説明

板状透明体の欠陥検査装置及びその方法

【課題】板状透明体の表面に存在している長径10μm程度の微細傷を、顕微鏡精査を行うことなく検出することができる板状透明体の欠陥検査装置及びその方法を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置10は、ガラス基板Gの下面に存在している微細傷に強い受光感度を有する受光角度θ(0°<θ1≦60°、好ましくは30°≦θ≦45°)に、受光器22、24の受光方向を設定した。また、受光器22、24による観察部位に到達する照明光の光量が一定となるように、投光器18、20側の出力強度をCPUによって制御することで、受光器22、24側のダイナミックレンジ不足を補い、受光器22、24側で信号補正を行うことなく、微細傷の検出を可能にした。更に、双方の受光器22、24で検出された総受光量(輝度)の積分値に基づいて微細傷の深さを算出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状透明体の欠陥検査装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPD(Flat Panel Display)用ガラス基板等の板状透明体の内部又は表面に発生した欠陥部位を検出する装置として、特許文献1に開示されたようなエッジライト法による欠陥検査装置が知られている。
【0003】
特許文献1の欠陥検査装置は、ガラス基板の側面(端面)からガラス基板の内表面で全反射するように一方向に指向性を有する照明光を斜めに入射して、ガラス基板の内部を照明し、ガラス基板の内部又は表面の欠陥によって散乱される散乱光を受光部によって検出するものである。
【0004】
特許文献1の前記受光部は、平行に配設された複数台のラインセンサカメラによって構成され、前記照明光の出射方向に沿ったガラス基板の幅方向の全域を撮影する。また、複数台のラインセンサカメラの受光方向と、ガラス基板の表面の法線方向との間の角度は0°に設定されている。すなわち、複数台のラインセンサカメラの受光方向は、ガラス基板の表面に対して直交方向に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3329233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラス基板の表面は、ガラス基板の搬送中に、搬送ローラに付着しているカレットと接触する場合があり、このカレットとの接触によって前記表面に長径10μm程度の微細な凹み傷、剥離傷(以下、これらを総称して微細傷という)が発生することがある。FPD用ガラス基板では、前記微細傷に起因する歩留りの低下が問題視されている。
【0007】
特許文献1に開示された欠陥検査装置は、ガラス基板に内在している長径50μm以上の大きさの泡等の欠陥を検出対象としているため、前述した微細傷を検出することができない。すなわち、長径50μm以上の欠陥は、散乱光の輝度が大きいが、微細傷の散乱光は前記欠陥の輝度と比較してはるかに小さいためであり、特許文献1の装置では、このような微細傷の散乱光を検出するための工夫はなされていない。微細傷を検出するためには、顕微鏡精査を行うことが考えられるが、顕微鏡精査によって統計的に意味のあるデータ、例えば、微細傷の発生頻度を特定するデータを得るには膨大な時間と費用が必要であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、板状透明体の表面に存在している長径10μm程度の微細傷を、顕微鏡精査を行うことなく検出することができる板状透明体の欠陥検査装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、板状透明体の第1表面に存在する欠陥に光を照射し散乱させて前記欠陥を検査する板状透明体の欠陥検査装置であって、前記板状透明体の第1側面に光を照射する第1投光器と、前記板状透明体の第1側面に対向する第2側面に光を照射する第2投光器と、前記第1投光器からの光によって生じた前方散乱光を受光する第1受光器と、前記第2投光器からの光によって生じた前方散乱光を受光する第2受光器と、を備え、前記第1受光器の受光方向と、前記第1表面に対向する第2表面の法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であり、前記第2受光器の受光方向と、前記法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であることを特徴とする板状透明体の欠陥検査装置を提供する。
