説明

本質的に非晶質の非塩素化ポリマーバリアフィルムおよびそのフィルムの使用方法

【課題】臭気と有機分子に対する効果的なバリアであることにより造孔術袋(結腸フィステル形成術、回腸フィステル形成術)、経皮吸収搬送システム(TDDS)、化粧パッチ、失禁袋、医用採集袋、注射液袋および食品包装ならびに保護衣および土壌薫蒸用途に関して特に有用となる本質的に非晶質の非塩素化ポリマーフィルムが提供される。
【解決手段】バリア層は単層として用いることが可能であるか、あるいは多層構造体の構成フィルムであることが可能である。本バリアフィルムは、抑制された騒音放出を促進する他のフィルム層を伴って、あるいは伴わずに用いることが可能である。あるいは単層フィルムおよび多層フィルムは、騒音放出抑制層を重視してバリア層を省くことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのフィルム並びに臭気および有機分子に対する効果的バリアとしてのかかるフィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
気体および/または湿気に対して実質的に不透過性である多層構造体は、医学および食品包装工業において周知である。現在、ポリ(ビニリデンクロライド)(PVDC)が、バリアフィルムの気体バリア部材用の選り抜きの物質の一つとして用いられている。造孔術(すなわち、結腸フィステル形成術および回腸フィステル形成術)の適用のために、低密度ポリエチレン(LDPE)の対向層の間に挟まれたPVDCのフィルムが広範に用いられ、しかしてPVDCは気体バリアとしてそしてLDPEは構造およびシール剤層として機能する。また、エチレン−ビニルアセテートコポリマー(EVA)とブレンドされたポリビニルクロライド(PVC)または塩素化ポリエチレン(CPE)は、そのような構造体の構造およびシール剤層または他の層に用いられ得る。
【0003】
しかしながら、これらの塩素含有物質の廃棄は、多数の潜在的環境問題(特に、病院または別の所での使用後のこれらの物質の焼却に関して)を呈する。加えて、PVDCおよびPVCと共に利用される通常の可塑剤であるジ−2−エチルヘキシル−フタレート(DEHP)への暴露は、低減血小板効力および肝臓癌への潜在的結び付きを含めて、多数の健康関連問題を呈し得る。
【0004】
エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)のような塩素不含ポリマー樹脂もまたバリア層として用いられ、そして造孔術の適用のために提案されている。しかしながら、EVOHコポリマーのバリア性は乾燥条件下で非常に高いけれども、それらは湿気の存在下で急速に劣化する。かくして、EVOHコポリマーは、造孔術の適用にとって望ましくない。
【0005】
米国特許(USP)5,496,295、USP5,658,625およびUSP5,643,375は、多層バリアフィルム並びにそれらから作られた物品を記載する。これらのフィルムは、とりわけ造孔術の適用において有用であり、そして酸素ガスに対して実質的に不透過性であるところの塩素不含有機ポリマーの気体バリア層およびメソ相プロピレンベース物質の湿気バリア層を含む。塩素不含有機ポリマー気体バリア層は、EVOHコポリマー、ポリビニルアルコール(PVOH)のようなビニルアルコールポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエステルおよびナイロン(単独でまたは互いにブレンドして)を含む。湿気バリア層は、メソ形態ポリプロピレン、メソポリマーブレンドおよび/またはメソコポリマーのようなメソ相プロピレンポリマーベース物質を含む。プロピレンベース物質の溶融状態からの急冷は、メソ相プロピレンベース物質を形成する。
【0006】
EP0,700,777A1は、造孔術/尿道フィステル形成術の適用のための袋またはパウチを製造するために有用でありそして七層構造体からなる塩素不含多層フィルムを記載する。この構造体は、上記のビニルアルコールポリマー、ポリアミド、ポリエステルおよびポリスチレンのうちの一つのような酸素に対して実質的に不透過性である塩素不含有機ポリマーの気体バリア層;各々が該バリア層の一つの側に接触する2つの繋ぎ層;内面層;外面層;および内面層と外面層の間に設置されそしてエチレン−プロピレン(EP)コポリマーを含む2つの中間層を含む。
【0007】
EP0,418,836A3は、食品包装工業において用いるのに適しておりそしてプロピレンホモポリマーまたはコポリマーの層、コポリエステル層および該プロピレンポリマー層と該コポリエステル層の間に設置されかつそれらに結合された極性変性ポリオレフィンの接着剤層を有する多層配向フィルムを記載する。
【0008】
EP0,056,323A1は、ポリプロピレン(PP)、LDPEまたはイオノマー樹脂から成る結合層により接合されたポリエステルの流延層(該ポリエステルは、ポリブチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)およびシクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸のコポリマーを含む)を含むところの、滅菌可能な包装材用の熱成形可能なラミネートを記載する。しかしながら、かかる構造体は熱成形可能な包装材の用途を対象とするので、それらは、スキン組成物用に用いられる比較的硬質のポリマーの結果として、高いモジュラスを有しそしてそれ故造孔術袋の用途に必要とされる所要レベルの静かさを与え得ない。加えて、これらのラミネートのスキンポリマー(LDPE、結晶質PPおよびイオノマー樹脂)のタンデルタ(TanΔ)値は、それらが下記に記載されるような静穏フィルムをもたらさないことを指摘する。
【0009】
EP0,588,667A2は、プロピレンポリマーまたはコポリマーと炭化水素樹脂のブレンドを含む少なくとも1つの層およびプロピレンホモポリマーもしくはコポリマー、エチレン−アルファ−オレフィン(EAO)コポリマー、イオノマー、ポリブチレンまたはそれらのブレンドを含む少なくとも2つの追加的層を有するところの、湿気バリア包装材の用途において有用な多層フィルムを記載する。EVOHコポリマーまたは別の酸素バリア物質すなわち高密度ポリエチレン(HDPE)のコア層が、ある具体的態様において含められ得る。
【0010】
バリア層として用いるのに適した更なる塩素不含ポリマーフィルムを見出そうとする試みは、良好な酸素バリア性を有するポリマーはまた有機生成物および臭気に対して良好なバリア性を示すであろうという一般的に抱かれている考えにより導かれてきた(たとえば、「Plastic Film Technology, High Barrier Plastic Films for Packaging」,第1巻:食品および飲料の包装におけるバリアポリマーの使用,M.Salame, pp.132〜145(1989)参照)。それ故、医学および食品包装工業において用いるのに十分なバリア性を有するポリマーフィルムを見出そうとする試みは、所与ポリマーフィルムの酸素透過性に焦点を合わせてきた。しかしながら、本願の発明者は、低酸素透過性を有するすべてのポリマーが造孔術の適用にとって十分な臭気バリア性を示すとは限らないこと(およびその逆)を見出した。
【0011】
ヒトの糞便はガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリーにより分析される場合122種より多い揮発性化合物を含有することが、研究により示されている(「ヒトの糞便における化学物質の比微量レベルの同定」,Dmitriev M.T., Lab. Delo(1985),(10),608〜14;「ヒトの糞便の臭気のガスクロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリー分析」,J.G.Moore, Gastroenterology,1987,93,1321〜9;M.D.Levitt,「鼻だけが知っている」,Gastroenterology,1987,vol.93,No.6,1437〜8;「糞便の微生物叢による揮発物の形成に対する栄養基質の影響」,M.Hiele,Gastroenterology,1991,100,1597〜1602;「生医学試料中の揮発物の決定のためのスクリーニング方法」,Y.Ghoos,Journal of Chromatography,665,1994,333〜345;および「結腸における細菌代謝物の形成に対する食物タンパク質サプリメントの影響」,B.Geypens,GUT,1997,41,70〜76参照)。
【0012】
これらの研究は、糞便臭気の原因化合物が主にインドールおよび硫化物誘導体であることを指摘する。かくして、たとえば硫化水素(H2S)またはメチルメルカプタン(CH3SH)のような比較的小さい分子を有する化合物、たとえばエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド(DMDS)またはジエチルジスルフィド(DEDS)のようなより大きい分子を有する化合物およびたとえばジメチルトリスルフィド、インドールまたは3−メチルインドールのような大きい分子を有する化合物が、糞便臭気の原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それ故、(a)環境に安全であり、(b)加水分解に安定でありそして(c)小さいおよびより大きい分子直径の両方の臭気原因分子に対して低透過性を示すポリマーフィルムに対するニーズが当業界に残存する。更に、かかるフィルムの最終用途に依存して、静かであるすなわちもみくちゃにされる時に低い騒音放出性を有するこれらのフィルムに対するニーズが残存する。
【0014】
それらのニーズは、本発明により満たされる。かくして、本発明は、臭気および有機化合物に対するバリアとして有用な、本質的に非晶質の非塩素化(すなわち、塩素不含)ポリマーフィルム、並びに単層または多層フィルム構造体において臭気および有機分子に対するバリアとしてかかるフィルムを用いる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1具体的態様は、バリア機能性をa)少なくとも(≧)5時間の3−メチルインドール漏出時間、b)少なくとも40分(min)のDEDS漏出時間またはc)1日につき1平方メートル(m2)のフィルム面積当たり60立方センチメートル(cm3)未満かまたは等しい(≦)H2SのH2S透過速度(cm3/m2・日)の少なくとも一つにより決定して、0.40ナノメートル(nm)またはそれ以上(≧)の直径を有する臭気および有機分子の少なくとも一つに対するバリアとして機能する、本質的に非晶質の非塩素化ポリマーフィルム、並びに単層または多層フィルム構造体のいずれかにおいて臭気および有機分子に対するバリアとしてかかるフィルムを用いる方法である。
【0016】
第2具体的態様は、≧1の、第1観点のフィルムの層および≧1の、低減騒音放出性を有する静穏フィルム層を含有する多層フィルム構造体であって、該静穏フィルム層が、−5°摂氏(℃)と15℃の間の範囲内の温度において≧0.25または−12℃から−5℃の範囲内の温度において≧0.32のタンデルタ値を有する≧1のポリマー樹脂またはポリマー樹脂組成物を含む上記多層フィルム構造体を提供する。多層フィルム構造体は、望ましくは、≧0.40nmの直径を有する分子に対するバリアとして機能する。
【0017】
第3具体的態様は、≧1の、第1具体的態様のフィルムの層を含有する多層フィルム構造体における騒音の放出性を低減する方法であって、該方法が、a)−5℃と15℃の間の範囲内の温度において≧0.25または−12℃から−5℃の範囲内の温度において≧0.32のタンデルタ値を有する第1ポリマー樹脂、ポリマー樹脂組成物またはポリマーブレンド組成物を第2ポリマー樹脂とブレンドし、そしてb)このブレンドされたポリマー樹脂から該多層フィルムのポリマーフィルム層を形成する工程を含み、しかも第1ポリマー樹脂またはポリマー樹脂組成物が、総層重量を基準として≧25重量パーセント(wt%)を構成する上記方法を提供する。
【0018】
本発明のポリマーバリアフィルムは、造孔術袋(結腸フィステル形成術、回腸フィステル形成術)、経皮吸収搬送システム(TDDS)、化粧パッチ、失禁袋、医用採集袋、腸管外溶液用袋、および臭気性食品または製品の包装用に並びに保護衣の用途または土壌燻蒸用に特に有用である。
【0019】
上記に記載されたように、本発明は、臭気および有機化合物に対するバリアとして有用であるところの、本質的に非晶質の非塩素化ポリマーフィルム、並びに単層または多層フィルム構造体において臭気および有機分子に対するバリアとしてかかるフィルムを用いる方法を提供する。
【0020】
