説明

板状発泡体の製造方法、板状発泡体、及び、食品容器

【課題】軽量性と強度との要望を満足させ得る板状発泡体等を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイ100から押出発泡させて筒状の発泡体200を形成させた後、前記発泡体をピンチロール101で挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層を有する板状発泡体203を形成させる板状発泡体の製造方法であって、前記一面側の発泡層となる部分と前記他面側の発泡層となる部分の発泡倍率が異なるように前記筒状の発泡体を形成させることによって、一面側と他面側とで発泡倍率の異なる板状発泡体203を製造することを特徴とする板状発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状発泡体の製造方法、板状発泡体、及び、食品容器に関し、より詳しくは、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、ピンチロールで挟んで前記発泡体の内面を熱融着させる板状発泡体の製造方法、このような方法で製造された板状発泡体、及び、該板状発泡体で形成された食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、ピンチロールで挟んで前記発泡体の内面を熱融着させて板状の発泡体を形成させることが行われている。
この種の板状発泡体の形成に利用されているポリスチレン系樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも比較的硬質な樹脂であり、しかも、高い発泡倍率で発泡させることが可能である。
そのため当該ポリスチレン系樹脂が用いられてなる板状発泡体は、通常、軽量でありながら強度に優れており、例えば、展示用パネルの台紙や、折箱などの形成材料として広く用いられている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この板状発泡体には、軽量性が求められる一方で優れた強度が求められているが、これらを両立させることは困難である。
例えば、展示パネルに利用されるような用途において、軽量性を付与すべく板状発泡体の発泡度を従来に比べて向上させると、押しピンなどを刺した場合に従来に比べて抜け落ちやすいものとなるおそれを有する。
また、折箱を弁当容器として用いるような場合において、当該弁当容器に軽量性を付与すべく高い発泡倍率の板状発泡体を用いると、箸先などで破れを生じさせやすくなるおそれを有する。
【0004】
このようなことから、従来、軽量性と優れた強度とが求められるような用途に適した板状発泡体を得ることが困難であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−221365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような要望を満足させることを課題としており、軽量性と強度との要望を満足させ得る板状発泡体と、このような板状発泡体を製造することができる板状発泡体の製造方法を提供し、ひいては、軽量で丈夫な食品容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための板状発泡体の製造方法に係る本発明は、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層を有する板状発泡体を形成させる板状発泡体の製造方法であって、前記一面側の発泡層となる部分と前記他面側の発泡層となる部分の発泡倍率が異なるように前記筒状の発泡体を形成させることによって、一面側と他面側とで発泡倍率の異なる板状発泡体を製造することを特徴としている。
【0008】
また、上記課題を解決するための板状発泡体に係る本発明は、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層が備えられている板状発泡体であって、前記一面側と前記他面側とで発泡層の発泡倍率を異ならせていることを特徴としている。
【0009】
さらに、上記課題を解決するための食品容器に係る本発明は、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層が備えられている板状発泡体で形成された食品容器であって、前記板状発泡体が前記一面側と前記他面側とで発泡層の発泡倍率を異ならせており、且つ、該板状発泡体の発泡倍率の低い側で容器内面を形成させていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、板状発泡体がその一面側と他面側とで発泡層の発泡倍率を異ならせている。
即ち、発泡倍率の高い側で板状発泡体に軽量性を付与しつつ発泡倍率の低い側で板状発泡体に求められる強度を発揮させ得る。