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、板状透明体の第1表面に存在する欠陥に光を照射し散乱させて前記欠陥を検査する板状透明体の欠陥検査方法であって、前記板状透明体の第1側面に第1投光器から光を照射し、前記板状透明体の第1側面に対向する第2側面に第2投光器から光を照射し、前記第1側面に照射された光によって生じた第1前方散乱光を第1受光器によって受光し、前記第2側面に照射された光によって生じた第2前方散乱光を第2受光器によって受光し、前記第1前方散乱光の受光方向と、前記第1表面に対向する第2表面の法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であり、前記第2前方散乱光の受光方向と、前記法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であることを特徴とする透明板状体の欠陥検査方法を提供する。
【0011】
また、本発明の板状透明体の欠陥検査装置においては、前記第1側面から前記第2側面までの観測領域において、前記第1受光器及び前記第2受光器による観察部位に到達する光量が一定となるように、前記第1投光器の照明光の出力強度及び前記第2投光器の照明光の出力強度を制御する制御手段と、前記第1受光器及び前記第2受光器の総受光量の積分値に対する前記欠陥の深さが予め記憶され、前記第1受光器及び前記第2受光器の総受光量の積分値を算出し、該積分値に基づいて前記欠陥の深さを算出する演算装置と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明の板状透明体の欠陥検査方法においては、前記第1側面から前記第2側面までの観測領域において、前記第1受光器及び前記第2受光器による観察部位に到達する光量が一定となるように、前記第1投光器の照明光の出力強度及び前記第2投光器の照明光の出力強度を制御し、前記第1受光器及び前記第2受光器の総受光量の積分値を算出し、該積分値に基づいて前記欠陥の深さを算出することが好ましい。
【0013】
本発明の特徴は、特許文献1の装置に対し、受光器の受光方向を変更し、板状透明体の第1表面に存在している微細傷に強い受光感度を有する受光角度θ(0°<θ≦60°、好ましくは30°≦θ≦45°)に、受光器の受光方向を設定したことにある。また、受光器による観察部位に到達する照明光の光量が一定となるように、投光器側の出力強度を制御することで、受光器側のダイナミックレンジ不足を補い、受光器側で信号補正を行うことなく、微細傷の検出を可能にしたことにある。更に、双方の受光器で検出された総受光量(輝度)を積分した値と微細傷の深さとが相関関係(比例関係)にあることを実験にて見出し、この知見に基づき、受光信号強度に基づいて微細傷の深さを算出したことにある。
【0014】
本発明では、板状透明体に内在する長径50μm以上の大きさの泡等の欠陥も検出することもできるが、この欠陥による前方散乱光の輝度は、微細傷の前方散乱光の輝度と比較してはるかに大きい。よって、双方の欠陥を輝度レベルで判別することが容易になるので、双方の欠陥を判別する精査が不要となる。したがって、輝度レベルにしきい値を持たせることにより、微細傷のみを抽出して検出することができる。また、受光信号強度に基づき微細傷の深さを算出することができるので、深さ別発生頻度等のデータもタイムリーに把握することができる。
【0015】
本発明の具体的な構成は、板状透明体の対向する第1側面、第2側面から、一方向に指向性を有する強力なシート状の照明光を第1投光器、第2投光器から投入し、この照明光を板状透明体の内表面で全反射させて板状透明体の内部を照明する。そして、観察部位において、板状透明体の内部及び表面に存在する傷(泡、微細傷)に特化した前方散乱光を欠点信号として第1受光器、第2受光器で捉える。
【0016】
この際、板状透明体に付着している汚れ等の誤認識を抑制しつつ、板状透明体の表面の微細傷に強い受光感度を有する受光角度θ(0°<θ≦60°、好ましくは30°≦θ≦45°)に受光器の受光方向を設定する。
【0017】