ここにおいて用いられる場合、「本質的に非晶質の」は、総ポリマー重量を基準として8wt%未満(<)の非晶質でないポリマー(1種または多種)を含有することを意味する。更に、それは、急冷を通じて製造されなかった非晶質ポリマーを指す。ここにおいて用いられる場合の「急冷」は、当該ポリマーのその溶融状態から周囲温度より低い温度(おおよそ20℃未満)までの急速冷却を意味する。「非塩素化」は、ポリマーが塩素を実質的に含有しない(すなわち、総ポリマー重量を基準として<1wt%)ことを意味する。
【0021】
ここにおいて用いられる場合の用語「比較的小さい」、「より大きい」および「大きい」分子は、それぞれの限界分子直径(CMD)により決定される場合の相対的サイズを指す。「比較的小さい」分子は、0.40nmから0.55nmまでのCMDを有する分子を含む。「より大きい」分子は0.55nmより大(>)でかつ0.70nmまでのCMDを有する分子を包含し、そして「大きい」分子は>0.70nmのCMDを有する分子を含む。
【0022】
酸素の計算CMDは0.33nmであり、H2Sについては0.40nm、メチルスルフィドについては0.50nm、DMDSについては0.55nm、エチルスルフィドについては0.57nm、DEDSについては0.58nm、ジメチルトリスルフィドについては0.63nm、インドールについては0.74nmそして3−メチルインドールについては0.78nmである。CMDの決定は、SPARTAN 5.1.1.プログラム(米国カリフォルニア92612のWAVEFUNCTION Inc.により上市されている分子軌道プログラム)を用いる。
【0023】
分子構造は、Spartanプログラムバージョン5.1.1.に含まれている半経験的量子力学モデルを用いるエネルギー最小化(AM1法:M.J.S.Dewar、E.G.Zoebisch、E.F.HealyおよびJ.J.P.Stewart,J.Am.Chem.Soc.107,3902(1985),AM1:新しい汎用量子力学の分子について)により最適化される。配座解析は、最小エネルギー配座の構造を得るために行われる。CMDは、最適化構造の空間充填(CPK)表示から得られる。箱のサイズは、ファンデルワールス球体に接触するように調整される。分子直径は、2番目に大きい箱の寸法であると取られる。
【0024】
しかしながら、所与ポリマーフィルムの低酸素透過性はH2SおよびCH3SHのようなヒトの糞便物中の比較的小さい臭気性分子に対する該ポリマーフィルムの低透過性の妥当な予測指標であり得るけれども、かかる透過性はDEDSおよび3−メチルインドールのようなより大きい分子に対する該ポリマーフィルムの透過性の妥当な予測指標であり得ない。従って、本願の発明者は、所与ポリマーフィルムの低酸素透過性が造孔術の適用における該ポリマーフィルムの有用性の妥当な予測指標を与えないと信じる。H2S、DEDSおよび3−メチルインドールに対する透過性が、造孔術の適用における臭気バリア性能を予測するために選択され、何故ならこれらの3種の化合物は糞便中に見られる臭気性化合物の主要な化学的群類を代表しかつ比較的小さい分子サイズから大きい分子サイズまでの範囲をカバーするからである。
【0025】
本発明において、≧0.40nmのCMDを有する分子に対するバリアとして機能するポリマーフィルムが、ポリマーリストIに属するポリマー樹脂(しかしこれらに限定されない)から形成され得る、ということが見出された。ポリマーリストIは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PET−G、非晶質熱可塑性コポリエステル樹脂(たとえば、Mitsui Chemicals Europe GmbHにより供給されるB−100樹脂)(以後、「APE−1」と称される)、PET−Gとそのような非晶質熱可塑性コポリエステル樹脂のブレンド、PET−Gとスチレン−ブタジエンコポリマー(PET−G/SB)のブレンド、PET−Gとスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(PET−G/SBS)のブレンド、PET−Gとマレイン酸無水物(MAH)グラフト化エチレン−メチルアクリレートコポリマー(PET−G/MAH−g−EMA)のブレンド、PET−Gとエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマーのブレンド、PET−GとMAH官能化スチレン−エチレン−ブテン−スチレン(PET−G/SEBS)ブロックコポリマーのブレンド、PET−Gとスチレン−イソプレン−スチレン(PET−G/SIS)ブロックコポリマーのブレンドを含み、そして>50℃のガラス転移(Tg)温度を有する非晶質熱可塑性ポリエステル樹脂、≦120℃のTgを有する非晶質ポリアミドまたはコポリマーポリアミド、エポキシ樹脂、非晶質ポリウレタンおよびそれらと≧60wt%のPET−Gとのブレンドは、≧0.40nmの直径を有する分子に対するバリアとして特に有用であり、しかしてPET−GおよびPMMAが特に好ましい。
【0026】
上記に例示されたようなブレンドから本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムを製造する場合、副ブレンド成分は非晶質である必要はなくて半結晶質ポリマーであり得る。非晶質および半結晶質ポリマーの定義は、「Polymer Science Dictionary」,1989年版,Elsevier Applied Scienceに見られ得る。本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムが上記に例示されたようなブレンドから製造される場合、主ブレンド成分すなわちPET−Gはブレンドの≧60wt%を構成する、ということも理解されるべきである。かかるブレンドの典型的例は、次のものである。すなわち、1)70〜95wt%の、PET−GとSBコポリマーのブレンド、2)60〜90wt%の、PET−GとSBSブロックコポリマーのブレンド、3)70〜96wt%の、PET−GとMAH−g−EMAコポリマーのブレンド、4)70〜96wt%の、PET−Gとエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマーのブレンド、5)70〜96wt%の、PET−GとMAH官能化SEBSブロックコポリマーのブレンドおよび6)70〜96wt%の、PET−GとSISコポリマーのブレンド。
【0027】
PET−GとAPE−1のような非晶質熱可塑性ポリエステル樹脂のブレンドは、容易にPET−G単独に取って代わる。かかるブレンドは、望ましくは0〜100wt%好ましくは10〜80wt%一層好ましくは20〜70wt%であるAPE−1含有率、逆に言えば望ましくは100〜0wt%好ましくは90〜20wt%一層好ましくは80〜30wt%であるPET−G含有率を有する。各場合において、百分率は合計して100wt%になり、百分率はすべてブレンド重量を基準とする。
【0028】
≧0.40nmの直径を有する分子に対するバリアである、本発明による本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムはまた、≦60cm3/m2・日のH2S透過速度を有することが重要である、ということが分かった。
【0029】
≧0.55nmの直径を有する分子に対するバリアである本発明のポリマーバリアフィルムは、ポリマーリストIおよびポリマーリストIIから形成されたフィルムを含むが、しかしそれらに限定されない。ポリマーリストIIは、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマー、SANコポリマーとエチレン−スチレンインターポリマー(SAN−ESI)のブレンド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ターポリマー、耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート(PMMA−IM)、ポリカーボネート(PC)、耐衝撃性改良ポリカーボネート(PC−IM)、並びにPCおよびABS(PC/ABS)ターポリマーアロイを含む。
【0030】
≧0.70nmの直径を有する分子に対するバリアである本発明のポリマーバリアフィルムは、ポリマーリストI、IIおよびIIIから形成されたフィルムを含むが、しかしそれらに限定されない。ポリマーリストIIIは、汎用ポリスチレン(GPPS)、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、GPPSとHIPS(GPPS/HIPS)のブレンド、GPPSとSBコポリマー(GPPS/SB)のブレンド、GPPSとESI(GPPS/ESI)のブレンドおよびGPPSとSISブロックコポリマー(GPPS/SIS)のブレンドを含めて、ポリスチレンを含む。>120℃のTgを有する非晶質ポリアミドおよびコポリアミドは、本発明の範囲内にない。
【0031】
上記のポリマーリストIIまたはIIIのブレンドから製造された本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムの例は、ブレンドの成分をいかなる割合にても含み得るが、しかし典型的には次のとおりである。すなわち、1)60〜95wt%の、SANコポリマーとESIのブレンド、2)30〜70wt%の、GPPSとHIPSのブレンド、3)60〜90wt%の、GPPSとSBコポリマーのブレンド、4)60〜90wt%の、GPPSとESIのブレンドおよび5)60〜90wt%の、GPPSとSISブロックコポリマーのブレンド。
【0032】
上記のESIは、重合形態にてi)≧1のアルファ−オレフィン(α−オレフィン)モノマーとii)≧1のビニルもしくはビニリデン芳香族モノマーおよび/または≧1の立体障害脂肪族もしくは環状脂肪族ビニルもしくはビニリデンモノマーと任意にiii)他の重合性エチレン不飽和モノマー(1種または複数種)を含む実質的にランダムのインターポリマーである。
【0033】
用語「インターポリマー」は、ここにおいて、≧2の異なるモノマーが重合されて当該インターポリマーが作られているポリマーを指摘するために用いられる。
【0034】
ここにおいて用いられる場合の、i)≧1のオレフィンモノマーとii)≧1のビニルもしくはビニリデン芳香族モノマーおよび/または≧1もしくはそれ以上の立体障害脂肪族もしくは環状脂肪族ビニルもしくはビニリデンモノマーと任意にiii)他の重合性エチレン不飽和モノマー(1種または複数種)を重合することから生じる実質的にランダムのインターポリマーにおける用語「実質的にランダムの」は、一般に、該インターポリマーのモノマーの分布がベルヌーイ統計モデルによりまたはPOLYMER SEQUENCE DETERMINATION,Cabon-13 NMR Method,Academic Press New York,1977,pp.71〜78にJ.C.Randallにより記載されているような一次もしくは二次マルコビアン統計モデルにより記載され得ることを意味する。好ましくは、かかる実質的にランダムのインターポリマーは、ビニルまたはビニリデン芳香族モノマーの総量の15%より多くを、3単位より>のビニルまたはビニリデン芳香族モノマーのブロックにて含有しない。一層好ましくは、該インターポリマーは、高度のアイソタクチック性またはシンジオタクチック性のいずれかを特徴としない。これは、実質的にランダムのインターポリマーの炭素−13NMRスペクトルにおいて、メソジアド配列またはラセミジアド配列のいずれかを表す主鎖メチレンおよびメチン炭素に相当するピーク面積が主鎖メチレンおよびメチン炭素の総ピーク面積の75%を越えるべきでないということを意味する。引き続いて用いられる用語「実質的にランダムのインターポリマー」または「SRIP」は、上記に挙げられたモノマーから生成された実質的にランダムのインターポリマーを意味する。
【0035】
SRIPを製造するために有用である適当なオレフィンモノマーは、たとえば、2から20個(C2〜20)好ましくは2から12個(C2〜12)一層好ましくは2から8個(C2〜8)の炭素原子を含有するオレフィンモノマーを含む。特に適当なものは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1もしくはオクテン−1、またはプロピレン、ブテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1もしくはオクテン−1の一つもしくはそれ以上と組み合ったエチレンである。最も好ましいものは、エチレン、またはエチレンとC3〜8−α−オレフィンとの組合わせである。これらのアルファ−オレフィン(α−オレフィン)は、芳香族部を含有しない。
【0036】
他の任意の重合性エチレン不飽和モノマーは、ノルボルネンおよびC1〜10アルキルまたはC6〜10アリール置換ノルボルネンのような張力環オレフィンを包含し、しかして例示的インターポリマーはエチレン/スチレン/ノルボルネンである。
【0037】
SRIPを製造するために用いられ得る適当なビニルまたはビニリデン芳香族モノマーは、たとえば、次の式Iにより表されるものを含む。
【0038】
【化1】