例えば、展示用パネルに利用されるのに際しては、表面を発泡倍率の低い側とすることで押しピンを抜けにくくすることができ、弁当容器に利用されるのに際しては、容器内面を発泡倍率の低い側とすることで箸先での破れを防止させうる。
即ち、本発明によれば、板状発泡体を軽量性と強度との要望を満足させ得るものとし得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】板状発泡体の製造方法を実施するための装置例を示す概略側面図。
【図2】板状発泡体の製造方法を実施するための装置例を示す概略平面図。
【図3】図1破線Zで示す箇所におけるサーキュラーダイの構造を示す部分断面図。
【図4】(a)穿孔装置の示す概略平面図、(b)穿孔装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施形態について以下に説明する。
まず、本実施形態に係る板状発泡体の製造方法を実施するための装置について説明する。
なお、図1〜図4において、矢印Xは押出方向、即ち、発泡体の進行方向を示している。
また、図1〜3において、符号100はサーキュラーダイであり、以下においては該サーキュラーダイ100よりも上流側の押出機等の装置については説明を省略する。
【0013】
この図にも示されているように、本実施形態に係る板状発泡体の製造装置には、ポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させて筒状の発泡体200(以下「筒状発泡体200」ともいう)を形成させるようにサーキュラーダイ100が配されており、該サーキュラーダイ100はその円環状の吐出孔100cを水平方向に向けて配置されている。
即ち、前記サーキュラーダイ100は、前記吐出孔100cの中心を通る水平な仮想線を中心とした円筒状となるように前記筒状発泡体200を押出発泡させ得るように配されている。
【0014】
本実施形態に係るサーキュラーダイ100は、外形円柱状であり、図3にその断面構造を示すように外型100aと内型100bとを有し、前記外型100aは内側に円形の開口部を有し、該開口部を押出方向Xに向けて開口させている。一方で、前記内型100bは、外型100aの開口部よりも小径となる円形の外形を有している。
前記外型100aは、押出方向先端部分に前記開口部に向かってラッパ状に広がる内周面を有し、該内周面の内側に円錐台形状の空間部を形成させており、前記内型100bは、押出方向先端部分が外型100aの前記内部空間よりも一回り小さな円錐台形状となって前記外型100aの内側に収容されている。
即ち、外型100aと内型100bとは、その内周面と外周面とを対向させる形でサーキュラーダイ100に配置され、両者の間に形成されている樹脂流路100dはサーキュラーダイ内部において裾広がりな筒状となっており、その先端を前記吐出孔100cとして開口させている。
【0015】
前記外型100aには、前記吐出孔100cから僅かに上流側において外周面に開口しサーキュラーダイ100の中心方向に向けて延びる細穴100hが穿設されており、該細穴100hは所定間隔を設けて周方向に複数形成されている。
また、それぞれの細穴100hは、その先端部を樹脂流路100dの近くにまで到達させており、それぞれに棒ヒータ100eを収容して該外型100aの温度を調整するとともに前記吐出孔100cから吐出される樹脂温度の調整を図るために設けられたものである。
【0016】
なお、本実施形態に係るサーキュラーダイ100には、該サーキュラーダイ100の吐出孔100cから押出された筒状発泡体200に対して外側から風を吹き付けて風冷し得るようにエアリング103が装着されている。
該エアリング103は扁平なドーナッツ状の中空管であり内周に沿って連続し、全体円環状となるスリットが管壁を貫通する形で設けられており、中空管内部に導入させたエアーを円環状の前記スリット103aから吹出させ得るように形成されている。
また、当該エアリング103は、円環状の前記スリット103aが前記吐出孔100cを包囲するようにサーキュラーダイ100の前面に装着されており、本実施形態に係るエアリング103は、吐出孔100cから押出された直後の筒状発泡体200に対して風冷を実施し得るようにサーキュラーダイ100に装着されている。
【0017】
なお、本実施形態においては、後述するように吐出孔100cから押出し発泡されるポリスチレン系樹脂組成物の樹脂温度に上下に違いを設けたり、押出発泡後の筒状発泡体200の冷却条件を筒状発泡体200の上半分と下半分とで異ならせたりして筒状発泡体200の発泡状態を異ならせることが好ましいことから、複数の前記細穴100hにそれぞれ収容される棒ヒータ100eは、個別に温度制御可能な状態で備えられることが好ましい。
