説明

木造構造物の設置環境監視改善システム

【課題】 木造家屋における設置環境の湿度、漏水等を自動的に監視する。
【解決手段】 監視対象家屋1には湿度センサ、含水率センサ、漏水センサなどのセンサS1乃至SNが設けれ、各センサの信号はデータ処理部3の信号入力手段3A、しきい値チェック手段3Bに至り、検知データが何れもしきい値を越えていない時はこれらのデータは、コード化手段3C、送受信手段4を介してクロック3Dの時間信号により定期的に監視センター2に送られる。また検知データの中にしきい値を越えた異常データがある場合には前記クロックに関わり無く直ちにこの異常データを監視センターに送信し、異常の特定及び正常化処置を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木造建造物の湿度及び漏水等を監視し、上下水の漏水や過湿或いは外壁からの雨水の進入等に起因する虫害、構造材の腐食等の発生を防止し、さらに当該木造構造物の設置環境を改善することが可能なシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】木造家屋をはじめとする木造建造物はコンクリート等の人工的素材により構成された構造物に比較して、住空間が自然であり、特に戸建の住宅は木造住宅が多い。
【0003】木造建造物(以下木造家屋を例に説明する。また当該木造家屋は以下単に「家屋」とする。)は湿度に対する反応が他の構造素材に比較して敏感であり、高温多湿であると白蟻等の虫害や、木材の腐食等が発生し易い。このため構造物全体の通気性を高め、過湿を防止するような設計、施工が行われ上記の被害の発生を予防し、或いは発生してもその被害を最小限に止めるような構造が採用されている。特に、木造住宅は基礎によって床部を地面から離間して配置し、この離間した空間、即ち床下空間の通気を図るよう構成されている。
【0004】また、また風呂場、台所、トイレ等では上水配管、下水配管等からの水漏れの可能性もあり、床下等、住人に発見されずらい部分での漏水による腐食、虫害等が進行してしまう可能性も高く、これら水漏れの早期発見が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような問題点に対して、床下空間の湿度を測定し、この測定湿度が設定値を越えている場合に警報を発するように構成したもの、或いは根太等の構造材の含水率を直接測定してこの構造材の状態を監視するもの等が提案されている。
【0006】これらの提案は何れも一定の成果を挙げることは可能であるが、家屋の状態を長期的かつ適正に監視するには何れも不十分である。仮に監視が十分適正に行われたとしても、このことは家屋の状態の悪化を早めに発見してこれに対して対症療法的な処置を施すことを意味するに止まり、家屋の状態を経時的に改善することは事実上不可能である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の問題点に鑑み構成されたものであって、監視の対象となる家屋の所定の場所にそれぞれ設置された各種センサと、このセンサから出力された検知データを送信する手段と、このデータを受信して評価を行い、かつこの評価結果に対応して必要な処置を行う監視センターとからなる木造建造物の監視、改善システムである。
【0008】
【発明の実施の形態】監視対象となる住宅に対しては、例えば台所、風呂場、トイレ等漏水の可能性の高い場所には漏水センサが配置され、これらの部分を支える構造材である根太等に対して当該構造材の含水状態を計測する含水率センサが配置される。また床下空間の所定の位置には床下空間の湿度を検知する湿度センサがそれぞれ配置される。
【0009】これら各センサからのデータは信号入力手段に入力される。入力されたデータのうち予め設定されたしきい値(閾値)よりも高い値(異常値)がある場合には、計測された各データは送信手段により直ちに監視センターに送信される。監視センターは受信したデータを、特に異常値を中心として評価し、直ちに処置をすべきか或いは一定期間内に処置すれば十分かを判断し、この判断に基づいて処置を行う。
【0010】一方、各センサのデータに異常値が見られない場合には予め定められた時間間隔で各センサのデータを定期的に監視センターに送信する。監視センターはこのデータに基づいて対象家屋の状態を判断し、例えば床下空間の湿度が改善(低下)されていば、センサの湿度データのしきい値をより厳しくし、この厳しいしきい値をクリアするよう床下のファンの作動を制御する等して家屋全体の状態を改善するように監視する。
【0011】
【実施例】以下本発明の実施例を図面を参考に具体的に説明する。図1は本発明の第1の実施例を示す。図中符号1は漏水の有無、湿度を監視する対象である家屋を、また符号2は家屋1で検出された各種データを受信し評価する監視センターを示し、両者は電話回線或いはインターネット等の情報伝達手段5により接続されている。
