本質的に導電性のポリマー
本質的に導電性のポリマーフィルムをドーピングする方法が提供されている。この方法は、本質的に導電性のポリマーフィルムと第1の酸ドーパントとを接触させて、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと蒸気とを接触させることによって、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄化すること;蒸気清浄化された一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを、少なくとも第2の酸ドーパントと有機溶媒を含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを生成させること;を含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[00001]本発明は、コントラクト・アワードW15QKN−07−C−0121にもとづく政府支援〔ニュージャージー州ピカティニーのアーミーアーマメント・リサーチ・ディベロップメント&エンジニアリング・センター(ARDEC)から与えられた〕を適用してなされた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【0002】
[00002]本特許出願は、米国仮特許出願第60/200,830号と第60/200,829号(ともに2008年12月4日付出願、該特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0003】
[00003]本発明は、本質的に導電性のポリマー(ICP)及びICPの製造方法とドーピング方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
[00004]1つの態様では、本発明はスーパーコンデンサに関する。本発明のスーパーコンデンサは、第1の表面と第2の表面を含む第1の支持体;約800S/cm以上の導電率を有する本質的に導電性のポリマーを含んでいて、第1の側面と第2の側面を有する第1の電極、ここで該第1の側面が、第1の支持体の第2の表面に隣接している;第1の電極の第2の側面に隣接している電解質;約800S/cm以上の導電率を有する本質的に導電性のポリマーを含んでいて、第1の側面と第2の側面を有する第2の電極、ここで該第1の側面が、第1の電極の第2の側面に隣接していて、電解質によって第1の電極から隔離されている;及び、第1の表面と第2の表面を有する第2の支持体、ここで該第1の表面が、第2の電極の第2の側面に隣接している;を含む。
【0005】
[00005]他の態様では、本発明は、本質的に導電性のポリマーフィルムにドーピングする方法に関する。本発明の方法は、該フィルムと第1の酸ドーパントとを接触させて、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと蒸気とを接触させることによって、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄にすること;蒸気で清浄にした一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを、少なくとも第2の酸ドーパントと有機溶媒とを含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを得ること;を含む。
【0006】
[00006]さらに他の態様では、本発明は、約800S/cm以上の導電率を有する、ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムに関する。
[00007]本発明のこれらの態様及び他の態様は、当業者であれば、本明細書を詳細に検討することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】[00008]図1は、本発明に従った典型的なタイプIのスーパーコンデンサの概略図である。
【図2】[00009]図2は、熱処理前(約0.1で終わる)と150℃にて30分の熱処理後(約0.5で終わる)の、PAC(商標)1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図3】[00010]図3は、熱処理前(約0.5で終わる)と150℃にて30分の熱処理後(約0.7で終わる)の、PAC(商標)1007フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図4】[00011]図4は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSAドープPAC(商標)1003フィルム(上部ライン)対初期状態のPAC1003フィルム(下部ライン)のUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図5】[00012]図5は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSAドープPAC1007フィルム対初期状態のPAC1007フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図6】[00013]図6は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSA−TSAmドープPAC1003フィルム対初期状態のPAC1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図7】[00014]図7は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSA−TSAmドープPAC1007フィルム対初期状態のPAC1007フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図8】[00015]図8は、チモールを使用して蒸気清浄化し、次いでPTSA−TSAm溶液中にフィルム浸漬−ドーピングしたPAC1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図9】[00016]図9は、チモール、カルバクロール、IPP、又はDIPPを使用して蒸気清浄化し、次いでPTSA溶液中にフィルム浸漬−ドーピングしたPAC1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図10】[00017]図10は、(未知の延伸速度にて)140%に延伸し、(IRランプを使用して)65℃で5分保持し、次いで室温に冷却して応力を取り除くことによって150μmのテフロン支持体上で行われた、機械的にアニールされたPANI(PAC1007)サンプルの、室温(RT)にて測定した4プローブDC導電率のプロットを示す。
【図11】[00018]図11は、(未知の延伸速度にて)140%に延伸し、(IRランプを使用して)65℃で5分保持し、次いで室温に冷却して応力を取り除くことによって150μmPTFE支持体上で行われた、機械的にアニールされたPANI(PAC1003)サンプルの、RTにて測定した4プローブDC導電率のプロットを示す。これらのサンプルフィルムは、PAC1003フィルムをスピン・コーティングする(1500μl、1000rpmにて30秒)ことによって作製した。
【図12】[00019]図12は、PAC1003フィルムを電極材料として、そしてEMI−IMイオン液体を電解質として使用するコイン電池の充放電サイクルの結果を示す〔(a)初期状態のPAC1003及び(b)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003〕。
【図13】[00020]図13は、(a)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003フィルム(1回の10,000サイクル)、(b)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003フィルム(2回の10,000サイクル)、及び(c)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003フィルム(3回目の10,000サイクル)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として使用して、最大で10,000サイクルまで行われる、クロノポテンショメトリーによる充放電サイクルにおけるコイン電池の電位窓を示す。
【図14】[00021]図14は、導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003を電極として、そしてEMI−IMを電解質として使用するコイン電池のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図15】[00022]図15は、高導電性の金属性PANIフィルムをEMI−IMイオン液体電解質中の電極材料として使用するコイン電池の、PANIの導電率対デバイス性能のプロットを示す。
【図16】[00023]図16は、EMI−IMイオン液体電解質中の金属性PANI電極に対して行われたサイクリックボルタンメトリースキャンを示す(SCE参照電極と白金対電極を含む3電極構成にて)。
【図17a】[00024]図17aは、金属性PANIフィルム(トップとミドル)とPTSA−TSAmドープPANIフィルム(ボトム)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として含むコイン電池の電位プロフィールを示す。トップは充放電試験の10,000サイクルが1回。ミドルとボトムは充放電試験の10,000サイクルが3回。いずれもガムリー社製定電位クロノポテンシオメトリープロフィールの一般的なパターンを有する。電流サイクル:±1mA(トップとボトム)及び±3mA(ボトム)〕。
【図17b】[00024]図17bは、金属性PANIフィルム(トップとミドル)とPTSA−TSAmドープPANIフィルム(ボトム)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として含むコイン電池の電位プロフィールを示す。トップは充放電試験の10,000サイクルが1回。ミドルとボトムは充放電試験の10,000サイクルが3回。いずれもガムリー社製定電位クロノポテンシオメトリープロフィールの一般的なパターンを有する。電流サイクル:±1mA(トップとボトム)及び±3mA(ボトム)〕。
【図17c】[00024]図17cは、金属性PANIフィルム(トップとミドル)とPTSA−TSAmドープPANIフィルム(ボトム)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として含むコイン電池の電位プロフィールを示す。トップは充放電試験の10,000サイクルが1回。ミドルとボトムは充放電試験の10,000サイクルが3回。いずれもガムリー社製定電位クロノポテンシオメトリープロフィールの一般的なパターンを有する。電流サイクル:±1mA(トップとボトム)及び±3mA(ボトム)〕。
【図18】[00025]図18は、金属性PANIフィルムを含有するAu界面層を有する電極を使用するコイン電池の、EMI−IM電解質中にて調べた電位プロフィールを示す。
【図19】[00026]図19は、界面層が金属性PANIとSSディスクとの間にサンドイッチ状に挟まれて存在することのコイン電池のデバイス性能特性〔例えば、a)グラフに示されているようなエネルギー密度や出力密度、及びb)CVスキャンプロットに示されているような比キャパシタンス〕に及ぼす影響を含めた、コイン電池のデバイス性能を示す。
【図20】[00027]図20は、金属性PANI電極中に界面層が存在することの影響を調べるために、クロノポテンショメトリーを使用して最大で30,000サイクルまで行ったサイクル安定性実験を示す。
【図21】[00028]図21は、SSディスク上に被覆した金属性PANIフィルムの量が、コイン電池のデバイス性能に及ぼす充放電サイクル効果を示す。
【図22】[00029]図22は、Li−IMをEMI−IM電解質における第2のイオン液体電解質成分として導入することの、金属性PANI含有Au界面層を有する電極を使用するコイン電池に対するデバイス性能に及ぼす影響を示しているプロットを示す。
【図23】[00030]図23は、電解質によるバルクペレット接近可能性の略図である。
【図24】[00031]図24は、PANI/DBSA/C−ファイバーコイン電池の、1mA、1.0V(EMI−IM)での充放電特性を示す。
【図25】[00032]図25は、充電されたエネルギーと放電されたエネルギーに及ぼすホールドタイムの影響を示す。
【図26】[00033]図26は、PANI/DBSA/C−ファイバーコイン電池(EMI−IM)の、ホールドタイム0秒の場合の充放電サイクルを示す。
【図27】[00034]図27は、PAC1003ペレットコイン電池の、0.01mA、1.0Vでの充放電サイクルを示す。
【図28】[00035]図28は、炭素の含量を高めるとエネルギーが増大することを示す。
【図29】[00036]図29は、炭素の配合処方(Carbon formulation)によって異なるPAC1003の充放電サイクルを示す。
【図30】[00037]図30は、30%/2%/68%(重量%)のIPO比の活性炭/カーボンブラック/コロイダルグラファイト溶液と活性炭対照標準コイン電池の10mAでの放電されたエネルギーを示す。
【図31】[00038]図31は、活性炭とPAC1003配合物の放電されたエネルギーを示す。電圧が増大するにつれて、活性炭は、出力がゆっくりと着実に増大した。
【図32】[00039]図32は、45%/50%/5%(重量%)の比のPAC1003/活性炭/カーボンブラックと30%/2%/68%(重量%)の比の活性炭/カーボンブラック/コロイダルグラファイト溶液を示す。
【図33】[00040]図33は、PAC1003/カーボン配合物とカーボン対照標準コイン電池の、種々の充電・放電条件での効率を示す。
【図34】[00041]図34は、カーボン配合物を含むPANI/DBSAの充放電サイクルを示す。電流が低いと、IRの低下はわずかである。
【図35】[00042]図35は、種々のデバイスの放電されたエネルギー(J/デバイス)を示す。
【図36】[00043]図36は、PAC1003コイン電池、PANI/DBSAコイン電池、及びこれらに対応する活性炭配合物コイン電池の出力(J/s)を示す。
【図37】[00044]図37は、ペレット状コイン電池に対する1mA、1Vでの充電されたエネルギーと放電されたエネルギーの比較を示す。
【図38】[00045]図38は、ペレット状コイン電池に対する10mA、1Vでの充電されたエネルギーと放電されたエネルギー(J/デバイス)の比較を示す。
【図39】[00046]図39は、ペレット状コイン電池に対する100mA、1Vでの充電されたエネルギーと放電されたエネルギー(J/デバイス)の比較を示す。
【図40】[00047]図40は、活性炭とコロイダルグラファイトとカーボンブラックの複合物とPANI/DBSA複合物との、サイクル安定性の比較を示す。
【図41】[00048]図41は、サイクル安定性に及ぼす電圧変化の影響を示す。
【図42】[00049]図42は、ペレット状コイン電池におけるAu界面層の、10mA、1mA、及び1Vでの影響を示す。
【図43】図43は、ペレット状コイン電池におけるAu界面層の、10mA、1mA、及び1Vでの影響を示す。
【図44】図44は、ペレット状コイン電池におけるAu界面層の、10mA、1mA、及び1Vでの影響を示す。
【図45】[00050]図45は、PAC1003コイン電池のIR低下に及ぼすPTSA/TSAmの影響を示す。
【図46】[00051]図46は、ペレットベースのコイン電池のエネルギー(J)に及ぼすPTSA/TSAmと活性炭の影響を示す棒グラフである。
【図47】[00052]図47は、ペレットベースのコイン電池に対するエネルギーと比キャパシタンス(F/g)を示す。
【図48】[00053]図48は、ペレットベースのコイン電池−ペースト配合物に対する出力(J)を示す。
【図49】[00054]図49は、(A)Ptボタン上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV、(B)Auボタン上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV、及び(C)ITO被覆ガラス上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCVを示す。モノマー濃度は、0.1MがTBAP/DCM中に存在する状態で5mMである。ボルタモグラムはいずれも、10回繰り返しスキャンの積み重ねプロットを示す〔(D)Auボタン上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV〕。モノマー濃度は、0.1MがTBAP/DCM中に存在する状態で1mMである。ボルタモグラムは、50mV/秒のスキャン速度にて20回繰り返しスキャンの積み重ねプロットを示す。
【図50】[00055]図50は、0.1MのTABP/ACN中におけるPtボタン上のポリ(BEDOT−BBT)のレドックス安定性を示す。
【図51】[00056]図51は、0.1MのTABP/ACN中におけるAuボタン上のポリ(BEDOT−BBT)のレドックス安定性を示す。(A)は正電位のスキャンを示し(P−ドーピング可能)、(B)は負電位のスキャンを示す(N−ドーピング可能)。
【図52】[00057]図52は、0.1MのTBAP−PC溶液中におけるAuボタン作用電極上のポリ(BEDOT−BBT)の、50mV/秒でのサイクリックボルタンメトリーを示す。
【図53】[00058]図53は、0.1MのTABP/ACN中におけるAuボタン上のポリ(BEDOT−BBT)のレドックス安定性を示す。(A)は、50mV/秒での正電位のスキャンを示し(P−ドーピング可能)、(B)は、50mV/秒での負電位のスキャンを示す。ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、TBAP/DCM中1mMのモノマーにてCV法により作製した。
【図54】[00059]図54は、Auボタン上のポリ(BEDOT−BBT)の、種々のスキャン速度でのスキャン速度依存性CVを示す。(A)は、0.1MのTABP/CAN中でのスキャン速度依存性CVを示し、(B)は、ポリ(BEDOT−BBT)のスペシフィック・エリア・キャパシタンス(specific area capacitance)(mF/cm2)対スキャン速度のプロットを示し、(C)は、0.1MのTABP/PC中でのスキャン速度依存性CVを示し、(D)は、室温での窒素バブル下での、ポリ(BEDOT−BBT)のスペシフィック・エリア・キャパシタンス(mF/cm2)対スキャン速度のプロットを示す。
【図55】[00060]図55は、CH2Cl2中でのBEDOT−BBTのUV−Vis吸収スペクトル(ゼロ付近で終わる);0.1MのTBAP/CAN中におけるITO被覆ガラス上へ−0.4Vの一定電位を1分加えることによる中性ポリ(BEDOT−BBT)の吸収スペクトル(0.5付近で終わる)、及び0.1MのTBAP/CAN中におけるITO被覆ガラス上へ0.5Vの一定電位を1分加えることによる酸化的ポリ(BEDOT−BBT)の吸収スペクトル(2のすぐ下で終わる)を示す。
【図56】[00061]図56は、モノマー濃度が、0.1MがTBAP/DCM中に存在する状態で5mMのBEDOT−BBTであるときのCV略図を示す。(A)は、50mV/秒のスキャン速度にて10サイクルに対する、ステンレス製ディスク(Φ=0.75インチ)上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV略図であり、(B)は、20mV/秒のスキャン速度にて20サイクルに対する、ステンレス製ディスク(Φ=2.0インチ)上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV略図である。
【図57】[00062]図57は、E−重合の溶液撹拌速度依存性に対するクロノアンペロメトリー略図(上)、及びAu界面層を含むSS上にデポジットさせたポリ(BEDOT−BBT)フィルムのデジタル写真(下)を示す。
【図58】[00063]図58は、600rpmの溶液撹拌速度下での、Au層を含まないSS上への電着の時間依存性に対するクロノアンペロメトリー略図〔0.7Vの電位を120秒加えた場合(上左)と240秒加えた場合(上右)〕、及びステンレス鋼基板上にデポジットさせたポリ(BEDOT−BBT)フィルムのデジタル写真を示す。
【図59】[00064]図59は、n−型ポリ(BEDOT−BBT)の電解重合に使用される新規H−電池(AとB、側面図と上面図)、及びH−電池においてクロノアンペロメトリー法を使用して、0.8Vにて240秒にわたってステレンレス鋼基板上にデポジットされたポリマーフィルム(C)を示す。該ポリマーの色は、濃い紫色がかった緑色であった。
【図60】[00065]図60は、電着ポリマー量(mg)対チャージ(mC)に関する直線関係プロットを示す。
【図61】[00066]図61は、0.1MのTBAP/DCMにおいて1mMのモノマー濃度で、0.8Vにて50mCまで印加してデポジットされたポリマーのクロノアンペロメトリー略図を示す。(A)は、室温でアルゴン雰囲気下でのチャージ対時間(秒)のプロットであり、(B)は、室温でアルゴン雰囲気下での電流密度(mA/cm2)対時間(秒)のプロットである。
【図62】[00067]図62は、0.1MのTBAP/PCにてアルゴン雰囲気下における、−0.4V〜0.5Vの電位のCV略図を示す。(A)は、SS上にデポジットさせたAu界面層上ポリ(BEDOT−BBT)の、種々のスキャン速度でのスキャン速度依存性CVを示し、(B)は、ポリマー酸化電位における電流(mA)対スキャン速度のプロットを示し、(C)は、室温での、ポリ(BEDOT−BBT)の比キャパシタンス(F/g)対スキャン速度のプロットを示す。
【図63】[00068]図63は、ポリ(BEDOT−BBT)のN−型電気特性評価(N−type electro−characterization)を示す。(A)は、0.1MのTBAP/PCにてAu界面層SS上ポリ(BEDOT−BBT)の、アルゴン雰囲気下でのサイクリックレドックス安定性のCV略図を示す。サイクリック電位の範囲は−1.4V〜0Vである(N−型)。(B)は、SS上にデポジットさせたAu界面層上ポリ(BEDOT−BBT)の、種々のスキャン速度でのスキャン速度依存性CVを示す。(C)は、ポリマー還元電位における電流(mA)対スキャン速度のプロットを示す。(D)は、室温での、ポリ(BEDOT−BBT)の比キャパシタンス(F/g)対スキャン速度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[00069]さて、以下に発明の実施態様について詳細に説明する。本発明の1つ以上の実施例については後述する。各実施例は、本発明の説明のために記載されており、実施例によって本発明が限定されることはない。実際、当業者には言うまでもないことであるが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の改良や変更を行うことができる。例えば、ある実施態様の一部として説明されている特徴を別の実施態様に対して使用して、さらなる実施態様をもたらすことができる。従って、本発明は、こうした改良形や変形を、添付のクレームやそれらの等価物の範囲内に入るものとして含む、ということが意図されている。本発明の他の目的、特徴、及び態様は、下記の詳細な説明中に開示されているか、あるいは下記の詳細な説明から明らかとなろう。当業者が理解しておかねばならないことは、ここでの説明は典型的な実施態様のみの説明であって、本発明のより広い態様を限定するものとして意図されてはいない、という点である。
【0009】
[00070]本明細書で使用されている“導電性ポリマー(electrically conductive polymer)”、“本質的に導電性のポリマー(intrinsically conductive polymer)”、又は“導電性ポリマー(conductive polymer)”とは、ポリ共役結合系を含んでいて、電子供与体ドーパント又は電子受容体ドーパントをドーピングして、約10−8S/cm以上の導電率を有する電荷移動錯体を形成することができる有機ポリマーを表わしている。言うまでもないことであるが、本明細書において導電性ポリマーに言及しているときは常に、該材料がドーパントを含んでいるということが意味されている。
【0010】
[00071]本明細書で使用している“ドーパント”とは、導電性ポリマーと塩を形成してポリマーの導電性形態をもたらすあらゆるプロトン酸を意味している。単独の酸をドーパントとして使用することもできるし、あるいは2種以上の異なる酸がポリマーに対するドーパントとして作用することがある。
【0011】
[00072]本明細書にて導電性ポリマーの説明と併せて使用されている“フィルム”とは、ポリマーのソリッド形態(a solid form)を意味している。特に明記しない限り、本発明のフィルムは、ほぼ全ての物理的形状を有することができ、シート状の形状や他のいかなる物理的形状にも限定されない。一般には、導電性ポリマーのフィルムは、固体電解質コンデンサの誘電体層の表面に適合する。
【0012】
[00073]材料を説明するために本明細書で使用されている“熱安定性”とは、材料が高温に長時間さらされたときに、該材料が分解や劣化に抵抗する能力(等温熱重量分析により測定)を意味している。“改良された熱安定性”とは、材料の熱安定性が、どになに小さくても改良されたことを意味している。
【0013】
[00074]本明細書で使用している“混合物”とは、2種以上の材料の物理的組み合わせ物を表わしており、溶液、分散液、エマルジョン、及びミクロエマルジョン等(これらに限定されない)を含む。
【0014】
[00075]本発明では任意の導電性ポリマーを使用することができるけれども、有用なポリマーの例としては、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、及びポリ(フェニレンビニレン)等がある。置換もしくは非置換のアニリン、ピロール、又はチオフェンのポリマーも、本発明の導電性ポリマーとして機能することができる。1つの実施態様では、導電性ポリマーはポリアニリンである。
【0015】
[00076]ポリアニリンは、少なくとも4つの酸化状態(ロイコエメラルジン、エメラルジン、ニグラニリン、ペルニグラニリン)を経て生じる。エメラルジン塩は、安定な導電性状態を示すポリマーの一形態である。ポリアニリンのエメラルジン塩形では、プロトン酸ドーパント(対イオン)が存在するかしないかで、ポリマーの状態が、それぞれエメラルジン塩からエメラルジン塩基に変わりうる。従って、このようなドーパントの存在もしくは非存在が、ポリマーを可逆的に導電性もしくは非導電性にすることができる。プロトン酸を導電性ポリマー(例えばポリアニリン)のためのドーパントとして使用することは知られており、HClやH2SO4等の単純なプロトン酸、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)やドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)等の官能化有機プロトン酸を使用すると、導電性のポリアニリンが得られる。
【0016】
[00077]導電率は、しばしば導電性ポリマーの最終生成物の重要な特性であるけれども、導電形態における導電性ポリマーは、処理するのが困難である場合が多い。例えば、ドーピングしたポリアニリンは、一般には全ての有機溶媒に対して不溶性であるが、中性形は、高極性溶媒(例えばN−メチルピロリドン)に対してのみ溶解性である。しかしながら、特定の合成法及び特定の官能化有機酸ドーパントを使用することにより、導電性ポリアニリン塩は有機溶媒に対してより可溶性になる、ということが見出された。例えば、米国特許第5,863,465号と第5,567,356号(極性有機液体を用いるエマルジョン重合において疎水性の対イオンを使用する);ならびにWO92/22911及び米国特許第5,324,453号と第5,232,631号(無極性有機液体を用いるエマルジョン重合において界面活性剤特性を有する対イオンを使用する);を参照のこと。
【0017】
[00078]PANIは、スーパーコンデンサを含めたエネルギー貯蔵デバイスの電極材料としての応用に適した対象であると考えられるICPである。PANIはさらに、ファラデー・キャパシタンスや充放電能力等の優れた電気化学的特性を示す。PANIのドーピングは、改良された導電性を有するポリマー鎖を形成させる上で重要な工程である。主要なドーパントは、導電性ポリマー鎖の長さに沿った非局在化電子の生成(これにより鎖長に沿って導電性が確立される)に関与するポーラロン/バイポーラロンの形成を促進する能力を有する。欠陥の無いもしくは欠陥の少ない鎖(欠陥=共役の欠如)、及びポリマー鎖長に沿った電導のための良好なπ−π重なり、を有する改良された導電性を得ることができる。
【0018】
[00079]金属様の導電性を達成する上で、一次ドーピングしたPANIの限界を克服するためにPANIの二次ドーピングを行うことができる。幾つかの実施態様では、二次ドーピングは、PANIフィルムを洗浄して、ポリマーから過剰で未結合の一次ドーパントを除去し;フィルムにおけるポリマーのコイル様構造の拡張鎖構造への変換を起こさせ;そして熱処理することでポリマー鎖の最密充填(PANI中のフェニル環とドーパントとのπ−π重なり、ならびにドーパント中のヒドロキシル基とPANI中のアミン部位及びイミン部位との水素結合を促進する)を形成させることによって行うことができる。
【0019】
[00080]PAC1003(クロスリンク社の市販製品)は、ジノニルナフタレンスルホン酸を一次ドーパントとして使用している一次ドーピングしたポリアニリン溶液である。PAC1003は0.16S/cmの室温導電率を有する。PAC1007(これもクロスリンク社の市販製品)は、“その場で”二次ドーピングしたPAC1003の溶液であり、15〜20S/cmの室温導電率を有する。幾つかの実施態様では、二次ドーパント〔スルホニルジフェノール(SDP)〕によって起こりうるPANI鎖の架橋により引き起こされると考えられる望ましくないゲル化効果のために、PAC1007の保存寿命が制限されることがある。