また、前記エアリング103は、上下において吹出すエアーの量や温度を異ならせ得るように設けられていることが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、前記サーキュラーダイ100から押出され前記エアリング103で外表面が冷却された筒状発泡体200を内部が冷え切らない内に前記サーキュラーダイ100の押出方向前方において上下から挟み込み、該発泡体200の上半分201(以下「上シート201」ともいう)と下半分202(以下「下シート202」ともいう)との内面を熱融着させて1枚の板状発泡体203とする一対のピンチロール101と、該ピンチロール101で形成された板状発泡体203をピンチロール101の下流側で引取る引取り装置104とをさらに有している。
【0019】
また、本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、前記サーキュラーダイ100から押出された筒状発泡体200をピンチロール101まで案内する上下複数対からなるガイドローラー102を備えている。
さらに、本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、前記ピンチロール101によって筒状発泡体200の内面を熱融着させるのに際して当該筒状発泡体200の内部の気体を外部に逃がすためのガス抜き穴を筒状発泡体200の左右において穿設するための穿孔装置106を備えており、該穿孔装置106を前記ピンチロール101と前記ガイドローラー102との間に備えている。
【0020】
該穿孔装置106は、図4に示すように、回転可能なローラー106aに周設された複数の針状物106bを備えており、本実施形態においては、前記穿孔装置106は、駆動力を備えておらず、前記ローラー106aから径方向外方へと放射状に突出する針状物106bを、前記押出方向Xに向けて進行する筒状発泡体200の側面に押しつけることによって筒状発泡体200の進行とともに共回りしつつ該筒状発泡体200の側面に前記ガス抜き穴を穿設し得るように構成されている。
【0021】
本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、筒状発泡体200の左右に穿孔装置106を一つずつ配置させており、この左右一対となって配置された穿孔装置間の距離を調整することで作製する板状発泡体の幅を調整し得るように構成されている。
前記穿孔装置106の針状物106bの太さは、過度に小さいと筒状発泡体200の内部のガスを抜くことが困難になるおそれを有し、板状発泡体203を所望の幅に調整することが難しくなる。
一方で、針状物106bの太さが過度に大きいと筒状発泡体200の内部の圧力が過度に低下して板状発泡体203を所望の幅とすることが難しくなる。
従って、板状発泡体203の幅を容易に調整し得る点において針状物106bの太さ(直径)は、好ましくは0.5〜5mmであり、更に好ましくは0.8〜3mmである。
【0022】
また、針状物106bの先端形状は、例えば、円錐状のような先鋭なものとすることがガス抜き穴の穿設には有利となるが、過度に細長形状とすると折れたり曲がったりするおそれを有する。
このような観点から針状物106bの先端形状の角度は、10〜45度が好ましく、10〜30度がより好ましい。
【0023】
前記穿孔装置106は、良好な穴開けを行わせる上において、図4(b)に符号Aで示す外径が50〜200mmであることが好ましい。
また、図4(b)に符号Bで示す針状物106bの長さは、15〜80mmが好ましいく30〜70mmがより好ましい。
さらに、前記穿孔装置106の針状物106bの本数は、6〜18本が好ましい。
【0024】
また、穿孔装置106は、筒状発泡体200の中心を通る水平面上に針状物106bを位置させるように筒状発泡体200の左右に配置させることが好ましく、針状物106bによって穿孔されたガス抜き穴が、筒状発泡体200の折り返し部分2011、2012に位置するように配置することが望ましい。
なお、製品とするためにはこの折り返し部分2011、2012は、カッター105でカットされて除去されるが、上記のようにすることにより、この折り返し部分2011、2012にガス抜き穴を設けることができ、カッターで除去する必要のある部分を最小限に留めることができる。
【0025】
前記のように穿孔装置106は、ピンチロール101の手前に配置されているが、ピンチロール101と穿孔装置106との距離が近すぎると針状物106bがピンチロール101と接するおそれがあり、離れすぎると製品幅を安定させ難くなるため、具体的には上下に対をなすピンチロール101の中心軸を結ぶ面から穿孔装置106の針状物106bの先端までの距離が10〜100mmとなるように設置することが望ましい。
なお、この位置においては、通常、筒状発泡体200が適度に冷却されており、ガス抜き穴を開け易い点においても好適である。
【0026】
このような製造装置を用いて製造される板状発泡体203としては、該板状発泡体203の用途などによっても異なるものではあるが、例えば、ポリスチレン系樹脂と気泡調整剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を発泡剤で発泡倍率が2倍以上30倍以下となるように発泡させた1mm以上15mm以下の厚みを有する、幅500mm以上1500mm以下の板状発泡体が挙げられる。
