説明

材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

【課題】540MPa以上の引張強度TSを有し、かつ、材質安定性と加工性(高延性と高穴拡げ性)に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】成分組成は、質量%でC:0.04%以上0.13%以下、Si:0.7%以上2.3%以下、Mn:0.8%以上2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.008%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼組織は、面積率で、75%以上のフェライト相と、1.0%以上のベイニティックフェライト相と、1.0%以上10.0%以下のパーライト相を有し、さらに、マルテンサイト相の面積率が1.0%以上5.0%未満で、かつ、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)≦0.6を満たすことを特徴とする材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、電気等の産業分野で使用される部材として好適な材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。これに伴い、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする動きが活発となってきている。
【0003】
しかしながら、鋼板の高強度化は延性の低下、即ち成形加工性の低下を招く。このため、高強度と高加工性を併せ持つ材料の開発が望まれているのが現状である。
【0004】
また、高強度鋼板を自動車部品のような複雑な形状へ成形加工する際には、張出し部位や伸びフランジ部位で割れやネッキングの発生が大きな問題となる。そのため、割れやネッキングの発生の問題を克服できる高延性と高穴拡げ性を両立した高強度鋼板も必要とされている。
【0005】
さらに、鋼板の高強度化、薄肉化により形状凍結性は著しく低下する。これに対応するため、プレス成形時に、離型後の形状変化を予め予測し、形状変化量を見込んで型を設計することが広く行われているが、鋼板の引張強度(TS)が変化すると、これらを一定とした見込み量からのズレが大きくなり、形状不良が発生し、プレス成形後に一個一個形状を板金加工する等の手直しが不可欠となり、量産効率を著しく低下させる。従って、鋼板のTSのバラツキは可能な限り小さくすることが要求されている。
【0006】
高強度鋼板の成形性向上に対しては、これまでにフェライト−マルテンサイト二相鋼(Dual-Phase鋼)や残留オーステナイトの変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity)を利用したTRIP鋼など、種々の複合組織型高強度溶融亜鉛めっき鋼板が開発されてきた。
【0007】
例えば、特許文献1では、化学成分を規定し、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの体積率、また、その製造方法を規定することにより、延性に優れた鋼板が提案されている。また、特許文献2では、化学成分を規定し、さらにその特殊な製造方法を規定することにより延性に優れた鋼板が提案されている。特許文献3では、化学成分を規定し、フェライトとベイニティックフェライトと残留オーステナイトの体積率を規定することにより、延性に優れた鋼板が提案されている。また、特許文献4では、板幅方向における伸びのバラツキが改善された高強度冷延鋼板の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−140022号公報
【特許文献2】特開平04−026744号公報
【特許文献3】特開2007−182625号公報
【特許文献4】特開2000−212684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3では、高強度薄鋼板の延性を向上させることを主目的としているため、穴拡げ性については考慮されていない。特許文献4では、板幅方向における全伸びELのバラツキについてのみ述べており、成分組成や製造条件による材質のバラツキについては考慮されていない。そのため、高延性と高穴拡げ性を兼ね備え、かつ、材質安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の開発が課題となる。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み540MPa以上の引張強度TSを有し、かつ、材質安定性と加工性(高延性と高穴拡げ性)に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、540MPa以上の引張強度TSを有し、かつ、材質安定性と加工性(高延性と高穴拡げ性)に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得るべく鋭意検討を重ねたところ、以下のことを見出した。
