説明

板状発泡体の製造方法

【課題】反りや捩れの抑制された板状発泡体を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイ100から押出発泡させて筒状の発泡体200を形成させた後、前記発泡体200をピンチロール101で挟んで該発泡体200の内面を熱融着させて板状の発泡体203を形成させる板状発泡体203の製造方法であって、前記発泡体200の中心を挟んで対向する2箇所に他の部位よりも薄肉化された薄肉部Zを形成させ、且つ、該薄肉部Zが押出方向に連続するように前記発泡体200を形成させ、前記薄肉部Zどうしを熱融着させて前記板状発泡体203の幅方向中央部となる部分を形成させることにより該幅方向中央部の厚みが幅方向両端部に比べて薄い板状発泡体203を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の発泡体を製造する方法に関し、より詳しくは、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させて板状の発泡体を形成させる板状発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、該発泡体の内部が冷え切らない内にピンチロールで挟んで内面どうしを熱融着させて板状の発泡体を形成させることが行われている。
この種の板状発泡体は、軽量でありながら強度に優れることから、例えば、展示用パネルの台紙や折箱などの形成材料として広く用いられている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この板状発泡体には、反りや捩れ等がなく表面が平滑であることが要望されているが、この種の板状発泡体には、製造後の経時変化によって反りや捩れを生じてしまう場合があり、その原因が十分に突き止められておらず、対策も確立されていないために前記要望を満足させることが従来困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−221365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような要望を満足させることを課題としており、反りや捩れの抑制された板状発泡体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討を行ったところ、板状発泡体は、その製造に際してピンチロールで筒状の発泡体を挟んで発泡体の内面を熱融着させるため発泡体の周方向(板状発泡体の幅方向)に延伸が加わるとともにピンチロールの下流側における引取りによる長さ方向への延伸が加わっていること、及び、この延伸が時間経過とともに緩和されて板状発泡体に寸法変化を生じさせることを見出した。
【0007】
また、本発明者は、この寸法変化の挙動の調査と、その抑制策についての検討を行ったところ板状発泡体の幅方向中央部に相当する箇所において特に延伸が加わりやすくなっており、従来通り、板状発泡体の厚みを全体均一に製造すると、後にこの延伸の強く加わった中央部の厚みが他の領域よりも厚くなって反り等の変形が生じることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
即ち、上記課題を解決するための板状発泡体の製造方法に係る本発明は、ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させて板状の発泡体を形成させる板状発泡体の製造方法であって、前記発泡体の中心を挟んで対向する2箇所に他の部位よりも薄肉化された薄肉部を形成させ、且つ、該薄肉部が押出方向に連続するように前記発泡体を形成させ、前記薄肉部どうしを熱融着させて前記板状発泡体の幅方向中央部となる部分を形成させることにより該幅方向中央部の厚みが幅方向両端部に比べて薄い板状発泡体を形成させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、幅方向中央部の厚みを両端部よりも薄くなるように板状発泡体を形成させることから、製造後に板状発泡体の中央部の厚みが他の領域よりも厚くなることを防止でき、板状発泡体に反りなどの変形が生じることを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】板状発泡体の製造方法を実施するための装置例を示す概略側面図。
【図2】板状発泡体の製造方法を実施するための装置例を示す概略平面図。
【図3】(a)穿孔装置の示す概略平面図、(b)穿孔装置の概略側面図。
【図4】実施例において作製した板状発泡体の評価試料採取箇所を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る実施形態について以下に説明する。
まず、本実施形態に係る板状発泡体の製造方法を実施するための装置について説明する。
なお、図1〜図3において、矢印Xは押出方向、即ち、発泡体の進行方向を示している。
また、図1、2において、符号100はサーキュラーダイであり、該サーキュラーダイ100よりも上流側の押出機等の装置については説明を省略する。
