレートおよびエポキシアクリレートを主体とした組成のUV硬化型塗料を、オプチ(溝きり)ロールを用いて窒素雰囲気下で数回の塗装工程で厚膜塗装し、鏡面仕上げしたものである。
【0014】
実施例1については酸素濃度とラインスピードそれに伴う特性値の向上の試験結果を表1に示す。酸素濃度が低いと効果が高いことが分かる。
【0015】
【表1】

【0016】
前記実施例1および実施例2で得られたNUV硬化塗装床材を試験した結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0018】
表面に針葉樹単板または広葉樹単板を用い、基材に針葉樹や広葉樹の単板または複合化し、かつ補強層を組み合わせたものの表面層をNUV硬化塗装した木質板または床材は、塗装表面の硬化物性が著しく向上し、すぐれた耐汚染性、耐色素沈着性、耐残臭性及び耐擦傷性を得ること、および塗装工程での生産性向上、従来表面の性能が不足するため使用されなかった針葉樹類や広葉樹類も新たな用途を広く開拓して使用することができ、未利用されている森林資源の有効活用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のNUV塗装床材の最良の形態の実施例を示す側面図である。
【図2】本発明のNUV塗装床材の実施例1の詳細な構成を示す側面図である。
【図3】本発明のNUV塗装床材の実施例2の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 表面層
1a 針葉樹単板
1b 広葉樹単板
2 補強層
3 基材
4 NUV塗装
5a 広葉樹単板
5b 針葉樹単板
6 補強層
7 基材
8 NUV塗装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹単独または針葉樹と広葉樹の複合合板からなる表面層、補強層、基材に針葉樹単独の合板あるいは針葉樹と広葉樹の複合合板で構成され、表面層は窒素ガス雰囲気下で紫外線硬化型塗料を塗布・硬化してなる木質板および床材。
【請求項2】
針葉樹と広葉樹の複合合板はいずれ側でも紫外線硬化型塗料を窒素雰囲気下で硬化された表面を含む請求項1の木質板および床材。
【請求項3】
紫外線硬化工程において窒素ガス雰囲気は酸素濃度が15%以下で得られる請求項1または請求項2の木質板および床材。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の基材が単板あるいは複合合板の積層構成が3プライ以上である木質板および床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77501(P2006−77501A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264023(P2004−264023)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(593144334)セイホク株式会社 (2)
【出願人】(504345838)セイホクウイズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】