【0012】
Siの積極添加により、フェライトの加工硬化能向上による延性の向上と、フェライトの固溶強化による強度確保および第二相との硬度差緩和による穴拡げ性の向上が可能となった。また、ベイニティックフェライトやパーライトの活用により、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトの硬度差を緩和でき、穴拡げ性の向上が可能となった。さらに、最終組織に硬質なマルテンサイトが多く存在すると軟質なフェライト相の異相界面で大きな硬度差が生じ、穴拡げ性が低下するため、最終的にマルテンサイトに変態する未変態オーステナイトをパーライト化し、フェライト、ベイニティックフェライト、パーライト、少量のマルテンサイトを有する組織を造り込むことで、高延性を維持したままで、穴拡げ性の向上が可能となり、さらに、上記各相の面積率を適正に制御することにより、材質安定性の確保が可能となった。
【0013】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0014】
(1)成分組成は、質量%でC:0.04%以上0.13%以下、Si:0.7%以上2.3%以下、Mn:0.8%以上2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.008%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼組織は、面積率で、75%以上のフェライト相と、1.0%以上のベイニティックフェライト相と、1.0%以上10.0%以下のパーライト相を有し、さらに、マルテンサイト相の面積率が1.0%以上5.0%未満で、かつ、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)≦0.6を満たすことを特徴とする材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0015】
(2)さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.05%以上1.0%以下、V:0.005%以上0.5%以下、Mo:0.005%以上0.5%以下、Ni:0.05%以上1.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする(1)に記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0016】
(3)さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.01%以上0.1%以下、Nb:0.01%以上0.1%以下、B:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0017】
(4)さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、REM:0.001%以上0.005%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0018】
(5)さらに、成分組成として、質量%で、Ta:0.001%以上0.010%以下、Sn:0.002%以上0.2%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0019】
(6)さらに、成分組成として、質量%で、Sb:0.002%以上0.2%以下を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【0020】
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延、酸洗し、またはさらに冷間圧延し、その後650℃以上の温度域まで5℃/s以上の平均加熱速度で加熱し、750〜900℃の温度域で15〜600s保持し、450〜550℃の温度域に冷却した後、該450〜550℃の温度域で10〜200s保持し、次いで、溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0021】
(8)溶融亜鉛めっきを施した後、500〜600℃の温度域において下式を満たす条件で亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする(7)に記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.45≦exp[200/(400−T)]×ln(t)≦1.0
但し、
T:500〜600℃の温度域での平均保持温度(℃)
t:500〜600℃の温度域の保持時間(s)
exp(X)、ln(X)は、それぞれXの指数関数、自然対数を示す。
【0022】
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。また、本発明において、「高強度溶融亜鉛めっき鋼板」とは、引張強度TSが540MPa以上である溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0023】
