説明

木質複合化粧板及びその製造方法

【課題】突板の繊維方向にほぼ沿って、細い多数の切り込みを形成することによって、突板の乾燥放湿又は湿潤吸収の際の伸縮に伴って発生する谷反り方向の応力又は山反りの応力を緩和し、かつ、基材としてその応力を十分に抑制できるものを用いることによって、寸法安定性があり、かつ床材の端部が浮き上がる谷反り及び中央部が浮き上がる山反りが発生し難く、更には、水回りの床に使用することもできる床材用木質複合化粧板及びその製造方法の提供。
【解決手段】突板裏打ちシート、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートが上から、この順で積層接着され、一体化されてなる木質複合化粧板であって、前記突板裏打ちシートの表面には、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みが形成されていることを特徴とする床材用木質複合化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、一般住宅や店舗等の新築及びリフォーム時等に、床下地上に置き敷きされる屋内の床材として、特に、水回りの床の床材として使用するのに好適な床材用木質複合化粧板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床材は、接着剤を使用することによって、床下地上に接着施工されていたが、近年は、施工期間の短縮や、リフォームの際の床材の張り替えの容易さを目的として、接着剤を用いずに、両面テープ等によって、床下地上に貼着施工される置き敷き用の床材が使用される傾向にある。
このような置き敷き用の床材として、例えば、合板等の基板の下面に高密度軟質シートを積層した基材の上面に、突板を積層したのものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記のような床材を両面テープによって、床下地上に接着施工した場合、突板及び基板は木質材であるので、突板及び基板は、乾燥放湿又は湿潤吸湿によって収縮又は膨張し、その伸縮に伴って発生する谷反り方向の応力又は山反り方向の応力を、高密度軟質シートが十分に抑制することができず、床材全体として、その端部が浮き上がる谷反り及びその中央部が浮き上がる山反りが発生するという問題があった。
【0003】
このような反りの発生を防止するために工夫を施された床材として、例えば、多数の切り込みが設けられた木材薄板、柔軟性樹脂シートを上から順に積層した基材の上に、繊維方向を直交させるように突板を積層したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この床材は、木材薄板に多数の切り込みを設け、木材薄板の乾燥放湿又は湿潤吸収の際の伸縮に伴って発生する谷反り方向の応力又は山反りの応力を緩和することによって、床材に谷反りが発生するのを抑制するというものである。しかしながら、このような床材も、突板及び木材薄板の乾燥収縮又は湿潤膨張に伴って発生する谷反り方向の応力又は山反りの応力が、十分に緩和されているとは言えなかった。
【0005】
また、上記以外の床材として、例えば、比重0.7以上、厚さ2.0mm以下の木質繊維板、比重1.5〜3.0、厚さが前記木質繊維板の3倍以上の高比重シートを上から順に積層した基材の上に、突板を積層したものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
この床材は、基材として、吸放湿による伸縮変化が小さく、木質繊維板に比べて厚い高比重シート及び薄い木質繊維板を使用することにより、木質繊維板の伸縮挙動に伴って発生する谷反り方向又は山反りの応力を抑制し、床材全体として谷反り又は山反りが発生し難くしたものである。
しかしながら、この床材は、木質繊維板が耐水性、耐湿性が低く、吸湿によって膨張し、更に膨張すると乾燥しても元の形状に戻り難いため、上記のような木質繊維板を基材として用いた床材を、台所や洗面所のような水回りの床に使用すると、突板及び木質繊維板の吸湿膨張(寸法変化)によって発生する山反り方向の応力を高比重シートが抑制することができず、床材全体として、中央部が浮き上がる山反り及び割れが発生し易いという問題があった。
【特許文献1】実公平6−33099号公報
【特許文献2】特許第2793065号公報
【特許文献3】特開2003−300203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の事情を考慮してなされたものであって、その課題とするところは、突板の繊維方向にほぼ沿って、細い多数の切り込みを形成することによって、突板の乾燥放湿又は湿潤吸収の際の伸縮に伴って発生する谷反り方向の応力又は山反りの応力を緩和し、かつ、基材としてその応力を十分に抑制できるものを用いることによって、寸法安定性があり、かつ床材の端部が浮き上がる谷反り及び中央部が浮き上がる山反りが発生し難く、更には、水回りの床に使用することもできる床材用木質複合化粧板及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、工夫されたものであって、突板裏打ちシート、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートが上から、この順で積層接着され、一体化されてなる木質複合化粧板であって、前記突板裏打ちシートの表面には、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みが形成されていることを特徴とする床材用木質複合化粧板に関する。
【0009】
また、本発明は、厚さ0.4〜0.8mmの突板、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートが上から、この順で積層接着され、一体化されてなる木質複合化粧板であって、前記突板の表面には、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みが形成されていることを特徴とする床材用木質複合化粧板に関する。
【0010】
