説明

杭検査方法及びセンサー圧着装置

【課題】杭長及び杭欠損部を精度よく検出し、杭の健全性をより正確に評価できる非破壊の杭検査方法及びセンサー圧着装置を提供する。
【解決手段】構造物12を支持する杭10に形成された少なくとも1つの検査孔14、16内の異なる深度に弾性波を受信する複数のセンサー18、20がセットされている。杭10に弾性波を発生させ、この弾性波が複数のセンサー18、20に到達する時間の差に基づいて、弾性波速度を算出し、複数のセンサー18、20に反射波が到達した時間を特定する。よって、杭10の長さや杭欠損部75を精度よく検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の健全性を非破壊で検査する杭検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭基礎建物の建替えで既存杭を再利用したり、杭基礎建物を基礎部で免震改修して既存杭を継続使用するときには、通常は建物の品質保証のために、再利用や継続使用をする既存杭に対して、健全性、耐久性等の現地調査を行う。
【0003】
一般に杭の健全性は、非破壊試験を用いて行われる。例えば支持杭であれば、杭長を計測することにより支持層まで支持杭が達しているかを確認し、さらにコンクリート欠損部の有無を調べることにより杭体健全性を確認する。
【0004】
杭長及び杭体健全性の調査は、杭頭が露出した状態で行われるが、地下水位が建物基礎の底面よりも高い場合には、排水処理を施す必要があり、コストがかかってしまう。
【0005】
ここで、図21に示すような、杭162に支持された基礎スラブ164の上面をハンマー160で打撃し、基礎スラブ164の上面に設けられたセンサー166が、この打撃波の反射波を受信する場合、1つのセンサー166では杭162の弾性波速度を測定できないので、弾性波速度の仮定値(例えば、3,500〜4,200m/s)を用いて、杭先端又は杭欠損部の深度を測定しなければならず、精度よく推定することが難しい。また、基礎スラブ164の下面からの反射波168が大きく、杭先端からの反射波170を特定することが困難である。
【0006】
図22は、基礎コンクリート172中に支持杭174の試験孔となる有底筒状のケーシング176を設け、杭頭部を打撃することにより、基礎コンクリート172の下面からの大きな反射波が測定に影響を及ぼさないようにした杭の非破壊試験方法である(特許文献1)。支持杭174の上端面には雌ネジ178が形成されており、ケーシング176の下端に形成された雄ネジ200と螺合している。ケーシング176の上方から挿入し、ケーシング176の内側底部に下端部を接触させた鉄筋棒202の上端部をハンマー204で打撃し、支持杭174に伝わった振動の応答をケーシング176の内側底部に設けられたセンサー206で受信する。そして、この値をもとに支持杭174の健全性を判定する。
【0007】
しかし、1つのセンサー206では支持杭174の弾性波速度を測定できないので、弾性波速度の仮定値を用いて距離を算出しなければならず、精度よく推定することが難しい。また、基礎コンクリート172からの反射波の影響で測定波形が乱れ、支持杭174の健全性判定のための十分な精度が得られない。
【0008】
また、図23は、地中深くに形成された杭体208の杭頭部から杭用孔210を通じて地上に突き出るように設けられた2本の金属部材212を用いた杭の健全性の検査方法である(特許文献2)。金属部材212の一方の上端部をハンマー216で打撃して加振を行い、他方の上端部に設けられた振動センサー214が杭体208に伝わった振動の応答を受信し、この値をもとに杭体208の損傷の有無や位置などを確認する。
【0009】
しかし、この検査方法を基礎スラブを残した状態の杭体に適用した場合、引用文献1と同様に、実際の弾性波速度を測定できず、また、基礎スラブの影響により測定波形が乱れるので、杭体損傷部までの深さを十分な精度で推定することができない。
【0010】
また、図24は、既存杭218の軸線方向に穿孔したコアボーリング孔220に挿入された超音波発信機222及び超音波受信機224によって、既存杭218の欠損やクラックの有無を確認する既存杭の健全性調査方法である(特許文献3)。この超音波発信機222及び超音波受信機224は、既存杭218の杭頭部上方から吊り下げられ、上下方向の移動及び軸線周りの回転が可能な吊り下げ具226に保持された保持部材228に、所定の間隔をあけて上下に取り付けられている。超音波発信機222から超音波を発信し、反射して戻ってくる反射波を超音波受信機224で受信し、発信から受信までの時間から距離を求める。そして、その距離と既存杭218の内壁232から外壁230までの実際の肉厚とを比較して既存杭218の周辺部に発生する欠損やクラックの有無を確認する。
【0011】
しかし、この調査方法は、杭の半径方向の反射波を受信する測定方法なので、杭先端からの鉛直方向の反射波の受信が必要となる杭長の測定はできない。
【特許文献1】特開平9−292375号公報
【特許文献2】特開平9−203727号公報
【特許文献3】特開2000−73389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は係る事実を考慮し、杭長及び杭欠損部を精度よく検出し、杭の健全性をより正確に評価できる非破壊の杭検査方法及びセンサー圧着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、構造物を支持する杭に弾性波を発生させ、前記杭を伝播する弾性波速度を測定して前記杭の長さや杭欠損部を検出する杭検査方法において、前記杭に少なくとも1つの検査孔を形成する工程と、前記検査孔内の異なる深度に前記弾性波を受信する複数のセンサーをセットする工程と、前記複数のセンサーに弾性波が到達する時間の差と該センサー間の距離から弾性波速度を算出する工程と、を有することを特徴としている。
【0014】
請求項1に記載の発明では、構造物を支持する杭に少なくとも1つの検査孔が形成されている。そして、この検査孔内の異なる深度に弾性波を受信する複数のセンサーがセットされている。
【0015】
