説明

材料分析装置、材料分析方法

【課題】従来よりも少量の試料でも、正確に元素の種類及び濃度を測定することができる材料分析装置、材料分析方法を提供する。
【解決手段】外力により形状変化が可能な試料3を構成する元素の種類及び濃度を測定するXRF装置100であって、試料3が収容される試料フォルダ4と、試料フォルダ4に収容された試料3を圧縮する押圧部材41と、押圧部材41によって圧縮された試料3に、試料フォルダ4を介して1次X線20を照射するX線出射装置1と、1次X線20の照射により、試料3から発生する元素特有の2次X線21を検出するX線検出器5と、X線検出器5により検出された2次X線21から、試料3を構成する元素の種類及び濃度を検出する元素検出部10と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも外力により形状変化が可能な試料を構成する元素の種類及び濃度を測定する材料分析装置、材料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子機器に用いる材料(以下、試料と称す)を構成する元素の種類及び濃度が、試料を製造したメーカから提供された成分表に示された試料を構成する元素の種類及び濃度と一致しているか、即ち、成分表に示された物質を構成する元素の種類及び濃度が適正であるかを、試料を破壊することなく簡易的に検査する材料分析装置としては、例えば蛍光X線分析装置(以下、XRF装置と称す)が周知である。XRF装置は、固体、粉体、液体を問わず、元素のあらゆる形態からなる試料を検査することができる。
【0003】
XRF装置を用いた検査は、特に、2006年7月1日〜EU加盟国各国において施行されたEU−RoHS(Restrictions on Hazardous Substance)に基づき、試料の中に、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、六価クロム(Cr6+)、ポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ディフェニールエテール(PBDE)等の規制物質が含まれていないかを、例えば試料となる材料の納入時において一般的に行われている。XRF装置を用いて検査を行うと、全ての試料に対して精密検査を行わなくてよいため、検査工数及びコストを削減することができる。
【0004】
XRF装置を用いた一般的な検査方法を概略的に説明すると、先ず、試料に、X線管を用いてX線(以下、1次X線と称す)を照射すると、試料に含まれる元素特有のX線である蛍光X線(以下、2次X線と称す)が発生する。
【0005】
その後、2次X線を半導体検出器(以下、単に検出器と称す)で検出し、該検出した2次X線から該2次X線の波長(エネルギ)を元素検出部によって検出することにより、試料を構成する元素の種類を検出する。
【0006】
さらに、検出した2次X線から該2次X線の強さ(X線量)を検出することにより、試料を構成する元素の濃度を検出する。以上から、試料を構成する元素の種類及び濃度を特定することができるのである。
【0007】
その後、検査者は、XRF装置を用いて検出した試料を構成する元素の種類及び濃度と、材料メーカから提供された成分表に示された試料を構成する元素の種類及び濃度とが一致するかを視認により確認する。
【0008】
このことにより、検査者は、成分表に示された試料を構成する元素の種類及び濃度が適正であるか、即ち、材料メーカから提供された成分表に示された試料を構成する元素の種類及び濃度に虚偽申告がないか、特にEU−RoHSに基づく規制物質が含まれていないかを、簡易的に検査することができる。
【0009】
このようなXRF装置の構成、及びXRF装置を用いた材料分析方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−245745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、XRF装置を用いて材料分析を行う際、試料を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定するには、試料に対し1次X線が照射されることを考慮すると、試料は、材料分析が可能な量、例えば1cm以上の厚さを必要とする。
【0011】
また、外力により形状変化が可能な試料、例えば粉体、液体、接着剤のいずれかから構成された試料を測定する場合であっても、試料フォルダに対して試料が1cm以上の厚みとなるよう収容する必要がある。
【0012】
ここで、例えば液晶パネルを製造した後、液晶パネルをプロジェクタ等に固定するためのフレーム部材に使用されている接着剤の材料分析を行う際、フレーム部材から摂取できる接着剤の量は限られていることから、試料フォルダ内に、フレーム部材から摂取した接着剤を1cm以上の厚みとなるよう収容するのは難しいといった問題があった。尚、以上の問題は、XRF装置に限らず、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)装置等の他の材料分析装置を用いる場合であっても同様である。
