説明

果実の食味成分評価方法及び評価装置

【課題】 小売店等の末端の店舗等に設置して、消費者に糖度や食べ頃を知らせるのに適する測定方法及び測定装置を提供する。
【解決手段】 メロン評価装置1は、メロン載置台10と、ハロゲンランプ20と、受光部30と、720nm,740nm,770nm,810nmの波長及び全波長の透過光を取り出す光学フィルター40と、光学フィルター40から出力される光信号を検出する受光素子45及び電流増幅器47と、メロンMの糖度,硬度用の検量線を記憶しておくメモリ,特定の波長の光の吸光度に関する情報と検量線とに基づいて糖度及び硬度を算出するためのプログラム等を備えた演算器50と、演算器50の算出結果に基づく表示を行う表示パネル60とを備え、演算器50を、特定の波長付近の光の吸光度に関する情報と検量線とから評価量を算出する際に、全波長の光の吸光度に関する情報で除算する手段として構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の糖度及び/又は硬度(熟度)を測定する方法と装置に係り、特に、小売店等に設置して消費者に果実の糖度や食べ頃などを知らせることのできる小型の簡易型測定装置に適する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、近赤外透過スペクトルによる果実糖度の非破壊測定法が知られている(特許文献1)。また、近赤外線の吸光度から果実の硬度(熟度)を測定する方法も知られている(特許文献2)。さらに、果実の糖度と熟度を測定する方法の提案もある(特許文献3)。
【0003】
特許文献1記載の方法は、近赤外線を果実に照射して得られた透過光の光路中に分光器を介在させて特定波長の吸光度を測定し、得られた吸光度に対して果実の大きさによる補正を行い、重回帰分析を行うものである。
【0004】
特許文献2記載の方法は、果物に照射した光の強度と透過光の強度とに基づき所定波長での吸光度2次微分値を算出し、その大きさによって果肉硬度を判定するものである。
【0005】
特許文献3記載の方法は、果実に光を投射し、果実内で拡散反射された反射光を受光センサで検出し、光の反射率によって果実の熟度及び糖度を検知するものである。
【特許文献1】特開平6−186159号公報
【特許文献2】特開2002−122536号公報
【特許文献3】特開2004−226357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、果実に光を照射して得られる吸光度のデータは、果実の大きさ(柿、ミカン、スイカ、メロン等の種類や同種果実の大きさの相違など)、果実の表面形状(例えば、マスクメロンのネットの形状と照射位置及び受光位置との関係など)、及び果実収穫後の時間の経過等によって変化する。また、例えば、メロンの場合、同種の果実でありながら、赤肉メロンと緑肉メロンといった果肉の色における相違や、春メロンと夏メロンといった具合に栽培及び収穫の時期の相違によっても吸光度データと糖度等との相関が異なる場合がある。
【0007】
上述した特許文献1〜3に記載の各発明は、主として収穫直後の選果場等において果実の糖度等を測定する方法である。
【0008】
一方、出願人らが開発目標としている装置は、小売店等の店頭で消費者あるいは店舗の販売促進係等がその場で操作して、糖度、熟度(硬度)、食べ頃といった情報を提示することのできるものである。こうした装置を考えると、次の様な問題の解決が必要となる。
【0009】
前述の様に、選果場での測定対象は全て収穫直後であるから、収穫後の経過時間は一定である。これに対し、小売店等の店頭に並ぶメロン等の果実は、完熟する前に収穫されて流通に乗ってきたものであって、収穫後の経過時間が一定でない。よって、小売店等で使用するには、収穫後の経過時間が糖度等の推定結果に影響しない様にする必要がある。
【0010】
また、選果場では、例えば赤肉で有名な夕張メロンの産地ならば夕張メロンばかりといった具合に、同時期に同種の果実を取り扱うのに対し、小売店には赤肉のメロンだけでなく、緑肉のメロンも陳列される。加えて、九州地方ではスイカは春から初夏だけといった具合に栽培時期が限られるが、小売店には年中、スイカやメロンが入荷される。従って、小売店等で使用するには、品種や栽培・収穫時期が結果に影響しない様にする必要がある。
【0011】
さらに、マスクメロンの様に、外皮が平坦でない果実においては、測定器に対する置き方の影響も考えなければならない。この点、選果場等では熟練者が装置を操作するのでそれほど問題にならないかも知れないが、小売店等では消費者が操作者となり得ることから、測定器に対する果実の置き方が結果に影響を与えない様にする必要がある。
【0012】
そこで、本願においては、上述した様な各種の影響を受けることなく、小売店等の末端の店舗等に設置して、消費者に糖度や食べ頃を知らせるのに適する測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明の果実の食味成分評価方法は、
(A) 測定対象果実と同種の果実の糖度,硬度等の食味成分の評価量を吸光度計測値から算出するための検量線を予め求めておき、
(B) 測定対象果実に対して近赤外線域を含む光を照射したときの透過光又は内部散乱透過光の測定結果から、当該測定対象果実についての特定の波長の吸光度に関する情報を取得し、
(C) 前記特定の波長の吸光度に関する情報と前記検量線とを用いて前記評価量を算出する様に構成された果実の食味成分評価方法において、
(D) 測定対象果実に対して近赤外線域の光を照射したときの透過光又は内部散乱透過光の測定結果から、当該測定対象果実に対して照射される光の実質的な全波長の吸光度に関する情報をも取得し、
(E) 前記評価情報を算出する際に、前記全波長の吸光度に関する情報で補正を行う様に構成したこと を特徴とする。
【0014】
本発明の果実の食味成分評価方法によれば、従来より知られている(A)〜(C)の手順に加えて、(D)及び(E)の手順をも備え、全波長の吸光度に関する情報で補正を行う点に特徴を有する。
【0015】
これは、特定の波長の吸光度だけだと、周囲の明るさ、果実の置き方(特にメロンではネットの位置と光照射位置及び受光位置との関係)、収穫後の追熟との関係、固体の大きさ・形状の相違等といった測定時の様々な個別の事情の影響を受けて生じる誤差を排除するためである。即ち、上述した様な複雑な誤差の要因の全てが反映されている全波長の吸光度による補正を実行することにより、測定場所や測定時期や測定者の熟練度等に関係なく、適切な値を精度よく算出することができるのである。
【0016】
ここで、本発明における「全波長の吸光度」とは、受光素子等で受光した光の全波長という意味に限定されない。即ち、本発明の趣旨に影響を与えることのない範囲で一部の波長を除く「実質的な全波長の吸光度」で補正すればよいのである。また、食味成分の評価量の説明における「糖度及び硬度」は例示であり、これら以外の食味成分、例えば、酸っぱさ(酸味),辛さ(辛味),苦さ(苦味),渋さ(渋味)といった食味成分の評価への本発明の適用を除外する意味ではない。特定の波長の吸光度によって評価することのできる食味成分であれば、どの様なものであっても構わない。本願が提案する「実質的な全波長の吸光度による補正」を行うことで、種々の誤差の要因を除去できる点は、糖度及び硬度以外の食味成分の評価においても同じく有効だからである。
【0017】
ここで、本願は、上述した補正の方法として、以下の方法を提案する。
(F) 前記特定の波長の吸光度に関する情報を前記全波長の吸光度に関する情報によって実質的に除算した情報を前記評価量の演算に用いることによって前記補正が行われる様に構成すること。
【0018】
全波長の吸光度は、あらゆる誤差の要因の影響を受けた結果を反映していることから、評価量算出のための特定の波長の吸光度が何らかの誤差の要因の影響を受けていれば、除算によって容易に当該影響のない数値に換算することができるからである。この場合、吸光度と検量線とから計算した結果を全波長の吸光度で単純に除算する計算方法を採用してもよいし、各波長の吸光度を全波長の吸光度で除算したものに検量線の値を乗算したものから糖度等を算出するという計算方法を採用してもよい。