また、本発明においては、合金化処理を施す、施さないにかかわらず、溶融亜鉛めっきによって鋼板上に亜鉛をめっきした鋼板を総称して溶融亜鉛めっき鋼板と呼称する。すなわち、本発明における溶融亜鉛めっき鋼板とは、合金化処理を施してない溶融亜鉛めっき鋼板、合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板の両方を含むものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、540MPa以上の引張強度TSを有し、かつ、高延性と高穴拡げ性であることから加工性に優れ、さらに材質安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を、例えば、自動車構造部材に適用することにより車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】焼鈍温度(T)とTSの関係を示す図である。
【図2】焼鈍温度(T)とELの関係を示す図である。
【図3】冷却平均保持温度(T)とTSの関係を示す図である。
【図4】冷却平均保持温度(T)とELの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の詳細を説明する。
【0027】
一般に、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトとの二相構造では、延性の確保は可能なものの、フェライトとマルテンサイトの硬度差が大きいために、十分な穴拡げ性が得られないことが知られている。そこで、本発明者は、さらにベイニティックフェライトとパーライトの活用について検討し、フェライトとベイニティックフェライトとパーライトとマルテンサイトを有する(一部残留オーステナイトを有するものを含む)複合組織での特性向上の可能性に着目して詳細に検討を行った。
【0028】
その結果、フェライトの固溶強化とフェライトの加工硬化能向上を目的にSiを積極添加し、フェライトとベイニティックフェライトとパーライトと少量のマルテンサイトの複合組織を造り込み、異相間の硬度差を低減させ、さらにその複合組織の面積分率を適正化することにより、高延性と高穴拡げ性の両立、及び、材質安定性の確保が可能となった。
【0029】
以上が本発明を完成するに至った技術的特徴である。そして、本発明は、成分組成は、質量%でC:0.04%以上0.13%以下、Si:0.7%以上2.3%以下、Mn:0.8%以上2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.008%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼組織は、面積率で、75%以上のフェライト相と、1.0%以上のベイニティックフェライト相と、1.0%以上10.0%以下のパーライト相を有し、さらに、マルテンサイト相の面積率が1.0%以上5.0%未満で、かつ、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)≦0.6を満たすことを特徴とする。
【0030】
1)まず、成分組成について説明する。
【0031】
C:0.04%以上0.13%以下
Cはオーステナイト生成元素であり、鋼の強化に不可欠な元素である。C量が0.04%未満では、所望の強度確保が難しい。一方、C量が0.13%を超えて過剰に添加すると、溶接部および熱影響部の硬化が著しく、溶接部の機械的特性が劣化するため、スポット溶接性、アーク溶接性等が低下する。よって、Cは0.04%以上0.13%以下とする。
【0032】
Si:0.7%以上2.3%以下
Siはフェライト生成元素であり、また、固溶強化に有効な元素でもある。そして、フェライト相の加工硬化能向上による良好な延性確保のためには0.7%以上の添加が必要である。さらに、所望のベイニティックフェライト相の面積率を確保し、良好な穴拡げ性を確保するためには0.7%以上の添加が必要である。しかしながら、Siの過剰な添加は、赤スケール等の発生により表面性状の劣化や、めっき付着・密着性の劣化を引き起こす。よって、Siは0.7%以上2.3%以下とする。好ましくは、1.2%以上1.8%以下である。
【0033】
Mn:0.8%以上2.0%以下
Mnは、鋼の強化に有効な元素である。また、オーステナイトを安定化させる元素であり、第二相の分率調整に必要な元素である。このため、Mnは0.8%以上の添加が必要である。一方、2.0%を超えて過剰に添加すると、第二相中のマルテンサイト面積率が増加し、材質安定性の確保が困難となる。また、近年Mnの合金コストが高騰しているため、コストアップの要因にも繋がる。従って、Mnは0.8%以上2.0%以下とする。好ましくは1.0%以上1.8%以下である。
【0034】
P:0.1%以下
Pは、鋼の強化に有効な元素であるが、0.1%を超えて過剰に添加すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させる。また0.1%を超えると合金化速度を大幅に遅延させる。従って、Pは0.1%以下とする。
【0035】