他に、本発明は、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートを合成ゴム質シートの上下両側に貼り合せて、積層基材を作る段階と、
突板裏打ちシートの表面に、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みを形成する段階と、
該突板裏打ちシートを前記積層基材の上に重ね、圧締接着して、木質複合化粧板を作る段階とから成ることを特徴とする、床材用木質複合化粧板の製造方法に関する。
【0011】
更に、本発明は、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートを合成ゴム質シートの上下両側に貼り合せて、積層基材を作る段階と、
厚さ0.4〜0.8mmの突板の表面に、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みを形成する段階と、
該突板を前記積層基材の上に重ね、圧締接着して、木質複合化粧板を作る段階とから成ることを特徴とする、床材用木質複合化粧板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床材用木質複合化粧板は、
乾燥収縮又は湿潤膨張が大きい突板裏打ちシートの表面、又は厚めの突板の表面に、繊維方向にほぼ沿って伸びる、細い多数の切り込みを設けることによって、突板の乾燥放湿又は湿潤吸湿の際の伸縮に伴って発生する谷反り方向又は山反りの応力を緩和し、かつ、
基材として、乾燥吸湿又は湿潤放湿による伸縮変化が小さい(寸法安定性がある)、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートを上から順に貼合せた積層体を使用することによって、その上に配置される突板裏打ちシート又は突板の乾燥収縮又は湿潤膨張による寸法変化に伴って発生する応力を十分に抑制するので、
床材用木質複合化粧板全体としての寸法安定性が保たれ、かつ谷反り及び山反りが発生し難いという効果、及び
基材にDAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートを使用することによって、耐水性、耐
湿性も改善され、台所や洗面所のような水回りの床にも使用するのにも適しているという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面を参照にしてより具体的に説明する。
図1は、本発明の1つの態様における床材用木質複合化粧板1を示す斜視図である。図2は、図1の床材用木質複合化粧板1のa−a’線における断面図である。図3は、本発明の床材用木質複合化粧板1の突板裏打ちシート2を曲げた場合の斜視図である。
図4は、本発明のもう1つの態様における床材用木質複合化粧板10の断面図である。
【0014】
図1に示す本発明の床材用木質複合化粧板1は、図2の断面図に示すように突板裏打ちシート2を、DAP樹脂含浸紙4、合成ゴム質シート5、及び、DAP樹脂含浸紙6からなる3層構造の積層基材3の上に載せ、積層接着し、一体化したものである。
ここで、突板裏打ちシート2とは、突板7の裏面に繊維質裏打ち材8を積層接着し、一体化したものである。
突板としては、いかなる天然又は人工のものも使用することができるが、意匠性の面から、木目柄が美しいものが好ましい。突板裏打ちシート2用の突板7としては、厚さ0.10〜0.40mmのものが使用される。
繊維質裏打ち材8としては、不織布、紙等が使用され、例えば坪量18〜40g/m2のものが使用される。
【0015】
この突板7と繊維質裏打ち材8とを接着する接着剤としては、好ましくは、アクリル樹脂系のものが使用されるが、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系のもの等も使用される。
【0016】
更に、突板裏打ちシート2表面の突板7には、その繊維方向、即ち、木目方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込み9が形成されている(図3参照)。
この切り込み9は、通常、突板裏打ちシート2を上(突板側)から見ても分からず、図3に示すように、突板裏打ちシート2を曲げた際に形成されていることがわかる程度とする。
そのため、本発明の床材用木質複合化粧板1はこの切り込み9によって、床材としての商品価値が下がることはない。
また、切り込み9は、その一本毎の長さは特に限定されないが、突板裏打ちシート2の表面(突板7)の全面に細かい間隔で多数形成され、その深さは、ほぼ突板7の厚みに相当する程度の深さである。
このように、乾燥収縮又は湿潤膨張が大きい突板裏打ちシート2の表面、即ち、突板7に、上記のように切り込み9を設けることによって、突板の乾燥放湿又は湿潤吸湿の際の伸縮に伴って発生する谷反り方向又は山反りの応力が緩和され、床材用木質複合化粧板1に谷反り又は山反りが発生し難くなる。
【0017】
合成ゴム質シート5の上下両側に積層接着されるDAP樹脂含浸紙4、6としては、厚さ0.4〜0.6mm程度のものが使用される。
また、DAP樹脂含浸紙4、6の代わりに、ポリオレフィン樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂と木粉を7:3〜3:7の比率で混ぜ合わせた木粉複合樹脂シートを使用することもできる。木粉複合樹脂シートは、厚さ0.4〜1.0mmのものが適当である。
【0018】
合成ゴム質シート5としては、クロロプレンゴム、 エチレンプロピレンゴム等の合成ゴムがシート状に成形されたものが使用され、また、その厚さとしては1.9〜4.0mmのものが使用される。
【0019】
合成ゴム質シート5の上下に積層される2枚のDAP樹脂含浸紙4、6を接着する接着
剤としては、好ましくは、エポキシ樹脂系のものが使用されるが、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系等の接着剤等、特に限定はされない。
【0020】
