説明

杭の動的水平載荷試験方法及び動的水平載荷試験装置

【課題】重錘とレールを用いた動的水平載荷試験において、少人数で試験を行うことができ、コンパクトな装置で大きな加振力が得られ、打撃力の調整も可能な杭の動的水平載荷試験方法・装置を提供する。
【解決手段】杭頭部2に向けてレール12を設置し、レール12の杭頭部2から遠ざかる後側に、動力装置としてのウインチ14を設置し、重錘13に接続したワイヤーロープ15をウインチ14で巻き取ることにより重錘13をレール12に沿って所定の速度で牽引移動させ、杭頭部2に重錘13を衝突させて加振する。杭頭部2に設けた緩衝コイルばねを備えた荷重検出器で衝撃荷重を計測し、杭頭部2に接続した変位検出器で杭1の水平変位を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭に水平方向の動的荷重を与える杭の水平載荷試験方法及び水平載荷試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭の水平載荷試験方法として、杭頭に静的荷重を与える試験方法があり、荷重と変位の関係より地盤抵抗などの地盤パラメータを求めるものである。また、この試験方法には、載荷方向の違いにより正負交番載荷と一方向載荷に分類され、載荷時間の違いにより段階載荷と連続載荷に分類される。
【0003】
図6は、静的水平載荷試験(正負交番載荷)の一例を示したものであり、試験杭90の両側に加力装置として油圧ジャッキ91を配置し、反力杭92に反力を取って試験杭90に水平方向の静的荷重を加える。H形鋼材93とPC鋼棒94からなる反力装置を介して油圧ジャッキ91を2本の反力杭92に接続している。試験杭90と油圧ジャッキ91との間にはロードセル95が配置される。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005―315611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の静的水平載荷試験では、加力装置として油圧ジャッキを用いるため、反力装置が必要であり、この反力装置が問題点となっていた。即ち、(a) 試験結果に反力装置の影響が混入することが避けられない、(b)反力装置が必要であることから、試験装置が大掛かりになり、試験の準備に日数が掛かり、経費も高価となる、などの問題があった。
【0006】
このような静的水平載荷試験の問題点を解消する方法として、鐘突き方式の動的水平加振方法が考えられているが、簡易な支持架台の上部水平梁材から重錘をワイヤ等で揺動可能に吊下げ、振り上げた重錘を発泡ポリウレタン等の緩衝材を介して杭頭に衝突させる簡易な装置であり、細い杭や木杭などに適用されるものである。
【0007】
また、本出願人は、上記の静的水平載荷試験の問題点を解消すべく、反力装置が不要で、かつ、実験時間が短く、精度の良い水平載荷試験を低コストで実施することができ、さらに重錘方式の動的水平載荷重試験において比較的簡易な試験装置により大径の鋼管杭やコンクリート杭などの動的水平載荷試験も実施することができる杭の動的水平載荷試験方法及び動的水平載荷試験装置を既に出願している(特願2005−335844等)。この動的水平載荷試験は、杭に向けて架設または地上に設置したレールに沿って重錘を人力または動力を用いて移動させ、重錘を杭頭部に衝突させて水平方向の動的荷重を加えるものである。
【0008】
しかし、このような動的水平載荷試験方法・装置でも、人が重錘を押してレールに沿って移動させる場合、次のような課題があった。即ち、(1)試験に大勢の人員が必要となる、(2)大きな加振を得るのに長いレールが必要となる、(3)大きな加振が得られない、(4)試験場所に広いスペースが必要であり、地盤を掘削する面積も大きくなる、(5)打撃力の微調整が難しい、(6)人が重錘を押すので、怪我などの心配がある、(7)人が杭付近を走るので、地盤が振動し、計測器(加速度計など)にノイズが入る、(8) 人が杭近辺の地盤に載るので、杭を拘束することになり、杭の振動に影響を与える、(9)装置が大掛かりとなる、(10)運搬費が高くなる、(11)組み立てに時間がかかる、(12)見栄えが悪い。
【0009】