【0039】
〔ここで、R1は、水素およびC1〜4アルキル基から成る基の群、好ましくは水素またはメチルから選択され;各R2は、独立的に、水素およびC1〜4アルキル基から成る基の群、好ましくは水素またはメチルから選択され;Arは、フェニル基、またはハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4ハロアルキルから成る群から選択された1から5個の置換基で置換されたフェニル基であり;そしてnは、ゼロから4好ましくはゼロから2最も好ましくはゼロの値を有する。〕
特に適当なかかるモノマーは、スチレンおよびその低級アルキルまたはハロゲン置換誘導体を含む。好ましいモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンの低級(C1〜4)アルキル−もしくはフェニル−環置換誘導体(たとえば、オルト−、メタ−およびパラ−メチルスチレン、t−ブチルスチレンのような)、環ハロゲン化スチレン(クロロスチレンのような)、パラ−ビニルトルエン、またはそれらの混合物を含む。一層好ましい芳香族モノビニルモノマーはスチレンである。
【0040】
最も好ましい実質的にランダムのインターポリマーは、エチレンとスチレンのインターポリマーおよびエチレンと、スチレンと≧1のC3〜8α−オレフィンのインターポリマーである。
【0041】
SRIPは、通常、0.5から65好ましくは1から55一層好ましくは2から50モルパーセント(mol%)の≧1のビニルもしくはビニリデン芳香族モノマーおよび/または立体障害脂肪族もしくは環状脂肪族ビニルもしくはビニリデンモノマー並びに35から99.5好ましくは45から99一層好ましくは50から98mol%の≧1のC2〜20脂肪族オレフィンを含有する。SRIPは、WO98/10014並びにその米国対応物USP5,703,187およびUSP5,872,201(それらの関係教示はここに参照により合体される)に従って製造され得る。
【0042】
本発明のバリアフィルムは、次の添加剤の一つまたはそれ以上を含有し得る。すなわち、フルオロポリマー、シリコーンまたはシロキサンのような加工助剤;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母、シリカ、シリカゲル、ナノ充填剤およびタルクのような無機充填剤;脂肪酸アミドのような滑剤;ブロッキング防止剤;臭気吸収剤;吸湿剤;分子篩;顔料;帯電防止剤;防曇剤;酸化防止剤;UV安定剤;誘電加熱増感剤;顔料;着色剤;活性炭;芳香剤;核形成剤、清澄剤;殺生物剤および抗微生物剤。添加剤は、任意に、微小顆粒に封入され得る。フィルムの少なくとも1つの外層は、その表面張力を増大させそしてその印刷適性を改善するために、コロナ処理または火炎処理またはプラズマ処理のような表面処理に付され得る。任意に、フィルムの≧1の表面はまた、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素のような金属または酸化金属の薄層で被覆され得る。
【0043】
フィルムの少なくとも1つの表面は、耐ブロッキング性、機械適性もしくは取扱い適性を改善するためにまたは柔らかさ、柔軟性もしくは外観のようなある性能的利点を付与するために、エンボスされまたはキメが与えられ得る。
【0044】
臭気および有機分子に対するバリアとして本発明により用いられる本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムは、単一もしくは単層フィルムとしてまたは多層フィルム構造体の部材フィルムとして用いられ得る。多層フィルム構造体の例は、2〜7層(しかしこれらに限定されない)を包含し、そしてたとえばA/B/D/C/D/E/FまたはA/B/C/B/AまたはA/B/C/D/EまたはA/B/C/DまたはA/C/BまたはC/Bの形態を取り得、しかして「C」層は本発明の本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのフィルム層であり、その他の層は接着剤層、中間層またはスキン層を構成する。1つより多い「C」層すなわち臭気バリア層を有する多層フィルム構造体もまた意図されている。
【0045】
本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのフィルムが単一または単層バリアフィルムとして用いられる場合、フィルムは、フィルムの予定最終用途並びにフィルムの個々の臭気および有機化合物バリア性に依存する厚さを有する。しかしながら、厚さは典型的には5から50マイクロメートル(μm)の範囲にあり、しかして10μmから25μmが一層典型的であり、12μmから20μmが最も典型的である。本発明において有用ないかなる本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムも単層フィルムとして用いられ得るけれども、本質的に非晶質の非塩素化ポリマーの多層フィルムもまた意図されている。
【0046】
本発明の単層バリアフィルムは、押出し、吹込みまたは流延のような慣用の技法により製造され、しかして押出しが好ましい。本発明のバリアフィルムはまた、非配向フィルムである。
【0047】
着色されず、エンボスされずかつ被覆されない場合、本発明のバリアフィルムはまた、アメリカ材料試験協会(ASTM)試験D1003に従って測定して≦45%の曇り価により定義されるような透明である。曇りが重要でない場合、顔料の添加、エンボス、被覆または他の添加剤の混入の一つまたはそれ以上の使用は、本発明の範囲を変えない。
【0048】
本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムが多層フィルム構造体の部材フィルムとして用いられる場合、臭気および有機化合物バリア性を多層フィルム構造体に与える本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムは、典型的には、2μmから50μmの厚さ(3μmから35μmが一層典型的である)を有しかつ配向されていない。
【0049】
多層フィルム構造体は、典型的には、バリアフィルム層において用いられるポリマー以外のポリマーから形成された≧1の層を含む。かかるポリマーの選択は、多層構造体についての予定最終用途に依存する。塩素を含まないことが必須である場合、すべての層は好ましくは塩素を欠く。包装、保護衣または土壌燻蒸のような、いくらかの塩素が受容され得る用途において、多層フィルム構造体はまた、本発明の本質的に非晶質の非塩素化ポリマーのバリアフィルムに加えて、塩素化フィルム層を含み得る。
【0050】
非バリア層を形成する際に用いるのに適したポリマーは、次のものを含む。すなわち、LDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、均質EAOコポリマー、HDPE、PPホモまたはコポリマー、ゴム改質PP、低モジュラスPPホモまたはコポリマー、低結晶化度PPホモまたはコポリマー、シンジオタクチックPPホモまたはコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーエラストマー(EPDM)、エチレン−ポリプロピレンゴム(EPR)、実質的に線状のEAOコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBまたはSBS)、SEBSコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー(SIまたはSIS)、エチレン−アルキルアクリレートコポリマー(たとえば、エチレン−メチルアクリレート(EMA)、エチレン−ブチルアクリレート(EBA)、エチレン−エチルアクリレート(EEA)のような)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレン−アクリル酸コポリマー(EAA)、イオノマー樹脂、エラストマーコポリエステル、エチレン−メチルアクリル酸コポリマー(EMAA)、ポリノルボルネン、ESI、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエーテル−アミドブロックコポリマー、EVA−一酸化炭素コポリマー(EVACO)、MAH変性ポリエチレン、マレイン酸無水物変性EVA、MAH−EMA、MAH−EBA、MAH−PP、グリシジルメタクリレート変性EMA、グリシジルメタクリレート変性EBA、グリシジルメタクリレート変性EVA、ポリアミド、およびそれらのブレンド。一つのかかるブレンドは、非晶質EAOポリマーおよび低結晶化度PPホモまたはコポリマーを含む。EP641,647およびその米国対応物USP5,616,420並びにEP527,589(それらの関係教示はここに参照により合体される)は、非晶質ポリオレフィンと結晶質PPのブレンドをある程度開示する。
【0051】
オレフィンと極性コモノマーのコポリマーの使用は、追加的に、フィルムの高周波(HF)シール性を改善する。
【0052】
本発明の本質的に非晶質の塩素不含バリアフィルムと一緒に任意に用いられ得る塩素化ポリマーは、たとえば、ポリビニルクロライド(PVC)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリ(ビニリデンクロライド)(PVDC)、PVDC/VCコポリマー(PVDC/VC)、PVDC/メチルアクリレートコポリマー(PVDC/MA)、およびそれらの混合物を含む。
【0053】
多層構造体において、バリア層に直ぐ隣接して設置されたポリマー層は典型的には接着剤層または繋ぎ層として機能するのに対して、他の非隣接層は典型的には中間層またはスキン層として機能する。かかる多層フィルム構造体の全厚は、個々のフィルムまたは層の厚さに依存する。個々のフィルム厚は、所与厚のフィルムを製造する容易性およびコスト、フィルムの物理的および化学的性質、並びに多層フィルム構造体が暴露される環境のような、様々な因子に依存する。かかる多層フィルム構造体の全厚は典型的には20μmから350μmの範囲にあり、しかして30μmから200μmが一層典型的でありそして40μmから150μmが最も典型的である。
【0054】
TDDSの物品またはパッチ用の裏打ち層のようなTDDS用の用途において用いられる場合、多層フィルム構造体は、典型的には、2または3層構成を有しかつ15〜80μm好ましくは25〜50μmの全厚を有する。かかる構造体は、典型的には、A/BまたはA/C/D構成を有する。層Aは、バリア層として働き、そして望ましくはPET−G、APE−1、PET−GとAPE−1のブレンド、少なくとも50℃のTgを有する非晶質熱可塑性ポリエステルホモまたはコポリマー樹脂、およびそれらのブレンド(PET−GおよびAPE−1の一方または両方とそのような樹脂のブレンドのような)を含む。層Aは、8〜20μm好ましくは8〜15μmの厚さを有する。層Bは、15〜30wt%のビニルアセテート含有率を有するEVAコポリマー、15〜30wt%のメチルアクリレート含有率を有するEMAコポリマーまたは15〜30wt%のブチルアクリレート含有率を有するEBAコポリマーを含む。層Cは、層Bのコポリマーのすべておよび加えてMAH−g−EVA、MAH−g−EMA、MAH−g−EBA、グリシジルメタクリレートグラフト化EVA、EMAまたはEBA、エチレン−アクリル酸エステル−MAHターポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレートターポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、SBコポリマー、EVACOターポリマー、SIおよびSISポリマー、並びにそれらのブレンドも含む。層Cは、繋ぎ層として機能し、そして2〜15μmの厚さを有する。層Dは、ポリアミド以外の、非バリア層を形成する際に用いるのに適したポリマーとして上記に同定されたポリマーのいずれかを含む。EVA、EBAおよびEMAは、用いられる場合、好ましくは6〜20wt%の非エチレンモノマー含有率を有する。層B、CおよびDのいずれかまたはすべては、ここにおいて開示された滑剤およびブロッキング防止剤の一つまたはそれ以上を含み得る。加えて、層A〜Dのいずれか一つまたはそれ以上は、酸化防止剤、顔料、紫外線安定剤または加工助剤のような添加剤を含み得る。その他の多層フィルム構造体の場合と同様に、表面層処理は、TDDS用の用途における有用性を有する構造体の1つまたはそれ以上の特徴を向上し得る。
【0055】
<50の場合においてように、別段記載されているのでなければ、各範囲は該範囲を確定する両方の端点を含む。
【0056】
吹込みもしくは流延、共押出し、押出し被覆、押出し貼合わせ、または接着剤貼合わせのような慣用の方法は、本発明の多層フィルム構造体を製造し得る。
【0057】
≧0.40nmの直径を有する分子に対するバリアとして単層または多層フィルム構造体において用いられる場合、本発明のバリアフィルムは、≧2時間(hrs)好ましくは2〜300hrsの3−メチルインドール漏出時間および≧8分(min)好ましくは20〜1200minのDEDS漏出時間を有する。かかるフィルム構造体は、臭気および有機分子に対する有用なバリアとして働く。
【0058】
第1表に、本発明による有用な代表的バリアフィルムが、それらのそれぞれの3−メチルインドールおよびDEDS漏出時間と共に与えられている。第1表および後続の第2〜4表は、例示であるにすぎないと意図されており、そして本発明の範囲をいかなる点においても限定しない。
【0059】
【表1】

