説明

材料充填装置

【課題】高精度に混練脱泡処理された材料を、気泡を含まないように被充填容器に充填することを可能にする材料充填装置を提供する。
【解決手段】材料充填装置1は、公転軸線L1を中心に公転し、かつ、公転軸線と交差する方向に延びる自転軸線L2を中心に自転することが可能に構成された、内部に材料Mが収納された収納容器100と、収納容器内に配置され、収納容器の高さ方向に摺動可能に構成された、貫通穴が形成されている押圧部材120と、押圧部材の先端面と収納容器の内壁面とによって区画された領域Aに連通するように、押圧部材に取り付けられた被充填容器200と、を含む。材料充填装置1では、収納容器を公転させることによって押圧部材に作用する遠心力を利用して、押圧部材を収納容器の底面に向かって摺動させて材料を押圧し、材料を被充填容器に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野や工業分野で利用される材料(ペースト状材料)において、内部に気泡を含まない材料が要求されている。そして、内部に気泡を含まない材料を製造することが可能な装置として、材料が収容された容器を自転及び公転させる装置が知られている(特許文献1参照)。この装置によると、自転及び公転の遠心力を利用して材料に内在する気泡を取り除くことができるとともに、材料を高精度に混練(攪拌、分散、混合)することが可能になる。
【0003】
また、医療分野や工業分野では、ペースト状の材料を精度よく吐出する技術が要請されており、かかる要請に応えるために高精度のディスペンサやシリンジ容器の開発が進められている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3896449号公報
【特許文献2】特開2005-13841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンジ容器に気泡が混入していると、高精度に作られたディスペンサ及びシリンジ容器を利用しても、材料を精度良く吐出することは困難になる。すなわち、シリンジ容器に充填された材料を精密に吐出するためには、シリンジ容器内に気泡が入らないように材料を充填することが重要である。
【0005】
特に、自転公転方式の混練脱泡装置を利用すると、精度よく混練脱泡処理された材料を生成することが可能になる。そのため、自転公転方式の混練脱泡装置で混練脱泡処理された材料を、内部に気泡を含まないように、シリンジ容器などの被充填容器に充填する技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、高精度に混練脱泡処理されたペースト状の材料を、気泡を含まないように被充填容器に充填することを可能にする材料充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る材料充填装置は、
公転軸線を中心に公転し、かつ、前記公転軸線と交差する方向に延びる自転軸線を中心に自転することが可能に構成された、内部に材料が収納された収納容器と、
前記収納容器内に配置され、前記収納容器の高さ方向に摺動可能に構成された、貫通穴が形成されている押圧部材と、
前記押圧部材の先端面と前記収納容器の内壁面とによって区画された領域に連通するように、前記押圧部材に取り付けられた被充填容器と、
を含み、
前記収納容器を公転させることによって前記押圧部材に作用する遠心力を利用して、前記押圧部材を前記収納容器の底面に向かって摺動させて前記材料を押圧し、前記材料を前記被充填容器に充填する。
【0008】
本発明によると、材料の混練脱泡処理と、混練脱泡処理された材料の被充填容器への充填処理とを、同じ装置を利用して行うことができる。そのため、材料の混練脱泡処理と被充填容器への充填処理とを効率よく行うことができるとともに、混練脱泡処理された材料を、気泡を巻き込まないように被充填容器に充填することが可能になる。
【0009】
(2)この材料充填装置において、
前記貫通穴が、前記自転軸線上に配置されていてもよい。
【0010】
(3)この材料充填装置において、
複数の前記貫通穴が、前記自転軸線からの距離が等しくなるように配置されていてもよい。
【0011】
(4)この材料充填装置において、
前記収納容器の公転角速度が所定の値よりも大きくなったときに、前記押圧部材が前記収納容器の底部に向けて摺動を開始するように構成されていてもよい。
【0012】
(5)この材料充填装置において、
少なくとも前記収納容器内を減圧する減圧手段をさらに含んでいてもよい。
【0013】
これによると、材料の脱泡処理精度をさらに高めることができるとともに、材料充填処理中に、被充填容器内に気泡が入り込むことを防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含む。