また、エッジライト法では、照明光が投入される板状透明体の側面から観察部位が離れるに従って、観察部位に到達する光の光量(密度)が指数関数的に減少することが知られている。従来では、受光器側で感度を補正することにより、観察部位に到達する光の光量があたかも同一となるように調整していたが、本件では観察部位に到達する光量が実質的に一様となるように、投光器側の出力強度を制御することで、受光器側のダイナミックレンジ不足を補う。例えば、どの観察部位においても、到達する光量が一定となるように、第1及び第2の投光器の出力強度を制御すればよい。
【0018】
これにより、本発明によれば、長径10μm程度の微細傷に対しても、観察部位の位置に関係無く検出感度を維持することができる。また、微細傷の深さに相関のある信号強度に基づき微細傷の深さを得ることができる。よって、本発明は、顕微鏡精査を行うことなく、微細傷を検出することができ、また、微細傷の発生頻度の特定、及び微細傷の深さの頻度の特定が可能になる。
【0019】
なお、第1、第2の受光器としてはラインセンサを適用することが好ましく、このラインセンサの配置方向を、第1、第2の投光器による照明光の出射方向に対して直交する方向とすることが検出感度を維持できるため好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上本発明に係る板状透明体の欠陥検査装置及びその方法によれば、顕微鏡精査を行うことなく、微細傷を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る板状透明体の欠陥検査装置の全体斜視図
【図2】ガラス基板の要部を拡大した縦断面図
【図3】図1に示した欠陥検査装置の構成を示したブロック図
【図4】投光器と受光器の構成を示した側面図
【図5】図4の平面図
【図6】受光器の視野角度依存性を示したグラフ
【図7】輝度積分値と微細傷の深さとの関係を示したグラフ
【図8】測定部位の位置に対する投光器の光量制御を説明したグラフ
【図9】投光器としてファイバーライトガイドを使用した場合の構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る透明板状体の欠陥検査装置及びその方法の好ましい実施の形態を詳説する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る板状透明体の欠陥検査装置10の全体構成を示した斜視図である。同図に示すように、切断されたまま、もしくは面取りされた側面を有するガラス基板Gは、ガイドローラ11、11、…により搬送路上を搬送され、欠陥検査装置10に投入される。この欠陥検査装置10は、矩形状に加工されたFPD用ガラス基板Gを検査対象とし、特に図2の如くガラス基板Gの下面(第1表面)G1に存在している微細傷12、14を検査するための装置である。なお、図2では、厚さ0.7mm以下のガラス基板Gに対して、長径10μm程度の微細傷12、14を誇張して示している。また、図1では、水平方向に直交する二軸の方向をX方向、Y方向と示している。
【0024】
図1に示す欠陥検査装置10はテーブル16、投光器18(第1投光器)、投光器20(第2投光器)、受光器22(第1受光器)、受光器24(第2受光器)、オートフォーカスレンズ26を備えた電子カメラ付き顕微鏡28等から構成される。また、欠陥検査装置10を構成する前記各部材18〜28は、図3に示すCPU(制御手段)30によって統括制御されている。このCPU30による制御については後述する。
【0025】
図1の如く、ガラス基板Gは検査対象の下面G1(図2参照)が、テーブル16上に水平に載置される。また、このガラス基板Gは、不図示の保持部材によってテーブル16上に水平に位置決めされて保持される。
【0026】
投光器18は、テーブル16に保持されたガラス基板Gの図1中左側面(第1の側面)G2に、そのケース32に形成されているスリット状の出射口32Aが対向配置される。したがって、出射口32Aから出射されたシート状の照明光がガラス基板Gの左端面G2に向けて出射される。この照明光は、ガラス基板Gの左側面G2からガラス基板Gの内部に入射し、ガラス基板Gの内表面で全反射されながら、図1のX方向において左方から右方に向けて伝播される。これによって、ガラス基板Gの内部が前記照明光によって照明される。
【0027】
また、投光器18のケース32内には、図4の側面図、図5の平面図に示すように高輝度の光を発光するLED光源34、ライトガイド36、及びシリンドリカルレンズ38が収納される。これによって、LED光源34からの高輝度の照明光がライトガイド36、及びシリンドリカルレンズ38を介して平行光となり出射口32Aから左端面G2に向けて出射される。なお、LED光源34は、図3に示すその電源40がCPU30によってON/OFF制御されることにより、点灯/消灯される。