【0019】
なお、「全波長の吸光度に関する情報によって実質的に除算する」というのは、単純な除算に限らない。例えば、全波長の吸光度に何らかの係数を乗じた値を用いて除算を実行する様にしてもよい。
【0020】
また、本願は、上記(A)〜(E)又は(A)〜(F)に加え、さらに、以下の構成をも採用することを提案する。
(G) 前記検量線を同種果実の栽培時期に応じて別々に求めておき、これらの検量線の中から測定対象果実の栽培時期に応じた検量線を用いる様にすること。
【0021】
メロンの様に、春作、夏作、秋作、冬作といった様に、栽培時期を意図的にずらして栽培する場合、ハウス栽培といえども外気温や日照時間の影響を受ける。路地栽培の果実はさらに顕著に季節の影響を受ける。こうした果実については、日照時間や気温などの影響により、同種果実といえども、栽培時期によって吸光度と糖度等との関係に差が生じることがある。
【0022】
従って、(G)の構成をも採用することは、上述のメロンの例の様に栽培時期が食味成分の評価量に誤差を与える可能性のある果実について有効となる。なお、栽培時期の影響を受けない果実についても上記(G)の構成を採用して構わない。
【0023】
さらに、本願は、上記構成に加え、さらに、以下の構成をも採用することを提案する。
(H) 前記検量線を、同種果実における品種の相違に応じて別々に求めておき、これらの検量線の中から測定対象果実の品種に応じた検量線を用いる様にすること。
【0024】
例えば、赤肉メロンと緑肉メロンの様に、果肉の色に極端な差がある果実では、果肉の色の関係から吸光度に差が生じることがあるからである。
【0025】
もちろん、(H)の構成の有効性は、メロンに限る訳ではない。他の果実においても、品種毎に検量線を用意すれば、より一層精度のよい糖度等の食味成分評価量を求めることができる。メロンの様に果肉の色が極端に異なる果実にあっては、(H)の構成を採用することは精度向上において有効である。
【0026】
なお、同種果実の品種の相違による影響の少ない果実について上記(H)の構成を採用しても問題はなく、より一層の精度向上が期待できる。
【0027】
ここで、ことメロンについては、以下の構成を採用することを提案する。
(I) 720nm、740nm、770nm及び810nm近傍の特定の4波長の吸光度に関する情報と糖度との対応関係を表す糖度用検量線及び、同じくこれらの4波長の吸光度に関する情報と硬度との対応関係を表す硬度用検量線を予め求めておき、
(K) 前記4波長の内の少なくとも3つ以上の波長の吸光度に関する情報を用いて、糖度及び硬度を算出する様に構成すること。
【0028】
メロンの食味成分評価量としては、糖度及び硬度が重要である。硬度は熟度と呼ばれることもある。また、糖度及び硬度は、それらの検量線を求めると、上記4波長における吸光度に特徴的な現象が表れる。なお、例えば、720nm近傍、770nm近傍及び810nm近傍の3つ波長の吸光度だけで糖度及び硬度を算出しても小売店等の店頭において実施する簡易評価方法としての精度は十分に得られる。よって、4波長の全てを用いる必要はない。しかし、特に、糖度に関してより精度を向上するには、前記4波長の全てを用いることが望ましい。
【0029】
また、上記目的を達成するためになされた本発明の果実の食味成分評価装置は、
(a) 果実の計測部を収納することのできる果実収納部と、果実を支えることのできるリング状の上縁部とを有する果実載置台と、
(b) 該果実載置台に載置された果実に対し、当該果実の表面にほぼ接触し得る光照射口を備え、前記果実載置台の上縁部付近から果実の中心方向に向かって近赤外線域を含む光を照射する光源部と、
(c) 前記果実載置台の果実収納部のほぼ中央に設置され、果実から出射される透過光及び内部散乱透過光を受光する受光部と、
(d) 前記受光手段の周囲に設けられ、前記果実載置台に載置された果実の下面に密着し得る遮光部材と、
(e) 該遮光部材に対して上昇方向の付勢力を付与するバネ部材と、
(f) 前記受光部で受光した光を波長に応じた成分に分けて取り出すことのできる分光手段と、
(g) 測定対象となる果実の糖度,硬度等の食味成分の評価量を吸光度に関する情報から算出するための検量線を記憶しておく記憶手段と、
(h) 前記分光手段で取り出した特定の波長の光の吸光度に関する情報と、前記記憶手段に記憶されている検量線とに基づいて、前記評価量を算出する算出手段と、
(i) 該算出手段の算出結果に基づく果実の食味成分を評価するための情報の表示を行う表示手段と を備えた果実の食味成分評価装置において、
(j) 前記分光手段を、測定対象果実に対して照射される光の内の近赤外域の特定の波長付近の光と、当該測定対象果実に対して照射される光の実質的な全波長の光とを、それぞれ取り出すことのできる手段として構成すると共に、
(k) 前記算出手段を、前記特定の波長付近の光の吸光度に関する情報と前記検量線とから前記評価量を算出する際に、前記全波長の光の吸光度に関する情報で補正を行う手段として構成したことを特徴とする。
【0030】
本発明の果実の食味成分評価装置によれば、(a)〜(i)の構成を用しただけでなく、(j)及び(k)の構成をも採用した結果、測定者が小売店を訪れた消費者の様に、装置の操作に不慣れなものであったとしても、果実の載せ方や、装置の設置場所等の影響を排除することができ、また、測定対象果実の表皮の傷等の影響も排除でき、さらに、測定対象果実が収穫後何日を経過したものであるかという影響も排除して、満足のいく精度にて糖度や硬度を測定することができる。
【0031】
ここで、(e)のバネ部材は、(d)の遮光部材を果実に密着させてその遮光性を有効なものとし、誤差の要因を除去する点で精度向上に寄与する構成要素である。また、(a)の果実載置台は、消費者等が果実を装置にセットするときの極端に不適切な置き方を排除する点で精度向上に寄与しており、また、そのリング状の上縁部が、果実収納部に対する遮光の役割も兼ねる点でも精度向上に寄与する構成要素である。さらに、(b)の光照射手段がリング状の上縁部付近から果実の中心方向に向かって光を照射し、(c)の光検出手段を果実収納部の中央付近に設置する構成を採用することで、果実表面からの反射光によって糖度等の食味成分評価量の算出精度に悪影響を及ぼすのを防ぐと共に、果実の糖度等の性質をより強く反映している果実内部における透過光及び内部散乱光を検出する上で効果を発揮することができる。即ち、本発明装置においては、(a)〜(k)の全ての構成要素の相乗効果によって、一層の精度向上が図られているのである。
【0032】
ここで、本発明の果実の食味成分評価装置においては、さらに、以下の構成をも採用するとよい。
(l) 前記分光手段を、受光素子と、複数の特定の波長の光及び全波長の光を別々に取り出すことのできる切り換え式の光学フィルターとによって構成すること。
【0033】
この(l)の構成を採用すれば、高価な分光器を用いることなく、目的とするデータを得ることができる。ここで、光学フィルターは、光検出手段と果実との間にて回転又はスライドによって透過光を切り換える配置としてもよいし、光検出手段から伸びる光ファイバの途中で回転又はスライドして演算回路に入力する光を特定波長だけにする様に配置してもよい。
【0034】
また、本発明の果実の食味成分評価装置においては、算出手段を以下の様に構成するとよい。
(m) 前記算出手段は、前記特定の波長の吸光度に関する情報を前記全波長の吸光度に関する情報によって実質的に除算した情報を前記評価量の演算に用いることによって前記補正を行う手段として構成されていること。
【0035】
除算は、演算処理自体が簡単なので処理速度が低下する等の問題を生じない。また、本発明の評価方法に関する説明として上述した通り、各種の誤差の要因を排除する上で、全波長データによる除算は極めて有効である。
【0036】
また、本発明の果実の食味成分評価装置においては、さらに以下の構成をも採用するとよい。
(n) 前記記憶手段を、同種果実の栽培時期に応じた複数の検量線を複数記憶した手段として構成すると共に、
(o) 前記算出手段を、測定対象果実の栽培時期に応じて、前記記憶手段に記憶された複数の検量線の中から演算に用いる検量線を選択して前記評価量の算出を行う手段として構成すること。