【0013】
本発明の目的は上記問題に着目してなされたものであり、従来よりも少量の試料でも、正確に元素の種類及び濃度を測定することができる材料分析装置、材料分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明に係る材料分析装置は、少なくとも外力により形状変化が可能な試料を構成する元素の種類及び濃度を測定する材料分析装置であって、前記試料が収容される試料フォルダと、前記試料フォルダに収容された前記試料を圧縮する押圧部材と、前記押圧部材によって圧縮された前記試料に、前記試料フォルダを介して1次電磁波を照射する電磁波出射装置と、前記1次電磁波の照射により、前記試料から発生する元素特有の2次電磁波を検出する電磁波検出器と、前記電磁波検出器により検出された前記2次電磁波から、前記試料を構成する元素の種類及び濃度を検出する元素検出部と、を具備することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、試料を押圧部材によって圧縮することにより、従来よりも少量の試料にて、材料分析装置を用いて、試料への電磁波の照射により試料を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定することができる。
【0016】
また、前記試料フォルダは、前記試料の収容口から前記1次電磁波の照射面となる底部に向かって前記試料の収容部の容積が小さくなる漏斗状を有して形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、試料を収容する試料フォルダが漏斗状に形成されていることにより、従来よりも少量の試料にて、材料分析装置を用いて、試料への電磁波の照射により試料を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定することができる。
【0018】
さらに、前記試料フォルダと前記電磁波出射装置と前記電磁波検出器と前記元素検出部とは、装置本体内に設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、前記試料フォルダは、前記装置本体に設けられた載置板に対し固定されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、押圧部材によって試料を圧縮する際、試料フォルダが動いてしまうことを確実に防止することができるといった効果を有する。
【0021】
さらに、前記試料フォルダは、前記装置本体の載置板に対し着脱自在であることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、測定対象となる試料を交換する毎に、試料フォルダも交換することができるため、異なる試料同士が混ざることなく、正確に、試料を構成する元素の種類及び濃度を測定することができる。
【0023】
また、前記試料フォルダは、前記装置本体内における該装置本体の開口側に設けられているとともに、前記装置本体の前記開口に対して開閉自在な蓋体が設けられており、前記押圧部材は、前記蓋体における前記試料フォルダの対向位置に設けられており、前記蓋体を前記装置本体の前記開口に対して閉成した際、前記押圧部材は、前記試料フォルダに収容された前記試料を圧縮することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、装置本体に対して蓋体を閉成するのみで、容易に、試料フォルダ内の試料を圧縮することができる。
【0025】
さらに、前記押圧部材は、前記試料フォルダに対して着脱自在な押圧ブロックから構成されており、前記押圧ブロックを前記試料フォルダに装着した際、前記押圧部材は、前記試料フォルダに収容された前記試料を圧縮することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、試料フォルダに対して押圧ブロックを装着するのみで、容易に、試料フォルダ内の試料を圧縮することができる。
【0027】
また、前記1次電磁波は1次X線であるとともに、前記電磁波出射装置は、前記試料に前記1次X線を照射するX線出射装置であり、前記2次電磁波は2次X線であるとともに、前記電磁波検出器は、前記1次X線の照射により前記試料から発生する元素特有の前記2次X線を検出するX線検出器であることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、試料を押圧部材によって圧縮することにより、従来よりも少量の試料にて、材料分析装置を用いて、試料へのX線の照射により試料を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定することができる。
【0029】