1IM=耐衝撃性改良;2 時間の記入事項はすべて、>記載時間である;Yは、漏出時間が記載時間を越えることを意味する;Nは、漏出が記載時間未満で起こることを意味する。
【0060】
≧0.40nmの直径を有する分子に対するバリアとして単層または多層フィルム構造体において用いられる場合、本発明のバリアフィルムは、≧2hrs好ましくは2〜300hrsの3−メチルインドール漏出時間および≧40秒(secs)好ましくは40〜250secsのH2S漏出時間を有する。かかるフィルムは、臭気および有機分子に対する有用なバリアとして働く。第2表に、本発明による有用な代表的バリアフィルムが、それらのそれぞれの3−メチルインドールおよびH2S漏出時間と共に与えられており、しかして該フィルムは単層フィルムまたは多層フィルム構造体における部材であり得る。
【0061】
【表2】

1IM=耐衝撃性改良;2 時間の記入事項はすべて、>記載時間である;Yは、漏出時間が記載時間を越えることを意味する;Nは、漏出が記載時間未満で起こることを意味する。
【0062】
更に、≧0.40nmの直径を有する分子に対するバリアとして単層または多層フィルム構造体において用いられる場合、本発明のバリアフィルムは、8分(min)好ましくは8〜1200minのDEDS漏出時間および40secs好ましくは40〜250secsのH2S漏出時間を有する。かかるフィルムは、臭気および有機分子に対する有用なバリアとして働く。第3表に、本発明による有用な代表的バリアフィルムが、それらのそれぞれのDEDSおよびH2S漏出時間と共に与えられており、しかして該フィルムは単層フィルムまたは多層フィルム構造体における部材であり得る。
【0063】
【表3】

1IM=耐衝撃性改良;2 時間の記入事項はすべて、>記載時間である;Yは、漏出時間が記載時間を越えることを意味する;Nは、漏出が記載時間未満で起こることを意味する。
【0064】
更に、臭気に対するバリアとして単層または多層フィルム構造体において用いられる場合、バリアフィルムは、≧2hrs好ましくは2〜300hrsの3−メチルインドール漏出時間、≧8min好ましくは8〜1200minのDEDS漏出時間および≧40secs好ましくは40〜250secsのH2S漏出時間を有する。
【0065】
第4表に、本発明による有用な代表的バリアフィルムが、それらのそれぞれの3−メチルインドール、DEDSおよびH2S漏出時間と共に与えられており、しかして該バリアフィルムは単層フィルムまたは多層フィルム構造体における部材であり得る。
【0066】
【表4】

【0067】
加えて、本発明のポリマーバリアフィルムの最終用途に依存して、本発明のポリマーバリアフィルムまたは本発明のポリマーバリアフィルムを部材フィルムとして有する多層ポリマーフィルム構造体が追加的性質を示すことは望ましい。
【0068】
たとえば、バリア性に加えて、ポリマーフィルムはもみくちゃにされる時に騒音を放出しないことがしばしば望ましい。造孔術または失禁用の用途において、造孔術または失禁用の袋は騒音を放出しないことが望ましい。しかしながら、もみくちゃにされる時、たいていのポリマーフィルム、特に、異なる剛性(すなわち、モジュラス)を有する個々のポリマーフィルム層で構成された多層ポリマーフィルムは、騒音を放出する。騒音の低減が所望される場合、「騒音抑制性」ポリマーが、バリア性を有する本発明のポリマーフィルムを形成する他の(第2の)ポリマー樹脂と、典型的には≧25wt%の量にてブレンドされ得る。典型的には、これらのポリマーバリアフィルムは、1キロヘルツ(kHz)と16kHzの間の1つまたはそれ以上のオクターブ振動数帯において≦50デシベル(dBA)の騒音レベルを有する。
【0069】
加えて、静穏性を有するこれらのポリマー樹脂は、静穏性を有する本発明の多層フィルム構造体を形成させるために、多層フィルム構造体中に部材フィルムとして含められ得る。典型的には、騒音抑制性ポリマーは、層中に≧30wt%にて存在しそして総フィルム組成物の≧25wt%を成す。その代わりに、静穏ポリマーフィルムが、全体的に騒音抑制性ポリマーから形成されそして静穏性を有する本発明の多層フィルム構造体中に部材フィルムとして含められ得る。
【0070】
本発明による静穏フィルムは、典型的にはスキンまたは接着剤層として用いられるが、しかし内層としても用いられ得る。
【0071】
典型的には、騒音抑制性ポリマーは、−5℃と15℃の間の範囲内の温度において≧0.25または−12℃から−5℃の温度範囲において≧0.32のタンデルタ値を有する。典型的騒音抑制性ポリマーは、ポリノルボルネンポリマー、<50ジュール/グラム(J/g)の融解熱を有する低結晶化度PPホモもしくはコポリマー、またはシンジオタクチックPPホモもしくはコポリマー、またはアタクチックPP、またはESI樹脂を含むが、しかしそれらに限定されない。TPU、EVAコポリマー、EMAコポリマー、EBAコポリマー、PVCおよびCPEは、騒音抑制性ポリマーとしての使用に関して、本発明の範囲内にない。
【0072】
融解熱は、示差走査熱量測定法(D.S.C.)により決定される。装置は、インジウム標準物質を用いて検定される。PPの融解熱は、−50℃から+220℃まで+10℃/分の加熱速度を用いて決定される。融解熱は、+25℃と+180℃の間において積分される。
【0073】
騒音抑制性ポリマーはまた、−5℃と15℃の間の範囲内の温度において≧0.25または−12℃と−5℃の間の範囲内の温度において≧0.32のタンデルタ値を有さないポリマーを、そのタンデルタをかかる値に修正する少なくとも1種の相溶性樹脂、可塑剤または粘着付与剤とブレンドすることにより得られるポリマー組成物であり得る。一つのかかるブレンドは、上記に記載された非晶質EAOポリマーと低結晶化度PPホモまたはコポリマーのブレンドである。
【0074】
ブレンドすることによるこのようなタンデルタ修正の例は、次のものに記載されている。ゴム−樹脂ブレンドの粘弾性:パートI.、II.およびIII.,J.B.ClassおよびS.G.Chu,Journal of Applied Polymer Science,Vol.30,805〜842(1985)。ホットメルト接着剤用の軽質で安定な樹脂,P.Dunckley,Adhesives Age,1993年11月号。深冷凍結HMAを処方する統計的手法,W.J.HONIBALL、J.LEBEZ、等,Adhesives Ages,1997年5月号第18〜26頁。粘着付与剤用樹脂,James A.Schlademan,Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology,第20章第527〜544頁。
【0075】
下記の第5表に示されたPPホモポリマーおよびプロピレンコポリマー(PCP−1、PCP−2およびPCP−3)のような或るポリマーは単独の騒音抑制性ポリマーとして働くのに十分な騒音抑制性能を与え得るけれども、他のものは少なくとも1種の他のポリマーまたはポリマー改質剤での増強と必要とする。加えて、2種またはそれ以上の樹脂のブレンドは、そのような「単独の騒音抑制性ポリマー」の有効な代替品として働く。たとえば、REXTAC(登録商標)APAO2180のような非晶質ポリ(α−オレフィン)と二メルトフロー速度のランダムプロピレン/エチレンコポリマー(2.3wt%エチレン)のブレンドは、第5表に示されたREXFLEX(登録商標)軟質ポリオレフィン(FPO)の一つまたはそれ以上に近い。高分子量(低メルトフロー速度)非晶質ポリ(α−オレフィン)とランダムプロピレンコポリマーの他のブレンドもまた、効果的結果をもたらす。一つのかかるブレンドは、商品名CAP-350下でUbe Industriesにより上市されている。EP527,589およびその米国対応物USP5,468,807並びにEP641,647およびその米国対応物USP5,616,420(それらの関係教示はここに合体される)は、中間層におけるかかるブレンドを開示する。
【0076】
加えて、騒音抑制性ポリマーまたはポリマー組成物の使用は、室温において1平方センチメートル当たり≧2×104ニュートン(N/cm2)の貯蔵モジュラス(G′)を有する≧1の他のポリマーフィルム層を含有する多層フィルム構造体中に含められる場合特に有利である。≧2×104N/cm2の貯蔵モジュラス(G′)を有するポリマーフィルム層は、典型的には、PET−G、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のような非晶質熱可塑性ポリエステル、および他の熱可塑性ポリエステル、EVOH、PC、ポリビニルアルコール(PVA)、SAN、ABS、PMMA、SBコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアミドおよびコポリアミド(PA−6、PA−6,6、PA−11およびPA−12のような)、非晶質ポリアミド、MXD6ポリアミド、PVDC、PVDC/VCコポリマー、PVDC/MAコポリマー、ポリヒドロキシアミノエーテルコポリマー(PHAE)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、およびポリスチレンから製造される。
【0077】
好ましい商業的に入手できる非晶質熱可塑性ポリエステルは、EASTARTMPETGコポリエステル6763(Eastman Chemicals,1.27g/cm3の密度(ASTM D1505)および10cm3・mm/m2・24hr・気圧の酸素透過性(ASTM D3985))およびMitsui B-100(Mitsui Chemicals Inc.,1.35g/cm3の密度,62℃のTg)を含む。非晶質熱可塑性ポリエステルは、単独で用いられ得または一緒にブレンドされ得る。例としてPETGおよびB−100樹脂を用いると、それらのブレンドは、望ましくは、0から100wt%のB−100、逆に言えば100から0wt%のPETGを含む。好ましいブレンドは、10から80wt%のB−100および90〜20wt%のPETGを含む。一層好ましいブレンドは、20〜70wt%のB−100および80〜30wt%のPETGを含む。すべての場合において、一緒にされた樹脂は合計して100wt%になり、そして百分率はすべてブレンド重量を基準とする。B−100樹脂は、Mitsui Chemicals Europe GmbHにより供給される非晶質熱可塑性コポリエステル樹脂であり、それはケミカルアブストラクト参照事項87365−98−8に載っている。これは、イソフタル酸(42〜48モル%)、テレフタル酸(2〜8モル%)、エチレングリコール(>40モル%)および1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(<10モル%)のコポリマーである。この樹脂は、62℃のガラス転移温度および1.35の密度を有する。
【0078】
典型的には、騒音抑制性ポリマーまたはポリマー組成物が多層ポリマーフィルム構造体の一部として用いられる場合、それは多層フィルム構造体の層のいずれかとして存在し得るけれども、それをスキン層中にまたは構造体の外面に近い層中に含めることが好ましい。
【0079】
バリア性を有するポリマーフィルムと関連して上記に記載されてきたけれども、騒音抑制特性を有するポリマーフィルムはまた、バリア性が必要とされない他の用途において有用であり得る、ということが理解される。かくして、本発明の別の観点は、−5℃と15℃の間の範囲内の温度において≧0.25または−12℃から−5℃の範囲内の温度において≧0.32のタンデルタ値を有するポリマーまたはポリマー組成物の、騒音抑制性ポリマーフィルムまたは静穏ポリマーフィルムとしての使用である。
【0080】
更に、先に記載された多層フィルムのいくらかをシールしてたとえば袋を作ることが、最終用途にとって望ましくあり得る。ある場合には、あるスキンポリマー組成物のシール強度は、フィルムがそれ自体に対してまたは他のポリマーに対してシールされるとき低すぎることがあり得る。より高いシール強度は、シール剤層をフィルムにおいて最外層として加えることによりまたはシール強度を改善するポリマーをフィルムの最外層中にブレンドすることにより得られ得る。
【発明を実施するための形態】
【0081】
実験セクション
I.バリア性
次の開発された分析試験法は、酸素、硫化水素(H2S)ガス、有機スルフィドおよびインドールに対する本発明のポリマーフィルムのバリア性を定量化するのに役立つ。DEDSは典型的有機スルフィド化合物として働き、そして3−メチルインドールは典型的インドール化合物として機能する。技術的に可能である場合はいつも、透過試験は、使用中の造孔術袋により遭遇される条件をより近似的にシミュレートする(すなわち、体熱により温められかつヒトの皮膚と衣服の間に存在する湿度に曝されている造孔術袋に近づける)ために、高湿度条件にてかつ40℃にて行われる。
【0082】
2Sガス、DEDSおよび3−メチルインドールに対するフィルムのバリア性は、漏出時間(B.T.)および/または透過速度(P.R.)により表される。漏出時間(B.T.)またはタイムラグは、バリア樹脂の厚さの自乗に比例する(Polymer Permeability,第11〜74頁,J.Comyn,Elsevier Applied Science Publishers(1985)参照)。すなわち、
B.T.=T2/60D
ここで、B.T.=漏出時間(hrs)、T=フィルムの厚さ(cm)、そしてD=樹脂における透過物の拡散係数(cm2/sec)。
【0083】
同じ参考文献は、透過速度(P.R.)がバリア樹脂の厚さに反比例することを教示する。すなわち、
P.R.=P/T
ここで、P=樹脂の透過性、そしてT=フィルムの厚さ(cm)。
【0084】
B.T.は、製品の短期バリア性、すなわち、検出が人間の鼻により行われる場合に透過量が透過物の臭気閾に達するのに十分に高くなる前を表す。B.T.は、製品に依存して数秒から数ヶ月の範囲にあり得る。P.R.は、製品の長期バリア性を一層よく表す。
【0085】
下記の例に記載されたフィルムを作製するために用いられた樹脂は、第5表に列挙されている。
【0086】
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0087】
試験1
3−メチルインドールに対するポリマーフィルムの臭気漏出時間の決定
3−メチルインドール漏出時間を決定する方法は、英国標準規格BS 7127,パート101の付録G(1991)に記載された結腸フィステル形成術用袋材料についての臭気透過試験と同様な臭覚測定法である。
【0088】
予備的備考:
3−メチルインドール(スカトール)は、非常に低い臭気閾濃度を有する。空気中100万部当たり0.02部(ppm)から10億部当たり0.0003部(ppb)までの臭気閾検出レベルの値が、文献に報告されている。試験は最小3人の試験パネルでもって遂行されねばならず、しかして5人の試験者が理想である。
【0089】
目的および原則
この試験方法の目的は、ポリマーフィルムを通しての3−メチルインドールの臭気漏出時間を決定することである。ポリマーフィルムを小さなパウチに形成し、3−メチルインドールを充填し、密閉する。水および密閉された高分子パウチをガラス瓶内に置き、瓶を閉じた。瓶を異なる時間間隔で開け、試験パネルにより匂いをかぎ、対照と比較した。漏出時間は、検査者の平均数が試験瓶中に3−メチルインドールの臭気を検出する時間として定義される。
【0090】
装置
・密閉装置、例えば、冷蔵庫のバッグ用家庭ヒートシーラー
・1cm3自動ピペット
・1−リットル、ガラス栓付き広口瓶(46/60mm)
・約10mm直径の透明ガラスビーズ
・蒸留または脱イオン水
・40℃±1℃に制御された試験室乾燥器
【0091】
A.3−メチルインドール試験溶液の調製
3−メチルインドールは殆ど水に不溶である(20℃で0.005重量%)。0.25グラム(g)の3−メチルインドール結晶を10ミリリットル(mL)のエタノール中に溶解し次に100mLの蒸留水を添加することにより試験用の3−メチルインドール溶液を調製する。得られた溶液は3−メチルインドール2.27グラムパーリットル(g/L)の濃度を有する。
【0092】
B.試験手順
1.約220mm×120mm次元のポリマーフィルムを切りだし、それを長さ方向に折り、2側面をシールしパウチを作る。
2.パウチにピペットを用いて3−メチルインドールをシール部分上またはフィルム外に全く滴下しないように、1mLの3−メチルインドール溶液を注意深く充填する。パウチを密閉する。密閉された面積内の仕上パウチの次元は100mm×100mmである。
3.試験前約1時間に、上記手順1および2を用いて、3−メチルインドールに対してごく低いバリアを有するフィルム(例えば、15μm〜40μm厚さのLDPEまたはHDPEフィルム)からパウチを作成する。3−メチルインドール溶液の1mLをパウチに充填する。このパウチは対照臭気等級値5として用いる。
4.試験しようとするフィルムからの、またはそれ自身の特徴ある臭気を全く有しないフィルム(例えば、ポリエチレン)によるパウチを作成し、1mLの水/エタノール混合物(10/1溶液)により充填する。このパウチは対照臭気等級値1として用いる。
5.ガラス瓶を2層のガラスビーズで充填する。いくらかの水を添加するがガラスビーズを沈めない。
6.密閉パウチを各ガラス瓶中に置く。ガラス栓にいくらかのグリースを塗り、瓶を閉め、それらを40℃で乾燥器中に置く。
7.定義された間隔で、瓶を乾燥器から取り出し、試験パネルの個々のメンバーに各瓶中の匂いを評価させる。匂いに1〜5の相対的な等級値を与える:1は匂いなし、または中立/高分子臭気(水を持つ対照フィルム)であり、2はごく低いが検出される3−メチルインドール臭気であり、5はごく強い臭気(3−メチルインドールを持つ対照フィルム)である。時間間隔はフィルムの漏出時間に応じ、例えば短くは1〜4時間、長くは1〜4日までとなる。フィルムの平均臭気等級を計算する。
8.フィルムの平均臭気等級が≧2になるまで試験を続ける。
9.各フィルムに対して、臭気等級(すべての試験の算術平均)対時間をプロットする。漏出時間は平均臭気等級2に達するために必要な時間として定義される。この値は直線内挿法により得られる。
【0093】
1を超える試料を同時に試験できるが、しかし一度に6または7を超えて行うことは推奨できない。すべての試験者は同じ瓶を嗅ぐことができるが、しかしこれらを最短可能時間に開けさせるように注意が払われねばならない。また、同じ瓶を異なる試験時間で用いることができる。臭気等級を上げる順番に異なる瓶を嗅ぐことが重要である。一つの系列の初めにごく臭気の強い瓶(等級5のフィルムを持つもののような)を嗅ぐことは臭覚を麻痺させ/飽和させる傾向にあり、より低い臭気等級をもたらし得る。臭気対照5を持つ瓶は系列の終わりおよび最後にのみ嗅がなければならない。臭気等級は異なる試験者の等級付けの算術平均である。個々のデータ内で2より大きい範囲値が見られる場合、詳細に異常値を探し、それを可能ならば何時でも計算から外す。
【0094】
試験2
高分子フィルムの酸素透過性
モダーンコントロールズ(Modern Controls Inc.)(ミネアポリス、MN、USA)から市販されているOX−TRAN10〜50酸素透過性試験器を用いて、23℃、65〜70%相対湿度でASTM3985−81試験方法によりフィルムの酸素透過性を測定する。
【0095】
表6は酸素透過性および一連の高分子フィルムの3−メチルインドール漏出時間を示す。比較実施例(CompEx)ナンバーA〜Fにおけるフィルムは、現在造孔術袋用途に用いられている。アラビア数字で示された種々の実施例(Ex)のフィルムは本発明を代表する。比較実施例Mは平らなポリエチレン(PE)フィルムであり、すべての実施例の中で最も短い3−メチルインドール漏出時間を有する。PEは3−メチルインドールに対して殆どバリア特性を有しないので、このフィルムを3−メチルインドール漏出時間試験方法における臭気対照5として用いる。他の実施例はそれらの構造における「バリア樹脂」の存在のせいで、より長い漏出時間を有する。これらフィルムの二次加工に用いられた樹脂を表5に一覧する。
【0096】
【表9】