【0020】
[00081]1つの態様では、本発明は、新規ICPを形成するよう重合させることができる新規モノマーである。スキーム1は、出発物質であるベンゾチアジアゾール(BT)(化合物1)からの新規モノマーであるビスエチレンジオキシチオフェン−ビスベンゾチアジアゾール(BEDOT−BBT)(化合物7)の合成を示している。市販のBTを臭化水素酸(48%)中に溶解し、これを臭素化合物と反応させてジブロモ−BT(2)を生成させることができる(臭素化反応)。次いで化合物2を、例えばH2SO4/HNO3でニトロ化することができる。このようにして得られるジニトロ−ジブロモ−BT(4)は、モノニトロ化化合物とトリブロモ化合物を生じる副反応ならびに環の分解のために低収率(23%)である。次いで、EDOT−SnBu3と化合物4とを触媒(例えばPd触媒)の存在下で混合して、BEDOT−BT−(NO2)2(化合物5)を生成させることができる(スティルカップリング反応)。酢酸中での鉄粉による化合物5の還元により、化合物6(緑黄色粉末)が得られる。最終のBEDOT−BBT(化合物7)は、ピリジン中N−チオニルアニリンによる閉環反応から得ることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
[00082]上記スキーム(スキーム1)においては、ニトロ化反応の収率がかなり低い(20%)。収率を高めるために、“J.Org.Chem.Vol.38,No.25,1973,p.4243”に記載の他の反応経路を使用することができる。
【0023】
【化2】
【0024】
[00083]次いでn−ドーピング可能なポリ(BEDOT−BBT)を、当業界に公知の1つ以上の方法に従ってドーピングすることができる。ここに記載のn−ドーピング可能なポリ(BEDOT−BBT)はさらに、あるいはこれとは別に、後述する方法の1つ以上によってドーピングすることもできる。
【0025】
[00084]幾つかの態様においては、n−ドーピング可能なポリ(BEDOT−BBT)をフィルム(例えば本明細書に記載の他のICPフィルム)にするのが望ましい。
[00085]1つの態様においては、本発明は、本質的に導電性のポリマーフィルムをドーピングする新規方法に関する。幾つかの実施態様では、これらの新規方法は、ICPフィルムに二次ドーピングする方法である。他の実施態様では、これらの新規方法は、ICPフィルムに三次ドーピングする方法である。さらに他の実施態様では、ICPフィルムの二次ドーピングと三次ドーピングの両方に対して同じ方法を使用することができる。幾つかの実施態様では、これらの方法は、PANIフィルムに対して特に有用である。
【0026】
[00086]幾つかの実施態様では、二次ドーピングを行う前に、一次ドーピングしたICPフィムを清浄にするのが望ましい。幾つかの実施態様では、一次ドーピングしたICPフィルムを、溶媒洗浄やすすぎ洗い(これらに限定されない)を含めた当業界に公知の方法によって清浄にすることができる。
【0027】
[00087]他の実施態様では、本発明は、一次ドーピングしたICPフィルムを清浄にする新規方法である。この新規方法は、一次ドーピングしたICPフィルムを蒸気清浄することを含む。この実施態様では、一次ドーピングしたICPフィルムを蒸気清浄して、一次ドーピングしたICPフィルムの導電性を高めることができる。適切な蒸気としては、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、及びメタ−クレゾールの1種以上の蒸気がある。
【0028】
[00088]蒸気清浄は、ICPフィルムのナノ多孔性フィルムネットワーク中への、無毒性フェノール類蒸気の浸透(この結果、未結合のドーパントと残留溶媒が除去される)として理解することができる。この浸透の結果、二次ドーパントの組み込みを可能にするための非多孔性ボイドが生じる。
【0029】
[00089]1つの実施態様では、本発明は、PANIフィルムのフィルム浸漬−ドーピング法である。浸漬−ドーピング法は、単独で行うこともできるし、あるいは現在使用されている蒸気清浄法を含めた上記清浄方法のいずれかと組み合わせて行うこともできる。
【0030】
[00090]この実施態様は、上記したPAC1007の望ましくないゲル化の影響を低減及び/又は解消することによってPAC1007の特性を向上させる。さらに、この方法は、良好なフレキシビリティを示す厚さ約0.15μm〜約0.35μmの均一なPANIフィルムサンプルをもたらす。この方法はさらに、PAC1003とPAC1007の両方を凌ぐ改良された導電性をもたらす。この実施態様においては、フィルム浸漬−ドーピングは、一次ドーピングしたICPフィルムを、有機溶媒とプロトン酸との混合物中に適切な時間にわたって浸漬することによって行うことができる。幾つかの実施態様では、フィルムを、約1秒〜約120秒にわたって浸漬することができる。他の実施態様では、この時間は約5秒〜約60秒であってよい。さらに他の実施態様では、この時間は約10秒〜約30秒であってよい。
【0031】
[00091]接触プロセス時においては、フィルムと混合物の温度は、約5℃〜約50℃、約10℃〜約30℃、あるいは約室温であってよい。
[00092]本発明のプロトン酸は、導電性ポリマーのためのドーパントとして作用することができる任意のプロトン酸であってよい。本発明のプロトン酸は、一次ドーパントと同じであってもよく、あるいは異なったプロトン酸であってもよく、あるいは2種以上のプロトン酸(いずれか1種が一次ドーパントと同じであっても異なっていてもよい)の混合物であってもよい。
【0032】
[00093]本発明の方法の1つの実施態様では、プロトン酸は、導電性ポリマーと組み合わせたときに、導電性をもたらすだけでなく、導電性ポリマーの熱安定性を向上させるドーパントとして作用することができる。
【0033】
[00094]本発明のプロトン酸として使用するのに適した物質の例としては、4−スルホフタル酸(4−SPHA)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、ベンゼンスルホン酸(BA)、フェニルホスホン酸(PA)、リン酸(H3PO4)、及びカンファースルホン酸(CSA)等があるが、これらに限定されない。プロトン酸として有用な酸のさらなる例が、米国特許第5,069,820号に記載されている。1つの実施態様では、プロトン酸は有機スルホン酸を含む。この有機スルホン酸は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のスルホネート基を有してよい。適切な有機スルホン酸の一例は、式R1HSO3(式中、R1は、置換もしくは非置換の有機基である)を有する化合物である。
【0034】
[00095]プロトン酸ドーパントとして使用するのに適した物質の他の例は、式
【0035】
【化3】
【0036】
[00096](式中、oは1、2、又は3であり;rとpは同一又は異なっていて、0、1、又は2であり;そしてR5は、アルキル、フルオロ、又は1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルである)を有する化合物である。
【0037】
[00097]上記式の構造において、oが1又は2であり;rとpが同一又は異なっていて、0又は1であり;そしてR5が、アルキル、フルオロ、又は1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルであるときも適切である。
【0038】
[00098]1つの実施態様では、プロトン酸ドーパントはp−トルエンスルホン酸を含む。他の実施態様では、プロトン酸ドーパントは、p−トルエンスルホン酸(PTSA)とp−トルエンスルホンアミド(TSAm)との混合物を含む。
【0039】
[00099]一般には、有機溶媒は、プロトン酸と一次ドーパントの両方を溶解するように選定することができる。従って有機溶媒は、少なくとも幾らか極性であるか〔例えば、ブチルセロソルブ(誘電率(DC)=9.4)やn−ブタノール(DC=17.8)等〕、溶解させるべく十分に極性であるか(例えばp−トルエンスルホン酸)、あるいは溶解させるべく十分に無極性である(例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸)。
【0040】
[00100]本発明の適切な有機溶媒の例としては、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、およびこれらの混合物がある。
[00101]本発明の方法においては、有機溶媒とプロトン酸との混合物は通常、プロトン酸を、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させるように、且つ熱応力によって引き起こされる導電性の低下を少なくするように選定される量にて含む〔これにより、コンデンサにおける等価直列抵抗(Δ−ESR)のシフトが減少する〕。
【0041】
[00102]一般には、有機溶媒とプロトン酸との混合物は、プロトン酸を約0.5%〜約25%の量にて含んでよい。混合物はさらに、プロトン酸を約1%〜約15%の量にて、又は約3%〜約7%の量にて含有してよい(全て重量%)。
【0042】
[00103]有機溶媒とプロトン酸との混合物はさらに、接触プロセスの有効性を高める他のほとんど全ての添加剤を含むことができるけれども、該混合物は、一般には、導電性ポリマーのモノマーを含有していないし、またドーピングした導電性ポリマーフィルムと接触する前に導電性ポリマーを含有していない。必要に応じて、該混合物は、実質的に有機溶媒とプロトン酸からなっていてもよい。
【0043】
[00104]1つの実施態様では、有機溶媒中のプロトン酸の濃度、及び混合物と導電性ポリマーフィルムとを接触させる時間(接触条件)は、200℃で120分処理した導電性ポリマーフィルムの重量損失が約20%未満となるように、そして同じ処理後の導電率の低下が30%未満となるように熱安定性を向上させるべく選定される。これとは別に、接触条件は、重量損失が約10%未満となるように、そして同じ処理後の導電率の低下が20%未満となるように、あるいは重量損失が約5%未満となるように、そして同じ処理後の導電率の低下が10%未満となるように選定される。
【0044】
[00105]二次ドーピング及び/又は三次ドーピングの後に、ICPフィルムの導電性を、フィルムをアニールすることによって高めることができる。フィルムは、機械的な延伸アニールと化学的アニールの一方または両方によってアニールすることができる。特定の理論で拘束されるつもりはないが、フィルムを機械的にアニールすると、ポリマー鎖の整列と配向が改良され、これによって電子移動のための経路がつくり出される、と考えられる。さらに、特定の理論で拘束されるつもりはないが、化学的アニールにより、ドーピングしたICPフィルムにおける結晶性ドメインの形成が増大する、と考えられる。機械的アニールと化学的アニールとを組み合わせると、フィルム内に一軸整列された結晶性ドメインが形成され、これによりフィルム中の電子移動の増大が可能になる。こうした電子移動の増大により、フィルムの導電性が改良される。
【0045】
[00106]機械的アニールは、二次ドーピングしたICPフィルムに対しても、あるいは三次ドーピングしたICPフィルムに対しても、フィルムを延伸することによって行うことができる。幾つかの実施態様では、フィルムは、ほぼ室温でアニールすることができる。他の実施態様では、アニールする前にフィルムを加熱するのが望ましい。機械的アニールの前にフィルムを加熱する場合、フィルムは、約50℃〜約80℃の温度に、幾つかの実施態様では約55℃〜約75℃の温度に、そして他の実施態様では約60℃〜約70℃の温度に加熱することができる。
【0046】
[00107]フィルムは、IR加熱、対流加熱、熱オーブン加熱、ガス加熱、ソーラーヒーティング、及びこれらの組み合わせ(これらに限定されない)を含めた、当業界に公知の加熱方法によって加熱することができる。
【0047】
[00108]機械的アニールを起こさせるように、フィルムに機械的応力をかけることができる。幾つかの実施態様では、機械的応力は、延伸、ねじり、曲げ、加圧、および他の機械的変形の1つ以上であってよい。機械的アニールを起こさせるためにフィルムを延伸するとき、フィルムは、フィルムの初期長さの125%を超える長さに延伸することができ、幾つかの実施態様では、フィルムの初期長さの145%を超える長さに延伸することができ、そしてさらに他の実施態様では、フィルムの初期長さの150%を超える長さに延伸することができる。
【0048】
[00109]フィルムを加熱してから延伸する場合、延伸中はフィルムを高温に保持するのが望ましい。フィルムはさらに、延伸温度未満の温度に自然冷却してから機械的応力を解放することができる。幾つかの実施態様では、温度をほぼ室温にまで下げてから機械的応力を解放するのが望ましい。
【0049】
[00110]機械的応力は、平行延伸(すなわち反対方向に)、垂直延伸(すなわち互いに直角の方向に)、平行と垂直の間の任意の角度での延伸、又は二軸延伸であってよい。
[00111]導電性ICPフィルムはさらに、化学的アニールにかけることができる。幾つかの実施態様では、化学的アニールは、三次ドーピング法として機能することができる。化学的アニールは、機械的アニールと併用される場合は、上記の機械的アニールプロセスの前でも、プロセス中でも、あるいはプロセス後でも行うことができる。
【0050】
[00112]本発明の導電性ICPフィルムは、プロトン酸と有機溶媒との溶液中にフィルムを浸漬することによって化学的にアニールすることができる。本発明の化学的アニールプロセスにおいて有用であると考えられているプロトン酸と有機溶媒は、前述したプロトン酸と有機溶媒から選択することができる。
【0051】
[00113]本発明のICPフィルムは、約10秒〜約120秒間浸漬することができ、幾つかの実施態様では約20秒〜約50秒間浸漬することができ、また幾つかの実施態様では約30秒間浸漬することができる。
【0052】
[00114]化学的アニールのための溶液は、有機溶媒中に約1%〜約10%のプロトン酸を含有してよく、幾つかの実施態様では約2%〜約8%のプロトン酸を含有してよく、また他の実施態様では約3%〜約7%のプロトン酸を含有してよい。化学的アニールのための溶液はさらに、2種以上のプロトン酸と2種以上の有機溶媒を含んでよい。
【0053】
[00115]化学的アニールのための溶液中に2種以上のプロトン酸が含まれる場合、プロトン酸の比は約1:1〜約3:1であってよく、幾つかの実施態様では約1.5:1〜約2.5:1であってよい。
【0054】
[00116]上記ドーピング方法のそれぞれをお互いと併用すると、得られるICPフィルムの導電率を三桁以上増大させることができる。
[00117]本発明に従って作製される一次ドーピング、二次ドーピング、及び/又は三次ドーピングしたICPフィルムは、金属様の導電性が求められる種々の用途に使用することができる。例えば、本発明のフィルムは、航空機や車両用の電磁波シールドコーティング;ならびに構造物、航空機や他の複合材料用の高性能センサー、及び/又は携帯可能な家庭用電化製品(例えば、コンピュータ用のバックアップ電源、電子信管、及び有機LED)のための腐食抑制コーティング;に使用することができる。本発明のフィルムはさらに、スーパーコンデンサ、バッテリー、及びスーパーコンデンサ/バッテリー組み合わせ物等のエネルギー貯蔵用途に使用することができる。
【0055】
[00118]ある1つの例(これに限定されない)では、本発明のICPフィルムは、スーパーコンデンサデバイス中のICP電極として使用することができる。ICP電極は、スーパーコンデンサに要求される導電率、電圧範囲、ストレージ容量、及び化学的安定性と環境安定性をもたらすように調整することができる。ICPベースのスーパーコンデンサは、4つのカテゴリーに分けることができる:1.タイプIのスーパーコンデンサは、正にドーピングした〔positively doped(p−doped)〕同じICPが両方の電極上に使用されている対称構造のスーパーコンデンサである。これらのスーパーコンデンサは、ポリマーの過酸化のために約0.75〜1.0Vという制限された電圧を有し、従ってエネルギー密度と出力密度が限定される。2.タイプIIのスーパーコンデンサは、p−ドーピングした異なるICPを各電極上に使用する。3.タイプIIIのスーパーコンデンサは、一方の電極に対しては負にドーピングした〔negatively−doped(n−doped)〕形態の同じICPを使用し、他方の電客に対してはp−ドーピングした形態の同じICPを使用する。4.タイプIVのスーパーコンデンサは、タイプIIに似た非対称構造物であるが、n−ドーピングした電極とp−ドーピングした電極に対して異なるICPが使用される。タイプIIIとタイプIVのスーパーコンデンサはともに、n−ドーピングしたポリマーとp−ドーピングしたポリマーを使用するので、これらはときどき一緒に論じられることがある。
【0056】
[00119]種々のカテゴリーのスーパーコンデンサのエネルギー密度と出力密度は、次のように算出することができ、ここでIは電流(アンペア)であり、Vは電位(ボルト)であり、Tdは放電時間(秒)であり、mはポリマー電極の全質量(グラム)である。
【0057】
【数1】
【0058】
[00120]ポリアニリンは、種々の電解質中での電気化学的安定性のために幾つかの用途に対して有用である。スーパーコンデンサデバイスにおける使用に対しては制限があるが、高い等価直列抵抗(ESR)と不可逆性のために、デバイス性能は良くない。スーパーコンデンサデバイス中にPANIを使用するための従来のアプローチは一般に、改良された電荷移動と減少したESR(これにより高い充放電速度が可能となる)を果たすために、支持体材料〔例えばカーボンナノチューブ(CNT)〕上に導電性ポリマーを使用することに重点が置かれた。しかしながら、CNTは高価であって、このような用途に使用すべく必要に応じて合成したり改質したりするのが困難である。
【0059】
[00121]本発明では、ICPフィルムをスーパーコンデンサ中に使用することができ、これにより該スーパーコンデンサは、CNT等の高導電性支持体を全く必要とせずに高いエネルギー密度と高い出力密度を示す。特定の理論で拘束されるつもりはないが、上記プロセスの1つ以上によって、結晶性ドメインを示す高導電性のポリマー鎖が形成される(これにより、エネルギー密度、出力密度、及びサイクル寿命に関して、スーパーコンデンサのデバイス性能の向上がもたらされる)場合は、構造特性相関性が存在すると考えられる。本発明はさらに、ステンレス鋼電流コレクタとICP電極との間の効率的な電荷移動をもたらす(これによりESRがより一層減少する)界面層(IFL)を使用してタイプIのスーパーコンデンサを製造することを含む。
【0060】
[00122]幾つかの実施態様では、ICPフィルムをペレット化してから電極として組み込むことができる。他の実施態様では、ICPフィルムはペーストの形態をとってよい。
[00123]幾つかの実施態様では、本発明のICP電極に炭素添加剤を組み込むのが望ましい。このような炭素添加剤としては、活性炭、カーボンブラック、及び当業界に公知の他の炭素添加剤の1種以上があるが、これらに限定されない。
【0061】
[00124]本発明のICPフィルムはさらに、タイプI、II、III、及びIVのスーパーコンデンサのいずれに対しても使用することができる。さらに、幾つかの実施態様では、同じスーパーコンデンサ中に異なるICPフィルムを使用するのが望ましい。
【0062】
[00125]図1は、本発明による典型的なタイプIコイン電池スーパーコンデンサデバイス2の概略図である。この概略図は、支持体4と接触している任意のスペーサーを有する支持体4を示している。第1の電極8は本発明のICPフィルムを含んでよい。前述したように、第1の電極8は、必要に応じて1種以上の炭素添加剤を含んでよい。幾つかの実施態様では、他の添加剤(例えば前記した添加剤)を第1の電極8中に組み込むのが望ましい。本発明のスーパーコンデンサ2はさらに、電解質10を含む。幾つかの実施態様では、電解質10と第1の電極8との間に、1つ以上の任意のセパレータ(図示せず)を組み込むのが望ましい。第2の電極14も存在する。第2の電極14は、第1の電極8と同じであっても、あるいは異なっていてもよい。第2の電極14と第1の電極8は通常、図1に示す典型的なスーパーコンデンサにおいては電解質10をはさんで反対側に存在する。スーパーコンデンサ2は、第2の支持体16をさらに含む。スーパーコンデンサは、必要に応じて、スプリング18及び/又は追加のスペーサー20をさらに含んでよい。
【0063】
[00126]スペーサーとして使用した場合に有用であると考えられる代表的な物質は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、他の電気絶縁性ポリマー、セラミック、及びこれらの組み合わせである。
【0064】
[00127]本発明に従って有用であると考えられる代表的な電解質は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−IM)、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li−IM)、タングストケイ酸、及びこれらの組み合わせの1種以上である。
【0065】
[00128]幾つかの実施態様では、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ブチルニトリル、及びこれらの組み合わせ等の溶媒を電解質中に組み込むのが望ましい。
【0066】
[00129]幾つかの実施態様では、ポリビニルアルコール等のポリマーとイオン性物質とを混合して本発明の電解質を形成させるのが望ましい。
[00130]さらに、幾つかの実施態様では、スーパーコンデンサ中に電極に隣接して界面層を組み込むのが望ましい。任意の界面層において有用であると考えられる代表的な物質は、金、白金、クロム、チタン、イリジウム、及びこれらの組み合わせの1種以上である。界面層が使用される場合、界面層は一般に、電極とスペーサーとの間に配置される。幾つかの実施態様では、界面層は、ICP電極の機械的安定性を高めるのに、ICP電極の電荷移動効率を高めるのに、及び/又はICP電極の電荷散逸を高める(より高い電位での作動が可能となる)のに有用である。
【0067】
[00131]さらに、本発明の電極のための支持体を使用するのが望ましい。支持体は、エネルギーを電極から離して伝えるのに有用である。例えば、本発明のICP電極は、ステンレス鋼(SS)ディスク等のディスク上にデポジットさせることができる。本発明に従って有用であると考えられる支持体は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、炭素、他の金属合金、及びこれらの組み合わせである。
【0068】
[00132]以下に実施例を挙げて、本発明の好ましい実施態様を説明する。本明細書における特許請求の範囲内の他の実施態様は、本明細書に対する考察、又は本明細書に開示の本発明の実施から、当業者には明らかであろう。本明細書では、実施例とともに代表的なものだけが説明されており、本発明の要旨は実施例の後に記載の特許請求の範囲によって示されている。
【実施例】
【0069】
実施例1
[00133]本実施例は、PAC1003(ポリアニリン−DNNSA)フィルムとPAC1007(ポリアニリン−DNNSA−SDP)フィルムの製造方法を説明する。
【0070】
[00134]PAC1003溶液の一次ドーピングしたポリアニリン溶液をクロスリンク社から得た。これらの溶液は、ポリアニリンとDNNSAを溶媒とともに含む。溶液中の溶媒は、キシレンとブチルセロソルブ(BCS)である。PAC1003の固形分は約45%である。スピン・コーティングとドロップ・キャスティングによって薄膜を作製するために、PAC1003を、キシレン/BCS(1/1重量比)を使用して約15%にまで希釈する(PAC1003−15%フィルム)。実施例では全てPAC1003−15%フィルムを使用し、特に明記しない限りPAC1003フィルムと呼ぶ。
【0071】
[00135]ここで使用した一次及び二次ドーピングしたポリアニリン溶液は、クロスリンク社製のPAC1007溶液として入手した。本溶液は、ポリアニリン、DNNSA、SDP、及び溶媒を含む。溶媒はキシレンとBCSである。PAC1007の固形分は約25%であった。スピン・コーティングとドロップ・キャスティングによって薄膜を作製するために、PAC1007を、キシレン/BCS(1/1重量比)を使用して約15%にまで希釈した(PAC1007−15%フィルム)。実施例では全てPAC1007−15%フィルムを使用し、特に明記しない限りPAC1007フィルムと呼ぶ。
【0072】
[00136]UV−Vis−NIRスペクトルのための薄膜サンプルを、ポリマー溶液(3ml)を使用してスライドガラス(1インチ×1インチ)上に作製した。脱イオン水、アセトン、及びイソプロパノール中に浸漬することによってスライドガラスを清浄にした。約15重量%の固形分を有するPAC1003サンプルの標準的な吸収プロフィールを図2に示す。PAC1003のスピンコーティングは、6000rpmのスピンコーティング速度にて約30秒行った。150℃で30分熱処理すると、約780nmでの吸収ピーク(PANI鎖のコイル様コンフォメーションにおけるポラロンバンドに帰属)が消失し、NIR領域(1000〜3300nm)においてブロードバンド(すなわち、自由キャリヤー吸収テール)が現われることが見出された。このことは、PANI鎖が拡張鎖コンフォメーションに変化したこと(すなわちフィルムの形成)を示している。
【0073】
[00137]図3は、上記スピンコーティング法に従って形成されるPAC1007フィルムの、150℃にて30分の熱処理前と熱処理後のUV−Vis−NIRスペクトル曲線を示す。NIR領域におけるブロードバンドは、拡張鎖コンフォメーションでのPANI鎖の存在(すなわちフィルムの形成)を示している。
【0074】
[00138]実施例における全てのフィルムの導電率は、1000オングストローム厚さのクロム−金二重層を4プローブ構造物上のコンタクトバス(contact bus)として使用して、室温にて測定した。フィルム厚さの測定は、原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して行った。記録されている厚さは、各サンプルに対して3つの測定点の平均である。厚さと導電率の測定に対しては、各配合物について少なくとも3つのサンプルを調製した。
【0075】
実施例2
[00139]本実施例は、PAC1003フィルムとPAC1007フィルムをPTSA−BCS溶液でドーピングする方法を説明する。
【0076】
[00140]この方法は、PAC1003フィルム又はPAC1007フィルムをPTSA−BCS溶液中に30秒浸漬することからなる。ドーピングすると、フィルムの厚さは、約400〜1000nmから約150〜300nmに減少する。湿潤状態のフィルムに対して穏やかなエアーブローを施してから、オーブン中で150℃にて約30分熱処理して高品質のフィルムを得る。
【0077】
[00141]PTSAドープPAC1003フィルムの熱処理後の導電率を表1に記す。209nmのフィルム厚さを有するPTSAドープPAC1003フィルムサンプルが、334S/cmという最大導電率を記録した。PTSA処理なしのPAC1003フィルムは、15〜20S/cmという導電率を記録した。
【0078】
【表1】
【0079】
[00142]熱処理後のPTSAドープPAC1007フィルムの導電率を表2に記す。249nmのフィルム厚さを有するPTSAドープPAC1007フィルムサンプルが、187S/cmという最大導電率を記録した。PTSA処理なしのPAC1007フィルムは、15〜20S/cmという導電率を記録した。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例3
[00143]本実施例は、PAC1003フィルムとPAC1007フィルムをPTSA−TSAm−BCS溶液にてドーピングする方法を説明する。
【0082】
[00144]フィルムをPTSA−TSAm−BCS溶液中に30秒浸漬した。ドーピングすると、後処理条件に応じて、PAC1003のフィルムの厚さは、約600〜1000nmから約150〜350nmに減少した。湿潤状態のフィルムに対して穏やかなエアーブローを施してから、オーブン中で150℃にて約30分熱処理した。
【0083】
[00145]PTSA−TSAmドープPAC1003フィルムの熱処理後の導電率を表3に記す。5%PTSAと0.5%TSAmのドーパント配合物溶液を使用して作製された、175nmのフィルム厚さを有するPTSA−TSAmドープPAC1003フィルムサンプルが、270S/cmという最大導電率を記録した。ドーパント配合物溶液中のTSAmの濃度が5%に増大しても、導電率は改良されず、フィルムの品質は向上しなかった。PTSA−TSAm処理なしのPAC1003フィルムは、0.16S/cmという導電率を記録した(図4を参照)。
【0084】
【表3】
【0085】
[00146]PTSA−TSAmドープPAC1007フィルムの熱処理後の導電率を表4に記す。2.5%PTSAと0.25%TSAmを含むドーパント配合物溶液を使用して形成される、1000nmのフィルム厚さを有するPTSA−TSAmドープPAC1007フィルムサンプルが、400S/cmという最大導電率を記録した。PTSA−TSAm処理なしのPAC1007フィルムは、15〜20S/cmの導電率を記録した(図5を参照)。
【0086】
【表4】
【0087】
[00147]図6は、PAC1003フィルムとPTSA−TSAmドープPAC1003フィルムの吸収曲線を示す。PTSA−TSAmドーピングすると、約780nmでの吸収ピーク(PANI鎖のコイル様コンフォメーションにおけるポラロンバンドに帰属)が消失し、NIR領域においてブロードバンドが現われることが見出された。このことは、PANI鎖が拡張鎖コンフォメーションに変化したことを示している。
【0088】
[00148]図7は、PAC1007フィルムとPTSA−TSAmドープPAC1007フィルムの吸収曲線を示す。PTSA−TSAmをドーピングすると、NIR領域に存在するブロードバンドが高エネルギー領域に広がっていくようであり、このことは、フィルムにおいて、結晶性ドメインの増大とPANI鎖の最密充填が起きていることを示している。
【0089】
実施例4