S:0.01%以下
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので極力低い方がよいが、製造コストの面からSは0.01%以下とする。
【0036】
Al:0.1%以下
Alは、0.1%を超えると、粗大なAlが生成し、材質が劣化する。また、Alは鋼の脱酸のために添加される場合、0.01%未満ではMnやSiなどの粗大な酸化物が鋼中に多数分散して材質が劣化することになるため、添加量を0.01%以上とするのが好ましい。よって、Al量は0.1%以下とし、好ましくは、0.01〜0.1%とする。
【0037】
N:0.008%以下
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、少ないほど好ましく、0.008%を超えると耐時効性の劣化が顕著となる。従って、Nは0.008%以下とする。
【0038】
残部はFeおよび不可避的不純物である。ただし、これらの元素に加えて、以下の元素のうちから選ばれる少なくとも1種を必要に応じて添加することができる。
【0039】
Cr:0.05%以上1.0%以下、V:0.005%以上0.5%以下、Mo:0.005%以上0.5%以下、Ni:0.05%以上1.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下のうちから選ばれる少なくとも1種
Cr、V、Moは強度と延性のバランスを向上させる作用を有するので必要に応じて添加することができる。その効果は、Cr:0.05%以上、V:0.005%以上、Mo:0.005%以上で得られる。しかしながら、それぞれCr:1.0%、V:0.5%、Mo:0.5%を超えて過剰に添加すると、第二相の分率が過大となり著しい強度上昇等の懸念が生じる。また、コストアップの要因にもなる。従って、これらの元素を添加する場合には、その量をそれぞれCr:1.0%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下とする。
【0040】
Ni、Cuは鋼の強化に有効な元素であり、本発明で規定した範囲内であれば鋼の強化に使用して差し支えない。また内部酸化を促進してめっき密着性を向上させる作用がある。これらの効果を得るためには,それぞれ0.05%以上必要である。一方、Ni、Cuとも1.0%を超えて添加すると、鋼板の加工性を低下させる。また、コストアップの要因にもなる。よって、Ni、Cuを添加する場合に、その添加量はそれぞれ0.05%以上1.0%以下とする。
【0041】
Ti:0.01%以上0.1%以下、Nb:0.01%以上0.1%以下、B:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる少なくとも1種
Ti、Nbは鋼の析出強化に有効で、その効果はそれぞれ0.01%以上で得られ、本発明で規定した範囲内であれば鋼の強化に使用して差し支えない。しかし、それぞれが0.1%を超えると加工性および形状凍結性が低下する。また、コストアップの要因にもなる。従って、Ti、Nbを添加する場合には,その添加量をTiは0.01%以上0.1%以下、Nbは0.01%以上0.1%以下とする。
【0042】
Bはオーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制する作用を有するので必要に応じて添加することができる。その効果は,0.0003%以上で得られる。しかし、0.0050%を超えると加工性が低下する。また、コストアップの要因にもなる。従って、Bを添加する場合は0.0003%以上0.0050%以下とする。
【0043】
Ca:0.001%以上0.005%以下、REM:0.001%以上0.005%以下のうちから選ばれる少なくとも1種
CaおよびREMは、硫化物の形状を球状化し穴拡げ性への硫化物の悪影響を改善するために有効な元素である。この効果を得るためには、それぞれ0.001%以上必要である。しかしながら、過剰な添加は,介在物等の増加を引き起こし表面および内部欠陥などを引き起こす。したがって、Ca、REMを添加する場合は、その添加量はそれぞれ0.001%以上0.005%以下とする。
【0044】
Ta:0.001〜0.010%、Sn:0.002〜0.2%のうちから選ばれる少なくとも1種
Taは、TiやNbと同様、合金炭化物や合金炭窒化物を形成して高強度化に寄与するのみならず、Nb炭化物やNb炭窒化物に一部固溶し、(Nb,Ta)(C,N)のような複合析出物を形成することで、析出物の粗大化を著しく抑制して、析出強化による強度への寄与を安定化させる効果があると考えられる。そのため、Taを添加する場合は、その含有量を0.001%以上とすることが望ましい。しかし、過剰に添加した場合、上記の析出物安定化効果が飽和するのみならず、合金コストが上昇するため、Taを添加する場合は、その含有量を0.010%以下とすることが望ましい。
【0045】