本発明に係る材料分析方法は、少なくとも外力により形状変化が可能な試料を構成する元素の種類及び濃度を測定する材料分析方法であって、前記試料を、試料フォルダに収容する収容ステップと、前記試料フォルダに収容された前記試料を、押圧部材により圧縮する圧縮ステップと、前記押圧部材によって圧縮された前記試料に対し、電磁波出射装置から、前記試料フォルダを介して1次電磁波を照射する照射ステップと、前記1次電磁波の照射により、前記試料から発生する元素特有の2次電磁波を、電磁波検出器を用いて検出する第1の検出ステップと、前記電磁波検出器により検出された前記2次電磁波から、前記試料を構成する元素の種類及び濃度を元素検出部によって検出する第2の検出ステップと、を具備することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、試料を押圧部材によって圧縮するステップを有することにより、従来よりも少量の試料にて、試料への電磁波の照射により試料を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定することができる材料分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照にして本発明の実施の形態を説明する。尚、以下に示す本実施の形態においては、材料分析装置は、XRF装置を例に挙げて示す。
【0032】
図1は、本実施の形態を示すXRF装置の構成の概略を示す断面図、図2は、図1の試料フォルダを拡大して示す断面図、図3は、図1の装置本体に対して蓋体を閉成した状態を概略的に示す断面図、図4は、図1の押圧部材を拡大して示す部分断面図、図5は、従来の試料フォルダを示す断面図である。
【0033】
図1に示すように、XRF装置100は、装置本体30と蓋体40とにより主要部が構成されている。
【0034】
装置本体30における開口30s側に、装置本体30の底部30tと略平行に平板状の載置板である試料台2が、一端及び他端が側面30pに固定されることにより設けられている。
【0035】
また、試料台2と装置本体30の底部30tと側面30pとによって覆われた装置本体30の内部30iに、電磁波出射装置であるX線出射装置1と、電磁波検出器であるX線検出器5と、元素検出部10とが設けられている。
【0036】
X線出射装置1は、XRF装置100を用いて試料3を構成する元素の種類及び濃度を測定する際、1次電磁波である1次X線20を出射する装置であり、1次X線20を、後述する試料フォルダ4の収容部4mに収容された試料3に向けて照射するものである。
【0037】
X線検出器5は、XRF装置100を用いた測定の際、1次X線20の照射により、試料3から発生する元素特有の2次電磁波である2次X線(蛍光X線)21を検出するものである。
【0038】
元素検出部10は、XRF装置100を用いた測定の際、X線検出器5から検出した2次X線21の波長(エネルギ)から、試料3を構成する元素の種類を検出するとともに、2次X線21の強さ(X線量)から、試料3を構成する元素の濃度を検出するものである。
【0039】
また、試料台2の図1中略中央に、具体的には、1次X線20の照射位置に、窓部2hが形成されており、試料台2の上面における窓部2hが形成された位置に、窓部2hよりも平面視した状態で大きな試料フォルダ4が、窓部2hを平面視した状態でまたぐように、試料台2に対して固定されている。尚、試料フォルダ4は、試料台2と一体的に形成されていても構わない。
【0040】
窓部2hは、試料台2に載置された試料フォルダ4の底部4tの一部を試料台2から露呈させることにより、底部4tに、X線出射装置1から出射された1次X線20を照射させる、例えば平面的な形状が円形の孔である。尚、底部4tは、試料台2の窓部2hよりも平面視した状態で大きく形成されている。
【0041】
また、窓部2hは、1次X線20の照射範囲よりも、平面的に大きな孔に形成されている。具体的には、1次X線20の照射範囲が、例えば直径5mm程度の円の場合、直径5mmよりも大きな直径の孔に形成されている。
【0042】
試料フォルダ4は、XRF装置100を用いた測定の際、測定対象となる、外力により形状変化が可能な粉体、液体、接着剤等の試料3を収容するものであり、1次X線20及び2次X線21が透過可能な材料、例えば樹脂から構成されている。尚、以下、試料3は、接着剤から構成されているものとして示す。
【0043】
また、試料フォルダ4は、図2に示すように、試料3の収容口4sから1次X線20の照射面となる底部4tに向かって試料3の収容部4mの容積が小さくなるよう、略漏斗状、具体的には、断面略V字状を有して形成されている。
【0044】
このことにより、図5に示すように、従来の収容部が断面略U字状に形成された試料フォルダ47に比べ、2点鎖線で示す本実施の形態の試料フォルダ4は、少量の試料3で、収容部4m内において試料3を、測定に必要な規定厚みA、例えば1cm以上に収容することができる。
【0045】