構造物を支持する杭に弾性波を発生させ、この弾性波が複数のセンサーに到達する時間の差とセンサー間の距離から弾性波速度を算出する。そして、この弾性波速度を用いて杭の長さや杭欠損部を検出する。
【0016】
よって、従来、仮定値を用いなければならなかった弾性波速度を、直接測定した結果から算出することができるので、杭の長さや杭欠損部を精度よく検出することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記弾性波は、前記構造物又は前記検査孔を打撃することにより発生させることを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明では、構造物を打撃する場合は、打撃用の検査孔等が不要であり、容易に弾性波を発生させることができる。
【0019】
また、検査孔を打撃する場合は、センサーに近い位置で打撃ができるので、センサーに測定開始のためのトリガーを確実にかけることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記複数のセンサーを、複数の異なる深度の前記検査孔の底部に配置したことを特徴としている。
【0021】
請求項3に記載の発明では、杭に複数の異なる深度の検査孔が形成され、これらの検査孔の底部にセンサーが配置されている。
【0022】
よって、センサーを上から押さえつけるだけの簡単な治具によって測定を行うことができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、同一の前記検査孔の孔壁に前記複数のセンサーを深度を変えて固定したことを特徴としている。
【0024】
請求項4に記載の発明では、杭に形成された1つの検査孔の異なる深度の孔壁にセンサーがそれぞれ固定されている。
【0025】
よって、センサーを任意の深度に固定して測定を行うことができる。また、センサーは検査孔の孔壁に固定されているので、深い検査孔の底部にセンサーを配置する場合の問題点である、底に溜まった沈殿物によって検査孔の底部へのセンサーの密着度が低下して測定ができなくなるといったことが起こらない。よって、深い深度においてもセンサーが確実に弾性波を受信することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、前記複数のセンサーの1つを前記検査孔の底部に配置し、他の1つを前記検査孔の孔壁に固定したことを特徴としている。
【0027】
請求項5に記載の発明では、検査孔の底部に1つのセンサーを配置し、もう1つのセンサーを検査孔の孔壁に固定している。
【0028】
よって、検査孔の底部への配置が容易なセンサーと、任意の深度に固定可能なセンサーとを組み合わせることで、より実用的な杭検査方法を構築することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、構造物を支持する杭と同等の弾性波速度を有する該構造物を打撃することにより、前記杭に弾性波を発生させ、前記杭を伝播する弾性波速度を測定して前記杭の長さや杭欠損部を検出する杭検査方法において、前記杭に1つの検査孔を形成する工程と、前記構造物と、前記検査孔の底部とに前記弾性波を受信するセンサーをセットする工程と、セットされた該複数のセンサーに弾性波が到達する時間の差と該センサー間の距離から弾性波速度を算出する工程と、を有することを特徴としている。
【0030】
請求項6に記載の発明では、構造物を支持する杭に1つの検査孔が形成されている。そして、構造物と検査孔の底部に弾性波を受信するセンサーがそれぞれセットされている。また、構造物は杭と同等の弾性波速度を有している。
【0031】
構造物を打撃することにより構造物を支持する杭に弾性波を発生させ、この弾性波が構造物と検査孔の底部にそれぞれ設けられたセンサーに到達する時間とセンサー間の距離から弾性波速度を算出する。そして、この弾性波速度を用いて杭の長さや杭欠損部を検出する。
【0032】
よって、従来、仮定値を用いなければならなかった弾性波速度を、直接測定した結果から算出することができるので、杭の長さや杭欠損部を精度よく検出することができる。
【0033】
また、形成する検査孔は1つだけであり、構造物と検査孔の底部にセンサーを配置するだけでよいので、より簡単な杭検査方法を構築できる。
【0034】
請求項7に記載の発明は、前記検査孔が鉛直孔又は斜め孔であることを特徴としている。
【0035】
請求項7の発明では、検査孔が鉛直孔である場合は、検査孔を鉛直方向に穿孔して形成すればよいので、杭の正確な平面位置に検査孔を形成し、センサーをセットすることができる。
【0036】
また、検査孔が斜め孔である場合は、センサーをセットしたい杭の平面位置の真上に柱等の障害物があっても、それをかわして検査孔を形成することができる。
【0037】
請求項8に記載の発明は、前記弾性波は、前記構造物又は前記検査孔を打撃することにより前記杭に発生する打撃波と、該打撃波が前記杭の杭先端又は杭欠損部に到達した後に上昇する反射波とからなり、前記複数のセンサーに前記打撃波が到達する時間の差に基づいて、前記複数のセンサーに前記反射波が到達した時間を特定する工程を、有することを特徴としている。
【0038】
請求項8に記載の発明では、構造物又は検査孔を打撃すると、弾性波である打撃波が杭に発生し、この打撃波は杭先端又は杭欠損部に到達した後に反射波となり上昇する。ここで、複数のセンサーに打撃波が到達する時間の差に基づいて、複数のセンサーに反射波が到達した時間を特定し、この時間から杭の長さや杭欠損部を検出する。
【0039】
よって、基礎スラブ等の影響で、あらゆる方向からの反射波をセンサーが受信した場合においても、杭先端又は杭欠損部からの反射波を容易かつ正確に特定することができる。なお、打撃波は反射波に比べて大きいので、複数のセンサーに打撃波が到達する時間は容易に特定することができる。
【0040】
請求項9に記載の発明は、前記弾性波の発生源の近くに該弾性波を受信するセンサ−が設けられていることを特徴としている。
【0041】
請求項9に記載の発明では、弾性波の発生源の近くにセンサ−が設けられているので、このセンサーに測定開始のためのトリガーを確実にかけることができる。