この発明は、このような課題を解消すべくなされたもので、重錘とレールを用いた動的水平載荷試験において、少人数で試験を行うことができ、コンパクトな装置で大きな加振力が得られ、打撃力の調整も可能な動的水平載荷試験方法及び動的水平載荷試験装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の水平載荷試験方法であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールに沿って移動可能に設置した重錘を、動力装置による牽引により杭に向けて移動させ、重錘を杭頭部に衝突させて水平方向の動的荷重を加えることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法である。
【0011】
本発明は、杭(鋼管杭、H鋼杭、コンクリート杭、鋼コンクリート合成杭など)の水平載荷試験において、従来の油圧ジャッキによる静的水平載荷試験に代えて重錘による動的水平載荷試験とし、さらに鐘突き方式に代えて地上レール方式または懸垂型モノレール方式により重錘を支持し、ウインチ等の動力装置による牽引により重錘を水平移動させ、杭頭部に衝突させて加振するものである(図1参照)。
【0012】
従来の静的水平載荷試験における反力装置が不要となり、試験結果に反力装置の影響が混入することがなく、また簡易な試験装置とすることができるため、実験準備が容易で試験を短時間で行うことができ、精度の良い水平載荷試験を低コストで実施することができる。
【0013】
また、レール方式であるため、鐘突き方式などに比べ、以下の利点がある。(a)レールに沿って移動させるため、重い重錘を容易に加力することができる、(b)位置エネルギーや弾性エネルギーや圧力エネルギーを利用することにより、重錘の衝撃速度を容易に大きくすることができる、(c)レールの断面を大きくすることにより、重錘の重さを容易に大きくできる、(d)重錘の衝突後の反動を簡易な装置等で制御できる、(e)レールを設置するだけでよいため、移動式とすることも容易である、など。
【0014】
さらに、レール方式で重錘を人力で移動させる場合に比べて、以下の利点がある。(1)試験は少人数で可能となる、(2)大きな加振を得るのに、短いレールで可能になる、(3)大きな加振が得られる、(4)試験場所が狭くても試験が可能であり、また施工上埋設されている杭頭部を露出させるための地盤を掘削する面積も少なくて済む、(5)打撃力の微調整が可能である、(6)人が重錘を押さないので、安全であり、(7)人が杭付近に近寄らないので、人の走行で地盤が振動することがなく、計測器(加速度計など)にノイズが入らない、(8) 人が杭近辺の地盤に載らないので、杭を拘束せず、杭の振動に影響を与えない、(9)装置がコンパクトになる、(10)運搬費が安くなる、(11)組み立てに時間がかからない、(12)見栄えがよい、など。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の動的水平載荷試験方法において、重錘が衝突する杭頭部外面の衝突点に設けた荷重検出器により衝撃荷重を計測し、変位検出器により杭頭部の変位量を計測することを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法である。変位検出器には、機械式変位計、光学式等の非接触式変位計、加速度計、速度計などを用いることができる。機械式変位計を用いる場合、杭頭部から重錘の反対側に向かって距離をおいて設置された不動梁に基部を取付け、先端を杭頭部に取付ける。
【0016】
例えば質量2トンの重錘を杭頭部に衝突させ、ロードセルを内蔵した荷重検出器で衝撃荷重を計測し、杭頭部と不動梁とを連結する水平配置のシリンダ型の伸縮部材とその伸縮ロッドの伸縮量を検出する変位計からなる変位検出器により杭頭部の変位量を計測する(図4参照)。一例として、質量2トンの重錘に対して、重錘の載荷継続時間は約70msec、変位量は動的荷重約70kNで約15mmの結果が得られた。不動梁は、杭頭部から重錘とは反対側に向かって十分な距離をおいてレールと直交するように配置し、杭や杭間の梁で支持した梁であり、正確な変位計測が可能となる。この変位計測は杭頭部に取付けた加速度計や速度計でも可能であり、2回積分や1回積分により変位量を求めることができるが、変位波形の低周波数成分が小さく評価されるおそれがあるため、上記の変位検出器が好ましい。なお、変位計による変位波形には高周波数のノイズが広帯域にわたって含まれるため、ハイカットフィルターを用いて除去する。なお、光学式等の非接触式変位計を用いれば、ノイズの一因と考えられる不動梁は不要になる。
