説明

板紙の製造方法

【課題】アルミニウム分を多く含むパルプを使用する場合や炭酸カルシウムを添加しない場合でも良好なサイズ性と良好な立ち上がり性を有する板紙を製造する方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)並びにケテンダイマー系サイズ剤(B)を用いて、古紙パルプを含む原料パルプの乾燥重量に対しアルミニウム原子を硫酸アルミニウム・16水和物換算1重量%以上含有する原料パルプをpH6〜8で抄造する板紙の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用中性サイズ剤として、通常、ロジン系、アルケニル無水コハク酸系(以下、ASA系)、アルキルあるいはアルケニルケテンダイマー系(AKD系)のものが使用されている。特に、板紙系においてはロジン系のいわゆる中性ロジンサイズ剤が一般的に用いられている。これはアルケニル無水コハク酸系のサイズ剤は抄紙用具を汚し操業性に重大な問題があること、AKD系は特に板紙系においては抄紙直後に所望のサイズ効果が発現しない、いわゆるサイズ効果の立ち上がりが遅いという問題があるためロジン系サイズ剤が多用されている。しかし、近年、抄紙pHの中性化が進んだことと天然物であるロジンの価格変動が大きいことから、板紙系においてもASA系サイズ剤やAKD系サイズ剤を用い、特に硫酸アルミニウムを添加しない、あるいは極少量添加するにとどめて抄紙用具の汚れを軽減したASA系サイズ剤を使用する製造法の提案がされている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、ASA系サイズ剤はドライヤーパートでの揮発や抄紙系内で粘着性の強いアルケニルコハク酸のカルシウム塩を生成するため、依然として抄紙用具の汚れの問題があった。また、硫酸アルミニウムの使用量が少なくなると、古紙が多用されるにもかかわらず高い強度を求められる板紙においてポリアクリルアミド系の紙力剤の効果が十分得られないという問題があった。一方、AKD系サイズ剤の立ち上り性改善として、炭酸カルシウム由来の重炭酸イオンやアミノ基を有する塩基性高分子が有効であり、特にポリアミドアミンのエピクロロヒドリン変性物やジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合物などの改善効果が高いことが知られている(非特許文献1)。
【0004】
また、(メタ)アクリルアミドとジアリルアミンあるいはその塩との共重合物(A)を分散剤としたアルキルケテンダイマーサイズ剤が提案されている(特許文献4参照)が(メタ)アクリルアミドとジアリルアミンあるいはその塩との共重合物を分散剤とした場合、安定な分散剤が得られないという問題があった。また、AKD系サイズ剤は、古紙を含みさらに一定量以上のアルミニウム分を含有する場合やサイズ発現性を促進する炭酸カルシウムが添加されない板紙の場合、そのサイズ発現性は弱くなり、ポリアミドアミンのエピクロロヒドリン変性物などを用いても立ち上がりが遅いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−052506号公報
【特許文献2】特開2007−113126号公報
【特許文献3】特開2007−186822号公報
【特許文献4】特開平06−299494号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nordic Pulp and PaperResearch Journal P.202 Vol23No.2 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルミニウム分を多く含むパルプを使用する場合や炭酸カルシウムを添加しない場合でも良好なサイズ性と良好な立ち上がり性を有する板紙を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定のアクリルアミド系化合物とケテンダイマー系サイズ剤を用いることで前記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)並びにケテンダイマー系サイズ剤(B)を用いて、古紙パルプを含む原料パルプの乾燥重量に対しアルミニウム原子を硫酸アルミニウム・16水和物換算1重量%以上含有する原料パルプをpH6〜8で抄造する板紙の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルミニウム分を多く含むパルプを使用する場合や炭酸カルシウムを添加しない場合でも良好な立ち上がり性を有する板紙を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)(以下、(a1)成分という。)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)(以下、(a2)成分という。)を含有する重合成分(a)(以下、(a)成分という。)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)(以下、(A)成分という。)並びにケテンダイマー系サイズ剤(B)(以下、(B)成分という。)を用いて、古紙パルプを含む原料パルプの乾燥重量に対しアルミニウム原子を硫酸アルミニウム・16水和物換算1重量%以上含有する原料パルプをpH6〜8で抄造することを特徴とする。原料パルプには、(A)成分、(B)成分の他、硫酸アルミニウム・16水和物(C)(以下、(C)成分という)、分岐構造を有する両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(D)(以下、(D)成分という)の他に公知の添加剤を用いてもよい。
【0012】
