説明

末端に極性基を有するポリオレフィンの製造方法

【課題】末端に極性基を有するポリオレフィンを工業的に有利な方法で製造する製造方法を提供すること。
【解決手段】下記要件[1]および[2]を満たすことを特徴とする末端に極性基を有するポリオレフィン(A)の製造方法。
[1]末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量が一分子鎖当たり0.2〜2個の範囲内であるポリオレフィン(B)を原料として、ラジカル開始剤の存在下、不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)を150℃未満の反応温度で反応させる。
[2]ポリオレフィン(B)中の炭素−炭素二重結合含有量(X1 mol%)と、末端に極性基を有するポリオレフィン(A)中に存在する炭素−炭素二重結合含有量(X2 mol%)および不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)に由来する極性基の含有量(Y mol%)との間に以下の関係式(Eq-1)が成り立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端に極性基を有するポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
末端に極性基を有するポリオレフィンは、たとえばポリマーブレンドの相溶化剤、塗料の塗装性改良剤、ポリオレフィンの塗装性改良や接着性の改良、ポリオレフィンと他の樹脂とをカップリング反応させて得られるブロックポリマーやグラフトポリマーなどのいわゆるハイブリッドポリマーの原料として有用である。
【0003】
このような末端に極性基を有するポリオレフィンを製造する方法としては、たとえば特開平63−113003号公報には、リビング重合を利用する方法が記載されている。この方法は、重合工程を低温で行わねばならないため、生産性が悪く、工業的規模の大量生産しようとすると高コストにつながる。
【0004】
また、特開平2−218705号公報には、P−ZnRR’で表される末端修飾ポリオレフィンを製造する工程(a)と、−ZnRR’を官能基に置換する工程からなるP−Xで表される末端に極性基を有するポリオレフィンの製造方法が開示されている(但し、Pはポリマー鎖であり、RおよびR’は炭化水素基であり、Xは官能基である)。しかしながら、前記工程(a)は15〜25℃程度の低温で行わなければならず、生産性が悪く工業的規模な大量生産を考えるとコスト高となることが予想された。
【0005】
一方、極性基を含有するポリオレフィンを製造する方法としては、ポリオレフィンに不飽和結合を有する極性基含有化合物をラジカル開始剤の存在下に反応させる方法が知られており、特に無水マレイン酸をグラフトさせる方法は、ポリオレフィンに接着性や塗装性を付与するという点で広く行われている。しかし、この方法では、極性基含有化合物が反応しうる点としてポリオレフィン主鎖にラジカルを発生させる必要があり、そのラジカル生成過程でポリオレフィン主鎖の切断が起こり、分子量が低下するという欠点がある。しかも、分子量が小さくなりすぎるために、それを添加して得られる成形体の強度が低下するという問題も生ずる。さらに、極性基の導入部位の制御が困難であり、末端に極性基を有するものと主鎖中に極性基がグラフトされたものとが混在しているため、例えばこれらの極性基含有ポリオレフィンを他の樹脂と反応させてブロックポリマーやグラフトポリマーなどのハイブリッドポリマーを合成しようとした場合、所望の構造のポリマーを得ることが困難であり、架橋やゲル化といった副反応を抑制することも容易ではない。また、末端に二重結合を有するポリオレフィンと不飽和ジカルボン酸とをラジカル反応ではなく、熱的な反応(いわゆる、エン反応)で結合させる方法も知られているが反応性が低く、しかも反応性の低さを補うために高温条件下で反応を行った場合、着色などの新たな問題が生じる。
【特許文献1】特開平63−113003号公報
【特許文献2】特開平2−218705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、末端に極性基を有するポリオレフィンを工業的に有利な方法で製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記要件[1]および[2]を満たすことを特徴とする末端に極性基を有するポリオレフィン(A)の製造方法に関する。
[1]末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量が一分子鎖当たり0.2〜2個の範囲内であるポリオレフィン(B)を原料として、ラジカル開始剤の存在下、不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)を150℃未満の反応温度で反応させる。
[2]ポリオレフィン(B)中の炭素−炭素二重結合含有量(X1 mol%)と、末端に極性基を有するポリオレフィン(A)中に存在する炭素−炭素二重結合含有量(X2 mol%)および不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)に由来する極性基の含有量(Y mol%)との間に以下の関係式(Eq-1)が成り立つ。
【0008】
【数1】