【0037】
本発明の評価方法の説明として既述した通り、果実によっては、栽培時期により全体的に糖度が高くなったり低くなったりするとか、硬度が高くなったり低くなったりするということがあり得るからである。
【0038】
また、本発明の果実の食味成分評価装置においては、さらに以下の構成をも採用するとよい。
(p) 前記記憶手段を、同種果実における品種の相違に応じた複数の検量線を記憶した手段として構成すると共に、
(q) 前記算出手段を、測定対象果実の品種に応じて、前記記憶手段に記憶された複数の検量線の中から演算に用いる検量線を選択して前記評価量の算出を行う段として構成すること。
【0039】
本発明の評価方法に関して既述した通り、果実によっては、品種によって果肉の色が異なる場合があるといった具合に、吸光度に影響を与える要因を含んでいることがあるからである。
【0040】
また、特に、メロン用の果実の食味成分評価装置としては、さらに以下の様に構成するとよい。
(r) 前記記憶手段には、720nm,740nm,770nm及び810nmの4波長近傍の波長の吸光度に関する情報と糖度との対応関係を数値化した糖度用検量線データベースと、720nm,740nm,770nm及び810nmの4波長近傍の波長の吸光度に関する情報と硬度との対応関係を数値化した硬度用検量線データベースとを記憶しておき、
(s) 前記算出手段を、720nm,740nm,770nm及び810nmの4波長の内の少なくとも3つ以上の波長近傍の波長の吸光度に関する情報を用いて前記評価量の演算を実行する様に構成すると共に、
(t) 前記記憶手段には、さらに、硬度と食べ頃までの日数との関係を特定するための食べ頃特定データをも記憶しておき、
(u) 前記算出手段は、算出した硬度と食べ頃特定データとに基づいて、食べ頃までの日数をも算出する手段として構成し、
(v) 前記表示手段には、食べ頃までの日数をも表示する様に構成したこと。
【0041】
メロンにおいては食味成分の内、糖度及び硬度(熟度)が重要であり、これらは上述の波長の吸光度によって精度よく評価できる。そして、メロンの購入者は、何よりも、何日後に食べると丁度よい食べ頃かを知りたいという要望する。従って、メロンの食味成分評価装置においては、単に糖度や硬度の測定値を知らせるだけでなく、上記(t)〜(v)の構成をも備えて、食べ頃までの日数を情報として提供できることは、需用者の要望に合致する。なお、食べ頃までの日数は、「あと○日」と表示してもよいし、「○日〜△日後」と表示してもよい。また、硬度の表示をする場合、「未熟」,「適熟」,「過熟」といった表示方法としてもよい。食べ頃までの日数は、硬度が上記3段階の評価のどこに該当するかに応じて表示すべきメッセージを固定しておいてもよい。
【0042】
また、上記(r),(s)の構成を採用することで、装置の記憶容量に対してデータベースが占有する容量を小さくすることができ、それにも関わらず、算出結果は十分な精度となる。加えて、評価量の算出に際してのデータベース検索時間も短縮できるというメリットもある。さらに、上述した様な品種毎、栽培時期毎の検量線データを多数揃える際のデータ量抑制と検索時間短縮に大いに寄与する構成となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、小売店等の店頭でメロン等の果実の糖度や硬度(熟度)を測定するために設置したときに、操作に不慣れな消費者が使用しても満足のいく精度の算出結果を得ることが出来る。これにより、消費者は、果実を購入する際に、糖度や食べ頃をほぼ正確に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態は、近赤外域の光を照射して得られる特定波長の吸光度からメロンの糖度及び熟度を算出して評価結果を表示するための装置(以下、「メロン評価装置」という。)である。
【0045】
実施形態のメロン評価装置1は、図1に示す様に、メロン載置台10と、ハロゲンランプ20と、メロン載置台10の中央部に配置された受光部30と、受光部30で受光した光の内の特定の波長の光を通過させる光学フィルター40と、光学フィルター40を通過して入力される光を検出する受光素子45と、受光素子45で検出した結果を用いてメロンの糖度及び硬度を演算する演算器50と、演算器50による演算結果を表示する表示パネル60と、各種の操作スイッチ等を備えた操作パネル70とを備えている。
【0046】
メロン載置台10は、メロンMを支える筒体11によって構成されている。この筒体11は、メロンMの計測部を収納する果実収納部13を十分に確保できる高さとされている。
【0047】
ハロゲンランプ20からは、光ファイバ21が伸ばされており、この光ファイバ21の先に、メロン載置台10を構成する筒体11の上縁部内面側にリング状に形成された光出射口23が備えられている。ハロゲンランプ20は、光ファイバ21及びリング状の光出射口23を介して、筒体11の上縁部内面からメロンMの中心方向に向かって近赤外線域を含む光を照射する。
【0048】
受光部30は、その周囲を取り囲む遮光パッド31に固定されている。この遮光パッド31は、コイルバネ33によって下方から上方へ向かって付勢されている。このコイルバネ33は、筒体11に載せられたメロンMの表面に遮光パッド31を押し付けておくことができる様なバネ高さ及びバネ定数に設計されている。
【0049】
また、受光部30からは光ファイバ35が伸ばされている。光学フィルター40は、この光ファイバ35の先に配置されている。そして、光学フィルター40の先に受光素子45が配置され、受光素子45から出力される信号は電流増幅器47を介して演算器50に入力される。
【0050】
光学フィルター40は、720nm近傍の波長の光を通過させる第1のフィルターを設けた第1窓と、740nm近傍の波長の光を通過させる第2のフィルターを設けた第2窓と、770nm近傍の波長の光を通過させる第3のフィルターと設けた第3窓と、810nm近傍の波長の光を通過させる第4のフィルターを設けた第4窓と、これらいずれのフィルターの設けられていない全波長通過用の第5窓とを備えている。そして、糖度及び硬度の測定の際には、回転によってこれら5つの窓のいずれかを光の通路に配置することができる様に構成されている。
【0051】
演算器50は、CPU,ROM,RAM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。ROMには、後述する各種の演算のためのプログラムが記憶されている。
【0052】
演算器50には、書き換えが可能なROMとして機能し得るメモリ(EEPROM,フラシュメモリ等)が備えられている。このメモリには、720nm近傍、740nm近傍、770nm近傍及び810nm近傍の4波長の吸光度とメロンの糖度との対応関係を数値化した糖度用検量線データベースと、同じくこれら4波長の吸光度とメロンの硬度(熟度)との対応関係を数値化した糖度用検量線データベースとが、栽培時期について春・秋作と夏作、栽培品種について赤肉メロンと緑肉メロンに分けて記憶されている。従って、糖度用検量線データベース及び硬度用検量線データベースは、「赤肉メロンの春・秋作用」、「赤肉メロンの夏作用」、「緑肉メロンの春・秋作用」、「緑肉メロンの夏作用」の各4つ、合計8つが記憶されている。この検量線データベースは、後述する用に、多数の試料を用いたPLS回帰分析によって予め求めたものである。
【0053】
上記メモリには、さらに、メロンの硬度と食べ頃までの日数との関係を数値化した食べ頃特定データベースも記憶されている。この食べ頃特定データベースも、検量線データベースと同様に、「赤肉メロンの春・秋作用」、「赤肉メロンの夏作用」、「緑肉メロンの春・秋作用」、「緑肉メロンの夏作用」の4つが記憶されている。
【0054】
操作パネル70には、これら各4つの糖度用検量線データベース、硬度用検量線データベース及び食べ頃特定データベースの内で、演算に使用するものを選択するためのスイッチが設けられている。スイッチは、赤肉メロンか緑肉メロンかを選択する品種選択スイッチと、春・秋作メロンか夏作メロンかを選択する栽培時期選択スイッチとから構成される。なお、このスイッチは、ユーザーが操作する方式とせずに、装置の設置者側で予め品種及び栽培時期を選択した状態として青果売り場に置く様にしてもよい。