このように、DAP樹脂含浸紙4又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート5、及び、DAP樹脂含浸紙6又は木粉複合樹脂シートを上から順に貼合せた積層基材3は、乾燥吸湿又は湿潤放湿による伸縮変化が小さいので、その上に配置される突板裏打ちシート2の乾燥収縮又は湿潤膨張に伴って発生する応力を抑制することができ、床材用木質複合化粧板1全体としての寸法安定性が維持され、かつ谷反り及び山反りの発生を抑制する。
【0021】
また、突板裏打ちシート2と積層基材3の上面のDAP樹脂含浸紙4を接着する接着剤としては、好ましくは、ホットメルト系接着剤、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等、特に限定はされない。
【0022】
また、本発明の床材用木質複合化粧板1は、突板裏打ちシート2の代わりに、厚めの突板11を使用することもできる。
厚めの突板を使用した場合は、図4の断面図に示すように、床材用木質複合化粧板10は、厚めの突板11、DAP樹脂含浸紙12、合成ゴム質シート13、DAP樹脂含浸紙14からなる積層基材15が上から順に積層されたものとなる。
厚めの突板11としては、厚さが0.4〜0.8mmのものが使用される。厚めの突板11の表面にも、突板裏打ちシート2の表面と同様に、乾燥放湿又は湿潤吸湿の際の伸縮(寸法変化)に伴って発生する谷反り方向又は山反りの応力を緩和させるため、切り込み16が設けられているが、その切り込み16の深さは、その切り込み16によって、突板が細かく分断されたりしない程度の深さとする。
【0023】
本発明の木質複合化粧板1が、突板裏打ちシート2及び、DAP樹脂含浸紙4、合成ゴム質シート5、DAP樹脂含浸紙6からなる積層基材3からなる場合は、
まず、合成ゴム質シート5の上下両面に接着剤を塗布し、その両面にDAP含浸樹脂紙4、6を積層接着することにより積層基材3を作り、
一方で、突板7に接着剤を塗布し、繊維質裏打ち材8と感圧接着することにより、反りを誘起する突板7及び繊維質裏打ち材8の過剰な水分を除きつつ、突板裏打ちシート2を作り、
次に、突板裏打ちシート2の表面、即ち突板7に、繊維方向に沿って刃物で切り込みを入れるか、又は、突板裏打ちシート2をローラ等により繊維方向に沿って湾曲させて割れ目を形成させること等によって、切り込み9を形成させ、
その後、積層基材3の一方のDAP含浸樹脂紙4に接着剤を塗布し、その上に、突板裏打ちシート2を繊維質裏打ち材8を下面として、積層し、圧締接着することによって製造される。
【0024】
また、突板裏打ちシート2の代わりに、厚めの突板11が使用される場合の、本発明の木質複合化粧板10は、
まず、合成ゴム質シート13の上下両面に接着剤を塗布し、その両面にDAP含浸樹脂紙12、14を積層接着することにより積層基材15を作り、
一方で、突板11に、繊維方向に沿って刃物で切り込み16を入れるか、又は、突板をローラ等により繊維方向に沿って湾曲させること等によって、突板11が細かく分断されたりしない程度に切り込み16を形成させ、
その後、積層基材15の一方のDAP含浸樹脂紙12に接着剤を塗布し、その上に、切り込み16を形成した面を上面として、突板11を積層し、圧締接着することによって製造される。
【0025】
製造された木質複合化粧板1(10)に、更に、光沢、耐擦傷性及び耐水性等を付与し
たい場合は、突板裏打ちシート2又は厚めの突板11の表面に、適宜選択した塗料、例えば、UV塗料、ポリウレタン樹脂塗料等を塗布しても良い。
【0026】
実施例1:突板裏打ちシートを用いた木質複合化粧板
床材用木質複合化粧板は、ホワイトオーク板目の厚さ0.25mmの突板の下面に坪量18g/m2の紙製繊維質裏打ち材をアクリル系接着剤を介して積層接着して突板裏打ちシートを作成し、該突板裏打ちシートをローラにより繊維方向に沿って湾曲させて切り込みを形成した。
次いで、厚さ0.5mmのDAP樹脂含浸紙、エチレンプロピレンゴムからなる厚さ2mmの合成ゴム質シート、及び、厚さ0.5mmのDAP樹脂含浸紙をこの順でエポキシ系接着剤を介して積層接着して積層基材を作成し、該突板裏打ちシートを水性高分子−イソシアネート系接着剤を介してその上に重ね、一体化された床材用木質複合化粧板を作成した。
【0027】
実施例2:厚めの突板を用いた木質複合化粧板
床材用木質複合化粧板は、ホワイトオーク板目の厚さ0.5mmの突板をローラにより繊維方向に沿って湾曲させて切り込みを形成した。
次いで、厚さ0.5mmのDAP樹脂含浸紙、シート状に加工されたエチレンプロピレンゴムからなる厚さ2mmの合成ゴム質シート、及び、厚さ0.5mmのDAP樹脂含浸紙をこの順でエポキシ系接着剤を介して積層接着して積層基材を作成し、該突板裏打ちシートを、水性高分子−イソシアネート系接着剤を介してその上に重ね、一体化された床材用木質複合化粧板を作成した。
【0028】
比較試験1
DAP樹脂含浸紙、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙を上から順に貼合せた積層体を基材として使用することによる、乾燥時における床材用木質複合化粧板の谷反りの発生及び、突板裏打ちシート表面に切り込みの有無における、乾燥時の床材用木質複合化粧板の谷反りの発生を評価するために以下の比較試験を行った。
試験体として、150mm×150mmの寸法に加工した実施例1の床材用木質複合化粧板を本発明試料とした。該本発明試料の裏面(DAP樹脂含浸紙)に、突板の繊維方向に沿って15mm幅の両面テープを貼着し、図5に示すように、試料17を、両面テープ19によって厚さ12mmの合板18上に固定し、その後、本発明試料を、60℃に保たれた恒温器中に24時間静置することによって、乾燥時における実施例1の床材用木質複合化粧板の谷反りの程度を評価した。
また、試験体として、突板裏打ちシートの表面に切り込みが形成されていないこと以外は実施例1と同様の床材用木質複合化粧板(比較試料1)、及び断面が図6で示されるように、厚さ4mmの合板からなる基材20上に、比較試料1と同様の突板裏打ちシート21を積層接着した床材用木質複合化粧板22(比較試料2)についても、同様にして谷反りの程度を評価した。
得られた結果を表1に示す。
【表1】