【表10】

【表11】

【0097】
表6のデータは、現在造孔術袋用途(比較実施例A〜F)に用いられているフィルムが3−メチルインドール漏出時間≧7時間であることを示す。造孔術用と想定される比較実施例GのEVOH共押出しフィルムは、1時間の3−メチルインドール漏出時間を有し、酸素透過性は比較実施例A〜Fと同等であるにも拘らず、造孔術用途には望ましくないものにしている。
【0098】
比較実施例H、I、J、KおよびLのフィルムは低酸素透過性を示すが、しかし3−メチルインドール漏出時間は≦3時間である。実施例2、4、5、6、15、および16のフィルムは高い酸素透過性を示すが、しかし3−メチルインドール漏出時間≧85時間を有する。従って、表6のデータは、明白に、高分子フィルムの酸素透過性と3−メチルインドールに対する漏出時間との間の相関は全く存在しないことを示す。本質的に試験温度でガラス質であるポリマー(すなわち、PET−G、PET−G/SBおよびPET−G/SBSブレンド、PMMA、衝撃変性PMMA、PS/HIPSブレンド、SAN、PC、衝撃変性PC、PC/ABSアロイ、ABS、およびSAN)は、驚くことに3−メチルインドールに対する最善のバリア特性を提供する。
【0099】
試験3
有機硫化物(DEDS)バリア特性
DEDS漏出時間を決定するための方法として、透過容器および質量分析法検出器を用いる。ポリマーフィルムを通してのDEDS臭気透過率を測定するために、透過容器、浸透型中空糸膜および質量選択検出器(MSD)から成る系を用いる。
【0100】
機器
透過容器はそれぞれが一つの面上に切削空洞を有する二つのステンレス鋼円板である。また円板の面上にはO−リング取付け表面がある。O−リングはKALREZ(登録商標)パーフルオロエラストマー部品(デュポンダウエラストマー(DuPont Dow Elastomers L.L.C.))である。ポリマーフィルムは、二つの円板の間で締付けられる時に、上流および下流空洞を規定する。上流空洞は透過物を含有する。ヘリウムにより下流空洞を一掃し検出器に出す。ヘリウムの流量は約4mL/分である。露出フィルム表面積は7.3cm2であり、各空洞の体積は約4mLである。容器の2側面は容器の二つの半分を芯だしするために坐付きの板を用いて一緒に締付けられる。4本のボルトで締めてOリングと試験フィルムの間のシールを確保する。
【0101】
膜の選択性により透過物を濃縮するために浸透型中空糸シリコーン膜を用いる。透過試験用に40℃に保持されたHP5890シリーズIIガスクロマトグラフ(GC)中に透過容器および中空糸膜を置く。中空糸を質量選択検出器(MSD)に対する移送ラインに垂直になるように調整する。MSDに対する条件は以下に一覧する。
【0102】
機器:ヒューレットパッカード5971AMSD
低質量: 50 高質量: 200
EMVオフセット: 0 電圧: 2235
閾値: 250 モード: スキャン
チューンファイル: ATUNE
【0103】
実験手順
試験しようとするフィルムを容器の底半分の上に置く。1枚のLDPEフィルム(約25μm厚さ)を試験フィルムにかけることにより、試験フィルムを透過物溶液から保護する。LDPEフィルムの上に容器の上半分を置きボルトで容器を一緒に締め固める。ヘリウムが容器の底半分を通過して中空糸膜に入るようにしてGCの中に容器を置く。
【0104】
これらの実験に用いられる透過物溶液は1mLDEDS/10mLエタノール(EtOH)(約9重量%DEDS)である。容器の上半分に溶液3mL分取分を置く。一度溶液がフィルムに接触するとデータ採集を始める。定常状態の透過が達成されるまでか、または24時間にわたって実験を続ける。漏出時間は、イオン質量122用の検出器信号が6000個の多数に達する時の時間として定義される。
【0105】
試験フィルムの透過動力学へのLDPEフィルムの影響は無視できる。5分であると決定されたポリエチレンフィルムの漏出時間は、試験フィルムの漏出時間に比べて問題にならない長さの時間である。LDPEフィルムはEtOHから試験フィルムを保護する。フィルムのスキン層がEVAのように事実上極性のある場合、EtOHはスキン層を可塑化し、フィルムの全体としての結合性に影響を及ぼし得る。
【0106】
m/z=122でのイオンはDEDSの特徴である。それがDEDS用質量スペクトルにおけるフラグメントイオンの中で、最高の相対的な潤沢性の一つを有するという理由により、このイオンを選択する。また、それは系の中に存在する他の化学種からの干渉を最小にとどめるに十分なほど高い分子量を持つ。
【0107】
単位が任意であり、系に依存するので、潤沢さは相対的な数である。質量分析計中に同調ガスとして存在する校正ガスを用いて系を校正する。試料をかける前に系を同調させ、必要なら再調整する。
【0108】
表7はDEDS漏出時間および一連の高分子フィルムの定常状態比透過率を示す。これらのフィルムはバリア層として異なるポリマー樹脂を含有する。比較実施例A、B、C、E、F、Oのフィルムは現在造孔術用途に用いられている。これらフィルムの製造に用いられる樹脂は表5にリストされている。
【0109】
【表12】