【0055】
表示パネル60には、演算結果としての糖度、硬度及び食べ頃を表示するウインドウが設けられている。
【0056】
CPUは、ROMに記憶したプログラムに基づいて、図2に示す様な手順に構成された演算プログ
ラムを実行して糖度及び硬度を演算する。この処理は、操作パネル70のスタートスイッチを押下することによって開始される。
【0057】
処理が開始されると、まず、品種選択スイッチの設定から測定対象のメロンの品種(赤肉メロンか緑肉メロンか)の特定を行う(S10)。続いて、栽培時期選択スイッチの設定から、測定対象のメロンの栽培時期(春・秋作か夏作か)の特定を行う(S20)。そして、品種特定及び栽培時期特定の結果に基づいて、4つの糖度用検量線データベース、4つの硬度用検量線データベース及び4つの食べ頃特定データベースの中から、この後の演算に使用するデータベースを各1つずつ選択して(S30)、データベース特定情報をRAMに記録する(S40)。
【0058】
続いて、ハロゲンランプ20を点灯し(S50)、光学フィルター40の全波長通過用の第5窓を光通路に臨ませて、全波長の光検出信号R0 を取得する(S60)。次に、光学フィルター40の第1窓を光通路に臨ませて720nm近傍の波長の光検出信号R1 を取得する(S70)。次に、光学フィルター40の第2窓が光通路に臨ませて740nm近傍の波長の光検出信号R2 を取得する(S80)。以下、光学フィルター40の第3窓を光通路に臨ませて770nm近傍の波長の光検出信号R3 を取得し(S90)、第4窓を光通路に臨ませて810nm近傍の波長の光検出信号R4 を取得する(S100)。
【0059】
次に、S60〜S100で取得した光検出信号R0 〜R4 と、糖度用検量線データベース及び硬度用検量線データベースに基づいて、糖度及び硬度の演算を行う(S110,S120)。この演算は、次の式に基づいて実行される。なお、各検量線データベースは、下記式によって糖度等を算出できる様に、予め求められたものである。
【0060】
(数1)

糖度=(a1B・R1+a2B・R2+a3B・R3+a4B・R4)/R0
硬度=(a1F・R1+a2F・R2+a3F・R3+a4F・R4)/R0

a1B,a2B,a3B,a4B ・・・糖度用検量線
a1F,a2F,a3F,a4F ・・・硬度用検量線
【0061】
そして、硬度の演算結果と、食べ頃特定データベースとから、食べ頃までの日数を特定する(S130)。最後に、糖度及び硬度の演算結果と、食べ頃までの日数の特定結果とを表示パネル60の糖度表示窓、硬度表示窓及び食べ頃表示窓にそれぞれ表示する(S140)。
【実施例】
【0062】
次に、本願発明の装置の有効性を確認するために出願人らが実施した研究の結果を、実施例として説明する。
【0063】
[糖度分布の可視化]
本実施例では、果肉色の異なる複数品種のメロン数十個に対して実験を行うと共に、様々な熟度の状態を含む糖度と吸光スペクトルのデータセットに対し、PLS回帰分析を用いて検量線を作成した。
【0064】
[試料の詳細]
計測に用いたメロンは、愛知県豊橋市のトヨハシ種苗株式会社より提供されたもので、2004年度の春から夏にかけハウス内で栽培された。
【0065】
合計9品種、42個のメロンは3期に分けて栽培された。第1期は通常通りに収穫したものと、メロンが適熟果となるまで収穫せずにおいた(以後,後取り収穫メロン)ものの2種からなる.第2期,第3期は通常通りの収穫のものである。収穫日はそれぞれ6月24日,6月30日,7月20日,8月6日であった。
【0066】
全メロンの品種と個数、果肉色を表1に示す。メロンは大きく分けて、第1期に栽培された春秋系メロン、第2,3期に栽培された夏系メロンとに分けられる。春秋系メロン20個の内、赤肉メロンは3個、夏系メロン22個の内、赤肉メロンは1個である。また、第1期後取りメロンの後取り収穫メロン6個は、全て基準品種のアールス雅春秋系である。
【0067】
【表1】

【0068】
[計測機器の詳細と計測法]
メロンの品質計測として、以下の3種の計測を行った。
(1)半透過型装置を用いた透過スペクトルの計測
(2)打音計測法による硬度の計測
(3)メロン断面のスペクトルイメージング計測
以下、これらの計測に用いた計測器の詳細ととその計測法について述べる。
【0069】
[メロン透過スペクトル計測器]
本研究で用いた透過スペクトル計測器は、半透過型である。計測器の光源には可視波長領域から近赤外は超領域までをカバーするハロゲンライト(林時計社製,LA−100IR)を用いた。ハロゲンランプからの照射光は、リングライトを通り、メロンへと照射される。メロン内部を透過した光は、リングライト中央に取り付けられた光ファイバを通りUSB型分光器(OceanPhotonics社製,USB2000)へ入力され、ノートPCに保存される。
【0070】
図3(a)にメロン透過スペクトルの計測方法を示す。メロン透過スペクトルの計測位置は、メロン赤道上を等間隔に4点マーキング(図3(b))し、毎日同じ計測位置付近を計測することでメロン内部の成分分布の違いによるスペクトル変動を抑えた。また、メロンを透過してくる光は微弱であるため、光ファイバの先端をメロンと接触させて計測した。
【0071】
[メロン硬度計測器]
硬度の計測には、携帯用非破壊熟度測定器(東洋精機社製,FirmTester SA−I)を用いた。この計測器は打音計測により、堅い物体ほど伝搬速度は速くなり、柔らかい物体ほど伝搬速度は遅くなるという現象を捉えることで、非破壊でメロンの堅さを測定することができる。また、官能検査の結果、メロンの適熟期は伝搬速度が48〜[m/s]あたりであることが報告されている(杉山純一,”打音によるメロンの非破壊計測−その原理から携帯用果肉硬度計の開発まで−”,農業及び園芸,1998,73(2))。
【0072】
[ハイパースペクトルイメージングシステム]
メロン断面の2次元スペクトル情報を取得するため、ハイパースペクトルイメージングシステムを構築した。この計測器は、冷却CCDカメラ(浜松ホトニクス社製,ORCA−ER−1394)の前面にAOTF(Acousto−Optic Tunable Filter,Brimrose社製,CAV−100改)を取り付けた装置からなる。
【0073】
メロンを反射した光はAOTF前面のレンズで0次光をカットされ、AOTFへ入力される。AOTFは400nm〜1000nmの波長範囲の任意波長のみの光を2次元情報を保持したまま透過させることが可能であり、透過光を高感度モノクロCCDカメラで受光することで、任意波長の分光画像を取得可能である。また、CCDカメラはデスクトップPCと接続されており、計測ソフトウェアでは16bitのTIFF形式で保存するに留め、解析は全てMatlabで行った。
【0074】
ハイパースペクトルイメージング装置は、AOTFの透過波長を連続的に変化させ、CCDカメラで撮影することで、画像の各画素がスペクトル情報を持つスペクトル画像(図4)を生成することが可能である。通常のRGB3バンド画像の各画素が3値しか持たないのに対し、スペクトル画像は数十から数百の値からなる。そのため、データの量が膨大となる。
【0075】
ハイパースペクトルイメージング装置を用いた計測は自作暗室内(図5)で行った。暗室内には、エアコーディンショナー、換気扇が設置されており、実験時は設定を冷房25度に固定した。また、機器の安定を図るため、計測は全計測器の電源を入れてから30分以降とした。
【0076】
計測は反射法を用い、光源にはハロゲンランプ(LPL社製,Tropical professional,100V500W)を用いた。また光源の位置は、ハイパースペクトルイメージング装置への入射光に直接反射光が入らぬ様、前方上方45°の角度から照射させた。
【0077】
計測波長条件は、400nm〜1000nmの範囲で5nm間隔とし、ハイパースペクトルイメージング装置の分光感度特性を考慮して、低波長側(400nm〜600nm)と長波長側(580nm〜1000nm)の2回に分けて計測した。
【0078】
[計測内容]
全メロンに対して行った計測は以下の3種である.