一般に谷反りの発生が小さくなるであろうと考えられる、厚さ4mmの合板を基材として使用した床材用化粧板(比較試料2)でさえ、端部が0.5mm浮き上がる谷反りを発
生したのに対し、DAP樹脂含浸紙、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙を貼合せた積層体を基材として使用した床材用化粧板(比較試料1)は、基材の厚さが比較試料2よりも薄い3mmなのに、端部が0.3mm浮き上がる谷反りしか発生しなかった。
更に、基材として、DAP樹脂含浸紙、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙の積層体を用い、かつ突板裏打ちシートの表面に切り込みを設けることにより得られる本発明の床材用木質複合化粧板においては、谷反りが全く発生しなくなった。
以上の結果より、基材として、DAP樹脂含浸紙、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙を貼合せた積層体を使用し、かつ、突板裏打ちシートの表面に、切り込みを設けるという構成を採ることにより、本発明の床材用木質複合化粧板は、その端部が浮き上がる谷反りの発生を抑制することができるという効果を奏することが確認される。
【0029】
比較試験2
突板裏打ちシート表面の切り込みの有無における、乾燥時又は湿潤時の床材用木質複合化粧板の反りの程度及び寸法安定性について評価した。

2−1:突板裏打ちシート表面の切り込みの有無における、乾燥時の床材用木質複合化粧板の反りの程度及び寸法安定性の評価。

実施例1の突板裏打ちシートと基材をエポキシ樹脂系接着剤を介して積層接着することにより作成した、100mm×100mmの寸法の本発明試料及び突板裏打ちシートの表面に切り込みが形成されていないこと以外は前記本発明試料と同じ床材用木質複合化粧板(比較試料3)を、温度24℃、相対湿度85%で平衡状態になるまで養生した後、60℃の乾燥機中で24時間静置した際の、突板裏打ちシート表面の切り込みの有無における、床材用木質複合化粧板の反りの程度及び寸法安定性について評価した。
得られた結果を表2に示す。
【表2】

