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果実繊維ゲル
説明

果実繊維ゲル

ゲル化は、食品、化粧品又は医薬品だけでなく、さらには塗料又は接着剤などの、今日の消費者製品の多くのタイプで重要な課題である。本発明は、ゲル及びゲル化材料と、それらの適用例の分野に関する。詳細には、本発明は、液体媒体と、熟した軟らかい植物学的な果実から得た剪断された細胞壁材料を含むゲルマトリックスとを含むゲルと、その調製、その可能性ある使用、そのようなゲル及び対応するゲル構築材料を含む製品と、それらの適用例に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル及びゲル化材料並びにそれらの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル化は、今日の多くのタイプの消費者製品、例えば食品、化粧品、又は医療品など、さらには塗料又は接着剤においても、重要な課題である。
【0003】
何世紀にもわたり、料理人は、液体果汁を硬いジャムに変化させるのに、又は液体肉汁をより濃厚なソースに変化させるのに、ゲル化を使用してきた。これらの技法は、利便性、向上した食感、又は簡潔に言えば新しい質感の要素を加えて、食品の能力を向上させる。
【0004】
ゲル化は、よりクリーミーな製品を製造するのに、より心地良い食感を得るのに、及び/又は凍結/融解安定性を向上させ保水性を増大させるのに使用される。
【0005】
食品産業において、今日ではゲル化は通常、デンプン、ゼラチン、寒天、β−グルカン、グアーガム、カラギナン、又はアルギネートなどのゲル化剤の添加によって実現される。しかし、これらゲル化剤の全ては、一般に、比較的高いカロリー量を有し又はE番号を保持し(E番号は、食品産業では避けるべき化学添加剤のコードである)、さらに、それらの少なくともいくつかは、比較的高価である。
【0006】
さらに食品は、しばしば、加熱又は冷却を必要とする。広い温度範囲内で並びに温度の変動に曝されたときに安定なゲルを生成するために、ゲル又はゲル化材料を利用可能にすることが望ましいと考えられる。
【0007】
これらの課題は、当技術分野で十分認識されている。
【0008】
脂肪に関しては穀物から得られた繊維を使用することによって、これらの課題を克服する試みがなされており、この繊維は、チーズ(米国特許出願公開第2006/0034996号明細書)又はソース(米国特許出願公開第2006/0034998号明細書)の部分的な脂肪置換物質として使用される。同様に、米国特許出願公開第2001/0001677号明細書では、発明者らは、ヨーグルトの脂肪置換物質として、小麦繊維ゲル及びデンプンを使用する。
【0009】
しかし、穀物の繊維によって生成されるゲルには、ゲル化に使用することができる繊維を実現するために、コストがかかると共に時間もかかるという穀物の労働集約的処理が必要であるという欠点がある。さらに、その繊維の保水量は、繊維の質量の約24倍であり、これはゲルにとっては比較的少ない。
【0010】
今日のスポーツ産業では、運動選手に対し、持久系スポーツ中に新鮮さ及び水分補給の感覚を与えることが望ましいが、これは、水を摂取することによって胃に不快感が生じ、非常に多くの液体が胃の中でばしゃばしゃと動き回るので、問題が多い。
【0011】
既存のスポーツ製品は、高糖度を有する飲料又は低含水量を有するゲルである。どちらも、口の中に渇いた感覚が残る。
【0012】
したがって、胃に不快感を与えることなく喉の渇きをなくす栄養製品を運動選手に提供するゲルが望まれる。
【0013】
従来技術の上述の欠点は、本発明者らによって対処され克服された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、広い温度範囲で安定であり、中性的な味及び心地良い質感を有し、ゲルとして、結合剤として、又は泡を安定化させるのに使用することができ、低カロリー量、液体の高容量を有し、安価であり、天然資源から単純で迅速なプロセスにより得ることができるゲル化材料を含む、ゲル又はゲルを含む製品を、当技術分野に提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1に記載のゲル、請求項16又は21に記載の使用、請求項17に記載の製品、請求項19に記載のゲル構築材料、及び請求項22に記載の方法によって解決される。
【0016】