本発明で用いられる原料パルプは古紙パルプを含み、原料パルプの乾燥重量に対しアルミニウム原子を硫酸アルミニウム・16水和物換算1重量%以上含有するものである。古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙、製本、印刷工場、裁断所等において発生する裁落、損紙、幅落としした古紙である上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を解離した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に平版、凸版、凹版印刷等、電子写真方式、インクジェット記録方式などにより印字された古紙、及び水性、油性インクや、鉛筆などで筆記した古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ等を用いることができる。また、古紙パルプに加え、各種の機械パルプ及び/又は化学パルプを単独で又は2種以上を混合して用いることもできる。古紙パルプの含有量は特に限定されないが、通常は60〜100重量%程度である。
【0013】
(a1)成分としては、アクリルアミド及びメタクリルアミドを用いることができる。
【0014】
(a2)成分としては、ジアリルアミン又はその塩を用いることができる。ジアリルアミンとは一般式(1):RNRで表わされる化合物であってR及びRがアリル基(CH=CHCH−)又はメタリル基(CH=C(CH)CH−)であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子である化合物である。なお、R及びRは同一であっても、異なっていてもよい。(a2)成分としては、具体的には、たとえば、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルブチルアミン、ジメタリルアミンなどが挙げられる。ジアリルアミンの塩としては、前記ジアリルアミンの塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、又はギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸の塩が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
なお、(a)成分には必要に応じてアニオン性モノマー(a3)(以下、(a3)成分という。)、カチオン性モノマー(a4)(以下、(a4)成分という。)、ノニオン性モノマー(a5)(以下、(a5)成分という。)等を含有してもよい。
【0016】
(a3)成分としては、アニオン性官能基を有し、ラジカル重合性官能基を1つ有するモノマーであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(−SOH)、リン酸基(−O−P(=O)(OH))、などが挙げられる。具体的には、カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、フェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート、メタクロイル・オキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、アリルアルコールアシッドホスフェートなどが挙げられる。なお、これらのアニオン性官能基は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類やアンモニアやアミン類によるアンモニウム塩となっていてもよい。これらのモノマーは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
(a4)成分としては、カチオン性官能基を有し、ラジカル重合性官能基を1つ有するモノマーであって、(a2)成分以外のものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。カチオン性官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基などが挙げられる。これらの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。なお、これらのカチオン性官能基は、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などの無機酸あるいは有機酸の塩類となっていてもよい。また、3級アミノ基は、一部又は全部が4級化剤で4級アンモニウムイオンとされていてもよい。4級化剤としては、たとえば、メチルクロライド、メチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等のアリールアルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
(a5)成分としては、(a3)成分及び(a4)成分以外のラジカル重合性官能基を1つ有するモノマーであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、炭素数1〜8のアルコール等のアルコール類とアクリル酸もしくはメタクリル酸とのエステル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテル等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
また、(a)成分には必要に応じて架橋性モノマー(a6)(以下、(a6)成分という。)を用いることもできる。(a6)成分は、ラジカル重合性官能基を少なくとも2つ有するものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・エチレンオキサイド付加物トリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸メチル、N,N−ベンジリデンビスアクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルサクシネート、ジアリルアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、N,N−ジアリルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルクロレンデート、グリシジル(メタ)アクリレート等の2官能モノマー、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート等の3官能モノマー、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等の4官能モノマー等が挙げられる。