【0017】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の動的水平載荷試験方法において、荷重検出器は、杭頭部外面に配置したロードセルと、このロードセルと重錘の間で衝撃を吸収し、かつ、ロードセルに重錘による荷重を伝達する緩衝用治具とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法である。
【0018】
ロードセルと重錘との間に内管に対して重錘移動方向にスライドする外管を設け、ロードセルと外管の蓋体との間にコイルばねや皿ばね等のばね部材を設け、このばね部材の圧縮で重錘の衝撃を吸収する。ロードセル側と外管の蓋体側にそれぞれ硬質プラスチック等のクッション材とストッパーを兼ねる荷重伝達部材を所定のギャップをおいて取付け、衝撃を緩和しつつ荷重を伝達する(図5参照)。このような緩衝用治具を設けることにより、衝撃荷重を円滑に杭頭部に伝達することができる。また、緩衝材の効果が大きい場合には動的な載荷時間を伸長させることができる。
【0019】
本発明の請求項4に係る発明は、打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、重錘に接続されたワイヤーロープを巻き取って重錘を牽引移動させる動力装置を備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置である。
【0020】
これは、ウインチ等の動力装置を用いた牽引方式の動的水平載荷試験装置である(図1参照)。ウインチは、レールの杭頭部から遠ざかる後側に設置し、杭頭部の近傍の前側に定滑車を配置し、重錘には動滑車を配置し、ワイヤーロープをウインチで巻き取ることにより、杭頭部に接近する方向に牽引移動させるのが,装置がコンパクトになるため好ましい。また、これに限らず、ウインチ等の動力装置は、杭頭部を挟んで重錘の反対側などに配置することもできる。
【0021】
本発明の請求項5は、請求項4に記載の動的水平載荷試験装置において、杭頭部の手前で重錘を検出して動力装置の電源を切り、ワイヤーロープの巻き取りを停止するように構成されていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置である。
【0022】
レールの杭頭部の手前にリミットスイッチ等のセンサーを配置し、このセンサーの作動により,重錘が杭頭部に衝突する前にウインチ等の動力装置の電源を切り、クラッチ等でドラムを空転させ、ワイヤーロープの巻き取りを停止させ、動力装置への負荷・ワイヤーロープの切断を防止する。
【0023】
本発明においては、重錘の下部に取付けた移動用治具によりレール上を移動させる地上レール方式あるいはレール上を移動する移動用治具を介して重錘をレールから吊下げる懸垂型モノレール方式を採用することができる。レールは1本でもよいし、2本以上でもよい。移動用治具には、レール上を転動する車輪方式、レール上を滑動するスライダー方式などを用いることができる。
【0024】
移動用治具に車輪方式を用いた場合、車輪にラチェットとラチェット爪等による逆転防止機構を設ければ、重錘が衝突後に反動で戻ってくるのを防止することができる。これにより、重錘による動的載荷時間を伸長させること、動的荷重を大きくすること、試験時の危険を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0026】
(1) レールに沿って重錘を水平移動させ、杭頭部に衝突させて加振するため、従来の静的水平載荷試験における反力装置が不要となり、試験結果に反力装置の影響が混入することがなく、また簡易な試験装置とすることができるため、実験準備が容易で試験を短時間で行うことができ、精度の良い水平載荷試験を低コストで実施することができる。
【0027】
(2) レール方式であるため、重い重錘を容易に加力することができ、ウインチ等の動力装置を用いた牽引方式により、重錘の衝撃速度を容易に大きくすることができ、レールの断面を大きくすることで重錘の重さを容易に大きくでき、重錘の衝突後の反動を簡易な装置等で制御でき、比較的簡易な試験装置により大径の鋼管杭やコンクリート杭などの動的水平載荷試験を実施することができる。
【0028】
(3) 反力装置は一般的に杭を用いているが、本発明では反力装置が不要となることにより杭1本でも水平載荷試験が可能となり、より低コストの水平載荷試験が可能となる。