Snは、鋼板表面の窒化、酸化、あるいは酸化により生じる鋼板表層の数10μm領域の脱炭を抑制する観点から添加することができる。このような窒化や酸化を抑制することで鋼板表面においてマルテンサイトの生成量が減少するのを防止し、疲労特性や耐時効性を改善させる。窒化や酸化を抑制する観点から、Snを添加する場合は、その含有量は0.002%以上とすることが望ましく、0.2%を超えると靭性の低下を招くため、その含有量を0.2%以下とすることが望ましい。
【0046】
Sb:0.002〜0.2%
SbもSnと同様に鋼板表面の窒化、酸化、あるいは酸化により生じる鋼板表層の数10μm領域の脱炭を抑制する観点から添加することができる。このような窒化や酸化を抑制することで鋼板表面においてマルテンサイトの生成量が減少するのを防止し、疲労特性や耐時効性を改善させる。窒化や酸化を抑制する観点から、Sbを添加する場合は、その含有量は0.002%以上とすることが望ましく、0.2%を超えると靭性の低下を招くため、その含有量を0.2%以下とすることが望ましい。
【0047】
2)次に鋼組織について説明する。
【0048】
フェライト相の面積率:75%以上
良好な延性を確保するためには、フェライト相は面積率で75%以上必要である。
【0049】
ベイニティックフェライト相の面積率:1.0%以上
良好な穴拡げ性の確保のため、即ち軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトの硬度差を緩和させるために、ベイニティックフェライト相の面積率は1.0%以上必要である。
【0050】
パーライト相の面積率:1.0%以上10.0%以下
良好な穴拡げ性の確保のため、パーライト相の面積率は1.0%以上とする。所望の強度−延性バランスを確保するため、パーライト相の面積率を10.0%以下とする。
【0051】
マルテンサイト相の面積率:1.0%以上5.0%未満
所望の強度−延性バランスを確保するため、マルテンサイト相の面積率は1.0%以上とする。良好な材質安定性を確保するために、引張特性(TS、EL)に大きく影響を及ぼすマルテンサイト相の面積率は5.0%未満である必要がある。
【0052】
マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)≦0.6
良好な材質安定性を確保するために、第二相の相構成を、材質バラツキの要因となるマルテンサイトの量を低減し、マルテンサイトより軟質なベイニティックフェライトやパーライトの量を多くすること、つまり、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)≦0.6を満たす必要がある。
【0053】
なお、フェライト、ベイニティックフェライト、パーライト、マルテンサイト以外に、残留オーステナイトや焼戻しマルテンサイトやセメンタイト等の炭化物が生成する場合があるが、上記のフェライト、ベイニティックフェライト、パーライト、マルテンサイトの面積率が満足されていれば、本発明の目的を達成できる。
【0054】
また、本発明におけるフェライト、ベイニティックフェライト、パーライト、マルテンサイトの面積率とは、観察面積に占める各相の面積割合のことである。
【0055】
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記成分組成と上記鋼組織を有する鋼板を下地鋼板とし、その上に溶融亜鉛めっきによるめっき皮膜、又は溶融亜鉛めっき後合金化処理を施しためっき皮膜を有する。
【0056】
3)次に製造条件について説明する。
【0057】
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の成分組成範囲に適合した成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延、酸洗し、またはさらに冷間圧延を行い、その後650℃以上の温度域まで5℃/s以上の平均加熱速度で加熱し、750〜900℃の温度域で15〜600s保持し、450〜550℃の温度域に冷却し、該450〜550℃の温度域にて10〜200s保持し、次いで、溶融亜鉛めっきを施すことで製造する。
【0058】
合金化処理を施す高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造するときは、溶融亜鉛めっき後、500〜600℃の温度域において、下式を満たす条件で亜鉛めっきの合金化処理を施す。
0.45≦exp[200/(400−T)]×ln(t)≦1.0
但し、
T:500〜600℃の温度域での平均保持温度(℃)
t:500〜600℃の温度域の保持時間(s)
exp(X)、ln(X)は、それぞれXの指数関数、自然対数を示す。
【0059】
以下、詳細に説明する。
【0060】
上記の成分組成を有する鋼を、公知の方法により、溶製した後、分塊または連続鋳造を経てスラブとし、熱間圧延して熱延板にする。熱間圧延を行うに際しては、スラブを1100〜1300℃に加熱し、最終仕上げ温度を850℃以上で熱間圧延を施し、400〜650℃で鋼帯に巻き取ることが好ましい。巻き取り温度が650℃を超えた場合、熱延板中の炭化物が粗大化し、このような粗大化した炭化物は焼鈍時の均熱中に溶けきらないため、必要強度を得ることができない場合がある。その後、公知の方法で酸洗処理を行う。又は酸洗を行った後、さらに冷間圧延を行う。冷間圧延を行うに際しては、特にその条件を限定する必要はないが、30%以上の冷間圧下率で冷間圧延を施すことが好ましい。冷間圧下率が低いと、フェライトの再結晶が促進されず、未再結晶フェライトが残存し、延性と穴拡げ性が低下する場合があるためである。