[00149]本実施例では、1.5mlの配合物溶液をガラス支持体上にキャスティングし、ドラフト中で一晩風乾し、次いでオーブン中にて150℃で30分熱処理することによって自立性のPAC1003フィルムとPAC1007フィルムを製造した。フィルムをPTSA/BCS(5w/v%)又はPTSA/TSAm/BCS(5/0.5w/v%)のドーピング溶液中に30秒浸漬し、安全カミソリの刃を使用して自立性フィルムとしてカットした。自立性のPAC1007フィルム(特に、PTSAドーパント溶液を使用して製造されたフィルム)は堅くて脆いことがわかった。特定の理論で拘束されるつもりはないが、既に結晶性のPAC1007フィルムに結晶性のPTSA化合物を加えることによって引き起こされる高い結晶化度によるものと考えられる。同様に、少量のTSAm(存在する場合)がサンプルに可塑化効果をもたらし、これにより導電性に悪影響を及ぼすことなくフィルムはフレキシブルになる、と考えられる。
【0090】
実施例5
[00150]本実施例では、前記した典型的な蒸気清浄化法について説明する。PAC1003フィルムを、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、又はジイソプロピルフェノールの蒸気に30分さらした。気化させようとする溶液の入ったビーカーを、チモールの場合は150℃、カルバクロールの場合は100℃、そしてイソプロピルフェノールとジイソプロピルフェノールの場合は130℃に制御された表面温度を有するホットプレート上に置いた。蒸気清浄化すると、フィルムの厚さは、約400〜1000nmから約150〜500nmに減少する。蒸気清浄化したサンプルを引き続き、オーブン中にて150℃で30分熱処理した。次いで、蒸気清浄化したPAC1003フィルムを、PTSA(BCS中5%w/v)溶液中にて30秒、あるいはPTSA/TSAm〔1:1v/v(BCS中PTSA5%w/v+TSAm0.5%w/v)〕溶液中にて約30秒浸漬ドーピングした。ドーピングすると、フィルムの厚さは約150nm〜約300nmに減少した。湿潤フィルムに対し穏やかなエアーブローを施し、次いでオーブン中にて150℃で30分熱処理した。
【0091】
[00151]蒸気清浄化したPAC1003フィルムの導電率を、サンプルフィルムの厚さとともに表5〜7に記す。カルバクロールとチモールで蒸気清浄化したPAC1003フィルムサンプルは、それぞれ48.5S/cmと25.2S/cmという最大導電率を記録した。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
[00152]図8は、チモールによる中間の蒸気清浄化を施してPTSA−TSAmをドーピングしたPAC1003フィルムの吸収曲線を示す。チモールによる蒸気清浄化を行うと、約800nmでの吸収ピーク(PANI鎖のコイル様コンフォメーションにおけるポラロンバンドに帰属)が消失し、代わりにNIR領域にブロードバンドが現われることが見出された。このことは、PANI鎖が拡張鎖コンフォメーションに変わったことを示している。図9からわかるように、他の蒸気による中間の蒸気清浄化工程を含むPAC1003フィルムに対しても、同様の傾向が観察された。
【0096】
実施例6
[00153]本実施例では、PANIフィルムを機械的アニールするための一般的な方法について説明する。IRランプを熱源として使用してPANIフィルムサンプルを65℃に加熱してから、初期長さの140%まで機械的延伸を施した。フィルムを、延伸状態で約5分保持した。延伸速度は重要なことではなく、約0.1cm/分〜約5cm/分の範囲であってよい。延伸後、サンプルを室温に冷却し、機械的応力を解放した。機械的アニールにかけられたフィルムは、延伸後でも、テフロンに対する接着性と保全性を保持した。4プローブ導電率装置を使用して、平行抵抗と垂直抵抗(延伸方向に対して)を測定した。
【0097】
実施例7
[00154]本実施例では、PANIフィルムを化学的アニールするための一般的な方法について説明する。PANIフィルムを、BCS中5%(w/v)PTSAあるいは[BCS中PTSA5%(w/v)+BCS中TSAm0.5%(w/v)]の1:1(v/v)中に30秒浸漬することによって、PANIフィルムを化学的アニールにかけた。
【0098】
[00155]機械的アニールと化学的アニールを施したPAC1007フィルムの4プローブ抵抗は2.5オームの抵抗を示した。未延伸のPAC1007フィルムは42オームの抵抗を示した。平行抵抗と垂直抵抗を図10に示す。特に、140%に延伸してから1:1v/v[PTSA5%+TSAm0.5%]で化学的アニールを施したPTFE上のPAC1007フィルムは、極めて高い導電率を示した(表8)。延伸したPAC1003フィルムに対する4プローブ抵抗データにおいても、同様の傾向が図11に示されている。
【0099】
【表8】
【0100】
実施例8
[00156]ゴムガスケットで気密シールされた器具を含むコイン電池を使用して、図1に示すようなタイプIの半導体コイン電池中にPANIフィルムを組み込んだ。アービン社製の充放電試験機を使用して、比キャパシタンス、エネルギー密度、及び出力密度のデータを得、クロノポテンショメトリーを使用してサイクル寿命を評価した。電性ポリマー電極の導電率は、デバイス性能に及ぼす影響を調べるために系統的に変化させる重要な設計要素であった。フィルムの厚さを変えることによって、及び/又は、イオン液体もしくはイオン液体の混合物を電解質として使用することによって、ICPフィルムの導電率を変化させた。
【0101】
[00157]3つの異なる導電率のPANI電極フィルム(0.1S/cmのPAC1003、250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003、及び1000S/cmの二次ドーピングしたPAC1003)を、SSディスクを含む種々の支持体上にて、所望するフィルム厚さとモルホロジーになるよう作製した。1000S/cmの導電率を示す二次ドーピングしたPAC1003PANI電極を、以後“金属性PANI”と呼ぶ。別のバリエーションでは、金の界面層(IFL)をSSディスク上にデポジットさせてからPANIフィルムを被覆し、これにより導電率が4000S/cmに向上した。使用した電解質はEMI−IM〔1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕(イオン液体電解質)であり、GORE PTFE(厚さ0.0006”)をセパレーター材料として使用した。こうして得られたデバイスの重量は約4〜5gであることが分かった。スペーサーの数は2〜4であり、スタックの高さは0.085〜0.11”であった。
【0102】
[00158]導電性ポリマー電極を使用するコイン電池スーパーコンデンサを、充放電スキャンとサイクリックボルタンメトリースキャンによって、比キャパシタンスに関して特性決定した。サイクル安定性は、ガムリー社製定電位機器を使用してクロノポテンショメトリーによって特性決定した。
【0103】
【化4】
【0104】
A) デバイス性能に対する導電性ポリマーの導電率の役割
I. 250S/cmの導電率を示す二次ドーピングしたPAC1003電極を含むコイン電池
[00159]充放電サイクル実験は、250S/cmの導電率を示す二次ドーピングしたPAC1003を電極材料として使用するコイン電池に対する最適のエネルギー密度と出力密度が1.92Wh/Kgと42.72W/Kgであることを示している(図11)。さらに詳細には、1mAを10秒(0.8Vに充電)及び−1mAを10秒(0Vに放電)加えることによって、充放電サイクル実験を行った。コイン電池の放電時間は7.8秒であった。サイクル実験を最大で500サイクルまで行い、全体にわたって電気化学的安定性を観察した。充放電サイクルの結果を図12に示す。
【0105】
[00160]PAC1003ベースのコイン電池に対し、クロノポテンショメトリーを使用して、EMI−IM電解質媒体中にて最大30,000サイクルまでの充放電サイクルについて検討した。全てのPAC1003ベース電極に対し、初期の電位降下を除いて最大で10,000サイクルまでは、安定な電気化学電位窓が観察された(図13において、上側のラインは充電状態を示し、下側のラインは放電状態を示す)。しかしながら、相当量の電流負荷にさらされたという事実(1.5mA/−1.5mA−第1の10,000サイクル、3.0mA/−3.0mA−第2の10,000サイクル、3.0mA/−3.0mA−第3の10,000サイクル)を考慮すると、250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003電極に対し、全体的な電位降下はかなり大きい(出発電位の約50%まで)と思われる(図13b、13C、13dを参照)。
【0106】
[00161]図14からわかるように、250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003電極を使用するコイン電池の比キャパシタンスは、最大で10,000サイクルまでのサイクルにて10.07F/gから9.67F/gに低下した。しかしながら、初期状態のPAC1003を使用するコイン電池の場合、比キュパシタンスは、最大で10,000サイクルまでのサイクルにて0.09F/gから0.04F/gに低下した。
【0107】
II. 金属性PANI(1000S/cm)電極を使用するコイン電池
[00162]観察された一般的な傾向は、PANIフィルムの導電率の向上という、(幾つかのファクターによる)デバイス性能の向上であった(表9と図15を参照)。金属性PANIフィルムを含むコイン電池の比キャパシタンス、エネルギー密度、及び出力密度(表10と図15のプロットにて示されている)、そしてさらにサイクル安定性が図16に示されている。このデバイスは、使用される実験条件に応じて比キャパシタンスが11.0〜20.0F/gの範囲であることが見出され、±1mAの充放電電流サイクルに対して、少なくとも30,000充放電サイクル(表11と図17を参照)までの安定な電圧窓が観察された。
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】
【0110】
III. ポリアニリン層とSSディスクとの間の金界面層(IFL)の存在がコイン電池デバイス性能に及ぼす影響
[00163]SSディスクと導電性ポリマー電極との間に金界面層(IFL)を組み込むと、IFLなしの電極における放電ごとの最初に通常観察される、望ましくない(しかしながらかなりの)IR/抵抗降下を大幅に減少させる(図18)ことによって役立つ。PANI被膜とSSディスク電流コレクターとの間に界面層(IFL)が存在すると(図18を参照)、安定なデバイス動作の電位窓が広くなることで、そしてデバイスの比キャパシタンスが改良されることで(図19、表11と12)コイン電池デバイスの性能が向上する。金IFLの厚さを10nmと100nmの間で変えたところ、厚さを10nmより増大させても、デバイス性能に対していかなる有意な影響も及ぼさない、ということが見出された(図19)。このデバイスのサイクル安定性は、少なくとも最大で30,000サイクルである(図20を参照)。
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
B) デバイス性能に及ぼす導電性ポリマーの質量(又は厚さ)の影響
[00164]SSディスク上に被覆された金属性PANIフィルムを種々の量にて含有する一組のコイン電池(いかなるIFLも存在しない)に対して充放電サイクルを施した。より少ない質量(0.31mg)のPANIを組み込んだコイン電池は、比較的多いポリマー質量(1.54mgのPANI)を有するデバイスと比べて、より高いエネルギー密度(図21)とより速い放電特性を示した。
【0114】
C) デバイス性能に及ぼすイオン液体をベースとする電解質組成物の影響
[00165]コイン電池に関する研究のほとんどは、イオン液体であるEMI−IM〔1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕を電解質として使用することを伴った。別のイオン液体成分〔例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li−IM)〕を含むイオン液体混合物がコイン電池デバイス性能に及ぼす影響も検討された。Li−IMを電解質組成物中の成分として組み込むことによって、初期状態のEMI−IM(すなわち、Li−IMが存在しない)に対して得られたデータと比較して、エネルギー密度の少なくとも2ポイントの急増が観察された(表13と図22を参照)。
【0115】
【表13】
【0116】
実施例9
[00166]本実施例では、本発明のドープフィルムと炭素配合物を電極として使用してスーパーコンデンサを作製した。幾つかの配合物を異なる比にて作製した。
【0117】
[00167]PAC1003(固形分45%)を50mlのビーカーに入れた。同じ体積量のメタノールを加え、5分撹拌した。PAC1003はメタノールに溶解せず、過剰のDNNSAだけを抜き取った。これにより、DNNSAがドーピングされたポリアニリンの沈降と濾過が可能になる。真空濾過装置をセットした。沈降した固体のドープPAC1003を濾過し、メタノールで洗浄した。室温で、次いで150℃で30分乾燥した。次いで粉末を乳鉢中にて微粉砕した。
【0118】
[00168]このPAC1003粉末を使用して、PAC1003粉末を75重量%、活性炭を20重量%、及びカーボンブラックを5重量%含有する配合物を作製した。他の配合物(例えば、45%のPAC1003、50%の活性炭、及び5%のカーボンブラック)も作製した。粉末形態の代わりにPAC1003の45%固形分配合物も検討した。これは必然的に、湿重量のPAC1003を使用すること、次いで最終組成物を乾燥することを伴った。
【0119】
[00169]PANI DBSA(JJH2140)は既に粉末形態であった。活性炭及びカーボンブラックとの配合物は、組成比に関してPAC1003のそれと同様であった。
[00170]ペレットを作製するために、秤量したサンプルを、サンプルプレプ(SamplePrep)からペレットダイ加圧装置中に配置し、圧力を加えた。最適のセッティングを確立するために、最初に種々の圧力を検討し、次いで他のペレットに適用した。
【0120】
コイン電池の作製と特性決定
セパレーター=厚さ23μmのゴア(Gore)セパレーター
電解質=EMI−IM
[00171]ペレット(13mm)をステンレス鋼ディスク上に配置し、300psiにて圧着した。アービン社製バッテリーテスター(Arbin Battery Tester)を使用して、コイン電池を、種々の充電/放電条件(0.1mA、1mA、10mA、100mA、及び1〜3V)とスキャン速度にて分析した。
【0121】
[00172]充放電サイクル時においてホールドタイムを組み込むことの影響を調べた。これは、0秒、2秒、及び10秒での最大値と最小値にて、装置をホールド電位にセッティングすることによって行った。これは、ホールドタイムが誤った結果をもたらすことがあるという思いがけない新事実を伴った。
【0122】
コイン電池の電気化学的‘活性化’
[00173]厚膜やペレットを使用して作製したコイン電池は、活性物質の量が増大するにつれてエネルギー密度(活性物質のWH/Kg)が減少することを示した(図23)。これは、厚膜における電子回路に問題があることと、電解質が活性物質全体と効率的に通じ合えないことから引き起こされると考えられる。このため、電極材料のほとんどが不活性になる。活性化するために、先ずコイン電池をゆっくりした充電速度で充電して、電極材料を通る電子経路をつくり出した。電子経路を確立するために高電流も使用した。
【0123】
PANI/DBSA炭素繊維
[00174]この配合物は、より良好な充放電能力を示した。しかしながら低電流では、PANI/DBSA/炭素繊維コイン電池は、最大1.0Vまでは充電できなかった。1Vの充電に達するには数日かかるようである。PANI対炭素繊維の3:1比と2:1比との間に有意差はみられなかった。
【0124】
[00175]さらに、コイン電池1個当たりの充電されたエネルギーは、放電されたエネルギーと比較して著しく高い、ということが明らかとなった。より高い電圧では、これらのデバイスは、低電流の場合より多くのエネルギーを放電することができた(図24)。
【0125】
【表14】
【0126】
充電エネルギーと放電エネルギーに及ぼすホールドタイムの影響
[00176]下記のエネルギー算出式からわかるように、充電時間と放電時間は、算出における大きなファクターである。PANI/DBSA/炭素繊維コイン電池を、0秒、2秒、及び10秒のホールドタイムにおける充放電に関して特性決定した。得られた結果を図25に示す。
【0127】
【数2】
【0128】
図26と27に示す充放電サイクルから、低電流では、特定のデバイスが、予想外のことにより高いIP降下を示す、ということがわかる。電流がより高いと、電流は電位の変化についていくことができない。しかしながら、蓄積されたエネルギーはごくわずかであった。
【0129】
PAC1003:活性化粉末:カーボンブラックペレット
[00177]既知量のPAC1003粉末をプレスしてペレットを形成させることによってPAC1003ペレットを作製した。これらのペレットをコイン電池中に組み込んだ。PAC1003ペレットコイン電池は、極めて速やかに充電されることが観察されたが、10mA以上ではエネルギーはほとんど蓄積されなかった。しかしながら、これらのペレットによって蓄積されたエネルギーは、PAC1003を使用するフィルムベースのコイン電池からみると大幅な改良となった。コイン電池は、低電流においてはより高い効率を示したが、出力はかなり低かった(0.001J/デバイス放電エネルギー、及び活性物質1Kg当たり1.7W)。
【0130】
[00178]エネルギーと出力を向上させるために、活性炭はエネルギー密度を高めるように選定し、カーボンブラックは電子伝導率を高めるように選定した。ここで検討・報告する異なった配合物は、PA1003:活性炭:カーボンブラックがそれぞれ、75%:20%:5%及び45%:50%:5%の配合物である。ペレットは2000psiにてプレスし、EMI−IMは電解質である。充放電曲線を図28に示す。
【0131】
【表15】
【0132】
[00179]図29からわかるように、PAC1003粉末を活性炭及びカーボンブラックと配合すると、エネルギー密度と出力密度の増大を示した。炭素粉末とカーボンブラックを加えると、エネルギー密度が向上したが、充電時間が大幅に増大した。充放電電流がより低いと、エネルギー密度は極めて高かった。このことは、スーパコンデンサとって典型的なことである。
【0133】
[00180]本実施例は、ペレット中に活性炭を組み込むこと、及び活性炭の量を20%から50%に変えることに利点がある(エネルギーが増大するが、出力は不変のままである)、ということを示す。このことは、エネルギー容量に関する材料特性が改良され、このとき電子伝導特性に著しい悪化が見られない、ということを示している。
【0134】
【表16】
【0135】
[00181]PAC1003/活性炭/カーボンブラック配合物はさらに、図30に示すように、10mA及び1Vにてより高い充電エネルギーを示したが、放電エネルギーは低かった。このことは、放電時におけるイオン移動度がごく小さいということを示している。高電流では、IRの降下が高かった。低電流では、IRの降下は低かったが、出力も低かった。
【0136】
活性炭対照標準(Activated Carbon Control)
[00182]性炭のペレットは一般に、密着性とペレット保全性を補助するよう、少量のPTFEを組み込むことによって作製される。ここで使用する活性炭の場合、これは不可能であった。4000psiでペレットをプレスしても、ペレットの保持はできなかった。さらに、活性炭中に5重量%〜20重量%のPTFEを組み込んでも、ペレットは形成されなかった。ペレットを作製するために、より高濃度のPTFE結合剤を使用すると、形成されるペレットは、強度が低く、コイン電池製造上の厳しい取扱いに耐えることができなかった。結合を補助するために、PTFEの代わりにコロイダルグラファイトを使用した。テッド・ペラ社(カリフォルニア州レディング)から入手のコロイダルグラファイトは、高粘度ペーストの形態をとっていた。ペレットを作製するために、0.86gの活性炭、0.06gのカーボンブラック、及び2.11gのコロイダルグラファイトを秤量して乳鉢中に入れた。これらをよく混合し、オーブン中にて150℃で15分乾燥してイソプロパノールを除去した。得られた固体を圧潰し、微粉砕してからペレットを作製した。2000psiでプレスしたペレットは堅く、コイン電池に使用するのが容易であった。
【0137】
[00183]得られた値は、電圧窓が3Vに広げられるにつれて出力とエネルギーの系統的な増大を示した。最良の値は、0.017J/秒の場合に2.2J/デバイスにおいて見られた(図31)。
【0138】
[00184]PAC1003/活性炭/カーボンブラック(45%:50%:5%)最良組成物によるコイン電池を、活性炭対照標準の場合と類似の条件に通した。活性炭対照標準コイン電池の放電エネルギーとPAC1003複合物のそれとを比較すると、これら2つは類似の傾向に従うようであった(PAC1003複合物のほうが、活性炭対照標準と比較してわずかに改良された性能を示す)。ここで使用したPAC1003複合物の配合は、PAC1003/活性炭/カーボンブラックが45:50:5であった。PAC1003配合物のエネルギー密度のほうがより高かった。出力はほぼ同等であり、活性炭対照標準のほうがやや高い出力を示した。活性炭対照標準がPAC1003配合物と比べて同等以上の出力密度を有するという矛盾は、結合剤として使用された導電性のグラファイトの存在によるものであった。活性炭は、PAC1003と配合すると充放電サイクルを安定化させるのに役立ち、電圧窓を広げた。10mA及び1Vにて100サイクルを施した後、PAC1003配合物は、1サイクル当たりの電荷の増大を示しただけであったが、活性炭対照標準は電荷を消失させた。これらの結果は、図32と33に示されている。電圧が増大するにつれて、PAC1003/活性炭/カーボンブラック(9:10:1)は、益々活性炭対照標準に類似して挙動する。
【0139】
[00185]効率(実際に放電された電荷の量のパーセント)を算出した〔効率=放電エネルギー(J/デバイス)×100%/充電エネルギー(J/デバイス)〕。2つのデバイスは、低電圧でも高電圧でも類似の効率を示した。PAC1003複合物は、10mAでは効率が1.5Vで最大に増大したが、活性炭対照標準は、図34からわかるように、最大で約3.0Vまではより高い効率を保持した。
【0140】
PANI/DBSA
[00186]PANI/DBSA(JJH2140)のコイン電池を作製した。PANI/DBSAは粉末形態をとっていた。ペレットを形成させるための最良の圧力は、2000psiであることが観察された。より高い圧力では、コイン電池の性能は良くなかった。上記PAC1003の場合と同じ方法を使用して、PANI/DBSAと炭素との配合物を作製した(すなわち、75%PANI/DBSA:20%活性炭:5%カーボンブラック及び45%PANI/DBSA:50%活性炭:5%カーボンブラック)。
【0141】
[00187]PAC1003配合物において見られたように、PANI/DBSAコイン電池は、より低電流においてより高いエネルギーを、そしてより高電流においてより高い出力密度を示した。しかしながら、より高電流では、IRの降下が大きく、このことがデバイスのエネルギー出力に不利に作用した。図35からわかるように、PANI/DBSAコイン電池は、PAC1003コイン電池の性能を凌いだ。
【0142】
【表17】
【0143】
【表18】
【0144】
【表19】
【0145】
[00188]概して、PANI/DBSA/活性炭/カーボンブラックが最良の結果を有した。1mA及び1Vでは、該デバイスは、PAC1003/活性炭/カーボンブラックが0.11J/デバイスを有するのに比較して1.37J/デバイスを有した。薄膜ベースのコイン電池に対する従来の結果から、これは100オーダーの向上である。
【0146】
[00189]J/秒に関して、PANI/DBSA複合物とPAC1003/カーボン複合物はほぼ同等の値を有した。このことは、初期状態のPAC1003は、DBSAと比較して充分なエネルギー貯蔵能力をもたないが、エネルギー移動に有効でありまたPANI/結合剤とともに導電性結合剤として役立つ、ということを示している。
【0147】
電気化学的活性化
[00190]コイン電池においてみられるエネルギー密度と出力密度が低いため、最大で100サイクルまで繰り返し、最初と最後のサイクルを比較することによって電気化学的活性化を試みた。この処置は、充放電サイクルが増大したときに改良を示すものと推測された。
【0148】
[00191]図36、37、38、及び39からわかるように、一般に、試験したデバイスに対しては、大幅な改良も悪影響も観察されなかった。
サイクル安定性に及ぼす電圧の影響
[00192]サイクル安定性に及ぼす電圧の影響は、図40において観察することができる。
【0149】
実施例10
[00193]PAC1003/炭素配合物とPANI/DBSA/炭素配合物を作製するのに使用されるステンレス鋼ディスクに及ぼす10nM金界面層(IFL)の影響を比較するために、一組のステンレス鋼ディスクを10nmの金で被覆し、これを使用してペレットベースのコイン電池を作製した。記録されたデータは、1Vにて10mAと1mAに対するデータである。図41〜43のそれぞれに対し、順番は以下のとおりである:1.PAC1003;2.IFL SSディスクを含むPAC1003;3.PAC1003/活性炭/カーボンブラック;4.IFL SSディスクを含むPAC1003/活性炭/カーボンブラック;5.PANI/DBSA;6.IFL SSディスクを含むPANI/DBSA;7.PANI/DBSA/活性炭/カーボンブラック;8.IFL SSディスクを含むPANI/DBSA/活性炭/カーボンブラック
[00194]PANI/DBSA/活性炭/カーボンブラック配合物とPAC1003/活性炭/カーボンブラック配合物を75%:20%:5%(w/w)の比で作製した。金界面層を使用することによる顕著な差異や利点は観察されなかった。しかしながら、より高い電圧においては有意な影響を観察することができた。
【0150】
実施例11
[00195]本実施例では、PAC1003とPANI/DBSAのペレット化した電極とペーストベースの電極を使用してコイン電池を作製した。
【0151】
[00196]容量を増やし、IRの降下を少なくするために、PAC1003に前述のPTSA/TSAmをドーピングした。図44と45からわかるように、この材料の比キャパシタンスが増大し、PAC1003PTSA/TSAmペレットコイン電池に対してはIR降下の証拠が認められた。
【0152】
【表20】
【0153】
【表21】
【0154】
[00197]表21からわかるように、PAC1003/PTSA/TSAmをベースとした電極は、PAC1003ベースの電極より優れた性能を示した。高電圧では、どちらの電極もより高い電荷を有するが、放電反応はゆっくりしており、与えられた時間に対して電荷の一部だけがもとに移動される、ということが観察された。1Vでは、たとえ電荷量がより低いとしても、トランスファー・バック(transfer back)は効率的であり、従ってポリアニリンは最大で1Vの電位までは安定であり、安定性は電位の増大とともに低下する、という従来の観察が支持される。
【0155】
PAC1003と活性炭のペースト配合物
[00198]PAC1003/活性炭ペーストをベースとする電極配合物は、出力とエネルギーの両方に対して改良を示す。ペレットに対する比キャパシタンスが3F/gから15F/gに増大するのと同時に、エネルギーは、図46と47に示すのと同じ条件で、10mA、1.2Vにて1.8Wh/Kgから4Wh/Kgに増大した。
【0156】
実施例12
[00199]以下は、ドーピング可能な新規ICPの合成の実施例である。本実施例は特に、ポリ(BEDOT−BBT)の合成を説明しており、モノマーは、ドーピング可能な新規ICPを合成する際に使用する上での有望性(promise)を示している。
【0157】
ベンゾジチアゾールの臭素化
【0158】
【化5】
【0159】
[00200]オーブン乾燥した250mlの三つ口丸底フラスコに、還流冷却器、滴下漏斗、及びガラス製ストッパーを接続した。フラスコ中にマグネチックスターラー・バーを置いた。還流冷却器の頂部に、強塩基溶液中へのガス換気ラインを接続した。次いで、ベンゾジチアゾール1(2.8g,20.6ミリモル)と50mlのHBr(40%)をフラスコ中に仕込んだ。滴下漏斗中に臭素(3.3ml,64.4ミリモル)を入れ、反応混合物を還流した。還流混合物中に臭素をゆっくり(30分余りで)滴下した。臭素の滴下完了後、混合物をさらに2時間還流してから、室温に冷却した。得られたオレンジ色スラリーを氷水中に注ぎ込んだ。沈殿物を濾過によって採集し、得られた固体を水で洗浄し、減圧にて一晩乾燥して、粗製固体2を95%の収率で得た(6.05g)。この生成物を、アセトンで再結晶することによって精製した。最終的には、上質淡黄色の針状結晶が84%以内の収率で得られた(5.06g)。化合物2は13C−NMRによって確認した。13C−NMR(100MHz,DMSO)δ113.78,133.47,152.97
2) 4,7−ジブロモベンゾジチアゾールのニトロ化
【0160】
【化6】
【0161】
[00201]化合物2(4.0g,13.6ミリモル)を、濃硫酸と濃発煙硝酸との混合物(1/1,40ml)中に、氷浴中にて0〜5℃でゆっくり加えた。無職の混合物がオレンジ色スラリーに変わった。化合物2を加えた後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。反応混合物を氷水中に注ぎ込んで淡黄色の沈殿物を得た。固体を濾過し、水で洗浄した。減圧乾燥後の粗製固体の収量は2.5gであった。アセトン/ヘキサン(1/2)を溶離液とする、シリカゲルを使用するカラムクロマトグラフによって生成物を分離した。Rf=0.26(アセトン/ヘキサン=1/2において)。生成物は、DMSO−d6中での13C−NMRによって確認した。13C−NMR(100MHz,DMSO)δ112.05,144.35,152.20
3) EDOT−SnBu3
【0162】
【化7】
【0163】