【0027】
前記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等を使用することができる。
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体と、前記スチレン系単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
さらに、本実施形態においては、これらの単量体以外の単量体を含有するコポリマーを前記板状発泡体を形成させるための原材料として採用し得る。
【0028】
本実施形態において用いられるポリスチレン系樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(以下「HIPS」ともいう)か、又は、汎用ポリスチレン樹脂(以下「GPPS」ともいう)のいずれかが好適である。
なお、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)とは、前記スチレン系単量体以外にブタジエンなどのゴム成分を含有するものであり、例えば、該ゴム成分がスチレン系単量体と共重合しているコポリマーや、該コポリマーと他のホモポリマーあるいはコポリマーとのブレンド樹脂として市販されているものなどを採用することができる。
また、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とは、添加剤等を除いて樹脂成分が実質上スチレンモノマーのみで構成されたものである。
これらのポリスチレン系樹脂は、いずれも、多くの種類が市販されており、求める特性のものが入手容易であるばかりでなく比較的安価である点においても好適である。
【0029】
前記ポリスチレン系樹脂としては、サーキュラーダイの吐出孔から押し出された筒状発泡体をピンチロールで挟み込んだ際に、発泡剤などを主たる成分とする内部ガスで該筒状発泡体を膨らませ易くする上において、発泡適性温度で優れた伸びを示す樹脂が好ましい。
このような樹脂を選択することで、筒状発泡体の最大径(板状発泡体の幅)を大きくすることができ、サーキュラーダイ口径に対する板状発泡体幅の比率を大きくすることができる。
【0030】
例えば、前記ポリスチレン系樹脂は、そのメルトフローレート(MFR)が小さすぎると、サーキュラーダイから押出された筒状発泡体をガス圧で膨張させることが難しくなり、前記比率を大きくすることが難しくなる。
一方で、MFRが過大なものでは筒状発泡体の形状が不安定となり、作製される板状発泡体の幅を安定させることが難しくなる。
従って、前記比率を大きく確保することができ、広幅の板状発泡体を安定して作製させうる点においては、JIS K7210(B法、200℃、49.03N)によって測定されるMFRが 0.5〜10g/10minのポリスチレン系樹脂を採用することが好ましく、2.0〜8.0g/10minのポリスチレン系樹脂を採用することが特に好ましい。
【0031】
前記気泡調整剤としては、一般に気泡調整剤として用いられているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物などが挙げられる。
その中でも前記気泡調整剤としては、特にタルクが好ましい。
なお、気泡調整剤は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0032】
前記発泡剤としては、通常、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭化水素が採用可能である他に、水、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を採用することも可能である。
前記発泡剤としては、熱分解してガスを発生させる化合物粒子を採用することも可能であり、該化合物粒子としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などを用いることができる。
【0033】
なお、要すれば、板状発泡体の形成に用いられるポリスチレン系樹脂組成物には、一般的な樹脂発泡成形品の形成に用いられる配合剤をさらに含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、防曇剤、顔料、充填剤などを添加剤として適宜含有させることができる。
【0034】
本実施形態に係る板状発泡体は、前記製造装置に上記のような成分を含んだポリスチレン系樹脂組成物を供して作製することができ、前記サーキュラーダイ100の上流側に設けた押出機で前記ポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練し、該溶融混練物をサーキュラーダイ100の円環状の吐出孔100cから押出発泡させて筒状発泡体200を形成させた後、前記筒状発泡体200の内面が冷え切らない内にピンチロール101で上下から挟んで該筒状発泡体200の内面を熱融着させる方法を採用して作製することができる。