【0015】
(1)材料充填装置1の構成
はじめに、本発明を適用した実施の形態に係る材料充填装置1の構成について説明する。図1及び図2は、材料充填装置1の構成について説明するための図である。
【0016】
本実施の形態に係る材料充填装置1は、図1に示すように、公転軸10を含む。公転軸10は、仮想の直線を中心に回転するように構成されている。本実施の形態では、公転軸10は、図1に示すように、鉛直に延びる仮想の直線(公転軸線L1)を軸として回転するように構成されている。ただし、公転軸10は、水平に延びる直線を軸として回転するように構成されていてもよい(図示せず)。
【0017】
材料充填装置1は、図1に示すように、回転体20を含む。回転体20は、公転軸10に固定され、公転軸10の回転に伴って、公転軸線L1を中心に(軸線として)回転するように構成されている。
【0018】
材料充填装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30を有する。容器ホルダ30は、後述する収納容器100を保持する役割を果たす。以下、容器ホルダ30について詳述する。
【0019】
容器ホルダ30は、回転体20の所定の位置に、自転可能に取り付けられている。本実施の形態では、容器ホルダ30は、回転体20の所定の位置を通る仮想の直線(自転軸線L2)を軸として自転可能に構成されている。本実施の形態では、公転軸線L1と自転軸線L2とは、所定の角度で斜めに交差する直線となっている。より具体的には、材料充填装置1では、公転軸線L1と自転軸線L2とは、45度の角度で交差するように構成されている。
【0020】
本実施の形態では、容器ホルダ30は、自転軸32に固定されている。そして、自転軸32は、回転体20に軸受け34を介して取り付けられている。これにより、容器ホルダ30を、回転体20に対して自転可能とすることができる。
【0021】
容器ホルダ30は、回転体20における、公転軸線L1から所定の間隔をあけた位置に取り付けられている。これにより、容器ホルダ30を、回転体20の回転に伴って、公転軸線L1を中心に公転させることが可能になる。
【0022】
本実施の形態では、1つの回転体20に、1つの容器ホルダ30が取り付けられている。そして、回転体20における容器ホルダ30とは反対側の位置には、バランス錘36が取り付けられている。このバランス錘36は、公転軸線L1からの距離が可変に構成されている。これにより、材料充填装置1を、安定して運転させることができる。ただし、変形例として、回転体20に、2個の容器ホルダ30を取り付けることも可能である。この場合、2個の容器ホルダ30を、公転軸線L1を中心とする点対称の配置となるように取り付ければ、材料充填装置を安定して動作させることができる。あるいは、材料充填装置を、1つの回転体20に3個以上の複数の容器ホルダ30を取り付けた構成とすることも可能である。
【0023】
材料充填装置1は、図1に示すように、駆動機構50を含む。駆動機構50は、容器ホルダ30(収納容器100)を回転駆動する役割を果たす。駆動機構50は、容器ホルダ30を自転及び/又は公転させることが可能に構成されている。すなわち、駆動機構50(材料充填装置1)は、容器ホルダ30を自転のみさせることが可能に構成されていてもよく、公転のみさせることが可能に構成されていてもよく、自転させながら公転させることが可能に構成されていてもよい。以下、駆動機構50の一例について説明する。
【0024】
駆動機構50は、容器ホルダ30を公転させる公転駆動機構として、公転軸10を回転させるモータ51を含む。材料充填装置1では、公転軸10が回転すると容器ホルダ30が公転する。そのため、モータ51(モータ51、及び、公転軸10、回転体20)により、容器ホルダ30を公転させることができる。
【0025】
また、駆動機構50は、容器ホルダ30を自転させる自転駆動機構52を含む。自転駆動機構52は、自転軸32(容器ホルダ30)に固定された自転プーリー54と、回転体20(公転軸10)と同心軸に回転可能な自転力付与プーリー56と、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされたベルト58とを含む。なお、ベルト58は、図示しないアイドラプーリーによって屈曲し、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされている。この構成では、ベルト58によって、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56の回転角速度が関連付けられる。そのため、自転プーリー54と自転力付与プーリー56とを、遊星機構と同様に挙動させることができ、自転力付与プーリー56の回転角速度を規制しながら回転体20を回転(自転プーリー54を公転)させることによって、自転プーリー54を自転させる(自転プーリー54に自転トルクを付与する)ことが可能になる。