さらに、細胞壁ベースのゲルは、ねばねばした感じ及び砂のような又はざらついた感じが少なく、より天然のパルプ状の感覚を口内に有する。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、液体媒体と、熟した軟らかい植物学的な果実から得た剪断細胞壁材料を含むゲルマトリックスとを含むゲルが、本発明の目的を達成することを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の細胞壁材料の1%懸濁液を、高剪断処理に60秒間かけたときの、ゲルの形成を示す図である。
【図2】熟したキウイ、トマト、及びリンゴから調製した細胞壁材料の保水力を示す図である。この結果は、高剪断後の高い保水力が、熟したキウイ及びトマトからの細胞壁材料に制限されることを示す。
【図3】高剪断処理の前及び後の、トマトの細胞壁材料の1%懸濁液の共焦点顕微鏡写真である。
【図4】剪断処理後にゲル形成能力の増大を示す、レオロジー的測定の結果を示す図である。
【図5】本発明により調製されたトマトからの細胞壁材料と、2種の市販されているトマト繊維との、粘性化特性を比較する図である。
【図6】本発明により調製されたゲルの例を示す図であり:パネル1は、バニラ風味のパワーバー(PowerBar)(登録商標)ゲルを示し;パネル2は、純水に溶かしたトマトからの1質量%ゲル構築材料で作製された、ゲルを示し;パネル3は、トマトからの1質量%ゲル構築材料及びパワーバー(登録商標)材料(41g/200ml)で作製されたゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい実施形態では、液体媒体と、乾燥され及び/又は有機溶媒で洗浄された熟した軟らかい植物学的な果実から得た剪断細胞壁材料を含んだゲルマトリックスとを含むゲルが、本発明の目的を達成する。
【0020】
このゲルマトリックスを使用することにより、例えば1質量%の抽出果実細胞壁材料が99質量%の水に含まれるものから作製されたゲルを、調製することが可能である。このゲルは、離漿を引き起こすことなく、4℃で12カ月超にわたり安定であることが分かった。
【0021】
その結果、本発明の一実施形態は、液体媒体と、熟した軟らかい植物学的な果実から得た剪断細胞壁材料を含んだゲルマトリックスとを含むゲルである。
【0022】
本発明の目的で、ゲルは、半固体材料、例えばゼリーを生成するために、分散相が分散媒体と組み合わされているコロイドである。系は、G’(材料の固体部分に関する貯蔵弾性率)がG”(材料に対する液体状の応答に関する損失弾性率)よりも高くなり次第、所与の周波数でゲル状である。
【0023】
ゲルマトリックスは、本発明の目的で、ゲル内の液体媒体の体積に拡がる相互作用の粒子の多孔質網状構造を形成することが可能な材料である。粒子が相互接続される相互作用の形は、ゲルマトリックスに重要ではなく、任意の形の相互作用が可能である。しかし粒子は、静電相互作用によって、少なくとも一部が相互に作用することが好ましい。
【0024】
剪断は、細胞壁材料などの材料の自然構造が、少なくとも部分的に崩壊することを意味する。この崩壊は、例えば、化学的又は物理的手段によって実現することができる。化学的手段は、例えば、高pH(例えば、10〜12)又は低pH(0〜3)での処理であってもよい。しかし好ましくは、剪断は、材料を物理的応力にかけることによって実現される。物理的応力は、例えば、ブレンダによって又は粉砕によって加えることができる。本発明の一実施形態では、応力は、約10秒〜60秒間、好ましくは約30秒間、約10000rpmから40000rpmで、好ましくは約24000rpmで動作するUltra−Turraxを用いて、高剪断処理によって加えることが好ましい。
【0025】
細胞壁材料は、一般に、細胞壁を含む任意の材料である。好ましくは、細胞壁材料は、例えばフルーツジュースなどの製品の製造中に通常は廃棄される材料である。好ましくは細胞壁材料は、芯の組織及び/又は果実の果皮及び室組織を含む。この細胞壁材料は、例えば遠心分離によって及び任意選択で洗浄ステップにかけることによって、液体成分が除去されるように、さらに処理されることが好ましい。好ましくは、細胞壁材料は、10%よりも低く、より好ましくは1%よりも低く、さらにより好ましくは0.1%よりも低い含水率を有する。
【0026】
果実は、本発明の目的において、熟成に関与する重要な植物ホルモンであるエチレンの突発が生じた後に、熟したと見なされる。しばしば、熟した果実は、色、質感、及び/又は味の変化の出現によって、熟していない果実と容易に区別することができる。例えば、本発明の好ましい実施形態では、果実は、エチレン突発前の糖度レベルと比較したその糖度が少なくとも20%増加した場合、熟したと見なされる。
【0027】
果実は、圧力測定によるその堅さが15N/gよりも低く、好ましくは10N/gよりも低く、最も好ましくは約2〜6N/gよりも低い場合、軟らかいと見なされる。
