説明

束線シートおよび束線シートを用いた機器

【課題】機器の部品の外形に対し斜め方向に配設されるケーブルを安定して固定することができる束線シートを提供する。
【解決手段】一方の面に接着層(7)を設けたシート状の基部(1)からなり、前記基部(1)の長手方向に延びる一対の長辺部からなるスリット(4)を形成して、前記スリット(4)の内側をケーブル固定部(2)、前記スリット(4)の外側を周囲固定部(3)とし、前記スリット(4)の一対の長辺部の先端同士を結ぶ線(L1)と前記ケーブル固定部(2)の長手方向がなす角を直角以外の角度とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを固定する束線シートおよび束線シートを用いた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
機器に組み込まれたワイヤーハーネス等のケーブルを粘着テープでプリント基板などの機器の部品に固定することが行われている。
この種の技術として、特許文献1はケーブルクランパを開示している。このケーブルクランパは、基端部と一体形成されたクランプ部が形成され、このクランプ部は折り曲げられてケーブルを把持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−32860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着テープでは、貼り付ける位置が定めにくいため、固定されるケーブルの位置が個々の製品ごとに安定しない。特許文献1のケーブルクランパでは、ケーブルクランパの取り付け位置を定めることで、ケーブルの位置は定まる。
ところが、ケーブルを固定する際に、機器の部品の外形線に対しケーブルを平行に固定すると他の電気部品等と干渉してしまうような場合、干渉しないように、プリント基板等の機器の部品の外形線に対しケーブルを斜め方向に配設されるように固定したい場合がある。
しかし、特許文献1では、固定されるケーブルがクランプ部を斜めに横切るような状態で固定する場合に安定して固定するための考慮が特になされていない。
図6のように、クランプ部30が基端部40から一様に延びる、すなわちクランプ部30の上辺30aと下辺30bの長さが等しいクランプ部30の形状では、ケーブル20がクランプ部30を斜めに横切るように固定した場合、クランプ部30の根元部分の一方に隙間Aが生じ、固定後もケーブル20の位置が安定せず、ケーブル20を安定して固定できない場合がある。
図示しないが、単純な矩形状にカットした粘着テープをケーブルに対して直交するように貼れば、上記した隙間Aによる問題はないように思われるが、この場合、前記粘着テープは貼り付けられる機器の部品の外形に対して斜めに貼られることになり、ケーブルが機器の部品の外形に対し平行に固定されるとき以上に粘着テープの位置決めが困難となる。
【0005】
本発明の目的は、機器の部品の外形に対し斜め方向に配設されるケーブルを安定して固定することができる束線シートおよび束線シートを用いた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1)〜6)のいずれかの構成を有する。
1) 一方の面に接着層(7)を設けたシート状の基部(1)からなり、前記基部(1)の長手方向に延びる一対の長辺部からなるスリット(4)を形成して、前記スリット(4)の一対の長辺部に挟まれた部分をケーブル固定部(2)、前記スリット(4)の一対の長辺部の外側を周囲固定部(3)とし、前記スリット(4)の一対の長辺部の先端同士を結ぶ直線(L1)と前記ケーブル固定部(2)の長手方向がなす角を直角以外の角度としたことを特徴とする束線シート(10)である。
2) 前記スリット(4)は、前記一対の長辺部の一端同士を繋ぐ短辺部を有したコの字状としたことを特徴とする1)に記載の束線シート(10)である。
3) 前記周囲固定部(3)の少なくとも一部を前記ケーブル固定部(2)の長さ方向に平行に延びる直線(L2)に形成した位置決め部(5)としたことを特徴とする1)または2)に記載の束線シートである。
4) 前記接着層(7)は両面粘着材(9)からなり、前記ケーブル固定部(2)と対応する部分と前記周囲固定部(3)と対応する部分の間で分断されていることを特徴とする1)乃至3)いずれかに記載の束線シートである。
5) 前記両面粘着材(9)は、前記分断された部分において隙間を空けて前記基部(1)に貼付されたことを特徴とする4)に記載の束線シートである。
6) ケーブル(20)が固定される部品(P)を有する機器において、前記機器の部品(P)に前記ケーブル(20)を固定する1)乃至5)いずれかの束線シート(10)を備えることを特徴とする束線シートを用いた電子機器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機器の部品の外形に対し斜め方向に配設されるケーブルを安定して固定することができる束線シートおよび束線シートを用いた機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の束線シートの正面図である。(第1実施形態)
【図2】図2は、図1のS1−S1線における断面図である。
【図3】図3は、本発明の束線シートの正面図である。(第2実施形態)
【図4】図4は、本発明の束線シートの使用状態を示す図である。(第1実施形態)