[00202]EDOT(6.39g,45ミリモル)をフレッシュなTHF(50ml)中に溶解し、この溶液を、ドライアイス浴中にて−78℃に冷却した。ブチルリチウム(28.1ml,ヘキサン中1.6M,45ミリモル)を滴下し、混合物を−78℃で1時間撹拌した。塩化トリブチルスズ(45ml,ヘキサン中1M,45ミリモル)を滴下し、一晩撹拌しながら混合物を室温に自然加温した。水(30ml)を加えてからエーテル(50ml)を加えた。相を分離し、有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして蒸発乾燥して、生成物を幾らか褐色の油状物(10.8g,79%)として得た。化合物3を、精製せずに次の工程において使用した。
【0164】
4) BEDOT−BT(NO2)2
【0165】
【化8】
【0166】
[00203]火炎乾燥した100mlの三つ口丸底フラスコに、25mlのTHFを加え、次いで0.23g(0.33ミリモル)のPd(II)Cl2(PPh3)2と5.83g(14ミリモル)のトリブチルスズEDOT(化合物3)を加えた。この溶液を30分ガス抜きした。次いで2.59g(6.7ミリモル)の化合物4を加え、溶液を不活性雰囲気下で3時間還流した。溶液を冷却し、減圧にて溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3,SiO2)により、2.29g(68%)の赤色固体が得られた。Rf=0.23(CHCl3中にて)。13C−NMR(100MHz,DMSO)δ64.84,65.32,104.70,106.61,120.66,141.40,142.36,142.97,152.78
5) BEDOT−BT(NH2)2
【0167】
【化9】
【0168】
[00204]オーブン乾燥した100mlの三つ口丸底フラスコに冷却器を装備し、これに1.04g(2.0ミリモル)の化合物5と1.34g(2.4ミリモル)の鉄粉末を加えた。これに38mlのガス抜きしたAcOHを加えた。反応混合物を100℃で3時間加熱してから、自然冷却した。明るい黄色の固体を濾過によって採集し、水、重炭酸ナトリウム飽和水溶液、及び水の順序で洗浄した。減圧乾燥後、0.72g(81%)の黄緑色固体が得られた。この生成物を、精製せずに次の反応において使用した。1H−NMR(300MHz,DMSO)δ4.22(s,8H),5.70(s,4H),6.73(s,2H);13C−NMR(100MHz,DMSO)δ64.80,65.32,99.23,100.34,109.85,139.63,141.37,142.17,151.34
6) BEDOT−BBT
【0169】
【化10】
【0170】
[00205]オーブン乾燥した25mlの三つ口丸底フラスコに、0.55g(1.2ミリモル)の化合物6、6mlの無水ピリジン、0.23ml(2.6ミリモル)のN−チオニルアニリン、及び0.28ml(2.2ミリモル)のTMSClを加えた。この溶液混合物を80℃で一晩加熱した。反応混合物を、自然冷却し、水中に注ぎ込み、濾過によって暗紫色固体を採集した。カラムクロマトグラフィー(CH2Cl2,SiO2)により、0.46g(84%)の暗紫色固体が得られた。Rf=0.15(DCM中)。化合物7は、DMSO−d6中にそれほど溶解しなかった。従ってNMRによる特性決定は信頼性に欠ける。
【0171】
7) ポリ(BEDOT−BBT)
【0172】
【化11】
【0173】
[00206]モノマーのクロノアンペロメトリー(定電位)を、0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(nBu4NClO4,TBAP)を含有するDCM中に5mMもしくは1mMのモノマーを混合して得られる溶液が入った3コンパートメントH−電池に対し、プリンストン・アプライド・リサーチ・アドバンスト・エレクトロケミカル・システム(Princeton Applied Research Advanced Electrochemical System)PARSTAT2273を使用して0.8Vの電位で行った。使用する前に、不活性ガスのバブリングによって溶液からガス抜きした。広い面積のステンレス鋼SSもしくはAu界面層SS(Φ=0.75インチ)、Ptガーゼ、及び0.1MのTBAP/ACN中10mMのAg/AgNO3を、それぞれ作用電極、対電極、及び参照電極として使用した。ポリマーのレドックス特性の特性決定は、モノマーを含有しない電解質を0.1MのTBAP/ACNもしくは0.1MのTBAP/PC中に溶解して得られる溶液中にて行った。溶液上に、不活性ガスのストリームを保持した。
【0174】
[00207]UV−Vis−NIRスペクトルを測定するために、ポリマーを、CV法の場合と同じ条件下でITO被覆ガラス電極上にデポジットさせた。脱ドーピングは、電気化学的還元によって行った(負電位を−0.4Vにて1分加える)。
【0175】
[00208]上記したように、本発明のポリマーは、0.1MのTBAP/DCM中5mMもしくは1mMのモノマー濃度溶液から、Ptボタン、Auボタン、又はITO被覆ガラスのそれぞれ上に、リピートスキャンサイクリックボルタンメトリー法によって電気化学的に重合させた(デポジットさせた)(図48)。PtもしくはAuボタン(Φ=0.2cm)、Ptワイヤ、及びAg/AgNO3を、それぞれ作用電極、対電極、及び参照電極として使用した。ポリマーのCVは、モノマー非含有の電解質(TBAP/ACN中0.1M)中にて行った。実験中は、溶液上に窒素ガスのストリームを保持した。ポリマーは、5mMもしくは1mMのモノマー溶液を使用して、上記と同じ条件にてサイクリック・ポテンシャル・スウィープ法(a cyclic potential sweep technique)によって製造した。得られたポリマーは、暗緑色の不溶性フィルムであった。
【0176】
[00209]電着させた全ての暗緑色ポリマーフィルムをモノマー溶液から取り除き、個別の電解質溶液(0.1M TBAP/ACN)で穏やかにすすぎ洗いし、個別の電解質溶液(0.1M TBAP/ACN)中に浸漬した。レドックスプロセスを特性決定し、スイッチングの際に繰り返される電気化学的分解に対するポリマーフィルムの安定性を調べるために(図49と50)、フィルムを、そのスイッチングポテンシャルが電気化学的拡散テイルの外側のポイントとして選択される幾つかの動電位スキャンに付した。ポリマーのCVは、Ptボタン作用電極での酸化(p−ドーピング可能)に対して0.22VのE1/2(V対Ag/AgNO3)を示したが、還元レドックスプロセスは、明確には示されなかった。なぜなら、アニオン性ラジカルが湿気と酸素によって劣化したからである。図51と52−(A)は、レドックスサイクリックピークの低下が示されておらず、このポリマーにおけるレドックスプロセスが極めて安定であることが例証されている。
【0177】
[00210]0.1MのTBAP/PC中にて窒素バブリングのもとで、p−ドーピング可能及びn−ドーピング可能な明確なウェーブが得られた。ポリ(BEDOT−BBT)P7のサイクリックボルタンメトリーは、酸化に対しては0.24VのE1/2を、そして2回の還元(two reductions)に対しては、それぞれ−0.88Vと−1.62VのE1/2を示す(図51)。図52は、ポリマーレドックス安定性のサイクリックボルタンメトリーを示す。正のレドックスサイクル(positive redox cycles)(P−タイプ特性)は、90サイクルにわたって極めて安定であった。しかしながら、負のレドックスサイクル(negative redox cycles)(N−タイプ特性)は安定ではなく、50mV/秒のスキャン速度にて40サイクル後に、還元ピークの強度が92%に低下した。第2のn−ドーピング可能な状態(ジアニオン)は、ポリマーの電気活性特性の劣化(共役主鎖の切断)のためにそれほど安定ではなかった。
【0178】
[00211]こうして得られたAuボタン上のポリマーフィルムを、ポリマー応答の電位窓内にて一連のスキャン速度依存性実験に付した(図53−(A))。ポリマーは、スキャン速度(50〜500mV/秒)を和らげるような容量性挙動を示した。ポリマーフィルムのスペシフィック・エリア・キャパシタンス(specific area capacitance)を、3点電気化学構造(a three−point electrochemical configuration)におけるスキャン速度の関数として求めた(図53−(B))。500mV/秒未満のスキャン速度においては、ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、より高いスペシフィック・エリア・キャパシタンスを有する。
【0179】
[00212]図54において、モノマー(DCM中BEDOT−BBT)のUV−Visスペクトルはλmax=638nm(青)を示す。ポリマーの光学的性質を調べるために、ジクロロメタン(DCM)−支持電解質媒体(0.1M TBAP/DCM)中5mM濃度のモノマー溶液を作製した。次いでこの溶液を、ITO−被覆ガラス作用電極上への繰り返しスキャニング電解重合に付した(図53−(C))。ポリマーをデポジットさせた後、モノマー溶液から暗緑色のポリマーフィルムを取り出し、アセトニトリル(ACN)で穏やかにすすぎ洗いし、乾燥した。スペクトルは、溶媒が存在しない状態にて得た。
【0180】
[00213]図55において、ポリ(BEDOT−BBT)のUV−Vis−NIRスペクトルは、中性状態に対してはλmax=982nm(緑)を示す。この値は、0.1MのTBAP/ACN中にて負電位(−0.4V)を2分加えることによって得た。これにより0.84eV(1eV=1240nm)の光学的バンドギャップがもたらされる。さらに、P−ドープUV−Vis−NIRスペクトルは、0.1MのTBAP/ACN中にて正電位(0.5V)を2分加えることによって得た。p−ドーピング(酸化)状態に対しては、UV−Vis−NIRスペクトルから、π−π*遷移強度が減少する一方で、NIR領域の強度は増大する、ということがわかる。
【0181】
[00214]次いで、ポテンシャル・スウィープ・スキャン・サイクリック・ボルタンメトリー法(potential sweep scan cyclic voltammetry method)によって、ポリマーを、0.1MのTBAP/DCM中5mM濃度モノマーの溶液から、ステンレス鋼ディスク(Φ=0.75インチ)(Au界面層を有するステンレス鋼)のそれぞれ上に電気化学的にデポジットさせた(図56)。モノマーのサイクリックボルタンメトリー(CV)は、プリンストン・アプライド・リサーチ・アドバンスト・エレクトロケミカル・システムPARSTAT2273を使用して、3コンパートメント電池において50mV/秒のスキャン速度で行った。溶液は、使用する前に窒素バブリングによってガス抜きした。
【0182】
[00215]サイクリックボルタンメトリーは、モノマーとポリマーのレドックスプロセスを特性決定するための有力な方法をもたらすけれども、ポリマーフィルムの厚さを正確に制御する能力に欠ける。CVにはこうした細かい制御ができないことの理由は、システム中への全エネルギー入力の一部だけが、表面吸着された電解重合フィルム中への出力となっている、という点である。しかしながら、システム中へのエネルギー入力が行われると始まる反応経路は複雑である。電気化学電池には、容量充電、汚染物質との反応、及び酸化モノマーの終了を含めた多くのファラデープロセスと非ファラデープロセスが起こる、とされている。
【0183】
[00216]要するに、サイクリックボルタンメトリーシステムは、従来の電解集合の場合と同じ条件下での実質的に幾つかの繰り返し重合からなるが、新たなポリマーを電極表面に、及び溶液中に加える実際のプロセス、ならびに拡散層の広がりが、まったく異なる反応条件をつくり出す(場合によっては、モノマーのレドックスポテンシャルの移行を伴い、これが速度論をさらに複雑にする)。従って、それぞれの繰り返しスキャンとともに同じ量のポリマーが電極表面上にデポジットされる、と見なすことはできない。
【0184】
[00217]定電位デポジションは、この問題に対する手頃な解決方法を提供する。定電位デポジションでは、電圧が一定に保持されるので、CVにおいて存在したスキャン速度や電位傾斜等の動的な要素が取り除かれる。さらに、速やかな非ファラデー充電速度論を仮定すると、容量性電流は、短時間でゼロに近い値に達するはずである。従って、定電位デポジションの時間が長くなると、ファラデープロセスが測定される電流を支配する。好都合なことに、フィルム厚さとポリマー量は、ある特定の電荷密度が達成された後に、定電位デポジションを終了させることによって慎重に制御することができる。定電位デポジションは、フィルム厚さ(ポリマー量)対システムに加えられる電荷密度が、(電気化学系が、全く同じ濃度と組成を有して再現されると仮定して)ピロールの重合〔ポリ(3,4−アルキレンジオキシピロール)〕に対しては最大で約3μmまでは線形傾向に従う、という点においてフィルム厚さ(ポリマー量)を制御することができる。これらの曲線におけるデータポイントは個々の実験を表わしており、従ってこれらのデータポイントは、フィルム厚さとポリマー量を制御するための較正曲線としてつくり上げることができる。
【0185】
[00218]CVデポジション法によってもたらされる問題点を克服するために、BEDOT−BBTポリマーデポジションに対してクロノアンペロメトリー法(定電位法)を使用した。ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、クロノアンペロメトリー法を使用して、金被覆したステンレス鋼ディスクと未被覆のステンレス鋼ディスク上に得た。印加電位は、異なる時間周期に対して0.7V(対Ag/AgNO3)であり、ポリマーデポジション中は溶液の均一性を保持するよう、モノマー溶液を撹拌した。デポジットされたフィルムは、SS表面に対してかなり安定のようであり、離層の兆候は全くなかった。図57は、5mMのモノマー溶液を使用して、異なる溶液撹拌速度にて金被覆SS支持体上にデポジットされた、ポリマーデポジションのクロノアンペロメトリー結果を示す。電荷対デポジション時間のプロットにおいて線形傾向が観察された(すなわち、デポジション時間が長くなるほど、デポジットされるポリマー質量が多くなった)。さらに、撹拌速度が高くなるほど、支持体上にデポジットされるポリマーの量が多くなった(図58を参照)。重合工程時においては、n−ドーピング可能なポリマーは高導電性支持体の両側にデポジットし、そしてさらに、被覆されたポリマーは均質性に欠ける。これらの問題を解決するために、ディスクの一方の側だけへのポリマーコーティング(良好な品質ならびに制御可能な均一性と厚さを有する)を容易にするH−電池を設計した(図59を参照)。
【0186】
[00219]クロノアンペロメトリー法(定電位)を使用して、3電極H−電池を含むステンレス鋼作用電極上に0.1M TBAP/DCM中BEDOT−BBTモノマーを0.7Vまたは0.8Vにて電着させた(重合させた)。デポジット条件と結果を表22に示す。デポジットされたポリマー量対電荷のプロットは、5mgのデポジションまでは良好な直線関係を示した(図60を参照)。さらに、電荷制御された(50mCまたは100mC)実験によって得られたポリマー量は、ほぼ直線状のライン上に載った。定電位法は、ポリマー量またはフィルム厚さを制御する上での優れた方法であった。
【0187】
【表22】
【0188】
[00220]図61のクロノアンペロメトリー線図は、対照条件下にてポリマーが金IFL SS及びSS支持体上にデポジットされたことを示している。ポリマー量は、同じ条件下での測定にてSS(Au)の場合が0.16mgでSSの場合が0.17mgであり、ほぼ同等であった。しかしながら、デポジション時におけるデポジット時間と電流フローは異なっていた。SS支持体は、SS(Au)より速やかなデポジションを示した。SS(Au)の電流フローは、デポジション時においてSSより低かった。さらに、SS(Au)支持体は、デポジション時においてより良好な電流フロー安定性をもたらした。金IFL(高導電性層)SSのほうがより低い電流フローをもたらし、従って金層なしの場合よりポリマーが速やかにデポジットするであろう、と推定された。しかしながら、クロノアンペロメトリー線図は予想外の結果を示した。特定の理論で拘束されるつもりはないが、表面粗さと表面積との間に関係があると考えられる。表面積が大きいと、デポジションはより速やかなはずである。Au IFLなしのSSは充分に粗い(表面積が大きい)ので、SS(Au IFL)の場合より速やかにポリマーがデポジットした。
【0189】
[00221]こうして得られたAu IFL SS(Φ=0.75インチ)上の0.16mgのポリマーフィルムを、ポリマー応答の正電位窓内にて一連のスキャン速度依存性実験に付した(図62−(A))。ポリマーは、スキャン速度(5〜50mV/秒)を和らげるような容量性挙動を示した。ポリマーフィルムの比キャパシタンス(F/g)を、3点電気化学電池構造物(a three−point electrochemical cell configuration)におけるスキャン速度の関数として求めた(図62−(B))。p−タイプの比キャパシタンスは116F/gであった。
【0190】
[00222]n−ドーピング可能なレドックス安定性に関して前述したように、充分にn−ドーピング可能なレドックスサイクル(N−タイプ特性)はあまり安定ではなかった(最初の還元ピークの強度が、50mV/秒のスキャン速度にて40サイクル後に92%に低下した。n−ドーピング可能なレドックス安定性を、−1.4Vと0Vの間の小さな電位窓にてアルゴン雰囲気下で90サイクルにわたって試験した(図63−(A)を参照)。最初のn−ドーピング可能なレドックスウェーブは安定であった。電流強度は、90サイクル後に63%に低下した。
【0191】
[00223]さらに、こうして得られたAu IFL SS(Φ=0.75インチ)上の0.16mgのポリマーフィルムを、ポリマー応答の負電位窓内にて一連のスキャン速度依存性実験に付した(図63−(B))。ポリマーは、スキャン速度(10〜50mV/秒)を和らげるような容量性挙動を示した。ポリマーフィルムの比キャパシタンス(F/g)を、3点電気化学電池構造物におけるスキャン速度の関数として求めた(図63−(C))。n−ドーピング可能なポリマーの比キャパシタンスは、3電極電池において47F/gであった。ポリマーフィルムの比キャパシタンス(F/g)を、3点電気化学電池構造物におけるスキャン速度の関数として求めた(図63−(D))。50mV/秒未満のスキャン速度では、ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、より高い比キャパシタンス(F/g)を有した。
【0192】
[00224]本発明の実施例において説明されているn−ドーピング可能なポリマーの前駆体としてのBEDOT−BBTの合成と分光学的同定について以下に記す:1.反応工程と収率は全て繰り返し可能であった。2.BEDOT−BBTは、ITO電極、0.2cmのPtもしくはAu作用電極、ならびに0.75インチ(1.9cm)の金界面ステンレス鋼(SS/Au)支持体もしくはステンレス鋼(SS)支持体上にポリ(BEDOT−BBT)フィルムをもたらすよう適切に電解重合された(デポジットされた)。3.UV−Vis−NIRスペクトルによって得られるポリ(BEDOT−BBT)の光学的バンドギャップは0.84eVであった。4.新たに設計された3電極H−電池構造物システムは、SS支持体またはSS(Au IFL)支持体上に良好な品質のポリ(BEDOT−BBT)フィルムをもたらした。5.ポリマーデポジットのためのクロノアンペロメトリー法は、デポジットされるポリマー量に対する良好な制御をもたらした。6.SS上へのポリマーデポジションは、SS(Au IFL)上へのそれより速やかであった。しかしながら、SS(Au IFL)は、ポリマーデポジション時においてはより安定な電流フローを示した。7.新規n−ドーピング可能なポリマーの比キャパシタンスは、3電極H−電池において47F/gであった。
【0193】
[00225]全ての文書、刊行物、特許、特許出願、プレゼンテーション、テキスト、報告書、手書き原稿、パンフレット、書籍、インターネット投稿、学術論文、及び定期刊行物等を含めた本明細書に記載の文献は全て、参照により本明細書に含める。ここに記載の文献の説明は、単に、著者らによる主張を要約すべく意図されており、任意の文献が先行技術を構成していると容認しているわけではない。本出願者らは、引用文献の正確さと適切性に意義を申し立てる権利を留保する。
【0194】
[00226]上記のことを考慮すると、本発明の幾つかの利点が達成され、他の有利な結果も得られる、ということがわかる。
[00227]上記の方法と組成に対し、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更を行うことができるので、上記説明中に含まれていて、添付図面に示されていることがらは全て、例証のためのものとして解釈すべきであって、限定の意味に解釈すべきではない、ということが意図されている。
【符号の説明】
【0195】
2 コイン電池スーパーコンデンサ
4 支持体
6 任意のスペーサー
8 第1の電極
10 電解質
14 第2の電極
16 第2の支持体
【発明の詳細な説明】
【0001】
[00001]本発明は、コントラクト・アワードW15QKN−07−C−0121にもとづく政府支援〔ニュージャージー州ピカティニーのアーミーアーマメント・リサーチ・ディベロップメント&エンジニアリング・センター(ARDEC)から与えられた〕を適用してなされた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【0002】
[00002]本特許出願は、米国仮特許出願第60/200,830号と第60/200,829号(ともに2008年12月4日付出願、該特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0003】
[00003]本発明は、本質的に導電性のポリマー(ICP)及びICPの製造方法とドーピング方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
[00004]1つの態様では、本発明はスーパーコンデンサに関する。本発明のスーパーコンデンサは、第1の表面と第2の表面を含む第1の支持体;約800S/cm以上の導電率を有する本質的に導電性のポリマーを含んでいて、第1の側面と第2の側面を有する第1の電極、ここで該第1の側面が、第1の支持体の第2の表面に隣接している;第1の電極の第2の側面に隣接している電解質;約800S/cm以上の導電率を有する本質的に導電性のポリマーを含んでいて、第1の側面と第2の側面を有する第2の電極、ここで該第1の側面が、第1の電極の第2の側面に隣接していて、電解質によって第1の電極から隔離されている;及び、第1の表面と第2の表面を有する第2の支持体、ここで該第1の表面が、第2の電極の第2の側面に隣接している;を含む。
【0005】
[00005]他の態様では、本発明は、本質的に導電性のポリマーフィルムにドーピングする方法に関する。本発明の方法は、該フィルムと第1の酸ドーパントとを接触させて、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと蒸気とを接触させることによって、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄にすること;蒸気で清浄にした一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを、少なくとも第2の酸ドーパントと有機溶媒とを含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを得ること;を含む。
【0006】
[00006]さらに他の態様では、本発明は、約800S/cm以上の導電率を有する、ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムに関する。
[00007]本発明のこれらの態様及び他の態様は、当業者であれば、本明細書を詳細に検討することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】[00008]図1は、本発明に従った典型的なタイプIのスーパーコンデンサの概略図である。
【図2】[00009]図2は、熱処理前(約0.1で終わる)と150℃にて30分の熱処理後(約0.5で終わる)の、PAC(商標)1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図3】[00010]図3は、熱処理前(約0.5で終わる)と150℃にて30分の熱処理後(約0.7で終わる)の、PAC(商標)1007フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図4】[00011]図4は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSAドープPAC(商標)1003フィルム(上部ライン)対初期状態のPAC1003フィルム(下部ライン)のUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図5】[00012]図5は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSAドープPAC1007フィルム対初期状態のPAC1007フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図6】[00013]図6は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSA−TSAmドープPAC1003フィルム対初期状態のPAC1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図7】[00014]図7は、150℃にて30分の熱処理後の、PTSA−TSAmドープPAC1007フィルム対初期状態のPAC1007フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図8】[00015]図8は、チモールを使用して蒸気清浄化し、次いでPTSA−TSAm溶液中にフィルム浸漬−ドーピングしたPAC1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図9】[00016]図9は、チモール、カルバクロール、IPP、又はDIPPを使用して蒸気清浄化し、次いでPTSA溶液中にフィルム浸漬−ドーピングしたPAC1003フィルムのUV−Vis−NIRスペクトルを示す。
【図10】[00017]図10は、(未知の延伸速度にて)140%に延伸し、(IRランプを使用して)65℃で5分保持し、次いで室温に冷却して応力を取り除くことによって150μmのテフロン支持体上で行われた、機械的にアニールされたPANI(PAC1007)サンプルの、室温(RT)にて測定した4プローブDC導電率のプロットを示す。
【図11】[00018]図11は、(未知の延伸速度にて)140%に延伸し、(IRランプを使用して)65℃で5分保持し、次いで室温に冷却して応力を取り除くことによって150μmPTFE支持体上で行われた、機械的にアニールされたPANI(PAC1003)サンプルの、RTにて測定した4プローブDC導電率のプロットを示す。これらのサンプルフィルムは、PAC1003フィルムをスピン・コーティングする(1500μl、1000rpmにて30秒)ことによって作製した。
【図12】[00019]図12は、PAC1003フィルムを電極材料として、そしてEMI−IMイオン液体を電解質として使用するコイン電池の充放電サイクルの結果を示す〔(a)初期状態のPAC1003及び(b)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003〕。
【図13】[00020]図13は、(a)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003フィルム(1回の10,000サイクル)、(b)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003フィルム(2回の10,000サイクル)、及び(c)導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003フィルム(3回目の10,000サイクル)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として使用して、最大で10,000サイクルまで行われる、クロノポテンショメトリーによる充放電サイクルにおけるコイン電池の電位窓を示す。
【図14】[00021]図14は、導電率250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003を電極として、そしてEMI−IMを電解質として使用するコイン電池のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図15】[00022]図15は、高導電性の金属性PANIフィルムをEMI−IMイオン液体電解質中の電極材料として使用するコイン電池の、PANIの導電率対デバイス性能のプロットを示す。
【図16】[00023]図16は、EMI−IMイオン液体電解質中の金属性PANI電極に対して行われたサイクリックボルタンメトリースキャンを示す(SCE参照電極と白金対電極を含む3電極構成にて)。
【図17a】[00024]図17aは、金属性PANIフィルム(トップとミドル)とPTSA−TSAmドープPANIフィルム(ボトム)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として含むコイン電池の電位プロフィールを示す。トップは充放電試験の10,000サイクルが1回。ミドルとボトムは充放電試験の10,000サイクルが3回。いずれもガムリー社製定電位クロノポテンシオメトリープロフィールの一般的なパターンを有する。電流サイクル:±1mA(トップとボトム)及び±3mA(ボトム)〕。
【図17b】[00024]図17bは、金属性PANIフィルム(トップとミドル)とPTSA−TSAmドープPANIフィルム(ボトム)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として含むコイン電池の電位プロフィールを示す。トップは充放電試験の10,000サイクルが1回。ミドルとボトムは充放電試験の10,000サイクルが3回。いずれもガムリー社製定電位クロノポテンシオメトリープロフィールの一般的なパターンを有する。電流サイクル:±1mA(トップとボトム)及び±3mA(ボトム)〕。