【0028】
本発明は、植物学的な果実について言及する。植物学的な果実は、果実の植物学的定義に従う果実であり、調理用の果実、例えばモモやキウイ、プラムなどと、野菜、例えばトマトやアボカドなどの両方を含む。
【0029】
液体媒体は、本発明の目的で、特に限定されず、極性液体又は無極性液体又はこれらの混合物にすることができる。
【0030】
無極性液体には、例えば、植物、通常は種から抽出された、1種又は複数の不揮発性油;植物から抽出された揮発性芳香油などの、1種又は複数の精油;1種又は複数の動物性脂肪;又はこれらの混合物を含めることができる。
【0031】
極性液体には、例えば、フルーツジュースやコーヒー、紅茶などの、水性の液体を含めることができる。
【0032】
液体は、エマルジョン、例えばミルク、ミルク状製品、例えば豆乳、又は、チョコレート飲料などのミルクベースの製品、又は麦芽飲料にすることもできる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、細胞壁材料が実質組織から得られる。柔細胞は、ほとんどの非木質構造の塊を構成する基本組織の薄壁細胞である。これらは、様々な機能を有することができ、組織内に比較的豊富に存在する。実質組織の性質により、剪断した場合には非常に高い液体容量をゲル内に有する細胞壁材料を、高収率で得ることが可能になる。
【0034】
本発明による細胞壁材料は、細胞壁材料に追加の性質を与えるため、化学的に修飾することができる。可能な修飾は、ゲルの安定性を向上させるための、着色材料の添加、糖部分の導入、又はさらなる架橋剤の挿入と考えられる。そのような機能の導入は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0035】
しかし、特に食品の適用分野において、天然産物としての細胞壁材料は、天然産物を好む今日の消費者の要求の高まりに順応して、化学的に修飾されないことが好ましい。
【0036】
特に有効なゲル構築材料は、細胞壁材料が、好ましくは約100〜0.01μm、好ましくは約10〜0.1μm、最も好ましくは約2〜0.1μmの平均繊維長に剪断されたときに得られることが分かった。
【0037】
ゲルを生成するために、軟らかい植物学的な果実から得た剪断細胞壁材料を、当技術分野で知られているその他のゲル構築材料、例えばデンプン、ゼラチン、寒天、β−グルカン、グアーガム、カラギナン、アルギネート、及び/又は穀物からの繊維とうまく組み合わせることができる。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明のゲルマトリックスは、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、より好ましくは少なくとも50質量%、さらにより好ましくは少なくとも75質量%、さらにより好ましくは少なくとも90質量%の、軟らかい植物学的な果実からの細胞壁材料を含む。
【0039】
本発明の特定の好ましい実施形態では、ゲルは、ゲルマトリックスが軟らかい植物学的な果実から得た細胞壁材料からなることを特徴とする。
【0040】
本発明による剪断細胞壁材料は、当技術分野で知られている任意の方法によって得ることができる。
【0041】
しかし、本発明の好ましい実施形態では、剪断細胞壁材料は、下記のステップ、即ち:
− 果実を破砕するステップ、
− 任意選択で、果実材料中の酵素活性を、好ましくは加熱ステップによって停止させるステップ、
− 残りの構成成分から、好ましくは分離器によって又は遠心分離によって細胞壁材料を分離するステップ、
− 任意選択で洗浄して、細胞壁材料をさらに精製するステップ、
− 剪断するステップ、
− 任意選択で、有機溶媒中で乾燥させるステップ
を含む方法によって得ることが可能である。
【0042】
果実を破砕する代わりに、例えば植物学的フルーツジュース、マーマレード、又はケチャップの製造から得た廃棄材料を使用することも可能である。
【0043】
任意選択で、褐変を防止するために、アスコルビン酸などの他の物質を添加してもよい。
【0044】
果実を破砕する結果、いくつかの酵素が遊離し、細胞壁材料上で活性化できるようになる。この酵素活性が細胞壁材料の品質を損なうのを回避するために、加熱ステップを実施して、酵素活性を失活させることができる。当然ながら、酵素活性を失活させるその他の知られている方法も、同様に使用することができる。加熱ステップは、好ましくは60〜120℃に、好ましくは約80℃に、5〜30分間、好ましくは10分間加熱することによって、実施される。
【0045】