【0042】
請求項10に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の杭検査方法に用いられるセンサー圧着装置において、前記センサーが搭載され、ワイヤーで前記検査孔内へ吊下される支持台と、前記支持台に設けられ、気体又は液体の圧力で伸縮するシリンダーと、前記支持台に設けられ、前記シリンダーが伸長したときに前記検査孔の孔壁に圧接する背板と、前記シリンダーに接続され、前記気体又は前記液体を供給するホースと、を有することを特徴としている。
【0043】
請求項10に記載の発明では、センサーが搭載された支持台がワイヤーで検査孔内に吊下されている。この支持台には、背板、及び気体又は液体の圧力で伸縮するシリンダーが設けられており、このシリンダーに気体又は液体を供給するホースが接続されている。そして、このシリンダーを伸長したときに背板が検査孔の孔壁に圧接されて、支持台が検査孔内に固定される。
【0044】
よって、検査孔の任意の深度にセンサーを固定することができる。
【0045】
また、シリンダーの圧力を大きくするほど検査孔の孔壁と支持台との密着性が高まり、より正確に弾性波を支持台に伝えることができ、センサーが安定した測定波形を受信することができる。
【0046】
また、支持台が検査孔内に固定された状態において、伸長したシリンダーの側方と検査孔の孔壁との間には空間ができるので、下方に固定した別の支持台からのホースやワイヤーをこの空間を使って上方へ通すことができる。よって、同一の検査孔内に複数の支持台を固定することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明は上記構成としたので、杭長及び杭欠損部の位置を精度よく推定し、杭の健全性をより正確に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図面を参照しながら、既存の場所打ちコンクリート杭における杭検査方法及びセンサー圧着装置を説明する。なお、本実施形態では、既存の場所打ちコンクリート杭の例を説明するが、新設の場所打ちコンクリート杭や既製コンクリート杭等の弾性波が伝播するあらゆる杭に対して適用可能であり、また、杭基礎建物の建替え時、基礎免震改修時、新設杭施工後等の杭検査に用いることができる。
【0049】
まず、本発明の第1の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0050】
図1〜3には、第1の実施形態の杭検査方法が示されている。
【0051】
図1に示すように、既存の場所打ちコンクリート杭(以下、コンクリート杭)10に支持された基礎スラブ12の上面からコンクリート杭10の内部に至る2つの検査孔14、16が鉛直方向に形成されている。検査孔14、16は、コアボーリングやドリル等により穿孔されたものである。検査孔14の底部はコンクリート杭10の杭頭付近の浅い深度にあり、検査孔16の底部は検査孔14の底部よりも深い深度にある。
【0052】
検査孔14、16の底部には、弾性波を受信するセンサー18、20が配置されている。センサー18、20は検査孔の底部上に置かれただけなので、測定を行うときには、図示されていない鉄筋の棒状部材を基礎スラブ12の上方から検査孔14、16に挿入し、この棒状部材によってセンサー18、20を検査孔の底部に押し付けて、センサー18、20と底部との密着度を高めて行う。センサー18、20は、予め棒状部材の下端に固定してから、検査孔14、16に挿入してもよい。
【0053】
弾性波は、基礎スラブ12の上面をプラスチックハンマー22で打撃して発生させる。
【0054】
図2、図3は、図1の変形例である。図2は、検査孔14の左隣に、検査孔14と同じ深さの打撃用の検査孔24を鉛直方向に形成している。弾性波は、基礎スラブ12の上方から検査孔24に挿入し、その下端部を検査孔24の底部にしっかりと接触させた鉄筋の打撃棒26の上端部をプラスチックハンマー22で打撃して発生させる。打撃棒26は、下端部を検査孔24の底部に接触させたときに、その上端部が基礎スラブ12の上面よりも少し突出する程度の長さとなっている。
【0055】
図3は、打撃のためのスペースを確保するために図1の検査孔14よりも大きな孔径の検査孔28を鉛直方向に形成している。弾性波は、基礎スラブ12の上方から検査孔28に挿入し、その下端部を検査孔28の底部にしっかりと接触させた打撃棒26の上端部をプラスチックハンマー22で打撃して発生させる。打撃棒26は、下端部を検査孔28の底部に接触させたときに、打撃棒26の上端部が基礎スラブ12の上面よりも少し突出する程度の長さとなっている。
【0056】
次に、本発明の第1の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0057】
図4は、図3のコンクリート杭10に弾性波を発生させたときの測定波形の一例を示したものである。弾性波が発生してからの経過時間に対する、センサー18が受信した弾性波の相対速度振幅の値を測定波形30、センサー20が受信した弾性波の相対速度振幅の値を測定波形32として示されている。
【0058】
まず、プラスチックハンマー22で、打撃棒26の上端部を打撃すると、その弾性波は打撃棒26を介してコンクリート杭10に伝わり、コンクリート杭10に発生した打撃波(図3の点線の矢印)となる。打撃とほぼ同時にセンサー18がこの打撃波を受信し、これが測定開始のトリガーとなる。この打撃波は大きく、相対速度振幅は急激に大きな値となるので、センサー18が打撃波を受信した時間Aは、測定波形30から容易に特定することができる。
【0059】
次に、コンクリート杭10に発生した打撃波は、センサー20によって受信される。この打撃波も大きいので、センサー20が打撃波を受信した時間Bは、測定波形32から容易に特定することができる。
【0060】
ここで、事前に測定したセンサー18とセンサー20の間の鉛直方向の距離を、時間B−時間Aの値で割ることにより、弾性波速度を算出する。
【0061】
次に、打撃波がコンクリート杭10の杭先端13に到達すると反射波(図3の一点鎖線の矢印)となって上昇する。この反射波をまずセンサー20が受信し、その後、センサー18が受信する。