【0028】
図1に示すように投光器20は、テーブル16に保持されたガラス基板Gの図1中右側面(第2の側面)G3に、そのケース42に形成されているスリット状の出射口42Aが対向配置される。したがって、出射口42Aから出射されたシート状の照明光がガラス基板Gの右端面G3に向けて出射される。この照明光は、ガラス基板Gの右側面G3からガラス基板Gの内部に入射し、ガラス基板Gの内表面で全反射されながら、図1のX方向において右方から左方に向けて伝播される。これによって、ガラス基板Gの内部が前記照明光によって照明される。また、投光器20のケース42内には、図4、図5に示す高輝度の光を発光するLED光源44、ライトガイド46、及びシリンドリカルレンズ48が収納される。これによって、LED光源44からの高輝度の照明光がライトガイド46、及びシリンドリカルレンズ48を介して平行光となり出射口42Aから右側面G3に向けて出射される。LED光源44もLED光源34と同様に、図3の電源50がCPU30によってON/OFF制御されることにより、点灯/消灯される。
【0029】
また、図1に示したケース32、42は、各々の出射口32A、42AがX方向において対向するようにY方向移動部52に搭載されている。
【0030】
Y方向移動部52は、梁部54及び一対の脚部56、58からなる門型に構成され、テーブル16をX方向に跨ぐように、テーブル16を支持する基台60に立設されている。ケース32は脚部56に固定されるとともに、ケース42は脚部58に固定されている。脚部56、58の下部には、不図示のボールナットが取り付けられており、これらのボールナットが、基台60にY方向に配設されている、ねじ棒(ボールねじ)62、64にそれぞれ螺合されている。これらのねじ棒62、64は、基台60に回転自在に支持されるとともに、図3のCPU30によって同期制御されるサーボモータ66、68に連結されている。したがって、サーボモータ66、68によってねじ棒62、64が同時に、かつ同方向に、そして同速度で回転されることにより、Y方向移動部52が基台60に対しY方向に沿って移動する。この動作によって、ケース32が左側面G2に沿って、そしてケース42が右側面G3に沿ってそれぞれ移動され、ガラス基板Gの指定された観察部位を照明する。なお、図5のガラス基板Gに示した○印Pが観察部位である。
【0031】
なお、LED光源34、44は、後述する受光器22、24による同一の観察部位Pに到達する照明光の光量が、どの観察部位においても一定となるように、CPU30によって出力強度が制御されている。これにより、受光器22、24側のダイナミックレンジ不足を補うことができ、受光器22、24側で信号補正を行うことなく、図2に示した微細傷12、14の検出が可能となっている。
【0032】
図1、図4に示した受光器22は、投光器18からの照明光によって生じた前方散乱光、すなわち、ガラス基板Gの下面G1の観察部位Pに存在している微細傷14で散乱された前方散乱光を受光する。また、受光器24は、投光器20からの照明光によって生じた前方散乱光、すなわち、ガラス基板Gの下面G1の観察部位Pに存在している微細傷12で散乱された前方散乱光を受光する。なお、受光器22、24による観察部位Pは一箇所であり、その観察部位Pに微細傷14が存在している場合には、その前方散乱光が受光器22によって捉えられ、また、観察部位Pに微細傷12が存在している場合には、その前方散乱光が受光器24によって捉えられる。
【0033】
図2の微細傷12、14は形状が異なっており、例えば微細傷12のみ存在している場合には、その傷形状の特徴から微細傷12の前方散乱光(図2の矢印A)を受光器22によって捉えることができない場合がある。同様に、微細傷14のみ存在している場合には、その傷形状の特徴から微細傷14の前方散乱光(図2の矢印B)を受光器24によって捉えることができない場合がある。すなわち、ガラス基板Gの一方の側だけに投光器と受光器を設置した場合には、微細傷12、14の傷形状に起因して検出漏れが生じる。
【0034】
これに対して実施の形態では、投光器18、20、及び受光器22、24をガラス基板Gの両側に設置しているので、微細傷12、14の形状に依存することなく、形状の異なる微細傷12、14を検出することができる。
【0035】