【0061】
酸洗した熱延板、または冷間圧延した鋼板に、以下の焼鈍を行った後、冷却し、その後溶融亜鉛めっきをする。
【0062】
650℃以上の温度域まで5℃/s以上の平均加熱速度で加熱
650℃以上の温度域までの平均加熱速度が5℃/s未満の場合、焼鈍中に微細で均一に分散したオーステナイト相が生成されず、最終組織のマルテンサイト面積率が増大し、良好な穴拡げ性の確保が困難である。また、通常よりも長い炉が必要となり、多大なエネルギー消費にともなうコスト増と生産効率の悪化を引き起こす。加熱炉としてDFF(Direct Fired Furnace)を用いることが好ましい。DFFによる急速加熱により、内部酸化層を形成させ、Si、Mn等の酸化物の鋼板最表層への濃化を防ぎ、良好なめっき性を確保するためである。
【0063】
750〜900℃の温度域で15〜600s保持
750〜900℃の温度域にて、具体的には、オーステナイト単相域、もしくはオーステナイトとフェライトの二相域で、15〜600s保持する焼鈍を行う。焼鈍温度が750℃未満、保持時間が15s未満になると、鋼板中の硬質なセメンタイトが十分に溶解せず、穴拡げ性が低下し、さらに、所望のマルテンサイト面積率が得られないことから、延性が低下する。一方、焼鈍温度が900℃を超えると、オーステナイト粒の成長が著しく、冷却後の保持中に生じるベイナイト変態によるベイニティックフェライトの確保が困難となり、穴拡げ性が低下し、さらに、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)が0.6を超えるため、良好な材質安定性が得られない。また、保持時間が600sを超えると、オーステナイトが粗大化し、所望の強度確保が困難となり、また、多大なエネルギー消費にともなうコスト増を引き起こす場合がある。
【0064】
450〜550℃の温度域にて10〜200s保持
前記の焼鈍を行った後、450〜550℃の温度域に冷却し、該450〜550℃の温度域に10〜200s保持する。保持温度が550℃を超えると、または保持時間が10s未満になると、ベイナイト変態が促進せず、ベイニティックフェライトの面積率が1.0%未満になり、所望の穴拡げ性を得られない。また、保持温度が450℃未満、または保持時間が200sを超えると、第二相の大半がベイナイト変態の促進により生成した固溶炭素量の多いオーステナイトとベイニティックフェライトになり、所望の1.0%以上のパーライト面積率が得られず、かつ、硬質なマルテンサイト相の面積率が5.0%以上となり、良好な穴拡げ性と材質安定性が得られない。
【0065】
その後、鋼板を通常の浴温のめっき浴中に浸入させて溶融亜鉛めっきを施し、ガスワイピングなどでめっき付着量を調整し、冷却することで、めっき層を合金化していない溶融亜鉛めっき鋼板を得る。
【0066】
合金化処理を施す溶融亜鉛めっき鋼板を製造するときは、溶融亜鉛めっきを施した後、さらに、500〜600℃の温度域において、下式を満たす条件で亜鉛めっきの合金化処理を行う。
0.45≦exp[200/(400−T)]×ln(t)≦1.0
但し、
T:500〜600℃の温度域での平均保持温度(℃)
t:500〜600℃の温度域の保持時間(s)
exp(X)、ln(X)は、それぞれXの指数関数、自然対数を示す。
【0067】
exp[200/(400−T)]×ln(t)が0.45未満になると、合金化処理後の鋼組織にマルテンサイトが多く存在し、上記硬質なマルテンサイトが軟質なフェライトと隣接して、異相間に大きな硬度差が生じ、穴拡げ性が低下する。また、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)が0.6を超えるため、材質安定性が損なわれる。また、溶融亜鉛めっき層の付着性が悪くなる。exp[200/(400−T)]×ln(t)が1.0超になると、未変態オーステナイトの殆どがセメンタイトもしくはパーライトに変態し、結果として所望の強度と延性のバランスが得られない。
【0068】
500℃未満の温度域では、めっき層の合金化が促進されず、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることが難しい。また、600℃を超える温度域では、第二相の殆どがパーライトになり、所望のマルテンサイト面積率が得られず、強度と延性のバランスが低下する。
めっき層の合金化については、500〜600℃の温度域において上記のexp[200/(400−T)]×ln(t)の条件を満たす本発明範囲であれば問題なく行うことができる。
【0069】
なお、本発明の製造方法における一連の熱処理においては、上述した温度範囲内であれば保持温度は一定である必要はなく、また冷却速度が冷却中に変化した場合においても規定した範囲内であれば本発明の趣旨を損なわない。また、熱履歴さえ満足されれば、鋼板はいかなる設備で熱処理を施されてもかまわない。加えて、熱処理後に形状矯正のため本発明の鋼板に調質圧延をすることも本発明の範囲に含まれる。なお、本発明では、鋼素材を通常の製鋼、鋳造、熱延の各工程を経て製造する場合を想定しているが、例えば薄手鋳造などにより熱延工程の一部もしくは全部を省略して製造する場合でもよい。