【0062】
ここで、測定波形30、32の中から、時間B−時間Aとほぼ等しい間隔で、相対速度振幅が大きな値を示している波形部分を探し出し、それらをセンサー18、20が反射波を受信した時間とする。本実施形態では、センサー18の受信時間は時間C、センサー20の受信時間は時間Dとなる。
【0063】
そして、時間C−時間Aに、算出した弾性波速度の値を掛け合わせると、その半分の値がセンサー18からコンクリート杭10の杭先端13までの距離となる。
【0064】
よって、第1の実施形態では、従来、仮定値を用いなければならなかった弾性波速度を、直接測定した結果から算出することができるので、コンクリート杭10の長さを精度よく検出することができる。また、鉛直方向にコンクリート杭10の強度等にばらつきがある場合は、ある程度深く検査孔を穿孔してセンサー間の距離を長くすることにより、コンクリート杭10の平均的な弾性波速度が得られる。
【0065】
また、基礎スラブ12等の影響で、あらゆる方向からの反射波をセンサー18、20が受信した場合においても、コンクリート杭10の杭先端13からの反射波を容易かつ正確に特定することができる。特にこの方法は、場所打ちコンクリート杭の壁杭や大口径杭に水平反射波が生じ、測定波形の評価が困難な場合に優れた効果を発揮することができる。
【0066】
また、基礎スラブ12の上面を打撃することにより弾性波を発生させる場合は、打撃用の検査孔等は不要であり、容易に弾性波を発生させることができる。
【0067】
また、検査孔24、28を打撃することにより弾性波を発生させる場合は、センサー18に近い位置で打撃ができるので、センサー18に測定開始のためのトリガーを確実にかけることができる。
【0068】
また、センサー18、20は、検査孔14、16、28の孔底に配置するだけなので、センサー18、20を上から押さえつけるだけの簡単な棒状部材によって測定を行うことができる。
【0069】
また、検査孔14、16、28は鉛直孔なので、鉛直方向に穿孔して形成すればよく、杭の正確な平面位置に検査孔14、16、28を形成し、センサーをセットすることができる。
【0070】
第1の実施形態では、棒状部材に鉄筋を用いたが、この棒状部材は鉄筋に限らず、座屈せずにセンサーをしっかり底部に押し付けられるものであればよい。
【0071】
また、打撃棒26は、プラスチックハンマー22の打撃によって生じた弾性波をコンクリート杭10に伝えられるものであればよく、鉄筋の他、鋼製パイプ、ガス管等を用いることができる。また、打撃棒26の長さは、打撃棒26の下端部を検査孔24の底部に接触させたときに、その上端部が基礎スラブ12の上面よりも少し突出する程度の長さであればよく、あまり長過ぎると打撃棒26自体が固有振動数を持ってしまうので好ましくない。
【0072】
また、本実施形態の検査方法は、弾性波速度がうまく算出できない場合においても、コンクリート杭10内の弾性波速度として通常用いられている仮定値を使うことで、センサー18からコンクリート杭10の杭先端13までの距離を求めることができる。
【0073】
なお、図1〜3では説明を分り易くするために、打撃波を点線の矢印で、反射波を一点鎖線の矢印で示したが、他の実施形態の図ではこれらの矢印を省略する。
【0074】
次に、本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法及びセンサー圧着装置について説明する。
【0075】
以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0076】
図5に示すように、コンクリート杭10に支持された基礎スラブ12の上面からコンクリート杭10の内部に至る1つの検査孔34が鉛直方向に形成されている。
【0077】
検査孔34には、弾性波を受信する2つのセンサー18、20が異なる深度に固定されている。センサー18、20の固定は、図6に示すようなセンサー圧着装置36を用いて行われている。センサー圧着装置36は、円柱状の支持台38、ガス圧式シリンダー40、円弧状の背板42で主に構成されている。
【0078】
支持台38上面の周縁付近に2つのアイボルト44が支持台38の中心に対して対称に備えられている。そして、基礎スラブ12の上方で支持されたワイヤー46の下端部がこのアイボルト44につながれ、支持台38が検査孔34内に吊下されている。
【0079】
ガス圧式シリンダー40は、その伸縮方向がアイボルト44同士を結ぶ直径に対して略垂直と成るように支持台38に設けられている。そして、このガス圧式シリンダー40の後方の支持台38の側面には背板42が取り付けられている。また、窒素ガスを供給するホース48が支持台38の上面でガス圧式シリンダー40に接続されている。
【0080】
センサー18、20は、エポキシ接着剤によって支持台38の上面に接着され、支持台38と一体化しているので、コンクリート杭10に発生してガス圧式シリンダー40及び背板42から支持台38に伝わった弾性波を受信することができる。センサー18、20は、検査孔34の円断面の中心付近に位置するように、支持台38上に配置することが望ましい。
【0081】
弾性波は、基礎スラブ12の上面をプラスチックハンマー22で打撃して発生させる。
【0082】
図7、8は、図5の変形例であり、検査孔34に設けられたセンサー18、20の他に、弾性波を受信するセンサー50を打撃点近くに設け、これにより測定開始のためのトリガーをセンサー50に確実にかけることができるようにしたものである。
【0083】
図7では、基礎スラブ12の上面にセンサー50が設けられている。
【0084】
図8では、検査孔34の基礎スラブ12から検査孔34の中に少し入ったところにセンサー50が設けられている。
【0085】
図9、10は、図5の変形例であり、検査孔34に固定されたセンサー18の近くを打撃することにより、測定開始のためのトリガーをセンサー18に確実にかけることができるようにしたものである。
【0086】
図9では、検査孔34の左隣に、図2の検査孔24を打撃用に形成したものである。弾性波は、打撃棒26の上端部をプラスチックハンマー22で打撃して発生させる。