果実の残された構成成分からの細胞壁材料の分離は、当業者に知られている任意の手段によって実施することができる。例えば、この分離は、分離器又は遠心分離を使用することによって、また製造業者の取扱説明書に従って、実現することができる。
【0046】
例えば、組織懸濁液は、2000〜7000gで、好ましくは約5000gで、2分〜1時間、好ましくは約10分間、遠心分離することができる。上澄みは、廃棄する。
【0047】
任意選択で、別の1種又は複数の洗浄ステップを加えることができる。例えば、残留物を水中に再懸濁し、再び遠心分離にかけて上澄みを除去することができる。洗浄ステップには、得られた細胞壁材料が、結果的に得られるゲルの均質性に寄与することになる高い純度を有する、という利点がある。
【0048】
本発明の特に好ましい実施形態では、得られる細胞壁材料を、少なくとも1種の有機溶媒中で、少なくとも1つの洗浄及び/又は乾燥ステップにかける。有機溶媒は、例えば極性溶媒、例えばアセトン、エチルアルコール、プロパノール、イソプロパノール、からなる群から選択された極性溶媒と、無極性溶媒、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、ジクロロメタン;又は、例えば極性非プロトン性溶媒、例えば1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択された溶媒;又はこれらの混合物にすることができる。
アセトンが特に好ましい。
【0049】
例えば、有機溶媒中のこの洗浄及び乾燥ステップは、下記のように実施することができる。残留物をアセトン中に再懸濁し、先のように遠心分離する。次いでアセトンの上澄み廃棄し、任意選択でこのステップを繰り返してもよい。最後に、残留物をアセトン中に再び再懸濁し、フィルタ、例えばガラス繊維紙(GF/A)に通して濾過する。次いで残されたアセトンを蒸発させる。このプロセスは、当技術分野で知られている手段、例えば真空の印加によって又は熱を加えることによって、支援することができる。
【0050】
本発明者らは驚くべきことに、有機溶媒中でのこの乾燥ステップが、得られる細胞壁材料の保水量を増加させることを見出した。剪断後、この保水量は、さらに約100〜200mL/g細胞壁材料まで、例えば細胞壁材料がトマトから得られる場合には約180mL/g細胞壁材料まで増加することができる。
【0051】
剪断は、上述のように実施することができる。例えば、懸濁液中の細胞壁材料を高剪断処理又は高圧均質化にかけ、それによって、直径が0.1から10μmの間の繊維が得られるように細胞壁材料のサイズを縮小することができる。
【0052】
本発明の一実施形態では、軟らかい植物学的な果実は、軟らかい野菜及び軟らかい調理用果実からなる群から選択される。
【0053】
多くの食品は植物学的な果実であるが、調理の際には野菜として処理される。これらの果実には、例えば、ウリ(例えば、スカッシュ、カボチャ、及びキュウリ)、トマト、エンドウマメ、インゲンマメ、トウモロコシ、ナス(aubergine)、及びアマトウガラシ、オールスパイスやチリなどのスパイスが含まれる。しばしは、稀にではあるが、調理用「果実」は、植物学的な意味で真の果実ではなくなる。例えばダイオウは、本発明の目的では調理用果実と見なされるが、渋味のある葉柄だけが食べられる。調理上の意味で、果実は、(1種又は複数の)種子に関連した任意の甘みのある植物製品であり、一方、野菜は、任意の塩味の又はそれほど甘くない植物製品である。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、軟らかい植物学的な果実は、トマト、キウイ、プラム、イチゴ、チェリー、柿、又はこれらの混合物である。特に、トマト及び/又はキウイが好ましい。
【0055】
本発明の一実施形態では、軟らかい植物学的な果実は、熟成プロセス中に細胞壁のin−vitro膨潤を示す果実であり、好ましくは、熟していない果実に対する熟した果実の膨潤比が2.5倍以上である。これによれば、植物学的な果実は、顕微鏡検査後に、熟していない果実に比べて細胞壁が少なくとも約2.5倍膨潤した場合、本発明の文脈においては熟しているとも見なされる。
【0056】
本発明のゲル中の液体媒体は、好ましくは極性媒体であり、好ましくは水が含まれる。
【0057】