【図17c】[00024]図17cは、金属性PANIフィルム(トップとミドル)とPTSA−TSAmドープPANIフィルム(ボトム)を電極として、そしてEMI−IMを電解質として含むコイン電池の電位プロフィールを示す。トップは充放電試験の10,000サイクルが1回。ミドルとボトムは充放電試験の10,000サイクルが3回。いずれもガムリー社製定電位クロノポテンシオメトリープロフィールの一般的なパターンを有する。電流サイクル:±1mA(トップとボトム)及び±3mA(ボトム)〕。
【図18】[00025]図18は、金属性PANIフィルムを含有するAu界面層を有する電極を使用するコイン電池の、EMI−IM電解質中にて調べた電位プロフィールを示す。
【図19】[00026]図19は、界面層が金属性PANIとSSディスクとの間にサンドイッチ状に挟まれて存在することのコイン電池のデバイス性能特性〔例えば、a)グラフに示されているようなエネルギー密度や出力密度、及びb)CVスキャンプロットに示されているような比キャパシタンス〕に及ぼす影響を含めた、コイン電池のデバイス性能を示す。
【図20】[00027]図20は、金属性PANI電極中に界面層が存在することの影響を調べるために、クロノポテンショメトリーを使用して最大で30,000サイクルまで行ったサイクル安定性実験を示す。
【図21】[00028]図21は、SSディスク上に被覆した金属性PANIフィルムの量が、コイン電池のデバイス性能に及ぼす充放電サイクル効果を示す。
【図22】[00029]図22は、Li−IMをEMI−IM電解質における第2のイオン液体電解質成分として導入することの、金属性PANI含有Au界面層を有する電極を使用するコイン電池に対するデバイス性能に及ぼす影響を示しているプロットを示す。
【図23】[00030]図23は、電解質によるバルクペレット接近可能性の略図である。
【図24】[00031]図24は、PANI/DBSA/C−ファイバーコイン電池の、1mA、1.0V(EMI−IM)での充放電特性を示す。
【図25】[00032]図25は、充電されたエネルギーと放電されたエネルギーに及ぼすホールドタイムの影響を示す。
【図26】[00033]図26は、PANI/DBSA/C−ファイバーコイン電池(EMI−IM)の、ホールドタイム0秒の場合の充放電サイクルを示す。
【図27】[00034]図27は、PAC1003ペレットコイン電池の、0.01mA、1.0Vでの充放電サイクルを示す。
【図28】[00035]図28は、炭素の含量を高めるとエネルギーが増大することを示す。
【図29】[00036]図29は、炭素の配合処方(Carbon formulation)によって異なるPAC1003の充放電サイクルを示す。
【図30】[00037]図30は、30%/2%/68%(重量%)のIPO比の活性炭/カーボンブラック/コロイダルグラファイト溶液と活性炭対照標準コイン電池の10mAでの放電されたエネルギーを示す。
【図31】[00038]図31は、活性炭とPAC1003配合物の放電されたエネルギーを示す。電圧が増大するにつれて、活性炭は、出力がゆっくりと着実に増大した。
【図32】[00039]図32は、45%/50%/5%(重量%)の比のPAC1003/活性炭/カーボンブラックと30%/2%/68%(重量%)の比の活性炭/カーボンブラック/コロイダルグラファイト溶液を示す。
【図33】[00040]図33は、PAC1003/カーボン配合物とカーボン対照標準コイン電池の、種々の充電・放電条件での効率を示す。
【図34】[00041]図34は、カーボン配合物を含むPANI/DBSAの充放電サイクルを示す。電流が低いと、IRの低下はわずかである。
【図35】[00042]図35は、種々のデバイスの放電されたエネルギー(J/デバイス)を示す。
【図36】[00043]図36は、PAC1003コイン電池、PANI/DBSAコイン電池、及びこれらに対応する活性炭配合物コイン電池の出力(J/s)を示す。
【図37】[00044]図37は、ペレット状コイン電池に対する1mA、1Vでの充電されたエネルギーと放電されたエネルギーの比較を示す。
【図38】[00045]図38は、ペレット状コイン電池に対する10mA、1Vでの充電されたエネルギーと放電されたエネルギー(J/デバイス)の比較を示す。
【図39】[00046]図39は、ペレット状コイン電池に対する100mA、1Vでの充電されたエネルギーと放電されたエネルギー(J/デバイス)の比較を示す。
【図40】[00047]図40は、活性炭とコロイダルグラファイトとカーボンブラックの複合物とPANI/DBSA複合物との、サイクル安定性の比較を示す。
【図41】[00048]図41は、サイクル安定性に及ぼす電圧変化の影響を示す。
【図42】[00049]図42は、ペレット状コイン電池におけるAu界面層の、10mA、1mA、及び1Vでの影響を示す。
【図43】図43は、ペレット状コイン電池におけるAu界面層の、10mA、1mA、及び1Vでの影響を示す。
【図44】図44は、ペレット状コイン電池におけるAu界面層の、10mA、1mA、及び1Vでの影響を示す。
【図45】[00050]図45は、PAC1003コイン電池のIR低下に及ぼすPTSA/TSAmの影響を示す。
【図46】[00051]図46は、ペレットベースのコイン電池のエネルギー(J)に及ぼすPTSA/TSAmと活性炭の影響を示す棒グラフである。
【図47】[00052]図47は、ペレットベースのコイン電池に対するエネルギーと比キャパシタンス(F/g)を示す。
【図48】[00053]図48は、ペレットベースのコイン電池−ペースト配合物に対する出力(J)を示す。
【図49】[00054]図49は、(A)Ptボタン上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV、(B)Auボタン上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV、及び(C)ITO被覆ガラス上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCVを示す。モノマー濃度は、0.1MがTBAP/DCM中に存在する状態で5mMである。ボルタモグラムはいずれも、10回繰り返しスキャンの積み重ねプロットを示す〔(D)Auボタン上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV〕。モノマー濃度は、0.1MがTBAP/DCM中に存在する状態で1mMである。ボルタモグラムは、50mV/秒のスキャン速度にて20回繰り返しスキャンの積み重ねプロットを示す。
【図50】[00055]図50は、0.1MのTABP/ACN中におけるPtボタン上のポリ(BEDOT−BBT)のレドックス安定性を示す。
【図51】[00056]図51は、0.1MのTABP/ACN中におけるAuボタン上のポリ(BEDOT−BBT)のレドックス安定性を示す。(A)は正電位のスキャンを示し(P−ドーピング可能)、(B)は負電位のスキャンを示す(N−ドーピング可能)。
【図52】[00057]図52は、0.1MのTBAP−PC溶液中におけるAuボタン作用電極上のポリ(BEDOT−BBT)の、50mV/秒でのサイクリックボルタンメトリーを示す。
【図53】[00058]図53は、0.1MのTABP/ACN中におけるAuボタン上のポリ(BEDOT−BBT)のレドックス安定性を示す。(A)は、50mV/秒での正電位のスキャンを示し(P−ドーピング可能)、(B)は、50mV/秒での負電位のスキャンを示す。ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、TBAP/DCM中1mMのモノマーにてCV法により作製した。
【図54】[00059]図54は、Auボタン上のポリ(BEDOT−BBT)の、種々のスキャン速度でのスキャン速度依存性CVを示す。(A)は、0.1MのTABP/CAN中でのスキャン速度依存性CVを示し、(B)は、ポリ(BEDOT−BBT)のスペシフィック・エリア・キャパシタンス(specific area capacitance)(mF/cm2)対スキャン速度のプロットを示し、(C)は、0.1MのTABP/PC中でのスキャン速度依存性CVを示し、(D)は、室温での窒素バブル下での、ポリ(BEDOT−BBT)のスペシフィック・エリア・キャパシタンス(mF/cm2)対スキャン速度のプロットを示す。
【図55】[00060]図55は、CH2Cl2中でのBEDOT−BBTのUV−Vis吸収スペクトル(ゼロ付近で終わる);0.1MのTBAP/CAN中におけるITO被覆ガラス上へ−0.4Vの一定電位を1分加えることによる中性ポリ(BEDOT−BBT)の吸収スペクトル(0.5付近で終わる)、及び0.1MのTBAP/CAN中におけるITO被覆ガラス上へ0.5Vの一定電位を1分加えることによる酸化的ポリ(BEDOT−BBT)の吸収スペクトル(2のすぐ下で終わる)を示す。
【図56】[00061]図56は、モノマー濃度が、0.1MがTBAP/DCM中に存在する状態で5mMのBEDOT−BBTであるときのCV略図を示す。(A)は、50mV/秒のスキャン速度にて10サイクルに対する、ステンレス製ディスク(Φ=0.75インチ)上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV略図であり、(B)は、20mV/秒のスキャン速度にて20サイクルに対する、ステンレス製ディスク(Φ=2.0インチ)上へのBEDOT−BBTの電気化学的堆積のCV略図である。
【図57】[00062]図57は、E−重合の溶液撹拌速度依存性に対するクロノアンペロメトリー略図(上)、及びAu界面層を含むSS上にデポジットさせたポリ(BEDOT−BBT)フィルムのデジタル写真(下)を示す。
【図58】[00063]図58は、600rpmの溶液撹拌速度下での、Au層を含まないSS上への電着の時間依存性に対するクロノアンペロメトリー略図〔0.7Vの電位を120秒加えた場合(上左)と240秒加えた場合(上右)〕、及びステンレス鋼基板上にデポジットさせたポリ(BEDOT−BBT)フィルムのデジタル写真を示す。
【図59】[00064]図59は、n−型ポリ(BEDOT−BBT)の電解重合に使用される新規H−電池(AとB、側面図と上面図)、及びH−電池においてクロノアンペロメトリー法を使用して、0.8Vにて240秒にわたってステレンレス鋼基板上にデポジットされたポリマーフィルム(C)を示す。該ポリマーの色は、濃い紫色がかった緑色であった。
【図60】[00065]図60は、電着ポリマー量(mg)対チャージ(mC)に関する直線関係プロットを示す。
【図61】[00066]図61は、0.1MのTBAP/DCMにおいて1mMのモノマー濃度で、0.8Vにて50mCまで印加してデポジットされたポリマーのクロノアンペロメトリー略図を示す。(A)は、室温でアルゴン雰囲気下でのチャージ対時間(秒)のプロットであり、(B)は、室温でアルゴン雰囲気下での電流密度(mA/cm2)対時間(秒)のプロットである。
【図62】[00067]図62は、0.1MのTBAP/PCにてアルゴン雰囲気下における、−0.4V〜0.5Vの電位のCV略図を示す。(A)は、SS上にデポジットさせたAu界面層上ポリ(BEDOT−BBT)の、種々のスキャン速度でのスキャン速度依存性CVを示し、(B)は、ポリマー酸化電位における電流(mA)対スキャン速度のプロットを示し、(C)は、室温での、ポリ(BEDOT−BBT)の比キャパシタンス(F/g)対スキャン速度のプロットを示す。
【図63】[00068]図63は、ポリ(BEDOT−BBT)のN−型電気特性評価(N−type electro−characterization)を示す。(A)は、0.1MのTBAP/PCにてAu界面層SS上ポリ(BEDOT−BBT)の、アルゴン雰囲気下でのサイクリックレドックス安定性のCV略図を示す。サイクリック電位の範囲は−1.4V〜0Vである(N−型)。(B)は、SS上にデポジットさせたAu界面層上ポリ(BEDOT−BBT)の、種々のスキャン速度でのスキャン速度依存性CVを示す。(C)は、ポリマー還元電位における電流(mA)対スキャン速度のプロットを示す。(D)は、室温での、ポリ(BEDOT−BBT)の比キャパシタンス(F/g)対スキャン速度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[00069]さて、以下に発明の実施態様について詳細に説明する。本発明の1つ以上の実施例については後述する。各実施例は、本発明の説明のために記載されており、実施例によって本発明が限定されることはない。実際、当業者には言うまでもないことであるが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の改良や変更を行うことができる。例えば、ある実施態様の一部として説明されている特徴を別の実施態様に対して使用して、さらなる実施態様をもたらすことができる。従って、本発明は、こうした改良形や変形を、添付のクレームやそれらの等価物の範囲内に入るものとして含む、ということが意図されている。本発明の他の目的、特徴、及び態様は、下記の詳細な説明中に開示されているか、あるいは下記の詳細な説明から明らかとなろう。当業者が理解しておかねばならないことは、ここでの説明は典型的な実施態様のみの説明であって、本発明のより広い態様を限定するものとして意図されてはいない、という点である。
【0009】
[00070]本明細書で使用されている“導電性ポリマー(electrically conductive polymer)”、“本質的に導電性のポリマー(intrinsically conductive polymer)”、又は“導電性ポリマー(conductive polymer)”とは、ポリ共役結合系を含んでいて、電子供与体ドーパント又は電子受容体ドーパントをドーピングして、約10−8S/cm以上の導電率を有する電荷移動錯体を形成することができる有機ポリマーを表わしている。言うまでもないことであるが、本明細書において導電性ポリマーに言及しているときは常に、該材料がドーパントを含んでいるということが意味されている。
【0010】
[00071]本明細書で使用している“ドーパント”とは、導電性ポリマーと塩を形成してポリマーの導電性形態をもたらすあらゆるプロトン酸を意味している。単独の酸をドーパントとして使用することもできるし、あるいは2種以上の異なる酸がポリマーに対するドーパントとして作用することがある。
【0011】
[00072]本明細書にて導電性ポリマーの説明と併せて使用されている“フィルム”とは、ポリマーのソリッド形態(a solid form)を意味している。特に明記しない限り、本発明のフィルムは、ほぼ全ての物理的形状を有することができ、シート状の形状や他のいかなる物理的形状にも限定されない。一般には、導電性ポリマーのフィルムは、固体電解質コンデンサの誘電体層の表面に適合する。
【0012】
[00073]材料を説明するために本明細書で使用されている“熱安定性”とは、材料が高温に長時間さらされたときに、該材料が分解や劣化に抵抗する能力(等温熱重量分析により測定)を意味している。“改良された熱安定性”とは、材料の熱安定性が、どになに小さくても改良されたことを意味している。
【0013】
[00074]本明細書で使用している“混合物”とは、2種以上の材料の物理的組み合わせ物を表わしており、溶液、分散液、エマルジョン、及びミクロエマルジョン等(これらに限定されない)を含む。
【0014】
[00075]本発明では任意の導電性ポリマーを使用することができるけれども、有用なポリマーの例としては、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、及びポリ(フェニレンビニレン)等がある。置換もしくは非置換のアニリン、ピロール、又はチオフェンのポリマーも、本発明の導電性ポリマーとして機能することができる。1つの実施態様では、導電性ポリマーはポリアニリンである。
【0015】
[00076]ポリアニリンは、少なくとも4つの酸化状態(ロイコエメラルジン、エメラルジン、ニグラニリン、ペルニグラニリン)を経て生じる。エメラルジン塩は、安定な導電性状態を示すポリマーの一形態である。ポリアニリンのエメラルジン塩形では、プロトン酸ドーパント(対イオン)が存在するかしないかで、ポリマーの状態が、それぞれエメラルジン塩からエメラルジン塩基に変わりうる。従って、このようなドーパントの存在もしくは非存在が、ポリマーを可逆的に導電性もしくは非導電性にすることができる。プロトン酸を導電性ポリマー(例えばポリアニリン)のためのドーパントとして使用することは知られており、HClやH2SO4等の単純なプロトン酸、及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)やドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)等の官能化有機プロトン酸を使用すると、導電性のポリアニリンが得られる。
【0016】
[00077]導電率は、しばしば導電性ポリマーの最終生成物の重要な特性であるけれども、導電形態における導電性ポリマーは、処理するのが困難である場合が多い。例えば、ドーピングしたポリアニリンは、一般には全ての有機溶媒に対して不溶性であるが、中性形は、高極性溶媒(例えばN−メチルピロリドン)に対してのみ溶解性である。しかしながら、特定の合成法及び特定の官能化有機酸ドーパントを使用することにより、導電性ポリアニリン塩は有機溶媒に対してより可溶性になる、ということが見出された。例えば、米国特許第5,863,465号と第5,567,356号(極性有機液体を用いるエマルジョン重合において疎水性の対イオンを使用する);ならびにWO92/22911及び米国特許第5,324,453号と第5,232,631号(無極性有機液体を用いるエマルジョン重合において界面活性剤特性を有する対イオンを使用する);を参照のこと。
【0017】
[00078]PANIは、スーパーコンデンサを含めたエネルギー貯蔵デバイスの電極材料としての応用に適した対象であると考えられるICPである。PANIはさらに、ファラデー・キャパシタンスや充放電能力等の優れた電気化学的特性を示す。PANIのドーピングは、改良された導電性を有するポリマー鎖を形成させる上で重要な工程である。主要なドーパントは、導電性ポリマー鎖の長さに沿った非局在化電子の生成(これにより鎖長に沿って導電性が確立される)に関与するポーラロン/バイポーラロンの形成を促進する能力を有する。欠陥の無いもしくは欠陥の少ない鎖(欠陥=共役の欠如)、及びポリマー鎖長に沿った電導のための良好なπ−π重なり、を有する改良された導電性を得ることができる。
【0018】
[00079]金属様の導電性を達成する上で、一次ドーピングしたPANIの限界を克服するためにPANIの二次ドーピングを行うことができる。幾つかの実施態様では、二次ドーピングは、PANIフィルムを洗浄して、ポリマーから過剰で未結合の一次ドーパントを除去し;フィルムにおけるポリマーのコイル様構造の拡張鎖構造への変換を起こさせ;そして熱処理することでポリマー鎖の最密充填(PANI中のフェニル環とドーパントとのπ−π重なり、ならびにドーパント中のヒドロキシル基とPANI中のアミン部位及びイミン部位との水素結合を促進する)を形成させることによって行うことができる。
【0019】
[00080]PAC1003(クロスリンク社の市販製品)は、ジノニルナフタレンスルホン酸を一次ドーパントとして使用している一次ドーピングしたポリアニリン溶液である。PAC1003は0.16S/cmの室温導電率を有する。PAC1007(これもクロスリンク社の市販製品)は、“その場で”二次ドーピングしたPAC1003の溶液であり、15〜20S/cmの室温導電率を有する。幾つかの実施態様では、二次ドーパント〔スルホニルジフェノール(SDP)〕によって起こりうるPANI鎖の架橋により引き起こされると考えられる望ましくないゲル化効果のために、PAC1007の保存寿命が制限されることがある。
【0020】
[00081]1つの態様では、本発明は、新規ICPを形成するよう重合させることができる新規モノマーである。スキーム1は、出発物質であるベンゾチアジアゾール(BT)(化合物1)からの新規モノマーであるビスエチレンジオキシチオフェン−ビスベンゾチアジアゾール(BEDOT−BBT)(化合物7)の合成を示している。市販のBTを臭化水素酸(48%)中に溶解し、これを臭素化合物と反応させてジブロモ−BT(2)を生成させることができる(臭素化反応)。次いで化合物2を、例えばH2SO4/HNO3でニトロ化することができる。このようにして得られるジニトロ−ジブロモ−BT(4)は、モノニトロ化化合物とトリブロモ化合物を生じる副反応ならびに環の分解のために低収率(23%)である。次いで、EDOT−SnBu3と化合物4とを触媒(例えばPd触媒)の存在下で混合して、BEDOT−BT−(NO2)2(化合物5)を生成させることができる(スティルカップリング反応)。酢酸中での鉄粉による化合物5の還元により、化合物6(緑黄色粉末)が得られる。最終のBEDOT−BBT(化合物7)は、ピリジン中N−チオニルアニリンによる閉環反応から得ることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
[00082]上記スキーム(スキーム1)においては、ニトロ化反応の収率がかなり低い(20%)。収率を高めるために、“J.Org.Chem.Vol.38,No.25,1973,p.4243”に記載の他の反応経路を使用することができる。
【0023】
【化2】
【0024】
[00083]次いでn−ドーピング可能なポリ(BEDOT−BBT)を、当業界に公知の1つ以上の方法に従ってドーピングすることができる。ここに記載のn−ドーピング可能なポリ(BEDOT−BBT)はさらに、あるいはこれとは別に、後述する方法の1つ以上によってドーピングすることもできる。
【0025】
[00084]幾つかの態様においては、n−ドーピング可能なポリ(BEDOT−BBT)をフィルム(例えば本明細書に記載の他のICPフィルム)にするのが望ましい。
[00085]1つの態様においては、本発明は、本質的に導電性のポリマーフィルムをドーピングする新規方法に関する。幾つかの実施態様では、これらの新規方法は、ICPフィルムに二次ドーピングする方法である。他の実施態様では、これらの新規方法は、ICPフィルムに三次ドーピングする方法である。さらに他の実施態様では、ICPフィルムの二次ドーピングと三次ドーピングの両方に対して同じ方法を使用することができる。幾つかの実施態様では、これらの方法は、PANIフィルムに対して特に有用である。
【0026】
[00086]幾つかの実施態様では、二次ドーピングを行う前に、一次ドーピングしたICPフィムを清浄にするのが望ましい。幾つかの実施態様では、一次ドーピングしたICPフィルムを、溶媒洗浄やすすぎ洗い(これらに限定されない)を含めた当業界に公知の方法によって清浄にすることができる。
【0027】
[00087]他の実施態様では、本発明は、一次ドーピングしたICPフィルムを清浄にする新規方法である。この新規方法は、一次ドーピングしたICPフィルムを蒸気清浄することを含む。この実施態様では、一次ドーピングしたICPフィルムを蒸気清浄して、一次ドーピングしたICPフィルムの導電性を高めることができる。適切な蒸気としては、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、及びメタ−クレゾールの1種以上の蒸気がある。
【0028】
[00088]蒸気清浄は、ICPフィルムのナノ多孔性フィルムネットワーク中への、無毒性フェノール類蒸気の浸透(この結果、未結合のドーパントと残留溶媒が除去される)として理解することができる。この浸透の結果、二次ドーパントの組み込みを可能にするための非多孔性ボイドが生じる。
【0029】
[00089]1つの実施態様では、本発明は、PANIフィルムのフィルム浸漬−ドーピング法である。浸漬−ドーピング法は、単独で行うこともできるし、あるいは現在使用されている蒸気清浄法を含めた上記清浄方法のいずれかと組み合わせて行うこともできる。
【0030】
[00090]この実施態様は、上記したPAC1007の望ましくないゲル化の影響を低減及び/又は解消することによってPAC1007の特性を向上させる。さらに、この方法は、良好なフレキシビリティを示す厚さ約0.15μm〜約0.35μmの均一なPANIフィルムサンプルをもたらす。この方法はさらに、PAC1003とPAC1007の両方を凌ぐ改良された導電性をもたらす。この実施態様においては、フィルム浸漬−ドーピングは、一次ドーピングしたICPフィルムを、有機溶媒とプロトン酸との混合物中に適切な時間にわたって浸漬することによって行うことができる。幾つかの実施態様では、フィルムを、約1秒〜約120秒にわたって浸漬することができる。他の実施態様では、この時間は約5秒〜約60秒であってよい。さらに他の実施態様では、この時間は約10秒〜約30秒であってよい。
【0031】
[00091]接触プロセス時においては、フィルムと混合物の温度は、約5℃〜約50℃、約10℃〜約30℃、あるいは約室温であってよい。
[00092]本発明のプロトン酸は、導電性ポリマーのためのドーパントとして作用することができる任意のプロトン酸であってよい。本発明のプロトン酸は、一次ドーパントと同じであってもよく、あるいは異なったプロトン酸であってもよく、あるいは2種以上のプロトン酸(いずれか1種が一次ドーパントと同じであっても異なっていてもよい)の混合物であってもよい。
【0032】
[00093]本発明の方法の1つの実施態様では、プロトン酸は、導電性ポリマーと組み合わせたときに、導電性をもたらすだけでなく、導電性ポリマーの熱安定性を向上させるドーパントとして作用することができる。
【0033】
[00094]本発明のプロトン酸として使用するのに適した物質の例としては、4−スルホフタル酸(4−SPHA)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、ベンゼンスルホン酸(BA)、フェニルホスホン酸(PA)、リン酸(H3PO4)、及びカンファースルホン酸(CSA)等があるが、これらに限定されない。プロトン酸として有用な酸のさらなる例が、米国特許第5,069,820号に記載されている。1つの実施態様では、プロトン酸は有機スルホン酸を含む。この有機スルホン酸は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のスルホネート基を有してよい。適切な有機スルホン酸の一例は、式R1HSO3(式中、R1は、置換もしくは非置換の有機基である)を有する化合物である。
【0034】
[00095]プロトン酸ドーパントとして使用するのに適した物質の他の例は、式
【0035】
【化3】
【0036】
[00096](式中、oは1、2、又は3であり;rとpは同一又は異なっていて、0、1、又は2であり;そしてR5は、アルキル、フルオロ、又は1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルである)を有する化合物である。
【0037】
[00097]上記式の構造において、oが1又は2であり;rとpが同一又は異なっていて、0又は1であり;そしてR5が、アルキル、フルオロ、又は1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルであるときも適切である。
【0038】
[00098]1つの実施態様では、プロトン酸ドーパントはp−トルエンスルホン酸を含む。他の実施態様では、プロトン酸ドーパントは、p−トルエンスルホン酸(PTSA)とp−トルエンスルホンアミド(TSAm)との混合物を含む。
【0039】
[00099]一般には、有機溶媒は、プロトン酸と一次ドーパントの両方を溶解するように選定することができる。従って有機溶媒は、少なくとも幾らか極性であるか〔例えば、ブチルセロソルブ(誘電率(DC)=9.4)やn−ブタノール(DC=17.8)等〕、溶解させるべく十分に極性であるか(例えばp−トルエンスルホン酸)、あるいは溶解させるべく十分に無極性である(例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸)。
【0040】
[00100]本発明の適切な有機溶媒の例としては、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、およびこれらの混合物がある。
[00101]本発明の方法においては、有機溶媒とプロトン酸との混合物は通常、プロトン酸を、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させるように、且つ熱応力によって引き起こされる導電性の低下を少なくするように選定される量にて含む〔これにより、コンデンサにおける等価直列抵抗(Δ−ESR)のシフトが減少する〕。
【0041】
[00102]一般には、有機溶媒とプロトン酸との混合物は、プロトン酸を約0.5%〜約25%の量にて含んでよい。混合物はさらに、プロトン酸を約1%〜約15%の量にて、又は約3%〜約7%の量にて含有してよい(全て重量%)。
【0042】
[00103]有機溶媒とプロトン酸との混合物はさらに、接触プロセスの有効性を高める他のほとんど全ての添加剤を含むことができるけれども、該混合物は、一般には、導電性ポリマーのモノマーを含有していないし、またドーピングした導電性ポリマーフィルムと接触する前に導電性ポリマーを含有していない。必要に応じて、該混合物は、実質的に有機溶媒とプロトン酸からなっていてもよい。
【0043】
[00104]1つの実施態様では、有機溶媒中のプロトン酸の濃度、及び混合物と導電性ポリマーフィルムとを接触させる時間(接触条件)は、200℃で120分処理した導電性ポリマーフィルムの重量損失が約20%未満となるように、そして同じ処理後の導電率の低下が30%未満となるように熱安定性を向上させるべく選定される。これとは別に、接触条件は、重量損失が約10%未満となるように、そして同じ処理後の導電率の低下が20%未満となるように、あるいは重量損失が約5%未満となるように、そして同じ処理後の導電率の低下が10%未満となるように選定される。
【0044】
[00105]二次ドーピング及び/又は三次ドーピングの後に、ICPフィルムの導電性を、フィルムをアニールすることによって高めることができる。フィルムは、機械的な延伸アニールと化学的アニールの一方または両方によってアニールすることができる。特定の理論で拘束されるつもりはないが、フィルムを機械的にアニールすると、ポリマー鎖の整列と配向が改良され、これによって電子移動のための経路がつくり出される、と考えられる。さらに、特定の理論で拘束されるつもりはないが、化学的アニールにより、ドーピングしたICPフィルムにおける結晶性ドメインの形成が増大する、と考えられる。機械的アニールと化学的アニールとを組み合わせると、フィルム内に一軸整列された結晶性ドメインが形成され、これによりフィルム中の電子移動の増大が可能になる。こうした電子移動の増大により、フィルムの導電性が改良される。