さらに、試料フォルダ4の収容部4mに、図2に示すように、1次X線20及び2次X線21が透過可能な材料から構成された保護フィルム6が設けられていても構わない。保護フィルム6は、試料3が、直接試料フォルダ4に付着してしまうことを防止するものであり、測定毎に交換される。
【0046】
収容部4mに保護フィルム6が設けられていることにより、例えば第1の材料から構成された第1の試料を測定した後、第2の材料から構成された第2の試料を測定する際、収容部4m内において、第2の試料中に、第1の材料が混入してしまい、第2の試料に対する正確な測定が出来なくなってしまうことが防止される。
【0047】
装置本体30の開口30s側に、該開口30sを、図1、図3に示すように開閉自在な蓋体40が設けられている。
【0048】
蓋体40の開口30sに対向する面40tにおける試料フォルダ4の対向位置に、試料フォルダ4の収容部4mと略同じ形状を有する突起である押圧部材41が設けられている。尚、押圧部材41の体積は、収容部4mの容積よりも、若干小さく形成されている。
【0049】
押圧部材41は、図1に示すように、蓋体40が開成された状態から、図3に示すように、蓋体40が閉成された際、試料フォルダ4の収容部4mに進入して、収容部4m内の試料3を圧縮する。
【0050】
尚、押圧部材41は、蓋体40に対し、一体的に形成されていても構わないし、別体に形成されていても構わない、即ち、蓋体40に対し着脱自在であっても構わない。さらに、押圧部材41の表面に、図4に示すように、保護フィルム7が設けられていても構わない。保護フィルム7は、保護フィルム6同様、試料3が、直接押圧部材41に付着してしまうことを防止するものであり、測定毎に交換される。
【0051】
押圧部材41の表面に保護フィルム7が設けられていることにより、例えば第1の材料から構成された第1の試料を押圧部材41の圧縮後、測定した後、第2の材料から構成された第2の試料を測定する際、第2の試料を圧縮後、収容部4mにおける第2の試料中に、押圧部材41の表面から第1の材料が混入してしまい、第2の試料に対する正確な測定が出来なくなってしまうことが防止される。尚、測定毎に、押圧部材41を交換する場合においては、押圧部材41を介した材料の混入はなくなることから、保護フィルム7は不要となる。
【0052】
次に、このように構成されたXRF装置100を用いた材料分析方法、具体的には、試料3を構成する元素の種類及び濃度を測定する材料分析方法について、図6及び上述した図1〜図5を用いて説明する。図6は、本実施の形態のXRF装置を用いた試料の材料分析方法を示すフローチャートである。
【0053】
先ず、図6のステップS1において、測定者は、測定対象の試料3、例えば接着剤を、図1に示すように、試料フォルダ4の収容部4mに、例えば1cm以上の厚みに収容する収容ステップを行う。この際、図5の2点鎖線に示すように、試料フォルダ4の収容部4mは、略漏斗状を有していることから、収容部が、図5に示すような従来の断面が略U字状を有する試料フォルダ47よりも、測定に用いる接着材が少量ですむ。また、図2に示すように、収容部4m内に、保護フィルム6を設ければ、接着剤が直接試料フォルダ4に接触してしまうことがない。
【0054】
次いで、図6のステップS2において、試料フォルダ4の収容部4mに収容された接着剤を圧縮する圧縮ステップを行う。具体的には、図3に示すように、装置本体30の開口30sを閉成するように、装置本体30に対して蓋体40を閉成する。
【0055】
蓋体40の閉成後、蓋体40の面40tに設けられた押圧部材41が、収容部4m内に進入することにより、進入した押圧部材41により接着剤は圧縮される。その結果、接着剤は、圧縮により高密度となる。
【0056】
尚、この際、図4に示すように、押圧部材41の表面に保護フィルム7が設けられていれば、接着剤が直接押圧部材41の表面に付着することがない。また、試料フォルダ4は、試料台2に固定されていることから、押圧部材41による圧縮によって試料フォルダ4が動いてしまうことがない。
【0057】
次いで、ステップS3において、X線出射装置1から、試料フォルダ4の収容部4m内に収容された押圧部材41によって圧縮された接着剤に対して、窓部2h、試料フォルダ4の底部4tを介して1次X線20を照射する照射ステップを行う。
【0058】
次いで、ステップS4において、1次X線20の照射により、接着剤から発生する元素特有の2次X線21を、元素検出部10を用いて検出する第1の検出ステップを行う。
【0059】
最後に、ステップS5において、元素検出部10により検出された2次X線21より、2次X線21の波長(エネルギ)から、接着剤を構成する元素の種類を検出するとともに、2次X線21の強さ(X線量)から、接着剤を構成する元素の濃度を検出する、即ち、検出元素の種類及び濃度を検出する第2の検出ステップを行う。
【0060】