【0029】
(4) ウインチ等の動力装置を用いた牽引方式により重錘を水平移動させ、杭頭部に衝突させて加振するため、少人数で試験を行うことができ、コンパクトな装置で大きな加振力が得られ、打撃力の調整も可能となる。
【0030】
(5) 人が重錘を押さないので、安全であり、また、重錘が杭頭部に衝突する前に動力装置の電源を切ることで、動力装置への負荷・ワイヤーロープの切断を防止することができ、より安全な水平載置試験が可能となる。
【0031】
(6)杭頭部の衝突点に設置する荷重検出器をロードセルとコイルばね等からなる緩衝用治具とから構成することにより、重錘による衝撃荷重を円滑に杭頭部に伝達することができる。また、緩衝材の効果が大きい場合には動的な載荷時間を伸長させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、鋼管杭の水平載荷試験に適用した場合であり、また地上レール方式の重錘による動的水平載荷試験の例である。図1は、本発明のウインチ牽引タイプの動的水平載荷試験の一例を示す平面図と側面図である。図2は、そのウインチフレーム部分を示す立面図と平面図と側面図である。図3は、その重錘部分を示す鉛直断面図と平面図と側面図である。
【0033】
図1に示すように、構造物の基礎地盤には鋼管杭1が縦方向及び横方向に間隔をおいて複数本打設されており、杭頭部2が地上に所定の高さで突出している。本発明では、このような杭頭部2に対して、動力装置による牽引移動タイプで重錘方式・レール方式の動的水平載荷試験装置10により動的水平載荷試験を実施する。
【0034】
図1の実施形態において、動的水平載荷試験装置10は、杭1に向けて地上に設置された鋼材からなる装置架台11を兼ねるレール12と、このレール12に沿って移動可能な重錘13とから構成され、レール12の杭頭部2から遠ざかる後側に、動力装置としてのウインチ14を設置し、重錘13に接続したワイヤーロープ15をウインチ14で巻き取ることにより重錘13をレール12に沿って所定の速度で牽引移動させ、杭頭部2に重錘13を衝突させて加振する動的水平載荷試験を行う。
【0035】
レール12は装置架台を兼ねるH形鋼等の鋼材を用い、その杭頭部2側にレールに直交する滑車固定梁16を設け、この滑車固定梁16の上に定滑車17を、杭頭部2を挟んで左右一対で配置し、重錘13には動滑車18を設け、杭頭部2の片側に設置した装置により、重錘13を牽引移動させて杭頭部2に衝突させることができるようにしている。
【0036】
即ち、ウインチ14のドラム14bから繰り出したワイヤーロープ15を滑車固定梁16上の片側の定滑車17に巻き掛け、重錘13の動滑車18に巻き掛け、次いで滑車固定梁16上のもう片側の定滑車17に巻き掛け、ワイヤーロープ15の先端をワイヤーロープ固定治具19により滑車固定梁16に固定し、ワイヤーロープ15をドラム14bに巻き取ることにより重錘13を牽引移動できるようにしている。このような滑車17、18の配置によりワイヤーロープ15を杭頭部2と重錘13の間を避けて配置でき、重錘13の前面を杭頭部2に衝突させることができる。動滑車18は重錘13の下面に前方に突出しないように取り付けられる。なお、定滑車17及び動滑車18には、ワイヤーロープ15の脱輪を防止するための保護カバー17a、18aが設けられている(図2、図3参照)。
【0037】
ウインチ14は、図1、図2に示すように、駆動モータ14aとドラム14bから構成され、レール12に接続された支持フレーム20上に設置される。なお、ウインチ14は、重錘13と同じ側に配置されているが、これに限らず、例えば杭頭部2を挟んで重錘13の反対側に配置することもできる。
【0038】
重錘13は、図3に示すように、レール12上を転動する車輪21を有する走行台車22上に固定されている。走行台車22の走行方向の前後に配置される車輪21は、フランジ付きの車輪であり、レール12を左右両側から挟むように左右一対で配置され、レール12からの脱輪が防止される。また、重錘13の下部の左右両側には、車輪21を覆う保護カバー23が設けられている。
【0039】
以上のような構成において、先ずウインチ14のドラム14bを、ワイヤーロープ15を繰り出す方向に回転させることで、ワイヤーロープ15を弛め、重錘13をレール12上におけるウインチ14の近くまで引き寄せ、この状態でウインチ14のドラム14bを固定する(図1参照)。この状態から、ウインチ14の固定を解除し、ウインチ14のドラム14bでワイヤーロープ15を巻き取り、重錘13を、レール12上を牽引移動させ、杭頭部2に衝突させ、杭頭部2に載荷する(図1参照)。重錘13の走行速度は、ウインチ14の巻き取り速度を適宜設定することで、調整することができる。