【表13】

【0110】
表7において、現在造孔術用途に用いられているフィルム(比較実施例A、B、C、E、F、O)は、約47分以上のDEDS漏出時間および500以下のDEDS比透過率を有することを示す。8分のDEDS漏出時間および4500より大きいDEDSP.R.を有する比較実施例Pを例外とはするが、本発明のフィルム(すなわち、実施例17〜43)は、現在バリア樹脂厚さに匹敵する値として造孔術用途に用いられているフィルム用の値と同じかまたはよりよい範囲にあるDEDS漏出時間およびP.R.sを有する。実施例19(GPPS−SB混合物)のフィルムはわずかに47分より低いDEDS漏出時間を有し、実施例17および実施例18(PS−ESI混合物)のフィルムは500より高いDEDSP.R.を有する。しかし、バリア層厚さのわずかな増加は、これらの値を比較実施例A、B、C、E、F、Oのフィルムのレベルに持っていくために十分なものであるべきである。
【0111】
表7は、多くの非晶質ポリマーまたは混合物が、比較実施例A、B、C、E、F、Oにおけるものなどの伝統的なバリアポリマーに比較してDEDSおよび3−メチルインドールの透過に対し同等かまたはよりよい防護を提供することが可能であることをさらに示す。純粋LDPEフィルムである比較実施例Mのフィルムは、LDPEがDEDSに対して殆どバリア性のない特性を有し、従って、他の実施例のバリア特性には寄与しないことを示す。
【0112】
試験4
硫化水素H2Sガスバリア特性
以下に記載するようにPDHID(フォトダイオードヘリウムイオン化検出器)に結合された透過容器を用いて、40℃でH2Sガスに対するフィルムの透過性を測定する。
【0113】
1枚のフィルムを透過容器の中に置く。試験容器の温度を40℃に制御する。純粋ヘリウムガスをフィルムの片方の面上に流し、一方でヘリウム中の1重量%H2S混合物をフィルムのもう一方の面上に流す。時間の関数としてガス流中のH2S濃度を記録するデータ獲得システムに結合されたPDHID検出器に純粋ヘリウムガス流を通す。H2S漏出時間および時間/濃度カーブに基づき定常状態透過率を決定する。知られた濃度でのH2Sガス混合物によりシステムを校正する。
【0114】
表8は一連の高分子フィルムのH2S漏出時間および定常状態透過率を示す。これらのフィルムは異なるポリマー樹脂をバリア層として含有する。比較実施例Cのフィルムは現在造孔術用途に用いられている。これらフィルムの製造に用いられる樹脂は表5に一覧されている。
【0115】
【表14】

【0116】
表8は、PET−Gバリア層を持つ実施例41および45に用いられたフィルムおよびPMMAバリア層を持つ実施例23に用いられたフィルムは、現在造孔術用途に用いられているフィルム(比較実施例C)と同じ程度のH2S漏出時間およびP.R.sを有することを示す。実施例21のフィルムは、比較実施例Cに用いられるフィルムのそれの、約半分のH2S漏出時間、およびそのP.R.の20倍を有する。比較実施例Nのフィルム(PET)は比較実施例Cフィルムのそれの3倍高いP.R.を、および約半分のH2S漏出時間を有する。
【0117】
PETは約255℃の融点を持つ半晶質ポリエステルであり、従って、一般に270〜290℃の押出し温度で加工されなければならない。PET−G(実施例41および45)は本質的に約81℃のTgを持つ非晶質ポリエステルであり、従って、より低い押出し温度190℃〜220℃で加工することができる。この押出し温度範囲は、一般に用いられるポリオレフィンおよびエラストマーの押出し温度により近い。従って、PET−Gをこれらの樹脂系統と共押出しすることは、PET(「Film Extrusion Manual」,Chapter19G;Polyester,page533,TAPPIPress1992)に比べて、極めて容易である。PET−Gは、また、PET(Eastman Chemical product literature,ref.PPM−204(May1996)には以下の値が記載されている:PET−Gコポリエステル対PETホモポリマーに対応して、曲げ弾性率=2,100メガパスカル(MPa)対2,500Mpa;アイゾッド衝撃強さ=102J/M対51J/M)よりも、より低い弾性率およびより高い耐衝撃性を有する。従って、低い剛性(すなわち、高い可撓性)を持つフィルムは、PETによるよりもPET−Gにより容易に達成される。実施例44および47〜50に用いられるフィルムは、比較実施例Cのフィルムよりも、7倍短いH2S漏出時間を、および33〜47倍より高いP.R.sを有する。
【0118】
このデータに基づき、PET−GおよびPMMAは小分子(例えば、H2S0.40nm分子直径)、より大きな分子(例えば、DEDS0.58nm分子直径)および大きい分子(例えば、3−メチルインドール0.78nm分子直径)に対して臭気バリア特性の良好な組合せを有することが信じられる。従って、それらは造孔術袋用途によく適合する。他の非晶質ポリマー(すなわち、PC、衝撃変性PC、ABS、SAN、PSおよび配合物)は、分子直径約0.58nmおよびそれ以上(DEDSおよび1−または3−メチルインドール)を持つ分子には良好なバリア特性を有するが、しかし、それらの小分子(例えば、H2S)に対する低バリア特性のせいで、造孔術用途には同じように良好には適合しない。従って、これらのポリマーは、より大きい分子のみに(例えば、DEDSおよび3−メチルインドール)バリアが必要とされる場合の用途に対して有用である。例えば、匂いを生じるケミカルの包装、保護衣用途および経皮的薬剤搬送システム(TDDS)用がある。
【0119】
試験5
PET−G配合物の1%割線モジュラスおよび酸素透過性
【0120】
前述のように、PET−G樹脂は、曲げ亀裂に対するその軟度および耐性を増大させるためにより柔らかいポリマーと配合することができる。例えば、表5中にリストされたPET−G樹脂をより柔らかいポリマー樹脂25重量%とZSK−30配合機の中で配合する。配合されたペレットを32重量%まで落とし64重量%は純粋PET−Gであり、それを30mm直径24L/D押出し機中に供給する。250mm幅のダイを通して30μmおよび60μmの単層キャストフィルムを押出す。これらフィルムの1%割線モジュラスおよび酸素透過性を測定し、データを表9に示す。
【0121】
【表15】

【0122】
表9のデータは、より可撓性のある樹脂と配合することによりPET−G樹脂のモジュラスを減少させることが可能であることを示す。これは、高モジュラスが問題である場合により剛性の少ないフィルムの製造を可能とする。他方で、配合物はPET−Gのそれよりもより大きな酸素透過性を有する。酸素透過性は他のガスおよび化学化合物に対するフィルムの透過性を正確に予測するものではないが、同じポリマー型に対して、酸素透過性の相対変動は他のガスおよび化学化合物に対する透過性およびB.T.の相対変動を予測することにおいて有用であり得ることは信じられる。例えば、表7の実施例27および32のフィルムは、8.1μmの純粋PET−G(実施例27)、および8.1μmのPET−G/SB70/30重量%配合物(実施例32)のバリア層を含有する。これら2種フィルムの酸素透過性およびDEDSを表10に示す。
【0123】
【表16】

【0124】
PET−G配合物を含有する実施例32のフィルムの酸素透過性は実施例27の純粋PET−G樹脂フィルムよりも45%高い。DEDSB.T.およびP.R.も、また、SB樹脂のPET−G樹脂中への配合によりそれぞれ約45%および40%変動する。
【0125】
II.音響特性
前述のようなバリア特性に加えて、高分子フィルムは多くの場合にしわくちゃにされる時に騒音を出さないことが望ましい。例えば、造孔術または失禁用途において、造孔術袋または失禁袋は音をださないのが望ましい。しかし、しわくちゃにされる時に大抵の高分子フィルムは騒音を出す。多層バリアフィルムの場合、高および低剛性またはモジュラスが組合せられる時に多層フィルムは、最も低いモジュラスのポリマーのみから製造された同じ厚さのフィルムがそうであるよりも、しわくちゃにされる場合に有意により多くの騒音を出す。
【0126】
試験6
多層フィルムの騒音およびモジュラスの比較
【0127】
高および低剛性またはモジュラスのポリマーが多層フィルム中に組合せられる場合、多層フィルムが最も低いモジュラスのポリマーのみから製造された同じ厚さのフィルムがそうであるよりも、しわくちゃにされる場合に有意により多くの騒音を出すという現象の実証は、フィルム組成物が表11に記される以下の表12および13中の比較実施例Q〜Wに示される。
【0128】
LDPEまたはEVAのスキン層およびPET−G、ABS、非晶質PAまたはPCの硬質コア層を持つ層構造A/B/C/B/Aの5層対称式キャストフィルムを共押出しする。これらのフィルムは、それぞれが全体のフィルム厚さの7.5%を示す二つの繋ぎ層を有する。また、スキン層として同じ組成物および同等の厚さの単層キャストフィルムを作成する。表11はこれらフィルムの組成を一覧する。すべての樹脂は表5に記載されている。
【0129】
【表17】

【0130】
表12に示すようにこれらフィルムのスキンとコアの樹脂の間にはモジュラス(剛性)に大きな差異がある。
【0131】
動的質量分光分析法(D.M.S)による貯蔵モジュラス(G’)およびタンゲントデルタの決定
【0132】
表12におけるフィルムのG’を以下のように決定する:
機械制御およびデータ収集用Rheos4.4.4ソフトウエアにより動く二つのRheometricsRDS−II機器(S/N024−12および024−40)の内一つを用いて、動的質量測定(すなわち、G’およびTanΔ値)を行う。秒当り10ラジアン(ラジアン/秒)のねじり周波数および0.02%のひずみを伴う、2℃/分での−100℃〜約150℃動的温度ランププロフィールを用いてすべての試料を試験する。試験に先立って個々の標本を圧縮成形する。標本の次元は約12.7×3.2×57.2mm(0.5×0.125×2.25インチ)である。
【0133】
【表18】

【0134】
これらのフィルムの騒音を測定し、その結果を表13に示す。
【0135】
表13のフィルムの騒音を以下のように決定する:
試料の側に沿って長さ方向(MD)および横方向(TD)として、フィルムの10×10cmサイズ試料を切り出す。標本を両面接着テープで互いに離れた直径32mmと90mmの二つの円形あて盤に固定する。フィルムはその軸に沿って一つのスリットを持つ垂直円筒(32mm直径)の形状を有する。フィルムMDは円筒軸に平行である。円筒フィルム試料からの折り目を排除することを確認する。底の円形あて盤は静止しているが、一方上部あて盤は代替運転機構に結合される。
【0136】
スリットから90°で、フィルム円筒の半分の高さで縁から17mmの所にマイクロフォンを置く。オクターブ周波数を有するCEL393騒音分析器にマイクロフォンを接続する。騒音分析器を「P」(ピーク)様式範囲2に設定する。駆動単位のモーターおよび騒音計を除く全体一式を、音絶縁箱(外側から内側へ15mm合板/3mm鉛/8cm岩綿)の中に密閉する。箱の内部次元は33cm×33cm×40cm(長さ×幅×高さ)である。モーター回転開始後、フィルムは0.6Hzの屈曲周波数で65°の角度を持つ代替屈曲動作を行う。デシベルA規模[dBA]にある16Hz〜16kHzのオクターブ周波数帯におけるフィルムの屈曲性動作により生じる騒音を記録する。2〜4回の測定を行い各周波数帯に対する平均値を計算する。試験は室温で行う(約20℃)。
【0137】
【表19】

【0138】
比較実施例R、S、T、UおよびWは、硬質樹脂の薄いコア層を含まない比較実施例QおよびVのフィルムよりも、有意に騒音が高い。硬質コア層を含有するフィルムのより高い騒音は、より剛直性の高い層を構造中に組込むことに起因するフィルムのより低い「音減退指数」または「SRI」のせいである。(例えば、Woods Practical Guide to Noise Control,Fifth edition,March 1972,page 117.Published by Woods Acoustics,a division of Woods of Colchester Limited,UK を参照すること)。従って、硬質層を含有するこれらの共押出し構造の騒音低減方法を見出すことは有利であり得る。硬質層はこの層のG’モジュラスが≧2×104N/cm2であることを意味する。
【0139】
試験7
A)多層ポリマーフィルムに関する騒音の決定
バリア層(層C)は同じ硬さであるが、スキン層は異なる硬さである6枚の対称5層共押出キャストフィルムA/B/C/B/Aを作製する。これらのフィルムは、一つのPET−Gコポリエステルバリア層と全厚さの15%に相当する二つの繋ぎ層を有する。表14はこれらのフィルムを説明しており、表22は、スキンポリマーのG’値およびタンデルタ値を報告している。
【0140】
【表20】