受光器22、24は、図1のY方向移動部52の梁部54に吊り下げ支持されたプレート70に取り付けられている。また、受光器22、24は、図4の一点鎖線で示した各々の受光方向と、ガラス基板Gの下面G1に対向する上面(第2表面)G4の法線方向との間の角度θ、θが25°となるように傾斜してプレート70に固定されている。なお、各々の受光方向が交差する位置が観察部位Pである。また、前記角度θ、θは25°に限定されるものではなく、後述するように0°<θ≦60°、0°<θ≦60°が好ましく、30°≦θ≦45°、30°≦θ≦45°がより好ましい。更に、θとθとを異なる角度に設定してもよい。
【0036】
実施の形態では、受光器22、24として、多数の受光素子が直線状に配列されたラインセンサが適用されている。このラインセンサの多数の受光素子の配列方向は、投光器18、20による照明光の出射方向(X方向)に対して直交するY方向に設定されている。これにより、観察部位Pは受光素子の数に応じた線分の範囲として捉えられ、その線分を繋ぎ合わせるように投光器18、20、及び受光器22、24がY方向移動部52によって移動される。これにより、ガラス基板Gの所定のX方向位置におけるY方向に沿った観察部位Pの微細傷12、14の欠陥検査が行われる。
【0037】
一方、図1に如く、プレート70の上部の平坦部70Aには、不図示のボールナットが取り付けられ、このボールナットが、梁部54にX方向に配設されている、ねじ棒(ボールねじ)72に螺合されている。このねじ棒72は、梁部54に回転自在に支持されるとともに、図3のCPU30によって制御されるサーボモータ74に連結されている。したがって、サーボモータ74によってねじ棒72が回転されることにより、図1のプレート70がX方向に沿って移動する。この動作によって、ガラス基板GのX方向位置における観察部位Pが設定される。
【0038】
また、プレート70には、電子カメラを備えた顕微鏡28が取り付けられている。この顕微鏡28のフォーカスレンズ26は、観察部位Pの鉛直方向の上方に配置され、フォーカスレンズ26によって得られた観察部位Pの拡大像が前記電子カメラで撮像される。電子カメラからの撮像信号は、図3のCPU30に内蔵された画像信号処理装置によって画像処理され、画像処理された観察部位の高倍率の拡大映像がモニタ76に表示される。なお、モニタ76には、受光器22、24で捉えた観察部位Pの画像も表示される。また、フォーカスレンズ26は、オートフォーカスレンズである。
【0039】
次に、前記の如く構成された欠陥検査装置10の特徴について説明する。
【0040】
実施の形態の欠陥検査装置10の特徴は、特許文献1の装置に対し、受光器22、24の受光方向を変更し、ガラス基板Gの下面G1に存在している微細傷12、14に強い受光感度を有する受光角度θ、θ(0°<θ≦60°、0°<θ≦60°が好ましく、30°≦θ≦45°、30°≦θ≦45°)に、受光器22、24の受光方向を設定したことにある。
【0041】
図6のグラフは、横軸が受光器22、24の視野入射角度(受光角度θ、θ)であり、左側の縦軸が片側の受光器22(又は受光器24)で受光した輝度を積分して得られた積算値であり、右側の縦軸が双方の受光器22、24で受光した輝度を積分して得られた積算値の和である。すなわち、積算値が高い程、微細傷12、14の検出感度が高いことを意味している。
【0042】
図6のグラフによれば、視野入射角度が0°<θ≦60°、0°<θ≦60°の範囲において、積算値のピークが約38°にある。視野入射角度が0°の場合には、積算値が小さいために検査感度が悪く、視野入射角度が60°を超えた場合も同様であった。また、視野入射角度が60°を超えると、受光器22、24がガラス基板Gに近接し過ぎてガラス基板Gに接触する場合があるので好ましくない。このような観点から受光角度θ、θは、0°<θ≦60°、0°<θ≦60°に設定することが必須である。また、高い検出感度を得ようとする場合には、図6のグラフから30°≦θ≦45°、30°≦θ≦45°に設定することが好ましい。
【0043】
また、実施の形態の欠陥検査装置10の特徴は、受光器22、24による観察部位に到達する照明光の光量が一定となるように、投光器18、20側の出力強度をCPU30によって制御することで、受光器22、24側のダイナミックレンジ不足を補い、受光器22、24側で信号補正を行うことなく、微細傷12、14の検出を可能にしたことにある。
【0044】
