説明

材料蒸発システム及びその成膜装置

【課題】大面積基板に均一な膜厚の薄膜を形成する技術を提供する。
【解決手段】真空槽8内に配置された細長の放出装置30の両端位置の第一、第二の接続口38a、38bに、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bを接続し、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bから、放出装置30の両端位置に成膜材料の蒸気を供給する。放出装置30の一端から他端に亘って、真空槽8内に蒸気が均一に放出される。第一、第二の蒸気生成装置20a、20bから放出装置30に供給される蒸気の供給速度を個別に制御することで、膜厚が均一な薄膜を基板6の成膜面上に成膜することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に係り、特に、大面積基板に均一に薄膜を形成できる成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜は省電力で発光できることから、表示装置や照明等の用途に注目されており、大面積基板に均一に成膜する技術が求められている。
図3の符号101は、従来技術の有機薄膜成膜装置であり、真空槽108を有している。真空槽108には真空排気系128が接続されており、真空槽108の内部には、搬送装置114が配置されている。
搬送装置114には、基板ホルダ115が取り付けられており、真空排気系128によって真空槽108内部を真空排気し、基板106の表面にマスク107を取り付けた状態で、基板106を基板ホルダ115に配置する。
【0003】
真空槽108の内部には、蒸着装置111が配置されており、搬送装置114によって、蒸着装置111の上方位置を基板106が移動できるようにされている。
蒸着装置111は、放出装置130と蒸気生成装置120とを有している。放出装置130は、細長に形成された中空の筺体131を有しており、筺体131は、基板106の移動方向と垂直に水平配置されている。
【0004】
蒸気生成装置120は、有機化合物材料124が配置された容器121を有しており、容器121は、配管126によって内部が筺体131に接続されている。
容器121は蓋122によって蓋されており、電源113が容器121に巻き回されたヒータ123に通電して発熱させ、有機化合物材料124から放出された有機化合物材料124の蒸気が、配管126を通って筺体131の内部に導入され、筺体131の上部に設けられた放出口132から真空槽108の内部に放出される。
【0005】
放出装置130から真空槽108内に蒸気が放出された状態で、放出装置130の上方位置を基板106が通過すると、マスク107に設けられた開口を通って蒸気が基板106に到達し、マスク107に形成された開口のパターンに従ったパターンの有機薄膜が基板106の表面に形成される。
放出装置130の近傍の、基板106への蒸気の到達を妨げない位置には膜厚センサ133が配置されており、膜厚センサ133で検出された成膜速度によって、電源113のヒータ123への通電量が制御され、成膜速度を一定にするようになっている。
所望の膜厚に有機薄膜が形成された基板106は真空槽108に接続された他の真空槽内に搬送され、後工程が行われる。
【0006】
しかし、上記のような有機薄膜成膜装置101では、放出装置130の筺体131の一端にだけ有機化合物の蒸気が供給されるため、蒸気生成装置120に接続された筺体131の接続口138付近に位置する放出口132から放出される蒸気の放出速度は、接続口138から遠方に位置する放出口132から放出される蒸気の放出速度よりも大きくなってしまう。
【0007】
従って、基板106が大面積化すると、膜厚センサ133によって成膜速度が一定になるように制御しても、大面積の基板106表面に形成される有機薄膜の面内膜厚分布は良好にならず、均一な膜厚の有機薄膜を形成することが出来ない。
この点、有機化合物の蒸気を生成し、有機薄膜を形成する場合に限ることはなく、無機材料の蒸気を生成し、無機薄膜を形成する場合でも、上記不都合は同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−30418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、大面積基板に均一な膜厚の薄膜を形成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置され、細長で中空の放出装置と、発熱装置が設けられ、前記発熱装置が発熱すると内部に配置された成膜材料を昇温させる第一、第二の蒸気生成装置と、前記第一、第二の蒸気生成装置内の前記発熱装置の発熱量を個別に制御して発熱させる発熱制御装置と、前記放出装置に設けられた放出口と、を