例えば自転力付与プーリー56が回転しないように設定された状態で、回転体20を反時計回りに自転させると(自転プーリー54を反時計回りに公転させると)、自転プーリー54は、自転軸線L2を中心に時計回りに自転する。そして、自転プーリー54は自転軸32(容器ホルダ30)に固定されていることから、自転駆動機構52によって、容器ホルダ30を自転させることが可能になる。あるいは、自転力付与プーリー56を回転体20と同じ角速度で回転させることにより、容器ホルダ30を、公転のみさせることができる。なお、材料充填装置1では、自転駆動機構52をプーリーとベルトを利用して構成したが、自転駆動機構は歯車等の動力伝達要素を利用して構成することも可能である。
【0026】
本実施の形態では、駆動機構50を、容器ホルダ30の自転角速度を所望の値に設定することが可能に構成することができる。自転駆動機構52では、自転力付与プーリー56の回転角速度を調整することにより、容器ホルダ30の自転角速度を所望の値に設定することが可能になる。そのため、駆動機構50は、特に図示しないが、自転力付与プーリー56の回転角速度を調整するための機構を備えていてもよい。自転力付与プーリー56の回転角速度を調整するための機構は、例えば、モータ51とは別に用意された自転力付与モータの駆動力や、ブレーキの制動力を利用する機構など、すでに公知となっているいずれかの機構によって実現することができる。
【0027】
材料充填装置1は、容器ホルダ30の回転角速度(自転角速度及び公転角速度)を制御する制御装置を含んでいてもよい(図示せず)。制御装置は、例えば、駆動機構50の動作を調整することによって、容器ホルダ30の回転角速度を制御するように構成されていてもよい。具体的には、制御装置は、モータ51の駆動(回転速度)を調整することにより、容器ホルダ30の公転角速度を制御するように構成されていてもよい。また、制御装置は、自転力付与プーリー56の回転速度を制御するために設けられた自転力付与モータの駆動力や、ブレーキの制動力を調整することにより、容器ホルダ30の自転角速度を制御するように構成されていてもよい。
【0028】
制御装置は、経過時間と関連付けられて予め定められた回転角速度で、容器ホルダ30を自転及び/又は公転させることが可能に構成することが可能である。言い換えると、材料充填装置1は、制御装置によって、時間の経過に伴って回転角速度(自転角速度及び公転角速度)を変化させることができるように構成されていてもよい。これにより、容器ホルダ30を、所望の回転角速度で自転及び/又は公転させることが可能になるため、材料Mに最も適した手順で、材料Mを混練脱泡処理することが可能になる。
【0029】
材料充填装置1は、減圧手段60を含む。減圧手段60は、少なくとも収納容器100の内部を減圧するように構成されている。減圧手段60は、また、被充填容器200内を減圧するように構成することも可能である。以下、減圧手段60について説明する。
【0030】
減圧手段60は、真空チャンバ62と、減圧ポンプ64とを含む。真空チャンバ62は、内部を減圧環境に維持することが可能に構成されている。そして、減圧ポンプ64は、真空チャンバ62内を減圧するように構成されている。本実施の形態では、先述した容器ホルダ30(収納容器100)が真空チャンバ62内に配置される。そのため、減圧手段60によって、収納容器100内を減圧することが可能になる。なお、減圧手段60は、図示しない圧力計や、各種バルブを備えた構成とすることができる。また、真空チャンバ62には貫通穴が形成されており、公転軸10は、該貫通穴を貫通するように設けられている。公転軸10と真空チャンバ62の貫通穴との間に磁性流体シールを設けることで、真空チャンバ62内を減圧することが可能になる。
【0031】
材料充填装置1は、図示しない筐体や、該筐体内で回転体20及び駆動機構50(公転軸10)を支持する支持体、筐体内で支持体の振動を防止する防振手段(防振ワイヤや防振バネなど)をさらに含んでいてもよい。
【0032】
材料充填装置1は、収納容器100を含む。収納容器100は、材料Mが収納される容器である。収納容器100は、容器ホルダ30に着脱可能に構成されている。また、収納容器100は、容器ホルダ30に保持されて容器ホルダ30の自転に伴って自転し、容器ホルダ30の公転に伴って公転するように構成される。すなわち、材料充填装置1は、材料Mが収納された収納容器100を、自転及び公転させることが可能に構成されている。なお、収納容器100の構成材料は特に限定されるものではなく、樹脂や金属など、既に公知となっているいずれかの材料によって構成された容器を利用することができる。
【0033】