【0045】
[00106]機械的アニールは、二次ドーピングしたICPフィルムに対しても、あるいは三次ドーピングしたICPフィルムに対しても、フィルムを延伸することによって行うことができる。幾つかの実施態様では、フィルムは、ほぼ室温でアニールすることができる。他の実施態様では、アニールする前にフィルムを加熱するのが望ましい。機械的アニールの前にフィルムを加熱する場合、フィルムは、約50℃〜約80℃の温度に、幾つかの実施態様では約55℃〜約75℃の温度に、そして他の実施態様では約60℃〜約70℃の温度に加熱することができる。
【0046】
[00107]フィルムは、IR加熱、対流加熱、熱オーブン加熱、ガス加熱、ソーラーヒーティング、及びこれらの組み合わせ(これらに限定されない)を含めた、当業界に公知の加熱方法によって加熱することができる。
【0047】
[00108]機械的アニールを起こさせるように、フィルムに機械的応力をかけることができる。幾つかの実施態様では、機械的応力は、延伸、ねじり、曲げ、加圧、および他の機械的変形の1つ以上であってよい。機械的アニールを起こさせるためにフィルムを延伸するとき、フィルムは、フィルムの初期長さの125%を超える長さに延伸することができ、幾つかの実施態様では、フィルムの初期長さの145%を超える長さに延伸することができ、そしてさらに他の実施態様では、フィルムの初期長さの150%を超える長さに延伸することができる。
【0048】
[00109]フィルムを加熱してから延伸する場合、延伸中はフィルムを高温に保持するのが望ましい。フィルムはさらに、延伸温度未満の温度に自然冷却してから機械的応力を解放することができる。幾つかの実施態様では、温度をほぼ室温にまで下げてから機械的応力を解放するのが望ましい。
【0049】
[00110]機械的応力は、平行延伸(すなわち反対方向に)、垂直延伸(すなわち互いに直角の方向に)、平行と垂直の間の任意の角度での延伸、又は二軸延伸であってよい。
[00111]導電性ICPフィルムはさらに、化学的アニールにかけることができる。幾つかの実施態様では、化学的アニールは、三次ドーピング法として機能することができる。化学的アニールは、機械的アニールと併用される場合は、上記の機械的アニールプロセスの前でも、プロセス中でも、あるいはプロセス後でも行うことができる。
【0050】
[00112]本発明の導電性ICPフィルムは、プロトン酸と有機溶媒との溶液中にフィルムを浸漬することによって化学的にアニールすることができる。本発明の化学的アニールプロセスにおいて有用であると考えられているプロトン酸と有機溶媒は、前述したプロトン酸と有機溶媒から選択することができる。
【0051】
[00113]本発明のICPフィルムは、約10秒〜約120秒間浸漬することができ、幾つかの実施態様では約20秒〜約50秒間浸漬することができ、また幾つかの実施態様では約30秒間浸漬することができる。
【0052】
[00114]化学的アニールのための溶液は、有機溶媒中に約1%〜約10%のプロトン酸を含有してよく、幾つかの実施態様では約2%〜約8%のプロトン酸を含有してよく、また他の実施態様では約3%〜約7%のプロトン酸を含有してよい。化学的アニールのための溶液はさらに、2種以上のプロトン酸と2種以上の有機溶媒を含んでよい。
【0053】
[00115]化学的アニールのための溶液中に2種以上のプロトン酸が含まれる場合、プロトン酸の比は約1:1〜約3:1であってよく、幾つかの実施態様では約1.5:1〜約2.5:1であってよい。
【0054】
[00116]上記ドーピング方法のそれぞれをお互いと併用すると、得られるICPフィルムの導電率を三桁以上増大させることができる。
[00117]本発明に従って作製される一次ドーピング、二次ドーピング、及び/又は三次ドーピングしたICPフィルムは、金属様の導電性が求められる種々の用途に使用することができる。例えば、本発明のフィルムは、航空機や車両用の電磁波シールドコーティング;ならびに構造物、航空機や他の複合材料用の高性能センサー、及び/又は携帯可能な家庭用電化製品(例えば、コンピュータ用のバックアップ電源、電子信管、及び有機LED)のための腐食抑制コーティング;に使用することができる。本発明のフィルムはさらに、スーパーコンデンサ、バッテリー、及びスーパーコンデンサ/バッテリー組み合わせ物等のエネルギー貯蔵用途に使用することができる。
【0055】
[00118]ある1つの例(これに限定されない)では、本発明のICPフィルムは、スーパーコンデンサデバイス中のICP電極として使用することができる。ICP電極は、スーパーコンデンサに要求される導電率、電圧範囲、ストレージ容量、及び化学的安定性と環境安定性をもたらすように調整することができる。ICPベースのスーパーコンデンサは、4つのカテゴリーに分けることができる:1.タイプIのスーパーコンデンサは、正にドーピングした〔positively doped(p−doped)〕同じICPが両方の電極上に使用されている対称構造のスーパーコンデンサである。これらのスーパーコンデンサは、ポリマーの過酸化のために約0.75〜1.0Vという制限された電圧を有し、従ってエネルギー密度と出力密度が限定される。2.タイプIIのスーパーコンデンサは、p−ドーピングした異なるICPを各電極上に使用する。3.タイプIIIのスーパーコンデンサは、一方の電極に対しては負にドーピングした〔negatively−doped(n−doped)〕形態の同じICPを使用し、他方の電客に対してはp−ドーピングした形態の同じICPを使用する。4.タイプIVのスーパーコンデンサは、タイプIIに似た非対称構造物であるが、n−ドーピングした電極とp−ドーピングした電極に対して異なるICPが使用される。タイプIIIとタイプIVのスーパーコンデンサはともに、n−ドーピングしたポリマーとp−ドーピングしたポリマーを使用するので、これらはときどき一緒に論じられることがある。
【0056】
[00119]種々のカテゴリーのスーパーコンデンサのエネルギー密度と出力密度は、次のように算出することができ、ここでIは電流(アンペア)であり、Vは電位(ボルト)であり、Tdは放電時間(秒)であり、mはポリマー電極の全質量(グラム)である。
【0057】
【数1】
【0058】
[00120]ポリアニリンは、種々の電解質中での電気化学的安定性のために幾つかの用途に対して有用である。スーパーコンデンサデバイスにおける使用に対しては制限があるが、高い等価直列抵抗(ESR)と不可逆性のために、デバイス性能は良くない。スーパーコンデンサデバイス中にPANIを使用するための従来のアプローチは一般に、改良された電荷移動と減少したESR(これにより高い充放電速度が可能となる)を果たすために、支持体材料〔例えばカーボンナノチューブ(CNT)〕上に導電性ポリマーを使用することに重点が置かれた。しかしながら、CNTは高価であって、このような用途に使用すべく必要に応じて合成したり改質したりするのが困難である。
【0059】
[00121]本発明では、ICPフィルムをスーパーコンデンサ中に使用することができ、これにより該スーパーコンデンサは、CNT等の高導電性支持体を全く必要とせずに高いエネルギー密度と高い出力密度を示す。特定の理論で拘束されるつもりはないが、上記プロセスの1つ以上によって、結晶性ドメインを示す高導電性のポリマー鎖が形成される(これにより、エネルギー密度、出力密度、及びサイクル寿命に関して、スーパーコンデンサのデバイス性能の向上がもたらされる)場合は、構造特性相関性が存在すると考えられる。本発明はさらに、ステンレス鋼電流コレクタとICP電極との間の効率的な電荷移動をもたらす(これによりESRがより一層減少する)界面層(IFL)を使用してタイプIのスーパーコンデンサを製造することを含む。
【0060】
[00122]幾つかの実施態様では、ICPフィルムをペレット化してから電極として組み込むことができる。他の実施態様では、ICPフィルムはペーストの形態をとってよい。
[00123]幾つかの実施態様では、本発明のICP電極に炭素添加剤を組み込むのが望ましい。このような炭素添加剤としては、活性炭、カーボンブラック、及び当業界に公知の他の炭素添加剤の1種以上があるが、これらに限定されない。
【0061】
[00124]本発明のICPフィルムはさらに、タイプI、II、III、及びIVのスーパーコンデンサのいずれに対しても使用することができる。さらに、幾つかの実施態様では、同じスーパーコンデンサ中に異なるICPフィルムを使用するのが望ましい。
【0062】
[00125]図1は、本発明による典型的なタイプIコイン電池スーパーコンデンサデバイス2の概略図である。この概略図は、支持体4と接触している任意のスペーサーを有する支持体4を示している。第1の電極8は本発明のICPフィルムを含んでよい。前述したように、第1の電極8は、必要に応じて1種以上の炭素添加剤を含んでよい。幾つかの実施態様では、他の添加剤(例えば前記した添加剤)を第1の電極8中に組み込むのが望ましい。本発明のスーパーコンデンサ2はさらに、電解質10を含む。幾つかの実施態様では、電解質10と第1の電極8との間に、1つ以上の任意のセパレータ(図示せず)を組み込むのが望ましい。第2の電極14も存在する。第2の電極14は、第1の電極8と同じであっても、あるいは異なっていてもよい。第2の電極14と第1の電極8は通常、図1に示す典型的なスーパーコンデンサにおいては電解質10をはさんで反対側に存在する。スーパーコンデンサ2は、第2の支持体16をさらに含む。スーパーコンデンサは、必要に応じて、スプリング18及び/又は追加のスペーサー20をさらに含んでよい。
【0063】
[00126]スペーサーとして使用した場合に有用であると考えられる代表的な物質は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、他の電気絶縁性ポリマー、セラミック、及びこれらの組み合わせである。
【0064】
[00127]本発明に従って有用であると考えられる代表的な電解質は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−IM)、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li−IM)、タングストケイ酸、及びこれらの組み合わせの1種以上である。
【0065】
[00128]幾つかの実施態様では、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ブチルニトリル、及びこれらの組み合わせ等の溶媒を電解質中に組み込むのが望ましい。
【0066】
[00129]幾つかの実施態様では、ポリビニルアルコール等のポリマーとイオン性物質とを混合して本発明の電解質を形成させるのが望ましい。
[00130]さらに、幾つかの実施態様では、スーパーコンデンサ中に電極に隣接して界面層を組み込むのが望ましい。任意の界面層において有用であると考えられる代表的な物質は、金、白金、クロム、チタン、イリジウム、及びこれらの組み合わせの1種以上である。界面層が使用される場合、界面層は一般に、電極とスペーサーとの間に配置される。幾つかの実施態様では、界面層は、ICP電極の機械的安定性を高めるのに、ICP電極の電荷移動効率を高めるのに、及び/又はICP電極の電荷散逸を高める(より高い電位での作動が可能となる)のに有用である。
【0067】
[00131]さらに、本発明の電極のための支持体を使用するのが望ましい。支持体は、エネルギーを電極から離して伝えるのに有用である。例えば、本発明のICP電極は、ステンレス鋼(SS)ディスク等のディスク上にデポジットさせることができる。本発明に従って有用であると考えられる支持体は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、炭素、他の金属合金、及びこれらの組み合わせである。
【0068】
[00132]以下に実施例を挙げて、本発明の好ましい実施態様を説明する。本明細書における特許請求の範囲内の他の実施態様は、本明細書に対する考察、又は本明細書に開示の本発明の実施から、当業者には明らかであろう。本明細書では、実施例とともに代表的なものだけが説明されており、本発明の要旨は実施例の後に記載の特許請求の範囲によって示されている。
【実施例】
【0069】
実施例1
[00133]本実施例は、PAC1003(ポリアニリン−DNNSA)フィルムとPAC1007(ポリアニリン−DNNSA−SDP)フィルムの製造方法を説明する。
【0070】
[00134]PAC1003溶液の一次ドーピングしたポリアニリン溶液をクロスリンク社から得た。これらの溶液は、ポリアニリンとDNNSAを溶媒とともに含む。溶液中の溶媒は、キシレンとブチルセロソルブ(BCS)である。PAC1003の固形分は約45%である。スピン・コーティングとドロップ・キャスティングによって薄膜を作製するために、PAC1003を、キシレン/BCS(1/1重量比)を使用して約15%にまで希釈する(PAC1003−15%フィルム)。実施例では全てPAC1003−15%フィルムを使用し、特に明記しない限りPAC1003フィルムと呼ぶ。
【0071】
[00135]ここで使用した一次及び二次ドーピングしたポリアニリン溶液は、クロスリンク社製のPAC1007溶液として入手した。本溶液は、ポリアニリン、DNNSA、SDP、及び溶媒を含む。溶媒はキシレンとBCSである。PAC1007の固形分は約25%であった。スピン・コーティングとドロップ・キャスティングによって薄膜を作製するために、PAC1007を、キシレン/BCS(1/1重量比)を使用して約15%にまで希釈した(PAC1007−15%フィルム)。実施例では全てPAC1007−15%フィルムを使用し、特に明記しない限りPAC1007フィルムと呼ぶ。
【0072】
[00136]UV−Vis−NIRスペクトルのための薄膜サンプルを、ポリマー溶液(3ml)を使用してスライドガラス(1インチ×1インチ)上に作製した。脱イオン水、アセトン、及びイソプロパノール中に浸漬することによってスライドガラスを清浄にした。約15重量%の固形分を有するPAC1003サンプルの標準的な吸収プロフィールを図2に示す。PAC1003のスピンコーティングは、6000rpmのスピンコーティング速度にて約30秒行った。150℃で30分熱処理すると、約780nmでの吸収ピーク(PANI鎖のコイル様コンフォメーションにおけるポラロンバンドに帰属)が消失し、NIR領域(1000〜3300nm)においてブロードバンド(すなわち、自由キャリヤー吸収テール)が現われることが見出された。このことは、PANI鎖が拡張鎖コンフォメーションに変化したこと(すなわちフィルムの形成)を示している。
【0073】
[00137]図3は、上記スピンコーティング法に従って形成されるPAC1007フィルムの、150℃にて30分の熱処理前と熱処理後のUV−Vis−NIRスペクトル曲線を示す。NIR領域におけるブロードバンドは、拡張鎖コンフォメーションでのPANI鎖の存在(すなわちフィルムの形成)を示している。
【0074】
[00138]実施例における全てのフィルムの導電率は、1000オングストローム厚さのクロム−金二重層を4プローブ構造物上のコンタクトバス(contact bus)として使用して、室温にて測定した。フィルム厚さの測定は、原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して行った。記録されている厚さは、各サンプルに対して3つの測定点の平均である。厚さと導電率の測定に対しては、各配合物について少なくとも3つのサンプルを調製した。
【0075】
実施例2
[00139]本実施例は、PAC1003フィルムとPAC1007フィルムをPTSA−BCS溶液でドーピングする方法を説明する。
【0076】
[00140]この方法は、PAC1003フィルム又はPAC1007フィルムをPTSA−BCS溶液中に30秒浸漬することからなる。ドーピングすると、フィルムの厚さは、約400〜1000nmから約150〜300nmに減少する。湿潤状態のフィルムに対して穏やかなエアーブローを施してから、オーブン中で150℃にて約30分熱処理して高品質のフィルムを得る。
【0077】
[00141]PTSAドープPAC1003フィルムの熱処理後の導電率を表1に記す。209nmのフィルム厚さを有するPTSAドープPAC1003フィルムサンプルが、334S/cmという最大導電率を記録した。PTSA処理なしのPAC1003フィルムは、15〜20S/cmという導電率を記録した。
【0078】
【表1】
【0079】
[00142]熱処理後のPTSAドープPAC1007フィルムの導電率を表2に記す。249nmのフィルム厚さを有するPTSAドープPAC1007フィルムサンプルが、187S/cmという最大導電率を記録した。PTSA処理なしのPAC1007フィルムは、15〜20S/cmという導電率を記録した。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例3
[00143]本実施例は、PAC1003フィルムとPAC1007フィルムをPTSA−TSAm−BCS溶液にてドーピングする方法を説明する。
【0082】
[00144]フィルムをPTSA−TSAm−BCS溶液中に30秒浸漬した。ドーピングすると、後処理条件に応じて、PAC1003のフィルムの厚さは、約600〜1000nmから約150〜350nmに減少した。湿潤状態のフィルムに対して穏やかなエアーブローを施してから、オーブン中で150℃にて約30分熱処理した。
【0083】
[00145]PTSA−TSAmドープPAC1003フィルムの熱処理後の導電率を表3に記す。5%PTSAと0.5%TSAmのドーパント配合物溶液を使用して作製された、175nmのフィルム厚さを有するPTSA−TSAmドープPAC1003フィルムサンプルが、270S/cmという最大導電率を記録した。ドーパント配合物溶液中のTSAmの濃度が5%に増大しても、導電率は改良されず、フィルムの品質は向上しなかった。PTSA−TSAm処理なしのPAC1003フィルムは、0.16S/cmという導電率を記録した(図4を参照)。
【0084】
【表3】
【0085】
[00146]PTSA−TSAmドープPAC1007フィルムの熱処理後の導電率を表4に記す。2.5%PTSAと0.25%TSAmを含むドーパント配合物溶液を使用して形成される、1000nmのフィルム厚さを有するPTSA−TSAmドープPAC1007フィルムサンプルが、400S/cmという最大導電率を記録した。PTSA−TSAm処理なしのPAC1007フィルムは、15〜20S/cmの導電率を記録した(図5を参照)。
【0086】
【表4】
【0087】
[00147]図6は、PAC1003フィルムとPTSA−TSAmドープPAC1003フィルムの吸収曲線を示す。PTSA−TSAmドーピングすると、約780nmでの吸収ピーク(PANI鎖のコイル様コンフォメーションにおけるポラロンバンドに帰属)が消失し、NIR領域においてブロードバンドが現われることが見出された。このことは、PANI鎖が拡張鎖コンフォメーションに変化したことを示している。
【0088】
[00148]図7は、PAC1007フィルムとPTSA−TSAmドープPAC1007フィルムの吸収曲線を示す。PTSA−TSAmをドーピングすると、NIR領域に存在するブロードバンドが高エネルギー領域に広がっていくようであり、このことは、フィルムにおいて、結晶性ドメインの増大とPANI鎖の最密充填が起きていることを示している。
【0089】
実施例4
[00149]本実施例では、1.5mlの配合物溶液をガラス支持体上にキャスティングし、ドラフト中で一晩風乾し、次いでオーブン中にて150℃で30分熱処理することによって自立性のPAC1003フィルムとPAC1007フィルムを製造した。フィルムをPTSA/BCS(5w/v%)又はPTSA/TSAm/BCS(5/0.5w/v%)のドーピング溶液中に30秒浸漬し、安全カミソリの刃を使用して自立性フィルムとしてカットした。自立性のPAC1007フィルム(特に、PTSAドーパント溶液を使用して製造されたフィルム)は堅くて脆いことがわかった。特定の理論で拘束されるつもりはないが、既に結晶性のPAC1007フィルムに結晶性のPTSA化合物を加えることによって引き起こされる高い結晶化度によるものと考えられる。同様に、少量のTSAm(存在する場合)がサンプルに可塑化効果をもたらし、これにより導電性に悪影響を及ぼすことなくフィルムはフレキシブルになる、と考えられる。
【0090】
実施例5
[00150]本実施例では、前記した典型的な蒸気清浄化法について説明する。PAC1003フィルムを、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、又はジイソプロピルフェノールの蒸気に30分さらした。気化させようとする溶液の入ったビーカーを、チモールの場合は150℃、カルバクロールの場合は100℃、そしてイソプロピルフェノールとジイソプロピルフェノールの場合は130℃に制御された表面温度を有するホットプレート上に置いた。蒸気清浄化すると、フィルムの厚さは、約400〜1000nmから約150〜500nmに減少する。蒸気清浄化したサンプルを引き続き、オーブン中にて150℃で30分熱処理した。次いで、蒸気清浄化したPAC1003フィルムを、PTSA(BCS中5%w/v)溶液中にて30秒、あるいはPTSA/TSAm〔1:1v/v(BCS中PTSA5%w/v+TSAm0.5%w/v)〕溶液中にて約30秒浸漬ドーピングした。ドーピングすると、フィルムの厚さは約150nm〜約300nmに減少した。湿潤フィルムに対し穏やかなエアーブローを施し、次いでオーブン中にて150℃で30分熱処理した。
【0091】
[00151]蒸気清浄化したPAC1003フィルムの導電率を、サンプルフィルムの厚さとともに表5〜7に記す。カルバクロールとチモールで蒸気清浄化したPAC1003フィルムサンプルは、それぞれ48.5S/cmと25.2S/cmという最大導電率を記録した。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
[00152]図8は、チモールによる中間の蒸気清浄化を施してPTSA−TSAmをドーピングしたPAC1003フィルムの吸収曲線を示す。チモールによる蒸気清浄化を行うと、約800nmでの吸収ピーク(PANI鎖のコイル様コンフォメーションにおけるポラロンバンドに帰属)が消失し、代わりにNIR領域にブロードバンドが現われることが見出された。このことは、PANI鎖が拡張鎖コンフォメーションに変わったことを示している。図9からわかるように、他の蒸気による中間の蒸気清浄化工程を含むPAC1003フィルムに対しても、同様の傾向が観察された。
【0096】
実施例6
[00153]本実施例では、PANIフィルムを機械的アニールするための一般的な方法について説明する。IRランプを熱源として使用してPANIフィルムサンプルを65℃に加熱してから、初期長さの140%まで機械的延伸を施した。フィルムを、延伸状態で約5分保持した。延伸速度は重要なことではなく、約0.1cm/分〜約5cm/分の範囲であってよい。延伸後、サンプルを室温に冷却し、機械的応力を解放した。機械的アニールにかけられたフィルムは、延伸後でも、テフロンに対する接着性と保全性を保持した。4プローブ導電率装置を使用して、平行抵抗と垂直抵抗(延伸方向に対して)を測定した。
【0097】
実施例7
[00154]本実施例では、PANIフィルムを化学的アニールするための一般的な方法について説明する。PANIフィルムを、BCS中5%(w/v)PTSAあるいは[BCS中PTSA5%(w/v)+BCS中TSAm0.5%(w/v)]の1:1(v/v)中に30秒浸漬することによって、PANIフィルムを化学的アニールにかけた。
【0098】
[00155]機械的アニールと化学的アニールを施したPAC1007フィルムの4プローブ抵抗は2.5オームの抵抗を示した。未延伸のPAC1007フィルムは42オームの抵抗を示した。平行抵抗と垂直抵抗を図10に示す。特に、140%に延伸してから1:1v/v[PTSA5%+TSAm0.5%]で化学的アニールを施したPTFE上のPAC1007フィルムは、極めて高い導電率を示した(表8)。延伸したPAC1003フィルムに対する4プローブ抵抗データにおいても、同様の傾向が図11に示されている。
【0099】
【表8】
【0100】
実施例8
[00156]ゴムガスケットで気密シールされた器具を含むコイン電池を使用して、図1に示すようなタイプIの半導体コイン電池中にPANIフィルムを組み込んだ。アービン社製の充放電試験機を使用して、比キャパシタンス、エネルギー密度、及び出力密度のデータを得、クロノポテンショメトリーを使用してサイクル寿命を評価した。電性ポリマー電極の導電率は、デバイス性能に及ぼす影響を調べるために系統的に変化させる重要な設計要素であった。フィルムの厚さを変えることによって、及び/又は、イオン液体もしくはイオン液体の混合物を電解質として使用することによって、ICPフィルムの導電率を変化させた。
【0101】
[00157]3つの異なる導電率のPANI電極フィルム(0.1S/cmのPAC1003、250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003、及び1000S/cmの二次ドーピングしたPAC1003)を、SSディスクを含む種々の支持体上にて、所望するフィルム厚さとモルホロジーになるよう作製した。1000S/cmの導電率を示す二次ドーピングしたPAC1003PANI電極を、以後“金属性PANI”と呼ぶ。別のバリエーションでは、金の界面層(IFL)をSSディスク上にデポジットさせてからPANIフィルムを被覆し、これにより導電率が4000S/cmに向上した。使用した電解質はEMI−IM〔1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕(イオン液体電解質)であり、GORE PTFE(厚さ0.0006”)をセパレーター材料として使用した。こうして得られたデバイスの重量は約4〜5gであることが分かった。スペーサーの数は2〜4であり、スタックの高さは0.085〜0.11”であった。
【0102】
[00158]導電性ポリマー電極を使用するコイン電池スーパーコンデンサを、充放電スキャンとサイクリックボルタンメトリースキャンによって、比キャパシタンスに関して特性決定した。サイクル安定性は、ガムリー社製定電位機器を使用してクロノポテンショメトリーによって特性決定した。
【0103】
【化4】
【0104】
A) デバイス性能に対する導電性ポリマーの導電率の役割
I. 250S/cmの導電率を示す二次ドーピングしたPAC1003電極を含むコイン電池
[00159]充放電サイクル実験は、250S/cmの導電率を示す二次ドーピングしたPAC1003を電極材料として使用するコイン電池に対する最適のエネルギー密度と出力密度が1.92Wh/Kgと42.72W/Kgであることを示している(図11)。さらに詳細には、1mAを10秒(0.8Vに充電)及び−1mAを10秒(0Vに放電)加えることによって、充放電サイクル実験を行った。コイン電池の放電時間は7.8秒であった。サイクル実験を最大で500サイクルまで行い、全体にわたって電気化学的安定性を観察した。充放電サイクルの結果を図12に示す。
【0105】
[00160]PAC1003ベースのコイン電池に対し、クロノポテンショメトリーを使用して、EMI−IM電解質媒体中にて最大30,000サイクルまでの充放電サイクルについて検討した。全てのPAC1003ベース電極に対し、初期の電位降下を除いて最大で10,000サイクルまでは、安定な電気化学電位窓が観察された(図13において、上側のラインは充電状態を示し、下側のラインは放電状態を示す)。しかしながら、相当量の電流負荷にさらされたという事実(1.5mA/−1.5mA−第1の10,000サイクル、3.0mA/−3.0mA−第2の10,000サイクル、3.0mA/−3.0mA−第3の10,000サイクル)を考慮すると、250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003電極に対し、全体的な電位降下はかなり大きい(出発電位の約50%まで)と思われる(図13b、13C、13dを参照)。
【0106】
[00161]図14からわかるように、250S/cmの二次ドーピングしたPAC1003電極を使用するコイン電池の比キャパシタンスは、最大で10,000サイクルまでのサイクルにて10.07F/gから9.67F/gに低下した。しかしながら、初期状態のPAC1003を使用するコイン電池の場合、比キュパシタンスは、最大で10,000サイクルまでのサイクルにて0.09F/gから0.04F/gに低下した。
【0107】
II. 金属性PANI(1000S/cm)電極を使用するコイン電池
[00162]観察された一般的な傾向は、PANIフィルムの導電率の向上という、(幾つかのファクターによる)デバイス性能の向上であった(表9と図15を参照)。金属性PANIフィルムを含むコイン電池の比キャパシタンス、エネルギー密度、及び出力密度(表10と図15のプロットにて示されている)、そしてさらにサイクル安定性が図16に示されている。このデバイスは、使用される実験条件に応じて比キャパシタンスが11.0〜20.0F/gの範囲であることが見出され、±1mAの充放電電流サイクルに対して、少なくとも30,000充放電サイクル(表11と図17を参照)までの安定な電圧窓が観察された。
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】
【0110】
III. ポリアニリン層とSSディスクとの間の金界面層(IFL)の存在がコイン電池デバイス性能に及ぼす影響
[00163]SSディスクと導電性ポリマー電極との間に金界面層(IFL)を組み込むと、IFLなしの電極における放電ごとの最初に通常観察される、望ましくない(しかしながらかなりの)IR/抵抗降下を大幅に減少させる(図18)ことによって役立つ。PANI被膜とSSディスク電流コレクターとの間に界面層(IFL)が存在すると(図18を参照)、安定なデバイス動作の電位窓が広くなることで、そしてデバイスの比キャパシタンスが改良されることで(図19、表11と12)コイン電池デバイスの性能が向上する。金IFLの厚さを10nmと100nmの間で変えたところ、厚さを10nmより増大させても、デバイス性能に対していかなる有意な影響も及ぼさない、ということが見出された(図19)。このデバイスのサイクル安定性は、少なくとも最大で30,000サイクルである(図20を参照)。