【0141】
これらのフィルムの騒音を測定した。それを表15において報告している。表15において、騒音は試験6で前に記載されたように決定されている。
【0142】
【表21】

【0143】
表15は、驚くべきことに、最も静穏なフィルムが最低G’モジュラスのスキン樹脂組成物で製造されたフィルムではないことを示している。実施例50および51は、実施例50および51のスキン樹脂が比較例Y、ZおよびAAのG’モジュラスよりも大幅に高いG’モジュラスを有するけれども、殆どすべての周波数範囲において最も静穏なフィルムである。−5℃〜+15℃の温度範囲におけるフィルムのスキン樹脂のタンデルタ値は、共押出構造体の騒音の抑制に際して主たる役割を果たす。実施例50および51は、この温度範囲においてタンデルタが最も高く、従って最も静穏なフィルムである。これは、実施例50および51が比較例X、Y、ZおよびAAのフィルムより大幅に静穏である理由を実証している。
【0144】
樹脂のブレンドは、比較例Yと、実施例51のスキン構成材料の各々と合わせて製造されている実施例50のフィルムとの間の中間の騒音を有する実施例51のフィルムで見られるように最終結果を大幅には変えない。
【0145】
最も静穏なフィルムは、−5℃〜15℃の間の範囲内の温度で0.25以上の、あるいは−12℃〜−5℃の間の範囲内の温度で0.32以上のタンデルタ値を有するポリマー樹脂を含有するフィルムである。
【0146】
驚くべきことには、共押出フィルムが良好な騒音抑制特性(例えば、−12℃〜+15℃の温度範囲における高いタンデルタ値)および比較的低いG’を有する幾つかの樹脂を含有する時、より厚いフィルムは、予期に反して、より薄いフィルムより高い周波数で静穏である。以下の試験7−Cは、比較例ACとADおよび実施例52と53によってこの観察を支持している。
【0147】
少なくとも一方のスキン層は、好ましくは、低結晶性PPコポリマー75〜25重量%および低結晶性均質EAOコポリマーとLLDPEまたはULDPEとのブレンド25〜75重量%を含む。また、繋ぎ層は、好ましくは、それぞれが全フィルム厚さの3〜15%に相当し、そしてコモノマー含有率20重量%以上のEVAまたはEMAから形成される。
【0148】
B)多層ポリマーフィルムに関する騒音の決定
これらのフィルムは、PET−Gコポリエステルバリア層(層C)を伴った5層共押出キャストフィルムA/B/C/B/Aである。比較例ABおよびACのフィルムはスキン組成が同じであるが、スキン厚さが異なる。実施例52および53のフィルムは別のスキン組成をもち、スキン厚さが異なる。すべてのフィルムは、一つのバリア層と全厚さの15%に相当する二つの繋ぎ層を有する。表16はフィルムを説明している。表22は、スキンポリマーのG’値およびタンデルタ値を報告している。
【0149】
【表22】

【0150】
これらのフィルムの騒音を表17において報告している。表17において、騒音は試験6で前に記載されたように決定されている。
【0151】
【表23】

【0152】
比較例ACのフィルムは、すべての周波数範囲で比較例ABのフィルムより騒音が大きい一方で、実施例53のフィルムは、実施例52のフィルムより1kHz以下でのみ騒音が大きいが、2〜16kHz(すなわち、人の耳にとって最も煩わしい周波数)では、より静穏である。
【0153】
C)多層ポリマーフィルムに関する騒音の決定
バリア層(層C)は同じ硬さであるが、スキン層は異なるG’値およびタンデルタ値である8枚の対称5層共押出キャストフィルムA/B/C/B/Aを作製する。これらのフィルムは、一つのPET−Gコポリエステルバリア層と全厚さの15%に相当する二つの繋ぎ層を有する。表18はこれらのフィルムを説明している。表22は、表22および図1、2、4、7、8、9および10において見られるスキンポリマーのG’値およびタンデルタ値を示している。表18は、対照フィルムとしてLDPEスキン層を伴った比較例Xも報告している。
【0154】
【表24】

【0155】
表19は、騒音を試験6の場合のように決定して、これらのフィルムの騒音測定をまとめている。
【0156】
【表25】

【0157】
表19のデータは、主として約30〜40倍より低い比較例ADのスキン樹脂のG’値のゆえに、比較例ADのフィルムが比較例Xのフィルムより静穏であることを明確に示している。他方、実施例54〜59のフィルムは、それらのG’値がLDPEと同じ範囲内でありつつ(表22参照)、それらの組成が−5℃〜15℃の間の範囲内の温度で0.25以上の、あるいは−12℃〜−5℃の間の範囲内の温度で0.32以上のタンデルタ値を有するポリマーの大きな割合を含むので、主として1kHz以上の周波数範囲で比較例XおよびADのフィルムより本質的に静穏である。実施例54〜59において用いられているような低結晶性PPホモポリマーまたはコポリマー樹脂は、特に有効な騒音抑制ポリマーである。本明細書において用いられる低結晶性PPとは、樹脂の融解熱(Hf)が規則性アイソタクチックPPの融解熱より大幅に低い(例えば、50J/g以下)ことを意味する。
【0158】
D)多層ポリマーフィルムに関する騒音の決定
バリア層は同じ硬さであるが、スキン層は異なるG’値およびタンデルタ値である4枚の対称5層共押出キャストフィルムA/B/C/B/Aを作製する。これらのフィルムは、非晶質コポリアミドバリア層と全厚さの15%に相当する二つの繋ぎ層を有する。スキンポリマーのG’値およびタンデルタ値は表22において見られる。
【0159】
【表26】

【0160】
表21は、騒音を試験6の場合のように決定して、これらのフィルムの騒音測定をまとめている。
【0161】
【表27】

【0162】
実施例60および61は、比較例AEおよびAFより大幅に静穏である。これは、フィルム組成において−5℃〜15℃の間の範囲内の温度で0.25以上の、あるいは−12℃〜−5℃の間の範囲内の温度で0.32以上のタンデルタ値を有するポリマー樹脂の使用によって得られた多層フィルムの大幅な騒音抑制がPET−Gの層を含むフィルムに限定されずに、同じフィルム構造体中で高いモジュラスと低いモジュラスの樹脂を組み合わせることによっても達成されることを明確に示している。
【0163】
室温(約20℃)ですべての実施例の騒音を測定する。異なる温度で騒音を測定する場合、同じ温度差によってずれた温度範囲で0.25以上のタンデルタ値を有するポリマーによって同じ騒音抑制効果が得られることが予想される。
【0164】
表22は、試験6の場合のようにG’値およびタンデルタ値を決定して、試験6〜8において用いられた樹脂に関して選択された温度での最大タンデルタ値、G’値およびタンデルタ値を示している。当業者は、G’値およびタンデルタ値がばらばらの値でなくて曲線として容易に描かれることを認めている。表22に示された値は、曲線上の点を単に例示しており、本発明をこうした点に限定しない。本発明は、本明細書において規定された基準を満足させる曲線上のすべての点を包含する。
【0165】
【表28】

【0166】
III.ヒートシール強度特性
前述したように、多層フィルムの幾つかをシールする最終使用用途に関して、例えば袋を作ることが望ましい場合がある。幾つかのスキンポリマー組成物のシール強度は、フィルムをそれ自身に、あるいは他のポリマーにシールする時に低すぎることがある。シーラント層をフィルムの最外層に加えることにより、あるいはシール強度を改善するポリマーを最外層にブレンドすることにより、より高いシール強度を得ることが可能である。
【0167】
試験9
多層ポリマーフィルムのヒートシール強度の決定
表23(全厚さの15%に相当する二つの繋ぎ層Bをもつ5層共押出フィルムA/B/C/B/A)は、シール強度を改善する何らかの他のポリマーを組成物にブレンドすることにより、より高いシール強度を得ることが可能であることを実証している。この点で、低結晶性EAOとLLDPEまたはULDPEを含むブレンドが有利であると共に好ましい。
【0168】
表23のフィルムのヒートシール強度を次の通り決定する。
【0169】
以下に詳述するように試験室ヒートシーラーで二片のフィルムを合わせてヒートシールする。
20N/cm2のシール圧および1.5秒のシール時間を用いる。下方顎を50℃にしつつ、180℃(フィルム/フィルム)または225℃(フィルム/LDPE)に上方シール顎を加熱する。粘着を防止するためにフィルムとシール棒との間に厚さ13μmのポリエステルフィルムを入れる。シールはフィルムTDに対して平行である。幅25.4mmのヒートシール済み試験片を切断し、二つのクランプ間の距離が50mmの引張試験機のクランプ中に入れる。シールの両側を508mm/分の速度でフィルムのMDにおいて引き離す。試験片を破壊するために要した最大力をシール強度として記録する。フィルム/フィルムシール強度の場合、フィルムをそれ自身上にシールする。フィルム/LDPEシール強度の場合、フィルムをLDPE系フィルム(メルトインデックス(M.I.)=1.75g/10分、密度(d)=0.924g/cm3のLDPE75重量%とメルトインデックス(M.I.)=2.3g/10分、密度(d)=0.917g/cm3のLLDPE(オクタンコポリマー)25重量%とのブレンド、厚さ70μm)上にシールする。ヒートシーラーの下方顎上にLDPEフィルムを置いてシールを作製する。
【0170】
【表29】

【0171】
実施例51および62〜68を実施例50および57と比較すると、何らかの低結晶性均質EAOコポリマーまたは何らかのULDPEと低結晶性PP中の低結晶性均質EAOコポリマーとをブレンドするとフィルムのシール強度を改善することが示されている。
【0172】
実施例50および57は、許容できるヒートシール強度をそれら自身上で有するが、LDPE上では極めて低いシール強度である一方で、実施例51、62および63のフィルムは、それら自身上およびLDPE上でより強いシール強度を有する。これらの組成は、フィルムがLDPEのようなポリオレフィン物品上でシールされなければならない時にも有利である。
【0173】
III.樹脂の選択
共押出フィルム構造体中のPET−G系層とポリオレフィン系層との間の繋ぎ樹脂としてEVEコポリマーに代わる樹脂を用いることが可能である。表24(全厚さの15%に相当する二つの繋ぎ層Bを伴った5層共押出フィルムA/B/C/B/A)のデータは、EVAの代わりにEMAコポリマーを用いることにより適切なシール強度を得ることが可能であることを実証している。
【0174】
【表30】

【0175】
本発明において有用な他の繋ぎ樹脂は、MAH−またはグリシジルメタクリレートグラフトEVA、EMAまたはEBA、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレートターポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸ターポリマー、SBコポリマー、EVACOターポリマー、スチレンイソプレンコポリマーおよびそれらのブレンドから選択することが可能である。
【0176】
実施例70〜74
4枚の5層対称共押出フィルム(実施例70〜73)および1枚の7層対称共押出フィルム(実施例74)を作製する。5層フィルムはA/B/C/B/A構造を有し、7層フィルムはA/B/C/D/C/B/A構造を有する。表25は、実施例70〜73に関する層厚さと組成を示している。実施例70に関するバリアコア層はPET−Gを構成している。実施例71〜74に関するバリアコア層は、PET−GとAPE−1とのブレンドを構成している。実施例74の場合、それぞれの層の組成と厚さは、A=93重量%ITP−1および7重量%ADD−1、8μm/層、B=100重量%PCP−2、26.5μm/層、C=100重量%EVA−3、5.6μm/層ならびにD=70重量%PET−Gおよび30重量%APE−1、4.8μm/層である。
【0177】
【表31】