材料充填装置1は、押圧部材120を含む。押圧部材120は、図1に示すように、収納容器100内に配置され、収納容器100の高さ方向に摺動可能に構成されている。押圧部材120は、図1及び図2に示すように、先端部122と後端部124、及び、先端部122と後端部124との間に介在する中間部126を有する。先端部122は、収納容器100内で収納容器100の底面(材料M)と対向する部材であり、外周にはシール部材(Oリング123)が設けられている。これにより、押圧部材120が収納容器100内を摺動可能になるとともに、押圧部材120(先端部122)の周囲から材料Mが漏れ出ることを防止することができる。また、後端部124は、収納容器100内で押圧部材120の姿勢を維持する役割を果たす。また、中間部126は、押圧部材120の重量を小さくするため、先端部122及び後端部124よりも径が小さくなっている。そして、押圧部材120には、貫通穴128が形成されている。貫通穴128は、先端部122及び後端部124、並びに、中間部126を貫通するように構成される。なお、本実施の形態では、貫通穴128は、自転軸線L2上に配置される。
【0034】
材料充填装置1は、図1に示すように、被充填容器200を有する。被充填容器200は、収納容器100内の材料Mが移送され、充填される容器である。被充填容器200は、収納容器100の内壁面と先端部122(押圧部材120の先端面)とによって区画される領域Aに連通するように、押圧部材120に取り付けられる。これにより、押圧部材120(先端部122)で材料Mを押圧したときに、材料Mを収納容器100内に移送することが可能になる。本実施の形態では、被充填容器200は、貫通穴128の内側に配置される。なお、本実施の形態に適用可能な被充填容器200の外形や材料は、特に限定されるものではない。被充填容器200は、細長形状の外形をなしていてもよい。また、被充填容器200は、樹脂や金属、ガラスなど、既に公知となっているいずれかの材料で構成されていてもよい。
【0035】
材料充填装置1は、以上のように構成されている。なお、この材料充填装置1で処理することが可能な材料Mは特に限定されるものではない。材料Mは、例えば接着剤、半田、歯科用セメント(穴埋め剤等)、粘性の強い液状の薬剤等の液体状の(ペースト状の)材料が含まれる。ただし、材料Mは、固体状(粉体状)の材料であってもよい。また、材料Mは、液体状の材料と固体状の材料の混合材料であってもよい。
【0036】
(2)材料充填装置1を利用した材料充填方法
次に、材料充填装置1を利用した材料Mの充填方法について説明する。図3〜図4は、収納容器100に収納された材料Mを、被充填容器200に充填する方法を説明するための図である。
【0037】
材料Mの充填方法は、図3に示すように、収納容器100に収納された材料Mを混練脱泡する工程(ステップS10)と、混練脱泡処理後に、材料Mを被充填容器200に充填する工程(ステップS12)とを含む。以下、各工程について詳述する。
【0038】
収納容器100に収納された材料Mを混練脱泡する工程(ステップS10)は、図4に示すように、収納容器100を容器ホルダ30に保持させて、収納容器100を自転させながら公転させることを含む。収納容器100を自転させながら公転させることにより、収納容器100内で材料Mが流動して材料Mが混練されるとともに、材料Mに内在する気泡が押し出されて脱泡が進む。なお、本実施の形態では、収納容器100を混練脱泡する工程を、収納容器100内が減圧された状態で行うことができる。これによると、より高精度に、材料Mの脱泡処理を行うことができる。また、本実施の形態では、収納容器100を混練脱泡する工程における収納容器100の回転速度(自転角速度及び公転角速度)は、特に限定されるものではない。例えば、収納容器100を2000rpmで公転させながら1000rpmで自転させることにより、材料Mを混練脱泡する処理を行うことができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、材料Mを混練脱泡する工程を、図4に示すように、収納容器100に押圧部材120(被充填容器200)をセットしない状態で行う。そして、材料Mを混練脱泡する工程が終了後、収納容器100の自転及び公転を停止し、また、真空チャンバ62の内部を大気圧に開放する。
【0040】