(1)半透過型装置を用いた透過スペクトルの計測
(2)打音計測法による硬度の計測
(3)メロン断面のスペクトルイメージング計測
【0079】
なお、(3)のイメージング計測としては、実際にメロンを切り、その断面を撮影する破壊計測によって実施した。そのため、イメージング計測を行う日は、メロン一品種に対して、適熟期前,適熟期,適熟期後の大きく3つに分けた。
【0080】
(1)の透過スペクトル計測、(2)の打音計測については非破壊計測である。収穫日翌日からイメージング計測日まで毎日計測することで、メロン収穫後のスペクトル変化と硬度変化を追った。
【0081】
全メロンのイメージング計測日は表1に示す通りである。適熟期(食べ頃)のメロンは収穫日から5日〜1週間程度といわれているため、主に適熟気前の計測は収穫から3日前後に行い、適熟期の計測は収穫から6日前後に行い、適熟期後の計測は収穫から9日前後に行った。
【0082】
[検量線の作成]
検量線作成には、合計5品種,9個のメロンを用いた(表1)。9個の内分は、春秋系メロン・夏系メロンを条件に含めた適熟期前,適熟期,適熟期後の緑肉メロン7 個、赤肉メロン2個である。また、検量線作成用試料のデータセットの作成方法は、蔦等の行った研究(蔦瑞樹,杉山純一,相良泰行,”ハイパースペクトルシステムによる近赤外分光イメージング手法〜メロン糖度分布の可視化事例〜”,映像情報メディア学会誌,2002,56(12),pp.2037−2040)を参考に、構築した計測機器や実験環境に合わせ独自に改良を加えた。
【0083】
まず、直径20mmのステンレス製パイプを用いてメロン果肉部位を円筒状にくり抜いた。次に、果肉棒を3×3の穴の空いた計測補助期に詰め、果肉表面をカッターナイフで切ることで平らにそろえた後、スペクトルイメージング計測した。その後メロン果肉を1〜2mm厚程度に切削し、その断面を再度スペクトルイメージング計測する、という作業を果肉が無くなるまで繰り返した(平均18回程度)。一方、切削した果肉は、一つ一つをマイクロチューブへ詰めた後、冷凍・解凍作業を経て果肉の繊維を破壊し、果汁を絞りやすくした。最後に、上記マイクロチューブを遠心器へかけ、絞り出した果汁は屈折型糖度計(ATAGO 社製,PR−101)を用いて糖度[Brix]を計測した。
【0084】
ここで、Brixはショ糖を水に溶解したときの重量% の単位で、例えば100g 中に10gのショ糖が溶けている液は10[Brix]となる。
【0085】
メロン果肉棒の切断面のスペクトルイメージング計測条件は、計測時間短縮のため、CCDカメラのビニングを8*8としたため、画像解像度は128*168ピクセルである。また、計測されたスペクトル画像のから、果肉棒の中央付近のデータの平均吸光度スペクトルを算出することで、その果肉の吸光スペクトルとした。
【0086】
以上の作業を検量線作成に用いた合計9個のメロンについて行うことで、糖度と吸光度スペクトルのデータを835セット作成した。合計835セット全ての吸光スペクトルを図6に、屈折型糖度計で計測した糖度のヒストグラムを図7に示す。図6は横軸が波長[nm]、縦軸は吸光度である。糖度が高いデータセットのスペクトルほど赤く、糖度が低いデータセットのスペクトルほど青く彩色してある。計測されたデータセットの糖度は最小値6.2[Brix]、最大値19.2[Brix]であり、約15[Brix]のサンプルが最も多かった。
【0087】
[前処理]
計測される吸光度データは通常様々なノイズが含まれる。ここで、真の吸光度をA(λ)* ,計測される吸光度をA(λ)とすると、両者の関係は下式として表される。
【0088】
(数2)
A(λ)=αA(λ)*+β+e
【0089】
ここで、 αは乗算的散乱因子、βは加算的散乱因子、eはランダムノイズである。これらのノイズの影響を低減させるため、前処理を行う。
【0090】
はじめにランダムノイズを低減させるために平滑化を行った。平滑化後の吸光スペクトルを図8に示す。図6に示した平滑化前と比べ微少なノイズが減少し、スペクトルが滑らかに変化しているのが分かる。さらに、乗算的散乱因子と加算的散乱因子の影響を減少させるため、MSC(Multiplincative Scatter Correction) を行った。MSC 後のスペクトルを図9に示す。
【0091】
MSC後の吸光スペクトルからは、糖度が高いほど676nm付近で吸収が少なく750nm以上で糖度が低い果肉よりも吸光度が高い傾向がはっきりと見られるようになった。各波長における吸光度と屈折型糖度計を用いたBrix値との相関を取った図10からは、前処理を行った前後で明らかに相関が高くなった。このことから、平滑化後、MSCを行う前処理を行ったことでランダムノイズ、乗算的散乱因子、加算的散乱因子などのノイズの影響が低減できたと言える。
【0092】
本実施例で検量線を作成する方法として、PLS回帰分析による全波長を用いる方法を採用する。そして、説明変数を前処理後の吸光スペクトル、目的変数を屈折型糖度計で計測したBrix 値とし、PLS回帰分析を用いて検量線を作成する。なお、PLS回帰分析に当たっての成分数は、クロスバリデーション(外部バリデーション)により決定することとした。
【0093】
まず、計測した835セットのデータを訓練集合である検量線作成用試料と、テスト集合である検量線評価用試料の2グループに分割する。この際、検量線作成用試料のデータセット数と検量線評価用試料のデータセット数の割合が2対1になるようにした。また、ランダムに選択するのではなく、糖度の低いスペクトルから高いスペクトルまで含むよう選択した。
【0094】
検量線作成用試料を外部バリデーションの訓練集合、検量線評価用試料をテスト集合として、PLS回帰分析の成分数を増加させたときのPRESSの値の変化を図11に示す。
【0095】
成分数を増加させてもPRESSの値がV字型にならず、減少し続けた。そこで、成分数を徐々に増加させて、各波長における偏回帰係数から判断する。成分数を増加させたときの偏回帰係数をスペクトル状にプロットしたものを図12に示す。成分数が増加するにつれ偏回帰係数の形状が複雑になり、ノイズなどの成分に適合したと考えられる。また、「オッカムの剃刀」と言うようにモデルは単純なほど良いと考えると、成分数は少なければ少ない方がよいと考えられる。
【0096】
そこで、成分数を1から4までさせたときの偏回帰係数を図13に示す。すると、成分数4になった段階で偏回帰係数にノイズらしき成分が現れた。つまり、成分数4になった時点で、ノイズに過剰適合したものと考えられる。そこで、成分数が3のときに最適であると判断した。
【0097】
検量線の精度をまとめたものが図14である。横軸に波長、縦軸に吸光スペクトルの各波長にかかる偏回帰係数をとった図14(a)では、杉山等の研究で作成された検量線の波長である676nmにピークが見られた点や、糖度が高いものほど低い値を取る670nm付近の吸光スペクトルに対する偏回帰係数の値は負値をとること、糖度が高いほど高い値を取る750nm〜980nmあたりの吸光スペクトルに対する偏回帰係数は正値を取ることから、前処理後のスペクトル(図9)で見られた傾向、つまり、糖度が高いほど676nm付近で吸収が少なく750nm以上で糖度が低い果肉よりも吸光度が高い傾向を、上手く捉えたものであると言える。
【0098】
検量線作成用試料における、屈折型糖度計で計測したBrix値を横軸に、NIRSによる推定値を縦軸にとった精度評価用散布
図を図14(c)に、検量線評価用試料における精度評価用散布図を図14(d)に示す。なお、SEC,SEPは、検量線作成用試料の標準誤差,検量線評価用試料の標準誤差であり、rは相関係数である。
【0099】
この検量線は、メロンの熟れ具合や果肉の色などを限定しない汎用性の高いものであるにもかかわらず相関係数が0.83と比較的高い精度が得られた。しかし、メロンによっては異なる傾向を示しているものもあることから、品種などを考慮することでより精度が良くなるものと考える。
【0100】
[熟度・品種を限定した検量線の作成]
そこで、品種や果肉色、熟度などを分けて検量線を作成し、精度比較を行う。計測に用いた試料は、大別すると春秋系メロンと夏系メロンに分けられる。そこで、全期メロンを用いて検量線を作成したときと同様、PLS回帰分析(成分数3)により検量線を作成した。
【0101】
ここで、春秋系メロンは514セット,夏系メロンは321セットの吸光スペクトルと糖度のデータセットからなる。