【0040】
ここで、レール12の杭頭部2の手前にリミットスイッチ等のセンサーを配置して衝突直前の重錘13の位置を検出し、このセンサーの作動により,重錘が杭頭部に衝突する前にウインチ14の電源を切り、クラッチ等でドラム14bを空転させ、ワイヤーロープ15の巻き取りを停止させ、ウインチ14への負荷・ワイヤーロープ15の切断を防止する。
【0041】
図4に示すように、杭頭部2には、水平荷重の作用高さHが設定されており、この作用高さレベルにおいて、ロードセルを用いた荷重検出器30が杭頭部2に設けられ、重錘による動的荷重(衝撃荷重)が測定される。移動直角方向の左右両側には変位計を用いた変位検出器31が配置され、杭の水平変位が測定される。その他、杭頭部2の移動直角方向の左右両側の側面には、加速度計(水平加速度)・ひずみゲージ(せん断)32が取り付けられ、杭の水平加速度、せん断ひずみが測定される。また、杭頭部2の移動方向の前面(重錘側)・後面(反重錘側)、重錘13の左右両側に、加速度計33が取り付けられ、杭の水平加速度・鉛直加速度、重錘の水平加速度が測定される。
【0042】
重錘13の円柱中心軸は、作用高さレベルに一致するように高さ調整され、重錘13の前面中心が荷重検出器30に衝突する。図5は、緩衝用治具を備えた荷重検出器の一例を示す平面図と水平断面図であり、この荷重検出器30は、動的荷重を測定するためのロードセル40を杭頭部2の外面に接着し、このロードセル40の重錘側にコイルばねを内蔵した緩衝用治具41を設け、重錘13による衝撃荷重を円滑に杭頭部2に伝達できる構造とされている。
【0043】
緩衝用治具41は、ロードセル40の円筒形ケーシングの外周に内管42を嵌め込み、この内管42の外周に外管43を軸方向にスライド可能に嵌め込み、ロードセル40と外管43の蓋体44との間にコイルばね45を配置し、コイルばね45の圧縮変形により衝撃を吸収するように構成されている。さらに、ロードセル40の重錘側と蓋体44の反重錘側にそれぞれクッション材とストッパーを兼ねる荷重伝達部材46、47を間に所定のギャップが形成されるように取付け、この荷重伝達部材46、47の外側にコイルばね45を配置する。この荷重伝達部材46、47は、硬い金属よりも硬質プラスチック等の比較的クッション作用のある材料が好ましい。また、蓋体44の重錘側の面には、ラバーを表面に貼り付けた鋼板48が取付けられている。ラバーは重錘に取付けてもよい。なお、杭頭部2の外面にはブラケット等の支持金具(図示せず)を取付けておき、この上に荷重検出器30を載置する。
【0044】
変位検出器31は、図4に示すように、変位計50とシリンダ型の伸縮部材51からなる。杭頭部2の側面には取付片52が固定されており、この取付片52に伸縮部材51の伸縮ロッド51aの先端が取付けられ、レール11に直交する梁27にシリンダ本体51bの基端部が固定される。作用高さレベルに水平に配置された伸縮部材51の下に変位計50が水平に配置され、変位計50のロッド先端が伸縮ロッド51aに接続され、杭の変位が計測される。変位計設置用の梁27を試験杭から十分に離れた位置に設置し、かつ、両端をH形鋼等の大きい断面の杭や杭間の梁で支持することにより、変位計50が設置される梁27を不動梁とすることができ、正確な変位計測を行うことができる。
【0045】
試験杭の変位計測は、上記の変位計50のほか、試験杭に取付けた加速度計32で行うこともできる。加速度を2回積分して変位を求める。なお、変位計50から求めた変位波形には高周波数のノイズが広帯域にわたって生じており、一方、加速度計32から求めた変位波形には高周波数のノイズがない。この高周波数のノイズは、変位計50の取付構造や固定部材の振動などが原因と推定され、また加速度計32から得られる変位波形は、変位計50から得られる変位波形と比べて低周波数領域が小さく評価されている。以上の2点から、変位計50を用い、高周波数成分をハイカットフィルターにより除去するのが好ましい。なお、不動梁のいらない光学式等の非接触式変位計を用いることもできる。
【0046】
