説明

杭の急速載荷試験法

【課題】
杭の支持力判定に必要な信頼性の高いデータを短い時間でかつ経済的に得ることのできる杭の急速載荷試験法を提供する。
【解決手段】
杭1の杭頭に重錘2を落下させる。重錘2はその落下高さを段階的に低い方から高い方に変え、各高さから落下させる。そのときの杭頭の加速度の経時変化を杭頭に設置した加速度計4によって求める。杭頭の変位は加速度計4によって求めた加速度の積分値として求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭に重錘を落下させ、当該重錘の荷重と前記杭頭の動的変位との関係から杭の支持力を求める杭の急速載荷試験法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、杭の載荷試験は、採用予定の杭を現地盤に打ち込み、その杭頭に載荷して、杭の荷重・変位量の関係などを測定し、支持力判定のデータを得る目的で行われる。
【0003】
この種の杭の載荷試験として、杭頭に段階的に静的荷重を長期間加え、その荷重と杭沈下量との関係を求める静的載荷試験と、杭頭に重錘を落下させ、その衝撃による杭の沈下量を測定する動的載荷試験が知られ、さらに最近では、杭頭に軟クッションを設置し、その上に重錘を落下させる急速載荷試験も実施されている。
【特許文献1】特開2002−303570号公報
【非特許文献1】地盤工学会基準 杭の鉛直載荷試験方法・同解説 第6編P.185〜P.190(社団法人 地盤工学会発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、静的載荷試験は、杭頭に荷重を長期間加えるため信頼性の高いデータを得ることが可能であるものの、反力杭や載荷桁などを必要として装置が非常に大掛かりなものとなり、また必要なデータを得るまで時間がかかる等の課題があった。
【0005】
一方、動的載荷試験は装置が簡単で、しかも載荷時間が5〜30msと非常に短いことから、静的載荷試験の欠点を補うことは可能であるものの、載荷時間が短く、衝撃などの影響もあってデータの信頼性に問題があった。また、装置のコストが高くつく等の課題もあった。
【0006】
さらに、急速載荷試験は(非特許文献1参照)、杭頭に軟クッションを介在して重錘を落下させることにより載荷時間を動的載荷試験の約10倍〜20倍に相当する30〜200msまで延長することで、短時間で静的載荷試験に近い比較的信頼性の高いデータを得ることが可能であるものの、落下させる重錘の重量や落下高によっては、重錘落下時の衝撃荷重に耐え得る適当なクッション材がなく、実施できない場合があった。
【0007】
また、動的載荷および急速載荷のいずれの試験も、重錘落下時の杭頭の沈下量を杭の近くに設置したレーザー変位計やPSD変位計などの計測器によって測定するため、重錘落下時の衝撃が計測器にも伝わり、計測結果の信頼性が損なわれるおそれがあった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、杭の支持力判定に必要な信頼性の高いデータを短時間で、かつ経済的に得ることのできる杭の急速載荷試験法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の杭の急速載荷試験法は、杭頭に重錘を落下させ、当該重錘による荷重と前記杭頭の変位との関係から杭の支持力を求める杭の急速載荷試験法において、前記重錘の落下高さを段階的に低い方から高い方に変え、各段階の重錘による荷重と前記杭頭の動的変位との関係から前記杭の支持力を求めることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の杭の急速載荷試験法は、請求項1記載の杭の急速載荷試験法において、杭頭の動的変位を、杭頭に設置した加速度計によって計測した加速度の積分値として求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、杭頭に落下させた重錘の荷重による杭頭の変位を、杭頭に重錘を落下させたときの杭頭の加速度の積分値として求めるため、特に大掛かりな装置を必要とせず、また重錘落下時の衝撃による影響もなく、非常に信頼性のデータを短時間で、経済的に得ることができる等の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の杭の急速載荷試験法の一例を示し、図において、符号1は載荷試験を行うために地中に打ち込まれた杭、2は杭1の杭頭に落下させる重
錘、3は載荷時間を調整するための軟クッション、そして、符号4は、杭1の杭頭に重錘2を落下させたときの杭頭の加速度を計測する加速度計である。
【0013】
このような構成において、試験方法について説明すると、杭1の杭頭に重錘2を落下させ、そのときの杭頭の加速度を杭頭に設置した加速度計4によって計測し、その積分値を重錘2の荷重による杭頭の変位として求める。
【0014】
この場合、重錘2の落下高を変えて重錘2の荷重(落下エネルギー)を段階的に変えながら、重錘2を複数回落下させ、そのときの各加速度の経時変化を加速度計によってそれぞれ計測し、その各積分値を重錘2の各荷重による杭頭の変位として求める。そして、この計測結果から杭1の静的荷重沈下特性を推定し、杭の支持力を求める。
【0015】
図3に図示したグラフは、従来の急速載荷試験(非特許文献1)による杭頭における荷重−変位量曲線を示したものであり、一度の急速載荷で変位を推定する急速載荷試験では、動的効果により変位量の最大値は荷重の最大値より遅れる傾向にある。
【0016】
そして、いわゆる除荷点(変位量の最大値)で地盤抵抗力は最大になり、地盤最大抵抗力と除荷点抵抗力が等しいとの理論をもとに杭の支持力が推定されているが、一度の急速載荷での試験結果には大きな誤差が生ずる可能性がある。
【0017】
図2に図示したグラフは、本発明の試験方法、すなわち、重錘2の落下高を変えて重錘2の荷重(落下エネルギー)を段階的に変えながら、重錘2を落下させたときの各加速度を加速度計4によって計測し、その各積分値を重錘2の荷重による杭頭の変位として求めた地盤抵抗沈下曲線を示したものである。
【0018】
図からわかるように、本発明の試験方法では、弾性的挙動範囲、あるいは降伏点を超えた範囲まで、数段階の測定を行って推定するため、誤差の少ない測定結果が得られる。また、加速時計による測定では、急速載荷時の地盤の振動による影響がないため、正確な測定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の多段階的急速載荷を行うことにより、非常に信頼性の高い杭の静的荷重沈下特性の推定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の杭の急速載荷試験法を示す説明図である。
【図2】本発明の杭の急速載荷試験法による地盤抵抗沈下曲線を示すグラフである。
【図3】従来の急速載荷試験による杭頭における荷重−変位量曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0021】
1 杭
2 重錘
3 クッション材
4 加速度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭に重錘を落下させ、当該重錘による荷重と前記杭頭の変位との関係から杭の支持力を求める杭の急速載荷試験法において、前記重錘の落下高さを段階的に低い方から高い方に変え、各段階の荷重と前記杭頭の動的変位との関係から前記杭の支持力を求めることを特徴とする杭の急速載荷試験法。
【請求項2】
前記動的変位は、杭頭に設置した加速度計によって計測した加速度の積分値として求めることを特徴とする請求項1記載の杭の急速載荷試験法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−234648(P2006−234648A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51046(P2005−51046)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(398021607)株式会社地盤試験所 (2)
【Fターム(参考)】