【0102】
春秋系メロンのみで検量線を作成した結果を図15に、夏系メロンのみで検量線を作成した結果を図16に示す。吸光スペクトルにかかる偏回帰係数から(図15(a),図16(a))は、ピークの位置に違いは見られなかったものの、500nm〜600nmの波長範囲で振幅が異なるなど、その形状は異なるものとなった。また、その精度は全期メロンで検量線を作成した場合に比べ、春秋系メロンは精度に差は見られなかったものの、夏系メロンにおいては大きく改善された。
【0103】
また、メロン個別に検量線を作成した結果を表2に示す。全メロン,夏系メロン,春秋系メロンとで分けて検量線を作成した際と比較すると、検量線評価用試料の推定精度をメロン個別で作成した検量線の精度は、先行研究と同等の精度が得られていることを確認した。さらに、熟度や果肉色の違いなどを限定していないにもかかわらず、全メロンで作成した検量線の精度は相関係数が0.83と比較的高い精度を示した。
【0104】
そのため、全メロンで作成した検量線は、熟度・果肉色に因らない汎用性の高い検量線であると言える。
【0105】
[糖度分布の可視化]
次に、メロン切断面のスペクトルイメージング計測を行い、糖度分布の可視化を行った。メロン断面を可視化する際の計測条件は、CCDカメラのビニングを4*4としたため、画像解像度は336*256である。
【0106】
全メロンで作成した検量線を画像全体に適用させ、メロンの糖度分布を可視化した糖度分布可視化画像からは、赤肉メロンは皮付近まで糖度が高いことが分かった。これは実際の食感と位置する結果である。また、緑肉メロンを可視化した結果からは、「メロンは先に柔らかくなる底部が最も甘い」という通念が必ずしも当てはまらないことが分かった。
【0107】
[透過スペクトルの計測とスペクトルの前処理]
計測波長範囲は400nm〜1000nmとしたが、実際に透過スペクトルを得られた波長範囲は650nm〜950nmであり、それ以外の波長領域は、光が透過せずに記録できなかった。また、計測は暗室内で行ったが、透過スペクトル計測時はメロンを暗幕で覆い、ディスプレイの光などを遮光した。露光時間はスペクトルの最大値(約750nm)の透過光量が最適となるよう、5〜7[sec]の範囲で調整した。また、計測データはメロンの透過スペクトル時と同じ露光時間のダークノイズを減算することで、ダーク補正した。さらに、露光時間の違いを補正するため、スペクトルを露光時間で除算することで、単位時間あたりの透過スペクトル光量へと変換した。
【0108】
アールス雅早春晩秋系(識別番号i127)のNo1の収穫日からイメージング計測日までの透過スペクトル変化を図17に示す。同一メロン・同位置の計測であるにもかかわらず、時間の経過に伴ってスペクトルに上下方向のシフトが見られた。これは、計測時に光ファイバの先端をメロンと接触させていることからネットの影響を受けやすくなり、透過光量が変化してしまったからだと考えられる。
【0109】
この上下の変動を補正するために、スペクトルそれぞれにおいて、全波長データの和で除算した。つまり、単位透過量あたりのスペクトルの割合へと規格化した(図18(a))。すると、収穫日から日にちが経つにつれて、2つの波長帯域に変動が見られた。750nm付近の波長帯域における変動は、日にちが経つにつれて下降し(図18(b))、810nm付近の波長帯域のスペクトルは日にちが経つにつれて上昇した(図18(c))。
【0110】
[メロン糖度の推定領域の選定]
ポイント計測である近赤外分光法を用いた糖度推定は成分の平均的な値を推定していると考えられる。しかし、メロンのような大きな試料を半透過型の計測器で計測する場合、光源からディテクタまでの間の果肉の情報を最も捉えていると考えられる。つまり、皮付近の糖度が最も推定しやすいと考えられる。本節では,この仮説の真偽を確かめる.
【0111】
[メロン果肉領域の分割]
まず全メロン41個に対して、メロン果肉領域をマウスで選択した。その中で、糖度分布が異なるメロン果肉上部、底部を除く領域、つまり、メロン側面の果肉領域を抽出した。具体的には、果肉の領域の重心を中心とし、上下左右に90度毎に分割した領域の左右の領域のみを用いることで対応した。最後に、この領域を内側から外側に受けて均等に10等分し、内側から順に、領域1,領域2,…,領域10と順に番号を付けた。
【0112】
各メロンそれぞれが領域1〜10を持つが、各領域の平均値をその領域番号の糖度とした。
【0113】
緑肉メロン,赤肉メロンにおける各領域の平均値と標準偏差をプロットしたものを図19に示す。横軸が領域番号、つまり1番が種付近の果肉、10番が皮付近の果肉である。縦軸は各領域の平均糖度とその標準偏差を表している。また、図19(a)は緑肉メロン41個、図19(b)は赤肉メロン4個のデータである。緑肉メロンにおいては、種付近ほど糖度が高く、皮付近に近づくにつれて糖度が低くなっていくことが分かる。一方、赤肉メロンにおいては、皮付近まで糖度が一様に分布していることが分かる。
【0114】
[PLS回帰分析の成分数の決定]
まず、PLS回帰分析を行う上での最適な成分数を決定する。説明変数をイメージング計測日のメロン透過スペクトル、目的変数を皮部位に相当する領域10を除く領域1〜9の平均糖度値としてPLS回帰分析を行った。
【0115】
成分数を1から5まで増加させたときの偏回帰係数を図20に示す。糖度分布を可視化した際と同様に、偏回帰係数の連続性を考慮、つまり、ノイズ成分が見られる寸前の成分数が最適であると判断すると成分数4の時が最適であると判断した。
【0116】
実際に各成分数におけるleave−onw−out法による内部バリデーションのPRESS値を図21に示す。横軸は成分数、縦軸はPRESS値である。PRESSが成分数4で極小値を取ることから、確かに成分数4が最適であると言える。
【0117】
[最も精度良く推定できる領域の選定]
次に、メロンのどの領域が最も精度良く推定できるかを調べる。説明変数をメロンイメージング日のメロン透過スペクトル、目的変数を領域1〜10の各領域の平均糖度値として、PLS回帰分析(成分数4)を用いて検量線を作成した際の相関係数を図22に、標準誤差を図23に示す。
【0118】
領域5〜7の相関が最も高く、それ以外の領域では相関が低いことから、実施例の装置(実施の形態の装置と同様)による計測からは、皮付近の糖度が最も精度良く推定できるのではなく、果肉部位中心部から少し外側にかけての領域(領域番号5〜7)の糖度が最も精度良く推定できることが明らかとなった。そこで、領域番号5〜7の領域における平均糖度値と、透過スペクトルの関係を詳細に調べた。
【0119】
[全メロンデータを用いた検量線の作成]
試料は計測を失敗したメロン(識別番号i326)を除く41個のメロンを対象とした。説明変数をイメージング計測日のメロン透過スペクトル、目的変数を上記領域の平均糖度値として、PLS回帰分析(成分数4)を用いて検量線を作成した結果を図24に示す。吸光スペクトルの各波長にかかる偏回帰係数が図24(a),精度評価用散布図が図24(b)である。
【0120】
栽培時期や品種による影響を考慮していない汎用性の高い結果であるが、相関係数が0.76と比較的高い精度が得られた。
【0121】
また、最も甘いと言われている種付近の糖度は、推定した糖度との差は緑肉メロンでは選択領域の糖度+1[Brix]程度、赤肉メロンでは選択領域の糖度と同程度であることがわかった。この結果、本手法によれば、ポイント計測でメロン糖度の大まかな分布も推定できるというメリットもあることが分かった。
【0122】
また、装置の簡略化には計測波長を限定することも必要である。図45(a)より、相関係数に、720nm,740nm,770nm,810nmにピークが見られたため、この4波長データを説明変数として重回帰分析を行ったところ、PLS回帰分析と同精度で糖度の推定が可能であった。これまで単一又は複数波長の吸光度データを用いて検量線を作成した研究は、変数増減法などを用いて波長を決めていた。しかし、変数増減法等を用いる方法では、ノイズなどの影響でたまたまその波長が選ばれる可能性もあり、波長選択を行うのが困難であった。しかし、本研究ではノイズに強いとされるPLS回帰分析を用いて偏回帰係数の特徴から使用波長を決定したため、対象成分に由来する波長を容易に選択可能である。
【0123】