【発明の効果】
【0009】
ポリオレフィン製造用触媒として工業的に広く用いられているメタロセン触媒等の遷移金属化合物を成分として含有する配位重合触媒により製造した、末端に炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィンを用い、ラジカル開始剤の存在下に不飽和結合を有する極性基含有化合物と特定の温度範囲で反応させることにより、原料ポリオレフィンの融点や分子量などの特性を保持した末端に極性基を有するポリオレフィンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の末端に極性基を有するポリオレフィンの製造方法について具体的に説明する。
【0011】
本発明の末端に極性基を有するポリオレフィンの製造方法は、下記[1]および[2]を同時に満たす。
[1] 末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量が一分子鎖当たり0.2〜2.0個の範囲内であるポリオレフィン(B)を原料として、ラジカル開始剤の存在下、不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)を150℃未満の反応温度で反応させる。
[2] ポリオレフィン(B)中の炭素−炭素二重結合含有量(X1)と、末端に極性基を有するポリオレフィン(A)中に存在する炭素−炭素二重結合含有量(X2)および不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)に由来する極性基の含有量(Y)との間に以下の関係式(Eq-1)が成り立つ。
【0012】
【数2】

【0013】
上記関係式(Eq-1)において、末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量が一分子鎖当たり0.2〜2個の範囲内であるポリオレフィン(B)は、下記式(I)で示されるオレフィンの少なくとも1種以上を、周期律表第4族〜第11族の遷移金属化合物を含有する配位重合触媒の存在下で(共)重合させるか、あるいは周期律表第4族〜第11族の遷移金属化合物を含有する配位重合触媒の存在下で(共)重合させて得られるポリオレフィンを熱またはラジカルで分解することにより得ることができる。
【0014】
【化1】

【0015】
上記一般式(I)中、Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基または水素原子を示す。
【0016】
炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などを例示することができる。上式(X)で表わされるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数が4〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらの例示オレフィン類の中では、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンから選ばれる少なくても1種以上のオレフィンを使用することが好ましく、エチレン単独、プロピレン単独、4-メチル-1-ペンテン単独、プロピレンとエチレンの二種、エチレンと1-ブテンの二種、およびプロピレンと1-ブテンの二種を使用することがより好ましい。
【0017】
ポリオレフィン(B)の末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量は、一分子鎖当たり0.2〜2.0個の範囲内である。ポリオレフィン(B)の末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量が0.2個未満の場合、得られる末端に極性基を有するポリオレフィン(A)中に含まれる極性基の含有量が少なすぎ、ポリオレフィンと他の樹脂との相容性や塗装性、接着性の効果が充分に発揮されないことがある。したがって、本発明で使用されるポリオレフィン(B)の末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量は、0.2〜2個の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0個であり、特に好ましくは0.5〜2.0個である。
【0018】
不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)中に含まれる極性基としては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基などが挙げられる。このうち、好ましくはカルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸イミド基である。
【0019】
本発明で用いられる不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)については、特に制限されないが、好ましくは、上記の極性基を含む不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる有機化合物である。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、不飽和ジカルボン酸とその誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、具体的には不飽和ジカルボン酸の無水物、エステル、ハライド、アミド、イミドなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは不飽和ジカルボン酸およびその無水物、イミドである。
【0020】
不飽和ジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0021】
不飽和ジカルボン酸の誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイミド、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0022】
これらの不飽和ジカルボン酸およびその誘導体のうち、好ましくはマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイミド、無水イタコン酸、無水シトラコン酸であり、より好ましくは無水マレイン酸である。これらの有機化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0023】
ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩または4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,4-ジクロル過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert-ブチルペルオキシラウレート、ジ-tert-ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシドまたは2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド等の過酸化物系開始剤、または過酸化ベンゾイル-N,N-ジメチルアニリンまたはペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、アゾ系開始剤が好ましく、更に好ましくは、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルである。これらのラジカル開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
【0025】
ポリオレフィン(B)と不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)との反応に際しては、ラジカル開始剤は、原料とするポリオレフィン(B)の末端に存在する炭素−炭素二重結合1モルに対して、通常0.01〜100モル、好ましくは0.05〜80モル、より好ましくは0.1〜50モル使用される。ラジカル開始剤の使用量が0.01モル未満になると、得られるポリオレフィン(A)中の極性基含有量が低下する場合があり、また、100モルを超えると、分子量が低下したり、ポリオレフィンの末端以外への極性基導入量が多くなったりする場合がある。
【0026】
不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)の使用量は、原料とするポリオレフィン(B)の末端に存在する炭素−炭素二重結合1モルに対して、通常0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜500モル、より好ましくは0.5〜200モルである。使用量が0.01モル未満になると、得られるポリオレフィン(A)中の極性基含有量が低下する場合があり、一方、1000モルを越えると、未反応の極性基含有化合物(C)の残留が多くなりかつ、ポリオレフィン(A)が著しく着色する場合がある。
【0027】
ポリオレフィン(B)と不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)との反応に際して使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0028】
本発明の末端に極性基を有するポリオレフィン(A)の製造方法は、150℃以下で反応させることを特徴とする。反応温度を150℃以上にすると、原料に用いたポリオレフィン(B)が熱分解する場合があるため、得られるポリオレフィン(A)の分子量や極性基含量の制御が困難になり、また、ポリオレフィンの末端でなく主鎖中に極性基がグラフトされる量が増える場合があるため、所望する構造のポリオレフィンが得られなくなる。このようなポリオレフィンの熱分解および主鎖中への極性基のグラフト反応は、添加するラジカル重合開始剤の存在下でより促進されるため、本発明において反応温度は好ましくは150℃以下であり、130℃以下がより好ましい。
【0029】
上記[2]において、ポリオレフィン(A)中に存在する炭素−炭素二重結合含有量(X2)、不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)に由来する極性基の含有量(Y)およびポリオレフィン(B)中の炭素−炭素二重結合含有量(X1)は、例えば、赤外分光法やNMRなどの方法により測定することができる。これらの測定値は通常、mol%単位で表され、本発明においては下記式(Eq-1)を満たすことを特徴とする。
【0030】
【数3】