【0012】
この図にも示されているように、本実施形態に係る板状発泡体の製造装置には、ポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させて筒状の発泡体200(以下「筒状発泡体200」ともいう)を形成させるようにサーキュラーダイ100が配されており、該サーキュラーダイ100はその円環状の吐出孔を水平方向に向けて配されている。
即ち、前記サーキュラーダイ100は、前記吐出孔の中心を通る水平な仮想線を中心とした円筒状となるように前記筒状発泡体200を押出発泡さるべく配置されている。
【0013】
また、サーキュラーダイ100は、前記吐出孔の径方向の幅(スリット幅)を周方向において変化させており、前記筒状発泡体200の上部側及び下部側の領域を側面側の領域に比べて薄肉化させた状態で押出発泡し得るように形成されている。
より具体的には、正面視における前記吐出孔は、正面視上端部と下端部のスリット幅が左右のスリット幅よりも狭くなるように形成されており、時計回りに12時の位置から3時の位置にかけてスリット幅を徐々に増大させ、該3時の位置を極大として6時の位置にかけてスリット幅を徐々に減少させた後、同じように9時の位置にかけてスリット幅を増大させて12時の位置にかけてスリット幅を減少させている。
【0014】
即ち、前記サーキュラーダイ100は、前記薄肉化された領域(以下「薄肉部」)が押出方向Xに向けて連続する帯状となって前記筒状発泡体200に形成され、しかも、該薄肉部が上下2本の帯状となって形成されるように構成されている。
ここで、図2には、便宜上、薄肉部を斜線部(Z)にて明示させているが、実際は、薄肉部Zとそれ以外の部分とでは明確な境界が形成されているわけではなく、前記サーキュラーダイ100は、前記のように薄肉部Zの幅方向中心部から離れるに従って厚みを傾斜的に増大させるように構成されており、他の領域との明確な境界を形成させ得るように構成されているものではない。
【0015】
本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、前記サーキュラーダイ100から押出された筒状発泡体200を該サーキュラーダイ100の押出方向前方において上下から挟み込み、該発泡体200の上半分201(以下「上シート201」ともいう)と下半分202(以下「下シート202」ともいう)との内面を熱融着させて1枚の板状発泡体203とする一対のピンチロール101と、該ピンチロール101で形成された板状発泡体203をピンチロール101の下流側で引取る引取り装置104とをさらに有している。
【0016】
また、本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、前記サーキュラーダイ100から押出された直後の筒状発泡体200の外表面を風冷するためのエアリング103と、該エアリング103によって風冷された筒状発泡体200をピンチロール101まで案内する上下複数対からなるガイドローラー102を備えている。
さらに、本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、前記ピンチロール101によって筒状発泡体200の内面を熱融着させるのに際して当該筒状発泡体200の内部の気体を外部に逃がすためのガス抜き穴を筒状発泡体200の左右において穿設するための穿孔装置106を備えており、該穿孔装置106を前記ピンチロール101と前記ガイドローラー102との間に備えている。
【0017】
該穿孔装置106は、図3に示すように、回転可能なローラー106aに周設された複数の針状物106bを備えており、本実施形態においては、前記穿孔装置106は、駆動力を備えておらず、前記ローラー106aから径方向外方へと放射状に突出する針状物106bを、前記押出方向Xに向けて進行する筒状発泡体200の側面に押しつけることによって筒状発泡体200の進行とともに共回りしつつ該筒状発泡体200の側面に前記ガス抜き穴を穿設し得るように構成されている。
【0018】
本実施形態に係る板状発泡体の製造装置は、筒状発泡体200の左右に穿孔装置106を一つずつ配置させており、この左右一対となって配置された穿孔装置間の距離を調整することで作製する板状発泡体の幅を調整し得るように構成されている。
前記穿孔装置106の針状物106bの太さは、過度に小さいと筒状発泡体200の内部のガスを抜くことが困難になるおそれを有し、板状発泡体203を所望の幅に調整することが難しくなる。
一方で、針状物106bの太さが過度に大きいと筒状発泡体200の内部の圧力が過度に低下して板状発泡体203を所望の幅とすることが難しくなる。
従って、板状発泡体203の幅を容易に調整し得る点において針状物106bの太さ(直径)は、好ましくは0.5〜5mmであり、更に好ましくは0.8〜3mmである。
【0019】
また、針状物106bの先端形状は、例えば、円錐状のような先鋭なものとすることがガス抜き穴の穿設には有利となるが、過度に細長形状とすると折れたり曲がったりするおそれを有する。