その後、収納容器100に押圧部材120及び被充填容器200をセットし、図1に示すように、材料Mを被充填容器200に充填する工程を行う(ステップS12)。本工程では、収納容器100を公転させることにより押圧部材120(押圧部材120及び被充填容器200)に作用する遠心力を利用して、押圧部材120を収納容器100の底面に向かって摺動させる。そして、図5(A)及び図5(B)に示すように、収納容器100及び押圧部材120(先端部122)で材料Mを押圧することによって、材料Mを被充填容器200内に移動させ、被充填容器200内に材料Mを充填する。本実施の形態では、収納容器100を自転させながら公転させることによって、材料Mを充填する工程を行うことができる。このとき、収納容器100を、材料Mを混練脱泡する工程と同じ回転角速度で自転及び公転させてもよい。ただし、収納容器100の回転角速度はこれに限られるものではなく、例えば、収納容器100の自転角速度を、公転角速度に対して極めて小さい値(例えば1/40程度)として、材料Mを充填する工程を行ってもよい。あるいは、本実施の形態では、収納容器100を自転させることなく公転のみさせて、材料Mを充填する工程を行ってもよい。
【0041】
なお、材料Mを被充填容器200に充填する工程は、真空チャンバ62内を減圧した状態で行うことが可能である。これによると、材料Mが空気を巻き込むことなく、材料Mを被充填容器200に充填することができる。ただし、本工程は、真空チャンバ62内を大気圧に開放した状態で行うことも可能である。
【0042】
(3)作用効果
以下、本実施の形態が奏する作用効果について説明する。
【0043】
先に説明したように、本実施の形態では、収納容器100を自転及び公転させることが可能な装置を利用して、収納容器100に収納された材料Mを被充填容器200に充填させる。ここで、収納容器100を自転及び公転させると、収納容器100に収納された材料Mが混練脱泡されることが知られている。すなわち、本実施の形態によると、材料Mを混練脱泡する処理と、高精度に混練脱泡された材料Mを被充填容器200に充填する処理とを、同じ装置を使って行うことが可能になる。そのため、収納容器100を、異なる装置の間を運搬する必要がなくなることから、材料Mに気泡が混入することを防止することができるとともに、材料Mの処理を効率よく行うことができる。特に、本実施の形態では、遠心力を利用して押圧部材120で材料Mを押圧し、材料Mを被充填容器200に充填する。そのため、押圧部材120(押圧部材120及び被充填容器200)を押圧する特別な機構を準備することなく、押圧部材120で材料Mを押圧し、材料Mを被充填容器200に充填することが可能になる。
【0044】
また、本実施の形態では、遠心力を利用することから、容易に、押圧部材120に大きな力を作用させることができる。そのため、粘度の高い材料であっても短時間で被充填容器200に充填することができ、効率よく充填処理工程を行うことが可能になる。
【0045】
また、収納容器100内を減圧した状態で材料Mを被充填容器200に充填する工程を行えば、被充填容器200内に気泡が入らないように、材料Mを被充填容器200に充填することが可能になる。
【0046】
また、材料Mを被充填容器200に充填する工程で、収納容器100を自転させながら公転させれば、収納容器100内で材料Mが流動するため、材料Mが遠心分離されることを防止することができる。
【0047】
(4)変形例
以下、本実施の形態の変形例について説明する。
【0048】
本変形例では、材料充填装置は、押圧部材120にかえて、図6に示す、押圧部材140を含む。押圧部材140には複数の貫通穴が形成されている。なお、複数の貫通穴は、自転軸線L2からの距離が等しくなるように配置されている。そして、押圧部材140には、複数の被充填容器200が取り付けられる。被充填容器200は、それぞれ、貫通穴に連通するように押圧部材140に取り付けられる。押圧部材140を利用することにより、複数の被充填容器200に、同時に材料Mを充填することが可能になる。また、本変形例では、被充填容器200内には、予め、ピストン部材210が配置されている(図8(A)〜図8(C)参照)
【0049】
押圧部材140は、収納容器100の回転角速度が所定の条件を満たしたときに摺動を開始するように構成されている。例えば、押圧部材140は、収納容器100の公転角速度が所定の値よりも大きくなったときに(押圧部材140に作用する遠心力が所定の値よりも大きくなったときに)、収納容器100の底面に向けて摺動を開始するように構成されていてもよい。押圧部材140の形状(直径及び厚み)、押圧部材140と収納容器100の内壁との摩擦係数、押圧部材140及び被充填容器200の重量を調整することにより、摺動を開始する条件を制御することが可能になる。
【0050】
次に、図7〜図8(C)を参照して、本変形例に係る材料充填方法について説明する。なお、図7は材料充填方法のフローチャート図であり、図8(A)〜図8(C)は材料充填工程を説明するための図である。材料充填方法は、図8(A)に示すように、材料Mが収納された収納容器100に押圧部材140(押圧部材140及び被充填容器200)を取り付ける工程(ステップS20)と、図8(B)に示すように収納容器100を自転させながら公転させることにより、材料Mを混練脱泡する工程(ステップS22)と、図8(C)に示すように押圧部材140を収納容器100の底面に向けて摺動させて押圧部材140で材料Mを押圧し、材料Mを被充填容器200に充填する工程(ステップS24)とを含む。なお、本変形例では、材料Mがピストン部材210を押し上げながら、被充填容器200に材料Mが充填される。