液体媒体は、おそらくはエマルジョンとして、無極性媒体を含むこともできる。そのようなエマルジョンは、水及び脂肪、好ましくは乳脂肪、長鎖脂肪酸、中鎖トリグリセリド、ω3−脂肪酸、ω6脂肪酸、植物油、魚油、又はこれらの混合物を含んでもよく、特に、エマルジョン乳、乳状又は乳ベースの製品が好ましい。乳状製品は、豆乳又はそれをベースにした製品であってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態では、ゲルを発泡させる。発泡は、ゲル構築プロセス中に又はゲル化される液体にゲル構築材料を添加する少し前に、気体又は気体の混合物を導入することによって、行うことができる。原則として、得られる生成物の意図される使用温度で、気体の形で存在する任意の物質が、利用可能である。どの気体を使用することができるかは、その生成物の意図される目的のみに左右される。食品の適用例では、空気、窒素、二酸化炭素、又は希ガスが好ましい。その結果、本発明のゲル及びゲル構築材料を、泡の安定化に使用することができる。この性質は、例えば貯蔵時間中、後の消費に向けて食品に泡を保存しようとするとき、重要なものになる。
【0059】
任意選択で、本発明のゲルはさらに、甘味料、特に砂糖、緩衝液、着色剤、保存剤、塩、スパイス、ビタミン、香料成分、炭水化物、タンパク質、生物活性剤、ミネラル、酸性化剤、薬品、又はこれらの混合物からなる群から選択された1種又は複数の添加剤を含むことができる。
【0060】
本発明のゲルの実施形態は、特に、液体媒体がゲルの60〜99.9質量%、好ましくはゲルの90〜99.6質量%、特にゲルの98〜99.5質量%を示し、及び/又は細胞壁材料が、ゲルの10〜0.1質量%、好ましくはゲルの5.0〜0.4質量%、特に好ましくはゲルの2〜0.5質量%を示すことを特徴とする。
【0061】
本発明の一実施形態は、ゲル、したがってゲル構築材料が、食用材料からなることを特徴とする。食用材料には、好ましくは食品級の材料が含まれる。
【0062】
本発明の範囲には、本発明のゲルを含む製品が含まれる。
【0063】
そのような製品は、例えば、化粧品又は医薬品、特に保湿ゲル、シェービングクリーム、シャワーゲル、局所施用のためのクリーム若しくはゲル、又は食品、特にアンブロシア、ゼリー、プリン、アイスクリーム、菓子製品、ソース、又は水和ゲルなどの機能性スポーツ用食品であってもよい。さらに可能な製品は、日常生活用のゲル化水(芳香、及び包装を通した差別化を有する)、スポーツゲル、口内の乾きを予防するためのゲル化水、高齢者向けの栄養分を含んだゲル化水、保育用のスプーンですくえるフルーツジュース、デザートのゲル化剤、又はデザートのゼリー層である。
【0064】
特に食品では、本発明のゲルが、カロリー摂取の制御を助ける。特に、本発明による不溶性果実繊維から作製されたゲルは、それ自体は低カロリー値を有し、したがって、例えばデンブンベースのゲルで作製された製品と同じ食感及び濃厚さをもたらすが著しく低いカロリー量を有することが望まれる場合には、大きな利点がある。
【0065】
特に、本発明のゲルは、約−25℃から120℃の食品適用に適した温度範囲を含む広い温度範囲で安定である。この理論に拘泥するものではないが、本発明者らは、この効果は、ゲルの安定性をもたらすゲル内の相互作用が主に、温度変化に耐えるのに十分強力な静電的相互作用であるために、観察されると考える。
【0066】
本発明のゲル及びゲル構築材料のその他の著しい利点は、ゲルの生成に加熱を必要としないことである。これにより、子供によるゲルの調製が安全になり、エネルギーが節約される。
【0067】
本発明のゲルは、消費前の数カ月間、特に約1〜6カ月間、貯蔵安定でもある。
【0068】
本発明のゲルはさらに、高い塩の条件で安定である。例えば1M塩までの塩濃度では、少なくとも2.5%の細胞壁材料の濃度が、ゲルを生成するのに十分である。10mMから500mMの好ましい塩濃度を使用することができる。
【0069】
これらの性質の全ては、本発明のゲルを特に食品に適用可能にする。
【0070】
約99質量%の水を含有するゲルを形成することができるように果実から抽出された不溶性繊維を含む本発明の剪断細胞壁材料の、注目すべき能力によって、本発明のゲルは特に、水和ゲルとして利用可能である。
【0071】
そのような生成物は、例えば、化粧品の分野で使用してもよく、又は胃の不快感を引き起こすことなく水分補給のために運動選手が摂取してもよい。
【0072】
さらに、ゲルのコロイド状の性質は、ゲル内に有益なミネラル及び栄養分を捕捉すること、及びそれらの放出を制御すること、及び/又はそれらの味をマスクすることを可能にする。
【0073】
さらに、本発明のゲル及びゲル構築材料は、便秘の予防又は緩和を助ける。不溶性繊維は、食物の嵩を増大させて、食物が消化管内を通過する速度を速め、したがって便秘が緩和される。これは、腸癌の危険性を低下させる。食物が消化管内を素早く移動する場合、有害な物質が腸管内に蓄積される時間が短くなる。これは、腸癌の予防を助けることができる。最後に、痔の予防を助ける。不溶性繊維は、腸管内での食物の移動をより速くする。これは、痔の主な原因である腸管内の圧力を、低下させる。