このような観点から針状物106bの先端形状の角度は、10〜45度が好ましく、10〜30度がより好ましい。
【0020】
前記穿孔装置106は、良好な穴開けを行わせる上において、図3(b)に符号Aで示す外径が50〜200mmであることが好ましい。
また、図3(b)に符号Bで示す針状物106bの長さは、15〜80mmが好ましいく30〜70mmがより好ましい。
さらに、前記穿孔装置106の針状物106bの本数は、6〜18本が好ましい。
【0021】
また、穿孔装置106は、筒状発泡体200の中心を通る水平面上に針状物106bを位置させるように筒状発泡体200の左右に配置させることが好ましく、針状物106bによって穿孔されたガス抜き穴が、筒状発泡体200の折り返し部分2011、2012に位置するように配置することが望ましい。
なお、製品とするためにはこの折り返し部分2011、2012は、カッター105でカットされて除去されるが、上記のようにすることにより、この折り返し部分2011、2012にガス抜き穴を設けることができ、カッターで除去する必要のある部分を最小限に留めることができる。
【0022】
前記のように穿孔装置106は、ピンチロール101の手前に配置されているが、ピンチロール101と穿孔装置106との距離が近すぎると針状物106bがピンチロール101と接するおそれがあり、離れすぎると製品幅を安定させ難くなるため、具体的には上下に対をなすピンチロール101の中心軸を結ぶ面から穿孔装置106の針状物106bの先端までの距離が10〜150mmとなるように設置することが望ましい。
なお、この位置においては、通常、筒状発泡体200が適度に冷却されており、ガス抜き穴を開け易い点においても好適である。
【0023】
このような穿孔装置106を有する製造装置を用いて製造される板状発泡体203としては、該板状発泡体203の用途などによっても異なるものではあるが、例えば、ポリスチレン系樹脂と気泡調整剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を発泡剤で発泡倍率が2倍以上30倍以下となるように発泡させた1mm以上15mm以下の厚みを有する、幅500mm以上1500mm以下の板状発泡体が挙げられる。
【0024】
前記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等を使用することができる。
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体と、前記スチレン系単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
さらに、本実施形態においては、これらの単量体以外の単量体を含有するコポリマーを前記板状発泡体を形成させるための原材料として採用し得る。
【0025】
本実施形態において用いられるポリスチレン系樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(以下「HIPS」ともいう)か、又は、汎用ポリスチレン樹脂(以下「GPPS」ともいう)のいずれかが好適である。
なお、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)とは、前記スチレン系単量体以外にブタジエンなどのゴム成分を含有するものであり、例えば、該ゴム成分がスチレン系単量体と共重合しているコポリマーや、該コポリマーと他のホモポリマーあるいはコポリマーとのブレンド樹脂として市販されているものなどを採用することができる。
また、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とは、添加剤等を除いて樹脂成分が実質上スチレンモノマーのみで構成されたものである。
これらのポリスチレン系樹脂は、いずれも、多くの種類が市販されており、求める特性のものが入手容易であるばかりでなく比較的安価である点においても好適である。
【0026】
前記ポリスチレン系樹脂としては、サーキュラーダイの吐出孔から押し出された筒状発泡体をピンチロールで挟み込んだ際に、発泡剤などを主たる成分とする内部ガスで該筒状発泡体を膨らませ易くする上において、発泡適性温度で優れた伸びを示す樹脂が好ましい。
このような樹脂を選択することで、筒状発泡体の最大径(板状発泡体の幅)を大きくすることができ、サーキュラーダイ口径に対する板状発泡体幅の比率を大きくすることができる。
【0027】
例えば、前記ポリスチレン系樹脂は、そのメルトフローレート(MFR)が小さすぎると、サーキュラーダイから押出された筒状発泡体をガス圧で膨張させることが難しくなり、前記比率を大きくすることが難しくなる。
一方で、MFRが過大なものでは筒状発泡体の形状が不安定となり、作製される板状発泡体の幅を安定させることが難しくなる。
従って、前記比率を大きく確保することができ、広幅の板状発泡体を安定して作製させうる点においては、JIS K7210(B法、200℃、49.03N)によって測定されるMFRが 0.5〜10g/10minのポリスチレン系樹脂を採用することが好ましく、2.0〜8.0g/10minのポリスチレン系樹脂を採用することが特に好ましい。