【0012】図中符号S1乃至SNは家屋1の所定の部分に配置されたセンサを示す。なおセンサの種類、配置例等は後述する。符号3はデータ処理部である。このデータ処理部3のうち符号3Aは各センサから出力された検知データの信号を入力する信号入力部であり、通常は各センサのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換機能を有している。
【0013】3Bはしきい値チェック手段、3Cはしきい値チェック手段から出力された各センサの検知データを、予め定められた通信プロトコルに対応するようコード化するコード化手段、3Dは検知データを定時出力するためのクロックである。4は送受信手段であり、通信手段5が電話回線である場合には電話機(据え置き型/携帯電話)が、また通信手段5がインターネットである場合にはパソコン(PC)或いはインターネット機能を有する携帯電話等が使用可能である。また符号6は家屋1の床下空間部に配置され換気ファンF1乃至FNの作動を制御するスイッチ部である。なおデータ処理部3は実際には集積回路として構成可能であるため、手のひらに乗る程度の小型な装置として構成することができる。
【0014】一方監視センター2の構成は以下のとおりである。符号7は通信手段5を介して監視対象となっている各家屋と通信を行う送受信手段、8は受信したデータから家屋を特定する家屋特定手段、9は特定された家屋の個々のセンサを更に特定するセンサ特定手段、10は各センサのデータを入力しかつこのデータを評価する手段、11は各センサのデータを記憶しておくデータベースであって、各家屋のカルテとして機能する記憶手段、12は各センサから出力されたデータの評価によりそれぞれのデータの値のしきい値を変更する場合、そのしきい値の設定変更指令を行うしきい値変更手段である。また符号13は各センサのデータから床下空間に設置された換気ファンの作動を制御する信号を家屋1側のスイッチ部6に出力するファン制御部であって、当該スイッチ部6を介して各ファンF1乃至FNの作動を制御する。
【0015】次に図2及び図3を用いてセンサの種類および各センサの配置例を具体的に説明する。先ず図2は家屋のうち洗面所を示す。図中符号Sbは洗面台14の下部に配置された漏水センサを示し、この漏水センサSbのうち、Sb1として示すものは排水管P1の近傍に配置され、かつSb2として示すものは水道管P2の近傍に配置され、それぞれ排水、水道水の漏水を監視する。また符号Saは床下空間部に配置された湿度センサであり、符号Scは根太15を構成する木材に対して配置された含水率センサである。
【0016】図3は家屋1に対する各センサの配置例を示す。漏水センサSbは水回りのあるトイレTL、バスルームBT、台所KT、洗面団14等に集中的に配置されている。また含水率センサScも、これら漏水の可能性の高い部分の構造材に対して集中的に配置されている。一方湿度センサSaはリビングLVを始めとする各部屋の床部下部空間にそれぞれ配置され、各センサの検知データはデータ処理部3に出力されるように構成されている。なお、図3には示されていないが、家屋1に対しては床部下部空間に対して図2に示すような換気ファンFが複数設置されている。
【0017】次に以上の構成を有するシステムの作動例を示す。先ず主として図1において、上述の湿度センサSa、漏水センサSb或いは含水率センサScの何れかであるセンサS1乃至SNからの検知データはデータ処理部3の信号入力手段3Aに入力され、かつしきい値チェック手段3Bにより、このセンサのデータが予め定められた個々のセンサのしきい値を越えているか否かがチェックされる。
【0018】各センサの検知データがしきい値を越えていない場合には、これら各データはクロック3Dから出力される時間データにより、定時的(例えば24時間毎)に監視センター2に送信される。即ち、各センサのデータはコード化手段3Cにおいて予め割り振られている各センサのコードが付され、かつ全てのセンサのデータは当該家屋1に対して予め割り振られている家屋コードが付されて送受信手段4により監視センター2に送信される。
【0019】また、信号入力手段3Aから出力されたセンサの検知データがしきい値を越えた異常値を示した場合には、しきい値チェック手段3Bはクロック3Dの時刻信号に関わりなくこのセンサの異常値を送受信手段4を介して監視センターに直ちに送信する。
【0020】次に監視センター2の処理を図4及び図5も含めて説明する。先ず送受信手段7により受信(S1/図4参照)されたデータは家屋特定手段8において、当該受信したデータに付加されている家屋コードからデータ発信家屋を特定し、続いてセンサ特定手段9によりデータに付加されたセンサコードによってデータを出力したセンサを特定する。