【0031】
(Y)/(X1−X2)の値が0.5未満の場合、ポリオレフィン(A)中に導入される極性基の含有量が少なく、ポリオレフィンと他の樹脂との相容性や塗装性、接着性の効果が充分に発揮されないことがある。一方、(Y)/(X1−X2)の値が2.0より大きい場合には、ポリオレフィン(A)中に導入される極性基の含有量が多くなりすぎ、しかも主鎖中にグラフトされる極性基の量も多くなるため、このようなポリオレフィンを原料に用いて他の樹脂とのカップリング反応などを行った時に架橋やゲル化などの不具合を生じやすくなる。したがって、Y/(X1−X2)の値は0.5以上、2.0以下が好ましく、より好ましくは0.6以上、1.9以下である。
【0032】
本発明により製造されるポリオレフィンは、末端に極性基を有し、しかも原料ポリオレフィンの融点や分子量などの特性が保持されるため、相容性や接着性、塗装性などを付与する目的でベースとなるポリオレフィン樹脂に添加した時にベース樹脂の物性を損なうことが少なく、また、低分子量体の含有量も少ないため、べたつきなどが起こりにくい。さらに、他の樹脂とのカップリング反応によりブロックポリマーやグラフトポリマーなどのハイブリッドポリマーを合成する際には、極性基の大部分が末端に存在するため、架橋やゲル化などの副反応が起こりにくく、所望の構造のポリマーを得るのに有利である。
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
[製造例1]
末端に炭素−炭素二重結合を有するポリプロピレンの製造
三井化学(株)製ポリプロピレン([η]=1.6dl/g)を、プラストミルを用いて窒素雰囲気下、410℃で2時間処理した。得られた重合体の分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、重量平均分子量(Mw)が10,700、数平均分子量(Mn)が6,000であった。また、示差走査熱量計(DSC)による分析から、融点は156.3℃であった。得られた重合体中に含まれる末端ビニリデン基の含有量は、H−NMR分析から1.10mol%であり、GPCにより得られたMnの値から、このポリプロピレン中の末端ビニリデン基個数は一分子鎖当たり1.57個と算出された。
【0035】
[製造例2]
末端に炭素−炭素二重結合を有するポリプロピレンの製造
製造例1において、反応温度を380℃にした以外は製造例1と同様にして末端に炭素−炭素二重結合を有するポリプロピレンを製造した。得られた重合体のMwは27,100、Mnは13,000であり、融点は161.5℃であった。H−NMR分析から、該ポリマー中の末端ビニリデン基含有量は0.38mol%であり、GPCで得られたMnの値から、末端ビニリデン基個数は一分子鎖当たり1.18個と算出された。
【0036】
[製造例3]
末端に炭素−炭素二重結合を有するポリプロピレンの製造
製造例1において、反応温度を370℃にした以外は製造例1と同様にして末端に炭素−炭素二重結合を有するポリプロピレンを製造した。得られた重合体のMwは36,700、Mnは17,400であり、融点は162.6℃であった。H−NMR分析から、該ポリマー中の末端ビニリデン基含有量は0.24mol%であり、GPCで得られたMnの値から、末端ビニリデン基個数は一分子鎖当たり0.99個と算出された。
【0037】
[製造例4]
末端に炭素−炭素二重結合を有するエチレン−プロピレン共重合体(EPR)の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブに精製トルエン250mlを入れ、エチレン50リットル/h、プロピレン50リットル/hを吹き込むことにより液相および気相を飽和させた。その後、40℃にてMAOをAl換算で1ミリモルおよびエチレンビスインデニルジルコニウムジクロリド0.005ミリモルを加えて重合を開始した。常圧下、40℃で120分間重合させた後、メタノール30mlを加えて反応を停止した。反応液を過剰のアセトン中に注ぎ、析出したポリマーを減圧乾燥して97gの無色ゴム状ポリマーを得た。得られた重合体の分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが32,600、Mnが14,600であった。得られた重合体中に含まれる末端ビニリデン基の含有量は、H−NMR分析から0.16mol%であり、GPCにより得られたMnの値から、このEPR中の末端ビニリデン基個数は一分子鎖当たり0.65個と算出された。
【実施例1】
【0038】