【0028】
前記気泡調整剤としては、一般に気泡調整剤として用いられているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物などが挙げられる。
その中でも前記気泡調整剤としては、特にタルクが好ましい。
なお、気泡調整剤は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0029】
前記発泡剤としては、通常、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭化水素が採用可能である他に、水、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を採用することも可能である。
前記発泡剤としては、熱分解してガスを発生させる化合物粒子を採用することも可能であり、該化合物粒子としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などを用いることができる。
【0030】
なお、要すれば、板状発泡体の形成に用いられるポリスチレン系樹脂組成物には、一般的な樹脂発泡成形品の形成に用いられる配合剤をさらに含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、防曇剤、顔料、充填剤などを添加剤として適宜含有させることができる。
【0031】
本実施形態に係る板状発泡体は、前記製造装置に上記のような成分を含んだポリスチレン系樹脂組成物を供して作製することができ、前記サーキュラーダイ100の上流側に設けた押出機で前記ポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練し、該溶融混練物をサーキュラーダイ100の円環状の吐出孔から押出発泡させて筒状発泡体200を形成させた後、前記筒状発泡体200の内面が冷え切らない内にピンチロール101で上下から挟んで該筒状発泡体200の内面を熱融着させる方法を採用して作製することができる。
【0032】
なお、この時、前記エアリング103からエアを吹き出させつつ押出発泡を実施してサーキュラーダイ100から押出された筒状発泡体200の表面を風冷することが好ましい。
この風冷によって筒状発泡体200を適度に冷却することができ、該筒状発泡体表面に冷却固化によるスキン層を形成させ、内部のガスによって過度に膨張することを抑制できるとともに該筒状発泡体内部の気泡が過度に膨張することも抑制できる。
従って、前記風冷によって筒状発泡体200の最大径を調整することができ、サーキュラーダイ口径に対する製品幅の比率を調整することができる。
ただし、過度に冷却を行うと筒状発泡体200の伸びが失われて広幅の板状発泡体が得られ難くなるため、前記風冷は、筒状発泡体200の外表面1m2あたり0.01〜0.2m3の割合で、30〜40℃のエアを吹き付けて実施することが好ましい。
このような風冷を実施することにより、板状発泡体203の幅(W)と、サーキュラーダイの直径(D)との比率(W/D)を、2倍〜8倍とすることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、穿孔装置106を筒状発泡体200の左右に設けているため該穿孔装置106の間隔を調整することによって板状発泡体203の幅(W)を調整することができる。
また、板状発泡体203が所定の幅で製造されている状態から、穿孔装置106の位置を変更することで、得られる板状発泡体203の幅を変更することができ、当該板状発泡体203の幅の調整は、例えば、以下の通りの方法で実施することができる。
すなわち、変更前の板状発泡体203の全幅(両端部を切断する前の幅)を測定してから、左右の穿孔装置106を、その移動距離が等しくなるように調整しながら穿孔装置間の距離を変更していき、変更後に必要となる板状発泡体幅に合わせる。
次いで、板状発泡体の引取り速度を、変更前の発泡シートの全幅(W0)と変更後の全幅(W1)との比率より、下記の式で計算して、その速度に合わせる。

変更後の引取り速度 = 変更前の引取り速度×(W0/W1

なお、引取り速度は、作製する板状発泡体の大きさなどにもよるが、通常、 5m/分〜30m/分とされる。
【0034】
なお、ピンチロール101で筒状発泡体200を挟み込む際には、前記引取り装置104によって押出方向Xへ引っ張られながら断面形状が製品の幅方向に長く延びる楕円形状となるように押し潰されるため、筒状発泡体200には押出方向X(以下、「MD方向」( Machine Direction )ともいう)のみならず、幅方向 ( 以下、「TD方向」: Transverse Direction )ともいう)にも延伸応力が加わることになる。
従って、この延伸応力によって生じた分子配向が時間経過とともに緩和する方向に変形を生じることになり、結果、板状発泡体に反りや捩れなどの変形を生じさせることになる。
【0035】