【0021】受信されたデータは定時送信によるものか否かを判断(S2)し、定時送信であれば、評価手段10において受信された各データの評価を行う(S9)。反対に、定常送信でない場合には、異常値を出力したセンサの特定(S3)を行い、緊急処置の要否を判断する(S4)。この場合、例えば特定したセンサが漏水センサSbである場合には、漏水の処置は緊急を要するため、例えば浴室、トイレ等当該センサの配置部を確認し(S6)、当該家屋に要員を出向させ、迅速に異常部分の処置を行う(S7)。
【0022】異常値の発生が漏水センサSb以外であっても、例えば床下空間に配置されている湿度センサSaの検知データがしきい値を大幅に上回っている場合には、何らかの理由による床下浸水の発生等,緊急処置が必要な事態が考えられるので、センサの種類及び検知データのしきい値に対する逸脱度等を総合的に考慮して緊急処置の要否は決定される。
【0023】一方緊急処置を必要としないと判断したときは、当該家屋の居住者と相談して当該家屋に出向する日時を決める(S5)。当該家屋に出向したならば異常値を検出したセンサの配置されている部分を前述の如く確認して(S6)、漏水部分等、異常が発生した部分の処置(S7)をすることにより、異常値発生の原因を除去する。また異常値を検出したセンサの検知データが正常値に復旧したか否かを確認(S8)することにより処置が適正に行われたかを確認する。
【0024】次に、評価手段10において各センサのデータの評価を行う。即ち本システムは単に異常発生に対処するだけでなく、監視対象家屋1の状態を改善することも大きな目的の一つであり、正常時の各種センサのデータの評価はこの改善に非常に有効な処置である。即ち各センサから出力されたデータを評価し、しきい値の変更要否を判断(S10)する。
【0025】例えば、図3のリンビングルームLVの床下空間に配置されている湿度センサSa(以下このセンサを特定するため湿度センサSaaとして説明する)のしきい値が予め60パーセントに設定され、かつこの状態で定時送信における当該湿度センサSaaの検知データが常時45パーセント以下であったとする。この場合、前述のステップS10のようにしきい値の変更の要否を判断し、必要と判断した時はしきい値変更手段12により新たなしきい値を設定する(S11)。具体的には、当該湿度センサSaaのしきい値を例えば50パーセントに再設定し、検知データがこのしきい値以下となるよう換気ファンFの制御を行う等して、家屋1全体の環境を改善する。
【0026】設定された新たなしきい値は送受信手段7を介して家屋1側のデータ処理部3のしきい値チェック手段3Bに対して出力されることよりしきい値が変更され(S12)、当該しきい値チェック手段3Bは、以後この新たなしきい値により湿度センサSaaから出力されたデータを監視する(S13)。このような手順を繰り返すことにより、本システムでは漏水や根太等の構造材の腐食等に対して早急に対処できるだけではなく、各センサのデータを定時送信することにより異常が発生していないときの家屋の状態も正確に把握することができ、家屋の設置環境を徐々に改善することが可能である。
【0027】図6は本発明の他の実施例を示す。この実施例は上記実施例の簡易型としての意味を有するものである。この実施例では、湿度センサSa、漏水センサSb或いは含水率センサScの何れかであるセンサS1乃至SNからの検知データはデータ処理部3の信号入力手段3Aに入力され、かつしきい値チェック手段3Bにより、ここのセンサのデータが予め定められた個々のセンサのしきい値を越えているか否かがチェックされる。本実施例の場合には基本的には各センサの検知データは監視センター2に送信されない。
【0028】一方、信号入力手段3Aから出力されたセンサの検知データがしきい値を越えた異常値を示した場合には、しきい値チェック手段3Bは通信手段4´を介して監視センター2に異常発生を送信する。この場合、前述の実施例と同様各センサにコードを割り振っておけば、監視センター側で異常値検出のセンサの特定と、このセンサの配置部位が特定できるので、要員を派遣するのと前後して、当該家屋の住人に電話等で連絡し、例えば「洗面台の漏水センサのデータが異常値を示しました。洗面台の排水管、水道管から漏水が無いかどうか確認して下さい。」等と異常の発生を知らせるようにしてもよい。この処置は前述の実施例でも当てはまる。
【0029】異常値を受信した監視センター2はこの異常発生の連絡により、当該送信を行った家屋1に要員を派遣する。この場合、家屋1のデータ処理部3に対して表示手段16を接続しておき、異常の発生したセンサの配置部分を表示するよう構成しておけば、前記センサコードの設定の有無に係わらず、異常発生の部分が容易に特定でき、居住者は要員が到着する前に異常発生部分を確認することもできる。なお、この表示手段16としては、例えば図3に示すような家屋の図面を表示したパネルに対してセンサ配置部に発光ダイオード等の発光手段を配置し、異常値を検知したセンサに対応する発光手段を発光させる等してその配置部を示す等の方法が考えられる。