【0020】
(A)成分は(a1)成分及び(a2)成分を必須成分とする重合成分を重合して得られる。(a1)成分及び(a2)成分の使用量は、通常、(a1)成分が60〜95モル%、(a2)成分が5〜40モル%である。
【0021】
(a3)〜(a6)成分は、任意成分であり、その使用量は特に限定されないが、通常は、(a3)成分を0〜10モル%、(a4)成分を0〜10モル%、(a5)成分を0〜30モル%、(a6)成分を0〜1モル%使用することができる。なお、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分を用いることが、定着性が高い点で好ましく、(a1)成分を65〜89.5モル%、(a2)成分を10〜30モル%、(a3)成分を0.5〜5モル%とすることが好ましい。
【0022】
(A)成分は、(a)成分を重合させることにより得られる。(a)成分の重合法は特に限定されず、公知のラジカル重合法を採用することができる。
【0023】
本発明で用いられる(B)成分はとしては、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマーを使用することができる。具体的には、たとえば、一般式(2):
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、R及びRはC8〜C30の飽和炭化水素基又はC8〜C30の不飽和炭化水素基であり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる化合物を用いることができる。一般式(1)において、R又はRの炭化水素基は、例えば、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル等のアルキル基、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、エイコセニル等のアルケニル基、オクチルフェニル、ノニルフェニル、ドデシルフェニル等の置換フェニル基、ノニルシクロヘキシル等の置換シクロアルキル基、フェニルエチル等のアラルキル基などである。これらの中では、C10〜C25の飽和炭化水素基、C10〜C25の不飽和炭化水素基が好ましく、C14〜C22飽和炭化水素基、C14〜C22の不飽和炭化水素基が特に好ましい。R、Rは直鎖状の炭化水素に限定されるものではなく、分岐状のものや環状のものであってもよい。オクタデシルケテンダイマー、ヘキサデシルケテンダイマー、テトラデシルケテンダイマー、ドデシルケテンダイマーなどが挙げられる。なお、ケテンダイマーは異なる脂肪酸の混合物を二量化したものでもよい。通常は、(B)成分は公知の方法で乳化して、乳化物としたものを使用してもよい。乳化では、例えば、カチオン化澱粉、リグニンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物等を乳化分散剤として用いることができる。乳化分散剤の使用量は特に限定されないが、通常、乳化対象物であるケテンダイマー100重量部に対し、固形分で5〜50重量%程度用いる。乳化法は、特に限定されず公知の方法によればよいが、高圧ホモジナイザーを使用する強制乳化法が好ましい。
【0026】
(C)成分を用いる場合の使用量は特に限定されないが、通常は、原料パルプ(乾燥重量)に、0.5〜2.0重量%添加することが好ましい。当該範囲にすることで、紙力増強剤の効能が向上する結果、濾水性、歩留り性、乾燥紙力増強効果が向上するため好ましい。
【0027】
(D)成分としては、特に限定されず公知の物を使用することができる。(D)成分は市販のものを使用してもよいが、(メタ)アクリルアミド、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、架橋性モノマー、必要に応じてノニオン性モノマーを共重合することによっても得られる。アニオン性モノマーとしては、前記(a3)成分と同じものを、カチオン性モノマーとしては、前記(a4)成分と同じものを、架橋性モノマーとしては前記(a6)成分と同じものを、ノニオン性モノマーとしては、前記(a5)成分と同じものを使用することができる。(メタ)アクリルアミド、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、架橋性モノマーの使用量は特に限定されないが、通常、(メタ)アクリルアミドを59〜98モル%、アニオン性モノマーを1〜20モル%、カチオン性モノマーを1〜20モル%、架橋性モノマーを0〜1モル%用いれば良い。また、ノニオン性モノマーを用いる場合には、0〜30モル%用いれば良い。特に、(メタ)アクリルアミドを86.9〜97モル%、アニオン性モノマーを1〜5モル%、カチオン性モノマーを2〜10モル%、架橋性モノマーを0〜0.1モル%共重合させたものを用いることが好ましい。共重合は公知の方法で行えばよい。(D)成分の分子量は特に限定されないが、通常、重量平均分子量(光散乱法による)を50万〜500万とすることが、好ましい。
【0028】
(A)成分、(B)成分の添加方法は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分を同時に又は(B)成分の添加後に(A)成分を添加することが好ましい。(A)成分及び(B)成分を同時に添加することで(A)成分及び(B)成分の歩留りが向上するため好ましい。また、(B)成分の添加後に(A)成分を添加することで(B)成分の歩留りが向上するため好ましい。