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
B) デバイス性能に及ぼす導電性ポリマーの質量(又は厚さ)の影響
[00164]SSディスク上に被覆された金属性PANIフィルムを種々の量にて含有する一組のコイン電池(いかなるIFLも存在しない)に対して充放電サイクルを施した。より少ない質量(0.31mg)のPANIを組み込んだコイン電池は、比較的多いポリマー質量(1.54mgのPANI)を有するデバイスと比べて、より高いエネルギー密度(図21)とより速い放電特性を示した。
【0114】
C) デバイス性能に及ぼすイオン液体をベースとする電解質組成物の影響
[00165]コイン電池に関する研究のほとんどは、イオン液体であるEMI−IM〔1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕を電解質として使用することを伴った。別のイオン液体成分〔例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li−IM)〕を含むイオン液体混合物がコイン電池デバイス性能に及ぼす影響も検討された。Li−IMを電解質組成物中の成分として組み込むことによって、初期状態のEMI−IM(すなわち、Li−IMが存在しない)に対して得られたデータと比較して、エネルギー密度の少なくとも2ポイントの急増が観察された(表13と図22を参照)。
【0115】
【表13】
【0116】
実施例9
[00166]本実施例では、本発明のドープフィルムと炭素配合物を電極として使用してスーパーコンデンサを作製した。幾つかの配合物を異なる比にて作製した。
【0117】
[00167]PAC1003(固形分45%)を50mlのビーカーに入れた。同じ体積量のメタノールを加え、5分撹拌した。PAC1003はメタノールに溶解せず、過剰のDNNSAだけを抜き取った。これにより、DNNSAがドーピングされたポリアニリンの沈降と濾過が可能になる。真空濾過装置をセットした。沈降した固体のドープPAC1003を濾過し、メタノールで洗浄した。室温で、次いで150℃で30分乾燥した。次いで粉末を乳鉢中にて微粉砕した。
【0118】
[00168]このPAC1003粉末を使用して、PAC1003粉末を75重量%、活性炭を20重量%、及びカーボンブラックを5重量%含有する配合物を作製した。他の配合物(例えば、45%のPAC1003、50%の活性炭、及び5%のカーボンブラック)も作製した。粉末形態の代わりにPAC1003の45%固形分配合物も検討した。これは必然的に、湿重量のPAC1003を使用すること、次いで最終組成物を乾燥することを伴った。
【0119】
[00169]PANI DBSA(JJH2140)は既に粉末形態であった。活性炭及びカーボンブラックとの配合物は、組成比に関してPAC1003のそれと同様であった。
[00170]ペレットを作製するために、秤量したサンプルを、サンプルプレプ(SamplePrep)からペレットダイ加圧装置中に配置し、圧力を加えた。最適のセッティングを確立するために、最初に種々の圧力を検討し、次いで他のペレットに適用した。
【0120】
コイン電池の作製と特性決定
セパレーター=厚さ23μmのゴア(Gore)セパレーター
電解質=EMI−IM
[00171]ペレット(13mm)をステンレス鋼ディスク上に配置し、300psiにて圧着した。アービン社製バッテリーテスター(Arbin Battery Tester)を使用して、コイン電池を、種々の充電/放電条件(0.1mA、1mA、10mA、100mA、及び1〜3V)とスキャン速度にて分析した。
【0121】
[00172]充放電サイクル時においてホールドタイムを組み込むことの影響を調べた。これは、0秒、2秒、及び10秒での最大値と最小値にて、装置をホールド電位にセッティングすることによって行った。これは、ホールドタイムが誤った結果をもたらすことがあるという思いがけない新事実を伴った。
【0122】
コイン電池の電気化学的‘活性化’
[00173]厚膜やペレットを使用して作製したコイン電池は、活性物質の量が増大するにつれてエネルギー密度(活性物質のWH/Kg)が減少することを示した(図23)。これは、厚膜における電子回路に問題があることと、電解質が活性物質全体と効率的に通じ合えないことから引き起こされると考えられる。このため、電極材料のほとんどが不活性になる。活性化するために、先ずコイン電池をゆっくりした充電速度で充電して、電極材料を通る電子経路をつくり出した。電子経路を確立するために高電流も使用した。
【0123】
PANI/DBSA炭素繊維
[00174]この配合物は、より良好な充放電能力を示した。しかしながら低電流では、PANI/DBSA/炭素繊維コイン電池は、最大1.0Vまでは充電できなかった。1Vの充電に達するには数日かかるようである。PANI対炭素繊維の3:1比と2:1比との間に有意差はみられなかった。
【0124】
[00175]さらに、コイン電池1個当たりの充電されたエネルギーは、放電されたエネルギーと比較して著しく高い、ということが明らかとなった。より高い電圧では、これらのデバイスは、低電流の場合より多くのエネルギーを放電することができた(図24)。
【0125】
【表14】
【0126】
充電エネルギーと放電エネルギーに及ぼすホールドタイムの影響
[00176]下記のエネルギー算出式からわかるように、充電時間と放電時間は、算出における大きなファクターである。PANI/DBSA/炭素繊維コイン電池を、0秒、2秒、及び10秒のホールドタイムにおける充放電に関して特性決定した。得られた結果を図25に示す。
【0127】
【数2】
【0128】
図26と27に示す充放電サイクルから、低電流では、特定のデバイスが、予想外のことにより高いIP降下を示す、ということがわかる。電流がより高いと、電流は電位の変化についていくことができない。しかしながら、蓄積されたエネルギーはごくわずかであった。
【0129】
PAC1003:活性化粉末:カーボンブラックペレット
[00177]既知量のPAC1003粉末をプレスしてペレットを形成させることによってPAC1003ペレットを作製した。これらのペレットをコイン電池中に組み込んだ。PAC1003ペレットコイン電池は、極めて速やかに充電されることが観察されたが、10mA以上ではエネルギーはほとんど蓄積されなかった。しかしながら、これらのペレットによって蓄積されたエネルギーは、PAC1003を使用するフィルムベースのコイン電池からみると大幅な改良となった。コイン電池は、低電流においてはより高い効率を示したが、出力はかなり低かった(0.001J/デバイス放電エネルギー、及び活性物質1Kg当たり1.7W)。
【0130】
[00178]エネルギーと出力を向上させるために、活性炭はエネルギー密度を高めるように選定し、カーボンブラックは電子伝導率を高めるように選定した。ここで検討・報告する異なった配合物は、PA1003:活性炭:カーボンブラックがそれぞれ、75%:20%:5%及び45%:50%:5%の配合物である。ペレットは2000psiにてプレスし、EMI−IMは電解質である。充放電曲線を図28に示す。
【0131】
【表15】
【0132】
[00179]図29からわかるように、PAC1003粉末を活性炭及びカーボンブラックと配合すると、エネルギー密度と出力密度の増大を示した。炭素粉末とカーボンブラックを加えると、エネルギー密度が向上したが、充電時間が大幅に増大した。充放電電流がより低いと、エネルギー密度は極めて高かった。このことは、スーパコンデンサとって典型的なことである。
【0133】
[00180]本実施例は、ペレット中に活性炭を組み込むこと、及び活性炭の量を20%から50%に変えることに利点がある(エネルギーが増大するが、出力は不変のままである)、ということを示す。このことは、エネルギー容量に関する材料特性が改良され、このとき電子伝導特性に著しい悪化が見られない、ということを示している。
【0134】
【表16】
【0135】
[00181]PAC1003/活性炭/カーボンブラック配合物はさらに、図30に示すように、10mA及び1Vにてより高い充電エネルギーを示したが、放電エネルギーは低かった。このことは、放電時におけるイオン移動度がごく小さいということを示している。高電流では、IRの降下が高かった。低電流では、IRの降下は低かったが、出力も低かった。
【0136】
活性炭対照標準(Activated Carbon Control)
[00182]性炭のペレットは一般に、密着性とペレット保全性を補助するよう、少量のPTFEを組み込むことによって作製される。ここで使用する活性炭の場合、これは不可能であった。4000psiでペレットをプレスしても、ペレットの保持はできなかった。さらに、活性炭中に5重量%〜20重量%のPTFEを組み込んでも、ペレットは形成されなかった。ペレットを作製するために、より高濃度のPTFE結合剤を使用すると、形成されるペレットは、強度が低く、コイン電池製造上の厳しい取扱いに耐えることができなかった。結合を補助するために、PTFEの代わりにコロイダルグラファイトを使用した。テッド・ペラ社(カリフォルニア州レディング)から入手のコロイダルグラファイトは、高粘度ペーストの形態をとっていた。ペレットを作製するために、0.86gの活性炭、0.06gのカーボンブラック、及び2.11gのコロイダルグラファイトを秤量して乳鉢中に入れた。これらをよく混合し、オーブン中にて150℃で15分乾燥してイソプロパノールを除去した。得られた固体を圧潰し、微粉砕してからペレットを作製した。2000psiでプレスしたペレットは堅く、コイン電池に使用するのが容易であった。
【0137】
[00183]得られた値は、電圧窓が3Vに広げられるにつれて出力とエネルギーの系統的な増大を示した。最良の値は、0.017J/秒の場合に2.2J/デバイスにおいて見られた(図31)。
【0138】
[00184]PAC1003/活性炭/カーボンブラック(45%:50%:5%)最良組成物によるコイン電池を、活性炭対照標準の場合と類似の条件に通した。活性炭対照標準コイン電池の放電エネルギーとPAC1003複合物のそれとを比較すると、これら2つは類似の傾向に従うようであった(PAC1003複合物のほうが、活性炭対照標準と比較してわずかに改良された性能を示す)。ここで使用したPAC1003複合物の配合は、PAC1003/活性炭/カーボンブラックが45:50:5であった。PAC1003配合物のエネルギー密度のほうがより高かった。出力はほぼ同等であり、活性炭対照標準のほうがやや高い出力を示した。活性炭対照標準がPAC1003配合物と比べて同等以上の出力密度を有するという矛盾は、結合剤として使用された導電性のグラファイトの存在によるものであった。活性炭は、PAC1003と配合すると充放電サイクルを安定化させるのに役立ち、電圧窓を広げた。10mA及び1Vにて100サイクルを施した後、PAC1003配合物は、1サイクル当たりの電荷の増大を示しただけであったが、活性炭対照標準は電荷を消失させた。これらの結果は、図32と33に示されている。電圧が増大するにつれて、PAC1003/活性炭/カーボンブラック(9:10:1)は、益々活性炭対照標準に類似して挙動する。
【0139】
[00185]効率(実際に放電された電荷の量のパーセント)を算出した〔効率=放電エネルギー(J/デバイス)×100%/充電エネルギー(J/デバイス)〕。2つのデバイスは、低電圧でも高電圧でも類似の効率を示した。PAC1003複合物は、10mAでは効率が1.5Vで最大に増大したが、活性炭対照標準は、図34からわかるように、最大で約3.0Vまではより高い効率を保持した。
【0140】
PANI/DBSA
[00186]PANI/DBSA(JJH2140)のコイン電池を作製した。PANI/DBSAは粉末形態をとっていた。ペレットを形成させるための最良の圧力は、2000psiであることが観察された。より高い圧力では、コイン電池の性能は良くなかった。上記PAC1003の場合と同じ方法を使用して、PANI/DBSAと炭素との配合物を作製した(すなわち、75%PANI/DBSA:20%活性炭:5%カーボンブラック及び45%PANI/DBSA:50%活性炭:5%カーボンブラック)。
【0141】
[00187]PAC1003配合物において見られたように、PANI/DBSAコイン電池は、より低電流においてより高いエネルギーを、そしてより高電流においてより高い出力密度を示した。しかしながら、より高電流では、IRの降下が大きく、このことがデバイスのエネルギー出力に不利に作用した。図35からわかるように、PANI/DBSAコイン電池は、PAC1003コイン電池の性能を凌いだ。
【0142】
【表17】
【0143】
【表18】
【0144】
【表19】
【0145】
[00188]概して、PANI/DBSA/活性炭/カーボンブラックが最良の結果を有した。1mA及び1Vでは、該デバイスは、PAC1003/活性炭/カーボンブラックが0.11J/デバイスを有するのに比較して1.37J/デバイスを有した。薄膜ベースのコイン電池に対する従来の結果から、これは100オーダーの向上である。
【0146】
[00189]J/秒に関して、PANI/DBSA複合物とPAC1003/カーボン複合物はほぼ同等の値を有した。このことは、初期状態のPAC1003は、DBSAと比較して充分なエネルギー貯蔵能力をもたないが、エネルギー移動に有効でありまたPANI/結合剤とともに導電性結合剤として役立つ、ということを示している。
【0147】
電気化学的活性化
[00190]コイン電池においてみられるエネルギー密度と出力密度が低いため、最大で100サイクルまで繰り返し、最初と最後のサイクルを比較することによって電気化学的活性化を試みた。この処置は、充放電サイクルが増大したときに改良を示すものと推測された。
【0148】
[00191]図36、37、38、及び39からわかるように、一般に、試験したデバイスに対しては、大幅な改良も悪影響も観察されなかった。
サイクル安定性に及ぼす電圧の影響
[00192]サイクル安定性に及ぼす電圧の影響は、図40において観察することができる。
【0149】
実施例10
[00193]PAC1003/炭素配合物とPANI/DBSA/炭素配合物を作製するのに使用されるステンレス鋼ディスクに及ぼす10nM金界面層(IFL)の影響を比較するために、一組のステンレス鋼ディスクを10nmの金で被覆し、これを使用してペレットベースのコイン電池を作製した。記録されたデータは、1Vにて10mAと1mAに対するデータである。図41〜43のそれぞれに対し、順番は以下のとおりである:1.PAC1003;2.IFL SSディスクを含むPAC1003;3.PAC1003/活性炭/カーボンブラック;4.IFL SSディスクを含むPAC1003/活性炭/カーボンブラック;5.PANI/DBSA;6.IFL SSディスクを含むPANI/DBSA;7.PANI/DBSA/活性炭/カーボンブラック;8.IFL SSディスクを含むPANI/DBSA/活性炭/カーボンブラック
[00194]PANI/DBSA/活性炭/カーボンブラック配合物とPAC1003/活性炭/カーボンブラック配合物を75%:20%:5%(w/w)の比で作製した。金界面層を使用することによる顕著な差異や利点は観察されなかった。しかしながら、より高い電圧においては有意な影響を観察することができた。
【0150】
実施例11
[00195]本実施例では、PAC1003とPANI/DBSAのペレット化した電極とペーストベースの電極を使用してコイン電池を作製した。
【0151】
[00196]容量を増やし、IRの降下を少なくするために、PAC1003に前述のPTSA/TSAmをドーピングした。図44と45からわかるように、この材料の比キャパシタンスが増大し、PAC1003PTSA/TSAmペレットコイン電池に対してはIR降下の証拠が認められた。
【0152】
【表20】
【0153】
【表21】
【0154】
[00197]表21からわかるように、PAC1003/PTSA/TSAmをベースとした電極は、PAC1003ベースの電極より優れた性能を示した。高電圧では、どちらの電極もより高い電荷を有するが、放電反応はゆっくりしており、与えられた時間に対して電荷の一部だけがもとに移動される、ということが観察された。1Vでは、たとえ電荷量がより低いとしても、トランスファー・バック(transfer back)は効率的であり、従ってポリアニリンは最大で1Vの電位までは安定であり、安定性は電位の増大とともに低下する、という従来の観察が支持される。
【0155】
PAC1003と活性炭のペースト配合物
[00198]PAC1003/活性炭ペーストをベースとする電極配合物は、出力とエネルギーの両方に対して改良を示す。ペレットに対する比キャパシタンスが3F/gから15F/gに増大するのと同時に、エネルギーは、図46と47に示すのと同じ条件で、10mA、1.2Vにて1.8Wh/Kgから4Wh/Kgに増大した。
【0156】
実施例12
[00199]以下は、ドーピング可能な新規ICPの合成の実施例である。本実施例は特に、ポリ(BEDOT−BBT)の合成を説明しており、モノマーは、ドーピング可能な新規ICPを合成する際に使用する上での有望性(promise)を示している。
【0157】
ベンゾジチアゾールの臭素化
【0158】
【化5】
【0159】
[00200]オーブン乾燥した250mlの三つ口丸底フラスコに、還流冷却器、滴下漏斗、及びガラス製ストッパーを接続した。フラスコ中にマグネチックスターラー・バーを置いた。還流冷却器の頂部に、強塩基溶液中へのガス換気ラインを接続した。次いで、ベンゾジチアゾール1(2.8g,20.6ミリモル)と50mlのHBr(40%)をフラスコ中に仕込んだ。滴下漏斗中に臭素(3.3ml,64.4ミリモル)を入れ、反応混合物を還流した。還流混合物中に臭素をゆっくり(30分余りで)滴下した。臭素の滴下完了後、混合物をさらに2時間還流してから、室温に冷却した。得られたオレンジ色スラリーを氷水中に注ぎ込んだ。沈殿物を濾過によって採集し、得られた固体を水で洗浄し、減圧にて一晩乾燥して、粗製固体2を95%の収率で得た(6.05g)。この生成物を、アセトンで再結晶することによって精製した。最終的には、上質淡黄色の針状結晶が84%以内の収率で得られた(5.06g)。化合物2は13C−NMRによって確認した。13C−NMR(100MHz,DMSO)δ113.78,133.47,152.97
2) 4,7−ジブロモベンゾジチアゾールのニトロ化
【0160】
【化6】
【0161】
[00201]化合物2(4.0g,13.6ミリモル)を、濃硫酸と濃発煙硝酸との混合物(1/1,40ml)中に、氷浴中にて0〜5℃でゆっくり加えた。無職の混合物がオレンジ色スラリーに変わった。化合物2を加えた後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。反応混合物を氷水中に注ぎ込んで淡黄色の沈殿物を得た。固体を濾過し、水で洗浄した。減圧乾燥後の粗製固体の収量は2.5gであった。アセトン/ヘキサン(1/2)を溶離液とする、シリカゲルを使用するカラムクロマトグラフによって生成物を分離した。Rf=0.26(アセトン/ヘキサン=1/2において)。生成物は、DMSO−d6中での13C−NMRによって確認した。13C−NMR(100MHz,DMSO)δ112.05,144.35,152.20
3) EDOT−SnBu3
【0162】
【化7】
【0163】
[00202]EDOT(6.39g,45ミリモル)をフレッシュなTHF(50ml)中に溶解し、この溶液を、ドライアイス浴中にて−78℃に冷却した。ブチルリチウム(28.1ml,ヘキサン中1.6M,45ミリモル)を滴下し、混合物を−78℃で1時間撹拌した。塩化トリブチルスズ(45ml,ヘキサン中1M,45ミリモル)を滴下し、一晩撹拌しながら混合物を室温に自然加温した。水(30ml)を加えてからエーテル(50ml)を加えた。相を分離し、有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして蒸発乾燥して、生成物を幾らか褐色の油状物(10.8g,79%)として得た。化合物3を、精製せずに次の工程において使用した。
【0164】
4) BEDOT−BT(NO2)2
【0165】
【化8】
【0166】
[00203]火炎乾燥した100mlの三つ口丸底フラスコに、25mlのTHFを加え、次いで0.23g(0.33ミリモル)のPd(II)Cl2(PPh3)2と5.83g(14ミリモル)のトリブチルスズEDOT(化合物3)を加えた。この溶液を30分ガス抜きした。次いで2.59g(6.7ミリモル)の化合物4を加え、溶液を不活性雰囲気下で3時間還流した。溶液を冷却し、減圧にて溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3,SiO2)により、2.29g(68%)の赤色固体が得られた。Rf=0.23(CHCl3中にて)。13C−NMR(100MHz,DMSO)δ64.84,65.32,104.70,106.61,120.66,141.40,142.36,142.97,152.78
5) BEDOT−BT(NH2)2
【0167】
【化9】
【0168】
[00204]オーブン乾燥した100mlの三つ口丸底フラスコに冷却器を装備し、これに1.04g(2.0ミリモル)の化合物5と1.34g(2.4ミリモル)の鉄粉末を加えた。これに38mlのガス抜きしたAcOHを加えた。反応混合物を100℃で3時間加熱してから、自然冷却した。明るい黄色の固体を濾過によって採集し、水、重炭酸ナトリウム飽和水溶液、及び水の順序で洗浄した。減圧乾燥後、0.72g(81%)の黄緑色固体が得られた。この生成物を、精製せずに次の反応において使用した。1H−NMR(300MHz,DMSO)δ4.22(s,8H),5.70(s,4H),6.73(s,2H);13C−NMR(100MHz,DMSO)δ64.80,65.32,99.23,100.34,109.85,139.63,141.37,142.17,151.34
6) BEDOT−BBT
【0169】
【化10】
【0170】
[00205]オーブン乾燥した25mlの三つ口丸底フラスコに、0.55g(1.2ミリモル)の化合物6、6mlの無水ピリジン、0.23ml(2.6ミリモル)のN−チオニルアニリン、及び0.28ml(2.2ミリモル)のTMSClを加えた。この溶液混合物を80℃で一晩加熱した。反応混合物を、自然冷却し、水中に注ぎ込み、濾過によって暗紫色固体を採集した。カラムクロマトグラフィー(CH2Cl2,SiO2)により、0.46g(84%)の暗紫色固体が得られた。Rf=0.15(DCM中)。化合物7は、DMSO−d6中にそれほど溶解しなかった。従ってNMRによる特性決定は信頼性に欠ける。
【0171】
7) ポリ(BEDOT−BBT)
【0172】
【化11】
【0173】
[00206]モノマーのクロノアンペロメトリー(定電位)を、0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(nBu4NClO4,TBAP)を含有するDCM中に5mMもしくは1mMのモノマーを混合して得られる溶液が入った3コンパートメントH−電池に対し、プリンストン・アプライド・リサーチ・アドバンスト・エレクトロケミカル・システム(Princeton Applied Research Advanced Electrochemical System)PARSTAT2273を使用して0.8Vの電位で行った。使用する前に、不活性ガスのバブリングによって溶液からガス抜きした。広い面積のステンレス鋼SSもしくはAu界面層SS(Φ=0.75インチ)、Ptガーゼ、及び0.1MのTBAP/ACN中10mMのAg/AgNO3を、それぞれ作用電極、対電極、及び参照電極として使用した。ポリマーのレドックス特性の特性決定は、モノマーを含有しない電解質を0.1MのTBAP/ACNもしくは0.1MのTBAP/PC中に溶解して得られる溶液中にて行った。溶液上に、不活性ガスのストリームを保持した。
【0174】
[00207]UV−Vis−NIRスペクトルを測定するために、ポリマーを、CV法の場合と同じ条件下でITO被覆ガラス電極上にデポジットさせた。脱ドーピングは、電気化学的還元によって行った(負電位を−0.4Vにて1分加える)。
【0175】
[00208]上記したように、本発明のポリマーは、0.1MのTBAP/DCM中5mMもしくは1mMのモノマー濃度溶液から、Ptボタン、Auボタン、又はITO被覆ガラスのそれぞれ上に、リピートスキャンサイクリックボルタンメトリー法によって電気化学的に重合させた(デポジットさせた)(図48)。PtもしくはAuボタン(Φ=0.2cm)、Ptワイヤ、及びAg/AgNO3を、それぞれ作用電極、対電極、及び参照電極として使用した。ポリマーのCVは、モノマー非含有の電解質(TBAP/ACN中0.1M)中にて行った。実験中は、溶液上に窒素ガスのストリームを保持した。ポリマーは、5mMもしくは1mMのモノマー溶液を使用して、上記と同じ条件にてサイクリック・ポテンシャル・スウィープ法(a cyclic potential sweep technique)によって製造した。得られたポリマーは、暗緑色の不溶性フィルムであった。
【0176】
[00209]電着させた全ての暗緑色ポリマーフィルムをモノマー溶液から取り除き、個別の電解質溶液(0.1M TBAP/ACN)で穏やかにすすぎ洗いし、個別の電解質溶液(0.1M TBAP/ACN)中に浸漬した。レドックスプロセスを特性決定し、スイッチングの際に繰り返される電気化学的分解に対するポリマーフィルムの安定性を調べるために(図49と50)、フィルムを、そのスイッチングポテンシャルが電気化学的拡散テイルの外側のポイントとして選択される幾つかの動電位スキャンに付した。ポリマーのCVは、Ptボタン作用電極での酸化(p−ドーピング可能)に対して0.22VのE1/2(V対Ag/AgNO3)を示したが、還元レドックスプロセスは、明確には示されなかった。なぜなら、アニオン性ラジカルが湿気と酸素によって劣化したからである。図51と52−(A)は、レドックスサイクリックピークの低下が示されておらず、このポリマーにおけるレドックスプロセスが極めて安定であることが例証されている。
【0177】
[00210]0.1MのTBAP/PC中にて窒素バブリングのもとで、p−ドーピング可能及びn−ドーピング可能な明確なウェーブが得られた。ポリ(BEDOT−BBT)P7のサイクリックボルタンメトリーは、酸化に対しては0.24VのE1/2を、そして2回の還元(two reductions)に対しては、それぞれ−0.88Vと−1.62VのE1/2を示す(図51)。図52は、ポリマーレドックス安定性のサイクリックボルタンメトリーを示す。正のレドックスサイクル(positive redox cycles)(P−タイプ特性)は、90サイクルにわたって極めて安定であった。しかしながら、負のレドックスサイクル(negative redox cycles)(N−タイプ特性)は安定ではなく、50mV/秒のスキャン速度にて40サイクル後に、還元ピークの強度が92%に低下した。第2のn−ドーピング可能な状態(ジアニオン)は、ポリマーの電気活性特性の劣化(共役主鎖の切断)のためにそれほど安定ではなかった。
【0178】
[00211]こうして得られたAuボタン上のポリマーフィルムを、ポリマー応答の電位窓内にて一連のスキャン速度依存性実験に付した(図53−(A))。ポリマーは、スキャン速度(50〜500mV/秒)を和らげるような容量性挙動を示した。ポリマーフィルムのスペシフィック・エリア・キャパシタンス(specific area capacitance)を、3点電気化学構造(a three−point electrochemical configuration)におけるスキャン速度の関数として求めた(図53−(B))。500mV/秒未満のスキャン速度においては、ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、より高いスペシフィック・エリア・キャパシタンスを有する。
【0179】
[00212]図54において、モノマー(DCM中BEDOT−BBT)のUV−Visスペクトルはλmax=638nm(青)を示す。ポリマーの光学的性質を調べるために、ジクロロメタン(DCM)−支持電解質媒体(0.1M TBAP/DCM)中5mM濃度のモノマー溶液を作製した。次いでこの溶液を、ITO−被覆ガラス作用電極上への繰り返しスキャニング電解重合に付した(図53−(C))。ポリマーをデポジットさせた後、モノマー溶液から暗緑色のポリマーフィルムを取り出し、アセトニトリル(ACN)で穏やかにすすぎ洗いし、乾燥した。スペクトルは、溶媒が存在しない状態にて得た。
【0180】
[00213]図55において、ポリ(BEDOT−BBT)のUV−Vis−NIRスペクトルは、中性状態に対してはλmax=982nm(緑)を示す。この値は、0.1MのTBAP/ACN中にて負電位(−0.4V)を2分加えることによって得た。これにより0.84eV(1eV=1240nm)の光学的バンドギャップがもたらされる。さらに、P−ドープUV−Vis−NIRスペクトルは、0.1MのTBAP/ACN中にて正電位(0.5V)を2分加えることによって得た。p−ドーピング(酸化)状態に対しては、UV−Vis−NIRスペクトルから、π−π*遷移強度が減少する一方で、NIR領域の強度は増大する、ということがわかる。
【0181】
[00214]次いで、ポテンシャル・スウィープ・スキャン・サイクリック・ボルタンメトリー法(potential sweep scan cyclic voltammetry method)によって、ポリマーを、0.1MのTBAP/DCM中5mM濃度モノマーの溶液から、ステンレス鋼ディスク(Φ=0.75インチ)(Au界面層を有するステンレス鋼)のそれぞれ上に電気化学的にデポジットさせた(図56)。モノマーのサイクリックボルタンメトリー(CV)は、プリンストン・アプライド・リサーチ・アドバンスト・エレクトロケミカル・システムPARSTAT2273を使用して、3コンパートメント電池において50mV/秒のスキャン速度で行った。溶液は、使用する前に窒素バブリングによってガス抜きした。
【0182】
[00215]サイクリックボルタンメトリーは、モノマーとポリマーのレドックスプロセスを特性決定するための有力な方法をもたらすけれども、ポリマーフィルムの厚さを正確に制御する能力に欠ける。CVにはこうした細かい制御ができないことの理由は、システム中への全エネルギー入力の一部だけが、表面吸着された電解重合フィルム中への出力となっている、という点である。しかしながら、システム中へのエネルギー入力が行われると始まる反応経路は複雑である。電気化学電池には、容量充電、汚染物質との反応、及び酸化モノマーの終了を含めた多くのファラデープロセスと非ファラデープロセスが起こる、とされている。