【0070】
図1、図2は、後述する実施例の本発明例である鋼AのNo.15、16、17(表2、表5)と比較例である鋼HのNo.18、19、20(表2、表5)について、TS、ELと焼鈍温度(T)の関係を整理した図を示す。図1、図2より、本発明例の鋼Aは焼鈍温度の変化に伴なうTS、ELの変動が小さいのに対し、比較例の鋼HはTS、ELの変動が大きいことがわかる。
【0071】
また、図3、図4は、後述する実施例の本発明例である鋼AのNo.21、22、23(表2、表5)と比較例である鋼HのNo.24、25、26(表2、表5)について、TS、ELと焼鈍後の冷却の平均保持温度(T)の関係を整理した図を示す。図3、図4より、本発明例の鋼Aは平均保持温度の変化に伴なうTS、ELの変動が小さいのに対し、比較例の鋼HはTS、ELの変動が大きいことがわかる。
【実施例】
【0072】
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にてスラブとした。得られたスラブを1200℃に加熱後、870〜920℃の仕上温度で板厚3.2mmまで熱間圧延を行い、520℃で巻き取った。次いで、得られた熱延板を酸洗し、一部は酸洗ままの熱延鋼板とし、一部はさらに冷間圧延を施し、冷延鋼板を製造した。次いで、上記により得られた熱延鋼板(酸洗後)および冷延鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインにより、表2〜表4に示す製造条件で、焼鈍処理を行い、溶融亜鉛めっき処理を施し、さらにめっき層の合金化処理を行い、溶融亜鉛めっき鋼板を得た。めっき付着量は片面あたり30〜50g/mとした。溶融亜鉛めっき処理を施した後に合金化処理を施さない溶融亜鉛めっき鋼板も一部作製した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対して、フェライト、ベイニティックフェライト、パーライト、マルテンサイト相の面積率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、Media Cybernetics社のImage−Proを用いて求めた。その際、マルテンサイトと残留オーステナイトの区別が困難なため、得られた溶融亜鉛めっき鋼板に200℃で2時間の焼戻し処理を施し、その後、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面の組織を上記の方法で観察し、上記の方法で求めた焼戻しマルテンサイト相の面積率をマルテンサイト相の面積率とした。また、残留オーステナイト相の体積率は、鋼板を板厚方向の1/4面まで研磨し、この板厚1/4面の回折X線強度により求めた。入射X線にはCoKα線を使用し、残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面のピークの積分強度の全ての組み合わせについて強度比を求め、これらの平均値を残留オーステナイト相の体積率とした。
【0078】
また、引張試験は、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるようにサンプルを採取したJIS5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して行い、TS(引張強度)、EL(全伸び)を測定した。なお、本発明では、TS×EL≧19000MPa・%の場合を延性が良好と判定した。
【0079】
材質安定性は、(イ)焼鈍温度T以外の条件が同じで焼鈍温度Tだけが異なる鋼板について、TS、ELの変動量を調査し、そのTS、ELの変動量から焼鈍温度変化20℃あたりの変動量(ΔTS、ΔEL)を求め、また(ロ)冷却後めっき浴浸漬までの平均保持温度T以外の条件が同じで冷却後めっき浴浸漬までの平均保持温度Tだけが異なる鋼板について、TS、ELの変動量を調査し、そのTS、ELの変動量から冷却後めっき浴浸漬までの平均保持温度変化20℃あたりの変動量(ΔTS、ΔEL)を求め、各温度変化20℃当たりのTS変動量(ΔTS)、EL変動量(ΔEL)で評価した。
【0080】
また、以上により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対して、穴拡げ性(伸びフランジ性)を測定した。穴拡げ性(伸びフランジ性)は、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠して行った。得られた各鋼板を100mm×100mmに切断後、板厚2.0mm以上はクリアランス12%±1%で、板厚2.0mm未満はクリアランス12%±2%で、直径10mmの穴を打ち抜いた後、内径75mmのダイスを用いてしわ押さえ力9tonで抑えた状態で、60°円錐のポンチを穴に押し込んで亀裂発生限界における穴直径を測定し、下記の式から、限界穴広げ率λ(%)を求め、この限界穴広げ率の値から伸びフランジ性を評価した。