更に、実施の形態の欠陥検査装置10は、双方の受光器22、24で検出された総受光量(輝度)を積分した値と微細傷12、14の深さとが相関関係(比例関係)にあることを実験にて見出し、この知見に基づき、受光信号強度に基づいて微細傷の深さを算出したことにある。
【0045】
図7のグラフは、縦軸が受光器22、24で検出された総受光量(輝度)を積分した値であり、横軸が微細傷12、14の深さを示している。同グラフによれば、双方の関係が比例関係にあることが分かる。
【0046】
一方、実施の形態の欠陥検査装置10では、ガラス基板Gに内在する長径50μm以上の大きさの泡等の欠陥も検出することもできるが、この欠陥による前方散乱光の輝度は、微細傷12、14の前方散乱光の輝度と比較してはるかに大きい。よって、双方の欠陥を輝度レベルで判別することが容易になるので、双方の欠陥を判別する精査が不要となる。したがって、微細傷12、14のみを抽出して検出することができる。また、CPU30の記憶部には、図7のグラフの前記総受光量(輝度)を積分した値に対する微細傷12、14の深さが記憶されている。CPU30は、受光器22、24から出力される受光信号強度に基づいて、微細傷12、14の深さを算出する。これにより、深さ別発生頻度等のデータもタイムリーに把握することができる。
【0047】
ところで、エッジライト法では、照明光が投入されるガラス基板Gの側面G2、G3から観察部位Pが離れるに従って、観察部位Pに到達する光の光量(密度)が指数関数的に減少する。従来の装置では、受光器側で感度を補正していたが、実施の形態の欠陥検査装置10では、観察部位Pに到達する光量が一様となるように、投光器18、20側の出力強度をCPU30が制御することで、受光器22、24側のダイナミックレンジ不足を補う。例えば、どの観察部位Pにおいても、到達する光量が一定となるように、投光器18、20の出力強度をCPU30が制御すればよい。
【0048】
すなわち、図8に示すグラフの横軸の如く、観察部位Pが投光器から離れるに従って、投光器18、20の出力をグラフの縦軸の如く増加させる。それに対して、観察部位Pが投光器に近づくに従って、投光器18、20の出力を減少させる。それによって、観察部位Pに到達する光量が常に一定となる。
【0049】
つまり、CPU30の記憶部には、左側面G2から右側面G3までのX方向における観察部位Pに応じた各投光器18、20の出力値が記憶されている。CPU30は、観察部位Pが不図示の入力手段(例えば、キーボード)から入力されると、サーボモータ68を駆動制御し、受光器22、24による観察部位を指定された観察部位Pに対応する位置に移動するとともに、投光器18、20の出力をそれぞれ制御して、その観察部位Pにおける光量を一様にする。
【0050】
これにより、本発明によれば、長径10μm程度の微細傷12、14に対しても、観察部位Pの位置に関係無く検出感度を維持することができる。また、微細傷12、14の深さに相関のある信号強度に基づき微細傷12、14の深さを得ることができる。
【0051】
以上の如く実施の形態の欠陥検査装置10は、顕微鏡精査を行うことなく、微細傷12、14を検出することができ、また、微細傷12、14の発生頻度の特定、微細傷12、14の深さの頻度の特定が可能になる。
【0052】
なお、欠陥検査装置10に搭載された顕微鏡28は、本装置10において必須ではないが、受光器22、24によって検出された微細傷12、14を確認する場合に有効である。
【0053】
また、受光器22、24として、ラインセンサを適用し、このラインセンサの受光素子の配列方向を、投光器18、20による照明光の出射方向に対して直交する方向としたので検出感度を維持できる。
【0054】
更に、実施の形態では、ガラス基板Gの下面G1の微細傷12、14を検出する装置であるが、上面G4の微細傷12、14を検出する場合には、ガラス基板Gの下方に、同様構成の投光器18、20と受光器22、24を設置すればよい。
【0055】
更にまた、実施の形態では、ガラス基板Gの欠陥検査装置10について説明したが、検査対象の板状透明体はガラス基板Gに限定されず、例えば樹脂製等の板状透明体に実施の形態の欠陥検査装置10を適用することができる。
【0056】
また、実施の形態では照明光源にLED光源34、44を用いたが、これに限らず例えば、メタルハライドランプ、又はレーザ等の高輝度照明光を出射する光源を用いてもよい。図9(A)は、ファイバーライトガイド76を使用した投光器18Aの上面図、図9(B)は、その側面図である。すなわち、図5に示したライトガイド36に代えてファイバーライトガイド76を使用することもできる。投光器20についても同様である。