【0030】この実施例は、異常が発生していない状態の家屋の定期的監視には不向きであるが、前記実施例に比較してシステムが簡単であり、システム実施のための費用も安価にすることが可能である。
【0031】
【発明の効果】以上実施例をもって説明したように、本発明によれば木造住宅をはじめとする木造構造物の設置環境における湿度、漏水、及びこれらに起因する虫害、構造材の腐食等、木造構造物劣化に対する監視を自動的に行うことが可能となり、特に漏水等、緊急に処置を要する事態に対して直ちに対処することが可能となる。
【0032】また、異常が発生してない場合でも、各センサからのデータを入力、評価することにより当該監視対象の家屋の状態を把握し、床下空間に配置された換気ファンの制御等、家屋の設置環境をより良好な状態に改善するようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すシステムの構成図である。
【図2】センサの配置状態を示す木造家屋の断面部分図である。
【図3】センサの配置状態を示す木造家屋の平面図である。
【図4】本システムの流れの一例を示すフロー図である。
【図5】図4のフロー図に連続するフロー図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示すシステムの構成図である。
【符号の説明】
1 監視対象家屋
2 監視センター
3 データ処理部
3A 信号り入力手段
3B しきい値チェック手段
3C コード化手段
4 送受信手段
5 通信手段
8 家屋特定手段
9 センサ特定手段
10 データ入力/評価手段
11 データベース
12 しきい値変更手段
13 ファン制御部
15 根太
F(F1、F2、F3、FN) 換気ファン
Sa 湿度センサ
Sb 漏水センサ
Sc 含水率センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 木造構造物における湿度、漏水の有無、構造材の含水率等を検知することにより当該木造構造物の設置環境を監視するシステムであって、監視対象の木造構造物に設けられた検知手段と、当該木造構造物側の検知手段と通信手段により接続する監視センターとを有し、対象の木造構造物に対しては、検知手段として床下空間等、木造構造物の空間部の湿度を検知する湿度センサと、漏水の有無を検知する漏水センサと、構造材の含水率を検知する含水率センサとのうち少なくとも一つの種類のセンサが設置され、各センサの検知データには予めしきい値が設定され、検知データがしきい値を越えた時に当該しきい値を越えたデータを監視センターに送信する手段を有する木造構造物の設置環境監視改善システム。
【請求項2】 各センサにより検知されたデータは、定期的に監視センターに送信されるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の木造構造物の設置環境監視改善システム。
【請求項3】 監視センターにはしきい値を変更する手段が設けられ、受信した各センサの検知データを評価し、かつ各データのしきい値の変更可能に構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の木造構造物の設置環境監視改善システム。
【請求項4】 木造構造物の床下空間部には換気ファンが配置され、各換気ファンは、当該空間部の湿度を検知する湿度センサの検知データに対応して運転が制御されるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の木造構造物の設置環境監視改善システム。
【請求項5】 監視対象家屋にはデータ処理部が設けられ、当該データ処理部には各センサからの検知データを入力する手段と、各センサ検知データがしきい値内であるか否かをチェックする手段と、各データにセンサ毎のコード付加し、かつ家屋のコードを付加して監視センターにデータ送信を行う手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の木造構造物の設置環境監視改善システム。
【請求項6】 データ処理部には時計手段が設けられ、各センサで検知されたデータを定期的に監視センターに送信するよう構成したことを特徴とする請求項5記載の木造構造物の設置環境監視改善システム。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−97713(P2002−97713A)
【公開日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−293326(P2000−293326)
【出願日】平成12年9月27日(2000.9.27)
【出願人】(500451609)有限会社ハウガージャパン (2)
【Fターム(参考)】