【0035】
従って、本実施形態においては板状発泡体203の一面側を前記上シート201で形成させ、他面側を下シート202で形成させることができ、前記一面側を構成する発泡層と前記他面側を構成する発泡層との2層の発泡層を有する板状発泡体203を形成させることができる。
なお、この時、筒状発泡体200において前記2層の発泡層の内の一つの発泡層となる部分である前記上シート201と他の発泡層となる部分である前記下シート202とを発泡倍率が異なるように押出発泡を実施することが本実施形態に係る板状発泡体203の製造方法において重要な要件となる。
【0036】
この発泡倍率を異ならせる具体的な手段としては、サーキュラーダイ100の温度調整によって上シート201と下シート202との押出発泡時の樹脂温度を異ならせる方法(第一の方法)、押出発泡後、前記エアリング103による冷却条件を上シート201と下シート202とで異ならせる方法(第二の方法)、2台の押出機から発泡剤の配合量等を異ならせた溶融樹脂をサーキュラーダイに供給し、上シート201と下シート202とを異なる配合物で形成させる方法(第三の方法)などが挙げられる。
ただし、上シート201と下シート202とを異なる配合内容とすることは、制御が困難であることから、上記方法の内、第一の方法、又は、第二の方法を採用することが好ましい。
【0037】
なお、通常、樹脂温度を発泡に適した温度範囲内でも比較的温度を高くして押出直後の筒状発泡体200の表面近くのみをすばやく冷却することで発泡倍率を高くすることができ、逆に、表面温度を下げずにガス抜けを生じさせるか、又は、樹脂温度を発泡に適した温度範囲内でも比較的温度を低くし、且つ、押出後の冷却を強化して樹脂の粘度を高くすることで発泡倍率を低下させることができる。
【0038】
また、前記エアリング103による筒状発泡体200の風冷は筒状発泡体200の膨張にも有効であり、前記風冷によって筒状発泡体200の最大径を大きくすることができ、サーキュラーダイ口径に対する製品幅の比率を大きくすることができる。
ただし、過度に冷却を行うと筒状発泡体200の伸びが失われて広幅の板状発泡体が得られ難くなるため、前記風冷は、筒状発泡体200の外表面1m2あたり0.01〜0.2m3の割合で、30〜40℃のエアを吹き付けて実施することが好ましい。
【0039】
なお、前記第一の方法においては、樹脂温度の差が極僅かでは、発泡倍率に差があらわれず、樹脂温度に差をつけすぎると上シートと下シートとの熱融着性を低下させてしまうおそれを有する点において、上下の樹脂温度の差は、0.5℃〜10℃となる条件を選択することが好ましい。
【0040】
また、前記第二の方法においては、風量の差が極僅かであると、発泡倍率に差があらわれず、風量に差をつけすぎると一方だけ、冷却が早くなり、熱融着性を低下させるおそれを有する点において、外表面1m2あたりの風量の差は0.05〜0.1m3となる条件を選択することが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、穿孔装置106を筒状発泡体200の左右に設けているため上記風冷によって筒状発泡体200の径の調整を図り得るとともに該穿孔装置106の間隔を調整することによって板状発泡体203の幅(W)を調整することができる。
また、板状発泡体203が所定の幅で製造されている状態から、穿孔装置106の位置を変更することで、得られる板状発泡体203の幅を変更することができ、当該板状発泡体203の幅の調整は、例えば、以下の通りの方法で実施することができる。
すなわち、変更前の板状発泡体203の全幅(両端部を切断する前の幅)を測定してから、左右の穿孔装置106を、その移動距離が等しくなるように調整しながら穿孔装置間の距離を変更していき、変更後に必要となる板状発泡体幅に合わせ、次いで、板状発泡体の引取り速度を、変更前の発泡シートの全幅(W0)と変更後の全幅(W1)との比率より、下記の式で計算して、その速度に合わせる。

変更後の引取り速度 = 変更前の引取り速度×(W0/W1
【0042】
このような方法で、どのような性状を有する板状発泡体を作製するかは板状発泡体の用途によって適宜設定すればよく、どの程度の発泡倍率の違いを設けるかについても、板状発泡体の用途等によって適宜設定すればよい。
ただし、発泡倍率の差が極僅かでは実質的な特性の違いが2つの発泡層の間に現れてこないおそれがあり、2層の発泡層の間に過度に発泡倍率の差を設けると板状発泡体に応力が加わった際に接合界面部に応力集中させてしまい、凝集破壊等を生じさせやすくなるためである。