【0057】
更にまた、実施の形態では、ガラス基板Gをテーブル16に載置したが、受光器22、24の被写界深度の許容範囲内にガラス基板Gの平面レベルを維持できれば、テーブル16を省略できる。
【符号の説明】
【0058】
10…欠陥検査装置、12…微細傷、14…微細傷、16…テーブル、18…投光器、20…投光器、22…受光器、24…受光器、26…オートフォーカスレンズ、28…顕微鏡、30…CPU、32…ケース、32A…出射口、34…LED光源、36…ライトガイド、38…シリンドリカルレンズ、40…電源、42…ケース、42A…出射口、44…LED光源、46…ライトガイド、48…シリンドリカルレンズ、50…電源、52…Y方向移動部、54…梁部、56…脚部、58…脚部、60…基台、62…ねじ棒(ボールねじ)、64…ねじ棒(ボールねじ)、66…サーボモータ、68…サーボモータ、70…プレート、70A…平坦部、72…ねじ棒(ボールねじ)、74…サーボモータ、76…ファイバーライトガイド、P…観察部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状透明体の第1表面に存在する欠陥に光を照射し散乱させて前記欠陥を検査する板状透明体の欠陥検査装置であって、
前記板状透明体の第1側面に光を照射する第1投光器と、
前記板状透明体の第1側面に対向する第2側面に光を照射する第2投光器と、
前記第1投光器からの光によって生じた前方散乱光を受光する第1受光器と、
前記第2投光器からの光によって生じた前方散乱光を受光する第2受光器と、を備え、
前記第1受光器の受光方向と、前記第1表面に対向する第2表面の法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であり、
前記第2受光器の受光方向と、前記法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であることを特徴とする板状透明体の欠陥検査装置。
【請求項2】
前記第1側面から前記第2側面までの観測領域において、前記第1受光器及び前記第2受光器による観察部位に到達する光量が一定となるように、前記第1投光器の照明光の出力強度及び前記第2投光器の照明光の出力強度を制御する制御手段と、
前記第1受光器及び前記第2受光器の総受光量の積分値に対する前記欠陥の深さが予め記憶され、前記第1受光器及び前記第2受光器の総受光量の積分値を算出し、該積分値に基づいて前記欠陥の深さを算出する演算装置と、
を備えた請求項1に記載の板状透明体の欠陥検査装置。
【請求項3】
板状透明体の第1表面に存在する欠陥に光を照射し散乱させて前記欠陥を検査する板状透明体の欠陥検査方法であって、
前記板状透明体の第1側面に第1投光器から光を照射し、
前記板状透明体の第1側面に対向する第2側面に第2投光器から光を照射し、
前記第1側面に照射された光によって生じた第1前方散乱光を第1受光器によって受光し、
前記第2側面に照射された光によって生じた第2前方散乱光を第2受光器によって受光し、
前記第1前方散乱光の受光方向と、前記第1表面に対向する第2表面の法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であり、
前記第2前方散乱光の受光方向と、前記法線方向との間の角度θが0°<θ≦60°であることを特徴とする板状透明体の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記第1側面から前記第2側面までの観測領域において、前記第1受光器及び前記第2受光器による観察部位に到達する光量が一定となるように、前記第1投光器の照明光の出力強度及び前記第2投光器の照明光の出力強度を制御し、
前記第1受光器及び前記第2受光器の総受光量の積分値を算出し、該積分値に基づいて前記欠陥の深さを算出する請求項3に記載の板状透明体の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7993(P2012−7993A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143889(P2010−143889)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】