また、本実施例の手法の特徴としては、2次微分スペクトルを用いていない点も上げられる。検量線の作成時の説明変数として用いる2次微分スペクトルデータの波長の数がn波長だとすると、2次微分に必要なデータ数は3nとなる。そのため実際に計測しなければならない波長数は回帰分析に用いる波長数よりも多くなる。本実施例の手法は前処理に微分を行わないため、実際に計測しなければならない波長数も少なくて済むというメリットがある。
【0124】
[品種を限定した検量線の作成]
栽培時期の異なる春秋系メロン,夏系メロンと分けることで条件を限定する。全メロンと同様に、春秋系メロン,夏系メロンにおいてもPLS回帰分析(成分数4)を用いて検量線を作成した。また720nm,740nm,770nm,810nmの4波長データを説明変数として重回帰分析を用いて検量線を作成した(図25,図26)。
【0125】
春秋系メロンにおいては、全波長データを用いて検量線を作成した場合と、4波長データを用いて検量線を作成した場合で、共に相関係数が0.8を超えた(表2)。また、夏系メロンにおいては、4波長データを用いて検量線を作成した場合、相関係数が0.77と一見精度が上昇していないように見受けられるが、はずれ値が一つある影響であると考えられるため、実用上問題ないと考えられる。
【0126】
【表2】

【0127】
[硬度の推定]
アールス雅早春晩秋系(識別番号i127)の打音計測値変化を図27に示す。横軸は収穫日からの経過日数、縦軸は計測した硬度(伝搬速度[m/s])値である。収穫日以降、徐々に伝搬速度が遅くなっており、メロンが次第に柔らかくなっていることが分かる。
【0128】
各波長の吸光スペクトルにおける透過スペクトルと打音計測値との相関値を図28に示す。横軸は波長,左縦軸は透過スペクトルの強度である。図中の右縦軸は吸光スペクトルの各波長と硬度(伝搬速度[m/s])との相関値であり、絶対値が1に近いほど波長と硬度に相関があることを表している。700nm〜800nmの波長については、高い相関を示すことから、硬度も推定可能であると考えられる。
【0129】
[全メロンデータを用いて検量線の作成]
PLS回帰分析の最適な成分数を決定するため、成分数を5まで増加させた際の内部バリデーションにより計算されたPRESS値の変化を図29に示す。糖度と異なり、V字型にはならずに単調減少している。そこで、偏回帰係数を図30に示す。糖度の推定と同様に、偏回帰係数の連続性等を考慮し、成分数が4のとき最適であると判断した。
【0130】
全メロンに対して説明変数をメロン透過スペクトルスペクトル,目的変数を打音計測値としてPLS回帰分析(成分数4)を行った際の偏回帰係数を図30(a)に、精度評価用散布図を図30(b)に示す。標準誤差が7.0[m/s],相関係数は0.75と栽培時期毎に分けなくても簡易計測程度の精度は得られた。
【0131】
PLS回帰分析により得られた偏回帰係数(図30(a))からは糖度と同様に720nm,740nm,770nm,810nmにピークが見られた。そこで同様に、この4波長データを説明変数として重回帰分析を行った。その精度評価用散布図を図30(c)に示す。ほぼその精度を保ったまま、4 波長条件で硬度が推定できたと言える。
【0132】
またこの4 波長は、糖度と全く同じ波長条件であることから、非破壊でメロンの糖度と硬度を推定する際、効率のよい計測が可能であることを示唆している。
【0133】
[栽培時期毎に分けた場合]
全メロンで硬度を推定した結果、栽培時期毎に精度評価用散布図(図30(b))で異なる分布が見られた。そこで、栽培時期毎(第一期〜第三期)に分けて検量線を作成し、硬度の推定を行った。
【0134】
第1期メロンのみで硬度を推定した結果を図31に、第2期メロンのみで硬度を推定した結果を図32に、第3期メロンのみで硬度を推定した結果を図33に示す。
【0135】
また、それぞれの検量線の精度評価値をまとめたものを表3に示す。
【0136】
【表3】

【0137】
第1期メロンにおいては相関係数が0.87と非常に高い精度を有した。また、第2期、第3期メロンにおいては0.8を多少下回る精度ではあったが、簡易的な推定には十分な精度が得られていると言える。
【0138】
栽培時期毎で検量線を分けたことで精度が著しく向上したことから、気温などによる環境の違いがメロンの硬度変化に与える影響が少なくないことが分かる。
【0139】
[実施例からの結論]
これまでメロンの品質計測に関しては、糖度・硬度のどちらかだけを推定する研究がされてきた。しかし、本実施例により、実施の形態の装置において採用した720nm,740nm,770nm,810nm近傍の波長の吸光度から、糖度・硬度の両方を十分な精度で推定できることが確認できた。
【0140】
また、実施の形態の装置による糖度推定値は、果皮付近のものではなく、内部の果肉のものに対応していることも確認できた。
【0141】
さらに、全波長データを用いたPLS回帰分析(成分数4)の検量線から、4つの特徴的なピークの現れる720nm,740nm,770nm,810nmの4波長が糖度の特徴を良く捉えることのできる波長であることも確認できた。
【0142】
また、メロンの糖度及び硬度の推定においては栽培時期による影響があることから、栽培時期に応じた検量線を作成しておくことによってより一層精度向上が図れることも確認できた。特に、硬度については、栽培時期の影響は糖度以上に大きいことから、硬度用検量線を栽培時期に応じて作成しておくことは、硬度推定精度を向上する上で効果が高いことも分かった。
【0143】
加えて、赤肉メロンと緑肉メロンといった品種に応じた検量線の作成も、精度向上に寄与することが確認できた。
【0144】
以上、発明を実施するための最良の形態としての一実施形態及びその効果を確認するための実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0145】
例えば、メロン以外に、スイカその他の果実にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】実施の形態のメロン評価装置の構成図。
【図2】実施の形態のメロン評価装置が実行する演算処理のフローチャート。
【図3】実施例におけるメロン透過スペクトルの計測方法を示す説明図。
【図4】実施例におけるスペクトル画像の概念図。
【図5】実施例におけるスペクトルイメージング計測の様子を示す概念図。
【図6】実施例における全ての吸光スペクトル図。
【図7】実施例において屈折型糖度計で計測した糖度のヒストグラム。
【図8】実施例における平滑化後の吸光スペクトル図。
【図9】実施例におけるMSC後のスペクトル図。
【図10】実施例における各波長の吸光度と屈折型糖度計を用いたBrix値との相関図。
【図11】実施例においてPLS回帰分析の成分数を増加させたときのPRESSの値の変化を示す説明図。
【図12】実施例においてPLS回帰分析の成分数を増加させたときの偏回帰係数をスペクトル状にプロットした説明図。
【図13】実施例においてPLS回帰分析の成分数を1から4までさせたときの偏回帰係数を示す説明図。
【図14】実施例における検量線の精度をまとめた説明図。
【図15】実施例において春秋系メロンのみで検量線を作成した結果を示す説明図。
【図16】実施例において夏系メロンのみで検量線を作成した結果を示す説明図。
【図17】実施例におけるアールス雅早春晩秋系の収穫日からイメージング計測日までの透過スペクトル変化を示す説明図。
【図18】実施例において全波長データの和で除算して単位透過量あたりのスペクトルの割合へと規格化した状態の説明図。
【図19】実施例において緑肉メロン,赤肉メロンにおける各領域の糖度の平均値と標準偏差をプロットした説明図。
【図20】実施例において成分数を1から5まで増加させたときの偏回帰係数の説明図。
【図21】実施例において各成分数におけるleave−onw−out法による内部バリデーションのPRESS値を示す説明図。
【図22】実施例においてPLS回帰分析(成分数4)を用いて検量線を作成した際の相関係数を示す説明図。
【図23】実施例においてPLS回帰分析(成分数4)を用いて検量線を作成した際の標準誤差を示す説明図。
【図24】実施例においてPLS回帰分析(成分数4)を用いて検量線を作成した結果を示す説明図。
【図25】実施例において春秋系メロンについて重回帰分析を用いて作成した検量線の説明図。