【0051】
先述したように、押圧部材140は、収納容器100の公転角速度が所定値以上になったときに摺動を開始するように構成されている。言い換えると、押圧部材140は、公転角速度が所定値以下の場合には摺動を開始せず、はじめに取り付けられた位置に留まり続ける。このことから、収納容器100の公転角速度が所定値以下となるように収納容器100を自転及び公転させることで、材料Mを十分に混練脱泡することができる。そして、材料Mの混練脱泡処理の終了後、収納容器100の公転角速度を所定値以上にすることで、押圧部材140を摺動させることができ、材料Mを被充填容器200に充填する処理を行うことができる。すなわち、押圧部材140を利用する場合、収納容器100の回転角速度を制御することにより、材料Mを混練脱泡する処理と、材料Mを被充填容器200に充填する処理とを連続して行うことができるため、材料Mを、より効率よく処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る材料充填装置について説明するための図である。
【図2】本発明に係る材料充填装置について説明するための図である。
【図3】本発明に係る材料充填方法について説明するための図である。
【図4】本発明に係る材料充填方法について説明するための図である。
【図5】本発明に係る材料充填方法について説明するための図である。
【図6】変形例に係る材料充填装置について説明するための図である。
【図7】変形例に係る材料充填方法について説明するための図である。
【図8】変形例に係る材料充填方法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
1…材料充填装置、 10…公転軸、 20…回転体、 30…容器ホルダ、 32…自転軸、 34…軸受け、 36…バランス錘、 50…駆動機構、 51…モータ、 52…自転駆動機構、 54…自転プーリー、 56…自転力付与プーリー、 58…ベルト、 60…減圧手段、 62…真空チャンバ、 64…減圧ポンプ、 100…収納容器、 120…押圧部材、 122…先端部、 124…後端部、 126…中間部、 128…貫通穴、 140…押圧部材、 200…被充填容器、 210…ピストン部材、 A…領域、 L1…公転軸線、 L2…自転軸線、 M…材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸線を中心に公転し、かつ、前記公転軸線と交差する方向に延びる自転軸線を中心に自転することが可能に構成された、内部に材料が収納された収納容器と、
前記収納容器内に配置され、前記収納容器の高さ方向に摺動可能に構成された、貫通穴が形成されている押圧部材と、
前記押圧部材の先端面と前記収納容器の内壁面とによって区画された領域に連通するように、前記押圧部材に取り付けられた被充填容器と、
を含み、
前記収納容器を公転させることによって前記押圧部材に作用する遠心力を利用して、前記押圧部材を前記収納容器の底面に向かって摺動させて前記材料を押圧し、前記材料を前記被充填容器に充填する材料充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の材料充填装置において、
前記被充填容器が、前記自転軸線上に配置されている材料充填装置。
【請求項3】
請求項1に記載の材料充填装置において、
複数の前記被充填容器が、前記自転軸線からの距離が等しくなるように配置されている材料充填装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の材料充填装置において、
前記収納容器の公転角速度が所定の値よりも大きくなったときに、前記押圧部材が前記収納容器の底部に向けて摺動を開始するように構成されている材料充填装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の材料充填装置において、
少なくとも前記収納容器内を減圧する減圧手段をさらに含む材料充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−220875(P2009−220875A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69738(P2008−69738)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】