【0183】
[00216]要するに、サイクリックボルタンメトリーシステムは、従来の電解集合の場合と同じ条件下での実質的に幾つかの繰り返し重合からなるが、新たなポリマーを電極表面に、及び溶液中に加える実際のプロセス、ならびに拡散層の広がりが、まったく異なる反応条件をつくり出す(場合によっては、モノマーのレドックスポテンシャルの移行を伴い、これが速度論をさらに複雑にする)。従って、それぞれの繰り返しスキャンとともに同じ量のポリマーが電極表面上にデポジットされる、と見なすことはできない。
【0184】
[00217]定電位デポジションは、この問題に対する手頃な解決方法を提供する。定電位デポジションでは、電圧が一定に保持されるので、CVにおいて存在したスキャン速度や電位傾斜等の動的な要素が取り除かれる。さらに、速やかな非ファラデー充電速度論を仮定すると、容量性電流は、短時間でゼロに近い値に達するはずである。従って、定電位デポジションの時間が長くなると、ファラデープロセスが測定される電流を支配する。好都合なことに、フィルム厚さとポリマー量は、ある特定の電荷密度が達成された後に、定電位デポジションを終了させることによって慎重に制御することができる。定電位デポジションは、フィルム厚さ(ポリマー量)対システムに加えられる電荷密度が、(電気化学系が、全く同じ濃度と組成を有して再現されると仮定して)ピロールの重合〔ポリ(3,4−アルキレンジオキシピロール)〕に対しては最大で約3μmまでは線形傾向に従う、という点においてフィルム厚さ(ポリマー量)を制御することができる。これらの曲線におけるデータポイントは個々の実験を表わしており、従ってこれらのデータポイントは、フィルム厚さとポリマー量を制御するための較正曲線としてつくり上げることができる。
【0185】
[00218]CVデポジション法によってもたらされる問題点を克服するために、BEDOT−BBTポリマーデポジションに対してクロノアンペロメトリー法(定電位法)を使用した。ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、クロノアンペロメトリー法を使用して、金被覆したステンレス鋼ディスクと未被覆のステンレス鋼ディスク上に得た。印加電位は、異なる時間周期に対して0.7V(対Ag/AgNO3)であり、ポリマーデポジション中は溶液の均一性を保持するよう、モノマー溶液を撹拌した。デポジットされたフィルムは、SS表面に対してかなり安定のようであり、離層の兆候は全くなかった。図57は、5mMのモノマー溶液を使用して、異なる溶液撹拌速度にて金被覆SS支持体上にデポジットされた、ポリマーデポジションのクロノアンペロメトリー結果を示す。電荷対デポジション時間のプロットにおいて線形傾向が観察された(すなわち、デポジション時間が長くなるほど、デポジットされるポリマー質量が多くなった)。さらに、撹拌速度が高くなるほど、支持体上にデポジットされるポリマーの量が多くなった(図58を参照)。重合工程時においては、n−ドーピング可能なポリマーは高導電性支持体の両側にデポジットし、そしてさらに、被覆されたポリマーは均質性に欠ける。これらの問題を解決するために、ディスクの一方の側だけへのポリマーコーティング(良好な品質ならびに制御可能な均一性と厚さを有する)を容易にするH−電池を設計した(図59を参照)。
【0186】
[00219]クロノアンペロメトリー法(定電位)を使用して、3電極H−電池を含むステンレス鋼作用電極上に0.1M TBAP/DCM中BEDOT−BBTモノマーを0.7Vまたは0.8Vにて電着させた(重合させた)。デポジット条件と結果を表22に示す。デポジットされたポリマー量対電荷のプロットは、5mgのデポジションまでは良好な直線関係を示した(図60を参照)。さらに、電荷制御された(50mCまたは100mC)実験によって得られたポリマー量は、ほぼ直線状のライン上に載った。定電位法は、ポリマー量またはフィルム厚さを制御する上での優れた方法であった。
【0187】
【表22】
【0188】
[00220]図61のクロノアンペロメトリー線図は、対照条件下にてポリマーが金IFL SS及びSS支持体上にデポジットされたことを示している。ポリマー量は、同じ条件下での測定にてSS(Au)の場合が0.16mgでSSの場合が0.17mgであり、ほぼ同等であった。しかしながら、デポジション時におけるデポジット時間と電流フローは異なっていた。SS支持体は、SS(Au)より速やかなデポジションを示した。SS(Au)の電流フローは、デポジション時においてSSより低かった。さらに、SS(Au)支持体は、デポジション時においてより良好な電流フロー安定性をもたらした。金IFL(高導電性層)SSのほうがより低い電流フローをもたらし、従って金層なしの場合よりポリマーが速やかにデポジットするであろう、と推定された。しかしながら、クロノアンペロメトリー線図は予想外の結果を示した。特定の理論で拘束されるつもりはないが、表面粗さと表面積との間に関係があると考えられる。表面積が大きいと、デポジションはより速やかなはずである。Au IFLなしのSSは充分に粗い(表面積が大きい)ので、SS(Au IFL)の場合より速やかにポリマーがデポジットした。
【0189】
[00221]こうして得られたAu IFL SS(Φ=0.75インチ)上の0.16mgのポリマーフィルムを、ポリマー応答の正電位窓内にて一連のスキャン速度依存性実験に付した(図62−(A))。ポリマーは、スキャン速度(5〜50mV/秒)を和らげるような容量性挙動を示した。ポリマーフィルムの比キャパシタンス(F/g)を、3点電気化学電池構造物(a three−point electrochemical cell configuration)におけるスキャン速度の関数として求めた(図62−(B))。p−タイプの比キャパシタンスは116F/gであった。
【0190】
[00222]n−ドーピング可能なレドックス安定性に関して前述したように、充分にn−ドーピング可能なレドックスサイクル(N−タイプ特性)はあまり安定ではなかった(最初の還元ピークの強度が、50mV/秒のスキャン速度にて40サイクル後に92%に低下した。n−ドーピング可能なレドックス安定性を、−1.4Vと0Vの間の小さな電位窓にてアルゴン雰囲気下で90サイクルにわたって試験した(図63−(A)を参照)。最初のn−ドーピング可能なレドックスウェーブは安定であった。電流強度は、90サイクル後に63%に低下した。
【0191】
[00223]さらに、こうして得られたAu IFL SS(Φ=0.75インチ)上の0.16mgのポリマーフィルムを、ポリマー応答の負電位窓内にて一連のスキャン速度依存性実験に付した(図63−(B))。ポリマーは、スキャン速度(10〜50mV/秒)を和らげるような容量性挙動を示した。ポリマーフィルムの比キャパシタンス(F/g)を、3点電気化学電池構造物におけるスキャン速度の関数として求めた(図63−(C))。n−ドーピング可能なポリマーの比キャパシタンスは、3電極電池において47F/gであった。ポリマーフィルムの比キャパシタンス(F/g)を、3点電気化学電池構造物におけるスキャン速度の関数として求めた(図63−(D))。50mV/秒未満のスキャン速度では、ポリ(BEDOT−BBT)フィルムは、より高い比キャパシタンス(F/g)を有した。
【0192】
[00224]本発明の実施例において説明されているn−ドーピング可能なポリマーの前駆体としてのBEDOT−BBTの合成と分光学的同定について以下に記す:1.反応工程と収率は全て繰り返し可能であった。2.BEDOT−BBTは、ITO電極、0.2cmのPtもしくはAu作用電極、ならびに0.75インチ(1.9cm)の金界面ステンレス鋼(SS/Au)支持体もしくはステンレス鋼(SS)支持体上にポリ(BEDOT−BBT)フィルムをもたらすよう適切に電解重合された(デポジットされた)。3.UV−Vis−NIRスペクトルによって得られるポリ(BEDOT−BBT)の光学的バンドギャップは0.84eVであった。4.新たに設計された3電極H−電池構造物システムは、SS支持体またはSS(Au IFL)支持体上に良好な品質のポリ(BEDOT−BBT)フィルムをもたらした。5.ポリマーデポジットのためのクロノアンペロメトリー法は、デポジットされるポリマー量に対する良好な制御をもたらした。6.SS上へのポリマーデポジションは、SS(Au IFL)上へのそれより速やかであった。しかしながら、SS(Au IFL)は、ポリマーデポジション時においてはより安定な電流フローを示した。7.新規n−ドーピング可能なポリマーの比キャパシタンスは、3電極H−電池において47F/gであった。
【0193】
[00225]全ての文書、刊行物、特許、特許出願、プレゼンテーション、テキスト、報告書、手書き原稿、パンフレット、書籍、インターネット投稿、学術論文、及び定期刊行物等を含めた本明細書に記載の文献は全て、参照により本明細書に含める。ここに記載の文献の説明は、単に、著者らによる主張を要約すべく意図されており、任意の文献が先行技術を構成していると容認しているわけではない。本出願者らは、引用文献の正確さと適切性に意義を申し立てる権利を留保する。
【0194】
[00226]上記のことを考慮すると、本発明の幾つかの利点が達成され、他の有利な結果も得られる、ということがわかる。
[00227]上記の方法と組成に対し、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更を行うことができるので、上記説明中に含まれていて、添付図面に示されていることがらは全て、例証のためのものとして解釈すべきであって、限定の意味に解釈すべきではない、ということが意図されている。
【符号の説明】
【0195】
2 コイン電池スーパーコンデンサ
4 支持体
6 任意のスペーサー
8 第1の電極
10 電解質
14 第2の電極
16 第2の支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面を含む第1の支持体;約800S/cm以上の導電率を有していて、第1の側と第2の側を有する本質的に導電性のポリマーを含む第1の電極、ここで該第1の側は、第1の支持体の第2の表面に隣接している;第1の電極の第2の側に隣接した電解質;約800S/cm以上の導電率を有していて、第1の側と第2の側を有する本質的に導電性のポリマーを含む第2の電極、ここで該第1の側は、第1の電極の第2の側に隣接していて、電解質によって第1の電極から隔離されている;及び、第1の表面と第2の表面を有する第2の支持体、ここで該第1の表面は、第2の電極の第2の側に隣接している;を含むスーパーコンデンサ。
【請求項2】
第1の支持体と第2の支持体が互いに異なる物質を含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項3】
第1の支持体と第2の支持体が互いに同じ物質を含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項4】
第1の本質的に導電性のポリマーと第2の本質的に導電性のポリマーが、互いに同じ本質的に導電性のポリマーを含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項5】
第1の本質的に導電性のポリマーと第2の本質的に導電性のポリマーが、異なる本質的に導電性のポリマーを含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項6】
第1と第2の本質的に導電性のポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリエチレンジオキシチオフェン、及びポリ(ビスエチレンジオキシチオフェン−ビスベンゾチアジアゾール)の1種以上から選択される、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項7】
第1と第2の本質的に導電性のポリマーのそれぞれがドーピングされている、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項8】
第1と第2の本質的に導電性のポリマーのそれぞれが酸ドーピングされている、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項9】
前記ポリマーが、4−スルホフタル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、リン酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホンアミド、及び式
【化1】
(式中、oは1、2、または3であり;rとpは、同一または異なっていて、0、1、または2であり;R5は、アルキル、フルオロ、または1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルである)を有する化合物の1種以上から選択される酸でドーピングされている、請求項8に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項10】
第1または第2の電極の一方に隣接した1つ以上の界面層をさらに含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項11】
前記1つ以上の界面層が、金、白金、クロム、チタン、及びイリジウムの1種以上から選択される、請求項10に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項12】
第1の支持体と第1の電極との間に1つ以上のスペーサーをさらに含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項13】
第2の支持体と第2の電極との間に1つ以上のスペーサーをさらに含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項14】
スーパーコンデンサがコイン電池スーパーコンデンサである、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項15】
本質的に導電性のポリマーフィルムと第1の酸ドーパントとを接触させて、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと蒸気とを接触させることによって、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄化すること;蒸気清浄化された一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを第2の酸ドーパントと有機溶媒を含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを生成させること;を含む、本質的に導電性のポリマーフィルムをドーピングする方法。
【請求項16】
第1の酸ドーパントが2種以上の酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2の酸ドーパントが2種以上の酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第1と第2の酸ドーパントが異なったプロトン酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第1と第2の酸ドーパントが同じプロトン酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第1と第2の酸ドーパントが、4−スルホフタル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、リン酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホンアミド、及び式
【化2】
(式中、oは1、2、または3であり;rとpは、同一または異なっていて、0、1、または2であり;R5は、アルキル、フルオロ、または1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルである)を有する化合物の1種以上から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
本質的に導電性のポリマーフィルムが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリエチレンジオキシチオフェン、及びポリ(ビスエチレンジオキシチオフェン−ビスベンゾチアジアゾール)の1種以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
蒸気が、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロパノール、ジイソプロパノール、及びメタ−クレゾールの1種以上から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
有機溶媒が、n−ブタノールとブチルセロソルブの一方または両方から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
アニール工程が機械的アニール工程である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
アニール工程が化学的アニール工程である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
アニール工程が機械的アニールと化学的アニールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
約800S/cm以上の導電率を有する、ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルム。
【請求項28】
約1000S/cm以上の導電率を有する、請求項27に記載のフィルム。
【請求項29】
一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロパノール、ジイソプロパノール、及びメタ−クレゾールの1種以上から選択される蒸気とを接触させることを含む、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄化する方法。
【請求項30】
一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを、少なくとも第2の酸ドーパントと有機溶媒を含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを生成させること;を含む、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを二次及び三次ドーピングする方法。
【請求項31】
アニール工程が機械的アニールを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
アニール工程が化学的アニールを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
アニール工程が機械的アニールと化学的アニールを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項1】
第1の表面と第2の表面を含む第1の支持体;約800S/cm以上の導電率を有していて、第1の側と第2の側を有する本質的に導電性のポリマーを含む第1の電極、ここで該第1の側は、第1の支持体の第2の表面に隣接している;第1の電極の第2の側に隣接した電解質;約800S/cm以上の導電率を有していて、第1の側と第2の側を有する本質的に導電性のポリマーを含む第2の電極、ここで該第1の側は、第1の電極の第2の側に隣接していて、電解質によって第1の電極から隔離されている;及び、第1の表面と第2の表面を有する第2の支持体、ここで該第1の表面は、第2の電極の第2の側に隣接している;を含むスーパーコンデンサ。
【請求項2】
第1の支持体と第2の支持体が互いに異なる物質を含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項3】
第1の支持体と第2の支持体が互いに同じ物質を含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項4】
第1の本質的に導電性のポリマーと第2の本質的に導電性のポリマーが、互いに同じ本質的に導電性のポリマーを含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項5】
第1の本質的に導電性のポリマーと第2の本質的に導電性のポリマーが、異なる本質的に導電性のポリマーを含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項6】
第1と第2の本質的に導電性のポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリエチレンジオキシチオフェン、及びポリ(ビスエチレンジオキシチオフェン−ビスベンゾチアジアゾール)の1種以上から選択される、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項7】
第1と第2の本質的に導電性のポリマーのそれぞれがドーピングされている、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項8】
第1と第2の本質的に導電性のポリマーのそれぞれが酸ドーピングされている、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項9】
前記ポリマーが、4−スルホフタル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、リン酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホンアミド、及び式
【化1】
(式中、oは1、2、または3であり;rとpは、同一または異なっていて、0、1、または2であり;R5は、アルキル、フルオロ、または1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルである)を有する化合物の1種以上から選択される酸でドーピングされている、請求項8に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項10】
第1または第2の電極の一方に隣接した1つ以上の界面層をさらに含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項11】
前記1つ以上の界面層が、金、白金、クロム、チタン、及びイリジウムの1種以上から選択される、請求項10に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項12】
第1の支持体と第1の電極との間に1つ以上のスペーサーをさらに含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項13】
第2の支持体と第2の電極との間に1つ以上のスペーサーをさらに含む、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項14】
スーパーコンデンサがコイン電池スーパーコンデンサである、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項15】
本質的に導電性のポリマーフィルムと第1の酸ドーパントとを接触させて、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと蒸気とを接触させることによって、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄化すること;蒸気清浄化された一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを第2の酸ドーパントと有機溶媒を含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを生成させること;を含む、本質的に導電性のポリマーフィルムをドーピングする方法。
【請求項16】
第1の酸ドーパントが2種以上の酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2の酸ドーパントが2種以上の酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第1と第2の酸ドーパントが異なったプロトン酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第1と第2の酸ドーパントが同じプロトン酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第1と第2の酸ドーパントが、4−スルホフタル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、リン酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホンアミド、及び式
【化2】
(式中、oは1、2、または3であり;rとpは、同一または異なっていて、0、1、または2であり;R5は、アルキル、フルオロ、または1つ以上のフルオロ基もしくはシアノ基で置換されたアルキルである)を有する化合物の1種以上から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
本質的に導電性のポリマーフィルムが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリエチレンジオキシチオフェン、及びポリ(ビスエチレンジオキシチオフェン−ビスベンゾチアジアゾール)の1種以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
蒸気が、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロパノール、ジイソプロパノール、及びメタ−クレゾールの1種以上から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
有機溶媒が、n−ブタノールとブチルセロソルブの一方または両方から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
アニール工程が機械的アニール工程である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
アニール工程が化学的アニール工程である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
アニール工程が機械的アニールと化学的アニールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
約800S/cm以上の導電率を有する、ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルム。
【請求項28】
約1000S/cm以上の導電率を有する、請求項27に記載のフィルム。
【請求項29】
一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムと、チモール、カルバクロール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロパノール、ジイソプロパノール、及びメタ−クレゾールの1種以上から選択される蒸気とを接触させることを含む、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを清浄化する方法。
【請求項30】
一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを、少なくとも第2の酸ドーパントと有機溶媒を含む溶液中に浸漬して、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを形成させること;及び、二次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムをアニールして、三次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを生成させること;を含む、一次ドーピングした本質的に導電性のポリマーフィルムを二次及び三次ドーピングする方法。
【請求項31】
アニール工程が機械的アニールを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
アニール工程が化学的アニールを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
アニール工程が機械的アニールと化学的アニールを含む、請求項30に記載の方法。
【図1】
【図59(A)】
【図59(B)】
【図59(C)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図59(A)】
【図59(B)】
【図59(C)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【公表番号】特表2012−511261(P2012−511261A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539739(P2011−539739)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066781
【国際公開番号】WO2010/065859
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510332899)ルミムーブ,インコーポレーテッド,ディー/ビー/エイ・クロスリンク (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066781
【国際公開番号】WO2010/065859
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510332899)ルミムーブ,インコーポレーテッド,ディー/ビー/エイ・クロスリンク (2)
【Fターム(参考)】
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