【図26】実施例において夏系メロンについて重回帰分析を用いて作成した検量線の説明図。
【図27】実施例においてアールス雅早春晩秋系の打音計測値の変化を示す説明図。
【図28】実施例において各波長の吸光スペクトルにおける透過スペクトルと打音計測値との相関値を示す説明図。
【図29】実施例においてPLS回帰分析の成分数を5まで増加させた際の内部バリデーションにより計算されたPRESS値の変化を示す説明図。
【図30】実施例においてPLS回帰分析の成分数を5まで増加させた際の内部バリデーションにより計算された偏回帰係数の説明図。
【図31】実施例において第1期メロンのみで硬度を推定した結果を示す説明図。
【図32】実施例において第2期メロンのみで硬度を推定した結果を示す説明図。
【図33】実施例において第3期メロンのみで硬度を推定した結果を示す説明図。
【0147】
1・・・メロン評価装置
10・・・メロン載置台
11・・・筒体
13・・・果実収納部
20・・・ハロゲンランプ
21・・・光ファイバ
23・・・光出射口
30・・・受光部
31・・・遮光パッド
33・・・コイルバネ
35・・・光ファイバ
40・・・光学フィルター
45・・・受光素子
47・・・電流増幅器
50・・・演算器
60・・・表示パネル
70・・・操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象果実と同種の果実の糖度,硬度等の食味成分の評価量を吸光度計測値から算出するための検量線を予め求めておき、
測定対象果実に対して近赤外線域を含む光を照射したときの透過光又は内部散乱透過光の測定結果から、当該測定対象果実についての特定の波長の吸光度に関する情報を取得し、
前記特定の波長の吸光度に関する情報と前記検量線とを用いて前記評価量を算出する様に構成された果実の食味成分評価方法において、
測定対象果実に対して近赤外線域の光を照射したときの透過光又は内部散乱透過光の測定結果から、当該測定対象果実に対して照射される光の実質的な全波長の吸光度に関する情報をも取得し、
前記評価情報を算出する際に、前記全波長の吸光度に関する情報で補正を行う様に構成したこと
を特徴とする果実の食味成分評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の果実の食味成分評価方法において、
前記特定の波長の吸光度に関する情報を前記全波長の吸光度に関する情報によって実質的に除算した情報を前記評価量の演算に用いることによって前記補正が行われる様に構成すること
を特徴とする果実の食味成分評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の果実の食味成分評価方法において、
前記検量線を同種果実の栽培時期に応じて別々に求めておき、これらの検量線の中から測定対象果実の栽培時期に応じた検量線を用いる様にすること
を特徴とする果実の食味成分評価方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の果実の食味成分評価方法において、
前記検量線を、同種果実における品種の相違に応じて別々に求めておき、これらの検量線の中から測定対象果実の品種に応じた検量線を用いる様にすること
を特徴とする果実の食味成分評価方法。
【請求項5】
果実の計測部を収納することのできる果実収納部と、果実を支えることのできるリング状の上縁部とを有する果実載置台と、
該果実載置台に載置された果実に対し、当該果実の表面にほぼ接触し得る光照射口を備え、前記果実載置台の上縁部付近から果実の中心方向に向かって近赤外線域を含む光を照射する光源部と、
前記果実載置台の果実収納部のほぼ中央に設置され、果実から出射される透過光及び内部散乱透過光を受光する受光部と、
前記受光手段の周囲に設けられ、前記果実載置台に載置された果実の表面に密着し得る遮光部材と、
該遮光部材に対して上昇方向の付勢力を付与するバネ部材と、
前記受光部で受光した光を波長に応じた成分に分けて取り出すことのできる分光手段と、
測定対象となる果実の糖度,硬度等の食味成分の評価量を吸光度に関する情報から算出するための検量線を記憶しておく記憶手段と、
前記分光手段で取り出した特定の波長の光の吸光度に関する情報と、前記記憶手段に記憶されている検量線とに基づいて、前記評価量を算出する算出手段と、
該算出手段の算出結果に基づく果実の食味成分を評価するための情報の表示を行う表示手段と
を備えた果実の食味成分評価装置において、
前記分光手段を、測定対象果実に対して照射される光の内の近赤外域の特定の波長付近の光と、当該測定対象果実に対して照射される光の実質的な全波長の光とを、それぞれ取り出すことのできる手段として構成すると共に、
前記算出手段を、前記特定の波長付近の光の吸光度に関する情報と前記検量線とから前記評価量を算出する際に、前記全波長の光の吸光度に関する情報で補正を行う手段として構成したこと を特徴とする果実の食味成分評価装置。
【請求項6】
請求項5記載の果実の食味成分評価装置において、
前記分光手段を、受光素子と、複数の特定の波長の光及び全波長の光を別々に取り出すことのできる切り換え式の光学フィルターとによって構成すること
を特徴とする果実の食味成分評価装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の果実の食味成分評価装置において、
前記算出手段は、前記特定の波長の吸光度に関する情報を前記全波長の吸光度に関する情報によって実質的に除算した情報を前記評価量の演算に用いることによって前記補正を行う手段として構成されていること
を特徴とする果実の食味成分評価装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか記載の果実の食味成分評価装置において、
前記記憶手段を、同種果実の栽培時期に応じた複数の検量線を複数記憶した手段として構成すると共に、
前記算出手段を、測定対象果実の栽培時期に応じて、前記記憶手段に記憶された複数の検量線の中から演算に用いる検量線を選択して前記評価量の算出を行う手段として構成すること
を特徴とする果実の食味成分評価装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか記載の果実の食味成分評価装置において、
前記記憶手段を、同種果実における品種の相違に応じた複数の検量線を記憶した手段として構成すると共に、
前記算出手段を、測定対象果実の品種に応じて、前記記憶手段に記憶された複数の検量線の中から演算に用いる検量線を選択して前記評価量の算出を行う段として構成すること
を特徴とする果実の食味成分評価装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか記載の果実の食味成分評価装置において、
前記記憶手段には、720nm,740nm,770nm及び810nmの4波長近傍の波長の吸光度に関する情報と糖度との対応関係を数値化した糖度用検量線データベースと、720nm,740nm,770nm及び810nmの4波長近傍の波長の吸光度に関する情報と硬度との対応関係を数値化した硬度用検量線データベースとを記憶しておき、
前記算出手段を、720nm,740nm,770nm及び810nmの4波長の内の少なくとも3つ以上の波長近傍の波長の吸光度に関する情報を用いて前記評価量の演算を実行する様に構成すると共に、
前記記憶手段には、さらに、硬度と食べ頃までの日数との関係を特定するための食べ頃特定データをも記憶しておき、
前記算出手段は、算出した硬度と食べ頃特定データとに基づいて、食べ頃までの日数をも算出する手段として構成し、
前記表示手段には、食べ頃までの日数をも表示する様に構成したこと
を特徴とするメロン用の果実の食味成分評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2006−226775(P2006−226775A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39332(P2005−39332)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(593201028)千代田電子工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】