有し、前記第一、第二の蒸気生成装置は、前記放出装置の細長の一端に位置する第一の接続口と他端に位置する第二の接続口にそれぞれ接続され、前記放出口に対面する位置であって、前記第二の接続口よりも前記第一の接続口に近い位置には第一の膜厚センサが配置され、前記放出口に対面する位置であって、前記第一の接続口よりも前記第二の接続口に近い位置には第二の膜厚センサが配置され、前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置が発熱して前記第一、第二の蒸気生成装置に配置された前記成膜材料から蒸気が生成され、前記放出装置に供給されて前記蒸気が前記放出口から放出されると、前記放出口と対面する状態の基板と、前記第一、第二の膜厚センサとに前記成膜材料の薄膜が形成されるように構成され、前記発熱制御装置は、前記第一、第二の膜厚センサの膜厚の検出結果に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置の発熱量を個別に制御するように構成された成膜装置である。
また、本発明は、前記第一、第二の蒸気生成装置には、前記第一、第二の膜厚センサの検出結果に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置への導入量をそれぞれ制御してキャリアガスを導入させるキャリアガス導入装置が接続され、前記成膜材料の蒸気は、前記キャリアガスと共に、前記放出口から前記真空槽内に放出される成膜装置である。
また、本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置され、細長で中空の放出装置と、発熱装置が設けられ、前記発熱装置が発熱すると内部に配置された成膜材料を昇温させる第一、第二の蒸気生成装置と、前記放出装置に設けられた放出口と、前記第一、第二の蒸気生成装置に接続され、前記第一、第二の蒸気生成装置へ個別に制御した流量でキャリアガスをそれぞれ導入させるキャリアガス導入装置と、を有し、前記第一、第二の蒸気生成装置は、前記放出装置の細長の一端に位置する第一の接続口と他端に位置する第二の接続口にそれぞれ接続され、前記放出口に対面する位置であって、前記第二の接続口よりも前記第一の接続口に近い位置には第一の膜厚センサが配置され、前記放出口に対面する位置であって、前記第一の接続口よりも前記第二の接続口に近い位置には第二の膜厚センサが配置され、前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置が発熱して前記第一、第二の蒸気生成装置に配置された前記成膜材料から蒸気が生成され、前記キャリアガスと共に前記放出装置に供給されて前記蒸気と前記キャリアガスとが前記放出口から放出されると、前記放出口と対面する状態の基板と、前記第一、第二の膜厚センサとに前記成膜材料の薄膜が形成されるように構成され、前記キャリアガス導入装置は、前記第一、第二の膜厚センサの検出値に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置へのキャリアガス導入量を個別に制御するように構成された成膜装置である。
また、本発明は、前記発熱制御装置は、前記第一、第二の膜厚センサの検出結果に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置の発熱量を個別に制御するように構成された成膜装置である。
【0011】
本発明は上記のように構成されており、細長で長手方向を有する放出装置の長手方向の一端と他端の両方に、成膜材料の蒸気を供給するように構成されている。
本発明は、この蒸気の供給速度を放出装置の一端と他端で個別に制御できる蒸気量制御装置を有しており、蒸気量制御装置により、一端側で放出口に対向する位置にある第一の膜厚センサ上での成膜速度と、他端側に位置する第二の膜厚センサ上での成膜速度とを等しくすることができるように構成されており、一端と他端の間は、一端から導入される蒸気の供給速度と他端から導入される蒸気の供給速度の和となるから、一端側と他端側の間に位置する放出口からの蒸気放出速度は均一になり、膜厚分布のよい薄膜を基板表面に形成することができる。
【0012】
また、蒸気量制御装置により、第一、第二の膜厚センサの両方が検出する成膜速度が、予め設定された基準値と等しくなるように、第一、第二の蒸気生成装置からの蒸気供給量を制御することもできる。
【発明の効果】
【0013】
放出装置の長手方向の一端と他端の間に亘って、放出口から放出される成膜材料の蒸気の放出速度を均一にすることが出来るので、放出装置の長手方向とは直角方向に基板を移動させて、均一な膜厚の薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の成膜装置の放出装置30と基板6との関係を説明するための図
【図2】その成膜装置の構造を説明するための図