そこで本実施形態においては、このような変形を防止するために、前記上シート201の中央部と前記下シート202の中央部が前記薄肉部Zとなるように押出発泡を実施し、この上シート201の薄肉部Zと下シート202の薄肉部Zとが幅方向中央部で重なり合うようにピンチロール101での熱融着を実施して該中央部の厚みが両端部に比べて薄い板状発泡体を形成させる。
即ち、本実施形態においては、筒状発泡体200の中心を挟んで対向する2箇所に他の部位よりも薄肉化された薄肉部Zを押出方向に連続する帯状に形成させることが重要であり、該薄肉部Zどうしを熱融着させて板状発泡体203の幅方向中央部となる部分を両端部に比べて薄い状態に形成させることが、反りなどが生じるおそれのない板状発泡体を作製する上において重要な要件となる。
【0036】
この中央部の厚みを薄くするのは、前記延伸応力がこの中央部に最も加わりやすく、板状発泡体を均一厚みに製造すると経時変化(例えば、5日後)において目に見える形で板状発泡体に変形を生じさせるおそれがあり、中央部がその厚みを他の領域よりも増大させて板状発泡体に反りなどの変形を生じさせるおそれを有するためである。
このような厚みの増大をより確実に吸収させ得る点においては、板状発泡体は、その製造直後(例えば、製造直後3時間以内)における中央部の厚みが、両端部の厚みに比べて0.05〜0.8mm薄くなるように形成させることが好ましく0.1〜0.5mm薄くなるように形成させることが特に好ましい。
厚みの差が上記範囲内であることが好ましいのは上記範囲未満では、中央部の厚みの増大を吸収することができずに板状発泡体に反りを発生させるおそれを有するためである。
また、好ましい厚み差に上記のような上限値が設けられているのは、上記範囲を超えた差を設けると、中央部の厚みが増大する以上の差となって、逆に、中央部をくぼませた状態になるおそれを有するためである。
なお、この板状発泡体の中央部と両端部の厚みの差については、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができ、前記中央部の厚みは、前記両端部の厚みを100%とした際に、80%(−20%)〜99.5%(−0.5%)とすることが好ましく、85%(−15%)〜99%(−1%)とすることが特に好ましい。
【0037】
なお、本実施形態に係る板状発泡体は、幅方向両端部から中央部に向かうに従って厚みを徐々に減少させていることが好ましく、板状発泡体の全幅を100%とした際に、両端部の厚みに対して1%以上厚みが薄い領域が、25%以上(板状発泡体の1/4以上)の領域に及ぶように形成させることが好ましく、50%以上(板状発泡体の半分以上)の領域に及ぶように形成させることが好ましい。
なお、通常、上限値は75%程度とされる。
【0038】
このような板状発泡体は、製造直後からの時間経過による反りや捩れなどの変形を生じにくく、展示パネルや食品容器などに好適に用いられ得るものではあるが、本発明の板状発泡体は、このような用途に限らず各種用途に用いられ得るものである。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
2台の押出機が連結されたタンデム押出機の上流側の押出機にポリスチレン樹脂(東洋スチレン(株)社製、HRM−48N、MFR=2.3g/10分)100質量部と気泡調整剤としてタルク1.0質量部を加えた混合物を供給し、これに発泡剤としてブタン6.5質量部を圧入して該押出機内で溶融混練し、この溶融混練物を連続的に下流側の押出機に供給し、該下流側の押出機で樹脂温度を145℃に冷却して、押出機先端に取り付けたサーキュラーダイより押出発泡させ、筒状の発泡体を形成させた。
形成させた筒状発泡体は押出直後にエアリングからエアを吹き付けて外表面を風冷しピンチロールに導入させた。
なお、サーキュラーダイの吐出口からピンチロールまでの距離は900mmとした。
また、ピンチロールのロール間の間隙を4.8mmとして、前記筒状発泡体を当該ピンチロールで上下から挟んで内面を熱融着させ1枚の板状発泡体とした。
図3のような針状物106bの配設されたローラー106aを有する穿孔装置106を、ピンチロールの手前(ピンチロールの中心軸を結ぶ面と針先端部の距離が10mm)に配置し、且つ、左右の穿孔装置のローラーの中心軸1062の間隔が1045mmとなるように押出の中心軸から左右等間隔に設置して膨張した筒状発泡シートにガス抜き穴を穿設させた。
なお、針先端部(針先)の間隔は約950mmとした。
【0041】
このとき、針状物106bの配設されたローラー106aは、針先端部が筒状発泡体に刺さり、滑らかに回転しながら両側面に連続的に穴を開け続け、安定した状態で板状発泡体を得ることができた。
得られた板状発泡体の全幅は、約970mmであった。
板状発泡体からガス抜き穴の形成された部分を含む両端部約25mmずつをカッターにより除去した。
以上の製造方法により、幅920mm、発泡倍率18倍の板状発泡体203が得られた。
なお、この時、筒状発泡体の上下に薄肉部を形成させ、幅方向中央部が両端部に比べて厚みが薄くなるようにして板状発泡体を作製した。