したがって、板状発泡体に、より確実に軽量性と優れた強度とを付与しうる点において、例えば、2mm以上12mm以下の厚みを有する標準的な板状発泡体においては、2層の発泡層の発泡倍率をいずれも10倍以上25倍以下とし、且つ、両者の発泡倍率の差を0.05倍以上2倍以下とすることが好ましく、0.05倍以上0.5倍以下とすることが特に好ましい。
【0043】
このようにして一面側と他面側とで異なる発泡倍率を有する状態に形成された板状発泡体は、例えば、展示用パネルに利用されるのに際しては、表面を発泡倍率の低い側とすることで押しピンを抜けにくくすることができ、弁当容器に利用されるのに際しては、容器内面を発泡倍率の低い側とすることで箸先での破れを防止させうる。
【0044】
例えば、一般的な押しピンは、針の長さが10mm程度で、その内先端側の半分程度を先細りさせている。
従って、一旦、押しピンが緩むと、この先端5mm程度の部分は周囲に隙間ができてしまいやすく、抜け落ちの防止には殆ど機能しなくなる。
そのため、抜け落ち防止の機能は主に根元側の部分が担うことになる。
即ち、展示用パネルの表面側5mm程度さえ従来の展示用パネルと同程度の発泡倍率にしていれば、その背面側は、従来以上に発泡倍率を向上させても押しピンの抜け落ち防止効果を低下させるものではない。
【0045】
また、本実施形態に係る板状発泡体を短冊状に切断して折箱を形成させ、弁当容器とした際には、箸、フォーク、スプーンなどが接触する内面のみが強度に優れていればよく、外表面側を高い発泡倍率にしても特段機能上問題が生じるわけではない。
しかも、外側を高い発泡倍率にすることで、弁当容器が従来以上に軽量になるばかりでなく、保温性能を向上させうるとともに手に持った時のソフト感を弁当容器に与え得る。
【0046】
さらに、本実施形態に係る板状発泡体を短冊状に切断した後、これを円筒状に曲げ加工して得られた筒状体に底を設けて“ワッパ飯”などと呼ばれる弁当の容器とすることもでき、その際に軽量性とともに保温性等が付与される点においても前記折箱を形成させた場合と同じである。
また、この“ワッパ飯”用の容器のごとく、板状発泡体が曲げ加工された環体で容器の縁部を形成させる場合には、前記曲げ加工によって、より強く伸長される容器外表面部を高い発泡倍率の発泡層で形成させることから当該曲げ加工における加工性を良好なものとすることができるという効果も発揮される。
【0047】
なお、本発明に係る板状発泡体は、必ずしも、展示パネルや食品容器などに用途が限定されるものではなく各種用途に用いられ得るものである。
【実施例】
【0048】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1:厚み約3mm、発泡倍率約13倍の板状発泡体の製造)
2台の押出機が連結されたタンデム押出機の上流側の押出機(φ115mm)にポリスチレン樹脂(東洋スチレン(株)社製、HRM−48N、MFR=2.3g/10分)100質量部と気泡調整剤としてタルク練り込みポリスチレンマスターバッチ(東洋スチレン(株)社製DSM1401A)1.60質量部とをドライブレンドした混合ペレットを供給し、溶融混練させるとともに発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン)を前記ポリスチレン樹脂100質量部に対して3.40質量部となる割合で押出機内に圧入してさらに溶融混練し、この溶融混練物を連続的に下流側の押出機(φ150mm)に供給し、該下流側の押出機で樹脂温度が約150℃となるように冷却して、押出機先端に取り付けたサーキュラーダイより押出発泡させ、筒状発泡体を形成させた。
この時、サーキュラーダイ先端周辺の温調によって上側の温度が、下側に比べて約5℃低くなるようにして筒状発泡体の上シートと下シートとで発泡倍率を異ならせ、この筒状発泡体をピンチロールで挟んで2層の発泡層の合計厚みが約3.3mm、全体発泡倍率約13倍の板状発泡体を作製した。
【0050】
この板状発泡体を厚み方向に切断してマイクロスコープ(KEYENCE社製:VHX−1000)にて断面を観察し、熱融着面を介して一方の発泡層と他方の発泡層の厚みを測定した。
その後、板状発泡体を5cm×45cmにカットした試料を作製し、スプリッティングマシーン(FORTUNA社製:SPA−750)を用いて前記試料を熱融着面にて厚み方向に分割し、2層の発泡層を別々にした。
分割した各発泡層の厚み(長辺方向に10点測定し、その平均を算出)と質量とを測定し、該質量と試料の大きさ(5cm×45cm)から発泡層の坪量(g/m2)を算出した。
各発泡層の発泡倍率を下記式(1)に基づいて算出するとともに2つの発泡層の発泡倍率の差を算出した。

発泡倍率(倍)=ポリスチレン樹脂の比重×厚み÷坪量×1000 ・・・(1)

なお、上記発泡倍率の算出に際しては、試料数を3個(n=3)とし得られた結果を算術平均した。
【0051】
(実施例2:厚み約5mm、発泡倍率約17倍の板状発泡体の製造)