その後、測定者は、検出された元素の種類及び濃度が、接着剤を製造したメーカから提供された成分表に示された接着剤を構成する元素の種類及び濃度と一致しているかを確認するとともに、接着剤の中に、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、六価クロム(Cr6+)、ポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ディフェニールエテール(PBDE)等の規制物質が含まれていないかを確認する。尚、以上の材料分析方法は、試料3が接着剤の場合に限定されず、外力により形状変化が可能な試料3であれば、粉体、液体等であっても同様である。
【0061】
このように、本実施の形態においては、XRF装置100を用いて、外力により形状変化が可能な試料3を、押圧部材41を用いて圧縮した後、試料3を構成する元素の種類及び濃度を測定すると示した。
【0062】
このことによれば、試料3は、圧縮後、高密度となることから、収容部4m内において、従来よりも少量の試料3にて、試料3を測定に必要な規定厚みA、例えば1cm以上の厚みとすることができることから、従来よりも少量の試料3にて、XRF装置100を用いて、試料3を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定することができる。
【0063】
また、本実施の形態においては、試料フォルダ4は、試料3の収容口4sから1次X線20の照射面となる底部4tに向かって試料3の収容部4mの容積が小さくなるよう、略漏斗状を有して形成されていると示した。
【0064】
このことによれば、試料3を、収容部4mに収容した際、図5に示すように、従来よりも少量の試料にて、収容部4m内において、試料3を測定に必要な規定厚みA、例えば1cm以上の厚みとすることができることから、従来よりも少量の試料3にて、XRF装置100を用いて、試料3への1次X線20の照射により試料3を構成する元素の種類及び濃度を正確に測定することができる。
【0065】
尚、以下、変形例を示す。本実施の形態においては、試料台2に窓部2hが形成されていると示したが、これに限らず、試料台2が、1次X線20及び2次X線20を透過する材料から構成されていれば、窓部2hは、必ずしも試料台2に形成されていなくとも構わない。
【0066】
また、試料フォルダ4は、試料台2に対して固定されていると示したが、試料台2に対して着脱自在であっても構わない。即ち、測定対象となる試料を交換する度に、試料フォルダ4を交換しても構わない。尚、この場合、試料フォルダ4は、毎回交換するため、収容部4m内において異なる試料が混在することがなくなることから、収容部4mに、保護フィルム6を設ける必要がなくなる。
【0067】
さらに、試料フォルダ4は、1次X線20及び2次X線21が透過可能な材料、例えば樹脂から構成されていると示したが、試料フォルダ4全体が1次X線20及び2次X線21が透過可能な材料から構成されている必要はなく、1次X線20が照射される底部4tのみが、1次X線20及び2次X線21が透過可能な材料から構成されていればよい。
【0068】
また、以下、図7を用いて別の変形例を示す。図7は、図1の押圧部材の変形例を概略的に示す断面図である。
【0069】
本実施の形態においては、押圧部材41は、蓋体40の面40tに突起状に形成されており、蓋体40を装置本体30に対して閉成した際、押圧部材41が、試料フォルダ4の収容部4mに進入することにより、収容部4m内の試料3を圧縮すると示した。
【0070】
これに限らず、図7に示すように、押圧部材は、試料フォルダ4に対して着脱自在な押圧ブロック141から構成されていても構わない。押圧ブロック141は、体積が収容部4mの容積よりも、若干小さく形成された収容部4mと略同じ形状を有するブロック部141bと、把持部141hとから主要部が構成されている。
【0071】
よって、押圧ブロック141を、把持部141hを把持して試料フォルダ4に装着すれば、ブロック部141bが収容部4mに進入することにより、ブロック部141bにより試料3は圧縮される。
【0072】
このように、押圧ブロック141を用いて試料3を圧縮すれば、試料フォルダ4に対して押圧ブロック141を装着するのみで、容易に、蓋体40の開閉に関係なく、試料フォルダ4内の試料3を圧縮することができる。
【0073】
また、押圧部材は、以上に限らず、他の構成を有していても構わない。例えば、電動で、収容部4m内の試料3を圧縮する構成を有していても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
また、本実施の形態においては、材料分析装置は、XRF装置を例に挙げて示したが、電磁波を用いて試料を構成する元素の種類及び濃度を測定することができる装置であれば、他の材料分析装置、例えばFT−IR装置等に適用しても、本実施の形態と同様の効果を得ることができるということは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施の形態を示すXRF装置の構成の概略を示す断面図。
【図2】図1の試料フォルダを拡大して示す断面図。
【図3】図1の装置本体に対して蓋体を閉成した状態を概略的に示す断面図。