【図5】図5は、本発明の束線シートの製造過程の状態を示す図である。
【図6】図6は、従来の束線シートの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図5を用いて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である束線シート10の正面図である。
束線シート10は、電子機器において、例えばUSB接続ケーブルなどの電気配線として用いられるワイヤーハーネス等のケーブルを、不用意に動かないように電子機器のプリント基板P(図4参照)やサブケースなどの部品に固定するものである。
本発明の束線シート10を構成する基部1の材料は、シート状であれば、樹脂、ゴム、紙、金属など特に限定されないが、ここでは、安価で切れにくいことからPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を用いている。
【0011】
束線シート10は、外形が略矩形で、コの字状のスリット4が形成され、このスリット4の内側(後述する上辺2aと下辺2bで挟まれる部分)がケーブル20を固定するケーブル固定部2、スリット4の外側部分が周囲固定部3となる。ケーブル固定部2は図1のように短冊状の舌片部形状となる。
ケーブル固定部2は、上辺2aの長さLaと、下辺2bの長さLbが異なっている。
また、本実施形態では上辺2aと下辺2bの一端同士を繋ぐ短辺部も周囲固定部3を構成している。
コの字状のスリット4の両端部となるケーブル固定部2の根元部分は、ケーブル固定時の応力集中を避けるためにスリット4の幅よりも大きな直径の円形孔6としてある。
ケーブル固定部2と周囲固定部3は2つの円形孔6を結ぶ直線L1の位置で一体となるように連結している。
【0012】
ケーブル固定部2の上辺2aの長さLaと、下辺2bの長さLbを異ならせているので、ケーブル固定部2の根元部に形成された2つの円形孔6の中心間を結ぶ直線L1とケーブル固定部2の長手方向とがなす角θは直角にならない。なす角θをプリント基板の外形線に対して固定するケーブル20の角度と一致するようにケーブル固定部2を形成することで、ケーブル固定部2の根元部側へ寄せるようにしてケーブル20を固定すると、ケーブル20をプリント基板の外形に対して所定の角度θで傾いた状態で安定して固定することができる。
このため、電子機器の組み立て工程においてケーブルの位置を容易に安定させることができ、組み立て工程の安定化に貢献することができる。
【0013】
図1に示すように、束線シート10の右下部分に、端部がケーブル固定部1の長手方向に延びる直線L2を外形とした張り出し部である位置決め部5が設けられている。
位置決め部5は束線シート10を機器の部品として例えばプリント基板Pに貼り付ける際に、プリント基板Pの外形に沿って精度よく貼り付けをするための位置あわせに用いられるもので、位置決め部5をプリント基板Pの外形に合わせた状態でプリント基板Pに貼り付けることで束線シート10により固定されるケーブル20の位置を正確に位置決めすることができる。
【0014】
次に、束線シート10に貼付される両面粘着シート9について説明する。
図2は、図1のS1−S1断面図で、束線シート10の裏面に接着層7(7a、7b、7c)と剥離紙8(8a、8b、8c)からなる両面粘着シート9が貼り着けられている。
両面粘着シート8はケーブル固定部2と周囲固定部3の間の部分Eで間隔Dを空けて分断している。
このため、周囲固定部3に対応する部分の両面粘着シート9の剥離紙8cを剥がしてもケーブル固定部2に対応する部分の両面粘着シート9の剥離紙8bは一緒に剥がれない。
【0015】
図5は束線シート10の製造過程において、基部1の材料となるPET樹脂シート11に両面粘着シート9a、9bが貼り付けられた状態を両面粘着シート9a、9bが貼り付けられた側から見た図である。
なお、複数の束線シート10が型抜きする位置を破線で示している。
【0016】
束線シート10の製造工程において、材料のPET樹脂板11に複数の束線シート10を並列して型抜きする前に2枚の両面粘着シート9a、9bを複数の束線シート10を型抜きする位置を横断するように貼り付ける。
このとき、2枚の両面粘着シート9a、9bは重ならないように隙間Dが空けられている。
このため、完成した束線シート10は、周囲固定部3に対応する部分E1、E3おいても両面粘着シート9が分断されている。
【0017】
PET樹脂板11は平面が理想的であるが、反り傾向がある場合、両面粘着シート9を貼付する面を凹面側となるようにすることが好ましい。このようにすると貼り付けた後に束線シート10がプリント基板Pなどの被貼付部材から剥がれにくくすることができる。
スリット4は、線状の切り込みで形成しても実施できるが、本実施形態のように幅を有して形成することで、周囲固定部3に対応する部分の剥離紙8aを剥がす際に引っ掛かってケーブル固定部1に対応する部分の剥離紙8bが一緒に剥がれてしまうことを防止できる。
なお、スリット4を形成するために用いられる刃型は、幅が狭すぎると割れやすくなる。そこで、スリット4の幅は刃型の強度が十分確保できる範囲で細く形成する。ここではスリットの幅を1.5ミリメートルで形成した。
【0018】
図1において、周囲固定部3の幅Bは、剥離紙8aを剥がすときや周囲固定部3をプリント基板Pに貼り付けるときに簡単に切れない程度の幅とする。ここでは3ミリメートルとした。