【0087】
図10では、センサー圧着装置36からセンサーを取り外した打撃用治具54を検査孔34のセンサー18近くの上方に固定したものである。弾性波は、基礎スラブ12の上方から検査孔34に挿入し、その下端部を打撃用治具54の支持台38の上面にしっかりと接触させた打撃棒56の上端部をプラスチックハンマー22で打撃して発生させる。打撃棒56は、下端部を支持台38上面に接触させたときに、打撃棒56の上端部が基礎スラブ12の上面よりも少し突出する程度の長さとなっている。これによって、任意の深度で弾性波を発生させることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、窒素ガスにより伸縮するガス圧式シリンダー40を用いたが、支持台38をしっかりと検査孔34の孔壁に圧接できるものであればよく、空気圧式シリンダー、油圧式シリンダー等を用いてもよい。
【0089】
また、センサー18、20をエポキシ接着剤によって支持台38の上面に接着したが、センサー18、20を支持台38に一体化できるものであればよい。
【0090】
次に、センサー18、20を検査孔34に固定する手順を示す。
【0091】
図6、7に示すように、センサー18、20を搭載したセンサー圧着装置36を検査孔34の所定の深度までワイヤー46によって吊り下す。
【0092】
次に、ホース48から窒素ガスをガス圧式シリンダー40に供給し、ガス圧式シリンダー40を伸長させる。シリンダーの先端が検査孔34の孔壁に接触した状態から、さらにガス圧式シリンダー40の伸長を続けると、背板42が検査孔34の孔壁に圧接され、これにより支持台38が検査孔34の孔壁に固定される。よって、センサー18、20が、コンクリート杭10に発生した弾性波を支持台38を介してそのまま受信することができる。
【0093】
次に、本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法及びセンサー圧着装置の作用及び効果について説明する。
【0094】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができ、また、任意の深度に固定されたセンサー18、20によって測定をすることができる。
【0095】
また、ガス圧式シリンダー40の圧力を大きくするほど検査孔34の孔壁と支持台38との密着性が高まり、コンクリート杭10に発生した弾性波をより正確に支持台38に伝えることができ、センサー18、20が安定した測定波形を受信することができる。
【0096】
また、支持台38が検査孔34内に固定された状態において、伸長したガス圧式シリンダー40の側方と検査孔34の孔壁との間には空間ができるので、下方に固定した別の支持台38からのホース48やワイヤー46をこの空間を使って上方へ通すことができる。よって、同一の検査孔34内に複数の支持台38を固定することができる。
【0097】
また、センサー18、20は検査孔34の孔壁に固定されているので、深い検査孔の底部にセンサーを配置する場合の問題点である、底部に溜まった沈殿物によってセンサーの検査孔の底部への密着度が低下して測定できなくなるといったことが起こらない。よって、深い深度においてもセンサー18、20が確実に弾性波を受信することができる。
【0098】
次に、本発明の第3の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0099】
第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたものである。したがって、以下の説明において、第1、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0100】
図11に示すように、基礎スラブ12を支持するコンクリート杭10の左側には図3の検査孔28が形成され、検査孔28の底部にセンサー18が配置されている。また、コンクリート杭10の右側には図5の検査孔34が形成され、この検査孔34内の任意の深度にセンサー20が固定されている。そして、検査孔28に設けられた打撃棒26の上端をプラスチックハンマー22で打撃して弾性波を発生させる。
【0101】
次に、本発明の第3の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0102】
第3の実施形態では、第1、第2の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができ、また、検査孔28の底部への配置が容易なセンサー18と任意の深度に固定可能なセンサー20とを組み合わせることで、より実用的な杭検査方法を構築できる。
【0103】
次に、本発明の第4の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0104】
第4の実施形態は、第1の実施形態の検査孔を1つにしたものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0105】
図12に示すように、基礎スラブ12を支持するコンクリート杭10の略中心には図1の検査孔16が形成され、検査孔16の底部にセンサー20が配置されている。また、基礎スラブ12の上面には、センサー18が配置されている。そして、基礎スラブ12の上面をプラスチックハンマー22で打撃して弾性波を発生させる。
【0106】
また、基礎スラブ12は、コンクリート杭10と同様の弾性波速度を有している。
【0107】
次に、本発明の第4の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0108】
第4の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができ、また、形成する検査孔は1つだけであり、センサー18を基礎スラブ12の上面に、センサー20を検査孔16の底部に配置するだけでよいので、より簡単な杭検査方法を構築できる。なお、この方法は、基礎スラブ12とコンクリート杭10の断面積があまり違わず、基礎スラブ12の下面からの反射波の影響が小さい場合において用いることが望ましい。