【0029】
(A)成分と(B)成分の使用量は特に限定されないが、通常、原料パルプの乾燥重量に対しそれぞれ(A)成分を0.01〜0.2重量%、B)成分を0.05〜0.3重量%使用することが、薬品を過度に使用することなく目的の効果が得られるため好ましい。
【0030】
(C)成分、(D)成分を用いる場合には、その添加方法、添加量は特に限定されないが、通常は、原料パルプに(C)成分を添加した後に、(D)成分、(B)成分、(A)成分をこの順序で添加することが好ましい。当該順序で添加することによって、紙力とサイズ効果及びサイズ効果の立ち上がり速度を向上させることができる。なお、原料パルプには炭酸カルシウムを添加してもよいが、紙力向上の点からすると、炭酸カルシウムは使用しないことが好ましい。
【0031】
また、本発明においては、これら以外に更に、これら以外の添加薬品としてカチオン澱粉、両性澱粉、カルボキシメチルセルロース等の多糖類やポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン変性物等の湿潤紙力剤、直鎖状高分子量ポリアクリルアミド系の濾水歩留剤等を適宜併用することもできる。
【0032】
本発明においては、必要に応じて、抄紙された紙匹に同一抄紙機上で表面サイズ剤を含有する液を塗布することでき、本発明を実施することで塗布後の乾燥性や抄速を落とすことなく目的とする表面の改質された紙を抄造することができる。使用する表面サイズ剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力を向上するもの、スチレン・アクリル酸(メタクリル酸)共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体若しくはこれらと他のモノマーとの共重合体からなる水溶液やエマルジョン、スチレン・マレイン酸共重合体、オレフィン・マレイン酸共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸共重合体、スチレン・カチオン性モノマーとの共重合体及びそれらを4級化したもの等の耐水性を向上したり、表面の滑りを制御したりできるものを挙げることができ、それぞれを単独であるいは2種以上を併用して塗布することができる。
【0033】
本発明により得られる板紙としては段ボール紙用の二層以上の抄き合わせで得られるライナーボードや耐水中芯、紙管原紙、塗工白板紙、非塗工白板紙、チップボール紙等が挙げられ、抄き合わせ紙の場合、表層や表下層に本発明を適用することが好ましい。
【0034】
本発明により好適に得られる板紙は、抄造から1時間以内の紙のコッブ吸水度が、60g/m以下であり、かつ、該紙を125℃、15分間熱処理したあとのコッブ吸水度の2倍以下である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0036】
合成例1(ジアリルアミン/アクリルアミド共重合物の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水1330.0部、ジアリルアミン19.4部(0.2モル)を仕込んだ後、35%希硫酸にてpHを7に調整した。窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、70℃まで加熱しイオン交換水、過硫酸アンモニウム3.5部添加し。次いで、70℃で50%アクリルアミド水溶液540.4部(3.8モル)を2時間かけて添加し、70℃で2時間保温した。重合終了後、イオン交換水を加え、不揮発分15.5%、pH3.7、粘度(25℃)2500 mPa・sのアクリルアミド共重合体(A)を得た。
【0037】
合成例2〜5及び比較合成例1
合成例1において、各成分の種類及び使用割合を表1記載のように変更した他は、合成例1と同様の方法により重合体(A)を得た。なお、アクリル酸、イタコン酸を併用する場合は50%アクリルアミド水溶液に添加した後に10%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH7に調整して用いた。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
*表中、AMはアクリルアミト゛、DAAはジアリルアミン、AAはアクリル酸、ITAはイタコン酸、DADMACはN,Nジアリルジメチルアンモニウムクロライドを表す。
【0040】
調製例1(ケテンダイマー系サイズ剤の調製)
アルキルケテンダイマー(ステアリン酸65%、パルミチン酸35%の混合物から誘導したもの)80部と予め90℃で1時間糊化された10%カチオン化澱粉糊液(窒素含有率0.50〜0.60%、酸化澱粉をグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドにてカチオン変性したもの)185部、アニオン性分散剤(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、花王(株)製)の40%水溶液3.75部及び水131.25部を仕込み、80℃に加熱し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で予備分散させた後、同温度にて25MPaの条件下に高圧ホモジナイザー(APV.GAULIN社製)に2回通して分散させた。直ちに25℃まで冷却し、濃度調整のための水を更に加え、不揮発分20%、粘度15mPa・s(25℃)、pH3.5(25℃)、平均粒子径0.8μmのケテンダイマー系サイズ剤(B)を得た。
【0041】
実施例1
段ボール古紙(硫酸アルミニウム含有量2.8%)をパルプ濃度2.0%になる量の水道水を加えビーターを用いて380mlカナディアン・スタンダード・フリーネスまで叩解した。叩解したパルプスラリーを更に水道水で希釈しパルプ濃度1.5%に調整した。このパルプスラリー(pH=7.5)に対パルプ固形分に対し硫酸アルミニウム(C)、分岐型紙力増強剤(荒川化学工業(株)製、ポリストロン1222)(D)、ケテンダイマー系サイズ剤(B)、合成例1〜10で得られた重合体(A)を表2に記載の順序及び添加率(重量)で添加し、抄紙機(TAPPI