なお、図示例は、重錘の下部に取付けた移動用治具によりレール上を移動させる地上レール方式を示したが、レール上を移動する移動用治具を介して重錘をレールから吊下げる懸垂型モノレール方式にも適用できる。いずれの方式の場合も、レールは1本でもよいし、2本以上でもよい。また、移動用治具は、レール上を転動する車輪方式を示したが、レール上を滑動するスライダー方式などを用いることができる。さらに、レールは水平に限らず、例えば杭頭部に向かって下り勾配で傾斜させることもできる。
【0047】
なお、以上は鋼管杭に適用した場合について説明したが、コンクリート杭やその他の杭にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のウインチ牽引タイプの動的水平載荷試験の一例を示す平面図と側面図である。
【図2】図1のウインチフレーム部分を示す立面図と平面図と側面図である。
【図3】図1の重錘部分を示す鉛直断面図と平面図と側面図である。
【図4】本発明で用いる杭頭部の変位計測装置の一例であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】本発明で用いる緩衝用治具を備えた荷重検出器の一例であり、(a)は平面図、(b)は水平断面図である。
【図6】従来の静的水平載荷試験装置の一例であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…鋼管杭
2…杭頭部
10…動的水平載荷試験装置
11…装置架台
12…レール
13…重錘
14…ウインチ
14a…駆動モータ
14b…ドラム
15…ワイヤーロープ
16…滑車固定梁
17…定滑車
17a…保護カバー
18…動滑車
18a…保護カバー
19…ワイヤーロープ固定治具
20…支持フレーム
21…車輪
22…走行台車
23…保護カバー
27…変位計設置用の梁
30…荷重検出器
31…変位検出器
32…加速度計・ひずみゲージ(せん断)
33…加速度計
40…ロードセル
41…緩衝用治具
42…内管
43…外管
44…蓋体
45…コイルばね
46、47…荷重伝達部材
48…鋼板
50…変位計
51…伸縮部材
51a…伸縮ロッド
51b…シリンダ本体
52…取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の水平載荷試験方法であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールに沿って移動可能に設置した重錘を、動力装置による牽引により杭に向けて移動させ、重錘を杭頭部に衝突させて水平方向の動的荷重を加えることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の動的水平載荷試験方法において、重錘が衝突する杭頭部外面の衝突点に設けた荷重検出器により衝撃荷重を計測し、変位検出器により杭頭部の変位量を計測することを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法。
【請求項3】
請求項2に記載の動的水平載荷試験方法において、荷重検出器は、杭頭部外面に配置したロードセルと、このロードセルと重錘の間で衝撃を吸収し、かつ、ロードセルに重錘による荷重を伝達する緩衝用治具とを備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験方法。
【請求項4】
打設された杭の地上に突出する杭頭部に重錘により水平方向の動的荷重を加えて杭の変形特性を求める杭の動的水平載荷試験装置であり、
杭頭部に向けて架設または地上に設置したレールと、前記レールに移動可能に支持された重錘と、重錘に接続されたワイヤーロープを巻き取って重錘を牽引移動させる動力装置を備えていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動的水平載荷試験装置において、杭頭部の手前で重錘を検出して動力装置の電源を切り、ワイヤーロープの巻き取りを停止するように構成されていることを特徴とする杭の動的水平載荷試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−286680(P2008−286680A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132832(P2007−132832)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【Fターム(参考)】