【図3】従来技術の有機薄膜成膜装置の構造を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2の符号1は、本発明の一例の成膜装置であり、真空槽8を有している。
真空槽8には真空排気系28が接続されており、真空槽8の内部は真空排気系28によって真空排気されている。
この成膜装置1は、図1に示すように、一乃至複数台の蒸着装置111、112を有している。
ここでは蒸着装置111、112は二台であり、一方の蒸着装置111又は112には、発光性有機薄膜の母材となる有機化合物が成膜材料として配置され、他方の蒸着装置111又は112に、発光性有機薄膜に添加される発光性有機化合物が成膜材料として配置されている。
【0016】
成膜材料の化合物の種類や組成は互いに異なるが、蒸着装置111、112の部品や構造は同じであり、図2では、符号11によって複数の蒸着装置中の一台の蒸着装置を示して説明する。図1では、後述する膜厚センサは省略してある。
一台の蒸着装置11は、放出装置30と、蒸気量制御装置14と、二台である第一、第二の蒸気生成装置20a、20bとを有している。
【0017】
放出装置30は箱状で内部が中空の筺体31を有しており、該筺体31は真空槽8内の底壁上に配置されている。
第一、第二の蒸気生成装置20a、20bは容器21と、容器21の開口を蓋する蓋部22とをそれぞれ有している
【0018】
筺体31は細長で長手方向を有しており、二台の蒸気生成装置20a、20bのうち、一方の第一の蒸気生成装置20aの容器21は、第一の接続配管26aによって、筺体31の長手方向の一端に接続され、他方の第二の蒸気生成装置20bの容器は、第二の接続配管26bによって、筺体31の長手方向の他端に接続されている。
従って、一方の蒸気生成装置20aの容器21内部は、放出装置30の筺体31内部の長手方向一端に接続され、他方の蒸気生成装置20bの容器21内部は、放出装置30の筺体31内部の長手方向他端に接続されている。
【0019】
図2中、符号38aは、第一の接続配管26aと筺体31との接続部分である第一の接続口を示しており、符号38bは、第二の接続配管26bと筺体31との接続部分である第二の接続口を示している。第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21の内部と筺体31の内部とは、第一、第二の接続口38a、38bを介してそれぞれ接続されている。
【0020】
蒸気量制御装置14は、キャリアガス導入装置15と発熱制御装置16とを有している。
キャリアガス導入装置15は、ガス源45と、流量制御装置44a、44bとを有しており、ガス源45は、流量制御装置44a、44bを介して、第一の蒸気生成装置20aの容器21と第二の蒸気生成装置20bの容器21とにそれぞれ接続されており、ガス源45に設けられたガスボンベを開け、ガスボンベ内に充填されたキャリアガス(例えば)を、流量制御装置44a、44bによってそれぞれ別個に流量制御しながら、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21にそれぞれ導入できるように構成されている。
【0021】
流量制御装置44a、44bは、第一の蒸気生成装置20aの容器21内に導入するキャリアガス流量と、第二の蒸気生成装置20bの容器21内に導入するキャリアガス流量とを別々に制御して、二台の蒸気生成装置20a、20bの容器21に異なる流量のキャリアガスを導入できるようにされている。
【0022】
発熱制御装置16は、第一、第二の加熱電源42a、42bと、第一、第二の加熱電源42a、42bの出力電流を制御する電源制御装置43とを有している。
第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21には、線状の発熱体である発熱装置23がそれぞれ巻き回されている。第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの発熱装置23は、第一、第二の加熱電源42a、42bにそれぞれ接続されており、第一、第二の加熱電源42a、42bが出力する電流がそれぞれ供給される。
【0023】
第一、第二の加熱電源42a、42bは電源制御装置43に接続され、電源制御装置43によって、第一の蒸気生成装置20aの発熱装置23と、第二の蒸気生成装置20bの発熱装置23とには、別々に制御された電流が供給され、発熱量が個別に制御される。
従って、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21は、同じ温度にも、異なる温度にもすることができる。
【0024】