【0074】
本発明は、本発明のゲルを調製するのに使用され、ゲル内のゲルマトリックスである、ゲル構築材料にも関する。
【0075】
したがって、本発明の一実施形態は、熟した軟らかい植物学的な果実からの剪断細胞壁材料を含む、ゲル構築材料である。好ましくは、細胞壁材料は、化学的に修飾されない。
【0076】
当業者なら、ゲルマトリックス及び/又は細胞壁材料に関してなされたものと同じ考察が、ゲル構築材料に等しく適用されることが理解されよう。
【0077】
特に、ゲル構築材料は、当技術分野で知られている任意の方法によって、熟した軟らかい植物学的な果実から得ることができる。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明のゲル構築材料は、下記のステップ、即ち:
− 果実を破砕するステップ、
− 任意選択で、果実材料中の酵素活性を、好ましくは加熱ステップによって停止させるステップ、
− 任意選択で、細胞壁材料を剪断するステップ、
− 残された構成成分から、好ましくは分離器の使用によって又は遠心分離によって細胞壁材料を分離するステップ、
− 任意選択で洗浄して、細胞壁材料をさらに精製するステップ、
− 任意選択で、有機溶媒中で乾燥するステップ
を含む方法によって得ることができる。
【0079】
このプロセスでは、剪断細胞壁材料に関して上記にて列挙された内容と同じ考察が、適用される。
【0080】
本発明によるゲル構築材料は、好ましくはゲルを生成するために使用されるが、結合剤として使用することもできる。ゲル構築材料を結合剤として使用することにより、ゲルに関して述べたものと同じ利点が得られる。特に、カロリー量を低下させることができ、不溶性繊維の存在による有益な健康上の効果を、発揮することができる。
【0081】
本発明のゲルは、いくつかの方法によって調製することができる。果実ゲルが望まれる場合、軟らかい植物学的な果実材料を直接使用すること、及び液体含量を適切に調節した後にこの果実材料中の細胞壁材料を剪断することが可能である。その結果、果実ゲルになる。
【0082】
特に、ゲルのゲル強度は、単に液体の量又は細胞壁材料の量を調節することによって、調節することができる。他の可能性は、当技術分野で知られており上記にて例示した、別のゲル構築材料の添加と考えられる。
【0083】
ゲル構築材料は、剪断ステップ無しで最初に調製することもできる。これには、ゲル化される液体にゲル構築材料を後で添加することができ、ゲル化を剪断によって、ちょうど良い時点で開始することができるという利点がある。
【0084】
或いは、本発明のゲル構築材料を、ゲル化される液体に添加することができる。この方法のゲル化は、添加直後に開始されることになる。
【0085】
本発明のゲルのその他の調製方法は、当業者に明らかにされ、本発明の対象によって構成されることになる。
【0086】
当業者なら、開示される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記述される任意の特徴を組み合わせることができることが、理解されよう。
【0087】
本発明のその他の実施形態及び利点は、以下の実施例及び図から明らかにされよう。
【実施例】
【0088】
実施例1:
高い保水特性を有するトマトの細胞壁材料(CMW)の調製
熟したトマトを、100℃の水に60秒間浸漬した。皮を除去し、室領域及び種子を廃棄し、果皮組織を回収した。果皮組織を、いくらかの添加した水と共に台所用ブレンダ内に入れ、均質化させた。組織のホモジネートを80℃に10分間加熱し、室温に冷却し、10分間、7268gで遠心分離した。沈殿物(細胞壁材料、CWM)を、水に再懸濁することによって洗浄し(3×)、各添加後に遠心分離した。次いでアセトンに再懸濁し(2×)、毎回遠心分離にかけて、CWMを回収した。CWMをアセトンに再懸濁し、GF/Aガラス繊維紙に通して濾過し、最後に追加のアセトンで洗浄した。CWMのケークを粒子に分解し、空気乾燥した。
【0089】
レッドマトリックストマト(Red Matrix Tomatoes)からのCMWを、例えば下記の通りに得た。
【0090】
6.9kgのレッドマトリックストマトを、沸騰水に60秒間浸漬した。皮、種子、及び粗い粒子を、その後、手で除去した。4.4kgの果肉が得られた。この果肉を台所用ブレンダで均質化し、その後、80℃で10分間加熱した。均質化した果肉を、冷水を当てることによって室温に冷却し、その後、5000rpm(7268g)で10分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、残りの細胞材料を500mlの水で洗浄した。得られたスラリーを、再び5000rpm(7268g)で10分間遠心分離した。後続の遠心分離を含むこの洗浄ステップを、合計で3回実施した。