【0178】
上述したように実施例70〜74の多層フィルムを騒音試験に供するが、異なる騒音計を用いる。この計器は、CEL騒音分析計と同様にフルオクターブ帯域でなく1/3オクターブ周波数帯域によって騒音を分析するNC10音響分析装置(ニュートリック・コルテックス・インストルメント(Neutrik Cortex Instruments))である。これは、周波数帯域サンプリングの数を効果的に3倍にする。30秒の測定時間、速い機能、装置設定EXP EC、前の試験の場合のようにフィルムから17mmでなく15mm離れて置かれたマイクロフォンを用いる最小範囲によって1Hzの周波数で試験を始める。表26において試験結果をまとめる。
【0179】
【表32】

【0180】
表26のデータは、実施例70〜74の多層フィルムが、表26に示された周波数範囲にわたって主として50dB(A)を下回る騒音等級に基づく静穏フィルムとして潜在的に有用であることを示している。
【0181】
実施例70〜73のフィルムをバリア試験に供し、その結果を表27にまとめる。
【0182】
【表33】

【0183】
表27のデータは、実施例70〜73の多層フィルムが比較例Cのフィルムに似た、あるいは比較例Cのフィルムより良好なバリア特性を有することを示している。B−100コポリエステルを含有するフィルム71〜74は、フィルム70よりH2Sに対する大幅に低い透過性を有する。
【0184】
実施例72および73に関して試験9の場合のようにヒートシール特性、および機械方向(MD)と横方向(TD)の両方において実施例70〜73に関して、試験5の場合のようにモジュラス、そして試験9(ASTM F88)に従って破断点伸び(破断点伸び)および破断応力を決定する。実施例72は、182℃のシール温度で22.3N/25mmおよび193℃で23.6N/25mmのフィルム/フィルムシール強度を有する。実施例73は、193℃のシール温度で20.9N/25mmのフィルム/フィルムシール強度および138℃、149℃および171℃のそれぞれのシール温度で9.8、16.9および18.7N/25mmのフィルム/LDPEシール強度を有する。残りの物性試験結果を表28にまとめ、比較例Aおよび比較例Dの多層フィルムに関する試験データを示す。後者の二つのフィルムは、造孔術袋を組み立てる際に現在用いられているフィルムに相当する。
【0185】
【表34】

【0186】
表28は、実施例70〜72のフィルムが比較例AおよびDのフィルムと似た満足なフィルム物性を有することを示している。本発明の範囲に入る他のフィルム構造体は似た結果を示している。
【0187】
実施例75および比較例AG
一方の層がPET−Gを含有すると共に12μmの厚さを有し、他方の層がEVA−3および添加剤としてエルクアミド0.2重量%、ステアラミド0.2重量%および二酸化珪素0.1重量%(すべての百分率は層の重量に基づく)を含有すると共に38μmの厚さを有する2層共押出フィルムを作製する。
【0188】
商用TDDS裏当て層フィルムに似た2層フィルム積層体を比較例AGとして用いる。この積層体は総厚さが50.8μmであり、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルの厚さ12μmの層を含み、残りはエチレン−酢酸ビニルコポリマーの層である。
【0189】
比較例AGの積層体は、実施例75のフィルムのモジュラスより大幅に高いMDとTDの両方におけるモジュラス2%を有し、それは、より大きくないとしても実施例75のモジュラスのおそらく二倍である。同時に、比較例AGの積層体は、実施例75のフィルムの破断点伸びより大幅に小さいMDとTDの両方における破断点伸びを有し、それは実施例75のフィルムの破断点伸びの半分未満であることが多い。
【0190】
実施例75のフィルムは、TDDSデバイスまたはパッチ中に含まれる化学物質に対する比較例AGの積層体のバリアに等しいバリアをもたらすか、あるいは殆どそうあるべきである。同時に、実施例75のフィルムは、より低いモジュラスの結果としてパッチを着用する人をより快適にするべきである。より低い実施例75のモジュラスは、比較例75を基準として着用者の皮膚に対する改善されたパッチ快適性も促進する。実施例75の共押出フィルムはまた、比較例AGの積層体より剥離に対する傾向が小さいのがよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも5時間の3−メチルインドール漏出時間、b)少なくとも40分のジエチルジスルフィド漏出時間またはc)硫化水素60立方センチメートル透過/フィルム面積平方センチメートル/日(cm3/m2・日)以下の硫化水素透過速度の少なくとも一つによって決定されるバリア機能性を有し、臭気と直径0.40ナノメートル以上の有機分子の少なくとも一方に対してバリアとして機能する本質的に非晶質の非塩素化ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記フィルムは実質的に配向されていない請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記本質的に非晶質の非塩素化ポリマーフィルムは、ポリ(メチルメタクリレート)、グリコール変性ポリエステル、グリコール変性ポリエステルと非晶質コポリエステルのブレンド、非晶質コポリエステルを伴った、あるいは非晶質コポリエステルを伴わないグリコール変性ポリエステルとスチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフトエチレン−メチルアクリレートコポリマー、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマー、無水マレイン酸官能化スチレン−エチレン−ブテンブロックコポリマーおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーの少なくとも一種とのブレンド、ガラス転移温度が50℃より高い非晶質熱可塑性ポリエステル樹脂、ガラス転移温度が120℃以下の非晶質ポリアミドまたはコポリマーポリアミド、エポキシ、非晶質ポリウレタンおよび非晶質ポリウレタンと少なくとも60重量%のグリコール変性ポリエステルとのブレンド、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマーとエチレン−スチレンインターポリマーとのブレンド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、耐衝撃性改良ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、耐衝撃性改良ポリカーボネート、またはポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマーアロイから形成されたフィルムから選択される請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルムから形成された少なくとも一つのバリア層を有する多層フィルム構造体。
【請求項5】
前記構造体は5層構造体である請求項4に記載の多層フィルム構造体。
【請求項6】
前記構造体は4層構造体である請求項4に記載の多層フィルム構造体。
【請求項7】
各層は塩素を実質的に含まない請求項4に記載の多層フィルム構造体。
【請求項8】
前記構造体は、−5℃〜15℃の間の範囲内の温度で少なくとも0.25、あるいは−12℃〜−5℃の間の範囲内の温度で0.32以上のタンデルタ値を有する少なくとも一種のポリマー樹脂、ポリマー樹脂組成物またはポリマーブレンド組成物を含む騒音放出が小さい少なくとも一つの静穏フィルム層を含む請求項4に記載の多層フィルム構造体。
【請求項9】
i)30〜150マイクロメートルの間の全厚さと、ii)少なくとも5時間の3−メチルインドール漏出時間、少なくとも45分のジエチルジスルフィド漏出時間および60cm3/m2・日以下の硫化水素透過速度と、iii)1kHz〜16kHzの間の一つ以上のオクターブ周波数帯域で50デシベル以下の騒音レベルと、iv)少なくとも10ニュートン/25ミリメートルのフィルム対フィルムヒートシール強度とを有し、本質的に非晶質の非塩素化ポリマーバリアフィルムの少なくとも一つの層を含み、前記バリア層に加えて少なくとも一つのスキン層と、任意に、前記バリア層と前記スキン層との間に配置された少なくとも一つの中間層とを含む多層フィルム構造体。
【請求項10】
a)前記バリアフィルムは全フィルム厚さの5〜20%に相当し、そしてグリコール変性ポリエステル、本質的に非晶質の熱可塑性ポリエステルまたはポリメチルメタクリレートの少なくとも一種から製造され、b)前記少なくとも一つのスキン層は、低結晶性ポリプロピレンコポリマー、あるいは非晶質ポリ(アルファオレフィン)とランダムプロピレンホモポリマーまたはコポリマーとのブレンド80〜25重量%および均質低結晶性エチレン−アルファオレフィンコポリマーと直鎖低密度ポリエチレンと超低密度ポリエチレンとのいずれかの割合のブレンド20〜75重量%を含み、c)前記多層フィルムは繋ぎ層である中間層を含み、各繋ぎ層は全フィルム厚さの3〜15%に相当すると共にコモノマー含有率が20重量%以上であるエチレン−酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン−メチルアクリレートコポリマーから形成される請求項9に記載の多層フィルム。
【請求項11】
a)前記バリア層は全フィルム厚さの5〜20%に相当し、そして本質的に非晶質の熱可塑性ポリエステル、あるいは本質的に非晶質の熱可塑性ポリエステルまたはポリメチルメタクリレートのブレンドから製造され、b)前記少なくとも一つのスキン層は、低結晶性ポリプロピレンコポリマー、あるいは非晶質ポリ(アルファオレフィン)とランダムプロピレンホモポリマーまたはコポリマーとのブレンド100〜30重量%および均質低結晶性エチレン−アルファオレフィンコポリマーと直鎖低密度ポリエチレンと超低密度ポリエチレンとのいずれかの割合のブレンド0〜70重量%を含み、c)中間層、すなわち繋ぎ層は、全フィルム厚さの合計で15〜60%に相当すると共にコモノマー含有率が20重量%以上であるエチレン−酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン−メチルアクリレートコポリマーから形成される請求項9に記載の多層フィルム。
【請求項12】
−5℃〜15℃の間の範囲内の温度で少なくとも0.25、あるいは−12℃〜−5℃の間の範囲内の温度で少なくとも0.32のタンデルタ値を有する少なくとも一種のポリマー樹脂またはポリマー樹脂組成物を含む騒音抑制特性を有する少なくとも一つの静穏フィルム層と2×104N/cm2以上の貯蔵弾性率を有する少なくとも一つの第2の層とを含む多層フィルム構造体。
【請求項13】
前記静穏フィルム層は、30重量%以上の量において低結晶性ポリプロピレン、非晶質ポリ(アルファオレフィン)とランダムプロピレンホモポリマーまたはコポリマーとのブレンド、エチレン−スチレンインターポリマーまたはポリノルボルネンを含む請求項12に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記量は25重量%以上である請求項13に記載の多層フィルム。
【請求項15】
前記第2の層は、非晶質熱可塑性ポリエステル、あるいは本質的に非晶質の熱可塑性ポリエステルのブレンド、グリコール変性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコールポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリアクリロニトリル、PA−6、PA−6,6、PA−11、PA−12、非晶質ポリアミド、MXD6ポリアミドから選択されたポリアミドあるいはコポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン−メチルアクリレートコポリマー、PHAE、ポリウレタン、エポキシ、PEN、シンジオタクチックポリスチレンおよびポリスチレンから選択されたポリマーを含む請求項12に記載の多層フィルム。
【請求項16】
a)−5℃〜15℃の間の範囲内の温度で少なくとも0.25、あるいは−12℃〜−5℃の間の範囲内の温度で少なくとも0.32のタンデルタ値を有し全層組成物の25重量%以上を構成する第1のポリマー樹脂、ポリマー樹脂組成物またはポリマーブレンド組成物を第2のポリマー樹脂とブレンドする工程と、b)前記ブレンドされたポリマー樹脂から多層フィルムの層を形成する工程とを含み、請求項1に記載のフィルムから形成された少なくとも一つのバリア層を含む多層フィルム構造体において騒音の放出を抑制する方法。
【請求項17】
造孔術袋(結腸フィステル形成術、回腸フィステル形成術)、経皮吸収搬送システム、化粧パッチ、失禁袋、医用採集袋、腸管外溶液用袋、臭気食品包装または保護衣から選択される請求項1に記載のフィルムから組み立てられた製造品。
【請求項18】
造孔術袋(結腸フィステル形成術、回腸フィステル形成術)、経皮吸収搬送システム、化粧パッチ、失禁袋、腸管外溶液用袋、注射液袋、臭気食品包装または保護衣から選択される、請求項9に記載のフィルムから組み立てられた製造品。
【請求項19】
造孔術袋(結腸フィステル形成術、回腸フィステル形成術)、経皮吸収搬送システム、化粧パッチ、失禁袋、腸管外溶液用袋、注射液袋、臭気食品包装または保護衣から選択される、請求項12に記載のフィルムから組み立てられた製造品。

【公開番号】特開2011−174072(P2011−174072A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−58223(P2011−58223)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2001−506723(P2001−506723)の分割
【原出願日】平成12年6月29日(2000.6.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】