ケーブル固定部2は、固定するケーブル20が安定して保持される程度の幅とする。直径5ミリメートル程度のケーブル20を2本束ねて固定することを想定して、ここでは11.3ミリメートルとした。
実施例ではスリット4はコの字状に直線に形成されているが、これに限定されるものではなく、ケーブル固定部2の外形が曲線で構成されるようにスリット4の上辺2a、下辺2bなどを曲線に構成してもよい。
【0019】
束線シート10の大きさは、ケーブル20を所定の強度で保持することができれば小さい方が貼り付けの占有面積を小さくできるので好ましいが大きさは特に限定されない。実施例では、縦の長さVを25ミリメートル、横の長さHを50ミリメートルで作成した。
本実施形態においては、電子機器の部品と束線シート10を接着する接着層7として両面粘着シート9を用いたが、面ファスナーを用いてもよい。
本実施形態のように束線シート10の材料として透明のPET樹脂を用いると固定後に、ケーブル固定部2で覆われた部分のケーブル20も視認することができ、他の部材との干渉の確認が容易になる。
【0020】
次に第1実施形態の束線シート10の使用方法について説明する。
図4は第1実施形態の使用状態を示す。
両面粘着シート9の周囲固定部3に対応する位置に貼り付けられた剥離紙8a、8cを剥がし、位置決め部5を貼り付ける対象となるプリント基板Pなどの端面と一致するように位置合わせして周囲固定部3を接着層7a、7cでプリント基板Pに貼り付ける。
次にケーブル固定部2を持ち上げてケーブル固定部2の裏面に貼付された剥離紙8bを剥がす。
ケーブル20を周囲固定部3の上側で且つケーブル固定部2の下側に通し、ケーブル20をケーブル固定部2の根元部側に寄せた状態でケーブル20をケーブル固定部2裏面側の接着層7bで固定する。ケーブル固定部2の先端部は、周囲固定部2の間に形成された隙間部分に貼り付けて固定する。
【0021】
ケーブル20はケーブル固定部2の根元部に隙間無く固定されるので、機器の部品の外形に対して斜め方向に安定して配設される。
【0022】
(第2実施形態)
次に、図3を参照しつつ、本発明の第2実施形態を説明する。ここでは、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を説明し重複する説明は省略する。図3に示すように第2実施形態の束線シート12は、第1実施形態のケーブル固定部2の先端部の外側に位置する上下方向に延びる周囲固定部3を削除した形状をしており、一対の周囲固定部44a、44bがそれぞれ短冊状に構成されている。このようにすることで、束線シート12が貼り付けられる機器の上面が例えば階段状に高さが異なっているような場合でも、上側の周囲固定部44aと下側の周囲固定部44bを個別に貼り付けることができるため扱いやすくなる。
なお、第1実施例と同様にケーブル固定部21の根元を結ぶ線L4と束線シート12の長手方向の直線L3がなす角をθをとすることが要件であり、上側の周囲固定部44aと下側の周囲固定部44bの長さは同じでも構わない。この場合、周囲固定部44aと周囲固定部44bの先端位置は、束線シート11の長手方向で異なることになる。
【0023】
第2実施形態の束線シート11の使用方法も第1実施形態の束線シートと同様である。
【符号の説明】
【0024】
1 基部
2 ケーブル固定部
3 周囲固定部
4 スリット
5 位置決め部
6 円形孔
7 接着層
8 剥離紙
9 両面粘着シート
10、12 束線シート
20 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に接着層を設けたシート状の基部からなり、
前記基部の長手方向に延びる一対の長辺部を含むスリットを形成して、
前記スリットの一対の長辺部に挟まれた部分をケーブル固定部、前記スリットの一対の長辺部の外側を周囲固定部とし、前記スリットの一対の長辺部の先端同士を結ぶ直線と前記ケーブル固定部の長手方向がなす角を直角以外の角度としたことを特徴とする束線シート。
【請求項2】
前記スリットは、前記一対の長辺部の一端同士を繋ぐ短辺部を有したコの字状としたことを特徴とする請求項1記載の束線シート。
【請求項3】
前記周囲固定部の少なくとも一部を前記ケーブル固定部の長さ方向に平行に延びる直線に形成した位置決め部としたことを特徴とする請求項1または2記載の束線シート。
【請求項4】
前記接着層は両面粘着材からなり、前記ケーブル固定部と対応する部分と前記周囲固定部と対応する部分の間で分断されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の束線シート。
【請求項5】
前記両面粘着材は、前記分断された部分において隙間を空けて前記基部に貼付されたことを特徴とする請求項4記載の束線シート。
【請求項6】
ケーブルが固定される部品を有する機器において、
前記機器の部品に前記ケーブルを固定する請求項1乃至5いずれか1項に記載の束線シートを備えることを特徴とする束線シートを用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158689(P2012−158689A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19580(P2011−19580)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】