容器21は、発熱装置23が取り付けられた状態で、断熱装置27の内部に配置されており、発熱装置23の発熱が、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの外部に放射されないように構成されている。この例では、容器21は、断熱装置27と共に真空槽8の内部に配置されている。
【0025】
第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21の内部には、単一の場合は同一化合物であって、混合物の場合は同一成分同一組成(同じ化合物で同じ比率)の成膜材料24がそれぞれ配置されており、容器21の内部と筺体31の内部と、真空槽8の内部は、真空排気系28によって予め真空雰囲気にされており、発熱装置23が発熱すると、容器21内の成膜材料24が酸化せずに昇温し、蒸発温度以上の温度になると、成膜材料24の蒸気が発生する。
【0026】
発生した成膜材料24の蒸気は、接続配管26a、26bを通って、第一、第二の接続口38a、38bから放出装置30の筺体31内に移動する。
第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21の内部で、成膜材料24から蒸気が発生しているときに、キャリアガス導入装置15から第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21にキャリアガスがそれぞれ導入されると、容器21内で発生した蒸気は、キャリアガスと共に、接続配管26a、26bを通って、接続口38a、38bから筺体31内に導入される。
筺体31にはヒータ33が巻き回されており、ヒータ33は発熱する。成膜材料24が有機化合物であっても、成膜材料が筺体31内部壁面に析出しないようにされている。
【0027】
真空槽8内の筺体31の上方の天井側には、筺体31の長手方向とは垂直な方向に、細長の搬送装置36が筺体31とは離間して配置されている。
搬送装置36には基板ホルダ35が取り付けられており、搬送装置36が動作することで、基板ホルダ35は筺体31と離間した位置を、筺体31の長手方向とは垂直な方向に移動する。
基板6は、薄膜(ここでは有機薄膜)を形成する成膜面にマスク板7が配置され、基板6とマスク板7とから成る成膜対象物とされた状態で成膜面を筺体31に向けて基板ホルダ35に保持されている。
【0028】
真空槽8には搬入口と搬出口が設けられており、移動装置36は細長で基板ホルダ35を成膜対象物と共に搬入口から真空槽8内に搬入し、真空槽8内を移動させた後、搬出口から真空槽8の外部に搬出させるように構成されている。ここでは、基板6は成膜面を鉛直下方に向けられており、マスク板7と基板6とは互いに固定されて相対的に静止した状態で水平に移動するようにされている。
【0029】
筺体31の表面のうち、基板6とマスク板7とに対面する表面には、一個又は複数個の放出口32が設けられている。
放出口32は筺体31の厚み方向を貫通しており、筺体31の内部中空部分と筺体31の外部とを接続するようにされている。放出口32は、複数個の場合、筺体31の長手方向に沿って配置されており、一個の場合、放出口32は細長であり、放出口32の長手方向が、筺体31の長手方向に沿って配置されている。
【0030】
マスク板7には底面に基板6の成膜面が露出する開口が設けられており、真空排気系28によって真空排気しながら、放出口32から成膜材料の蒸気を真空槽8内に放出させた状態で、基板6とマスク板7との成膜対象物が、放出口32と対面しながら筺体31の上方位置を通過するようにすると、放出口32と対面する部分の開口を放出口32から放出された蒸気が通過し、開口底面の基板6の成膜面に到達し、マスク板7と同パターン形状の成膜材料24の薄膜(ここでは有機薄膜)が基板6の成膜面に形成される。
【0031】
基板6及びマスク板7の移動経路の片側であって、第二の接続口38bよりも第一の接続口38aに近い位置には第一の膜厚センサ33aが配置され、移動経路の反対側であって、第一の接続口38aよりも第二の接続口38bに近い位置には第二の膜厚センサ33bが配置されている。
【0032】
第一、第二の膜厚センサ33a、33bは、放出口32から放出された蒸気が到達する位置であって、放出口32から放出されて基板6に向かう蒸気が衝突しない位置に配置されており、放出口32から蒸気が放出されると、第一、第二の膜厚センサ33a、33bに付着し、成膜材料24の薄膜が形成される。
【0033】
第一、第二の膜厚センサ33a、33bは、膜厚計39を介して、蒸気量制御装置14に接続されており、膜厚計39では、測定された膜厚と時間(膜厚差と時間差)から、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上での成膜速度がそれぞれ算出され、キャリアガス導入装置15と発熱制御装置16に出力されている。
【0034】