【0109】
次に、本発明の第5の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0110】
第5の実施形態は、第1の実施形態を変形し、より精度の高い検査方法としたものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0111】
図13に示すように、コンクリート杭10に支持された基礎スラブ12の上面からコンクリート杭10の内部に至る4本の検査孔58、60、62、64が鉛直方向に形成されている。検査孔の底部の深度は左から右へ順に深くなっており、これらの底部の鉛直方向の間隔は等しくなっている(H1=H2=H3)。
【0112】
検査孔58、60、62、64の底部には、弾性波を受信するセンサー66、68、70、72が配置されている。センサー66、68、70、72は、検査孔の底部上に置かれただけなので、測定の際には、図示されていない鉄筋の棒状部材を基礎スラブ12の上方から検査孔58、60、62、64に挿入し、この棒状部材によってセンサー66、68、70、72を検査孔の底部に押し付け、センサーと底部との密着度を高めて行う。
【0113】
また、基礎スラブ12の上面には、測定開始のトリガーをかけるための弾性波を受信するセンサー74が配置されている。このセンサー74は、センサー66にトリガーがかかる場合には不要となる。
【0114】
次に、本発明の第5の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0115】
図14は、図13のセンサー66、68、70、72が受信した弾性波の経過時間に対する相対速度振幅を簡略化して示した測定波形である。センサー66、68、70、72のそれぞれの測定波形66A、68A、70A、72Aを、センサーの配置と同様に上から下に等間隔に並べて示されている。
【0116】
基礎スラブ12の上面をプラスチックハンマー22で打撃して弾性波を発生させると、測定波形66A、68A、70A、72Aのような走時曲線が得られる。各波形の最初の凹みは、各センサーが打撃波を受信したときであり、2度目の凹みは、各センサーがコンクリート杭10の杭先端13からの反射波を受信したときである。
【0117】
これにより、各深度での弾性波速度を算出できるので、鉛直方向における杭体コンクリート強度の相対的な変化の推定が可能となる。
【0118】
また、各センサーの測定波形にノイズが入っても、4つの測定波形66A、68A、70A、72Aによって、打撃波及び反射波の受信時間の全体的な傾向が把握できるので、コンクリート杭10の長さを精度よく検出することができる。
【0119】
次に、本発明の第6の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0120】
第6の実施形態は、第2の実施形態を変形し、より精度の高い検査方法としたものである。したがって、以下の説明において、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0121】
図15に示すように、コンクリート杭10に支持された基礎スラブ12の上面からコンクリート杭10の内部に至る1つの検査孔34が鉛直方向に形成されている。
【0122】
検査孔34には、弾性波を受信する4つのセンサー66、68、70、72が異なる深度に等間隔に固定されている(H1=H2=H3)。そして、センサー66、68、70、72の固定は、センサー圧着装置36を用いて行われている。
【0123】
また、基礎スラブ12の上面には、測定開始のトリガーをかけるための弾性波を受信するセンサー74が設けられている。このセンサー74は、センサー66にトリガーがかかる場合には不要となる。
【0124】
次に、本発明の第6の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0125】
第6の実施形態では、1つの検査孔34によって第5の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、測定結果に基づき、センサーの深度を変えて、再び測定を行うことも可能なので、より緻密な検査を行うことができる。
【0126】
次に、本発明の第7の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0127】
第7の実施形態は、第1の実施形態を変形し、より精度の高い検査方法としたものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0128】
図16の(A)は、図1の基礎スラブ12の上面に、測定開始のトリガーをかけるための弾性波を受信するセンサー50を配置したものである。このセンサー50は、センサー18にトリガーがかかる場合には不要となる。
【0129】
検査孔14の底部の深度は変わらないが、検査孔16は、(A)、(B)、(C)の順に徐々に掘り下げ、各深度にて逐次測定を行う。また、(A)、(B)、(C)における検査孔16の底部の鉛直方向の間隔は等しくなっている(H1=H2=H3)。
【0130】
次に、本発明の第7の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0131】
第7の実施形態では、2つの検査孔14、16によって第5の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、掘り下げ回数を多くし、測定回数を増やすことで、多くのセンサーを用いた測定と同等の精度の検査を行うことができる。
【0132】
次に、本発明の第8の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0133】
第8の実施形態は、第2の実施形態を変形し、より精度の高い検出方法としたものである。したがって、以下の説明において、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0134】