寸法安定改善効果は、[1−(突板裏打ちシートの表面に切込み処理がある試料の寸法変化率)/(突板裏打ちシートの表面に切込み処理がない試料の寸法変化率)]×100により算出した。
また、反り減少効果は、[1−(突板裏打ちシートの表面に切込み処理がある試料の反り)/(突板裏打ちシートの表面に切込み処理がない試料の反り)]×100により算出した。

突板裏打ちシートの表面に切り込みを設けることによって、床材用木質複合化粧板の寸法安定性、特に繊維方向の寸法安定性が改善された。また、突板裏打ちシートの表面に切り込みを設けることにより、床材用木質複合化粧板の端部が浮き上がる谷反りの発生も半減させることができた。
以上のことから、突板裏打ちシート表面の突板に切り込みを設けることによって、乾燥時における、床材用木質複合化粧板の寸法安定性、及び谷反りの発生を改善することができるという効果が得られることが確認される。

2−2:突板裏打ちシート表面の切り込みの有無における、湿潤時の床材用木質複合化粧板の反りの程度及び寸法安定性の評価。

上記の本発明試料と比較試料3を温度20℃、相対湿度50%の雰囲気中で平衡状態になるまで養生した後、40℃、相対湿度95%の雰囲気中に5日間さらした際の、突板裏打ちシート表面の切り込みの有無における、床材用木質複合化粧板の反りの程度及び寸法安定性について評価した。
得られた結果を表3に示す。
【表3】

寸法安定改善効果及び反り減少効果は、上記と同様に算出した。
突板裏打ちシートの表面に切り込みを設けることによって、床材用木質複合化粧板の寸法安定性、特に繊維方向の寸法安定性が改善された。また、突板裏打ちシートの表面に切り込みを設けることにより、床材用木質複合化粧板の中央部が浮き上がる山反りの発生を、40%も減少させることができた。
以上のことから、突板裏打ちシート表面の突板に切り込みを設けることによって、湿潤時における、床材用木質複合化粧板の寸法安定性、及び山反りの発生を改善することができるという効果が得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の床材用木質複合化粧板の1つの態様を示す斜視図である。
【図2】図1の床材用木質複合化粧板のa−a’線における断面図である
【図3】本発明の床材用木質複合化粧板の突板裏打ちシートを曲げた場合の斜視図である。
【図4】本発明の床材用木質複合化粧板のもう1つの態様の断面図である。
【図5】比較試験1の試料と合板の状態を示す断面図である。
【図6】比較試料2の床材用木質複合化粧板の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1.床材用木質複合化粧板 2.突板裏打ちシート 3.積層基材 4.DAP樹脂含浸紙 5.合成ゴム質シート 6.DAP樹脂含浸紙 7.突板 8.繊維質裏打ち材 9.切り込み 10.床材用木質複合化粧板 11.厚めの突板 12.DAP樹脂含浸紙
13.合成ゴム質シート 14.DAP樹脂含浸紙 15.積層基材 16.切り込み
17.試料 18.合板 19両面テープ 20.基材 21.突板裏打ちシート 22.床材用木質複合化粧板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
突板裏打ちシート、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートが上から、この順で積層接着され、一体化されてなる木質複合化粧板であって、前記突板裏打ちシートの表面には、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みが形成されていることを特徴とする床材用木質複合化粧板。
【請求項2】
厚さ0.4〜0.8mmの突板、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シート、合成ゴム質シート、及び、DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートが上から、この順で積層接着され、一体化されてなる木質複合化粧板であって、前記突板の表面には、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みが形成されていることを特徴とする床材用木質複合化粧板。
【請求項3】
DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートを合成ゴム質シートの上下両側に貼り合せて、積層基材を作る段階と、
突板裏打ちシートの表面に、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みを形成する段階と、
該突板裏打ちシートを前記積層基材の上に重ね、圧締接着して、木質複合化粧板を作る段階とから成ることを特徴とする、床材用木質複合化粧板の製造方法。
【請求項4】
DAP樹脂含浸紙又は木粉複合樹脂シートを合成ゴム質シートの上下両側に貼り合せて、積層基材を作る段階と、
厚さ0.4〜0.8mmの突板の表面に、突板の繊維方向にほぼ沿って伸びる細い多数の切り込みを形成する段階と、
該突板を前記積層基材の上に重ね、圧締接着して、木質複合化粧板を作る段階とから成ることを特徴とする、床材用木質複合化粧板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−7713(P2006−7713A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191556(P2004−191556)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(591214619)北三株式会社 (6)
【Fターム(参考)】