蒸気量制御装置14には、第一、第二の膜厚センサ33a、33bによって測定される成膜速度の基準値が設定されており、蒸気によって実際に第一、第二の膜厚センサ33a、33b上で成膜される有機薄膜の膜厚差と時間差から求められた成膜速度を基準値と比較し、発熱制御装置16は、実際に成膜される成膜速度が基準値と等しくなるように、発熱装置23の発熱量を制御する。
【0035】
具体的には、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度の測定結果と基準値とを比較し、測定結果が基準値よりも小さい膜厚センサ33a、33bがある場合は、その膜厚センサ33a又は33bが近い第一又は第二の接続口38a、38bに接続された第一又は第二の蒸気生成装置20a、20bの発熱装置23の発熱量を上昇させ、基準値よりも成膜速度が小さい第一又は第二の蒸気生成装置20a、20b内の蒸気生成速度を増加させる。
【0036】
測定結果が基準値よりも大きい膜厚センサ33a、33bがあった場合は、その膜厚センサ33a又は33bに近い第一又は第二の接続口38a、38bに接続された第一又は第二の蒸気生成装置20a、20bの発熱装置23の発熱量を低下させ、基準値よりも成膜速度が大きい第一又は第二の蒸気生成装置20a、20b内の蒸気生成速度を減少させる。
【0037】
なお、第一、第二の膜厚センサ33a、33bの一方が基準値よりも大きく、他方が小さい場合は、基準値よりも測定結果が大きい膜厚センサ33a又は33bに近い第一又は第二の接続口38a又は38bに接続された第一又は第二の蒸気生成装置20a、20bの発熱装置23の蒸気放出速度を低下させると共に、基準値よりも測定結果が小さい膜厚センサ33a又は33bに近い第一又は第二の接続口38a又は38bに接続された第一又は第二の蒸気生成装置20a、20bの発熱装置23の蒸気放出速度を増加させるようにすることができる。
測定した成膜速度が基準値と等しい場合には、発熱量を変化させず、蒸気放出速度を変化させないようにすることができる。
【0038】
次に、キャリアガスの導入について説明すると、この成膜装置1では、容器21の温度を変化させないときに、第一又は第二の蒸気生成装置20a、20bへのキャリアガスの導入速度(単位時間当たりの導入量)と第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度との関係が予め求められており、有機化合物の種類や温度によって、キャリアガスの増減と成膜速度の増減の関係が分かっている。
【0039】
具体的には、キャリアガス導入の速度を増大させたときに成膜速度が増大するときと、成膜速度が減少するときとがあり、従って、予め求めて置いた関係から、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度の測定結果の基準値に対する大小に従って、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度が基準値と等しくなるように、第一、第二の蒸気生成装置33a、33bへのキャリアガスの導入速度を増加させ又は減少させて、発熱量を制御するときと同様に、キャリアガスの導入速度の制御によって、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度を基準値と等しくなるように制御することができる。
【0040】
この場合、同じ蒸気生成装置20a又は20bに対して、発熱装置23の発熱量の増減と、キャリアガス導入量の増減とを一緒に行ってもよいし、成膜速度を基準値と等しくするために、発熱量だけを増減させてもよいし、キャリアガス導入速度だけを増大・低下させてもよい。
【0041】
また、上記例では、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度が基準値と等しくなるように、発熱量とキャリアガス導入速度のうちいずれか一方又は両方を増減制御したが、第一、第二の膜厚センサ33a、33b上の成膜速度を一致させるように、発熱量とキャリアガス導入速度のうちいずれか一方又は両方を制御することもできる。この場合、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bのうち、一方の蒸気生成装置20a又は20bの蒸気放出速度を変えず、他方の蒸気放出速度を増減させてもよい。この場合も、蒸気放出速度を増減させるために、発熱量とキャリアガス導入速度のいずれか一方又は両方を増減させることができる。
【0042】
以上説明したように、本発明では、基板6の両側位置で成膜速度が等しくなるように、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bからの蒸気放出速度が制御されるので、基板6表面には、膜厚が均一な有機薄膜が形成される。