図17の(A)は、図5の基礎スラブ12の上面に、測定開始のトリガーをかけるための弾性波を受信するセンサー50を配置したものである。このセンサー50は、センサー18にトリガーがかかる場合には不要となる。
【0135】
まず、図17の(A)では、センサー18とセンサー20を鉛直方向にH1の間隔を空けて検査孔34に固定する。
【0136】
次に、図17の(B)では、センサー20のみを下方にH2だけ移動させ、その位置で検査孔34に固定する。
【0137】
さらに、図17の(C)では、再びセンサー20のみを下方にH3だけ移動させ、その位置で検査孔34に固定する。
【0138】
また、(A)、(B)、(C)におけるセンサー20の間隔は等しくなっている(H1=H2=H3)。
【0139】
次に、本発明の第8の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0140】
第8の実施形態では、2つのセンサー18、20によって第6の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、最初に最下部まで検査孔を穿孔しておけば、(A)〜(C)の測定を一度に行うことができる。
【0141】
次に、本発明の第9の実施形態に係る杭検査方法について説明する。
【0142】
第9の実施形態は、第1の実施形態をコンクリート杭10の杭欠損部の検出に適用したものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0143】
図18は、図1の基礎スラブ12の上面に、測定開始のトリガーをかけるための弾性波を受信するセンサー50を配置したものである。このセンサー50は、センサー18にトリガーがかかる場合には不要となる。また、コンクリート杭10の下方に杭欠損部75が存在している。
【0144】
次に、本発明の第9の実施形態に係る杭検査方法の作用及び効果について説明する。
【0145】
図19は、図18のセンサー18、20が受信した弾性波の経過時間に対する相対速度振幅を簡略化して示した測定波形である。センサー18、20のそれぞれの測定波形76、78が、センサーの配置と同様に上下に並べて示されている。
【0146】
基礎スラブ12の上面をプラスチックハンマー22で打撃して弾性波を発生させると、測定波形76、78のような走時曲線が得られる。測定波形76の最初の凹みは下降する打撃波をセンサー18が受信した時間E、2度目の凹みはコンクリート杭10の杭欠損部75からの反射波をセンサー18が受信した時間F、3回目の凹みはコンクリート杭10の杭先端13からの反射波をセンサー18が受信した時間Gである。また、測定波形78の最初の凹みは下降する打撃波をセンサー20が受信した時間J、2度目の凹みはコンクリート杭10の杭欠損部75からの反射波をセンサー20が受信した時間K、3回目の凹みはコンクリート杭10の杭先端13からの反射波をセンサー20が受信した時間Lである。
【0147】
ここで、時間J−時間E、時間F−時間K、時間G−時間Lは、すべてセンサー18とセンサー20の間の弾性波(打撃波又は反射波)の伝播時間であり、弾性波速度は一定なので、これらの値は等しくなる(時間J−時間E=時間F−時間K=時間G−時間L=Δt)。この関係を利用し、図20(B)のように、測定波形78の位相をΔtだけ遅らせ、この状態で測定波形76、78を重ね合わせると、図20(C)のように、反射波を受信した時間のみを強調した合成波形80として示すことができる。
【0148】
図19の測定波形は、説明をわかり易くするために簡略化した単純な曲線になっているが、実際の測定波形は、基礎スラブや、杭体と地盤の接触面等のさまざまな箇所からの反射波やノイズ等が含まれた複雑な曲線になる。よって、各センサーが弾性波を受信した時間を特定するのは困難であるが、図20の方法により容易かつ正確に受信時間を特定することができる。
【0149】
なお、第1〜第9の実施形態では、打撃する道具として、プラスチックハンマー22を用いたが、掛け矢や鋼製ハンマーを用いてもよい。
【0150】
また、検査孔として鉛直孔を用いたが、その径は50mm〜150mmが適している。検査孔の平面位置は、コンクリート杭10の中心付近が望ましいが、真上に柱等の障害物がある場合は、コンクリート杭10の中心からずらした位置に設けてもよい。また、検査孔として斜め孔を用いてもよい。斜め孔を用いれば、コンクリート杭10の中心付近の真上に柱等の障害物があっても、それをかわして検査孔を形成することができる。
【0151】
また、既存杭の調査では、杭体のコンクリート強度を調べるためにコアボーリングが行われるので、その孔を検査孔に利用してもよい。また、新設杭においては、杭体コンクリート打設前に配管等で養生を行っておき、予め検査孔を形成しておいてもよい。
【0152】
また、第1〜第8の実施形態では、コンクリート杭10の杭先端13の検出について説明し、第9の実施形態では、コンクリート杭10の杭欠損部75の検出について説明したが、第1〜第8の実施形態は、コンクリート杭10の杭欠損部の検出に対しても同様の作用及び効果を得ることができる。
【0153】
また、測定精度を上げるために、複数のセンサーの鉛直方向の間隔は、杭径以上(実用上は2m以上)とすることが望ましく、複数の検査孔のそれぞれにセンサーをセットする場合は、検査孔同士の間隔ができるだけ狭くなるように形成することが望ましい。
【0154】
また、本発明の杭検査方法によって最初の数本の杭を検査し、それにより得られた弾性波速度や波形特性を用いて、残りの杭を1つのセンサーによる従来の方法で検査すれば、コストや工期のかかる穿孔作業を最小限に留め、従来よりも精度のよい検査を実施することができる。
【0155】