【0091】
得られた細胞材料を、2:1の比で2つの画分に分割した。
【0092】
得られた細胞材料の2/3を、500mlアセトンp.a.で洗浄し、その後、5000rpm(7268g)で10分間の遠心分離ステップを行った。有機溶媒としてのアセトンでのこの洗浄手順は、合計で3回繰り返した。次いで、得られた洗浄済みの細胞材料を、GF/Aフィルタを備えたブフナー漏斗に通し、有機溶媒としてさらなるアセトンで再び洗浄した。その後、細胞材料をドラフト下で乾燥することにより、レッドマトリックストマトからのCMWが20.5g得られた。
【0093】
水での洗浄後に得られた細胞材料の残りの1/3を、アセトンの代わりにエタノール(94%)を使用する点が異なる以外は上述と全く同じ処理にかけた。レッドマトリックストマトから10.7gのCMWが得られた。
【0094】
実施例2:
トマトCWMからのゲルの調製
上述のように調製されたCWM(0.5g)を、水50mlに懸濁し、周囲温度で30分間放置した。次いで懸濁液を、Ultra−Turraxで、24000rpmの均質化に60秒間かけた。この処理の後、安定なゲルが形成された。
【0095】
典型的な調製例は、下記の通りである:
純粋な水和ゲル
1質量%の細胞壁材料
99質量%の水
電解質を含む水和ゲル
1質量%細胞壁材料
0.5質量%Na
0.05質量%K
0.82質量%Cl
97.63質量%の水
【0096】
栄養分ウィズパワー(With Power)ゲル組成物を含む水和ゲル:
成分:
マルトデキストリン、濾過水、フルクトース、パワーバー(登録商標)電解質ブレンド(塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム)、自然の風味、クエン酸、l−ロイシン(170mg/100g)、l−バリン(170mg/100g)、l−イソロイシン(170mg/100g)、安息香酸ナトリウム、及びソルビン酸カリウム、ビタミンC、ビタミンE。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例3:
NRCトマトCWMと市販のトマト繊維との、粘度生成能力の比較
2つの異なる販売業者からのトマト繊維と、上述のように調製されたCWMとを、1%の濃度で水中に懸濁した。剪断が無いと、商用の繊維は分散せず、沈降して沈殿物を形成した。一方、本発明により調製されたCWMは、液体のボリューム全体にわたって容易に分散し、粘性懸濁液を形成した。高剪断処理(24000rpm、Ultra−Turraxで、60秒間)後、商用の繊維は液体全体に分散したが、上述のように得られたCWMを使用した場合に得られたものと同じ粘性ゲルは、生成されなかった。この比較研究の結果を、図5に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体と、熟した軟らかい植物学的な果実から得た剪断された細胞壁材料を含有するゲルマトリックスと、を含むゲル。
【請求項2】
前記細胞壁材料が、実質組織から得られる、請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
前記細胞壁材料が、化学的に修飾されていない、請求項1又は2に記載のゲル。
【請求項4】
前記細胞壁材料が、好ましくは、約100〜0.01μm、好ましくは約10〜0.1μm、最も好ましくは約2〜0.1μmの平均繊維長に剪断される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項5】
前記ゲルマトリックスが、軟らかい植物学的な果実から得た細胞壁材料からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項6】
前記細胞壁材料が、下記のステップを含む方法によって得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゲル:
− 果実を破砕するステップ、
− 任意選択で、果実材料中の酵素活性を、好ましくは加熱ステップによって停止させるステップ、
− 残りの構成成分から、好ましくは分離器の使用によって又は遠心分離によって細胞壁材料を分離するステップ、
− 任意選択で洗浄して、前記細胞壁材料をさらに精製するステップ、
− 任意選択で剪断するステップ、
− 任意選択で、有機溶媒中で洗浄及び/又は乾燥するステップ。
【請求項7】
前記軟らかい植物学的な果実が、軟らかい野菜及び軟らかい調理用果実からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項8】