Standard Sheet Machine(角型))で、坪量120g/mとなるように抄紙した。手抄きした湿紙を線圧5.5kg/cm、送り速度2m/minの条件のロールプレス機で脱水した。湿紙の乾燥は、回転式ドライヤーを用いて80℃で150秒間の条件で行った。得られた試験紙の乾燥直後、及び、125℃の循風乾燥機で15分間熱キュアし、恒温恒湿(23℃、50%相対湿度)環境下で24時間調湿した後のコッブ吸水度を測定した。その結果を表2に示した。なお、添加率の表示は全て、パルプ固形分に対する各薬品の固形分を百分率で表示した。硫酸アルミニウムは試薬の14〜18水和物を固形分として添加した。
【0042】
実施例2〜12、比較例1〜7
各添加剤の使用順序、使用量を表2のように変更した他は実施例1と同様にして紙を製造した。得られた紙のリングクラッシュ強度、コッブ吸水度の測定結果を表2に示す。
【0043】
(試験方法)
(吸水度試験〔コッブ法〕)
JIS P−8140に準拠して、コッブ吸水度(g/m)を測定した。なお、水との接触時間は2分間とした。
【0044】
(パルプ中の硫酸アルミニウム定量法)
2%濃度のパルプスラリー50gを蒸留水で200gに希釈した後、塩酸によりPHを1に調整し、30℃で12時間攪拌した。冷却後、パルプ固形分を遠心分離機にかけて沈降させ、上澄み液中のアルミニウムイオン濃度を蛍光X線(波長分散型蛍光X線分析装置ZSX−100e(理学電機工業(株)製))により測定する。得られた結果からパルプスラリーの固形分対比のアルミニウム量を硫酸アルミニウム・16水和物重量に換算して表示した。
【0045】
(リングクラッシュ強度)
JIS P8126 板紙の圧縮強さ試験方法に準拠し、比圧縮強さ(比RC)で表示
【0046】
【表2】

表中、Alumは硫酸アルミニウム、PSは分岐型紙力増強剤(荒川化学工業(株)製、ポリストロン1222)、AKDは調製例1で得られたケテンダイマー系サイズ剤、PAEはポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂(荒川化学工業(株)製 アラフィックス255)
、PEIはポリエチレンイミン(BASF社製 ポリミンSK)、PVAmはポリビニルアミン(BASF社製 カチオファストVFH)を表す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)並びにケテンダイマー系サイズ剤(B)を用いて、古紙パルプを含む原料パルプの乾燥重量に対しアルミニウム原子を硫酸アルミニウム・16水和物換算で1重量%以上含有する原料パルプをpH6〜8で抄造する板紙の製造方法。
【請求項2】
アルミニウムを含有する古紙パルプを含む原料パルプの乾燥重量に対し硫酸アルミニウム・16水和物(C)を0.5〜2.0重量%添加する請求項1に記載の板紙の製造方法。
【請求項3】
少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)を、ケテンダイマー系サイズ剤(B)と同時又はケテンダイマー系サイズ剤(B)の添加後に添加する請求項1又は2に記載の板紙の製造方法。
【請求項4】
少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)が、アニオン性モノマー(a3)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項5】
アニオン性モノマー(a3)が、カルボキシル基含有モノマーを含有する請求項4に記載の板紙の製造方法。
【請求項6】
少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)及びケテンダイマー系サイズ剤(B)を原料パルプの乾燥重量に対しそれぞれ0.01〜0.2重量%、0.05〜0.3重量%使用する請求項1〜5のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項7】
分岐構造を有する両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(D)を使用する請求項1〜6のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項8】
原料パルプに硫酸アルミニウム・16水和物(C)、分岐構造を有する両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(D)、ケテンダイマー系サイズ剤(B)並びに少なくとも(メタ)アクリルアミド(a1)及びジアリルアミン系化合物又はその塩(a2)を含有する重合成分(a)を重合して得られる(メタ)アクリルアミド共重合体(A)をこの順番に添加する請求項7記載の板紙の製造方法。
【請求項9】
原料パルプに炭酸カルシウムを添加しない請求項1〜8のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項10】
抄紙された紙匹に同一抄紙機上で表面サイズ剤を含有する液を塗布する請求項1〜9のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項11】
得られる板紙が、抄造から1時間以内の紙のコッブ吸水度が60g/m以下であり、かつ、該板紙を125℃、15分間熱処理したあとのコッブ吸水度の2倍以下である請求項1〜10のいずれかに記載の板紙の製造方法。


【公開番号】特開2012−214918(P2012−214918A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79997(P2011−79997)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】