限界穴広げ率λ(%)={(D−D)/D}×100
ただし、Dは亀裂発生時の穴径(mm)、Dは初期穴径(mm)である。なお、本発明では、λ≧70(%)の場合を良好と判定した。
【0081】
以上により得られた結果を表5〜表7に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
本発明例の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、いずれもTSが540MPa以上であり、λが70%以上で穴拡げ性に優れ、また、TS×EL≧19000MPa・%で強度と延性のバランスが高く、加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板であることがわかる。さらに、ΔTS、ΔELの値も小さく、材質安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板であることがわかる。一方、比較例では、延性、穴拡げ性のいずれか一つ以上が劣っているか、材質安定性が好ましくない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、540MPa以上の引張強度TSを有し、かつ、高延性と高穴拡げ性を有し、さらに材質安定性にも優れる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を、例えば、自動車構造部材に適用することにより車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は非常に大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分組成は、質量%でC:0.04%以上0.13%以下、Si:0.7%以上2.3%以下、Mn:0.8%以上2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.008%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼組織は、面積率で、75%以上のフェライト相と、1.0%以上のベイニティックフェライト相と、1.0%以上10.0%以下のパーライト相を有し、さらに、マルテンサイト相の面積率が1.0%以上5.0%未満で、かつ、マルテンサイト面積率/(ベイニティックフェライト面積率+パーライト面積率)≦0.6を満たすことを特徴とする材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.05%以上1.0%以下、V:0.005%以上0.5%以下、Mo:0.005%以上0.5%以下、Ni:0.05%以上1.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.01%以上0.1%以下、Nb:0.01%以上0.1%以下、B:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、REM:0.001%以上0.005%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
さらに、成分組成として、質量%で、Ta:0.001%以上0.010%以下、Sn:0.002%以上0.2%以下のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
さらに、成分組成として、質量%で、Sb:0.002%以上0.2%以下を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延、酸洗し、またはさらに冷間圧延し、その後650℃以上の温度域まで5℃/s以上の平均加熱速度で加熱し、750〜900℃の温度域で15〜600s保持し、450〜550℃の温度域に冷却した後、該450〜550℃の温度域で10〜200s保持し、次いで、溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
溶融亜鉛めっきを施した後、500〜600℃の温度域において下式を満たす条件で亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする請求項7に記載の材質安定性と加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.45≦exp[200/(400−T)]×ln(t)≦1.0
但し、
T:500〜600℃の温度域での平均保持温度(℃)
t:500〜600℃の温度域の保持時間(s)
exp(X)、ln(X)は、それぞれXの指数関数、自然対数を示す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−168877(P2011−168877A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262087(P2010−262087)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】