前記軟らかい植物学的な果実が、熟成プロセス中に細胞壁のin−vitro膨潤を示す果実であり、好ましくは熟していない果実に対する熟した果実の膨潤比が2.5倍以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項9】
前記軟らかい植物学的な果実が、トマト、キウイ、プラム、イチゴ、チェリー及び柿からなる群から選択され、好ましくはトマト又はキウイである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項10】
前記液体媒体が極性媒体であり、好ましくは水を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項11】
前記液体媒体がエマルジョンを含み、前記エマルジョンは、好ましくは水及び脂肪を含み、前記脂肪は好ましくは乳脂肪、長鎖脂肪酸、中鎖トリグリセリド、ω3−脂肪酸、ω6脂肪酸、植物油、魚油、又はこれらの混合物であり、特に好ましくは前記エマルジョンはエマルジョン乳又は乳状製品である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項12】
前記ゲルが発泡する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項13】
甘味料特に砂糖、緩衝液、着色剤、保存剤、塩、スパイス、ビタミン、香料成分、炭水化物、タンパク質、生物活性剤、ミネラル、酸性化剤及び薬品からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項14】
前記液体媒体が、ゲルの60〜99.9質量%、好ましくはゲルの90〜99.6質量%、特にゲルの98〜99.5質量%を示し、及び/又は前記細胞壁材料が、ゲルの10〜0.1質量%、好ましくはゲルの5.0〜0.4質量%、特に好ましくはゲルの2〜0.5質量%を示す、請求項1〜13のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項15】
食用材料からなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項16】
泡を安定化させるための、請求項1〜15のいずれか一項に記載のゲルの使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のゲルを含む製品。
【請求項18】
化粧品若しくは医薬品、特に、保湿ゲル、シェービングクリーム、シャワーゲル、局所施用のためのクリーム若しくはゲル;又は
食品、特に、アンブロシア(ambrosia)、ゼリー、プリン、アイスクリーム、菓子製品、ソース、
水和ゲル、日常生活用のゲル化水、スポーツゲル、口の渇きを防止するためのゲル化水、高齢者用栄養分を含むゲル化水、保育用のスプーンですくえるフルーツジュース、デザート中のゲル化剤、デザートのゼリー層などの機能性スポーツ食品;である、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
熟した軟らかい植物学的な果実から得た、剪断された、好ましくは化学的に修飾されていない細胞壁材料を含む、ゲル構築材料。
【請求項20】
下記のステップを含む方法によって得られる、請求項19に記載のゲル構築材料:
− 果実を破砕するステップ、
− 任意選択で、果実材料中の酵素活性を、好ましくは加熱ステップによって停止させるステップ、
− 任意選択で、細胞壁材料を剪断するステップ、
− 残りの構成成分から、好ましくは分離器の使用によって又は遠心分離によって細胞壁材料を分離するステップ、
− 任意選択で洗浄して、前記細胞壁材料をさらに精製するステップ、
− 任意選択で、有機溶媒中で洗浄及び/又は乾燥するステップ。
【請求項21】
結合剤としての、請求項19又は20に記載のゲル構築材料の使用。
【請求項22】
請求項19又は20に記載のゲル構築材料を、ゲル化される液体に添加するステップを含む、ゲルを調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−530219(P2010−530219A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510795(P2010−510795)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056952
【国際公開番号】WO2008/148828
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】