製造例1で得られた末端にビニリデン基を有するポリプロピレン14.7gと無水マレイン酸4.9gとを200mlのトルエンに加え、105℃で加熱攪拌して溶解させた。この溶液にアゾビスイソブチロニトリル820mgを加え、105℃で5時間反応を行った。得られた反応物を過剰のアセトン中に注ぎポリマーを析出させ、ろ過洗浄後減圧乾燥させることにより変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【実施例2】
【0039】
実施例1において、無水マレイン酸の添加量を14.7gにした以外は実施例1と同様にして変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【実施例3】
【0040】
製造例2で得られた末端にビニリデン基を有するポリプロピレン20gと無水マレイン酸1.1gとを400mlのキシレンに加え、120℃で加熱攪拌して溶解させた。この溶液を105℃まで冷却した後、アゾビスイソブチロニトリル185mgを加え、105℃で5時間反応を行った。得られた反応物を過剰のアセトン中に注ぎポリマーを析出させ、ろ過洗浄後減圧乾燥させることにより変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【実施例4】
【0041】
実施例3において、無水マレイン酸の添加量を3.3gにした以外は実施例3と同様にして変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【実施例5】
【0042】
製造例3で得られた末端にビニリデン基を有するポリプロピレン20gと無水マレイン酸0.74gとを400mlのキシレンに加え、120℃で加熱攪拌して溶解させた。この溶液を105℃まで冷却した後、アゾビスイソブチロニトリル124mgを加え、105℃で5時間反応を行った。得られた反応物を過剰のアセトン中に注ぎポリマーを析出させ、ろ過洗浄後減圧乾燥させることにより変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【実施例6】
【0043】
実施例5において、無水マレイン酸の添加量を2.2gにした以外は実施例5と同様にして変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【実施例7】
【0044】
製造例4で得られた末端にビニリデン基を有するEPR7.5gと無水マレイン酸0.97gとを30mlのトルエンに加え、100℃で加熱攪拌して溶解させた。この溶液にアゾビスイソブチロニトリル54mgを加え、100℃で5時間反応を行った。得られた反応物を過剰のアセトン中に注ぎポリマーを析出させ、ろ過洗浄後減圧乾燥させることにより変性EPRを得た。この変性EPRの分析値を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
Mwが633,000のポリプロピレン(IR分析より末端ビニリデン基に基づく吸収は確認されない)と、無水マレイン酸3.5重量部および2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3 0.1重量部を一軸押出機(サーモ20mmφ)に投入し、樹脂温度250℃で溶融混練し、ストランド状に押し出して水冷し、ペレット化して、変性ポリプロピレンを得た。この変性ポリプロピレンの分析値を表1に示す。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件[1]および[2]を満たすことを特徴とする末端に極性基を有するポリオレフィン(A)の製造方法。
[1]末端に存在する炭素−炭素二重結合の含有量が一分子鎖当たり0.2〜2個の範囲内であるポリオレフィン(B)を原料として、ラジカル開始剤の存在下、不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)を150℃未満の反応温度で反応させる。
[2]ポリオレフィン(B)中の炭素−炭素二重結合含有量(X1 mol%)と、末端に極性基を有するポリオレフィン(A)中に存在する炭素−炭素二重結合含有量(X2 mol%)および不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)に由来する極性基の含有量(Y mol%)との間に以下の関係式(Eq-1)が成り立つ。
【数1】

【請求項2】
不飽和結合を有する極性基含有化合物(C)が、不飽和ジカルボン酸またはその誘導体である請求項1に記載の末端に極性基を有するポリオレフィン(A)の製造方法。

【公開番号】特開2006−77163(P2006−77163A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263987(P2004−263987)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】