【図4】図1の押圧部材を拡大して示す部分断面図。
【図5】従来の試料フォルダを示す断面図。
【図6】本実施の形態のXRF装置を用いた試料の材料分析方法を示すフローチャート。
【図7】図1の押圧部材の変形例を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0076】
1…X線出射装置(電磁波出射装置)、2…試料台(載置板)、3…試料、4…試料フォルダ、4m…収容部、4s…収容口、4t…底部、5…X線検出器(電磁波検出器)、10…元素検出部、20…1次X線(1次電磁波)、21…2次X線(2次電磁波)、30…装置本体、30s…装置本体の開口、40…蓋体、41…押圧部材、100…XRF装置(材料分析装置)、141…押圧ブロック(押圧部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外力により形状変化が可能な試料を構成する元素の種類及び濃度を測定する材料分析装置であって、
前記試料が収容される試料フォルダと、
前記試料フォルダに収容された前記試料を圧縮する押圧部材と、
前記押圧部材によって圧縮された前記試料に、前記試料フォルダを介して1次電磁波を照射する電磁波出射装置と、
前記1次電磁波の照射により、前記試料から発生する元素特有の2次電磁波を検出する電磁波検出器と、
前記電磁波検出器により検出された前記2次電磁波から、前記試料を構成する元素の種類及び濃度を検出する元素検出部と、
を具備することを特徴とする材料分析装置。
【請求項2】
前記試料フォルダは、前記試料の収容口から前記1次電磁波の照射面となる底部に向かって前記試料の収容部の容積が小さくなる漏斗状を有して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の材料分析装置。
【請求項3】
前記試料フォルダと前記電磁波出射装置と前記電磁波検出器と前記元素検出部とは、装置本体内に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の材料分析装置。
【請求項4】
前記試料フォルダは、前記装置本体に設けられた載置板に対し固定されていることを特徴とする請求項3に記載の材料分析装置。
【請求項5】
前記試料フォルダは、前記装置本体の載置板に対し着脱自在であることを特徴とする請求項3に記載の材料分析装置。
【請求項6】
前記試料フォルダは、前記装置本体内における該装置本体の開口側に設けられているとともに、前記装置本体の前記開口に対して開閉自在な蓋体が設けられており、
前記押圧部材は、前記蓋体における前記試料フォルダの対向位置に設けられており、前記蓋体を前記装置本体の前記開口に対して閉成した際、前記押圧部材は、前記試料フォルダに収容された前記試料を圧縮することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の材料分析装置。
【請求項7】
前記押圧部材は、前記試料フォルダに対して着脱自在な押圧ブロックから構成されており、前記押圧ブロックを前記試料フォルダに装着した際、前記押圧部材は、前記試料フォルダに収容された前記試料を圧縮することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の材料分析装置。
【請求項8】
前記1次電磁波は1次X線であるとともに、前記電磁波出射装置は、前記試料に前記1次X線を照射するX線出射装置であり、
前記2次電磁波は2次X線であるとともに、前記電磁波検出器は、前記1次X線の照射により前記試料から発生する元素特有の前記2次X線を検出するX線検出器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項の記載の材料分析装置。
【請求項9】
少なくとも外力により形状変化が可能な試料を構成する元素の種類及び濃度を測定する材料分析方法であって、
前記試料を、試料フォルダに収容する収容ステップと、
前記試料フォルダに収容された前記試料を、押圧部材により圧縮する圧縮ステップと、
前記押圧部材によって圧縮された前記試料に対し、電磁波出射装置から、前記試料フォルダを介して1次電磁波を照射する照射ステップと、
前記1次電磁波の照射により、前記試料から発生する元素特有の2次電磁波を、電磁波検出器を用いて検出する第1の検出ステップと、
前記電磁波検出器により検出された前記2次電磁波から、前記試料を構成する元素の種類及び濃度を元素検出部によって検出する第2の検出ステップと、
を具備することを特徴とする材料分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−210375(P2009−210375A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52975(P2008−52975)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】