発泡剤の量を、3.40質量部に代えて4.40質量部としたこと、樹脂温度を約148℃としたこと、サーキュラーダイ先端の温調を上側の温度が、下側に比べて約3℃低くなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして2層の発泡層の合計厚みが約5mm、全体発泡倍率約17倍の板状発泡体を作製し、実施例1と同様に発泡倍率を求めた。
【0052】
(実施例3:厚み約7mm、発泡倍率約17倍の板状発泡体の製造)
発泡剤の量を、3.40質量部に代えて4.60質量部としたこと、樹脂温度を約149℃としたこと、サーキュラーダイ先端の温調を逆に上側の温度が、下側に比べて約6℃高くなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして2層の発泡層の合計厚みが約7mm、全体発泡倍率約17倍の板状発泡体を作製し、実施例1と同様に発泡倍率を求めた。
【0053】
(実施例4:厚み約7mm、発泡倍率約11倍の板状発泡体の製造)
発泡剤の量を、3.40質量部に代えて2.85質量部としたこと、樹脂温度を約156℃としたこと、サーキュラーダイ先端の温調を逆に上側の温度が、下側に比べて約1℃高くなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして2層の発泡層の合計厚みが約7mm、全体発泡倍率約11倍の板状発泡体を作製し、実施例1と同様に発泡倍率を求めた。
【0054】
上記実施例1〜4の板状発泡体における発泡層の発泡倍率を求めた結果を下記表1に示す。
【表1】

【0055】
これらの板状発泡体は、軽量性にも優れ、強度にも優れるものであった。
このことからも、本発明によれば、軽量性と強度との要望を満足させ得る板状発泡体を提供し得ることがわかる。
【符号の説明】
【0056】
100:サーキュラーダイ、101:ピンチロール、103:エアリング、200:筒状発泡体、201:上シート、202:下シート、203:板状発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層を有する板状発泡体を形成させる板状発泡体の製造方法であって、
前記一面側の発泡層となる部分と前記他面側の発泡層となる部分の発泡倍率が異なるように前記筒状の発泡体を形成させることによって、一面側と他面側とで発泡倍率の異なる板状発泡体を製造することを特徴とする板状発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記一面側の発泡層となる部分と、前記他面側の発泡層となる部分との押出発泡時の樹脂温度を異ならせることにより発泡倍率の異なる筒状の発泡体を形成させる請求項1記載の板状発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記押出発泡後、前記一面側の発泡層となる部分と、前記他面側の発泡層となる部分との冷却条件を異ならせることにより発泡倍率の異なる筒状の発泡体を形成させる請求項1又は2記載の板状発泡体の製造方法。
【請求項4】
2mm以上12mm以下の厚みを有し、前記一面側の発泡層と前記他面側の発泡層との発泡倍率がいずれも10倍以上25倍以下で、且つ、前記一面側の発泡層と前記他面側の発泡層との発泡倍率の差が0.05倍以上2倍以下の板状発泡体を製造する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の板状発泡体の製造方法。
【請求項5】
ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層が備えられている板状発泡体であって、
前記一面側と前記他面側とで発泡層の発泡倍率を異ならせていることを特徴とする板状発泡体。
【請求項6】
厚み2mm以上12mm以下で、前記一面側の発泡層と前記他面側の発泡層との発泡倍率がいずれも10倍以上25倍以下で、且つ、前記一面側の発泡層と前記他面側の発泡層との発泡倍率の差が0.05倍以上2倍以下である請求項5記載の板状発泡体。
【請求項7】
ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させることによって一面側を形成する発泡層と他面側を形成する発泡層との2層の発泡層が備えられている板状発泡体で形成された食品容器であって、
前記板状発泡体が前記一面側と前記他面側とで発泡層の発泡倍率を異ならせており、且つ、該板状発泡体の発泡倍率の低い側で容器内面を形成させていることを特徴とする食品容器。
【請求項8】
外側に発泡倍率の高い発泡層が来るように前記板状発泡体が曲げ加工された環体で縁部が形成されてなる請求項7記載の食品容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206329(P2012−206329A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72763(P2011−72763)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】