また、第5〜第8の実施形態では、H1=H2=H3としたが、これに限らず、H1:H2:H3と同じ比率で、各センサーの測定波形を並べて評価すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る杭検査方法の変形例を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る杭検査方法の変形例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る杭検査方法の測定波形を示す経過時間に対する相対速度振幅の線図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るセンサー圧着装置を示す平面図及び側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法の変形例を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法の変形例を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る杭検査方法の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る杭検査方法の測定波形を示す経過時間に対する相対速度振幅の線図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図16】本発明の第7の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図17】本発明の第8の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図18】本発明の第9の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図19】本発明の第9の実施形態に係る杭検査方法の測定波形を示す経過時間に対する相対速度振幅の線図である。
【図20】本発明の第9の実施形態に係る杭検査方法を示す説明図である。
【図21】従来の杭検査方法を示す概略図である。
【図22】従来の杭検査方法を示す概略図である。
【図23】従来の杭検査方法を示す概略図である。
【図24】従来の杭検査方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0157】
10 コンクリート杭(杭)
12 基礎スラブ(構造物)
13 杭先端
14 検査孔
16 検査孔
18 センサー
20 センサー
24 検査孔
28 検査孔
34 検査孔
36 センサー圧着装置
38 支持台
40 ガス圧式シリンダー(シリンダー)
42 背板
46 ワイヤー
48 ホース
50 センサー
58 検査孔
60 検査孔
62 検査孔
64 検査孔
66 センサー
68 センサー
70 センサー
72 センサー
74 センサー
75 杭欠損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を支持する杭に弾性波を発生させ、前記杭を伝播する弾性波速度を測定して前記杭の長さや杭欠損部を検出する杭検査方法において、
前記杭に少なくとも1つの検査孔を形成する工程と、
前記検査孔内の異なる深度に前記弾性波を受信する複数のセンサーをセットする工程と、
前記複数のセンサーに弾性波が到達する時間の差と該センサー間の距離から弾性波速度を算出する工程と、
を有することを特徴とする杭検査方法。
【請求項2】
前記弾性波は、前記構造物又は前記検査孔を打撃することにより発生させることを特徴とする請求項1に記載の杭検査方法。
【請求項3】
前記複数のセンサーを、複数の異なる深度の前記検査孔の底部に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の杭検査方法。
【請求項4】
同一の前記検査孔の孔壁に前記複数のセンサーを深度を変えて固定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の杭検査方法。
【請求項5】
前記複数のセンサーの1つを前記検査孔の底部に配置し、他の1つを前記検査孔の孔壁に固定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の杭検査方法。
【請求項6】
構造物を支持する杭と同等の弾性波速度を有する該構造物を打撃することにより、前記杭に弾性波を発生させ、前記杭を伝播する弾性波速度を測定して前記杭の長さや杭欠損部を検出する杭検査方法において、
前記杭に1つの検査孔を形成する工程と、
前記構造物と、前記検査孔の底部とに前記弾性波を受信するセンサーをセットする工程と、
セットされた該複数のセンサーに弾性波が到達する時間の差と該センサー間の距離から弾性波速度を算出する工程と、
を有することを特徴とする杭検査方法。
【請求項7】
前記検査孔が鉛直孔又は斜め孔であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の杭検査方法。
【請求項8】
前記弾性波は、前記構造物又は前記検査孔を打撃することにより前記杭に発生する打撃波と、該打撃波が前記杭の杭先端又は杭欠損部に到達した後に上昇する反射波とからなり、
前記複数のセンサーに前記打撃波が到達する時間の差に基づいて、前記複数のセンサーに前記反射波が到達した時間を特定する工程を、
有することを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の杭検査方法。
【請求項9】
前記弾性波の発生源の近くに該弾性波を受信するセンサ−が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の杭検査方法。
【請求項10】
請求項4又は請求項5に記載の杭検査方法に用いられるセンサー圧着装置において、
前記センサーが搭載され、ワイヤーで前記検査孔内へ吊下される支持台と、
前記支持台に設けられ、気体又は液体の圧力で伸縮するシリンダーと、
前記支持台に設けられ、前記シリンダーが伸長したときに前記検査孔の孔壁に圧接する背板と、
前記シリンダーに接続され、前記気体又は前記液体を供給するホースと、
を有することを特徴とするセンサー圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−170028(P2007−170028A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368603(P2005−368603)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】