【0042】
<厚み差>
この幅920mmの両端縁からそれぞれ70mm内側の780mm幅の領域から5つの試料を採取した。
試料採取箇所は図4に示すとおりで、780mm幅の内側に100mm角の試料が幅方向に等間隔(70mm)となるようにして採取した。
なお、試料はMD方向に隣接するようにして2枚ずつ採取し、5枚一組の試料を2組採取した。
その内、1組の試料に端から順に(1)〜(5)の試料番号を付与し、各試料の巾方向(TD方向)に平行となるように中心線を引き、該中心線を4等分する三点における厚みを最小測定単位0.01mmのシックネスゲージで測定し、その算術平均値を各試料の厚みとした。
このようにして両端部の試料(1)、(5)と中央部の試料(3)との厚みを測定したところ、幅方向両端部(1),(5)の方が厚く5.0mmとなっており、中央部(3)が4.75mmとなっていることが確認できた。
即ち、両端部と中央部との厚みの差が0.25mm(両端部に比べて中央部が5%薄い状態)となっていることが確認できた。
【0043】
<経日変化>
また、上記試料を常温にて、5日間静置し、上記と同じ方法にて各試料の厚みを測定し経日変化を観察した。
【0044】
<加熱変形値>
次に、厚み測定用試料にMD方向で隣接する箇所から切り取ったもう一組の試料((1’)〜(5’))の表裏において、TD方向に100mmの線分を引き、その長さを加熱前のTD方向長さとした。
そして加熱オーブン(ヤマト科学社製、ファインオーブンDH−41)を用い、あらかじめ125℃に設定したオーブン内にすばやく試験片を入れ、150秒後にすばやく取り出し、前記線分の長さを表裏で測定し、その平均値を加熱後のTD方向長さとした。
なお、加熱後の試料に変形が見られ線分が曲がったり蛇行して曲線となった際には両端間の直線距離を測るのではなく、曲線に沿って線分の長さを測定した。
そして、加熱前のTD方向長さ[mm]から加熱後のTD方向長さ[mm]を減じて加熱変形値とした。
これらの評価結果を、下記表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
上記のように、板状発泡体の幅方向中央部(3)は、加熱変形が大きく、分子配向の緩和による変形を生じやすいことがわかる。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様な方法にて板状発泡体を作製した。その際に、ピンチロールのロール間の間隙を6.6mmとし、幅920mm、発泡倍率10倍の板状発泡体を得た。この板状発泡体を上記と同様の方法にて厚みを測定したところ、幅方向両端部(1),(5)の方が厚く6.75mmとなっており、中央部(3)が6.5mmとなっていることが確認できた。
即ち、両端部と中央部との厚みの差が0.25mm(両端部に比べて中央部が4%薄い状態)となっていることが確認できた。
また、実施例1と同様の方法にて、加熱変形値及び、経日変化後の厚み測定を行った。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
(実施例3)
発泡倍率を18としたこと以外は、実施例2と同様に板状発泡体を作製し、厚み等の測定を実施した。
その結果、下記表3に示すように両端部と中央部との厚みの差が0.25mm(両端部に比べて中央部が4%薄い状態)となっていることが確認できた。
【0050】
【表3】

【0051】
上記のように実施例2、3においても、板状発泡体の幅方向中央部(3)は、加熱変形が大きく、分子配向の緩和による変形を生じやすいことがわかる。
以上のことからも、本発明によれば、厚みの均一な板状発泡体が得られ、該板状発泡体に反りや捩れが発生することが抑制され得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂組成物をサーキュラーダイから押出発泡させて筒状の発泡体を形成させた後、前記発泡体をピンチロールで挟んで該発泡体の内面を熱融着させて板状の発泡体を形成させる板状発泡体の製造方法であって、
前記発泡体の中心を挟んで対向する2箇所に他の部位よりも薄肉化された薄肉部を形成させ、且つ、該薄肉部が押出方向に連続するように前記発泡体を形成させ、前記薄肉部どうしを熱融着させて前記板状発泡体の幅方向中央部となる部分を形成させることにより該幅方向中央部の厚みが幅方向両端部に比べて薄い板状発泡体を形成させることを特徴とする板状発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記幅方向中央部の厚みが、両端部の厚みに対して0.5%〜20%薄くなるように前記板状発泡体を形成させる請求項1記載の板状発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206462(P2012−206462A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75383(P2011−75383)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】