そして、基板6とマスク板7とを一緒に移動させながら、基板6の成膜面の放出口32と対向する部分に有機薄膜を形成すると、基板6の移動方向に沿った方向の範囲に有機薄膜が形成され、放出装置30上を通過した後、基板6は、真空槽8から次の工程の真空槽に移動され、後工程が行われる。
【0043】
なお、上記実施例では、同一化合物又は同一成分同一組成の有機化合物を成膜材料24として、第一、第二の蒸気生成装置20a、20bの容器21の内部に配置したが、成膜材料24は有機化合物であるだけではなく、無機化合物の場合や有機化合物と無機化合物の混合物の場合も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1……成膜装置
8……真空槽
15……キャリアガス導入装置
16……発熱制御装置
20a、20b……第一、第二の蒸気生成装置
23……発熱装置
30……放出装置
32……放出口
33a、33b……第一、第二の膜厚センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、細長で中空の放出装置と、
発熱装置が設けられ、前記発熱装置が発熱すると内部に配置された成膜材料を昇温させる第一、第二の蒸気生成装置と、
前記第一、第二の蒸気生成装置内の前記発熱装置の発熱量を個別に制御して発熱させる発熱制御装置と、
前記放出装置に設けられた放出口と、を有し、
前記第一、第二の蒸気生成装置は、前記放出装置の細長の一端に位置する第一の接続口と他端に位置する第二の接続口にそれぞれ接続され、
前記放出口に対面する位置であって、前記第二の接続口よりも前記第一の接続口に近い位置には第一の膜厚センサが配置され、
前記放出口に対面する位置であって、前記第一の接続口よりも前記第二の接続口に近い位置には第二の膜厚センサが配置され、
前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置が発熱して前記第一、第二の蒸気生成装置に配置された前記成膜材料から蒸気が生成され、前記放出装置に供給されて前記蒸気が前記放出口から放出されると、前記放出口と対面する状態の基板と、前記第一、第二の膜厚センサとに前記成膜材料の薄膜が形成されるように構成され、
前記発熱制御装置は、前記第一、第二の膜厚センサの膜厚の検出結果に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置の発熱量を個別に制御するように構成された成膜装置。
【請求項2】
前記第一、第二の蒸気生成装置には、前記第一、第二の膜厚センサの検出結果に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置への導入量をそれぞれ制御してキャリアガスを導入させるキャリアガス導入装置が接続され、前記成膜材料の蒸気は、前記キャリアガスと共に、前記放出口から前記真空槽内に放出される請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、細長で中空の放出装置と、
発熱装置が設けられ、前記発熱装置が発熱すると内部に配置された成膜材料を昇温させる第一、第二の蒸気生成装置と、
前記放出装置に設けられた放出口と、
前記第一、第二の蒸気生成装置に接続され、前記第一、第二の蒸気生成装置へ個別に制御した流量でキャリアガスをそれぞれ導入させるキャリアガス導入装置と、を有し、
前記第一、第二の蒸気生成装置は、前記放出装置の細長の一端に位置する第一の接続口と他端に位置する第二の接続口にそれぞれ接続され、
前記放出口に対面する位置であって、前記第二の接続口よりも前記第一の接続口に近い位置には第一の膜厚センサが配置され、
前記放出口に対面する位置であって、前記第一の接続口よりも前記第二の接続口に近い位置には第二の膜厚センサが配置され、
前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置が発熱して前記第一、第二の蒸気生成装置に配置された前記成膜材料から蒸気が生成され、前記キャリアガスと共に前記放出装置に供給されて前記蒸気と前記キャリアガスとが前記放出口から放出されると、前記放出口と対面する状態の基板と、前記第一、第二の膜厚センサとに前記成膜材料の薄膜が形成されるように構成され、
前記キャリアガス導入装置は、前記第一、第二の膜厚センサの検出値に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置へのキャリアガス導入量を個別に制御するように構成された成膜装置。
【請求項4】
前記発熱制御装置は、前記第一、第二の膜厚センサの検出結果に基づいて、前記第一、第二の蒸気生成装置内の発熱装置の発熱量を個別に制御するように構成された請求項3記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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